JP3710360B2 - スパイラルタップおよびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はスパイラルタップおよびその製造方法に係り、特に、折損や刃欠けを抑制して工具寿命を向上させる技術に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
外周部に雄ねじが設けられるとともに、その雄ねじを分断するように軸方向に設けられた溝に沿って切れ刃が形成されているタップが広く知られている。このようなタップは、ねじ山の高さが略一定の完全山部と、その完全山部から先端側へ向かうに従って徐々に小径になる食付き部とを備えており、リード送りされることにより食付き部側から下穴内に食い込み、主として食付き部の切れ刃で雌ねじが切削加工されるとともに、完全山部はリード送りのガイドとして作用する。また、止り穴用のものは、例えば特許第2813173号公報に記載されているように、雄ねじのねじれ方向と同じ方向へねじれたねじれ溝が設けられ、食付き部で発生した切り屑がシャンク側へ排出されるようになっている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
このようなねじれ溝が設けられたスパイラルタップは、溝幅が広い方が切り屑の排出性が高くなるが、溝幅が広くなると一般に溝の曲率半径が大きくなるため、切り屑のカールが大きく(巻き難く)なり、噛み込み易くなって刃欠けなどを生じ易くなる。また、ねじれ溝は一定の溝幅で設けられており、切れ刃と反対のヒール側の開口端縁も同じリードでねじれているため、逆転時に切り屑の噛込みなどでヒールが欠け易い。また、ねじれ溝が全長に亘ってねじれているため、冷却潤滑油剤が食付き部に達するまでの距離が長く、十分な潤滑作用が得られなくて切れ刃が摩耗し易い場合がある。
【0004】
本発明は以上の事情を背景として為されたもので、その目的とするところは、切り屑をシャンク側へ排出するスパイラルタップにおいて、切り屑詰まりや噛込みなどによる折損や欠けを抑制して工具寿命を向上させることにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
かかる目的を達成するために、第1発明は、外周部に雄ねじが設けられるとともに、その雄ねじを分断するように軸方向に設けられた溝に沿って切れ刃が形成されているタップにおいて、(a) 完全山部における前記溝のねじれ角は0°で、且つ一定の溝幅で形成されているが、(b) 食付き部における前記溝の前記切れ刃側の開口端縁のねじれ角は、前記雄ねじのねじれ方向を正として0°より大きく、且つその切れ刃と反対のヒール側の開口端縁のねじれ角は0°で、工具先端側へ向かうに従って溝幅が狭くなっているとともに、溝底の曲率半径が前記完全山部よりも小さいことを特徴とする。
【0006】
第2発明は、第1発明のスパイラルタップにおいて、(a) 前記食付き部における前記溝の前記切れ刃側の開口端縁のねじれ角は25°〜50°の範囲内で、(b) 前記食付き部における前記切れ刃の軸心に対して直角な断面のすくい角θ1 は0°〜10°の範囲内で、前記完全山部におけるその切れ刃の軸心に対して直角な断面のすくい角θ2 は、そのすくい角θ1 よりも10°以上小さく、(c) 前記雄ねじの外径をDとした時、溝底径は0.2D〜0.5Dの範囲内であることを特徴とする。
【0007】
第3発明は、第1発明または第2発明のスパイラルタップの製造方法であって、(a) 円板形状の研削砥石を、その回転中心線が前記食付き部に形成すべき前記溝の前記切れ刃側の開口端縁に対して略垂直になる一定の姿勢に維持したまま、(a-1) タップ素材を、前記食付き部における前記溝の前記切れ刃側の開口端縁のねじれ角に対応して軸心まわりに回転させつつ軸方向へ相対移動させることにより、該研削砥石の外周面を主体として該食付き部に前記溝を研削加工する食付き部研削工程と、(a-2) その食付き部研削工程の前または後に、前記タップ素材を軸心まわりに回転させることなく軸方向へ相対移動させることにより、前記研削砥石の一方の側面を主体としてその完全山部に前記溝を研削加工するとともに、前記食付き部の溝のヒール側部分を研削加工する完全山部研削工程と、を実施することを特徴とする。
【0009】
【発明の効果】
第1発明のスパイラルタップにおいては、完全山部では溝のねじれ角が0°で且つ一定の溝幅で形成されているが、食付き部では切れ刃側の開口端縁のねじれ角が雄ねじのねじれ方向を正として0°より大きく、且つヒール側の開口端縁のねじれ角が0°で、工具先端側へ向かうに従って溝幅が狭くなっているため、食付き部で発生した切り屑はシャンク側へ排出される。
【0010】
ここで、完全山部では溝幅が広いため、切り屑が良好に排出されて切り屑詰まりによる折損が抑制されるとともに、溝幅が広くなると一般に切れ刃のすくい角は小さくなるため、切り屑の噛込みなどに起因する切れ刃の欠けが抑制される。完全山部は、主としてリード送りのガイドとして機能し、切削作用は必要ないため、切れ刃のすくい角が例えば負であっても差し支えないのである。但し、第1完全山の切れ刃は、食付き部の切れ刃と同様に構成される。
【0011】
また、完全山部では溝のねじれ角が0°であるため、切り屑の噛込みによる刃欠けが更に効果的に抑制されるとともに、切れ刃と反対のヒール側の開口端縁のねじれ角も0°であるため、逆転時に切り屑の噛込みなどに起因するヒールの欠けも抑制される。更に、完全山部における溝のねじれ角が0°であると、冷却潤滑油剤が食付き部に達するまでの距離が短くなるため、食付き部の切れ刃が良好に潤滑されて摩耗が抑制され、寿命が向上する。
【0012】
一方、食付き部では、切れ刃側の開口端縁のねじれ角が0°より大きくされて溝幅が狭くなっているとともに、溝底の曲率半径が完全山部よりも小さくされているため、軸心に対して直角な断面における切れ刃のすくい角が大きくなって良好な切削作用が得られるとともに、切り屑が良好にカールさせられて食付き部や完全山部における切り屑の噛込みが抑制される。切れ刃と反対のヒール側の開口端縁のねじれ角は完全山部と同様に0°であるため、逆転時に切り屑の噛込みなどに起因するヒールの欠けが抑制される。
【0013】
また、食付き部では、溝幅が狭くなるのに対応してランドの幅が広くなるため、完全山部が螺合する前の食付き初期からリード送りの自己案内作用が良好に得られるようになり、雌ねじの加工精度が向上するとともに、完全山部ではランドの幅が狭いため摩擦が軽減される。
【0014】
第2発明は、上記溝のねじれ角や切れ刃のすくい角、溝底径を具体的に規定したもので、上記第1発明の効果を良好に享受できる。
【0015】
第3発明は、第1発明、第2発明のスパイラルタップを好適に製造できる製造方法に関するもので、研削砥石の姿勢を一定に維持したまま、食付き部に溝を研削加工する食付き部研削工程および完全山部に溝を研削加工する完全山部研削工程が行われるため、それ等の研削工程を連続して行うことが可能で、ねじれ角が変化している一連の溝を簡単に加工できる。また、食付き部研削工程では研削砥石の外周面を主体として研削加工が行われ、完全山部研削工程では研削砥石の一方の側面を主体として研削加工が行われるため、溝の断面形状が変化し、完全山部研削工程で研削加工される完全山部の溝の溝幅が、食付き部研削工程で研削加工される食付き部の溝の溝幅よりも大きくなり、ねじれ角と共に溝幅が変化している第1発明、第2発明のスパイラルタップを好適に製造できる。第1発明、第2発明のスパイラルタップは、食付き部の切れ刃側ではねじれ角が大きく、切れ刃と反対のヒール側のねじれ角は0°であるが、研削砥石は食付き部の溝の切れ刃側の開口端縁に対応して傾斜させられているため、食付き部の溝のヒール側が完全山部研削工程で研削加工される。
【0016】
また、完全山部における溝のねじれ角が0°で、完全山部研削工程ではタップ素材を軸心まわりに回転させることなく軸方向へ相対移動させれば良く、スパイラルタップを一層簡単に製造できる。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明のスパイラルタップは、止り穴に雌ねじを切削加工する場合に好適に用いられるが、通り穴に雌ねじを加工する場合にも利用できる。タップの材質は、超硬合金や高速度工具鋼が好適に用いられるが、その他の工具材料を採用することもできる。
【0018】
溝数が増えるとチップルーム(溝の断面積)が小さくなるため、溝数が2の2枚刃のスパイラルタップが好適に採用されるが、例えば加工すべき雌ねじの径寸方が6mmより大きい場合など、3枚刃以上のスパイラルタップに適用することも可能である。
【0020】
第2発明のねじれ角やすくい角、溝底径の要件は、あくまでも好適な一実施態様で、第1発明の実施に際しては、第2発明の要件から外れていても良いし、第2発明の一部の要件だけを満たすものでも良い。基本的には、工具の材質や被削材の材質、雌ねじの諸元などに応じて適宜設定される。また、食付き部におけるねじれ角の要件を満たす溝が、完全山部に僅か(ねじ山の数ピッチ分)に侵入していても差し支えない。
【0021】
第3発明は、第1発明や第2発明のスパイラルタップを好適に製造できる製造方法の一例で、完全山部と食付き部とで異なる工具を用いて溝加工を行うなど、その他の製造方法で第1発明、第2発明のスパイラルタップを製造することも可能であり、完全山部における溝底形状を軸心と略平行な平坦面にすることもできる。
【0022】
第3発明では、円板形状の研削砥石の回転中心線が食付き部における溝の切れ刃側の開口端縁に対して略垂直になる姿勢で配置され、溝の切れ刃側の開口端縁に対して完全に垂直であれば、食付き部には研削砥石の外周部の断面と同一の断面形状の溝が加工される一方、多少傾斜している場合は研削砥石の干渉切削で外周部の断面よりも大きな断面形状の溝が加工される。「溝の切れ刃側の開口端縁に対して略垂直な姿勢」は、完全山部研削工程よりも食付き部研削工程の方が狭い溝幅で研削加工が行われることを意図するもので、溝の切れ刃側の開口端縁に対して垂直な方向から例えば±10°程度ずれていても差し支えない。
【0023】
第3発明の食付き部研削工程および完全山部研削工程は、研削砥石をタップ素材に切り込ませたまま連続して行うことが望ましいが、必要に応じて一旦研削砥石をタップ素材から離間させて研削作業を中断することも可能である。
【0024】
第3発明は、例えば(a) 円板形状の研削砥石の回転中心線が前記食付き部に形成すべき前記溝の切れ刃側の開口端縁に対して略垂直になる一定の姿勢で前記タップ素材の先端側に保持して、そのタップ素材を、その食付き部におけるその溝の切れ刃側の開口端縁のねじれ角に対応して軸心まわりに回転させつつ軸方向の先端側へ相対移動させることにより、その研削砥石の外周面を主体としてその食付き部に前記溝を研削加工する食付き部研削工程と、(b) その食付き部研削工程における前記研削砥石の姿勢を維持しつつ、前記タップ素材を、前記完全山部における前記溝のねじれ角(0°)に対応して軸心まわりに回転させることなく軸方向の先端側へ更に相対移動させることにより、その研削砥石の一方の側面を主体としてその完全山部に前記溝を研削加工するとともに、前記食付き部の溝のヒール側部分を研削加工する完全山部研削工程と、を有して構成される。
【0025】
また、(a) 円板形状の研削砥石の回転中心線が前記食付き部に形成すべき前記溝の切れ刃側の開口端縁に対して略垂直になる姿勢で、その研削砥石の外周部がタップ素材の完全山部のシャンク側部分に所定寸法だけ切り込む研削位置まで接近させる切込み工程と、(b) その切込み工程における前記研削砥石の姿勢を維持しつつ、前記タップ素材を、前記完全山部における前記溝のねじれ角(0°)に対応して軸心まわりに回転させることなく軸方向のシャンク側へ相対移動させることにより、その研削砥石の一方の側面を主体としてその完全山部に前記溝を研削加工するとともに、前記食付き部の溝のヒール側部分を研削加工する完全山部研削工程と、(c) その完全山部研削工程における前記研削砥石の姿勢を維持しつつ、前記タップ素材を、前記食付き部における前記溝の切れ刃側の開口端縁のねじれ角に対応して軸心まわりに回転させつつ軸方向のシャンク側へ更に相対移動させることにより、その研削砥石の外周面を主体としてその食付き部に前記溝を研削加工する食付き部研削工程と、を有して溝加工を行うこともできる。
【0026】
食付き部研削工程および完全山部研削工程は、一定の溝深さで溝加工を行うようにしても良いが、完全山部研削工程では溝幅が広くなるため、食付き部研削工程に比較して研削砥石を若干離間させて溝深さを浅くすることも可能である。また、完全山部研削工程では、シャンク側程溝底径が大きくなるように、研削砥石を徐々にタップ素材に対して離間または接近させることにより、折損強度を向上させることができる。
【0027】
第3発明のタップ素材は、雄ねじが予め設けられているものでも良く、その場合は溝を研削加工した後に雄ねじのねじ山に所定の逃げを設けるようにすれば良いが、雄ねじを設ける前の円柱形状の工具材料(タップ素材)を用いて溝加工を行い、その後にねじ山を設けるようにしても良い。
【0029】
以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施例である2枚刃のスパイラルタップ10を説明する図で、(a) は軸心と直角方向から見た平面図、(b) は(a) におけるB−B断面図、(c) は(a) におけるC−C断面図である。このスパイラルタップ10は、右ねじの雌ねじを切削加工するためのもので、高速度工具鋼または超硬合金にて構成されており、加工すべき雌ねじに対応する雄ねじが外周部に設けられたねじ部12、および円柱形状のシャンク14を軸方向に一体に備えている。ねじ部12は、ねじ山の高さが一定の完全山部16と、その完全山部16から工具先端側へ向かうに従って小径になる食付き部18とを備えているとともに、軸心に対して対称的に軸方向に一対の溝20が設けられ、その溝20に沿って切れ刃22が形成されている。
【0030】
溝20のうち完全山部16に位置する溝部20aは、ねじれ角が0°すなわち軸心と平行なストレート溝で溝幅が大きく、食付き部18に位置する溝部20bは、切れ刃22と反対のヒール24側の開口端縁は完全山部16と同じく軸心と平行であるのに対し、切れ刃22側の開口端縁のねじれ角は30°〜45°の範囲内(実施例では約40°)でねじ部12のねじ山のねじれ方向と同じ右まわり方向にねじれていて、工具先端側へ向かうに従って溝幅が狭くなっている。また、溝部20a、20b共に溝底径は略一定(バックテーパ分だけ変化している)で、ねじ部12の外径D(本実施例では6mm)に対して0.3D〜0.4Dの範囲内(実施例では約0.36D=2.16mm)であり、食付き部18における溝部20bの溝底の曲率半径は小さくて切れ刃22の軸心に対して直角な断面のすくい角θ1 は5°〜8°の範囲内である一方、完全山部16における溝部20aの溝底の曲率半径は大きくて切れ刃22の軸心に対して直角な断面のすくい角θ2 はすくい角θ1 よりも10°以上小さい負(マイナス)の値である。但し、上記溝部20bの切れ刃22側の側壁は、完全山部16のうち最も食付き部18側に位置する第1完全山に達しており、その第1完全山の切れ刃22のすくい角は、食付き部18の切れ刃22のすくい角θ1 と同じである。なお、図は必ずしも各部の寸法や角度を正確に表したものではない。
【0031】
次に、上記のように完全山部16と食付き部18とでねじれ角が変化している溝20の加工方法を説明する。
【0032】
図2において、30は円板形状の研削砥石で、外周部の断面は略円弧形状を成しているとともに幅寸法は食付き部18の溝部20bの幅寸法よりも狭く、中心線Sまわりに回転駆動されつつタップ素材32に接近させられることにより、外周部分でタップ素材32に対して研削加工を行う。タップ素材32には予めねじ部12が設けられており、研削砥石30により溝20を研削加工した後に、ねじ部12のねじ山に逃げなどが設けられるが、ねじ部12を設ける前の円柱形状の素材に溝20を研削加工し、その後にねじ部12を設けるようにしても良い。図2は、研削加工前の状態で、(a) は正面図、(b) は平面図であり、研削砥石30は、(b) の平面視において、回転中心線Sが前記溝部20bに対して略垂直になる姿勢、具体的には研削砥石30の回転平面とタップ素材32の軸心Oとの交差角度αが溝部20bのねじれ角(約40°)と略等しい角度(実施例では約44°)になる姿勢で、タップ素材32の先端側に配置されている。なお、以下の図3〜図5の(a) 、(b) も、それぞれ図2の(a) 、(b) に対応する。
【0033】
そして、図2の状態から、図3に矢印Xで示すように研削砥石30を移動させて、タップ素材32の先端側の予め定められた研削位置まで接近させる。この研削位置は、タップ素材32が軸方向の先端側へ相対移動させられることにより、研削砥石30がタップ素材32の外周部に切り込んで溝加工が行われる際の溝底径が約0.36D=2.16mmになるように定められている。
【0034】
次に、上記研削位置に研削砥石30を保持しつつ、前記タップ素材32を、図4に示すように前記食付き部18における溝部20bのねじれ角(約40°)に対応して軸心Oまわりに回転させつつ矢印Yで示すように軸方向へ移動させて、食付き部18に研削加工を行う。その場合に、(b) の平面視において、研削砥石30の回転平面とタップ素材32の軸心Oとの交差角度αが溝部20bのねじれ角と略等しいため、主として研削砥石30の外周面で食付き部18に研削加工が行われ、研削砥石30の外周部の断面形状に対応して比較的曲率半径が小さい円弧形状の溝部20bが形成される。この図4の工程は食付き部研削工程である。
【0035】
続いて、上記食付き部研削工程における研削砥石30の姿勢を維持したまま、タップ素材32を、図5に示すように前記完全山部16における溝部20aのねじれ角(=0°)に対応して、軸心まわりに回転させることなく矢印Yで示すように軸方向へのみ更に直線移動させて研削加工を行う。この場合には、(b) の平面視において、研削砥石30の回転平面はタップ素材32の軸心Oに対して交差角度α(約44°)で傾斜しているため、主として研削砥石30の一方の側面(図5(b) における右上側の側面)で完全山部16に研削加工が行われ、前記溝部20bよりも曲率半径が大きい溝部20aが軸方向に形成される。また、交差角度αにより、前記食付き部18における切れ刃22と反対のヒール24側の部分にも研削加工が施され、ヒール24側の開口端縁が軸心Oと平行になる。この図5の工程は完全山部研削工程である。なお、この完全山部研削工程では、研削砥石30を前記研削位置に保持して溝底径が一定の溝部20aを設けるようにしても良いが、研削砥石30を徐々に上方へ離間させてシャンク14側程溝底径が大きくなる溝底勾配(例えば1/60程度)を設けることにより、折損強度を向上させることもできる。
【0036】
以上の各工程により一方の溝20が研削加工され、その後、タップ素材32を軸心Oまわりに180°回転させて、同様の研削加工を行うことにより他方の溝20を形成する。また、更にねじ部12のねじ山に逃げを研削加工したり、必要に応じて所定の仕上げ研削などを行うことにより、目的とするスパイラルタップ10が製造される。
【0037】
このようなスパイラルタップ10は、予め下穴が設けられた銅やアルミニウムなどの被削材に対してリード送りされることにより、食付き部18側から下穴内に食い込み、主として食付き部18の切れ刃22で雌ねじが切削加工されるとともに、完全山部16はリード送りのガイドとして作用する。その場合に、食付き部18の切れ刃22は、雄ねじのねじれ方向と同じ右まわり方向へ40°程度のねじれ角でねじれているため、その食付き部18で発生した切り屑はシャンク14側へ排出され、止り穴に対するねじ立て加工に好適に用いられる。
【0038】
ここで、本実施例のスパイラルタップ10は、完全山部16の溝部20aの溝幅が広いため、切り屑がシャンク14側へ良好に排出されて切り屑詰まりによる折損が抑制されるとともに、完全山部16における切れ刃22のすくい角θ2 は第1完全山を除いて負であるため、切り屑の噛込みなどに起因する切れ刃22の欠けが抑制される。完全山部16は、主としてリード送りのガイドとして機能し、第1完全山を除いて切削作用は必要ないため、切れ刃22のすくい角θ2 が負であっても差し支えない。
【0039】
また、完全山部16における溝部20aのねじれ角は0°であるため、切り屑の噛込みによる刃欠けが更に効果的に抑制されるとともに、切れ刃22と反対のヒール24側の開口端縁のねじれ角も0°であるため、逆転時に切り屑の噛込みなどに起因するヒール24の欠けも抑制される。更に、完全山部16における溝部20aはストレートであるため、冷却潤滑油剤が食付き部18に達するまでの距離が短く、食付き部18の切れ刃22が良好に潤滑されて摩耗が抑制され、寿命が向上する。
【0040】
一方、食付き部18では、切れ刃22側の開口端縁のねじれ角が約40°とされ、溝部20bの幅寸法が狭くなっているとともに溝底の曲率半径が小さく、切れ刃22のすくい角θ1 が5°〜8°程度と大きいため、良好な切削作用が得られるとともに、切り屑が良好にカールさせられて食付き部18や完全山部16における切り屑の噛込みが抑制される。切れ刃22と反対のヒール24側の開口端縁のねじれ角は完全山部16と同様にストレートであるため、逆転時に切り屑の噛込みなどに起因するヒール24の欠けが抑制される。
【0041】
また、食付き部18では、溝部20bの溝幅が狭くなるのに対応してランドの幅が広くなるため、完全山部16が雌ねじに螺合する前の食付き初期からリード送りの自己案内作用が良好に得られるようになり、雌ねじの加工精度が向上するとともに、完全山部16ではランドの幅が狭いため摩擦が軽減される。
【0042】
また、図2〜図5の溝加工方法では、研削砥石30の姿勢を一定に維持したまま、食付き部18に所定のねじれ角の溝部20bを研削加工する食付き部研削工程と、完全山部16にストレートの溝部20aを研削加工する完全山部研削工程とが連続して行われるため、ねじれ角が変化している一連の溝20を簡単に加工できる。食付き部研削工程では研削砥石30の外周面を主体として研削加工が行われ、完全山部研削工程では研削砥石30の一方の側面を主体として研削加工が行われるため、溝20の断面形状が変化し、完全山部研削工程で研削加工される完全山部16の溝部20aの溝幅が、食付き部研削工程で研削加工される食付き部18の溝部20bの溝幅よりも大きくなり、ねじれ角と共に溝幅が変化している一対の溝20を有するスパイラルタップ10を好適に製造できる。
【0043】
なお、上例では2枚刃のスパイラルタップ10について説明したが、図6に示すように3本の溝40が設けられて3枚の切れ刃42が形成された3枚刃のスパイラルタップにも本発明は適用され得る。図6の(a) 、(b) はそれぞれ図1の(b) 、(c) に対応する図で、(a) の食付き部における溝40の切れ刃42側の開口端縁は所定のねじれ角でねじ山と同じ方向へねじれており、(b) の完全山部における溝40はストレートである。
【0044】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、これ等はあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更,改良を加えた態様で実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例であるスパイラルタップを示す図で、(a) は軸心と直角な方向から見た平面図、(b) は(a) におけるB−B断面図、(c) は(a) におけるC−C断面図である。
【図2】図1のスパイラルタップの溝加工を説明する図で、研削加工前の研削砥石とタップ素材との位置関係を示す図である。
【図3】研削砥石をタップ素材の先端側の研削位置まで接近させた状態を示す図である。
【図4】タップ素材を軸心まわりに回転させつつ軸方向へ移動させて食付き部にねじれ溝を加工する食付き部研削工程を示す図である。
【図5】タップ素材を回転させることなく軸方向へ移動させて完全山部にストレート溝を加工する完全山部研削工程を示す図である。
【図6】本発明の他の実施例を示す図で、(a) 、(b) はそれぞれ図1の(b) 、(c) に対応する図である。
【符号の説明】
10:スパイラルタップ 16:完全山部 18:食付き部 20、40:溝 22、42:切れ刃 30:研削砥石 32:タップ素材 O:タップ素材の軸心 S:研削砥石の回転中心線
Claims (3)
- 外周部に雄ねじが設けられるとともに、該雄ねじを分断するように軸方向に設けられた溝に沿って切れ刃が形成されているタップにおいて、
完全山部における前記溝のねじれ角は0°で、且つ一定の溝幅で形成されているが、
食付き部における前記溝の前記切れ刃側の開口端縁のねじれ角は、前記雄ねじのねじれ方向を正として0°より大きく、且つ該切れ刃と反対のヒール側の開口端縁のねじれ角は0°で、工具先端側へ向かうに従って溝幅が狭くなっているとともに、溝底の曲率半径が前記完全山部よりも小さい
ことを特徴とするスパイラルタップ。 - 前記食付き部における前記溝の前記切れ刃側の開口端縁のねじれ角は25°〜50°の範囲内で、
前記食付き部における前記切れ刃の軸心に対して直角な断面のすくい角θ1 は0°〜10°の範囲内で、前記完全山部における該切れ刃の軸心に対して直角な断面のすくい角θ2 は、該すくい角θ1 よりも10°以上小さく、
前記雄ねじの外径をDとした時、溝底径は0.2D〜0.5Dの範囲内である
ことを特徴とする請求項1に記載のスパイラルタップ。 - 請求項1または2に記載のスパイラルタップの製造方法であって、
円板形状の研削砥石を、その回転中心線が前記食付き部に形成すべき前記溝の前記切れ刃側の開口端縁に対して略垂直になる一定の姿勢に維持したまま、
タップ素材を、前記食付き部における前記溝の前記切れ刃側の開口端縁のねじれ角に対応して軸心まわりに回転させつつ軸方向へ相対移動させることにより、該研削砥石の外周面を主体として該食付き部に前記溝を研削加工する食付き部研削工程と、
該食付き部研削工程の前または後に、前記タップ素材を軸心まわりに回転させることなく軸方向へ相対移動させることにより、前記研削砥石の一方の側面を主体として該完全山部に前記溝を研削加工するとともに、前記食付き部の溝のヒール側部分を研削加工する完全山部研削工程と、
を実施することを特徴とするスパイラルタップの製造方法。
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