JP3713358B2 - 建設機械のフロント制御装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、多関節型のフロント装置を備えた建設機械、特にアーム,ブーム,バケット等のフロント部材からなるフロント装置を備えた油圧ショベル等の建設機械において、フロント装置の動き得る領域を制限した掘削を行う領域制限掘削制御等のフロント制御を行うフロント制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
建設機械の代表例として、油圧ショベルがある。油圧ショベルにおいては、フロント装置を構成するブーム,アームなどのフロント部材の操作は、オペレータが、それぞれの手動操作レバーを操作することによって行われる。これらフロント部材は、それぞれが関節部によって連結され、回動運動を行うものであるため、これらフロント部材を操作して所定の領域を掘削したり、所定の平面を掘削することは、非常に困難な作業である。
【0003】
そこで、掘削作業を容易にするための種々の提案がなされている。
例えば、特開平4−136324号公報に記載されている方法では、侵入不可領域の手前に減速領域を設定し、フロント装置の一部,例えば、バケットが減速領域に侵入すると、操作レバーの操作信号を小さくしてフロント装置を減速し、バケットが侵入不可領域の境界に達すると停止するようにしている。
【0004】
また、国際公開公報WO95/30059号公報に記載されている方法では、掘削可能領域を設定し、フロント装置の一部,例えば、バケットが掘削可能領域の境界に近づくと、バケットの当該境界に向かう方向の動きのみを減速し、バケットが掘削可能領域の境界に達すると、バケットは掘削可能領域の外には出ないが掘削可能領域の境界に沿っては動けるようにしている。
【0005】
侵入不可領域若しくは掘削可能領域の設定の方法としては、数値入力設定方法と、ダイレクトティーチ方法とが知られている。
数値入力設定方法は、例えば、特開平4−136324号公報の第10図に示されるように、数値入力キーを用いて必要な数値を入力し、領域を設定する方法である。数値入力設定方法は、油圧ショベルのある地面上から何mの深さだけ掘削するという指定がある場合等のように、予め掘削可能領域を実際の数値で設定できる場合に便利な方法である。
【0006】
一方、ダイレクトティーチ方法は、例えば、特開平4−136324号公報の第5図や国際公開公報WO95/30059号公報に示されるように、オペレータが、バケットの刃先を目標境界線上に持っていき、スイッチを押して領域を設定する方法である。ダイレクトティーチ方法は、掘削を行う範囲が特に図面等によって数字で規定されていないようなラフな掘削を行う作業現場において、おおざっぱに均し作業を行う場合等に便利な方法である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、ダイレクトティーチによって領域を設定する場合、油圧ショベルが水平な地面上に位置し、その位置にとどまって作業するならば、一旦掘削領域を設定すれば再度掘削領域を設定しなくても少しずつ油圧ショベルを旋回させて一定の深さまでショベルまわりの掘削を行うことが可能である。しかし、多少なりとも油圧ショベルが傾いた状態で位置しているときは、掘削領域の設定は油圧ショベルの車体基準で行われているため、旋回していくうちに設定面が上下方向に変化し、一定の深さに掘削するためには、再度領域を設定する必要が生じる。また、走行することによって油圧ショベルの設置場所の高さが変わった場合も、同様にその度に掘削領域を再設定する必要が生じる。
【0008】
掘削領域の再設定は、設定済みの掘削領域を解除するボタン操作と、新たな掘削領域を設定するボタン操作の2回のボタン操作が必要であり、上記のように旋回の都度又は設置場所が変わる都度このようなボタン操作による再設定操作を行うことは極めて面倒である。
【0009】
本発明の目的は、ダイレクトティーチにより、所望の掘削領域の設定及び再設定をボタン操作なしで簡単に行える建設機械のフロント制御装置を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記の目的を達成するために、第1の発明は、上下方向に回動可能なブーム、アーム、バケットからなる複数のフロント部材により構成される多関節型のフロント装置と、前記複数のフロント部材を駆動する複数の油圧アクチュエータと、複数の操作レバー手段からの操作信号により駆動され、前記複数の油圧アクチュエータに供給される圧油の流量を制御する複数の油圧制御弁とを有する建設機械に備えられ、前記フロント装置の各回転角に基づいてフロント装置の姿勢を演算するフロント姿勢演算部と、前記フロント姿勢演算部からのフロント姿勢演算値を制御して前記フロント装置が設定された掘削領域内を動くようにそのバケットの動きを制御する領域制限掘削制御部と、前記領域制限掘削制御部による領域制限掘削と前記操作レバーによる掘削との制御開始を選択する設定器と、前記設定器からの制御開始指令があり、ブーム操作用の操作レバー手段からのブーム下げ操作信号及びアーム操作用の操作レバー手段からのアームクラウド操作信号が中立信号である場合には、フロント装置におけるバケット先端の位置を、ダイレクトティーチにおける掘削領域の設定値として前記領域制限掘削制御部に出力し、ブーム操作用の操作レバー手段からのブーム下げ操作信号があり、又は中立のとき、アーム操作用の操作レバー手段からのアームクラウド操作信号がある場合には、前記ダイレクトティーチによる設定値を維持する領域設定演算部とを備えたことを特徴とする。
【0011】
また、第2の発明は、第1の発明において、前記領域設定演算部は、前記設定器からの制御開始指令があり、ブーム操作用の操作レバー手段からのブーム下げ操作信号があり、アーム操作用の操作レバー手段からのアームクラウド操作信号が中立信号である場合には、前記領域制限掘削制御部に設定した掘削領域の設定値を、初期値に設定変更する指令を出力することを特徴とする。
【0012】
更に、第3の発明は、第1または第2の発明において、前記領域設定演算部は、前記設定器からの制御開始指令があり、ブーム操作用の操作レバー手段からのブーム下げ操作信号が中立信号で、アームダンプ操作信号がある場合には、前記領域制限掘削制御部に設定した掘削領域の設定値を初期値に設定変更する指令を出力することを特徴とする。
【0013】
また、第4の発明は、第1乃至第3の発明のいずれかにおいて、前記領域設定演算部は、前記アームクラウド操作の中断が所定時間以上継続した場合のみ、前記掘削領域の設定を行うことを特徴とする。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を油圧ショベルに適用した場合の実施形態を、図面を用いて説明する。
まず、本発明の第1の実施形態による油圧ショベルのフロント制御装置を図1〜図11により説明する。
【0019】
図1において、本発明が適用される油圧ショベルは、油圧ポンプ2と、この油圧ポンプ2からの圧油により駆動されるブームシリンダ3a,アームシリンダ3b,バケットシリンダ3c,旋回モータ3d及び左右の走行モータ3e,3fを含む複数の油圧アクチュエータと、これら油圧アクチュエータ3a〜3fのそれぞれに対応して設けられた複数の操作レバー装置4a〜4fと、油圧アクチュエータ3a〜3fに供給される圧油の流量を制御する複数の流量制御弁5a〜5fと、油圧ポンプ2と流量制御弁5a〜5fの間の圧力が設定値以上になった場合に開くリリーフ弁6とを有している。
【0020】
本実施形態では、操作レバー4a〜4fは操作信号として電気信号を出力する電気レバー装置で、流量制御弁5a〜5fは電気信号をパイロット圧に変換する電気油圧変換手段,例えば比例電磁弁を両端に備えた電気・油圧操作方式の弁である。
【0021】
また、操作レバー装置4a〜4dについては、ブーム,アーム,バケット,旋回に対応して別々の符号を付したが、実際には、ブーム用操作レバー装置4aとバケット用操作レバー装置4c、アーム用操作レバー装置4bと旋回用操作レバー装置4dは、それぞれ、1つの操作レバー装置を共用する構成とされ、この1つの操作レバーを二次元的に動かすことにより、それぞれの操作信号を出力するものである。
【0022】
油圧ショベルは、図2に示すように、垂直方向にそれぞれ回動するブーム1a,アーム1b及びバケット1cから成る多関節型のフロント装置1Aと、上部旋回対1d及び下部走行体1eからなる車体1Bとで構成され、フロント装置1Aのブーム1aの基端は上部旋回体1dの前部に支持されている。ブーム1a,アーム1b,バケット1c,上部旋回体1d及び下部走行体1eは、それぞれ、図1に示したブームシリンダ3a,アームシリンダ3b,バケットシリンダ3c,旋回モータ3d及び左右の走行モータ3e,3fによりそれぞれ駆動され、それらの動作は、図1に示した操作レバー装置4a〜4fにより指示される。また、上部旋回体1dには運転室1fが設けられ、操作レバー装置4a〜4fはこの運転室1f内に配置される。
【0023】
以上のような油圧ショベルに本実施形態によるフロント制御装置が設けられている。このフロント制御装置は、領域制限掘削制御の開始を指示する設定器7と、ブーム1a,アーム1b及びバケット1cのそれぞれの回動支点に設けられ、フロント装置1Aの位置と姿勢に関する状態量としてそれぞれの回動角を検出する角度検出器8a,8b,8cと、操作レバー装置4a〜4fからの操作信号S4a〜S4f、設定器7の信号を入力し、流量制御弁5a〜5fに駆動信号(電気信号)を出力する制御ユニット9とを備えている。
【0024】
制御ユニット9は、設定器7によって制御開始が設定されていないときは、操作レバー装置4a〜4fからの操作信号S4a〜S4fに応じた駆動信号(電気信号)を生成し、これを流量制御弁5a〜5fに出力する。また、設定器7によって制御開始が設定されると、ブーム用操作レバー装置4a及びアーム用操作レバー装置4bが操作されていない中立位置にあるときのバケット1cの先端の位置に基づいて、ダイレクトティーチにより、バケット1cの先端が動き得る掘削領域を設定可能とすると共に、操作レバー装置4a,4bからの操作信号S4a,S4bに対し領域制限掘削制御のための補正を行い、その補正した操作信号に応じた駆動信号を生成し、流量制御弁5a,5bに出力する。
【0025】
以下、図3〜図10を用いて、制御ユニット9の操作信号S4a,S4bに係わる部分の機能の詳細について説明する。
制御ユニット9は、図3に示すように、領域設定部90と領域制限掘削制御部92の各機能を有している。領域設定部90は、設定器7からの指示と、ブーム用操作レバー装置4aの操作信号S4aと、アーム用操作レバー装置4bの操作信号S4bに基づいて、バケット1cの先端が動き得る掘削制限領域の設定演算を行うものである。領域制限掘削制御部92は、制御切換部92aと、フロント姿勢演算部92bと、減速・復元制御用補正操作信号演算部92cと、バルブ指令演算部92dとの各機能から構成されている。
【0026】
最初に、領域設定部90の領域設定機能について説明する。なお、本実施形態は、図4に示したX軸に平行に掘削制限領域を設定するものである。
領域設定部90aは、設定器7によって制御開始が設定されて制御開始信号が入力すると、掘削可能領域の境界Lの初期値として、バケットが届かないくらい深い位置の値を設定する。これにより、設定器7による制御開始の設定の直後では、フロント装置1Aはそれが動作し得る範囲で自由に動くことができ、その動作範囲内でダイレクトティーチ若しくは数値入力設定により掘削可能領域を自由に設定することができる。一例として、初期値はY=−20mとしておく。
【0027】
一方、領域制限掘削制御部92の中のフロント姿勢演算部92bは、角度検出器8a〜8cで検出したブーム1a,アーム1b,バケット1cの回動角に基づいてフロント装置1Aのバケットの爪先(先端)の位置を計算する。
【0028】
すなわち、制御ユニット9の記憶装置には、図4に示すようなフロント装置1A及び車体1Bの各部寸法が記憶されており、フロント姿勢演算部92bではこれらのデータと、角度検出器8a,8b,8cで検出した回動角α,β,γの各値を用いてバケット先端の位置を計算する。このとき先端の位置は、例えばブーム1aの回動支点を原点としたXY座標系の座標値(X,Y)として求める。XY座標系は本体1Bに固定した垂直面内にある直行座標系である。ブーム1aの回動支点とアーム1bの回動支点との距離をL1、アーム1bの回動支点とバケット1cの回動支点の距離をL2、バケット1cの回動支点とバケット1cの先端との距離をL3とすれば、回動角α,β,γからXY座標系の座標値(X,Y)は、下記の式より求まる。
X=L1sinα+L2sin(α+β)+L3sin(α+β+γ)
Y=L1cosα+L2con(α+β)+L3cos(α+β+γ)
領域設定演算部90は、ブーム用操作レバー装置4aをブーム下げ方向に動かしたときの操作信号S4a(以下、ブーム下げ信号S4adという)が所定値より小さい時、例えば、ブーム用操作レバー装置4aが中立位置付近にある時、ダイレクトティーチにより、フロント姿勢演算部92bの上記データを利用してバケット1cの先端が動き得る掘削可能領域の設定を行う。即ち、図4において、オペレータの操作レバー装置の操作でバケット1cの先端を目的位置P1に動かした後、ブーム用操作レバー装置4aが中立位置付近になると、領域設定演算部90は、このブーム用操作レバー装置4aのブーム下げ信号S4adにより、その時のフロント姿勢演算部92bで計算されたバケット先端のY座標値の値Y=Y1を用いて、
設定値=Y座標値Y1
と掘削可能領域の境界Lを設定する。
【0029】
ここで、領域設定演算部90の演算処理機能について、図5のフローチャートを用いて説明する。
【0030】
ステップ010において、ブーム下げ信号S4adが、予め設定した所定値S4ad0より小さいか否かを判断する。所定値S4ad0は、ブーム用操作レバー装置4aの不感帯であり、所定値S4ad0より大きい場合にのみ、ブーム用操作レバー装置4aがオペレータにより操作されているものと判断する。
【0031】
ステップ020において、アームクラウド信号S4bcが、予め設定した所定値S4bc0より小さいか否かを判断する。所定値S4bc0は、アーム用操作レバー装置4bの不感帯である。
【0032】
所定値S4bc0より小さい場合、アーム用操作レバー装置4bが中立位置付近にあると判断され、ステップ030において、その時のバケット先端のY座標値の値Y=Y1を用いて、掘削可能領域の境界Lを設定する。
【0033】
ステップ020において、アームクラウド信号S4bcが、予め設定した所定値S4bc0より大きいと判断された場合には、ステップ030において、領域設定の処理は行わなず、前の設定が維持されたままで、始めに戻る。
【0034】
ステップ010において、ブーム下げ信号S4adが、予め設定した所定値S4ad0より大きいと判断されると、ステップ040において、アームクラウド信号S4bcが、予め設定した所定値S4bc0より小さいか否かを判断する。所定値S4ad0は、アーム用操作レバー装置4bの不感帯である。所定値S4bc0より小さい場合には、ステップ050において、設定されている掘削領域を解除するため、掘削領域の境界の直線式を、初期値であるY=−20mとする。
【0035】
また、ステップ040において、アームクラウド信号S4bcが、予め設定した所定値S4bc0より大きい場合には、ステップ020の判断後の処理と同様にして、領域設定の処理は行わず、前の設定が維持されたままで、始めに戻る。
【0036】
図5に示したフローチャートに基づく、領域設定演算部90の演算処理による制御動作について以下に説明する。
最初に、掘削領域の設定動作について説明する。ブーム用操作レバー装置4aを動かしてブーム下げ操作が行われると、ブーム下げ信号S4adは予め設定した所定値S4ad0より大きくなるため、ステップ010→ステップ040→ステップ050と処理が実行され、ステップ050において、掘削領域の境界を初期値であるY=−20mとする。従って、ブームは、ブーム下げ方向に自由に動かすことができる。また、若しくはブーム上げ操作が行われた場合にも、ブームは、ブーム上げ方向に自由に動かすことができる。オペレータがブーム用操作レバー装置4aの操作でバケット1cの先端を目的位置P1に動かした後、ブーム用操作レバー装置4aの操作を止めると、ブーム用操作レバー装置4aは、中立位置付近となる。このとき、ブーム下げ信号S4adは予め設定した所定値S4ad0より小さくなるため、ステップ010→ステップ020→ステップ030と処理が実行され、ステップ030において、その時のフロント姿勢演算部92bで計算されたバケット先端のY座標値の値Y=Y1を用いて、掘削可能領域の境界Lを設定する。
【0037】
次に、掘削領域制限制御による制御動作が行われる場合について説明する。掘削可能領域の境界Lが設定された後、アーム用操作レバー装置4bを操作してアームクラウド動作が単独で行われると、アームクラウド信号S4bcは予め設定した所定値S4bc0より大きくなるため、ステップ010→ステップ020と処理が実行され、ステップ020において、Noと判断されるため、設定が維持される。その結果、アーム用操作レバー装置4bを動かす前の時点でダイレクトティーチにより設定された境界に沿って、バケットの先端が制御され、自動的に領域制限掘削制御を行う。なお、領域制限掘削制御の詳細については、図6を用いて、後述する。
【0038】
また、ブーム下げ動作とアームクラウド動作の複合動作が行われた場合にも、同様にして、掘削領域制限制御による制御動作が行われる。即ち、ブーム下げ動作とアームクラウド動作の複合動作が行われると、ブーム下げ信号S4adは予め設定した所定値S4ad0より大きくなり、アームクラウド信号S4bcは予め設定した所定値S4bc0より大きくなるため、ステップ010→ステップ040と処理が実行され、ステップ040において、Noと判断されるため、設定が維持されて、領域制限掘削制御が行なわれる。
【0039】
以上説明したように、本実施形態においては、ボタン操作を行うことなく、アームクラウド信号が所定地より小さいことを示す操作信号を用いて、掘削可能領域の境界Lを設定している。そして、操作信号を用いて掘削可能領域を設定しても、アームクラウド動作が単独で行われた場合やブーム下げ動作とアームクラウド動作の複合動作が行われると、それらの操作信号に基づいて掘削領域制限制御が行えるものである。よって、ダイレクトティーチにより、所望の掘削領域の設定及び再設定をボタン操作なしで簡単に行えるものとなる。
【0040】
次に、領域制限掘削制御部92の全体の制御機能について、図6に示すフローチャートを用いて説明する。図中、ステップ100,110は、制御切換部92aの機能であり、ステップ115,120は、フロント姿勢演算部92bの機能であり、ステップ125〜150は、減速・復元制御用補正操作信号演算部92cの機能であり、ステップ155は、バルブ指令演算部92dの機能である。
【0041】
ステップ100において、操作レバー装置4a,4bの操作信号S4a,S4bを入力する。
【0042】
次いで、ステップ110において、設定器7による制御開始が設定されているか否かに応じて制御方法を切り換える。設定器7の制御開始スイッチがOFFの場合には、ステップ155において、図3に示した操作レバー装置4a,4bからの操作信号に応じた駆動信号を生成し、流量制御弁5a,5bに出力する。これにより、操作レバー装置4a,4bの操作量に応じた通常の掘削作業が行なわれる。
【0043】
設定器7によって制御開始が設定されている場合には、ステップ110〜150に進み、操作レバー装置4a,4bからの操作信号S4a,S4bを補正する。
【0044】
以下、ステップ115〜150の処理内容について説明する。
ステップ115において、フロント姿勢演算部92bに、角度検出器8a〜8cで検出したブーム1a,アーム1b,バケット1cの回動角を入力する。
【0045】
ステップ120において、検出した回動角α,β,γと予め入力してあるフロント装置1Aの各部寸法とに基づき、フロント装置1Aの所定部位の位置、例えばバケット1cの先端位置を計算する。このときの計算は、上述した掘削領域の設定時におけるバケット先端位置の計算と同じであり、この場合も、バケット先端の位置はXY座標系の値として求める。
【0046】
次に、ステップ125において、フロント装置1A用の操作レバー装置,4bの操作信号S4a,S4bが指令するバケット1cの先端の目標速度ベクトルVcを計算する。ここで、操作レバー装置4a,4bの操作信号S4a,S4bと流量制御弁5a,5bの供給流量との関係及びフロント装置1Aの各部寸法を制御ユニット9の記憶装置に予め記憶しておき、操作レバー装置4a,4bの操作信号S4a,S4bから対応する流量制御弁5a,5bの供給流量を求め、この供給流量の値から油圧シリンダ3a,3bの目標駆動速度を求め、この目標駆動速度とフロント装置1Aの各部寸法を用いてバケット先端の目標速度ベクトルVcを演算する。そして、目標速度ベクトルVcの設定領域の境界に平行な方向のベクトル成分Vcxと垂直な方向のベクトル成分Vcyを求める。ここで、目標速度ベクトルVcのX座標成分Vcxは、目標速度ベクトルVcの設定領域の境界に平行な方向のベクトル成分となり、Y座標成分Vcyは目標速度ベクトルVcの設定領域の境界に垂直な方向のベクトル成分となる。
【0047】
次に、ステップ130において、バケット1cの先端が上記のように設定した図7に示すような設定領域内の境界近傍の領域である減速領域にある場合にあるか否かを判定し、減速領域にある場合には、ステップ135に進みフロント装置1Aの減速を行うよう目標速度ベクトルVcを補正し、減速領域にない時には、ステップ140に進む。
【0048】
ここで、ステップ130における減速領域にあるか否かの判定及びステップ135における減速領域での目標速度ベクトルVcの補正について、図8及び図9を用いて説明する。
【0049】
制御ユニット9の記憶装置には、図7に示すような設定領域の境界とバケット1cの先端との距離D1と減速ベクトル計数hとの関係が記憶されている。この距離D1と計数hとの関係は、距離D1が距離Ya1よりも大きいときはh=0であり、D1がYa1よりも小さくなると、距離D1が減少するにしたがって減速ベクトル計数hが増大し、距離D1=0でh=1となるように設定されている。ここで、設定領域の境界から距離Ya1の範囲が減速領域に相当する。
【0050】
ステップ130では、ステップ120で得たバケット1cの先端位置と設定領域の境界との距離D1を計算し、このD1が距離Ya1より小さくなると、減速領域に侵入したと判定する。
【0051】
また、ステップ135では、ステップ125で計算したバケット1cの先端の目標速度ベクトルVcの設定領域の境界に接近する方向のベクトル成分である設定領域の境界に対し、垂直方向のベクトル成分,すなわち、XY座標系におけるY座標の成分Vcyを減じるように目標速度ベクトルVcを補正する。具体的には、記憶装置に記憶した図8に示す関係からそのときの設定領域の境界とバケット1cの先端との距離D1に対応する減速ベクトル係数hを計算し、この減速ベクトル係数hを目標速度ベクトルVcのYa座標の成分(垂直方向のベクトル成分)Vcyに乗じ、更に−1を乗じて減速ベクトルVR(=−h・Vcy)を求め、VcyにVRを加算する。ここで、減速ベクトルVRはバケット1cの先端と設定領域の境界との距離D1がYa1より小さくなるにしたがって大きくなり、D1=0でVR=VcyとなるVcyの逆方向の速度ベクトルである。このため、減速ベクトルVRを目標速度ベクトルVcの垂直方向のベクトル成分Vcyに加算することにより、距離D1がYa1より小さくなるにしたがって垂直方向のベクトル成分Vcyの減少量が大きくなるようベクトル成分Vcyが減じられ、目標速度ベクトルVcは目標速度ベクトルVcaに補正される。
【0052】
ここで、図9を用いて、バケット1cの先端が上記のような補正後の目標速度ベクトルVcaの通りに減速制御されたときの軌跡の一例を説明する。目標速度ベクトルVcが斜め下方に一定であるときには、その平行成分Vcxは一定となり、垂直成分Vcyはバケット1cの先端が設定領域の境界に近づくにしたがって(距離D1がYa1より小さくなるにしたがって)小さくなる。補正後の目標速度ベクトルVcaはその合成であるので、軌跡は図9に示すように設定領域の境界に近づくにつれて平行となる曲線状となる。また、D1=0でh=1,VR=−Vcyとなるので、設定領域の境界上での補正後の目標速度ベクトルVcaは平行成分Vcxに一致する。
【0053】
このようにステップ135における減速制御では、バケット1cの先端の設定領域の境界に接近する方向の動きが減速されることにより、結果としてバケット1cの先端の移動方向が設定領域の境界に沿った方向に変換され、この意味でステップ135の減速制御は方向変換制御ということもできる。
【0054】
次に、ステップ140において、バケット1cの先端が上記のように設定した図7に示すような設定領域外にある場合か否かを判定し、設定領域外にある場合には、ステップ145に進み、バケット1cの先端が設定領域に戻るように目標速度ベクトルVcを補正し、設定領域外にないときには、ステップ155に進む。
【0055】
ここで、ステップ140における設定領域外にあるか否かの判定及びステップ145における設定領域外での目標速度ベクトルVcの補正について、図10及び図11を用いて説明する。
【0056】
制御ユニット9の記憶装置には、図10に示すような設定領域の境界とバケット1cの先端との距離D2の絶対値と復元ベクトルARとの関係が記憶されている。この距離D2の絶対値と復元ベクトルARとの関係は、距離D2の絶対値が減少するにしたがって復元ベクトルARが増大するように設定されている。
【0057】
ステップ140においては、ステップ120で得たバケット1cの先端位置と設定領域の境界との距離D2を計算し、この距離が負の値になったら設定領域外に侵入したと判断する。
【0058】
また、ステップ145では、ステップ125で計算したバケット1cの先端の目標速度ベクトルVcの設定領域の境界に対し垂直方向のベクトル成分,すなわち、XY座標系のY座標の成分Vcyが設定領域の境界に接近する方向の垂直成分に変わるよう目標速度ベクトルVcを補正する。具体的には、垂直方向のベクトル成分VcyをキャンセルするようにVcyの逆方向ベクトルAcyを加算して、平行成分Vcxを抽出する。この補正によってバケット1cの先端は設定領域外を更に進もうとする動作が阻止される。
【0059】
そして、次に、記憶装置に記憶した図10に示す関係からそのときの設定領域の境界とバケット1cの先端との距離D2の絶対値に相当する復元ベクトルARを計算し、この復元ベクトルARを目標速度ベクトルVc垂直方向のベクトル成分Vcyに更に加算する。ここで、復元ベクトルARは、バケット1cの先端と設定領域の境界との距離D2が小さくなるにしたがって小さくなる逆方向の速度ベクトルである。このため、復元ベクトルARを目標速度ベクトルVcの垂直方向のベクトル成分Vcyに加算することにより、距離D2が小さくなるにしたがって垂直方向のベクトル成分Vcyが小さくなるよう、目標速度ベクトルVcは目標速度ベクトルVcaに補正される。
【0060】
ここで、図11を用いて、バケット1cの先端が上記のような補正後の目標速度ベクトルVcaの通りに復元制御されたときの軌跡の一例について説明する。目標速度ベクトルVcが斜め下方に一定であるときには、その平行成分Vcxは一定となり、また復元ベクトルARは距離D2に比例するので、垂直成分はバケット1cの先端が設定領域の境界に近づくにしたがって(距離D2が小さくなるにしたがって)小さくなる。補正後の目標速度ベクトルVcaはその合成であるので、軌跡は図11のように設定領域の境界に近づくにつれて平行となる曲線状となる。
【0061】
このように、ステップ145における復元制御では、バケット1cの先端が設定領域に戻るように制御されるため、設定領域外に復元領域が得られることになる。また、この復元制御でも、バケット1cの先端の設定領域の境界に接近する方向の動きが減速されることにより、結果としてバケット1cの先端の移動方向が設定領域の境界に沿った方向に変換され、この意味でこの復元制御も方向変換制御ということができる。
【0062】
次に、ステップ150において、ステップ135または145で得た補正後の目標速度ベクトルVcaに対応する流量制御弁5a〜5cの操作信号を計算する。これは、ステップ125における目標速度ベクトルVcの計算の逆演算である。
そして、ステップ155において、ステップ150で計算した操作信号に応じた駆動信号を生成し、流量制御弁5a,5bを出力し、はじめに戻る。
領域制限掘削制御を終了させる場合は、設定器7による制御開始指令を解除する。
【0063】
以上のように構成した本実施形態によれば、ブーム用操作レバー装置4aをブーム下げ方向に動かし、所望の位置で停止させると、図5に示すステップ010→ステップ020→ステップ030と処理が実行され、ステップ030において、その時のバケットの先端の座標からダイレクトティーチにより掘削領域を容易に設定される。
【0064】
その後、アーム用操作レバー装置4bをアームクラウド方向に操作すると、その前の設定が維持されるので、設定領域内で、領域制限掘削制御を行うことができる。これにより、操作レバー一本で均し掘削作業,法面掘削作業を行うことができる。
【0065】
また、ブーム用操作レバー装置4aをブーム下げ方向に操作し、かつ、同時に、アーム用操作レバー装置4bをアームクラウド方向に操作した場合にも、同様に領域制限掘削制御が実行される。これにより、従来、均し掘削作業や法面掘削作業を行う場合のブーム下げとアームクラウドの複合動作と同様の操作により、領域制限掘削制御で均し掘削,法面掘削を行うことができる。
【0066】
従って、従来のように、掘削領域の再設定のために、設定済みの領域を解除するボタン操作と、新たな領域を設定するボタン操作の2回のボタン操作を行う必要がなくなり、操作レバー装置の操作信号を用いて、ダイレクトティーチにより掘削領域の設定及び再設定が簡単に行える。
【0067】
また、領域制限掘削制御に際しては、バケット1cの先端が設定領域の境界から離れているときは、目標速度ベクトルVcは補正されず、通常作業と同じように作業できるとともに、バケット1cの先端が設定領域内でその境界近傍に近づくと、目標速度ベクトルVcの設定領域の境界に接近する方向のベクトル成分(境界に対して垂直方向のベクトル成分)を減じるように補正されるので、設定領域の境界に対して垂直方向の動きが減速制御され、設定領域の境界に沿った方向の速度成分は減じられ、このため図9に示すように設定領域の境界に沿ってバケット1cの先端を動かすことができる。このため、バケット1cの先端の動き得る領域を制限した掘削を効率良く行うことができる。
【0068】
次に、本発明の第2の実施形態について、図12を用いて説明する。
本実施形態においては、さらに、アームダンプ動作の有無に基づいて、ダイレクトティーチによる掘削領域の設定及び再設定を行ったり、設定の解除を行うようにしている。
【0069】
本実施形態に用いるフロント制御装置及びその油圧駆動装置の構成は、図1に示したものと同様である。また、制御ユニット9の構成は、図4に示したものと同様であり、さらに、領域設定演算部90は、アーム用操作レバー装置4bからのアームダンプ信号S4bdに基づいて、領域設定の演算を行うようにしている。
【0070】
ここで、領域設定演算部90の演算処理機能について、図12のフローチャートを用いて説明する。このフローチャートにおいて、図5に示したフローチャートと特に異なるのは、ステップ010とステップ020の間に追加されたステップ060であるので、主として、このステップ060における処理について説明する。
【0071】
ステップ060において、アームダンプ信号Sbdが、予め設定した所定値Sbd0よりも小さいか否かが判断される。所定値S4bd0は、アーム用操作レバー装置4bの不感帯である。
【0072】
ここで、図12に示したフローチャートに基づく、領域設定演算部90の演算処理に基づく制御動作について以下に説明する。図5に示した制御動作に加えて次の動作が行われる。
【0073】
アーム用操作レバー装置4bを動かしてアームダンプ操作が行われると、アームダンプ信号Sbdが、予め設定した所定値Sbd0よりも大きくなるため、ステップ010→ステップ060→ステップ050と処理が実行され、ステップ050において、掘削領域の境界を初期値であるY=−20mとする。
【0074】
従って、アームクラウド動作による領域制限掘削制御後、アームダンプ動作によりバケット先端を掘削開始位置に戻すとき、設定領域は解除されるためバケットの先端は自由に動かすことができる。ここで、アームダンプ動作を行ったとき、設定領域を解除しないと、アームダンプ動作時にも、領域制限掘削制御が実行されているため、アームやブームが不自然に動いてしまうこととなる。それに対して、設定の動作だけでなく、制御に係わらない動作時にも制御に入らず、不自然な動きをしないようにする。
【0075】
以上説明したように、本実施形態おいては、さらに、アームダンプ動作時のアームやブームの不自然な動きを回避することができる。
【0076】
次に、本発明の第3の実施形態について、図13を用いて説明する。
本実施形態においては、さらに、アーム用操作レバー装置が操作されておらず、中立位置付近にある時間が所定時間Tを経過した場合にのみ、ダイレクトティーチによる掘削領域の設定を行うようにしている。所定時間Tが経過しない場合には、前の設定がそのまま維持されるようにしている。
【0077】
本実施形態に用いるフロント制御装置及びその油圧駆動装置の構成は、図1に示したものと同様である。また、制御ユニット9の構成は、図4に示したものと同様であり、さらに、領域設定演算部90は、アーム用操作レバー装置4bからのアームダンプ信号S4bdに基づいて、領域設定の演算を行うようにしている。
【0078】
ここで、領域設定演算部90の演算処理機能について、図13のフローチャートを用いて説明する。このフローチャートにおいて、図12に示したフローチャートと特に異なるのは、ステップ020とステップ030の間に追加されたステップ070であるので、主として、このステップ070における処理について説明する。
【0079】
ステップ070において、所定時間Tが経過したか否かを判断する。ここで、所定時間Tとしては、例えば、2秒とする。所定時間Tが経過した場合には、ステップ030において、その時のバケット先端のY座標値の値Y=Y1を用いて、掘削可能領域の境界Lを設定する。所定時間T以上継続しなかった場合には、設定が維持される。
【0080】
ここで、図13に示したフローチャートに基づく、領域設定演算部90の演算処理による制御動作について以下に説明する。
【0081】
アーム用操作レバー装置4bを操作してアームクラウド動作が単独で行われると、アームクラウド信号S4bcは予め設定した所定値S4bc0より大きくなるため、ステップ010→ステップ060→ステップ020と処理が実行され、ステップ020において、Noと判断されるため、設定が維持される。その結果、アーム用操作レバー装置4bを動かす前の時点でダイレクトティーチにより設定された境界に沿って、バケットの先端が制御され、自動的に領域制限掘削制御が行われる。
【0082】
アームクラウド動作の途中でアームクラウド動作を中断すると、アームクラウド信号S4bcは予め設定した所定値S4bc0より小さくなるため、ステップ010→ステップ060→ステップ020→ステップ070と処理が実行され、ステップ070において、アームクラウド動作の中断時間が所定時間Tよりも短い場合には、Noと判断されるため、設定が維持される。
【0083】
その後、アームクラウド動作を再開すると、アームクラウド信号S4bcは予め設定した所定値S4bc0より大きくなるため、ステップ010→ステップ060→ステップ020と処理が実行され、ステップ020において、Noと判断されるため、設定が維持される。従って、アームクラウド動作を中断しても、その中断時間が短い場合には、設定は変わらず、維持されることになる。
【0084】
アーム用操作レバー装置が中立になったときに掘削制限領域を設定するようにしていると、領域制限掘削制御中にアームクラウド操作を中断した場合に、新たに中断したときのバケット先端位置で設定されることになり、その後、アームクラウドを再操作すると、設定が変わることになる。それに対して、本実施形態では、領域制限掘削制御中にアームクラウド操作を中断しても、中断時間が短い場合には、アームクラウドの再操作時に、前と同じ設定で連続して掘削できるようになる。
【0085】
次に、本発明の第4の実施形態について、図14を用いて説明する。
本実施形態においては、さらに、アームダンプ動作が行われた場合にも、設定を維持するようにしている。
【0086】
本実施形態に用いるフロント制御装置及びその油圧駆動装置の構成は、図1に示したものと同様である。また、制御ユニット9の構成は、図4に示したものと同様であり、さらに、領域設定演算部90は、アーム用操作レバー装置4bからのアームダンプ信号S4bdに基づいて、設定を維持するようにしている。
【0087】
ここで、領域設定演算部90の演算処理機能について、図14のフローチャートを用いて説明する。このフローチャートにおいて、図5に示したフローチャートと特に異なるのは、ステップ010とステップ020の間に追加されたステップ060及びステップ040とステップ050の間に追加されたステップ080であるので、主として、このステップ060,080における処理について説明する。
【0088】
ステップ060において、アームダンプ信号Sbdが、予め設定した所定値Sbd0よりも小さいか否かが判断される。所定値S4bd0は、アーム用操作レバー装置4bの不感帯である。また、同様にして、ステップ080において、アームダンプ信号Sbdが、予め設定した所定値Sbd0よりも小さいか否かが判断される。アームダンプ信号Sbdが、予め設定した所定値Sbd0よりも大きい場合には、領域設定の処理は行わず、前の設定が維持されたままで、始めに戻る。
【0089】
ここで、図14に示したフローチャートに基づく、領域設定演算部90の演算処理による制御動作について以下に説明する。図5に示した制御動作に加えて次の動作が行われる。
【0090】
アーム用操作レバー装置4bを単独で動かしてアームダンプ操作が行われると、アームダンプ信号Sbdが、予め設定した所定値Sbd0よりも大きくなるため、ステップ010→ステップ060と処理が実行され、ステップ060でNoと判断されるため、設定が維持される。その結果、アーム用操作レバー装置4bを動かす前の時点でダイレクトティーチにより設定された境界に沿って、バケットの先端が制御され、自動的に領域制限掘削制御が行なわれる。
【0091】
また、ブーム下げ動作とアームダンプ動作の複合動作が行われた場合にも、同様にして、掘削領域制限制御による制御動作が行われる。即ち、ブーム下げ動作とアームダンプ動作の複合動作が行われると、ブーム下げ信号S4adは予め設定した所定値S4ad0より大きくなり、アームダンプ信号S4bdは予め設定した所定値S4bd0より大きくなるため、ステップ010→ステップ040→ステップ080と処理が実行され、ステップ080において、Noと判断されるため、設定が維持されて、領域制限掘削制御が行なわれる。
【0092】
以上説明したように、本実施形態においては、アームダンプ動作が単独で行われた場合やブーム下げ動作とアームダンプ動作の複合動作が行われた場合にも、それらの操作信号に基づいて掘削領域制限制御が行えるものである。
【0093】
なお、本発明にかかるフロント制御装置は、上述の各実施形態に限定されず、種々の変形が可能である。一例として、本実施形態では操作レバーは電気レバーとしたが、油圧パイロットレバーでもよい。また、フロント装置1Aの位置と姿勢に関する状態量を検出する手段として回動角を検出する角度計を用いたが、シリンダのストロークを検出してもよい。
【0094】
【発明の効果】
本発明によれば、ダイレクトティーチにより、所望の掘削領域の設定及び再設定をボタン操作なしで簡単に行える。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の1実施形態による建設機械のフロント制御装置をその油圧駆動装置と共に示す図である。
【図2】本発明が適用される油圧ショベルの外観の形状を示す図である。
【図3】制御ユニットの制御機能を示す機能ブロック図である。
【図4】本実施形態の領域制限掘削制御で用いる座標系と掘削領域の設定方法を示す図である。
【図5】アームクラウド操作によって掘削領域を設定する演算内容を説明するフローチャートである。
【図6】制御ユニットにおける制御手順を示すフローチャートである。
【図7】バケット先端が設定領域内にある場合と、設定領域の境界上にある場合と、設定領域外にある場合のブームによるバケット先端速度の補正動作の違いを示す図である。
【図8】バケットの先端と設定領域の境界との距離と減速ベクトルとの関係を示す図である。
【図9】バケット先端が設定領域内にあるときの補正動作軌跡の一例を示す図である。
【図10】バケットの先端と設定領域の境界との距離と復元ベクトルとの関係を示す図である。
【図11】バケットの先端が設定領域外にあるときの補正動作軌跡の一例を示す図である。
【図12】本発明の第2の実施形態におけるアームダンプ操作によって掘削領域の設定を解除する演算内容を説明するフローチャートである。
【図13】本発明の第3の実施形態におけるアーム用操作レバーが所定時間中立位置にあるときに掘削領域を設定する演算内容を説明するフローチャートである。
【図14】本発明の第4の実施形態におけるアームダンプ操作によって掘削領域の設定を維持したまま、領域制限掘削制御を行う演算内容を説明するフローチャートである。
【符号の説明】
1A フロント装置
1B 車体
1a ブーム
1b アーム
1c バケット
2 油圧ポンプ
3a〜3f 油圧アクチュエータ
4a〜4f 操作レバー装置
5a〜5f 流量制御弁
6 リリーフ弁
7 設定器
8a,8b,8c 角度検出器
9 制御ユニット
90 領域設定部
92 領域制限掘削制御部
92a 制御切換部
92b フロント姿勢演算部
92c 減速・復元制御用補正操作信号演算部
92d バルブ指令演算部

Claims (4)

  1. 上下方向に回動可能なブーム、アーム、バケットからなる複数のフロント部材により構成される多関節型のフロント装置と、前記複数のフロント部材を駆動する複数の油圧アクチュエータと、複数の操作レバー手段からの操作信号により駆動され、前記複数の油圧アクチュエータに供給される圧油の流量を制御する複数の油圧制御弁とを有する建設機械に備えられ、前記フロント装置の各回転角に基づいてフロント装置の姿勢を演算するフロント姿勢演算部と、前記フロント姿勢演算部からのフロント姿勢演算値を制御して前記フロント装置が設定された掘削領域内を動くようにそのバケットの動きを制御する領域制限掘削制御部と、前記領域制限掘削制御部による領域制限掘削と前記操作レバーによる掘削との制御開始を選択する設定器と、前記設定器からの制御開始指令があり、ブーム操作用の操作レバー手段からのブーム下げ操作信号及びアーム操作用の操作レバー手段からのアームクラウド操作信号が中立信号である場合には、フロント装置におけるバケット先端の位置を、ダイレクトティーチにおける掘削領域の設定値として前記領域制限掘削制御部に出力し、ブーム操作用の操作レバー手段からのブーム下げ操作信号があり、又は中立のとき、アーム操作用の操作レバー手段からのアームクラウド操作信号がある場合には、前記ダイレクトティーチによる設定値を維持する領域設定演算部とを備えたことを特徴とする建設機械のフロント制御装置。
  2. 前記領域設定演算部は、前記設定器からの制御開始指令があり、ブーム操作用の操作レバー手段からのブーム下げ操作信号があり、アーム操作用の操作レバー手段からのアームクラウド操作信号が中立信号である場合には、前記領域制限掘削制御部に設定した掘削領域の設定値を、初期値に設定変更する指令を出力することを特徴とする請求項1に記載の建設機械のフロント制御装置。
  3. 前記領域設定演算部は、前記設定器からの制御開始指令があり、ブーム操作用の操作レバー手段からのブーム下げ操作信号が中立信号で、アームダンプ操作信号がある場合には、前記領域制限掘削制御部に設定した掘削領域の設定値を初期値に設定変更する指令を出力することを特徴とする請求項1又は2に記載の建設機械のフロント制御装置。
  4. 前記領域設定演算部は、前記アームクラウド操作の中断が所定時間以上継続した場合のみ、前記掘削領域の設定を行うことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の建設機械のフロント制御装置。
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