JP3706950B2 - アイオノマー樹脂を含む着色組成物 - Google Patents

アイオノマー樹脂を含む着色組成物 Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、実質的な熱可塑性を有し強靱で弾性に富んだアイオノマー樹脂(1)と、染料又は顔料(2)とを必須成分として含有する着色組成物に関する。このような着色組成物は、インクジェット記録用インクとしての用途に、また電子写真用粉体トナーとしての用途に好適に応用できる。
【0002】
【従来の技術】
古くより知られたインクジェット記録用インク組成物としては、可溶性染料を水に溶解し、湿潤剤等の添加剤を加えたインク組成物がある。しかしこのようなインク組成物の場合、可溶性染料を用いているため、水溶性染料では耐水性が、また油性染料では耐溶剤性が悪く、かつ共通して耐光性が悪いという欠点を有していた。また、染料が分子レベルで溶解しているため、オフィスで一般に使用されているコピー用紙などのいわゆる普通紙に印刷すると髭状のフェザリングと呼ばれるブリードを生じて著しい印刷品質の低下を招いていた。
【0003】
上記欠点を改良するためにいわゆる顔料インクがすでに様々に提案されており、例えばバインダー兼分散剤として樹脂を用いてカーボンブラックや有機顔料を分散させた樹脂溶解型のインクやポリマーラテックスあるいはマイクロカプセルとして染料又は顔料を内包する樹脂分散型のインクが各種提案されている。
【0004】
樹脂溶解型のインクのうち、ポリマーラテックスというエマルジョン系の不均一ポリマー粒子を使用したものとして、例えば特開昭54−58504号公報には疎水性染料とビニル重合体微粒子の混合物を水中油型分散させた水性インク組成物が記載されているが、染料の分散が不安定で、ポリマー粒子も融着するため、ノズルが詰まり、安定に記録できないと言う欠点がある。さらに特開昭55−139471号公報には、水性ビニルポリマーラテックス中で分散染料を分散、加熱することにより、該染料を含浸させた水不溶性ビニルポリマーラテックス粒子を水性媒体中に分散させたインク組成物が提案されているが、ビニルポリマーラテックス粒子に分散染料を完全に含浸させるのは極めて困難であり、得られたインク組成物には、分散染料単独の分散物が残り、これがインク画像の滲みを発生させると言う欠点がある。
【0005】
このようなポリマーラテックスの欠点を改善するため、ある種の有機基を結合させた水不溶性ポリマーを使用するものとして、油溶染料を含み、かつノニオン系安定剤が永久的に結合した水不溶性ポリマーを水ーアルコール混合媒質に分散させたインク組成物が特開昭62−172076号公報で提案されているが、水不溶性のポリマーの乳化重合に表面活性剤を使用するために泡立ちが生じたり、ノニオン系安定剤を粒子中にも内包することからノニオン系安定剤が油性染料をブリードさせて画質を低下すると言う欠点がある。更に特開昭62−184072号公報では、反応性基を有するポリマーラテックス粒子を、該反応性基と反応して共有結合を生成しうる官能基を有する染料で着色してなる色材を含有するインク組成物が提案されているが、官能基を有する染料でポリマー粒子を着色するために、長時間加熱する必要があるため、ポリマー粒子が凝集沈殿すると言う欠点がある。また未反応の官能基を有する染料を除去するために、極めて煩雑な操作を必要とする欠点がある。
【0006】
一方、樹脂分散型のインクの例として、特開昭62−95366号公報では水不溶性有機溶媒中にポリスチレン、ポリメチルメタクリレートなどの水不溶性のポリマーと油性染料を溶解し、さらに表面活性剤を含む水溶液と混合して乳化させた後に溶媒を蒸発してポリマー粒子中に内包された染料を含むインクから成るジェット複写法用インク組成物が提案されている。さらに特開昭62−254833号公報ではカプセル化時の有機溶媒と水との間の界面張力を10ダイン以下にした、水性書き込み液のほか繊維着色、化粧品などの各分野で応用できる着色料水性懸濁液の製造法が提案されており、ここで用いる水不溶性のポリマーとしてアルキル化ビニルピロリドン、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール、スチレン/無水マレイン酸共重合体等の水不溶性ポリマーの例示がある。しかしながら、これら水不溶性のポリマーを用いたカプセルタイプのインクジェットプリンター用インクでは、水分や有機溶剤の蒸発に伴い粒子同士の凝集・付着が生じやすく、耐熱保存性や水分蒸発時のノズル目詰まりが避けられなかった。
【0007】
さらに特開平3−186343号公報では加水分解性金属キレート化合物を含有した水難溶性芯物質溶液を、この金属キレート化合物の加水分解物と反応し得る壁物質含有水性媒体中に分散させることによりマイクロカプセルを得る方法が提案されているが、水難溶性の芯物質の表面で高分子化が起こるため得られるカプセルの機械強度は芯物質の存在によって低下し、また加水分解反応と高分子化の制御が困難で粒径が不均一になる傾向が避けられなかった。特開平5−237370号公報でもポリビニルアルコールまたはその誘導体と塩化ジルコニウムの混合によって得られるキレート樹脂を壁膜とするマイクロカプセルの連続製造法が提案されているが、水溶性のポリビニルアルコールとジルコニウムの水溶性塩化物の組み合わせに限定され、また塩化ジルコニウムを原料とすることによる塩素イオンの発生に伴うプリントヘッドの腐食の発生が避けられないという欠点がある。
【0008】
一方、電子写真用粉体トナーの分野では、前記したマイクロカプセル化技術を応用した提案が種々なされており、具体的には特開平5−66600号公報ではアニオン型自己水分散性樹脂に染・顔料が内包されたカプセル型トナーが提案されているが、このようなアニオン性官能基が中和されただけの線状ポリマーからなる熱可塑性樹脂では、ヒートロール定着における定着温度領域が狭く、かつ耐熱保存性を同時に満足することが困難であった。
【0009】
また特開昭55−166651号公報や特開昭56−94362号公報では特定のカルボキシル基含有重合体を多価金属イオンで架橋構造化した結着樹脂を使用した定着不良あるいはオフセット現象等のヒートロール定着適性に優れた静電荷現像用トナーが提案されているが、いずれも多価金属イオンで架橋構造化した、親水性基を全く有しない結着樹脂を用い、これと染・顔料等とを一括して熱溶融混練し、粉砕する方法による。このため得られた樹脂混練物は強靱で弾性を有するため著しく粉砕性が悪く、得られるトナーの粒径範囲も広くなるという欠点を有していた。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前記したインクジェット記録用インク、マイクロカプセル、電子写真用粉体トナーなどにおいて使用されたポリマーに基づく課題を解決するものである。
【0011】
即ち本発明の目的は、アニオン性の官能基を有する合成樹脂中の前記官能基の少なくとも一部が一価対イオンと塩を形成し、表面に当該塩が局在化しているという新たなる分子構造に基づく自己水分散性のアイオノマー樹脂(1)の特徴が最大限に発揮される着色組成物を提供するにある。さらに本発明の目的は、当該着色組成物の特徴を生かして、例えば分散安定性に優れ、インク中の粒子の凝集や水分蒸発に伴う粒子の凝集によるノズル目詰まりの問題のないインクジェット記録用インク組成物を提供するにある。さらにまた本発明の目的は、当該着色組成物を特徴を生かして、より帯電性に優れた電子写真用粉体トナー組成物を提供するにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記目的は、以下の本発明によって達成される。
即ち、本発明は、アニオン性の官能基(a)を有する合成樹脂(A)中の前記官能基(a)の少なくとも一部が一価対イオン(b)と塩を形成し、更に前記官能基(a)の他の少なくとも一部が多価金属イオン(c)を介して分子間架橋構造を形成する自己水分散性アイオノマー樹脂(1)と、染顔料(2)とを必須成分として含有する着色組成物にかかわる。さらに本発明は、このような着色組成物を少なくとも含んでなるインクジェット記録用インク組成物やかかる着色組成物からなる電子写真用粉体トナー組成物にかかわる。
【0013】
本発明の着色組成物においては、組成物中に含まれる樹脂として、合成樹脂中にあるアニオン性の官能基の少なくとも一部が一価の塩基で中和され、かつ該官能基の他の少なくとも一部が多価金属イオンによるイオン結合により分子間架橋した構造となる自己水分散性アイオノマー樹脂を用いることに特徴がある。
【0014】
かかる樹脂は、アニオン性の官能基を有する合成樹脂中の前記官能基の少なくとも一部が一価対イオンと塩を形成し、表面に当該塩が局在化して存在することに基づいて自己水分散性を示すとともに、共有結合性架橋とは異なる、可逆的架橋からなる網目構造を持つ可逆ゲルを形成する多価金属イオンとアニオン性基とのイオン的な結合によるキレート樹脂でもある。この自己水分散性アイオノマー樹脂は、極めて強靱で弾性に富んだ性能を有していて樹脂粒子間の凝集が少なく、さらにイオン結合の特徴として、その結合エネルギーが共有結合と比較して小さいことから、架橋率が高くても良好な熱可塑性を示す。このため、このような自己水分散性アイオノマー樹脂を含有する本発明の着色組成物を調製し用いた場合、自己水分散性であることとアイオノマー樹脂であることの相乗効果により、インクジェット記録用インク用組成物の場合には、分散安定性に優れ、インク中の粒子の凝集や水分等の蒸発に伴う粒子の凝集によるノズル目詰まりの問題がなく、この用途として好適である。またこの着色組成物を電子写真用粉体トナー用として調製し用いても、より帯電性が良好で、しかも耐熱保存性に優れ、熱圧ロール定着における定着温度領域が広く、いわゆるオフセットがなく、やはりこの用途としても好適である。
【0015】
本発明のおいて用いる自己水分散性アイオノマー樹脂(1)は、アニオン性官能基(a)を有する合成樹脂(A)におけるこのアニオン性官能基一部もしくは全部を一価塩基および多価金属塩と反応させて得たアイオノマー樹脂である。
【0016】
樹脂(A)におけるアニオン性官能基(a)は、カルボキシル基、スルホン酸基、スルフィン酸基等であって特に限定されるものではないが、このうちカルボキシル基は一般的であり、良好な自己水分散性アイオノマー樹脂を与える。
【0017】
前記官能基を有する合成樹脂(A)の酸価についても特に限定されるものではないが、10未満では塩形成時の乳化特性と架橋性能が不十分であり、200を越えると塩基の中和により樹脂が水に膨潤や溶解しやすく、耐水性が著しく劣る傾向がある。このため合成樹脂(A)の酸価は10〜200の範囲にあることが好ましい。
【0018】
アニオン性官能基を有する合成樹脂(A)としてはアクリル酸樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂等の有機溶剤可溶性の樹脂が挙げられるが、例えばスチレン、置換スチレン、(メタ)アクリル酸エステルからなる群から選ばれる少なくとも一つのモノマーと、(メタ)アクリル酸との共重合体は耐水性が良好で好適である。具体的にはスチレンあるいはα−メチルスチレンのような置換スチレン、アクリル酸メチルエステル、アクリル酸エチルエステル、アクリル酸ブチルエステル、アクリル酸2−エチルヘキシルエステル等のアクリル酸エステル;メタクリル酸メチルエステル、メタクリル酸エチルエステル、メタクリル酸ブチルエステル、メタクリル酸2−エチルヘキシル等のメタクリル酸エステルから選ばれる少なくとも一つ以上のモノマーと、アクリル酸、メタクリル酸から選ばれる少なくとも一つ以上のモノマーを含む(メタ)アクリル酸系共重合体が好ましい。また樹脂の分子量範囲についても特に制限はないが、1000以上10万以下の分子量のものがより好ましい。またマイクロカプセルタイプのものを製造するのであれば、かかる樹脂が水性媒体との組み合わせで安定なマイクロカプセルを形成するものであれば、これらに特に限定されるものではなく、同時に2種類以上を混合して使用しても良い。
【0019】
前記したように、本発明において用いる自己水分散性アイオノマー樹脂(1)では、前記合成樹脂(A)中のアニオン性官能基(a)の少なくとも一部が一価対イオン(b)と塩を形成している。ここでいう一価対イオン(b)には、例えば後述する水溶性一価塩基(B)より生じるアルカリ金属イオン、アンモニウムイオン等がある。
【0020】
またこの自己水分散性アイオノマー樹脂(1)は、前記合成樹脂(A)中のアニオン性官能基(a)の他の一部が多価金属イオン(c)を介して分子間架橋されている。この多価金属イオン(c)は、合成樹脂(A)中のアニオン性官能基(a)と後述する有機溶媒に可溶性の多価金属塩(C)との反応によって生じる。当該多価金属イオン(c)の価数は、2以上であれば良いが、好ましくは2または3である。多価金属イオン(c)として、特に好ましいのはカルシウムイオン、バリウムイオン、マグネシウムイオン、亜鉛イオン、アルミニウムイオンの中から選ばれる少なくとも一つ以上である。これらの金属イオンを介して分子間架橋した構造の自己水分散性アイオノマー樹脂は一般的に無色で、毒性も少なく、良好な強靱でかつ良好な熱可塑性を示す。そしてこれらの金属イオンによって架橋された自己水分散性アイオノマー樹脂を含んでなる本発明着色組成物は、金属イオンによる発色が少なく、併用する染顔料の色を忠実に再現できるという利点もある。
【0021】
合成樹脂(A)を多価金属イオン(c)を介して架橋した際の架橋率は、合成樹脂の酸価、分子量と多価金属イオンの価数によって最適なアイオノマー樹脂が得られるよう架橋率を選択すればよい。
【0022】
樹脂(A)をトナーに用いる場合にはTg(ガラス転移点)が40〜80℃となるように、インクに用いる場合にはTgが40〜120℃となるように調製するのが好ましい。
【0023】
一方、本発明の着色組成物に使用する染顔料(2)は、例えば、磁性粉のほかカーボンブラック、チタンブラック、チタンホワイト、硫化亜鉛、ベンガラ等の無機顔料やフタロシアニン顔料、モノアゾ系、ジスアゾ系等のアゾ顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料等の有機顔料のほか、アゾ系、金属錯塩系、アントラキノン系、トリアリルメタン系等の染料や分散染料等の染料が用いられるが、これらに限定されるものではない。かかる染顔料の使用量は、前記した樹脂(1)100重量部当たり、1〜500重量部を用いる。染顔料の添加量については本発明における効果を達成すれば特にその範囲を規定するものではないが、例えば最終的に得られるインクあるいは電子写真用粉体トナー中で0.5〜10重量%となるような量であることが好ましい。
【0024】
樹脂(1)と染顔料(2)とから前記のインクやトナーを得るには公知慣用の方法がいずれも採用できる。
【0025】
本発明着色組成物の必須構成成分である、自己水分散性アイオノマー樹脂(1)と、染顔料(2)とを少なくとも含んでなるインクジェット記録用の水性インク組成物を調製するには、公知の方法に準じて、水性媒体中に前記アイオノマー樹脂(1)と染顔料(2)とを少なくとも含む組成物を調製するばよい。調製された水性インク組成物の形態が、いわゆる樹脂溶解型インクであっても、樹脂分散型インクであってよい。好適な製造方法としては、公知のアイオノマー樹脂水性分散液の製造の際の任意の段階で、原料成分或いは反応系に対して染顔料を添加し、これを溶解又は分散せしめておく方法がよい。これについて具体的に示すと、▲1▼有機溶媒の存在下に、中和により自己水分散しうる、アニオン性官能基(a)を有する合成樹脂(A)と、前記官能基(a)を中和しうる水溶性一価塩基(B)と、有機溶媒に可溶性の多価金属塩(C)とを反応させて得た自己水分散性のアイオノマー樹脂の有機溶媒溶液を水を必須成分とする水性媒体中に加える方法;▲2▼前記自己水分散性のアイオノマー樹脂の有機溶媒溶液に、前記水性媒体を加える方法;▲3▼有機溶媒の不存在下に、前記したアニオン性官能基を有する合成樹脂(A)と前記した一価塩基(B)と前記した多価金属塩(C)とを溶融混練し、この混練物を水を必須成分とする水性媒体中に加える方法;▲4▼前記混練物に、前記水性媒体を加える方法;▲5▼有機溶媒の存在下にアニオン性官能基(a)を有する合成樹脂(A)と多価金属塩(C)とを反応させて得た水分散性となってないアイオノマー樹脂の有機溶媒溶液に、一価塩基(B)を含む水性媒体を加える方法;▲6▼前記水性媒体に、前記した水分散性となってないアイオノマー樹脂の有機溶媒溶液を加える方法;等の公知のアイオノマー樹脂水性分散液の各製造方法において、その任意の段階で、原料或いは反応系に対して染顔料を添加し、これを溶解又は分散せしめておく方法が挙げられる。染顔料の添加にあたっては、そのままでも溶液又は分散液の形態でもよい。
【0026】
本発明着色組成物を用いた、マイクロカプセルタイプのインクジェット記録用の水性インク組成物を得るための好適な製造方法としては、一般にはミルベースと呼ばれる合成樹脂(A)と多価金属塩(C)を含む有機溶剤溶液中に、染顔料を溶解又は分散せしめておき、この着色ミルベースに更に水溶性一価塩基(B)を混合溶解して、イオン架橋した合成樹脂を更に中和して自己分散性樹脂とした後、滴下等で水を必須成分とする水性媒体と混合して乳化させる、いわゆる転相乳化法を用いるのがよい。この場合、水を必須成分とする水性媒体中に、自己水分散性アイオノマー樹脂を含む溶液を加えても良いが、逆に当該樹脂を含む溶液中に水性媒体を加えるほうが、均一な粒子径の水性分散液が得られる点で好ましい。必要によっては界面活性剤を併用して、強制的に乳化させて得ることもできる。しかしながら界面活性剤や保護コロイドは最終的に得られる粒子の物性を低下させる傾向があるので用いないことが好まれる。転相乳化法によれば、染顔料(2)が樹脂(1)溶解したまたは染顔料(2)が樹脂(1)に内包され一体化したほぼ真球状の粒子が得られるので好ましい。尚、内包には分散も含む。
【0027】
製造の際に用いられるアニオン性官能基を有する合成樹脂(A)を溶解するための有機溶媒には、例えばアセトン、ジメチルケトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール系溶媒、クロロホルム、塩化メチレン等の塩素系溶媒、ベンゼン、トルエン等の芳香族系溶媒、酢酸エチルエステル等のエステル系溶媒、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル等のグリコールエーテル系溶媒、アミド類等、樹脂を溶解させるものであれば使用可能である。樹脂成分がアクリル系樹脂の場合にはケトン系溶媒とアルコール系溶媒から選ばれる少なくとも1種類以上の組み合わせると良い。かかる有機溶媒の使用量は、本発明における効果を達成すれば特に規定されないが、合成樹脂/該有機溶媒の重量比が1/1〜1/20となるような量が好ましい。
【0028】
上記合成樹脂溶液には、添加剤として、必要に応じて分散剤、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等を溶媒、樹脂、染顔料と共に用いても良い。
水溶性一価塩基(B)としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属の水酸化物、アンモニア、トリエチルアミン、モルホリン等の塩基性物質の他、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン等のアルコールアミン系塩基性物質が使用可能であるがこれらに限られたものではない。合成樹脂(A)の有機溶媒溶液に一価の水溶性塩基(B)を混合して樹脂の中和をし、ついで乳化を行う場合、有機溶媒との相溶性の良い有機の塩基性物質を用いることがより好ましい。
【0029】
水溶性一価塩基(B)は、合成樹脂のアニオン性官能基の60%以上好ましくは80モル%以上に相当する量を用いるのがよい。着色組成物の使用目的によって必要であれば100モル%以上に相当する量の塩基(B)を添加しておいても差し支えない。一価塩基(B)の加える量を多くすると微粒径で安定した着色組成物が得られ、これはインクジェット記録用インク組成物用途に向いている。特に、中和のために用いた水溶性一価塩基(B)がアルコールアミンであると、より分散安定性に優れ、また水分や有機溶剤の蒸発に伴う粒子凝集によるノズル目詰まりが改良されたインクジェット記録用の水性もしくは油性インクが得られる。一価塩基(B)の加える量を少なくすると、着色組成物粒子の粒子径をより大きくすることができ、それを調節することで任意の粒子径の電子写真用粉体トナーが得られる。
【0030】
一方、有機溶媒に可溶性の多価金属塩(C)としては、2価以上の金属のアルコラート類、アシレート類、キレート類であって後述する有機溶媒に可溶なものであればに特に限定はない。金属イオンを介して分子間架橋した構造の樹脂粒子が、無色で、毒性も少なく、良好な強靱でかつ良好な熱可塑性を示すことから、カルシウム、バリウム、マグネシウム、亜鉛、アルミニウム等の多価金属のアルコラート類;前記アルコラートと酢酸、プロピオン酸、酪酸、等の有機カルボン酸とから得られるアシレート類及び前記アルコラート、アシレートと例えばアセチルアセトン、プロピオニルアセトンに代表されるβ−ジケトン類やアセト酢酸アルキルエステル、ジアセト酢酸アルキルエステルに代表されるβ−ケト酸エステル類等のキレート化剤とから得られるキレート類の使用が好適である。好ましくはこれら多価金属のアシレート類、キレート類である。またこれらの多価金属塩は併用して用いてもよい。
【0031】
本発明の合成樹脂(A)の多価金属塩(C)による架橋は、合成樹脂(A)の酸価、分子量や多価金属イオン(c)の価数によって使用用途に最適な樹脂粒子が得られるような架橋率を選択すればよい。通常、多価金属塩(C)の使用量は、全アニオン性官能基の1〜30モル%程度に相当する量で充分である。アシレート類のごとき多価金属塩では、この使用量を多くして架橋率が高い樹脂を得ようとすると、架橋樹脂の有機溶剤に対する溶解度が低下し、ゲル化しやすい。しかしながら添加する際の手段によっては100モル%に相当する量の多価金属塩(C)であっても添加することができる。例えば多価金属塩(C)の添加量が全アニオン性官能基の100モル%に達する量であっても、多価金属イオンに対して過剰(余剰)となる量のキレート化剤を合成樹脂(A)、一価塩基(B)、多価金属塩(C)を含む有機溶媒の溶液中に加え、これを存在させたまま反応を行う、或いは前記した(A)、(B)、(C)成分などを反応させて得た乳化前の自己水分散性アイオノマー樹脂(1)を含む有機溶媒溶液中に過剰となる量のキレート化剤を追加する等の手段をとると、樹脂の架橋のマスク効果が発生し、ゲル化することなく微粒子の樹脂乳化が可能となる。余剰量のキレート化剤が、樹脂乳化物中に存在すると平衡的に実質の樹脂の架橋は低下するが、樹脂乳化物は水性媒体中に安定に分散している。そして、樹脂乳化物中にある他の有機溶剤の留去の際にこのキレート化剤も留去すると、その平衡は大きく樹脂の架橋に傾き、結果として高架橋率のアイオノマー樹脂を含む水性分散液が得られる。過剰に加えることのできるキレート化剤の種類に特に制限はないが、アセチルアセトン、アセト酢酸エステル、ジアセト酢酸アルキルエステルの如き揮発性で留去が容易なものを使用すると好ましい。その添加量(余剰量)についても特に制限はないが、低架橋率に相当する量の多価金属塩(C)を添加するのであればキレート化剤の添加量を少なく、また高架橋率に相当する量の多価金属塩(C)を添加するのであればキレート化剤の添加量も増やすとよい。得られる架橋樹脂乳化物の粒子径は加えるキレート化剤の量が多ければ微粒子化の傾向を呈する。
【0032】
本発明の合成樹脂(A)中における多価金属イオンによる架橋を均一なものとするためには、乳化前の合成樹脂の有機溶剤溶液に可溶性多価金属塩を混合して溶解するか、あるいは合成樹脂の有機溶剤溶液に可溶性多価金属塩の有機溶剤溶液を混合しておくとよい。そしてこのミルベースに染顔料を溶解又は分散せしめた着色ミルベースに、水溶性一価塩基(B)を混合溶解して、イオン架橋した合成樹脂を更に中和して自己分散性樹脂とした後、滴下等で水を必須成分とする水性媒体と混合して乳化を行うことが好ましい。
【0033】
本発明において用いる合成樹脂(A)の多価金属イオン(c)による架橋率が高い場合、室温では有機溶剤中あるいは乳化中に樹脂がゲル化する場合があるが、この場合は有機溶剤溶液や乳化中の溶液を加熱することにより有機溶剤中での合成樹脂のゲル化を防止し、架橋率の高い着色組成物を得ることが可能となる。
【0034】
また上記自己水分散性樹脂溶液と混合し、乳化のために使用する水性媒体中に必須成分として含まれる水は、粒子の安定性を維持するため、例えばインクジェット記録用インクにおいてはノズル目詰まりを回避する、更に後述する電子写真用粉体トナーにおいては安定した帯電性能を確保するためにはイオン交換水以上のグレードの水が好ましい。
【0035】
前記した製造方法に準じて得た着色組成物を含む水分散液は、これをそのまま水分散液として用いる場合は出来るだけ乳化後に水より低い沸点を有する有機溶剤を除去する工程を導入して調製しておくことが望ましく、これによって樹脂粒子等の溶解・膨潤が最小となり、さらに安定した水分散液が得られる。
【0036】
インク中の粒子径は、通常0.001〜1ミクロンの範囲となるよう調製するのが一般的である。
【0037】
本発明着色組成物を含む水分散液をインクジェット記録用の水性インク組成物として実用に供する場合、乾燥防止のための水溶性有機溶媒を乾燥防止剤として併用するのが好ましい。かかる乾燥防止剤としては、インクジェットの噴射ノズル口でのインクの乾燥を防止する効果を与えるものであり、通常水の沸点以上の沸点を有するものが使用される。このような乾燥防止剤としては、従来知られているエチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン等の多価アルコール類、N−メチル−2−ピロリドン,2−ピロリドン等のピロリドン類、アミド類、ジメチルスルホオキサイド、イミダゾリジノン等があり、これらに限定されるものではない。乾燥防止剤の使用量は、種類によって異なるが、通常水100重量部に対して1〜150重量部の範囲から適宜選択されるが、グリセリン及びそれに他の乾燥防止剤を併用したものを使用する場合には10〜50重量部が好適である。
【0038】
また、必要に応じてジェット噴射して付着したインクを紙によりよく浸透させるために、浸透性付与剤として浸透性付与効果を示す水溶性有機溶媒を加えてもよい。かかる浸透性付与剤としてはエタノール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール、ジエチレングリコール−N−ブチルエーテル等のグリコールエーテル等を用いることができるが、これらに限定されるものではない。浸透性付与剤の使用量は、本発明における効果を達成すれば特に規定されないが、最終的に得られる水性インク中で0.1〜10重量%となるような量が好ましい。さらに必要に応じて水溶性樹脂、pH調整剤、分散・消泡・紙への浸透のための界面活性剤、防腐剤、キレート剤等の添加剤を加えることができる。これら添加剤は、乳化のための水溶液に添加しても、また、それらの乳化後に添加してもよいが、好ましくは最終ろ過後の添加剤の添加は避けたほうがよい。
【0039】
インクジェット記録用の油性インク組成物として本発明着色組成物を含むものを調製する場合には、樹脂粒子の膨潤・溶解を防ぐためなるべく架橋率を高くしておくとよい。本発明着色組成物を含む水分散液から乾燥させて直接粉体として取り出した後、有機溶剤に分散させて油性インク組成物を調製しても良いが、着色組成物水を含む水分散液中の水を有機溶剤に直接置換した方法を採った方が着色油性インク組成物における染顔料、樹脂粒子等の凝集が少なく、好ましい。
【0040】
油性インク組成物を調製する際に用いる有機溶剤としては、エタノール・プロピルアルコール等のアルコール類、アセトン・メチルエチルケトン等のケトン類、2−ピロリドン・N−メチル−2−ピロリドン等のピロリドン類、エチレングリコール・ジエチレングリコールプロピレングリコール等のグリコール類、ジエチレングリコールモノメチルエーテル・ジエチレングリコールジメチルエーテル・プロピレングリコールモノメチルエーテル・ジプロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類、アルキルナフタレン・フェネチルクメン等の高沸点芳香族系溶剤等、従来の油性インクに使用可能な有機溶剤で、本発明の着色組成物を溶解しないものであればどれで使用可能で、二種類以上併用しても良い。
【0041】
水と相溶性があり、かつ水より低い蒸気圧を有する有機溶剤は、本発明の着色組成物を含む水分散液と直接混合し、しかる後水を留去すれば着色組成物の溶剤分散液が得られる。水と相溶性がなく、かつ水より低い蒸気圧を有する有機溶剤の場合には、乳化剤を使用して着色組成物を含む水分散液と直接混合し、しかる後水を留去すれことによって着色組成物の溶剤分散液が得られる。水より高い蒸気圧を有する有機溶剤の場合は、着色組成物分散液の水を留去した後、着色組成物を有機溶剤に再分散させれば着色組成物の有機溶剤分散液が得られる。着色組成物の表面極性と有機溶剤の極性に差があり、着色組成物粒子の凝集傾向が生じる場合には、補助的に分散剤を使用したり、着色組成物の表面のアニオン性官能基の反応性を利用して高級脂肪族アミン等の処理により粒子の表面極性を有機溶剤の極性に近づけて凝集を防いでも良い。
【0042】
前記着色組成物の有機溶剤分散液に、必要に応じて従来知られている樹脂、分散剤、導電性付与剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等の添加剤を添加して油性インクとしても良い。
【0043】
また、自己水分散性アイオノマー樹脂(1)と、染顔料(2)とを必須成分として含有する本発明の着色組成物を用いた電子写真用粉体トナー組成物は、より良好な帯電性、優れたヒートロール定着特性を示し、電子写真用粉体トナーとして好適に用いることができる。特に水溶性一価塩基(C)として脂肪族アミンを用いたものが電子写真用粉体トナー組成物に好適である。
【0044】
本発明の着色組成物を用いた電子写真用粉体トナーを調製する方法としては、公知の方法を適宜使用すればよい。調製されたトナーは、染顔料と樹脂とが単に均一に分散されたものでも、染顔料が樹脂に内包されたカプセル型トナーのいずれであっても良い。製造方法は特に制限を受けないがその一例として、前記したインクジェット記録用のインク組成物の製造方法にて記載した、転相乳化方法によって、水性媒体中に着色組成物が分散した水性分散液を得、ついで着色組成物を分離し、乾燥するカプセル型トナーの製造方法が挙げられる。この方法によれば、溶融混練、粉砕分級を行う従来の乾式製法では得られない、流動性のよい真球状のトナー粒子を得ることができる。
【0045】
水性分散液から分離、乾燥してトナーとする方法としては、減圧蒸留による蒸発や、ろ過・遠心分離など手段による固液分離、各種乾燥装置による乾燥がある。トナーの粒子径は、通常0.5〜15ミクロンの範囲となるよう調製するのが一般的である。
【0046】
前記中和のための一価塩基がアンモニアまたは脂肪族アミンの場合、容易に乾燥が可能となる。また、中和のための一価の塩基がアンモニアの場合、乾燥に伴って容易にアンモニアが揮発し、フリーのカルボキシル基となる。また脂肪族アミンの場合は着色組成物含む水性分散液に塩酸などの強酸で添加し処理する、いわゆる逆中和の手段によって容易にアミンが除去されて、フリーのカルボキシル基となる。中和のための一価の塩基をフリーのカルボキシル基に変換すると、摩擦帯電極性が負の電子写真粉体トナーが得られる。さらに高級脂肪族アミンで処理を行うと、摩擦帯電極性が正の電子写真粉体トナーが得られる。
【0047】
本発明の着色組成物を電子写真用粉体トナーとして用いる場合には、必要によって着色組成物粒子中あるいは粒子表面にクロム錯塩等の電荷制御剤やポリエチレンワックスやポリプロピレンワックスのようなオフセット防止剤、シリカのような流動性付与剤等、その他従来の粉体トナーで知られている添加剤を使用しても良い。これらの添加物は、合成樹脂(A)、多価金属塩(C)、染顔料(2)等を含む有機溶剤混合液に添加、分散するか、得られた着色組成物に後添加しても良いが、電荷制御剤やワックスは前者、流動性付与剤は後者の添加時期が好ましい。また本発明で得られる粉体トナー粒子の分布は狭くそのままでもトナーとして使用可能であるが、必要に応じて分級を行っても良い。
【0048】
このようにして得たトナーは、そのままで磁性一成分現像剤、非磁性一成分現像剤として、あるいはキャリアと併用して二成分現像剤として用いることができる。二成分現像剤を調製するに当たっては一般的にトナー100部あたりキャリア5〜300部が用いられる。
【0049】
また、本発明の着色組成物は基本的に水に不溶な架橋粒子であるため、必要に応じて着色組成物を得た後にスルホン化やエチレンオキサイド付加等の手段によって、さらに着色組成物の親水性を高めることも出来る。
【0050】
本発明の着色組成物は、前記したインクジェット記録用インク組成物、電子写真用粉体トナーとしての用途の他、他のインク、塗料用着色組成物としても適用が可能である。
【0051】
【実施例】
次に実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。尚、以下の実施例中における「部」は『重量部』を表わす。
【0052】
(実施例1)
スチレンアクリル酸樹脂(スチレン/アクリル酸/アクリル酸2エチルヘキシルエステル=77/13/10;酸価100;分子量4万)10部、カーボンブラック10部、酢酸アルミニウム4部(架橋率1%に相当する量)、アセチルアセトナトアルミニウム6部(架橋率9%に相当する量)、メチルエチルケトン50部を直径0.2mmのガラスビーズ150部と共にペイントシェーカーを用いて4時間分散した。
【0053】
ガラスビーズを除いた分散液170部にメチルエチルケトン40部、イソプロピルアルコール40部、トリエタノールアミン4.8部(中和率90%に相当する量)を加え、攪拌しながらグリセリン130部、イオン交換水420部の混合液を毎分5mlの速度で滴下し、着色組成物分散液を得た。得られた着色組成物分散液をロータリーエバポレーターを用いて有機溶剤を留去し、粒子径0.2μmの着色組成物の水分散物を得た後、1.5μmのメンブランフィルターを用いてろ過を行いインクジェットプリンター用インクとした。
【0054】
得られたインクはガラス容器で60℃の環境で1年間放置しても分散性が良好で凝集物の発生もなく、ピエゾ式インクジェットプリンターを用いて噴射試験をした結果、ノズル目詰まりもなく、安定な噴射が可能で、得られた普通紙印刷物の文字は滲みもなく、耐水性にも優れていた。
【0055】
(比較例1)
実施例1から酢酸アルミニウムとアセチルアセトナトアルミニウムを除いた配合で、実施例1と同様にしてインクジェットプリンター用インクを得た。
【0056】
得られたインクは、ピエゾ式インクジェットプリンターを用いて噴射試験をした結果、ノズル目詰まりもなく、安定な噴射が可能で、得られた普通紙印刷物の文字は滲みもなく、耐水性にも優れていたが、ガラス容器で60℃の環境で1年間放置した結果、若干の黒色凝集物の沈降を生じた。
【0057】
(実施例2)
スチレンアクリル酸樹脂(スチレン/アクリル酸2−エチルヘキシルエステル/メタアクリル酸=65/20/15;酸価100;分子量2万5千)36部、カーボンブラック4部、酢酸マグネシウム3.8部(架橋率20%に相当する量)、低分子量ポリプロピレンワックス0.5部、メチルエチルケトン50部を直径3mmのガラスビーズと共にペイントシェーカーで2時間分散した。この分散液94部にメチルエチルケトン40部、イソプロピルアルコール40部、トリエチルアミン3.8部(樹脂の中和率60%に相当する量)を加えミルベースとした。このミルベース100部を攪拌しながら水500部を毎分5mlの速度で滴下し、着色組成物を得た。得られた着色組成物をロータリーエバポレーターを用いてメチルエチルケトンとエタノールを留去した後、1%塩酸を着色水分散物のpHが2になるまで加え、その後、着色水分散物の濾過を行いさらに水で洗浄した後、減圧乾燥を行い、粒径5μmの真球状粉体トナーとした。このトナーは、自己水分散性を有さないアイオノマー樹脂を用い、従来の乾式法で得たトナーよりも帯電性、流動性がより良好であった。
【0058】
(比較例2)
実施例2のミルベース組成から酢酸マグネシウムを除いた配合で、実施例2と同様に粒径5μmの粉体トナーを得た。
【0059】
(保存試験)
得られた粉体トナーをカップに入れ、50℃の環境で1週間放置した後の凝集状態を目視で調べた。
【0060】
【表1】
Figure 0003706950
【0061】
(定着試験)
得られた粒径5μmの粉体トナー4部を200メッシュのキャリア鉄粉96部と混ぜ、現像剤とした後、市販の複写機を改造した定着ユニットのない実験機で複写を行い、トナー未定着画像試験紙を得た。
【0062】
一方、表面をテフロンで被覆し内部にヒーターを組み込んで表面温度を140〜200℃の範囲で調節自在とした金属ロールとこのロールに圧接するシリコンゴムロールとを上下に配置した定着装置を使用して前記未定着画像を定着させた。
その結果、以下の定着結果を示した。
【0063】
【表2】
Figure 0003706950
【0064】
以上の結果から、本発明の着色組成物からなる粉体トナーは、優れた耐熱保存と熱圧ロール定着特性を示す。
【0065】
【発明の効果】
本発明の着色組成物は、自己水分散性であることとアイオノマー樹脂であることの相乗効果を奏する自己水分散性アイオノマー樹脂を含有し、このためかかる組成物を調製してインクジェット記録用インク組成物に用いた場合、より分散安定性に優れ、インク中の粒子の凝集や水分蒸発に伴う粒子の凝集によるノズル目詰まりの問題がない等の優れた効果が発揮される。また、当該着色組成物を用いて電子写真用粉体トナー組成物を調製した場合は、より帯電性が良好で、熱圧ロール定着における定着温度領域が広く、かつ耐熱保存性を同時に満足する等の優れた効果を与える。

Claims (5)

  1. アニオン性の官能基(a)を有する合成樹脂(A)中の前記官能基(a)の少なくとも一部が一価対イオン(b)と塩を形成し、更に前記官能基(a)の他の少なくとも一部が多価金属イオン(c)を介して分子間架橋構造を形成する自己水分散性アイオノマー樹脂(1)と、染料又は顔料(2)とを必須成分として含有する着色組成物を少なくとも含んでなるインクジェット記録用インク組成物。
  2. 一価対イオン(b)が、アルコールアミンから導入されたイオンである請求項1に記載のインクジェット記録用インク組成物。
  3. アニオン性の官能基(a)を有する合成樹脂(A)中の前記官能基(a)の少なくとも一部が一価対イオン(b)と塩を形成し、更に前記官能基(a)の他の少なくとも一部が多価金属イオン(c)を介して分子間架橋構造を形成する自己水分散性アイオノマー樹脂(1)と、染料又は顔料(2)とを必須成分として含有する着色組成物からなる電子写真用粉体トナー組成物。
  4. 一価対イオン(b)が、脂肪族アミンによって導入されたイオンである請求項3に記載の電子写真用粉体トナー組成物。
  5. アニオン性の官能基(a)を有する合成樹脂(A)と、有機溶媒に可溶性の多価金属塩(C)を含む有機溶剤溶液中に、染顔料を溶解又は分散せしめて着色ミルベースを作製し、該着色ミルベースに、前記官能基(a)を中和しうる水溶性一価塩基(B)を混合溶解した後、水を必須成分とする水性媒体に滴下混合して乳化させることを特徴とする着色組成物の製造方法。
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