JP3708390B2 - 導電性熱可塑性樹脂組成物 - Google Patents

導電性熱可塑性樹脂組成物 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、優れた導電性を有するとともに、静電防止、電磁波遮蔽に優れ、さらに経済性、機械特性等に優れた導電性熱可塑性樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
エレクトロニクス技術の発展に伴い、電磁波シールドや静電気防止のための材料として、軽量でしかも高い導電性を有する材料が求められるようになってきた。このような目的に用いられる導電性材料として、粉末状、繊維状の金属や、カーボンブラック、炭素繊維等の炭素等の導電性材料を、ゴム・プラスチック等の合成樹脂に配合した樹脂複合材料が使用され始めている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、導電性材料として金属を用いたものは高価で重量が重く、また腐食環境では導電性が不安定であるという欠点があり、耐食性のよい貴金属を用いると極めて高価になるという問題がある。また、炭素系の導電性材料は金属に比べて導電性が低く、十分な性能が得られないという欠点があり、これを補うために配合量を多くすると加工性や機械的特性が低下するという問題が生じる。また、炭素繊維を用いた場合、配合量が多くなると表面平滑性まで低下してしまうという問題も生じる。
【0004】
したがって、本発明は、安価で軽く、優れた導電性を有するとともに、腐食環境下でも安定であり、加工性、機械特性、表面平滑性等に優れた導電性熱可塑性樹脂組成物を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意研究した結果、直径が0.01〜5μm、アスペクト比が10以上で、ホウ素を0.1〜3重量%含有した微細な炭素繊維を、0.1〜50重量%用いた導電性熱可塑性樹脂組成物であれば、安価で軽く、優れた導電性を有するとともに、腐食環境下でも安定であり、加工性、機械特性、表面平滑性に優れていることを見出し、本発明を完成した。
【0006】
すなわち、本発明は、微細な炭素繊維を含有する導電性熱可塑性樹脂組成物であって、該微細な炭素繊維は、ホウ素又はホウ素化合物を、該微細な炭素繊維の炭素量に対してホウ素原子換算で0.1〜3重量%含有し、該微細な炭素繊維の直径は0.01〜5μm及びアスペクト比は10以上であり、かつ該微細な炭素繊維の含有量が0.1〜50重量%であることを特徴とする導電性熱可塑性樹脂組成物を提供するものである。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明に用いる微細な炭素繊維は、原料としてホウ素又はホウ素化合物を、該微細な炭素繊維の炭素量に対してホウ素原子換算で好ましくは10重量%以下、特に好ましくは5重量%以下配合して得られるものであり、ホウ素をその結晶内に含有し、その触媒的な作用により高結晶化して製造することができる。ホウ素又はホウ素化合物を、該微細な炭素繊維の炭素量に対してホウ素原子換算で10重量%超配合すると、処理コストが高くなるだけでなく、熱処理の段階で溶融焼結しやすく、固まったり繊維表面を被覆して電気抵抗が上昇しやすくなるなど、フィラー特性が失われることがあるので好ましくない。また、炭素にホウ素をドーピングできる量は一般的に3重量%以下であり、反応率を考慮すると、この点からも10重量%超配合することは好ましくない。熱処理して炭素繊維を有効に高結晶化させたときの、炭素繊維中のホウ素又はホウ素化合物量は、微細な炭素繊維の炭素量に対してホウ素原子換算で0.1〜3重量%であることが必要であり、0.2〜3重量%が好ましい。なお、ホウ素又はホウ素化合物は、熱処理して炭素繊維を高結晶化させる際に上記量存在していればよく、含有量が0.1重量%を下回らなければ、その後さらに高熱で処理する等によりホウ素が揮散し、添加した量よりも濃度が低くなってもよい。
【0008】
本発明に用いる微細な炭素繊維は、直径が0.01〜5μm、好ましくは0.01〜1μmであり、アスペクト比が10以上、好ましくは50以上である。直径が0.01μm未満であると繊維の強度が弱く、フィラーとして使用した場合に繊維の切断が多くなり、繊維としての機能が損なわれやすい。一方、直径が5μmより太くなると、フィラーとしての添加率(重量%)を一定とした場合、繊維の本数が少なくなりすぎ、フィラーとしての繊維の機能が十分発揮されない。また、繊維自体の生産性が著しく低下するので、工業的にコストが高くなる。また、アスペクト比が10未満では、繊維としての機能が十分でない。
【0009】
繊維の長さ自体に特に制限はなく、その下限はアスペクト比の下限から定まる長さが好ましい。例えばアスペクト比が50以上の場合、直径が0.01μmでは繊維長さは0.5μm以上、直径が1μmでは長さは50μm以上にが好ましい。ただし、繊維の長さは、長すぎると繊維の絡み合い等によりフィラーとしての分散性に問題が生じたり、樹脂成形物表面に凹凸を生じやすいので、400μm以下が好ましく、さらに好ましくは100μm以下である。
【0010】
本発明に用いる微細な炭素繊維は、X線回折法で測定した炭素の面間隔d002が3.385Å以下であり、かつ結晶のc軸方向の厚さLcが400Å以下である。また、d002が3.385Å以下であり、かつLcが400Å以下であるとともに、ラマン吸収スペクトルのR値(1580cm-1の吸収強度IGと1360cm-1の吸収強度IDの比R=ID/IG)が0.5以上となる特徴を有する。
【0011】
本発明に用いる微細な炭素繊維は、嵩密度0.8g/cm3のときの粉体抵抗が、0.01Ω・cm以下であることが好ましく、0.005Ω・cm以下であることが特に好ましい。
【0012】
次に本発明で使用する微細な炭素繊維の製造法について説明する。
−出発原料としての炭素繊維−
出発原料とする炭素繊維は、ベンゼン等の有機化合物を熱分解することにより気相で成長させた微細な炭素繊維を用いることができる。この炭素繊維は、例えば特開平7−150419号公報、特開平5−321039号公報、特開昭60−215816号公報、特開昭61−70014号公報、特公平5−36521号公報、特公平3−61768号公報等に示される方法で製造することができる。
【0013】
この微細な炭素繊維は、熱処理で結晶性をある程度向上させることはできるが、d002は3.385Åが限界であり、それ以上結晶性を向上させるには、ホウ素又はホウ素化合物を添加することが必要である。
【0014】
通常の炭素材料については、ホウ素を添加して熱処理し結晶性を高めることは種々検討されている(例えば、「炭素」1996,N0172,89〜94頁、特開平3−245458号公報、特開平5−251080号公報、特開平5−266880号公報、特開平7−73898号公報、特開平8−31422号公報、特開平8−306359号公報、特開平9−63584号公報、特開平9−63585号公報等)。しかし、直径が5μm以下の微細な気相法炭素繊維に対して、ホウ素を導入して特性を改善した例は今までにない。その理由は、以下に示すように、形状の特徴から、ホウ素を用いた黒鉛化が行いにくいことと、繊維が特殊な構造を持つためにホウ素の触媒効果が発揮しにくいためである。
(ア)気相法炭素繊維は、繊維の切断面の結晶構造が同心円状に発達した長ねぎ状の繊維である。
(イ)繊維の長さは、製造条件によって異なるが、例えば0.01〜0.5μm程度の直径の繊維では、単繊維だけでなく枝分かれした繊維も多く存在するので明確には規定しがたいが、直線部分を走査型電子顕微鏡で測定した場合、平均が5μm以上あるものがほとんどである。
(ウ)また、この繊維は長繊維に加えて枝分かれした微細な繊維も含むために、長い繊維はもちろんのこと、5μm程度の短い繊維であっても、少なくとも大きさが10μm以上、場合によっては100μm以上の大きなフロック状になりやすい。
(エ)したがって、集合体としての嵩密度は小さく、0.05g/cm3以下、通常は0.01g/cm3以下である。しかもフロック状の立体構造を持っ ているので、黒鉛化触媒との接触が難しく、均一にホウ素化しがたい。
(オ)また、微細な炭素繊維は表面がしっかりしたべ一サルブレーン(六角網目構造の平面)で覆われているので、ホウ素を用いて黒鉛化してもポリゴニゼーション時に立体障害のため結晶性の向上が阻害される。
【0015】
ホウ素をドーピングするためには、原料の微細な炭素繊維として、ドーピングしやすい、あまり結晶の発達していない低温処理品、好ましくは1500℃以下で熱処理された炭素繊維を用いる。低温処理の炭素繊維であっても、ホウ素又はホウ素化合物を触媒として用いた処理(ホウ素化処理)の時に最終的には黒鉛化温度まで加熱処理されるので、結晶の未発達の未熱処理品でも十分使用できる。2000℃以上、さらには2300℃以上の温度で黒鉛化処理された炭素繊維を用いることもできるが、エネルギーの削減の面から、前もって黒鉛化処理しておく必要はなく、むしろ低温処理品を用いて黒鉛化と同時に触媒作用を働かせるほうが好ましい。また、炭素中のホウ素の含有量が最も多くかつドープしやすい温度は2000〜2300℃との報告もあり、これより高い温度で処理されて結晶化した材料では触媒効果が小さい。
【0016】
原料の微細な炭素繊維として、取扱容易のためあらかじめ解砕、粉砕したものを用いることができるが、解砕、粉砕はホウ素又はホウ素化合物との混合ができる程度になされていれば十分である。すなわち、ホウ素化処理した後に、解砕、粉砕、分級等のフィラー化処理を行うので、ホウ素化処理の前にフィラーとしての適正な長さにする必要はない。気相成長法で一般的に得られる直径0.01〜5μm程度、長さ0.5〜400μm程度の炭素繊維をそのまま用いることができる。これらはフロック状になっていてもよい。また原料繊維は熱処理したものでもよいが、熱処理温度は1500℃以下とすることが好ましい。
【0017】
−ホウ素化処理−
ホウ素化処理は2000℃以上の温度で行われるので、少なくとも2000℃に達する前に分解等によっても蒸発しない物質、例えば、元素状ボウ素、B23、ホウ酸、B4C、BN、その他のホウ素化合物を使用することが好ましい。ホウ酸等を用いる場合は、水溶液として添加し、予め水分を蒸発させる方法や、加熱過程で水分を蒸発させる方法を用いることもできる。水溶液を均一に混合すれば、水分蒸発後はホウ素化合物を繊維表面に均一に付着させることができる。
【0018】
微細な炭素繊維は、三次元の立体構造を持ち、フロック状を形成しやすいだけでなく、嵩密度がきわめて小さく空隙率が非常に大きい。しかも添加するホウ素量は10重量%以下、好ましくは5重量%以下と少ないので、単に両者を混合しただけでは均一に接触させることは難しい。ホウ素の導入反応を効率よく行うには、炭素繊維とホウ素又はホウ素化合物とをよく混合し、両者をできるだけ均一に接触させることが好ましい。そのためには、ホウ素又はホウ素化合物の粒子はできるだけ粒径の小さいものを使用することが好ましい。粒子が大きいと、部分的に高濃度領域が発生することになり、固結化しやすいので、粒度は平均粒径で100μm以下であることが好ましく、より好ましくは50μm以下、特に好ましくは20μm以下である。
【0019】
気相法により製造した微細な炭素繊維は、嵩密度が非常に小さいため、炭素繊維とホウ素又はホウ素化合物とを混合しそのまま熱処理してもよいが、混合したものを高密度化し、かつその状態をできるだけ維持(固定化)して熱処理することが好ましい。その好ましい方法として、例えば両者を混合した後、混合物に圧力を加えて圧縮し、高密度化して固定化する方法が挙げられる。炭素繊維とホウ素又はホウ素化合物との混合は、均一性が保持できればいずれの方法でもよい。混合機としては市販の混合機のいずれも用いることができるが、微細な炭素繊維はフロック状になりやすいので、これを解砕するためのチョッパーを有するヘンシェルミキサータイプのものがより好ましい。使用する原料炭素繊維は先に述べたように製造されたままのものでも、その1500℃以下の温度での処理品でもよい。ただし、経済的には製造されたままのものが好ましい。炭素繊維とホウ素またはホウ素化合物との混合物を高密度化し、両者が分離しないように固定化する方法としては、成形法、造粒法、あるいは混合物をるつぼに入れて一定の形状に圧縮して詰め込む方法等、いずれの方法でもよい。また成形法の場合、成形体の形状は円柱状、板状、直方体等、いずれの形状でもよい。
【0020】
このようにしてホウ素又はホウ素化合物を添加し、嵩密度を高めた炭素繊維は次に熱処理する。
ホウ素を炭素の結晶内に導入するために必要な処理温度は、2000℃以上、特に2300℃以上が好ましい。処理温度が2000℃未満であると、ホウ素と炭素との反応性が悪くなりやすく、ホウ素の導入が難しくなりやすい。ホウ素の導入を一層促進し、かつ炭素の結晶性を向上させ、特にd002を3.385Å以下にするには、2300℃以上に保つことが好ましい。熱処理温度に特に制限はないが、装置等の制約から3200℃程度以下であることが好ましい。使用する熱処理炉は、2000℃以上、好ましくは2300℃以上に保持できる炉であればよく、通常のアチソン炉、抵抗炉、高周波炉等の何れの装置でもよい。また、場合によっては、粉体または成形体に直接通電して加熱する方法も使用できる。熱処理の雰囲気は、非酸化性の雰囲気、特にアルゴン等の希ガス雰囲気であることが好ましい。熱処理の時間は、生産性の面からはできるだけ短いほうが好ましい。特に長時間加熱していると、焼結が進行するので収率も悪化する。したがって、成形体等の中心部の温度が目標温度に達した後、1時間以下の保持時間で十分である。
【0021】
圧縮成形等により高密度化した炭素繊維は、熱処理すると一部が焼結し、ブロック状になる。したがって、そのままではフィラーとして適する形態ではないので、成形体を解砕することが好ましい。そのため、このブロックを解砕、粉砕、分級等してフィラーとして適するように処理すると同時に、非繊維物を分離する。その際に粉砕しすぎるとフィラー性能が低下し、また粉砕が不十分だと樹脂組成物主剤との混合がうまくいかず添加効果が出にくい。フィラーとして望ましい形態にするためには、例えば熱処理後のブロック状物をまず2mm以下の大きさに解砕し、さらに粉砕機で粉砕することが好ましい。解砕機としては通常使用されるアイスクラッシャーやロートプレックス等の装置が使用できる。粉砕機としては衝撃式粉砕機のパルベライザーや自由粉砕機、またミクロジェット等の粉砕機が使用できる。非繊維物を分離する分級は、気流式分級機等で行うことができる。粉砕分級条件は、粉砕機の種類や操作条件によって異なるが、フィラー特性を発揮させるためには、繊維の長さを5〜400μmにするのが好ましい。また、粉砕分級後の高密度は、0.001〜0.2g/cm3が好ましく、より好ましくは0.005〜0.15g/cm3、特に好ましくは0.01〜0.1g/cm3である。嵩密度が0.2g/cm3超になると、径によっては繊維の長さが5μm以下のように短くなりフィラー効果が低下しやすい。また、0.001g/cm3より小さいと、径によっては400μmを超えるような長いものとなり、フィラーとしての詰まりが悪くなる。なお、嵩密度とは、容器に繊維を充填して振動させ、体積がほぽ一定に達したときの体積と重量から求めたタッピング嵩密度である。
【0022】
前記したような方法で製造した、繊維中にホウ素を含有する微細な炭素繊維は、嵩密度0.8g/cm3のときの粉体抵抗が、0.01Ω・cm以下になる。一方、これと同形状で繊維中にホウ素を含まない気相成長法による微細な炭素繊維は、嵩密度0.8g/cm3のときの粉体抵抗が0.01〜0.03Ωcm程度である。これは、黒鉛化時にホウ素を触媒として添加すると結晶性が向上し、その結果、導電性が向上したことによる。このように、従来より導電性がほぽ1桁向上した微細な炭素繊維を用いることにより、電気抵抗が低く、静電気防止や電磁波遮蔽等の目的に好適に使用される本発明の導電性熱可塑性樹脂組成物を得ることができる。
【0023】
−樹脂成分−
本発明で用いる熱可塑性樹脂としては、成形分野で使用される樹脂であれば特に制限はなく、例えばポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ポリスチレン、ABS、AS樹脂等のスチレン系樹脂、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12等のポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアセタール、ボリフェニレンサルファイト、ポリスルホン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルスルホン等のエンジニアリングプラスチック等が挙げられる。本発明においては、これらの熱可塑性樹脂を1種又は2種以上組合せて使用することができる。またこれらの熱可塑性樹脂に、通常使用される種々の添加剤、たとえば酸化防止剤、潤滑剤、可塑剤、安定剤等を予め配合してもよい。
【0024】
このような熱可塑性樹脂に、微細な炭素繊維を配合し、分散させるにあたっては、通常の熱可塑性樹脂の配合方法を用いることができるが、このような場合に一般的に使用されるバンバリミキサー、ニーダー等の混練機を利用することもできる。本発明の導電性熱可塑性樹脂組成物は、かかる熱可塑性樹脂に微細な炭素繊維を配合、分散した後、常法に従って製造することができる。
【0025】
かくして得られた本発明の導電性熱可塑性樹脂組成物は、その導電性を十分確保するため、抵抗値が0.01Ω・cm以下であることが好ましく、0.005Ω・cm以下であることが特に好ましい。かかる観点から、本発明の導電性熱可塑性樹脂組成物中の、微細な炭素繊維の含有量は、0.1重量%以上であることが必要であり、1重量%以上であることが好ましい。0.1重量%未満では、樹脂中で導電性が付与できる程度の凝集構造が形成されず、成形体としての導電性が十分ではない。
一方、含有量が多すぎると、溶融時の流動性が低下し、成形が困難となる。また、高充填率で含有しても、高充填率水準に見合うだけの導電性の向上は見られない。以上の観点から、本発明の導電性熱可塑性樹脂組成物中の、微細な炭素繊維の含有量は、0.1〜50重量%であることが必要であり、1〜50重量%であることが好ましい。
【0026】
本発明の導電性熱可塑性樹脂組成物には、本発明の目的を阻害しない範囲で必要に応じて、公知の種々の添加剤を添加することができる。添加剤としては、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、安定剤、充填剤、補強剤、難燃剤、滑剤、溶剤、加工助剤等を挙げることができる。さらには、金属系や他の炭素系導電材料等を添加、併用することもできる。
【0027】
本発明の導電性熱可塑性樹脂組成物を、押出成形、射出成形、トランスファー成形、プレス成形など各種の成形方法の中から、ベース樹脂および成形物の形状に応じた適宜の方法を選択して、成形することによって、目的の成形物を得ることができる。具体的には、ファクシミリなどの低抵抗パンド、非帯電コンベアベルト、導電タイヤ、IC収納ケース、コピー機用ロール、加熱用エレメント、過電流・過熱防止用素子、電磁波シールド筺体、キーボードスイッチ、コネクター素子等を挙げることができる。
【0028】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0029】
実施例1〜4及び比較例1〜2
出発原料である微細な炭素繊維は、遷移金属を含有する有機金属化合物の存在のもとにベンゼンを熱分解する公知の方法(例えば特開平7−150419号公報参照)で得た炭素繊維を、さらに1200℃で熱処理して得た。得られた炭素繊維はフロック状に集合していたが、これを解砕し、嵩密度を0.02g/cm3、繊維の長さを10〜100μmとした。繊維径は大部分が0.5μm以下(電子顕微鏡写真で観察した平均的な繊維径は0.2μm)であった。この炭素繊維のX線回折による炭素の面間隔d002は3.407Åで、結晶のc軸方向の厚さLcは56Åであった。
この繊維2.88kgに平均粒径15μmのB4C粉末を120g添加し、ヘンシェルミキサーで十分に混合した。この混合物を容量50リットルの円筒状の黒鉛ルツボに詰め込み圧縮して、嵩密度を0.075g/cm3とした。黒鉛製の加圧板で圧縮したまま蓋をし、アチソン炉に入れて加熱処理した。このときの温度は2900℃であり、2900℃になってから60分間加熱した。
加熱処理後冷却し、ルツボから炭素繊維を取り出し、バンタムミルで粉砕し、その後、非繊維状物を気流分級機で分離した。得られた繊維径は、2900℃で熱処理する前と変わらず大部分が0.5μm以下、長さは5〜30μm、嵩密度は0.04g/cm3であった。また、この繊維のホウ素含有量は1.03重量%、d002、Lcはそれぞれ3.380Å、290Åであった。また、嵩密度0.8g/cm3のときの粉体抵抗は0.003Ω・cmであった。
【0030】
次に、この微細な炭素繊維を用いて、以下のように導電性熱可塑性樹脂組成物(ペレット)を製造した。すなわち、ポリプロピレン(日本ポリオレフィン(株)製SMA410)と前記のホウ素を含む微細な気相法炭素繊維を、表1に示す割合で配合し、押出機にて溶融混練してペレットを得た。
【0031】
比較例3及び4
実施例1で用いた微細な炭素繊維3.0kgを容量50リットルの円筒状の黒鉛ルツボに詰め込み圧縮して、嵩密度を0.075g/cm3とした。黒鉛製の加圧板で圧縮したまま蓋をし、アチソン炉に入れて加熱処理した。このときの温度は2900℃であり、2900℃になってから60分間加熱した。加熱処理後冷却し、ルツボから炭素繊維を取り出し、バンタムミルで粉砕し、その後、非繊維状物を気流分級機で分離した。得られた繊維径は、2900℃で熱処理する前と変わらず、大部分が0.5μm以下、長さは5〜30μm、嵩密度は0.04g/cm3であった。また、この繊維のd002、Lcは、それぞれ3.388Å、280Åであり、嵩密度0.8g/cm3のときの粉体抵抗は0.013Ω・cmであった。次いで、上記ポリプロピレンを用い、表1に示す配合で上記同様にしてペレットを得た。
【0032】
比較例5
微細な気相法炭素繊維の代わりに、カーボンブラックを使用した以外は実施例1と同様の方法でペレットを得た。
【0033】
試験例1
上記で得られた各ペレットを、通常行われているポリプロピレンの成形条件でプレス成形し、テストピースを得た。得られた各テストピースについて、三菱化学(株)の表面抵抗計を用いて体積固有抵抗を測定した。その結果を表1に示す。また、表面平滑性を表面粗さ計(指触式)により測定した。
【0034】
【表1】
Figure 0003708390
【0035】
表1から明らかなように、実施例1〜4の導電性熱可塑性樹脂組成物は、優れた導電性を示した。また、実施例1〜4の導電性熱可塑性樹脂組成物は、いずれも表面平滑性が良好であったが、比較例2の導電性熱可塑性樹脂組成物は、導電性は優れていたが、表面平滑性が低下していた。比較例3〜5の導電性熱可塑性樹脂組成物は、導電性が低かった。また、実施例3と比較例4から明らかなように、微細な炭素繊維の添加量が同じ場合、本発明の導電性熱可塑性樹脂組成物の抵抗値は、従来のものの1/2以下とすることができる。
【0036】
【発明の効果】
本発明の導電性熱可塑性樹脂組成物は、高い導電性を有する微細な炭素繊維が多くの接触点で接触しながら樹脂中に均一に分散しているので、極めて高い導電性を有しており、また安価で軽く、腐食環境下でも安定であり、加工性、機械特性、表面平滑性等に優れている。このため、静電気防止や電磁波シールドの目的に好適に使用できる。

Claims (6)

  1. 微細な炭素繊維を含有する導電性熱可塑性樹脂組成物であって、該微細な炭素繊維は、ホウ素を、該微細な炭素繊維の炭素量に対してホウ素原子換算で0.1〜3重量%炭素の結晶内に含有し、該微細な炭素繊維の直径は0.01〜5μm及びアスペクト比は10以上であり、かつ該微細な炭素繊維の含有量が0.1〜50重量%であることを特徴とする導電性熱可塑性樹脂組成物。
  2. ホウ素を炭素の結晶内に含有する微細な炭素繊維が、X線回折法で測定した炭素の面間隔d002が3.385Å以下であり、かつ結晶のc軸方向の厚さLcが400Å以下である請求項1記載の導電性熱可塑性樹脂組成物。
  3. 微細な炭素繊維の粉体抵抗が、嵩密度0.8g/cmのとき0.01Ω・cm以下である請求項1又は2記載の導電性熱可塑性樹脂組成物。
  4. 抵抗値が、0.01Ω・cm以下である請求項1〜3のいずれか1項記載の導電性熱可塑性樹脂組成物。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項記載の導電性熱可塑性樹脂組成物を用いた成形体。
  6. 請求項5記載の成形体が、低抵抗パンド、非帯電コンベアベルト、導電タイヤ、IC収納ケース、コピー機用ロール、加熱用エレメント、過電流・過熱防止用素子、電磁波シールド筺体、キーボードスイッチ、コネクター素子から選ばれる一種である成形体。
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