JP3711914B2 - 靭性に優れる鋳造用アルミニウム合金 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、鋳造後に熱処理することなく高強度、高靭性を得ることができ、鋳造性に優れた鋳造用アルミニウム合金に関する。
【0002】
自動車の軽量化のために車体部品にアルミニウム合金鋳物が使用されるようになってきた。鋳造用のアルミニウム合金としては、鋳造性に優れたAl−Si系アルミニウム合金が用いられてきた。ところで、このようなアルミニウム合金を使用する場合、強度を出すために鋳造後に溶体化処理や焼入れ等の熱処理を行う必要がある。このため肉厚の薄い部品の場合、焼入れ時に製品が変形することがある。
そこで、熱処理を行わなくても高強度が得られるAl−Mg系のアルミニウム合金が使用されるようになった。本願出願人等も特願2001−238947号で、鋳造性に優れたAl−Mg系アルミニウム合金を提案している。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
近年、衝突事故時の安全性確保のために、自動車の車体部品に衝撃吸収能を持たせるべく、部品材料により高い靭性が求められるようになってきている。しかし、Al−Si系アルミニウム合金の場合、靭性を低下させるSi系の化合物が晶出されやすいため、靭性を向上させるには限界があった。
また、非熱処理型のAl−Mg系アルミニウム合金も、複雑な形状品を鋳造する場合にはSiを添加することが有効である。しかし、このSi添加のために靭性向上には限界があった。このように、鋳造性を保ちながら、靭性を高めることは難しかった。
そこで、本発明は、非熱処理型のAl−Mg系アルミニウム合金であって、鋳造性に優れ、かつより靭性の高い鋳造用合金を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明の靭性に優れる鋳造用アルミニウム合金は、その目的を達成するため、Mg:2.0〜9.0質量%,Si:0.1〜5.0質量%,Bi:0.05〜1.0質量%,Fe:1.0質量%以下を含み、残部がAl及び不可避的不純物からなることを特徴とする。
さらにMn:0.3〜1.5質量%,Ti:0.01〜0.2質量%およびB:0.0005〜0.05質量%のいずれか1種以上を含むこともできる。
【0005】
【作用】
本発明者等は、Al−Mg系鋳造用アルミニウム合金の靭性低下の原因について調査した。その結果、鋳造時に晶出するMg−Si系晶出物が粗大化し易いことが原因であること、および、靭性の向上にはこのMg−Si系晶出物を微細化すればよいことがわかった。
本発明者等はさらに検討を重ねた結果、Biを添加することにより、Mg−Si系晶出物を微細化できることを確認した。
図1、図2に、Al−5%Mg−1.6%Si−0.8%Mn合金の鋳物組織を示す。図1がBi無添加のもの、図2がBiを0.1%添加したものである。
α相についての差はないが、Bi含有の有無によりα相粒界に晶出している共晶組織が全く異なっていることがわかる。すなわち、Bi無添加のものでは針状の大きな共晶組織が見られるが、Biを含有させると微細な共晶組織となっている。これにより靭性を高めることができたと推測される。
【0006】
本発明においては、鋳造性、強度、靭性の観点から、次のような合金設計を採用している。
Mg:2.0〜9.0質量%
Mgはアルミニウム合金のマトリックス中に固溶するとともに、共存するSiとともにMgSi系晶出物を形成し、強度を向上させる元素である。含有量が2.0%に満たないと強度向上の効果は小さく、9.0%を超えると応力腐食割れが発生し易くなる。
【0007】
Si:0.1〜5.0質量%
Siは、鋳造性を向上させる。またMgとMgSi系晶出物を形成して強度を向上させる合金成分であり、0.1%以上の含有量でそれらの効果が顕著になる。しかし、5.0%を超える過剰量のSiが含まれると、Si系化合物が多量にできるので、靭性の低下が著しくなる。
【0008】
Bi:0.05〜1.0質量%
BiはMgSi系晶出物を微細化し、合金の靭性を向上させる作用を有している。含有量が0.05%に満たないとその効果は十分でなく、1.0%まで含有させても靭性向上作用を有している。しかし、靭性向上に関しては0.5%程度で飽和し、それ以上含有させてもさらなる効果は期待できない。Bi含有量が多くなるとBi系化合物が形成され、耐食性やアルマイト性が低下するので、0.5%以下に留めることが好ましい。
【0009】
Fe:1.0質量%以下
金型への焼付き防止とマトリックス相への固溶および晶出物の形成により強度向上に有効な合金成分である。特にダイカスト時に、Feの含有により金型への焼付きを防止する作用を有しているので0.1%以上含有させることが好ましい。しかし多量の含有が、Fe系晶出物の晶出を招き、靭性低下に繋がるので含有させる場合も1.0%以下にする。
【0010】
Mn:0.3〜1.5質量%
Mnは凝固中にAl6Mnを晶出することにより、高温強度を向上させ、ダイカスト後の製品取り出し時における製品の変形を抑制すると同時に金型への焼付きを防止する作用を有する元素である。また針状のFe系晶出物を粒状化させ、靭性低下を防ぐ作用をも有している。これらの作用を発現させるためには0.3%の含有が必要であり、また逆に1.5%を超えて多く含有させると粗大なMn系晶出物が晶出し、靭性を低下させることになる。
したがって、Mnを含有させる場合は、0.3〜1.5質量%の範囲にするべきである。
【0011】
Ti:0.01〜0.2質量%、B:0.0005〜0.05質量%
Ti,BあるいはTiとBは、初晶α(Al)相を微細化し、鋳物の機械的性質を向上させるのに有効な元素である。このような作用は0.01%以上のTiあるいは0.0005%以上のB添加で顕著になるが、0.2%を超えるTiまたは0.05%を超えるBが添加されると、粗大な化合物が形成され、靭性を低下させる。
【0012】
本発明の鋳造用アルミニウム合金は、基本的には以上に掲げた合金成分を含有するものであるが、製造過程で不可避的に混入した微量のZr、V,Mn,Cr,Zn等の含有を排除するものではない。
本発明の鋳造用アルミニウム合金は、上記したような合金設計を採用することにより、鋳造性を確保しながら、鋳造後、熱処理を施さなくても機械的特性、特に靭性を高めることができる。しかしながら、さらなる高強度が要求される場合や、強度と伸びのバランスの改良が要求される場合には、本発明に係る合金を鋳造した後、安定化処理や時効処理を施すこともできる。
【0013】
【実施例】
実施例1
Al−5%Mg−2%Si−0.15%Fe合金にBiを0.1%ずつ変化させて添加した合金を溶製し、JIS4号の舟型に重力鋳造法で鋳造し、得られた鋳物品から熱処理を施すことなく、JIS14Aの引張り試験片を切り出し、機械的強度と伸びを測定した。その結果を表1に示す。
【0014】
【0015】
実施例2
Al−5%Mg−2%Si−0.15%Fe−0.8%Mn−0.02%Ti−0.0007%B合金にBiを0.1%ずつ変化させて添加した合金を溶製し、ダイカスト法で板厚3mmの平板に鋳造し、得られた鋳物品から熱処理を施すことなく、JIS14Bの引張り試験片を切り出し、機械的強度と伸びを測定した。その結果を表2に示す。
【0016】
【0017】
表1、2の結果およびそれらをグラフ化した図3、4からわかるように、いずれの鋳造品も、Bi添加量が増加しても引張り強度、0.2%耐力はほとんど変化していないが、伸びはBi量の増加とともに向上している。
このことから、鋳造用のAl−Mg系アルミニウム合金において、Bi添加により靭性が向上していることがうかがえる。
【0018】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明の鋳物用アルミニウム合金は、Al−Mg系アルミニウム合金においてBiを添加することにより、鋳造時に晶出するMg−Si系晶出物を微細化し、鋳造性を保ちながら靭性を高めることができた。
本発明により、熱処理を必要としないAl−Mg系アルミニウム合金鋳物の靭性をも向上することができるので、衝撃吸収特性が要求させるような自動車用鋳物部品として、高品質のものを低コストで供給することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】 Bi無添加合金の鋳物断面の顕微鏡組織で、(a)は鋳造組織を、(b)はα相の拡大組織を、さらに(c)は共晶部分の拡大組織を示す
【図2】 0.1質量%Bi添加合金の鋳物断面の顕微鏡組織で、(a)は鋳造組織を、(b)はα相の拡大組織を、さらに(c)は共晶部分の拡大組織を示す
【図3】 Al−5%Mg−2%Si−0.15%Fe合金鋳物にBiを添加した際の、Bi添加量と機械的特性の関係を示すグラフ
【図4】 Al−5%Mg−2%Si−0.15%Fe−0.8%Mn−0.02%Ti−0.0007%B合金鋳物にBiを添加した際の、Bi添加量と機械的特性の関係を示すグラフ
Claims (2)
- Mg:2.0〜9.0質量%,Si:0.1〜5.0質量%,Bi:0.05〜1.0質量%,Fe:1.0質量%以下を含み、残部がAl及び不可避的不純物からなることを特徴とする靭性に優れる鋳造用アルミニウム合金。
- さらに、Mn:0.3〜1.5質量%,Ti:0.01〜0.2質量%およびB:0.0005〜0.05質量%のいずれか1種以上を含むものである請求項1に記載の靭性に優れる鋳造用アルミニウム合金。
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