JP3707445B2 - マイクロタイタープレート - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、試験用の液体を収納するマイクロタイタープレートに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
創薬スクリーニング分野、バイオテクノロジー、医学分野等において、物質の生化学的反応などの試験を行う際に、培養や生化学反応を行わせるための薬液や検体などの液体を収納する容器としてマイクロタイタープレートが用いられる。このマイクロタイタープレートには、同時に行われる試験で取扱うサンプル数を大きくして試験の効率を向上させる目的で、試料収納用の凹部であるウェルが格子配列で多数設けられている。そして、ウェルに液体を収納したマイクロタイタープレートを、内部雰囲気が所定条件に設定されたインキュベータ内に搬入して所定時間保持することにより、試験目的の培養や化学反応が進行する。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上述のインキュベーションにおいて、正しい試験結果を得るためには、同時にインキュベーションが行われる多数のウェルについて、試験条件が均一に保たれることが求められる。しかしながら、多数のウェルを格子配列で設けた従来のマイクロタイタープレートでは、同一のマイクロタイタープレート内のウェルであってもマイクロタイタープレート内における位置によってウェルの試験条件が異なる場合がある。
【0004】
すなわち、格子配列で形成された多数のウェルのうち、格子配列の最外縁に位置する外周ウェルはマイクロタイタープレート本体の外壁面に近接していることから、格子配列の内部に位置する他のウェルと比較した場合に液体の蒸発量が不可避的に多くなるいわゆる「エッジエフェクト」が存在し、厳密な意味において試験条件の均一性が確保されない。このため、試験条件の管理が厳しく要求されるような試験においては、このような「エッジエフェクト」を排除するため、マイクロタイタープレートの外縁部近傍に位置する外周ウェルを試験対象から除外した上でサンプル数の設定を行わなければならず、試験実行上の無駄を生じる結果となっていた。
【0005】
そこで本発明は、エッジエフェクトを軽減して試験効率を向上させることができるマイクロタイタープレートを提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
請求項記載のマイクロタイタープレートは、液体を収納する複数のウェルが格子配列で設けられた本体部と、この本体部の上面を覆い本体部に対して着脱自在な蓋部と、前記格子配列の最外縁に位置する外周ウェルの外側に所定幅で設けられ内部に液体を貯溜する溝状部と、前記溝状部の上面に設けられ、前記溝状部を水密・非気密に閉塞する疎水性多孔質膜より成る膜部材とを備え、前記蓋部を本体部に装着した状態において前記溝状部内の液体から蒸発する蒸気によって前記外周ウェル内の液体の蒸発を抑制する。
【0009】
請求項記載のマイクロタイタープレートは、液体を収納する複数のウェルが格子配列で設けられた本体部と、この本体部の上面を覆い本体部に対して着脱自在な蓋部と、この蓋部の前記本体部の上面に対向する蓋部の裏面に形成され内部に液体を貯溜する液体貯溜空間と、この液体貯溜空間の下面に設けられ液体貯溜空間を水密・非気密に閉塞する疎水性多孔質膜より成る膜部材とを備え、前記蓋部を本体部に装着した状態においてこの液体貯溜空間内の液体から蒸発する蒸気によって前記ウェル内の液体の蒸発を抑制する。
【0010】
本発明によれば、少なくとも格子配列の最外縁に位置する外周ウェル近傍の所定幅範囲を含んだ範囲に形成され内部に液体を貯溜する液体貯溜部とを備え、蓋部を本体部に装着した状態においてこの液体貯溜部内の液体から蒸発する液体蒸気によって外周ウェルの液体の蒸発を抑制することにより、エッジエフェクトを軽減することができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1のマイクロタイタープレートの斜視図、図2は本発明の実施の形態1のマイクロタイタープレートの側断面図、図3は本発明の実施の形態1のマイクロタイタープレートの部分断面図である。
【0012】
まず、図1、図2を参照して、マイクロタイタープレート1の構造を説明する。図1において、マイクロタイタープレート1は、本体部2と本体部2の上面を覆い本体部に対して着脱自在な蓋部3より構成される。本体部2には、試験対象の試料を含む検体や薬液などの液体を収納する複数のウェル4が格子配列で設けられている。
【0013】
図2は、マイクロタイタープレート1のA−A断面を示しており、図2(a)は、蓋部3を本体部2から取り外した状態を、図2(b)は蓋部3を本体部2に装着した状態をそれぞれ示している。蓋部3は、天板部3aと側板部3bより成り、蓋部3を装着した状態では側板部3bが本体部2の外側面2aの外側に位置し、天板部3aがウェル4の上方を覆う。この状態において、側板部3bと外側面2aとの間に隙間Sが確保されるように、本体部2と蓋部3の形状・寸法が設定されている。隙間Sは、後述するようにインキュベーションにおいて各ウェル4内と外部の雰囲気気体とを相互に流通させることを目的として設けられている。
【0014】
図2(a)、(b)に示すように、ウェル4には試験対象の液体7が収納されている。試験目的の培養や化学反応を行うためのインキュベーションにおいては、マイクロタイタープレート1は各ウェル4に液体7を収納した本体部2に蓋部3を装着した状態で、内部雰囲気が所定条件に設定されたインキュベータ内に搬入される。
【0015】
図2(a)、(b)に示すように、本体部2に設けられた多数のウェル4のうち、格子配列の最外縁に位置する外周ウェル4eの外側には、ウェル4とは別に所定量の液体を収納可能な所定幅の溝状部5(液体貯溜部)が本体部2の全周にわたって設けられている。溝状部5には、試験対象の液体7と同質の液体8がマイクロタイタープレート1の製造時に注入されており、溝状部5が形成された位置の本体部2上面には膜部材6が貼着されて液体8の漏出を防いでいる。膜部材6は液体を遮断し気体を透過する性質を有する疎水性多孔質膜より成り、溝状部5の上部を膜部材6で塞ぐことにより、溝状部5は膜部材6によって水密・非気密に閉塞される。
【0016】
すなわち、溝状部5内部の液体8は、膜部材6によって遮断されて溝状部5から漏出することはないが、液体8が蒸発することによって生じた蒸気は膜部材6を透過して溝状部5から蒸散する。溝状部5は、少なくとも格子配列の最外縁に位置する外周ウェル4e近傍の所定幅範囲Bに含まれる範囲内に形成され、内部に液体を貯溜する液体貯溜部となっている。
【0017】
図3(a)に示すように、インキュベーションの過程では、蓋部3の側板部3bと本体部2の外側面2aとの隙間S内にはインキュベータ内の雰囲気気体が流入する。そしてこの雰囲気気体は、膜部材6を透過して各ウェル4の上方の空間内に進入し、各ウェル4に収納された液体7と接触する。またインキュベーションの過程で各ウェル4内の液体7から蒸発した蒸気は、図3(b)に示すように、逆に膜部材6を透過して隙間Sからマイクロタイタープレート1の外部に放散する。
【0018】
このとき、格子配列の最外縁に位置する外周ウェル4eと外側面2aとの間には、内部に液体8を収容した溝状部5が介在していることから、以下に説明するように、外周ウェル4e内の液体の蒸発が抑制される。すなわち、インキュベーションの過程では、マイクロタイタープレート1の外部から外側面2aを介して本体部2内に熱が伝達されるが、本実施の形態のマイクロタイタープレート1では、溝状部5によってこの伝熱が遮断されることから、外周ウェル4eと周囲との間の伝熱状態はその他の内側のウェル4と比較して大きな相違がない。
【0019】
また図3(c)に示すように、溝状部5内部の液体8から蒸発した蒸気は、膜部材6を透過して外部へ放散されるとともに、直近の外周ウェル4e内に進入する。従って外周ウェル4e内の蒸気圧が上昇し、これにより外周ウェル4e内の液体7からの蒸発が抑制される。
【0020】
なお、上記実施の形態1では、溝状部5の上面を膜部材6で閉塞するようにしているが、膜部材6を設けずに開放状態にしておき、マイクロタイタープレート1を使用する際に、溝状部5に液体8を注入するようにしても良い。
【0021】
また、液体貯溜部の形状、位置、数等は、ウェル4の配置による制約を受けない位置であれば自由に設計することが可能である。例えばウェル4に囲まれた範囲に、1つまたは複数の凹部を形成して、これを液体貯溜部としてもよく、あるいは外周ウェルの外側に、複数の凹部や溝状部を形成して液体貯溜部としても良い。ただしエッジエフェクト防止の効果を考えると、外周ウェルの近傍もしくはその外側に形成するのが好ましい。
【0022】
(実施の形態2)
図4は本発明の実施の形態2のマイクロタイタープレートの斜視図、図5は本発明の実施の形態2のマイクロタイタープレートの側断面図、図6は本発明の実施の形態2のマイクロタイタープレートの部分断面図である。本実施の形態2のマイクロタイタープレートは、実施の形態1に示すマイクロタイタープレート1と同様の用途に用いられ、以下に説明する相違点を除き、マイクロタイタープレート1と同様の構造となっている。
【0023】
図4において、マイクロタイタープレート11は、実施の形態1に示すマイクロタイタープレート1と同様に本体部12と蓋部13より構成され、本体部12には、同様に複数のウェル14が格子配列で設けられている。
【0024】
図5は、マイクロタイタープレート11のB−B断面を示しており、図5(a)は、蓋部13を本体部12から取り外した状態を、図5(b)は蓋部13を本体部12に装着した状態をそれぞれ示している。蓋部13は、天板部13aと側板部13bより成り、蓋部13が装着された状態では、側板部13bと外側面12aとの間には、実施の形態1と同様に隙間Sが確保されるようになっている。
【0025】
図5(a)、(b)に示すように、蓋部13には、天板部13aの下方に格子状に形成されたリブ13dによって保持された膜部材16が外周ウェル14eを含む全範囲に展張されており、膜部材16と天板部13aとの間の空間は、液体を貯溜する液体貯溜空間15(液体貯溜部)となっている。液体貯溜空間15内には、製造時においてまたは使用に先立って液体7と同質の液体8が、天板部13aに設けられた注入孔13cより注入される。膜部材16は実施の形態1に示す膜部材6と同様に疎水性多孔質膜より成り、液体貯溜空間15は膜部材16によって水密・非気密に閉塞される。
【0026】
すなわち、液体貯溜空間15内部の液体8は、膜部材16によって遮断されて液体貯溜空間15から漏出することはないが、液体8が蒸発することによって生じた蒸気は、膜部材16を透過して液体貯溜部15から蒸散する。液体貯溜空間15を形成する位置は、本体部12の上面に対向する蓋部13の下面であればどこでもよいのであるが、エッジエフェクト防止の効果を考えると、外周ウェルの近傍もしくはその外側に形成するのが好ましい。また液体貯溜空間15を複数に区画して設けてもよい。
【0027】
図6(a)に示すように、インキュベーションの過程では、蓋部13の側板部13bと本体部12の外側面12aとの隙間S内にインキュベータ内の雰囲気気体が流入し、膜部材16を透過して各ウェル14の上方の空間内に進入し、各ウェル14に収納された液体7と接触する。またインキュベーションの過程で各ウェル14内の液体7から蒸発した蒸気は、図6(b)に示すように、逆に膜部材16を透過して隙間Sからマイクロタイタープレート11の外部に放散する。
【0028】
このとき、格子配列の最外縁に位置する外周ウェル14eと外側面12aとの間には、液体貯溜空間15が介在していることから、以下に説明するように液体貯溜空間15内の液体8から蒸発する蒸気によって、外周ウェル14e内の液体の蒸発が抑制される。すなわち、インキュベーションの過程では、図6(c)に示すように、液体貯溜空間15内部の液体8から蒸発した蒸気は、膜部材16を透過して外部へ放散されるとともに、外周ウェル14e内に進入する。従って外周ウェル14e内の蒸気圧が上昇し、これにより外周ウェル14e内の液体7からの蒸発が抑制される。
【0029】
(実施の形態3)
図7は本発明の実施の形態3のマイクロタイタープレートの斜視図、図8は本発明の実施の形態3のマイクロタイタープレートの側断面図である。本実施の形態3のマイクロタイタープレートは、実施の形態2に示すマイクロタイタープレート11とほぼ同様の構成であり、以下に説明するように、蓋部に設けられる液体貯溜空間の形成範囲のみが異なっている。
【0030】
図7において、マイクロタイタープレート21は、実施の形態2に示すマイクロタイタープレート11と同様に本体部22と蓋部23より構成され、本体部22には、同様に複数のウェル24が格子配列で設けられている。図8は、マイクロタイタープレート21のC−C断面を示している。図8(a)、(b)に示すように、蓋部23の天板部23aの下方には、下面に貼着された膜部材26と天板部23aとの間に液体を貯溜する液体貯溜空間25が部分的に設けられている。液体貯溜空間25は、本体部22の外周ウェル24eを含む所定幅範囲Bに対応した幅でマイクロタイタープレート21の4周を取り巻く配置となっている。液体貯溜空間25内には、同様に注入孔23cを介して液体が注入される。
【0031】
膜部材26は、実施の形態1における膜部材6と同様の疎水性多孔質膜で形成されており、液体貯溜空間25は膜部材26によって水密・非気密に閉塞される。すなわち、液体貯溜空間25内部の液体8は、膜部材26によって遮断されて液体貯溜空間25から漏出することはないが、液体8が蒸発することによって生じた蒸気は膜部材26を透過して液体貯溜空間25から蒸散する。液体貯溜空間25は、少なくとも格子配列の最外縁に位置する外周ウェル24e近傍の所定幅範囲Bを含んだ範囲に形成され、内部に液体を貯溜する液体貯溜部となっている。
【0032】
本実施の形態3に示す構成においても、インキュベーションの過程においては外周ウェル24eの近傍の所定幅範囲Bの上方に液体貯溜部が存在することから、実施の形態2の説明において図6に示す効果と同様の効果を得ることができる。
【0033】
上記各実施の形態1,2,3において説明したように、本発明のマイクロタイタープレート1,11,21では、格子配列の内部に位置するウェルと比較した場合に液体の蒸発量が不可避的に多くなりやすい外周ウェル近傍の所定幅範囲を含んだ範囲に、内部に液体を貯溜する液体貯溜部を形成するようにしている。
【0034】
これにより、インキュベーション過程において液体貯溜部の液体が蒸発することによって発生する蒸気によって外周ウェルからの過度の蒸発を抑制することができ、格子配列の最外縁に位置することに起因して発生する外周ウェルの試験条件のばらつき(エッジエフェクト)を軽減して、各ウェルの試験条件を極力均一に保つことが可能となる。したがって、エッジエフェクトのために外周ウェルが試験対象から除外される無駄を省き、試験効率を向上させることができる。なお、上記各実施の形態において、液体貯溜部(溝状部5、液体貯溜空間15)での液体の保持方法としては、布や綿のように吸水性のある物に含ませた状態で保持してもよい。
【0035】
【発明の効果】
本発明によれば、少なくとも格子配列の最外縁に位置する外周ウェル近傍の所定幅範囲を含んだ範囲に形成され内部に液体を貯溜する液体貯溜部とを備え、蓋部を本体部に装着した状態においてこの液体貯溜部内の液体から蒸発する液体蒸気によって外周ウェルの液体の蒸発を抑制することにより、エッジエフェクトを軽減することができ、したがって、エッジエフェクトのために外周ウェルが試験対象から除外される無駄を省き、試験効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態1のマイクロタイタープレートの斜視図
【図2】本発明の実施の形態1のマイクロタイタープレートの側断面図
【図3】本発明の実施の形態1のマイクロタイタープレートの部分断面図
【図4】本発明の実施の形態2のマイクロタイタープレートの斜視図
【図5】本発明の実施の形態2のマイクロタイタープレートの側断面図
【図6】本発明の実施の形態2のマイクロタイタープレートの部分断面図
【図7】本発明の実施の形態3のマイクロタイタープレートの斜視図
【図8】本発明の実施の形態3のマイクロタイタープレートの側断面図
【符号の説明】
1,11,21 マイクロタイタープレート
2,12,22 本体部
3,13,23 蓋部
4,14,24 ウェル
4e,14e,24e 外周ウェル
5 溝状部
6,16,26 膜部材
7 液体
15,25 液体貯溜空間

Claims (2)

  1. 液体を収納する複数のウェルが格子配列で設けられた本体部と、この本体部の上面を覆い本体部に対して着脱自在な蓋部と、前記格子配列の最外縁に位置する外周ウェルの外側に所定幅で設けられ内部に液体を貯溜する溝状部と、前記溝状部の上面に設けられ、前記溝状部を水密・非気密に閉塞する疎水性多孔質膜より成る膜部材とを備え、前記蓋部を本体部に装着した状態において前記溝状部内の液体から蒸発する蒸気によって前記外周ウェル内の液体の蒸発を抑制することを特徴とするマイクロタイタープレート。
  2. 液体を収納する複数のウェルが格子配列で設けられた本体部と、この本体部の上面を覆い本体部に対して着脱自在な蓋部と、この蓋部の前記本体部の上面に対向する蓋部の裏面に形成され内部に液体を貯溜する液体貯溜空間と、この液体貯溜空間の下面に設けられ液体貯溜空間を水密・非気密に閉塞する疎水性多孔質膜より成る膜部材とを備え、前記蓋部を本体部に装着した状態においてこの液体貯溜空間内の液体から蒸発する蒸気によって前記ウェル内の液体の蒸発を抑制することを特徴とするマイクロタイタープレート。
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