JP3707860B2 - 水性インキ用金粉 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、水性金色インキに使用する金粉に関するものである。詳しくは、片状黄銅金属粉を金色顔料として混合分散させる水性金色インキの金属粉に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
金色印刷を行う金色インキには、通常片状黄銅金属粉が金色顔料として使用される。この片状黄銅金属粉は主に銅と亜鉛の合金粉であり、一般にブロンズ粉あるいは金粉と呼ばれている(以下金粉と称する事にする)。
金色インキは通常有機溶剤を使用したインキであり、有機溶剤を使用しない水性インキは大気汚染対策になるが、光沢が非常に悪くまだ実用化されていない。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
金色インキの内、特にグラビアインキはトルエンなどの有機溶剤を大量に使用する。有機溶剤の排出量低減や作業環境の改善及び火災の危険性防止のためにも水性金色インキの開発が望まれている。
しかし、インキ中の揮発成分の大部分が水であるため、従来までの金粉を混合しても光沢の悪い塗膜しか得られなかった。
そこで、本発明は水性インキに混合分散しても従来の金色インキに近い金属光沢を有する塗膜が得られる金粉を提供することを技術的な課題とするものである。
【0004】
本発明者らは、前記技術的課題を達成するために、各種表面処理剤を金粉に混合被覆し、水性金色インキとしての金属光沢を調べるという試行錯誤的な試験、研究を重ねた。その結果、特定の界面活性剤で金粉を混合被覆した金粉を水性インキに混合分散すると、従来の金色インキに近い金属光沢の良い塗膜が得られることを見いだした。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明の水性インキ用金粉は、脂肪酸で処理した平均粒子径5〜40ミクロンの片状黄銅金属粉100重量部に対し、HLB値9〜12の非イオン界面活性剤を0.2〜4重量部混合、被覆された水性インキ用金粉である。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下、本発明をその実施の形態とともに説明する。
本発明の脂肪酸で処理した片状黄銅金属粉とは、機械粉砕法で製造するブロンズ粉あるいは金粉と呼ばれているもので、銅と亜鉛の合金粉である。
平均粒子径を5〜40ミクロンとしたのは、それより細かいと塗膜面に均一に金粉が浮かび上がらず光沢の良い塗膜が得られない。一方40ミクロンより大きい粒子径だと印刷インキ中で金粉が沈降したり、印刷版に転移しなくなり、印刷適性が悪くなる。
【0007】
本発明で金粉に混合、被覆する非イオン界面活性剤は、HLB値が9〜12であることが必要である。HLB値とは、界面活性剤の親水性を表す数値であり、グリフィンのHLB(Hydrophile-Lipophile-Barance)と呼ぶこともあり、親水性と親油性のつり合いの尺度として一般に使用される。親水基が全然ないパラフィンのようなものはHLB=0、親水基ばかりで疎水基のないポリエチレングリコールのようなものはHLB=20ということになる。HLB値が9以下であると、水性インキに金粉が均一に分散せず光沢にムラの有る塗膜となる。逆にHLB値が12以上であると水性インキに金粉が分散するものの光沢の悪い塗膜しか得られない。
【0008】
本発明の非イオン界面活性剤とは、具体的にはノニルフェノールにエチレンオキサイドを付加させたもの、高級アルコールにエチレンオキサイドを付加させたもの、ドデシルフェノールにエチレンオキサイドを付加させた等の中からHLB値が9〜12の範囲のものを選定すれば良い。
その他のアニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤では、金粉が変色したり光沢も悪いものしか得られない。
非イオン界面活性剤の量は、金粉100重量部に対し0.2〜4重量部が良い。
0.2重量部より少ないと金粉に均一に被覆することができない。4重量部より多いと塗膜性能に悪影響を与えたり、乾燥性など印刷適性が悪くなる場合があり好ましくない。
【0009】
金粉に非イオン界面活性剤を混合被覆する方法は、ミキサー、ボールミル、アジテータミル等を用いて機械的に攪拌すれば良い。
本発明の水性インキ用金粉は金色着色剤としてアクリル、ウレタン、ポリエステル等の大部分の水性ビヒクルに適応出来る。なを、印刷条件に合わせて、滑剤、分散剤、レベリング剤、消泡剤、酸化防止剤等を配合したり、水や少量のアルコールを粘度調整剤として加え、金色印刷を行うことが出来る。
【0010】
本発明の水性インキ用金粉を使用すると優れた金属光沢塗膜が得られる理由として、金粉を被覆する非イオン界面活性剤のHLB値が9〜12であることが重要である。HLB値が9以下であると、水性インキに金粉が均一に分散せず分散不良の状態で塗膜形成されるためムラのあるものとなる。逆にHLB値が12以上であると水性インキ中に金粉が均一に分散するものの金粉が塗膜面に浮かび上がるリーフィング現象がなくなり光沢の悪い塗膜となる。一般に金粉は油性インキ中で優れた金属光沢を出すためにステアリン酸のような高級脂肪酸で表面処理している。
このような脂肪酸で処理した金粉であっても本発明の処理をすると、水性インキ中においても金粉をある程度湿潤分散させるとともに、一定の割合で金粉を塗膜表面に浮かび上がらせ、優れた金属光沢を有する塗膜となる。
【0011】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するがこれにより本発明の水性インキ用金粉の使用範囲が限定されるものではない。なを文中に部とあるのは全て重量部である。
【0012】
【実施例1】
平均粒子径10ミクロンの金粉(銅90%、亜鉛10%)100部に対し、ノニルフェノールにエチレンオキサイドを付加させたHLB値10.5の非イオン界面活性剤を2部添加した。ミキサーにて60rpm 、30分間混合、被覆し水性インキ用金粉を製造した。このようにして得た水性インキ用金粉の性能を評価するため市販のアクリルエマルジョン水溶液70部に30部混合分散し塗膜を作成した結果、トルエンを使用した金色インキに近い金属光沢を示した。
【0013】
【実施例2】
平均粒子径10ミクロンの金粉(銅90%、亜鉛10%)100部に対し、ノニルフェノールにエチレンオキサイドを付加させたHLB値11.7の非イオン界面活性剤を2部添加した。ミキサーにて60rpm 、30分間混合、被覆し水性インキ用金粉を製造した。このようにして得た水性インキ用金粉の性能を評価するため市販のアクリルエマルジョン水溶液70部に30部混合分散し塗膜を作成した結果、トルエンを使用した金色インキに近い金属光沢を示した。
【0014】
【実施例3】
平均粒子径5ミクロンの金粉(銅90%、亜鉛10%)100部に対し、ノニルフェノールにエチレンオキサイドを付加させたHLB値10.9の非イオン界面活性剤を4部添加した。ミキサーにて60rpm 、60分間混合、被覆し水性インキ用金粉を製造した。このようにして得た水性インキ用金粉の性能を評価するため市販のアクリルエマルジョン水溶液70部に30部混合分散し塗膜を作成した結果、トルエンを使用した金色インキに近い金属光沢を示した。
【0015】
【実施例4】
平均粒子径10ミクロンの金粉(銅90%、亜鉛10%)100部に対し、ノニルフェノールにエチレンオキサイドを付加させたHLB値10.9の非イオン界面活性剤を2部添加した。ミキサーにて60rpm 、30分間混合、被覆し水性インキ用金粉を製造した。このようにして得た水性インキ用金粉の性能を評価するため市販のアクリルエマルジョン水溶液70部に30部混合分散し塗膜を作成した結果、トルエンを使用した金色インキに近い金属光沢を示した。
【0016】
【実施例5】
平均粒子径20ミクロンの金粉(銅90%、亜鉛10%)100部に対し、ノニルフェノールにエチレンオキサイドを付加させたHLB値10.9の非イオン界面活性剤を1部添加した。ミキサーにて60rpm 、30分間混合、被覆し水性インキ用金粉を製造した。このようにして得た水性インキ用金粉の性能を評価するため市販のアクリルエマルジョン水溶液70部に30部混合分散し塗膜を作成した結果、トルエンを使用した金色インキに近い金属光沢を示した。
【0017】
【実施例6】
平均粒子径40ミクロンの金粉(銅90%、亜鉛10%)100部に対し、ノニルフェノールにエチレンオキサイドを付加させたHLB値10.9の非イオン界面活性剤を0.2部添加した。ミキサーにて60rpm 、30分間混合、被覆し水性インキ用金粉を製造した。このようにして得た水性インキ用金粉の性能を評価するため市販のアクリルエマルジョン水溶液60部に40部混合分散し塗膜を作成した結果、トルエンを使用した金色インキに近い金属光沢を示した。
【0018】
【実施例7】
平均粒子径5ミクロンの金粉(銅75%、亜鉛25%)100部に対し、高級アルコールにエチレンオキサイドを付加させたHLB値10.2の非イオン界面活性剤を4部添加した。ミキサーにて60rpm 、60分間混合、被覆し水性インキ用金粉を製造した。このようにして得た水性インキ用金粉の性能を評価するため市販のアクリルエマルジョン水溶液70部に30部混合分散し塗膜を作成した結果、トルエンを使用した金色インキに近い金属光沢を示した。
【0019】
【実施例8】
平均粒子径10ミクロンの金粉(銅75%、亜鉛25%)100部に対し、高級アルコールにエチレンオキサイドを付加させたHLB値10.2の非イオン界面活性剤を2部添加した。ミキサーにて60rpm 、30分間混合、被覆し水性インキ用金粉を製造した。このようにして得た水性インキ用金粉の性能を評価するため市販のアクリルエマルジョン水溶液70部に30部混合分散し塗膜を作成した結果、トルエンを使用した金色インキに近い金属光沢を示した。
【0020】
【実施例9】
平均粒子径20ミクロンの金粉(銅75%、亜鉛25%)100部に対し、高級アルコールにエチレンオキサイドを付加させたHLB値10.2の非イオン界面活性剤を1部添加した。ミキサーにて60rpm 、30分間混合、被覆し水性インキ用金粉を製造した。このようにして得た水性インキ用金粉の性能を評価するため市販のアクリルエマルジョン水溶液70部に30部混合分散し塗膜を作成した結果、トルエンを使用した金色インキに近い金属光沢を示した。
【0021】
【実施例10】
平均粒子径40ミクロンの金粉(銅75%、亜鉛25%)100部に対し、高級アルコールにエチレンオキサイドを付加させたHLB値10.2の非イオン界面活性剤を0.2部添加した。ミキサーにて60rpm 、30分間混合、被覆し水性インキ用金粉を製造した。このようにして得た水性インキ用金粉の性能を評価するため市販のアクリルエマルジョン水溶液60部に40部混合分散し塗膜を作成した結果、トルエンを使用した金色インキに近い金属光沢を示した。
【0022】
【実施例11】
平均粒子径5ミクロンの金粉(銅75%、亜鉛25%)100部に対し、ドデシルフェノールにエチレンオキサイドを付加させたHLB値10.0の非イオン界面活性剤を4部添加した。ボールミルにて30rpm 、120分間混合、被覆し水性インキ用金粉を製造した。このようにして得た水性インキ用金粉の性能を評価するため市販のウレタンエマルジョン水溶液70部に30部混合分散し塗膜を作成した結果、トルエンを使用した金色インキに近い金属光沢を示した。
【0023】
【実施例12】
平均粒子径10ミクロンの金粉(銅75%、亜鉛25%)100部に対し、ドデシルフェノールにエチレンオキサイドを付加させたHLB値10.0の非イオン界面活性剤を2部添加した。ボールミルにて30rpm 、60分間混合、被覆し水性インキ用金粉を製造した。このようにして得た水性インキ用金粉の性能を評価するため市販のアクリルエマルジョン水溶液70部に30部混合分散し塗膜を作成した結果、トルエンを使用した金色インキに近い金属光沢を示した。
【0024】
【実施例13】
平均粒子径20ミクロンの金粉(銅75%、亜鉛25%)100部に対し、ノニルフェノールにエチレンオキサイドを付加させたHLB値10.5の非イオン界面活性剤を1部添加した。ボールミルにて30rpm 、30分間混合、被覆し水性インキ用金粉を製造した。このようにして得た水性インキ用金粉の性能を評価するため市販のウレタンエマルジョン水溶液70部に30部混合分散し塗膜を作成した結果、トルエンを使用した金色インキに近い金属光沢を示した。
【0025】
【実施例14】
平均粒子径40ミクロンの金粉(銅75%、亜鉛25%)100部に対し、ノニルフェノールにエチレンオキサイドを付加させたHLB値10.5の非イオン界面活性剤を0.5部添加した。ボールミルにて30rpm 、30分間混合、被覆し水性インキ用金粉を製造した。このようにして得た水性インキ用金粉の性能を評価するため市販のポリエステルエマルジョン水溶液60部に40部混合分散し塗膜を作成した結果、トルエンを使用した金色インキに近い金属光沢を示した。
【0026】
【比較例】
【比較例1】
実施例1で使用した平均粒子径10ミクロンの金粉(銅90%、亜鉛10%)を、市販のアクリルエマルジョン水溶液70部に対して30部混合分散し金色インキを作成した。しかし、1分後には金粉と溶液が分離し、印刷できるものでなかった。
【0027】
【比較例2】
平均粒子径10ミクロンの金粉(銅90%、亜鉛10%)100部に対し、ノニルフェノールにエチレンオキサイドを付加させたHLB値8.9の非イオン界面活性剤を2部添加し、ミキサーにて60rpm 、30分間混合、被覆した。
このようにして得た金粉の性能を評価するため市販のアクリルエマルジョン水溶液70部に30部混合分散し塗膜を作成した結果、均一な金属光沢を有する塗膜を 得ることができなかった。
【0028】
【比較例3】
平均粒子径10ミクロンの金粉(銅90%、亜鉛10%)100部に対し、ノニルフェノールにエチレンオキサイドを付加させたHLB値12.6の非イオン界面活性剤を2部添加した。ボールミルにて30rpm、60分間混合、被覆した。このようにして得た金粉の性能を評価するため市販のアクリルエマルジョン水溶液70部に30部混合分散し塗膜を作成した結果、エマルジョン中に金粉が均一に分散するものの、塗膜表面に金粉が浮かばないためか光沢の悪い塗膜となった。
【0029】
【発明の効果】
本発明の水性インキ用金粉は、揮発成分の大部分が水である水性インキに混合分散しても、従来の有機溶剤を使用している金色インキに近い金属光沢の塗膜が得られる。その結果、いままで無理と考えられていたトルエンを大量に使用していた金色グラビアインキを水性インキに替えることができ、地球環境対策上有機溶剤の排出量低減や作業環境の改善及び火災の危険性防止が可能となった。

Claims (1)

  1. 脂肪酸で処理した平均粒子径5〜40ミクロンの片状黄銅金属粉100重量部に対し、HLB値9〜12の非イオン界面活性剤を0.2〜4重量部混合、被覆された水性インキ用金粉。
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