JP3715365B2 - 網点閾値設定方法および2値データ作成装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、網点画像フイルムを作成するための画像記録装置等に適用して好適な網点閾値設定方法および2値データ作成装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近時、出力解像度により定まる画素グリッド上にスーパーセルを設定し、設定したスーパーセルを網点セルに分割し、分割した網点セル内の各画素に対応して閾値を割り当てて網点閾値を設定する網点生成技術が知られている。
【0003】
このようなスーパーセルに関連して網点を生成する技術の参考文献としては、例えば、「書名:ポストスクリプト・スクリーニング、著者:ピーター フィンク、発行元:株式会社エムディエヌコーポレーション、発行日:1994年8月11日、初版第1刷」を挙げることができる。
【0004】
複数の網点セルから構成されるスーパーセルを考えることで、スクリーン線数と網角度をより細かく変化させることが可能になり、指定されたスクリーン線数と網角度に、より近い値を選択することができるという有利さがある。
【0005】
なお、画素グリッドとは、黒化単位である画素の集合体をいう。したがって、画素グリッドは、画素が縦横に整然と並んでいる状態をイメージすればよい。
【0006】
また、網点セルとは、図12Aに示すように、例えば、画素グリッド上の10箇(実際には、画像の階調に対応して、例えば、256箇等からなる。)の画素Pから構成されるものであり、図中、一点鎖線で示すように正方形で表される。なお、網点セルHは、通常、正方形で表される。
【0007】
図12Aは、網角度が(1/3)[有理正接RT{RT=(1/3)}]の網点セルHを示している。
【0008】
図13Aは、網角度が0°(0/3)[有理正接RT(RT=0)]の網点セルHを示している。
【0009】
網点セルHの各画素に割り当てられる閾値(図示していない。)は、後に詳しく説明するように、網点セルHの中央から外方に向かって徐々に大きな値が設定されるようになっているので、網点セルHの中央の画素Pの黒化順番(黒化順序)が第1番になる。図13Aにおいては、黒化順番が第1番の画素Pのみが黒化されている様子をハッチングで表している。
【0010】
以下の説明に当たって、中央から黒化されていく網点セルHは、図13Aに対応して図13Bに示すように、正方形の中にハッチングを施した丸を描いて表すこととする。この場合、図12Aに示した網点セルHは、図12Bに示すように、同じ網角度分だけ傾けて表示する。
【0011】
図14は、9箇の網点セルH1〜H9で構成されるスーパーセルSの模式的な構成を示している。スーパーセルSの4箇所の頂点2〜5は画素Pの頂点に一致している必要があるが、網点セルH1〜H9のそれぞれが共有する頂点6、7、8等は画素Pの頂点に一致している必要はない。
【0012】
この図14例のスーパーセルSの場合、直交するxy軸上においてx軸上の画素数をm、y軸上の画素数をnとした場合、網角度に対応する有理正接RTは、RT=(n/m)になる。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、網点セルH1〜H9のそれぞれには、例えば、その中心近傍から外側に向かって螺旋状に画素Pに対応して閾値が、例えば、0,1,2,…,255と設定される。
【0014】
ここで、画素Pに対応して閾値が設定された網点セルH1〜H9を、便宜上、網点セル閾値テンプレートという。したがって、画素Pに対応して閾値が設定されたスーパーセルSをスーパーセル閾値テンプレートという。
【0015】
簡単のために、今、このスーパーセル閾値テンプレートが適用される原画像の画素の大きさが網点セルHの大きさと同一であると考える、いわゆる濃度パターン法による黒化処理を考えるものとする。
【0016】
この原画像の画像データ値が、例えば、全て、網パーセントが100%の値である255に近い値であった場合、各網点セルH1〜H9はほとんど黒化された状態になる。
【0017】
この場合、上述のように閾値が配列された各網点セルH1〜H9は、その中心近傍から黒化され、中心近傍にハイライト点(上例の場合には、値0)が配されることになるので、ハイライト点中心の網点セル(または、一般にハイライト側では網点セルの黒化点が小さいことから小点中心の網点セル)ということとする。図12B、図13Bに示した網点セルHもハイライト点中心の網点セルである。
【0018】
しかしながら、このようなハイライト点中心の網点セルH1〜H9から構成されるスーパーセルSでは、各網点セルH1〜H9の頂点2〜8等付近において、周期的に黒化されない画素数、すなわち白抜け画素数が変動する。具体的かつ極端な例としては、頂点6が黒化され、頂点7が白抜けとなり、かつ頂点8が黒化されるという状態になる。
【0019】
スーパーセルS内では、各網点セルH1〜H9の黒化画素数はほぼ均一に分布するが、白抜け画素数は制御されず、各網点セルH1〜H9で周期的に変動する。これが出力画像上で格子状あるいは縞状のモアレとなって視認されるという問題があった。これは、網点の周波数と出力解像度のモアレと考えることができる。
【0020】
図15Aは、高網パーセント(シャドゥ部)出力時に出力画像9上に発生したモアレ縞の具体的なシミュレーション画像の例を示している。矢印10の方向にモアレ縞が顕著に現れていることが分かる。なお、図15A中、符号11を付けた四角形部分が白抜け部分であり、その他の部分は黒化されている部分である。
【0021】
本出願人は、上述のモアレ縞を低減する技術を特願平7−123922号明細書で提案している。この技術は、スーパーセルを網点セルに分割する際、ハイライト点中心の網点セルに分割するとともに、シャドゥ点中心の網点セルに分割し、ハイライト点中心の網点セル内の各画素に割り当てられる閾値、例えば、0,1,2,3,…と、シャドゥ点中心の網点セル内の各画素に割り当てられる閾値、すなわち、N,N−1,N−2,…を交互に定める技術である(0→N→1→N−1→……→3→N−3の順で閾値を定めている。)。
【0022】
この技術によれば、上述の原因のモアレ縞を相当低減することができる。しかしながら、この技術によっても、特に、網点とレーザ光等の走査ピッチに係る縞状のモアレが目立つ条件の場合には、モアレが見える場合があるということが判明した。
【0023】
この発明は、この技術を前提としてなされたものであり、出力画像上にモアレ縞の発生することのない網点閾値設定方法および2値データ作成装置を提供することを目的とする。
【0024】
【課題を解決するための手段】
第1のこの発明は、出力解像度により定まる画素グリッド上にスーパーセルを設定し、設定したスーパーセルを網点セルに分割し、分割した網点セル内の各画素に対応して閾値を割り当てて網点閾値を設定する網点閾値設定方法において、
前記スーパーセルを網点セルに分割するとき、前記閾値の小から大への変化に対応して画素の黒化が中央から始まるハイライト点中心の網点セルに分割するとともに、前記閾値の小から大への変化に対応して画素の黒化が外側から始まるシャドゥ点中心の網点セルに分割し、その際、前記シャドゥ点中心の網点セルの頂点が前記ハイライト点中心の網点セルの中心に一致するようにし、
前記ハイライト点中心の網点セルおよび前記シャドゥ点中心の網点セルのそれぞれの網点セルで画素の黒化順序を決める座標計算の際に、各画素の座標に各網点セル毎に異なる乱数を付加して黒化順序を定め、
この黒化順序に応じて、前記ハイライト点中心の網点セル内の各画素に割り当てられる閾値と、前記シャドゥ点中心の網点セル内の各画素に割り当てられる閾値を交互に定めたことを特徴とする。
【0025】
第2のこの発明は、前記付加する乱数は、乱数の大きさと付加する網点セルの箇数を制御可能としたことを特徴とする。
【0026】
第3のこの発明は、前記付加する乱数の大きさは、前記画素の大きさ以下の大きさとしたことを特徴とする。
【0027】
第4のこの発明は、原画像データをスーパーセル閾値テンプレートと比較して2値データを得る2値データ作成装置であって、前記スーパーセル閾値テンプレートが、第1の発明のように作成されていることを特徴とする。
【0028】
この発明によれば、ハイライト点中心の網点セルおよびシャドゥ点中心の網点セルのそれぞれの網点セルで画素の黒化順序を決める座標計算の際に、各画素の座標に各網点セル毎に異なる乱数を付加して黒化順序を定め、定めた黒化順序に応じて、ハイライト点中心の網点セル内の各画素に割り当てられる閾値と、シャドゥ点中心の網点セル内の各画素に割り当てられる閾値を交互に定めたことで、出力画像上でモアレ縞が発生することを防止できる。
【0029】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施の一形態について、図面を参照して説明する。なお、以下に参照する図面において、上記図12〜図15に示したものと対応するものには同一の符号を付けてその詳細な説明は省略するが、必要に応じてこれらの図も参照して説明する。
【0030】
図1および図2は、この発明の実施の一形態が適用された画像製版システム31、および画像製版システム31を構成する2値データ作成装置41の概略的な構成を示している。
【0031】
図1において、写真等の原稿画像32が画像入力部33に供給されて、その画像入力部33を構成するイメージスキャナにより、例えば、8ビットのデジタル画像データ(以下、単に画像データという。)DAとされる。この画像データDAに対して画像処理部34により色補正処理、シャープネス処理等の各種画像処理が行われて画像データDBが作成される。
【0032】
画像データDBは、画像記録部35を構成する2値データ作成装置41に供給される。
【0033】
図2において、2値データ作成装置41に供給された画像データGは入力ポート42を通じて比較部43の比較入力に供給される。また、画像データGからスーパーセル閾値テンプレート45上のx軸アドレスとy軸アドレス(x軸とy軸については図14参照)を表すアドレスAD(x,y)がアドレス計算部44によって計算される。スーパーセル閾値テンプレート45は、その指定されたアドレスADに対応してメモリセルに格納されている閾値(この場合、8ビットの閾値データ)Aを読み出して比較部43の基準入力に供給する。実際上、スーパーセル閾値テンプレート45は、例えば、ROMであり、読み出し主体はCPUである。
【0034】
比較部43では、次の(1)式および(2)式で示される2値データ化処理を行う。
【0035】
G≧A → 1(黒化) …(1)
G<A → 0(白抜け:非黒化) …(2)
比較部43で作成された2値データBは、出力ポート46を通じて露光部36(図1参照)に供給される。
【0036】
露光部36においては、レーザ光によりフイルム上に網点画像が潜像により露光記録されて、網点画像フイルムFが作成され出力される。
【0037】
なお、出力された網点画像フイルムFは現像された後、刷版、PS版が作成され、このPS版を印刷機に装着してシート上に画像を転写することで、所望のハードコピーが得られることになる。
【0038】
次に、スーパーセル閾値テンプレート45に設定される閾値の作成方法について、図3のフローチャートを参照しながら詳しく説明する。
【0039】
まず、網点画像フイルムFの出力条件に対応する計算上の入力パラメータ(m,n,k,L)を設定する(ステップS1)。
【0040】
パラメータ(m,n,k,L)の決定順序に特に制限はないが、例えば、まず、網角度(有理正接RT)に係るパラメータ(m,n)を決める。この場合、所望の網角度に対して実際に設定可能な網角度は、図14に示したy軸上の画素数nをx軸上の画素数mで割った値{(n/m)=有理正接RT}とされる。この有理正接RT(=n/m)は、スーパーセルSの1辺の長さLに関連して、所望の網角度に最も近い値になるように設定される。有理正接RTは、角度をθとするとき、θ=arctan(n/m)で表される。印刷で用いられる角度θ=15°を実現するためには、有理正接RT=n/mとして、n/m=3/11、4/15、7/26、11/41、15/56、……を使用すればよい。
【0041】
次に、所望の線数(例えば、後に説明する図4中、網点セルHの1辺の長さQ)を得るためのスーパーセルSの1辺の長さLと1箇のスーパーセルSを構成する網点セルHの数kの組み合わせ(L,k)を出力解像度を考慮して決める(これらは同時に決まる。)。
【0042】
すなわち、スーパーセルSの一辺の長さLを決めると、スーパーセルSの実際の長さが分かり、パラメータである数kを決めることで、スーパーセルSの中に入る網点セルHhの箇数が決定され、実質線数、すなわち、網点セルHの1辺の長さQが決定される。この実施の形態において、1箇のスーパーセルS中の網点セルHの数kは、k=10としている。
【0043】
次に、スーパーセルSを、次の(3)式、(4)式で定義される直線群により、ハイライト点中心の網点セルHhに分割する(ステップS2)。
【0044】
nx−my+(p−n)L=0 {p=−(n−1)〜(n−1)}…(3)
mx−ny−qL=0 {q=0〜(m+n−1)} …(4)
図4は、1辺の長さがLのスーパーセルSを、(3)式、(4)式に基づく直線により1辺の長さがQのハイライト点中心の網点セルHhに分割したものを示している。ハイライト点中心の網点セルHh1〜Hh10は、それぞれ、中央にハッチングした丸で表している。これは、上述したように、閾値の小から大への変化に対応して黒化が中央から始まることを示している。
【0045】
また、ステップS2においては、同じスーパーセルSをシャドゥ点中心の網点セルHsに分割する。
【0046】
図5は、スーパーセルSを1辺の長さがQのシャドゥ点中心の網点セルHsに分割したものを示している。シャドゥ点中心の網点セルHs1〜Hs10は、それぞれ、中央の丸以外の部分をハッチングで表している。これは、後に詳しく説明するように、閾値の小から大への変化に対応して黒化が外側(各網点セルHs1〜Hs10の外側)から始まることを示している。なお、シャドゥ点中心の網点セルHs1〜Hs10を区画分けする直線群は、(3)式において、y=y+(1/6)Lとした式、(4)式において、y=y+(1/2)Lとした式で表される。これは、各直線が、結果として、x軸方向およびy軸方向に網点セル(HhまたはHs)の長さQの半分Q/2だけずれた直線となる。
【0047】
これにより、各シャドゥ点中心の網点セルHs1〜Hs10の位置が、各ハイライト点中心の網点セルHh1〜Hh10の位置を基準として、それぞれ(3)式の直線の方向に網点セルの長さQの半分Q/2だけずらされ、かつそのずらされた位置からさらに(4)式の直線の方向に網点セルの長さQの半分Q/2だけずらされた位置に移ることになる。
【0048】
図6では、分割されたスーパーセルS上にハイライト点中心の網点セルHhを実線で描き、これに重ねてシャドゥ点中心の網点セルHsを点線で描いている。
【0049】
図6から分かるように、結果として、シャドゥ点中心の網点セルHsの頂点が、ハイライト点中心の網点セルHhの中心と一致する。また、模式的に描いた画素Pの位置から分かるように、各画素Pは、ハイライト点中心の網点セルHhとシャドゥ点中心の網点セルHsの各1箇(合計2箇)の網点セルに属する。図6中の画素Pは、ハイライト点中心の網点セルHh6とシャドゥ点中心の網点セルHs6とに属する。
【0050】
そこで、次に、スーパーセルS内の各画素Pの座標を(x,y)として、各画素(ピクセル)Pがどのハイライト点中心の網点セルHh1〜Hh10に属するか、およびどのシャドゥ点中心の網点セルHs1〜Hs10に属するかを決定する(ステップS3)。
【0051】
次に、各網点セルHh、Hs毎に、各画素Pの黒化順序を決定する(ステップS4)。黒化順序は、各網点セルHh、Hsに対して、共通のスポット関数f(u,v)で規定される。スポット関数f(u,v)は、黒化された網点の形状を規定する関数、すなわち、1箇の網点セルHh、Hs内の画素Pの黒化順番を表す関数である。この実施の形態において、スポット関数f(u,v)は、図7に示すuv座標系において、例えば、(5)式に示すように、各網点セルHh、Hsの中心座標(0.5,0.5)から黒化部分を円形に太らしていく関数とする。
【0052】
f(u,v)=(u−0.5)2 +(v−0.5)2 …(5)
ここで、変数(座標)u、vは、それぞれ、次の(6)式、(7)式で与えられる。
【0053】
u=u+rand_u (Hh_n または Hs_n) …(6)
v=v+rand_v (Hh_n または Hs_n) …(7)
乱数rand_u、rand_vは、u軸、v軸上の方向で独立な乱数であることを意味し、したがって、(6)式、(7)式の右辺の変数u、vに対して独立の乱数rand_u、rand_vをそれぞれ付加した(6)式、(7)式の左辺の変数u、vが(5)式の変数u、vに代入されて、スポット関数f(u,v)の値が生成される。また、乱数rand_u (Hh_n または Hs_n)、乱数rand_v (Hh_n または Hs_n)は、それぞれ、網点セルHh、Hsの各網点セル毎に異なる値を採る乱数を用いることを示している。乱数rand_u、rand_vの生成は、M系列符号を用いて乱数を発生する等、公知のどのような乱数発生方式を用いてもよい。
【0054】
なお、乱数rand_u、rand_vの値の大きさは、任意の大きさに制御可能であり、例えば、網点セルHまたは画素Pの大きさに依存して可変するように制御することも可能である。ただし、乱数rand_u、rand_vの値が大きすぎると、画像に発生する図15Aに示した縞状のモアレを解消することはできるが、その一方、いわゆるざらつき感が目立ってきて、画像の品質が落ちてくる。
【0055】
そこで、縞状のモアレを解消して、このざらつき感を目立たせないようにするための乱数rand_u、rand_vの値の最大値(+方向と−方向)は、画素Pの大きさ(図6に示す画素Pの対角線の長さ)以下に定めることが好ましい。そして、網が、いわゆる粗い網である場合には、高線数の細かい網に比較して大きな値の乱数rand_u、rand_vにすればよい。
【0056】
また、乱数rand_u、rand_vを付加することの可能なスーパーセルSに含まれる網点セルの箇数(Hh_0〜Hh_n または Hs_0〜Hs_n)のうち、何箇の網点セルに乱数rand_u、rand_vを付加するようにするのかを制御することも可能である。すなわち、乱数を付加する網点セルは、後に説明する閾値の数(N+1)箇のうち、任意の数に決めればよい。
【0057】
なお、スポット関数f(u,v)の各値は、(6)式、(7)式に基づいて実際に計算してもよく、2次元のルックアップテーブルとして準備しておいてもよい。
【0058】
次に、スポット関数f(u,v)で決定される黒化順序に応じて、スーパーセル閾値テンプレート45(図2参照)の閾値A(図2参照)を決定する(ステップS5)。スーパーセル閾値テンプレート45は、スーパーセルSと同一の大きさになっており、その意味で、スーパーセル閾値テンプレート45という。スーパーセル閾値テンプレート45は、各画素位置に対して1:1に閾値Aが定められたテーブルである。
【0059】
図8は、閾値決定のための詳細なフローチャートである。
【0060】
この実施の形態において、閾値Aは、値0,1,…,Nをとるものとする。実際上は、例えば、0,1,…,255の値をとる。
【0061】
そこで、まず、ハイライト点中心の網点セルHh用の閾値Aを閾値HLで表し(A=HL)、シャドゥ点中心の網点セルHsの閾値Aを閾値SDで表して(A=SD)、それらの初期値として、閾値HL=0、閾値SD=Nを設定する(ステップS11)。また、網点セルHhを構成する画素をPh、網点セルHsを構成する画素をPsで表す。そして、画素Phに閾値HLを設定する場合には、画素Ph=HL、または、より分かり易くは、画素Phの位置が座標(x,y)で決まることを考慮して、画素Ph(x,y)=HLと表す。
【0062】
次に、スーパーセル閾値テンプレート45中の未処理画素(閾値の決まっていない画素)で網点セルHh中、黒化順番の最も早い画素Ph(x,y)と、スーパーセル閾値テンプレート45中の未処理画素で網点セルHs中、黒化順番の最も遅い画素Ps(x,y)を選択する(ステップS12)。
【0063】
次いで、選択した画素Ph(x,y)と画素Ps(x,y)とが孤立画素でないことを念のために確認する(ステップS13)。孤立画素でないかどうかは、図9に示すように、選択された画素Pを画素P(x,y)とするとき、その上下左右の4箇の画素P(x,y+1)、P(x,y−1)、P(x−1,y)、P(x+1,y)のうちのいずれか1箇の画素が、閾値Aの決定している画素(閾値Aの決定している画素を処理画素という。)であれば孤立画素でないと判断できる。
【0064】
ステップS13の判断が成立したとき、選択した画素Ph(x,y)と画素Ps(x,y)の閾値Aを、それぞれ画素Ph(x,y)=HL、画素Ps(x,y)=SDに設定する(ステップS14)。
【0065】
次に、閾値Aの決定していない未処理画素があるかどうかを判断する(ステップS15)。
【0066】
未処理画素があった場合には、閾値HL、SDの値をそれぞれ閾値HL=HL+1(この場合、HL=1)、閾値SD=SD−1(この場合、SD=N−1)に変更する(ステップS16)。
【0067】
そして、再び、ステップS12の処理からステップS16の処理を繰り返して行い、ステップS15の判定が成立しなくなるまで、言い換えれば、全ての画素Ph(x,y)、Ps(x,y)の閾値Aを決定する。
【0068】
図10は、ステップS5の閾値決定処理により、ハイライト点中心の網点セルHhの閾値HLとして、この実施の形態の理解を容易にするために、黒化順番を決めるスポット関数f(u,v)の乱数rand_u、rand_vがそれぞれゼロ値であると考えた場合のHL=0,1,2,3まで、シャドゥ点中心の網点セルHsの閾値SDとして、SD=N,N−1,N−2,N−3まで、それぞれ4点決まった状態のスーパーセル閾値テンプレート45を模式的に表している。
【0069】
図10から分かるように、閾値HL、SDはハイライト点中心の網点セルHhの中心から、HL=0,1,2,3と決まっていくとともに、シャドゥ点中心の網点セルHsの中心からSD=N,N−1,N−2,N−3と決まっていく。詳しく説明すると、0→N→1→N−1→……→3→N−3の順で、交互に閾値Aが決まっていく。
【0070】
なお、黒化順番を決めるスポット関数f(u,v)に乱数rand_u、rand_vが付加された場合のハイライト点中心の網点セルHhの閾値HLとシャドゥ点中心の網点セルHsの閾値SDがそれぞれ4点まで決まった状態のスーパーセル閾値テンプレート45Aを模式的に図11に示す。
【0071】
このように交互に閾値Aを決めていった場合において、閾値A=N/2近傍の値を割り当てるとき、ハイライト点中心の網点セルHh中の画素Ph(x,y)の位置とシャドゥ点中心の網点セルHs中の画素Ps(x,y)の位置とが一致した場合には、先に割り当てられた方の網点セルの画素P(x,y)の位置を優先して閾値A=N/2近傍の値を割り当てることとする。
【0072】
このような手順によりスーパーセル閾値テンプレート45Aの閾値Aが全て決定される。閾値Aが決定されたスーパーセル閾値テンプレート45Aは、ROM等の記憶デバイスに記憶されて、図2に示したような2値データ作成装置41の使用に供される。
【0073】
このように上述の実施の形態によれば、スーパーセルSを網点セルHに分割する際、ハイライト点中心の網点セルHhに分割するとともに、シャドゥ点中心の網点セルHsに分割し、ハイライト点中心の網点セルHhおよびシャドゥ点中心の網点セルHsのそれぞれの網点セルで画素Pの黒化順序を決める座標計算の際に、各画素Pの座標に各網点セル毎に異なる乱数rand_u、rand_vを付加して黒化順序を定め、定めた黒化順序に応じて、ハイライト点中心の網点セルHh内の各画素Phに割り当てられる閾値HLと、シャドゥ点中心の網点セルHs内の各画素Psに割り当てられる閾値SDを交互に定めている。このため、モアレ縞の現れやすい原稿画像の濃度が高いとき、言い換えれば、網パーセントが、例えば、90%程度以上のときを考えた場合、ハイライト点中心の網点セルHh内の黒化画素数とシャドゥ点中心の網点セルHs内の白抜け画素数とが等しくなり、モアレ縞が発生することがなくなるという効果が達成される。
【0074】
図15Bは、図15Aに対応して作成されたこの実施の形態が適用された、高網パーセント出力のときのシミュレーション画像9′である。図15Bにおいて、符号11′を付けた四角形部分が白抜け部分であり、その他の部分は黒化されている部分である。図15Bからモアレ縞が発生していないことが理解される。
【0075】
なお、この発明は上述の実施の形態に限らず、この発明の要旨を逸脱することなく種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【0076】
例えば、図4に示した傾き0°のスーパーセルに対しての適用以外に、図14に示した傾いたスーパーセルSに対しても適用できる。
【0077】
【発明の効果】
以上説明したように、この発明によれば、スーパーセルを網点セルに分割する際、ハイライト点中心の網点セルに分割するとともに、シャドゥ点中心の網点セルに分割し、ハイライト点中心の網点セルおよびシャドゥ点中心の網点セルのそれぞれの網点セルで画素の黒化順序を決める座標計算の際に、各画素の座標に各網点セル毎に異なる乱数を付加して黒化順序を定め、定めた黒化順序に応じて、ハイライト点中心の網点セル内の各画素に割り当てられる閾値と、シャドゥ点中心の網点セル内の各画素に割り当てられる閾値を交互に定めている。このため、原稿画像の濃度が高いとき、言い換えれば、網パーセントが、例えば、90%程度以上のときを考えた場合、ハイライト点中心の網点セル内の黒化画素数とシャドゥ点中心の網点セル内の白抜け画素数とがそれぞれスーパーセル内の各網点セルにおいて等しくなり、モアレ縞が発生することがなくなるという効果が達成される。
【0078】
なお、先行技術との関係で本発明の特徴を比較すれば、モアレを解消するために乱数を使用する先行技術としては、例えば、特公平6−57049号公報「網点形成方法」に公表された技術(第1の先行技術)、特開平6−30250号公報「マルチセル閾値アレイによるデジタルハーフトーン化においてドットサイズを調整する方法」に公表された技術(第2の先行技術)および特開平7−38755号公報「中間調スクリーン形成器、中間調スクリーン及びその形成方法」に公表された技術(第3の先行技術)がある。
【0079】
これら第1〜第3の先行技術は、閾値テンプレート内の閾値配列を決定するときに、乱数を使用する点で本発明と類似する。
【0080】
しかしながら、第1の先行技術は、単位網点領域を所定数のエレメントからなる分割領域に分割し各分割領域毎にずれ量として乱数を設定する方式であり、第2の先行技術は、スポット関数に供給される座標の計算において、オフセットベクトルを導入し、このオフセットベクトルを乱数発生機で発生させる方式であり、第3の先行技術は、座標計算の際にランダム位相ベクトルを導入する方式であるが、それぞれには、本発明の特徴部分の一部である、スーパーセルを網点セルに分割するときに、ハイライト点中心の網点セルに分割するとともに、シャドゥ点中心の網点セルに分割し、その際、シャドゥ点中心の網点セルの頂点がハイライト点中心の網点セルの中心と一致させることを何も示唆していない。
【0081】
なお、これら第1〜第3の先行技術にかかる発明に開示されている乱数発生を、本発明に適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施の一形態が適用された画像製版システムの概略的な構成を示すブロック図である。
【図2】図1例の画像製版システムを構成する2値データ作成装置の概略的な構成を示すブロック図である。
【図3】スーパーセル閾値テンプレートの閾値決定のアルゴリズムを示すフローチャートである。
【図4】ハイライト点中心の網点セルに分割されたスーパーセルの構成を示す図である。
【図5】シャドゥ点中心の網点セルに分割されたスーパーセルの構成を示す図である。
【図6】画素の存在位置の定義の説明に供される図である。
【図7】スポット関数の説明に供される図である。
【図8】閾値決定の詳細なアルゴリズムを示すフローチャートである。
【図9】閾値の決定されていない未処理画素の説明に供される図である。
【図10】閾値が設定された閾値テンプレートの例を示す図である。
【図11】付加された乱数に応じて閾値が設定された閾値テンプレートの例を示す図である。
【図12】図12Aは、傾けられた網点セルと画素との関係の説明に供される図、図12Bは、傾けられた網点セルの説明に供される図である。
【図13】図13Aは、傾いていない網点セルと画素との関係の説明に供される図、図13Bは、傾いていない網点セルの説明に供される図である。
【図14】スーパーセルの構成の説明に供される図である。
【図15】15Aは、高網パーセントのときの、モアレ縞が発生している場合の説明に供される従来技術に係る図、15Bは、高網パーセントのときの、モアレ縞が発生していない場合の説明に供されるこの発明に係る図である。
【符号の説明】
41…2値データ作成装置
45、45A…スーパーセル閾値テンプレート
A…閾値(閾値データ) B…2値データ
F…網点画像フイルム G…画像データ
H…網点セル
HL…ハイライト点中心の網点セル用の閾値
Hh…ハイライト点中心の網点セル Hs…シャドゥ点中心の網点セル
P…画素 S…スーパーセル
SD…シャドゥ点中心の網点セル用の閾値
Claims (6)
- 出力解像度により定まる画素グリッド上にスーパーセルを設定し、設定したスーパーセルを網点セルに分割し、分割した網点セル内の各画素に対応して閾値を割り当てて網点閾値を設定する網点閾値設定方法において、
前記スーパーセルを網点セルに分割するとき、前記閾値の小から大への変化に対応して画素の黒化が中央から始まるハイライト点中心の網点セルに分割するとともに、前記閾値の小から大への変化に対応して画素の黒化が外側から始まるシャドゥ点中心の網点セルに分割し、その際、前記シャドゥ点中心の網点セルの頂点が前記ハイライト点中心の網点セルの中心に一致するようにし、
前記ハイライト点中心の網点セルおよび前記シャドゥ点中心の網点セルのそれぞれの網点セルで画素の黒化順序を決める座標計算の際に、各画素の座標に各網点セル毎に異なる乱数を付加して黒化順序を定め、
この黒化順序に応じて、前記ハイライト点中心の網点セル内の各画素に割り当てられる閾値と、前記シャドゥ点中心の網点セル内の各画素に割り当てられる閾値を交互に定めたことを特徴とする網点閾値設定方法。 - 前記付加する乱数は、乱数の大きさと付加する網点セルの箇数を制御可能としたことを特徴とする請求項1記載の網点閾値設定方法。
- 前記付加する乱数の大きさは、前記画素の大きさ以下の大きさとしたことを特徴とする請求項1または2記載の網点閾値設定方法。
- 原画像データをスーパーセル閾値テンプレートと比較して2値データを得る2値データ作成装置において、
前記スーパーセル閾値テンプレートが、
出力解像度により定まる画素グリッド上にスーパーセルを設定し、設定したスーパーセルを網点セルに分割し、分割した網点セル内の各画素に対応して閾値を割り当てて網点閾値を設定する場合において、
前記スーパーセルを網点セルに分割するとき、前記閾値の小から大への変化に対応して画素の黒化が中央から始まるハイライト点中心の網点セルに分割するとともに、シャドゥ点中心の網点セルに分割し、その際、前記閾値の小から大への変化に対応して画素の黒化が外側から始まるシャドゥ点中心の網点セルの頂点が前記ハイライト点中心の網点セルの中心に一致するようにし、
前記ハイライト点中心の網点セルおよび前記シャドゥ点中心の網点セルのそれぞれの網点セルで画素の黒化順序を決める座標計算の際に、各画素の座標に各網点セル毎に異なる乱数を付加して黒化順序を定め、
この黒化順序に応じて、前記ハイライト点中心の網点セル内の各画素に割り当てられる閾値と、前記シャドゥ点中心の網点セル内の各画素に割り当てられる閾値を交互に定めるように作成されていることを特徴とする2値データ作成装置。 - 前記付加する乱数は、乱数の大きさと付加する網点セルの箇数を制御可能としたことを特徴とする請求項4記載の2値データ作成装置。
- 前記付加する乱数の大きさは、前記画素の大きさ以下の大きさとしたことを特徴とする請求項4または5記載の2値データ作成装置。
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