JP3710284B2 - 建物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、傾斜した屋根部上に植栽部を設け、前記植栽部の土を受け止める受止部を、前記屋根部の傾斜下手部に設けてある建物に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種の建物としては、図5に示すように、屋根部B2を所定の角度に傾斜した平面で構成し、前記植栽部Sの土1を受け止める受止部20は、前記屋根部B2の傾斜下手縁部から屋根部上面に張り出し状態に形成した立ち上がり壁部21で構成してあるものがあった。また、植栽部Sには、屋根への荷重を必要最小限度に抑えることを考慮して植栽の育成に必要な最小限度の厚みに土1を充填してあった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上述した従来の建物によれば、図5に示すように、建物に近い位置から前記屋根部B2を見上げた場合に、前記立ち上がり壁部21ばかりが目について肝心の植栽部Sが見え難く、せっかく設けられた植栽部Sの美しさを生かし難いという問題点があった。
また、これを解決するために植栽部の土壌層の表面勾配が屋根部勾配より急になるように盛り上げて、建物に近い位置からでも植栽部を観賞し易くすることが考えられるが、この場合は、充填する土の量が多量になるから屋根部上への荷重が増加し、屋根部の構造を強化することが必要となり、結果的にはコストアップにつながるという新たな問題が生じる。
【0004】
従って、本発明の目的は、上記問題点を解消し、屋根部への荷重の増加を抑制できながら、建物に近い位置から屋根部を見上げた場合でも植栽部を観賞し易くし、美観性の向上を図れる建物を提供するところにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
〔構成〕
請求項1の発明の特徴構成は、図2・3・4に例示するごとく、傾斜した屋根部B2上に植栽部Sを設け、前記植栽部Sの土1を受け止める受止部3を、前記屋根部B2の傾斜下手部2に設けてある建物において、前記受止部3は、前記屋根部B2の傾斜下手部2における屋根勾配より急勾配に形成した傾斜面部Kを介して前記屋根部B2の傾斜下手部2に連設してあるところにある。
【0006】
請求項2の発明の特徴構成は、図2・3・4に例示するごとく、前記屋根部B2上に、防水層4を設け、前記防水層4上に、前記植栽部Sの土の移動に抵抗自在な抵抗手段5を設けてあるところにある。
【0007】
請求項3の発明の特徴構成は、図2・4に例示するごとく、前記植栽部S中の水を排出自在な水抜き穴部9を、前記受止部3に設けてあるところにある。
【0008】
尚、上述のように、図面との対照を便利にするために符号を記したが、該記入により本発明は添付図面の構成に限定されるものではない。
【0009】
〔作用及び効果〕
請求項1の発明の特徴構成によれば、前記受止部は、前記屋根部の傾斜下手部における屋根勾配より急勾配に形成した傾斜面部を介して前記屋根部の傾斜下手部に連設してあるから、植栽部の土を前記受止部で受け止めて屋根部からズレ落ちるのを防止しながら、植栽部の土を盛り上げなくても前記傾斜面部上の土壌表面を屋根勾配より急勾配にすることが可能となる。その結果、前記急勾配の土壌表面(植栽表面)を、建物に近い位置から見上げても容易に観賞することが可能となり、建物の美観性を向上させることが可能となる。
また、それでいながら、植栽部の土を盛り上げる必要が無く、屋根部への荷重の増加を抑制することも可能となる。
その結果、大きなコストアップを図らずに建物の美観性を向上させることが可能となる。
【0010】
請求項2の発明の特徴構成によれば、請求項1の発明による作用効果を叶えることができるのに加えて、前記屋根部上に、防水層を設け、前記防水層上に、前記植栽部の土の移動に抵抗自在な抵抗手段を設けてあるから、前記防水層によって植栽部から建物下方への水の浸入を防止しながら、前記抵抗手段によって植栽部の土のズレ落ちを抑制することが可能となり、前記受止部での土の受止荷重を減少させ、前記受止部のコンパクト化を図ることが可能となる。
その結果、前記受止部をより目立ち難くして、美観性を更に向上させることが可能となる。
【0011】
請求項3の発明の特徴構成によれば、請求項1又は2の発明による作用効果を叶えることができるのに加えて、前記植栽部中の水を排出自在な水抜き穴部を、前記受止部に設けてあるから、植栽部中の水が屋根部の傾斜下手部に集まったまま滞留するのを防止し易く、適度な水はけを植栽部に期待することが可能となる。
また、例えば、降雨や植栽への水やりによって植栽部中に水が満水状態になれば、受止部を乗り越えて水や土が溢れ落ちるわけであるが、その減少をも、前記水抜き穴部によって抑制することが可能となる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。尚、図面において従来例と同一の符号で表示した部分は、同一又は相当の部分を示している。
【0013】
図1〜2は、当該発明の建物の一実施形態を示すものである。
本実施形態の建物Bは、建物本体部B1と、その上に形成した傾斜屋根躯体部(屋根部に相当し、以後単に屋根躯体部という)B2とを一体的に構成した鉄筋コンクリート造の建物である。
【0014】
前記屋根躯体部B2は、図2に示すように、建物Bから離れた位置から見て上面部(後述する植栽部)が見える程度に傾斜させて構成してある。
また、前記屋根躯体部B2上には、土1を入れた植栽部Sを設けてあり、この植栽部Sの草木を、建物Bから離れた位置で観賞できるように構成してある。
そして、前記屋根躯体部B2の傾斜下手部2には、前記植栽部Sの土1を受け止める受止部3を連設してある。
【0015】
一方、前記屋根躯体部B2上には、塩化ビニル製の防水シート(防水層に相当)4を設置してあり、更にその上には、前記土1を担持させてズレ落ちを防止し易くすることが可能な合成樹脂製の網状マット(抵抗手段に相当)5を接着してある。従って、網状マット5上に位置させた土1の一部が網状マット5の間隙に入り込むことで、土の滑り落ちを防止することが可能となり、前記受止部3に対する土の荷重を軽減させることができる。また、網状マット5の固定力は、前記防水シート4を介して屋根躯体部B2で確保される。
因みに、前記防水シート4は、屋根躯体部B2に固定された塩ビ固定用の金属バー6によって取り付け固定してあり、隣接するシートどうしは溶着によって確実に一体化を図ってある。従って、前記土1の滑り落ち力を、屋根全体で受けて安定保持できるように構成されているわけである。
また、防水シート4に塩化ビニルを使用してあることによって、適度な強度を確保することが可能となり、植栽の根の貫通防止をも図ることが可能となる。
【0016】
前記網状マット5は、二層構造に形成してあり、前記防水シート4側の第一層5aは、不織布で構成してあり、他の第二層5bは、ポリオレフィン系の繊維材を厚みのある網形状に配置して一体化を図ってある。
【0017】
前記屋根躯体部B2について、更に詳しく説明すると、傾斜下手部2の下端部分は、その上面部2aが、急勾配になるように形成してある。そして、傾斜下手部2の下端縁部には、前記受止部3を構成する受止金具7がアンカーボルト8によって固定してある。
前記受止金具7は、図に示すように、断面形状が『U』字形状の樋状板金部材で構成してある。そして、『U』字断面の一方の側壁7aは、前記傾斜下手部2の下端縁部に沿わせて固定してあり、この側壁7aも、前記傾斜下手部2の下端上面部2aと同様に、傾斜下手部2の屋根勾配より急勾配に形成してある。この傾斜下手部下端の上面部2aと、受止金具7の一方の側壁7aとによって傾斜面部Kは構成してある。
そして、受止金具7の他方の側壁7b、及び、底部7cによって前記土1を受け止めている。
また、前記他方の側壁7bには、植栽部S中の水を排出自在な網付き水抜き穴部9を、長手方向に間隔をあけて複数箇所に設けてある。
更に、前記受止金具の下方側には、前記水抜き穴部9から排水された水を流すための樋10を取り付けてある。この樋10の開口には、前記植栽部Sの傾斜勾配とほぼ同じ勾配になるようにメッシュ蓋11を取り付けてある。そして、樋10には、長手方向に間隔をあけて複数の縦樋(不図示)が接続してある。
【0018】
また、前記植栽部Sは、前記網状マット5上に吹き付けによって土1を充填して形成し、その土に、当該実施形態に於いては、芝を貼ってある。従って、あたかも、茅葺き屋根の如くに観賞することが可能となる。しかも、その色は、季節によって、新緑色から茶褐色と変化し、建物の意匠性を向上させることが可能となる。
【0019】
当該実施形態で説明した建物Bによれば、屋根躯体部B2上に位置させた土は、前記網状マット5や、受止金具7によってずり落ちない状態に保持されながら、前記傾斜面部K上の植栽部S表面は、他の部分より急勾配となり、建物Bに近い位置から見上げて容易に観賞することが可能となる。従って、建物としての良好な美観性を確保することが可能となる。そして、屋根躯体部B2上にほぼ同じ厚みで土を盛った状態で上述の効果を期待することができるので、屋根躯体部B2への上載荷重がほぼ均等になり、余分な補強を必要としない。
【0020】
〔別実施形態〕
以下に他の実施の形態を説明する。
【0021】
〈1〉 建物の構造は、先の実施形態で説明した鉄筋コンクリート造に限るものではなく、例えば、鉄骨造や、鉄骨鉄筋コンクリート造、又は、木造、及び、それらの複合構造等、公知の建築構造を採用することが可能である。
〈2〉 受止部は、先の実施形態で説明したように、屋根部とは別体の金物で形成してあるものに限るものではなく、例えば、屋根部と一体的に構成してあってもよい。
また、傾斜面部は、先の実施形態で説明した傾斜下手部下端の上面部2aと、受止金具7の一方の側壁7aとによって構成するものに限るものではなく、例えば、受止金具7の一方の側壁7aのみによって構成するものであってもよい。また、受止部、及び、傾斜面部の関係は、例えば、図3に示すような形態をとることも可能である。
〈3〉 抵抗手段は、先の実施形態で説明した網状マット5に限るものではなく、例えば、図4に示すように、屋根上面に突出させた突出部12によって構成するものであってもよい。
〈4〉 植栽部には、先の実施形態で説明したように芝を貼ってあるものに限るものではなく、例えば、他の草木でもって構成してあってもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】建物を示す部分斜視図
【図2】屋根部の詳細を示す断面図
【図3】別実施形態の屋根を示す断面図
【図4】別実施形態の屋根を示す断面図
【図5】従来例の建物を示す部分断面図
【符号の説明】
1 土
2 傾斜下手部
3 受止部
4 防水層
5 抵抗手段
9 水抜き穴部
B2 屋根部
K 傾斜面部
S 植栽部
Claims (3)
- 傾斜した屋根部上に植栽部を設け、前記植栽部の土を受け止める受止部を、前記屋根部の傾斜下手部に設けてある建物であって、
前記受止部は、前記屋根部の傾斜下手部における屋根勾配より急勾配に形成した傾斜面部を介して前記屋根部の傾斜下手部に連設してある建物。 - 前記屋根部上に、防水層を設け、前記防水層上に、前記植栽部の土の移動に抵抗自在な抵抗手段を設けてある請求項1に記載の建物。
- 前記植栽部中の水を排出自在な水抜き穴部を、前記受止部に設けてある請求項1又は2に記載の建物。
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