JP3706774B2 - 液体吐出ヘッドおよび液体吐出方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱エネルギーを液体に作用させて気泡を発生させることによって液体を吐出する液体吐出装置に係るものであり、特に、気泡の発生を利用して変位する可動部材を有する液体吐出装置に関する。
【0002】
なお、本発明における、「記録」とは、文字や図形等の意味を持つ画像を被記録媒体に対して付与することだけでなく、パターン等の意味を持たない画像を付与することをも意味するものである。
【0003】
【従来の技術】
従来、プリンター等の記録装置において、流路中の液体インクに熱等のエネルギーを与えて気泡を発生させ、それに伴う急峻な体積変化に基づく作用力によって吐出口からインクを吐出し、これを被記録媒体上に付着させて画像形成を行なうインクジェット記録方法、いわゆるバブルジェット記録方法が知られている。このバブルジェット記録方法を用いる記録装置には、米国特許第4,723,129号等に開示されているように、インクを吐出するための吐出口と、この吐出口に連通する流路と、流路内に配されたインクを吐出するためのエネルギー発生手段としての電気熱変換体が一般的に配されている。
【0004】
この様な記録方法によれば、品位の高い画像を高速、低騒音で記録することができると共に、この記録方法を行うヘッドではインクを吐出するための吐出口を高密度に配置することができるため、小型の装置で高解像度の記録画像、さらにカラー画像をも容易に得ることができるという多くの優れた点を有している。このため、このバブルジェット記録方法は近年、プリンター、複写機、ファクシミリ等の多くのオフィス機器に利用されており、さらに、捺染装置等の産業用システムにまで利用されるようになってきている。
【0005】
このようにバブルジェット技術が多方面の製品に利用されるに従って、次のような様々な要求が近年さらにたかまっている。
【0006】
高画質な画像を得るために、インクの吐出スピードが速く、安定した気泡発生に基づく良好なインク吐出を行える液体吐出方法等を与えるための駆動条件が提案されたり、また、高速記録の観点から、吐出された液体の流路内への充填(リフィル)速度の速い液体吐出ヘッドを得るために流路形状を改良したものも提案されている。
【0007】
このようなヘッドの他にも、気泡の発生に伴って発生するバック波(吐出口へ向かう方向とは逆の方向へ向かう圧力)に着目し、吐出において損失エネルギーになるバック波を防止する構造の発明が特開平6−31918号公報に開示されている。この公報に記載の発明は、三角形状の板状部材の三角形部分を気泡を発生する発熱体に対して対向させたものである。この発明では、板状部材によってバック波を一時的に且つわずかには抑えられている。しかし、気泡の成長と三角形部分との相関関係については全く触れていないし、その着想もないため、前記の発明は以下の問題点を含んでいる。
【0008】
すなわち、前記公報に記載の発明では、発熱体が凹部の底に位置しており吐出口との直線的連通状態をとれないため、液滴形が安定できず、さらに気泡の成長は三角形の頂点の部分の周囲から許容されているため、気泡は三角形の板状部材の片側から反対側全体まで成長し、結果的に板状部材が存在していないかのように液中における通常の気泡の成長が完成してしまう。従って、成長した気泡にとって板状部材の存在は何ら関係のないものとなってしまう。逆に、板状部材の全体が気泡に囲まれるために、気泡の収縮段階において、凹部に位置する発熱体へのリフィルは乱流を生じせしめ、その凹部内に微小気泡を蓄積する原因となり、成長気泡に基づいて吐出を行う原理自体を乱すことになってしまう。
【0009】
他方、EP公開公報436047A1は、吐出口近傍域と気泡発生部との間にこれらを遮断する第1弁と、気泡発生部とインク供給部との間にこれらを完全に遮断する第2弁とを交互に開閉させる発明を提案している(EP436047A1の第4〜9図)。しかし、この発明はこれら3つの部屋を2つづつに区分してしまうために、吐出時には液滴に追従するインクが大きな尾引きとなり、気泡成長・収縮・消泡を行う通常の吐出方式に比べてサテライトドットがかなり多くなってしまう(消泡によるメニスカス後退の効果を使えないと推定される)。また、リフィル時は、気泡発生部に液体が消泡に伴って供給されるが、吐出口近傍域には次の発泡が生じるまで液体は供給できないので、吐出液滴のばらつきが大きいだけでなく、吐出応答周波数が極めて小さく、実用レベルではない。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
上述の従来技術とはまったく異なり液滴の吐出に関し有効に貢献できる可動部材(自由端を支点よりも吐出口側に有する板状部材等)を用いた発明が、本願出願人によって数多く提案されている。その発明のうち、特開平9−48127号公報は上述した可動部材の挙動がわずかに乱れることを防止すべく、可動部材の変位の上限を規制する発明を開示している。また、特開平9−323420号公報は、前記可動部材に対して、上流における共通液室の位置を、前記可動部材の利点を利用して可動部材の自由端側、つまり下流側にシフトさせてリフィル能力を高める発明を開示している。これらは、発明が生み出される前提の想定に、気泡の成長を可動部材で一時的に包み込んだ状態から一気に吐出口側に開放する形態を採っていたため、気泡全体が液滴形成に関わる個々の要素や、それらの相関関係については注目されていない。
【0011】
次の段階として、本願出願人は、特開平10−24588号公報にて、液体吐出に関わる要素として圧力波(音響波)伝播による気泡成長に注目した発明として、気泡発生領域の一部を前記可動部材から開放する発明を開示している。しかしながら、この発明においても液体吐出時の気泡の成長のみに着目しているため、気泡全体が液滴自体の形成に係わる個々の要素や、それらの相関関係について注目されていない。
【0012】
従来から知られている膜沸騰による気泡の前方部分(エッヂシューター型)が吐出に大きな影響を与えることは知られているものの、この部分をより効率よく吐出液滴の形成に貢献せしめることについて従来着目したものはなく、本発明はこれらの技術的解明をすべく本発明者たちは鋭意研究を行った。
【0013】
さらに、本発明者達は、前記可動部材の変位と発生気泡に着目したところ、以下の有効な知見を得るにいたった。
【0014】
その知見は、可動部材を規制する上での新たな構成として、成長気泡の規制にも有効である「流路間壁の形態」に着目してなされたもので、可動部材の気泡の成長に対する変位の上限規制を流路間壁によって行うことである。この流路間壁に可動部材のストッパを設けることで必要な液体の流れを許容しつつ気泡の存在感を画成と共に、微細加工上の許容範囲を広げることが可能となることが見出された。
【0015】
具体的には、流路内を変位する可動部材と側方に位置する流路間壁とのクリアランスは、可動部材との製造上のばらつきを吸収するためには大きければ大きいほど良い。
【0016】
逆に、気泡の成長によって、このクリアランスが大きいほど、可動部材と側方に位置する流路間壁との間に気泡が侵入して、可動部材の上面まで成長してしまうことがある。したがって、このクリアランスは結果的に小さくせざるを得ないと考えられる。ところが、この側方に位置する流路間壁に可動部材のストッパ機能を持たせることで、前記相反する事項を満足することが可能となる。すなわち、前記クリアランスを大きくした(例えば5μm〜8μm)としても、流路や可動部材の製造上のばらつきを吸収することができる。可動部材が気泡の成長と共に変位するにつれて、可動部材とストッパとの間隔が徐々に小さくなり、3μm程度の間隔となると気泡の通過を制限し始め、その側方ストッパと可動部材との一部の接触部とその周辺では、気泡の通過は完全に阻止できることとなる。
【0017】
本発明の前記の観点の発明は、この新たな知見に基づいてなされたものである。
【0018】
さらに前記観点の側方ストッパを設けた場合に、気泡発生面からの気泡の成長の上限規制を確実にすると、可動部材と気泡発生面との間の空間において、吐出口とは逆方向への気泡の成長が増加することが見られた。この気泡の成長は、吐出効率を減じる要素ではないから、無視できるものとしても良いが、本発明者たちは、可動部材の変位にとって、この気泡の成長を合理的に利用できないかを検討した。その結果、気泡発生面に対して近接(例えば20μm以下)すると共に、気泡発生面からは離間した圧力波受け部を前記可動部材と一体化させることで、達成できるという知見にいたった。
【0019】
また、支点から自由端へ延在する可動部材を見ると、実際は、自由端と支点との間に可動上の支点が形成されていることが判明した。従来では、自由端と支点との距離に対して変移角によって得られる可動部材の移動空間の容積を判断して設計を行っていたため、ばらつきが発生していることが見られた。
【0020】
これらに注目して検討をしたところ、実質的な可動部材の移動に伴う空間容積を規定することで、ばらつきの補正が可能になることをも見出した。
【0021】
また、本発明は、前記知見の構成を具体的に製造する製造方法をも提供するものである。
【0022】
【課題を解決するための手段】
本発明の特徴は、液体中に気泡を発生させるための熱エネルギーを発生する発熱体と、液体を吐出する部分である吐出口と、吐出口に連通するとともに、液体に気泡を発生させる気泡発生領域を有する流路と、気泡発生領域に設けられ気泡の成長に伴って変位する可動部材と、可動部材の変位を所望の範囲に規制する規制部と、を備え、流路は、発熱体を備える基板と、基板に対向する対向板と、基板と対向板との間に位置する両側壁と、で形成され、気泡発生時のエネルギーにより吐出口から液体を吐出する液体吐出ヘッドであって、
可動部材は発熱体の幅以上の幅を有する自由端を備え、
発熱体が形成する気泡発生領域に可動部材の自由端が対向し、可動部材は、基板と対向しており、可動部材の側端が側壁に対して対向しながら変位するものであり、
規制部は、変位した可動部材の自由端に対して接触する先端規制部と、気泡発生領域の側方にあり、可動部材に関して基板とは反対側に位置するとともに、変位した可動部材の側端の両側に対して少なくとも一部が接触し、かつ、流路を開放している側方規制部と、を備え、
側方規制部は気泡発生領域から発生する気泡を可動部材との接触によって規制するところにある。
【0023】
可動部材は、気泡発生領域に近接し、可動部材から基板側へ突出している凸部を有していてもよい。
【0024】
先端規制部と、可動部材の自由端とは、基板に対して垂直な面上に位置していることが好ましい。さらに、先端規制部と、可動部材の自由端と、発熱体の中心とが、基板に対して垂直な面上に位置しているとより好ましい。
【0025】
流路は、先端規制部より下流側に向かって流路断面積が増加していてもよい。
規制部から上流側に対向板の面が基板に対してたちあがっていてもよい。
【0026】
先端規制部と側方規制部とは連続していてもよい。
【0027】
可動部材の側端が基板側に広がるテーパー部を有し、側方規制部が流路の中央に向かって狭まるテーパー形状を有していてもよい。
【0028】
側方規制部は流路の下流側に向かって前記基板から離れる方向の傾斜形状となっていてもよい。
【0029】
側方規制部は対向板に設けられてもよい。また、側方規制部は側壁に設けられてもよい。
【0030】
側方規制部は流路の中央において側壁から流路内に突出していてもよい。
【0031】
側方規制部における流路の幅より、側方規制部より対向板側の流路の幅が大きくてもよい。
【0036】
可動部材の変位領域の体積Vvと、前記気泡の最大体積Vbとが、Vv<Vb/2の関係にあってもよい。
【0043】
本発明の他の特徴は、液体中に気泡を発生させるための熱エネルギーを発生する発熱体と、液体を吐出する部分である吐出口と、吐出口に連通するとともに、液体に気泡を発生させる気泡発生領域を有する流路と、気泡発生領域に設けられ気泡の成長に伴って変位する可動部材と、可動部材の変位を所望の範囲に規制する規制部と、を備え、流路は、発熱体を備える基板と、基板に対向する対向板と、基板と対向板との間に位置する両側壁と、で形成され、気泡発生時のエネルギーにより吐出口から液体を吐出する液体吐出ヘッドの液体吐出方法であって、
可動部材は発熱体の幅以上の幅を有する自由端を備え、
発熱体が形成する気泡発生領域に可動部材の自由端が対向し、可動部材は、基板と対向しており、可動部材の側端が側壁に対して対向しながら変位するものであり、
規制部は、変位した可動部材の自由端側に対して接触する先端規制部と、気泡発生領域の側方であり、可動部材に関して基板とは反対側に位置するとともに、変位した可動部材の側端の両側に対して少なくとも一部が接触し、かつ、流路を開放している側方規制部と、を備え、
可動部材が気泡の最大発泡前に規制部に接触し、側方規制部が気泡発生領域から発生する気泡を可動部材との接触によって規制することで、気泡発生領域を有する流路を吐出口を除いて閉じた空間とする工程を有するところにある。
【0044】
本発明のさらに他の特徴は、液体中に気泡を発生させるための熱エネルギーを発生する発熱体と、液体を吐出する部分である吐出口と、吐出口に連通するとともに、液体に気泡を発生させる気泡発生領域を有する流路と、気泡発生領域に設けられ気泡の成長に伴って変位する可動部材と、可動部材の変位を所望の範囲に規制する規制部と、を備え、流路は、発熱体を備える基板と、基板に対向する対向板と、基板と対向板との間に位置する両側壁と、で形成され、気泡発生時のエネルギーにより吐出口から液体を吐出する液体吐出ヘッドの液体吐出方法であって、
可動部材は発熱体の幅以上の幅を有する自由端を備え、
発熱体が形成する気泡発生領域に可動部材の自由端が対向し、可動部材が基板と対向しており、可動部材の側端が側壁に対して対向しながら変位するものであり、
規制部は、変位した可動部材の自由端側に対して接触する先端規制部と、気泡発生領域の側方であり、可動部材に関して基板とは反対側に位置するとともに、変位した可動部材の側端の両側に対して少なくとも一部が接触し、かつ、流路を開放している側方規制部を備え、
気泡の成長を伴って変位する可動部材の周囲の液体の流れを許容した後、可動部材が側方規制部に近づくにつれて、可動部材と側壁間の間隙よりも可動部材と側方規制部との距離が小さくなる工程を有し、この工程により気泡の可動部材側方への進出を抑制するところにある。
【0045】
さらに、可動部材が側方規制部と接触することにより気泡発生領域の上流側が実質的に遮断された後、可動部材の側方より液体が回り込んで気泡発生領域に流入する工程と、工程後に可動部材表面を伝わる液体の流入が前記可動部材側方からの液体の流入と併合される工程とを有していてもよい。
【0046】
【発明の実施の形態】
本発明の実施形態について、以下に説明する。
【0047】
[第1の実施形態]
図1は本発明の第1の実施形態の液体吐出装置である液体吐出ヘッドの要部の模式図であり、図1(a2)は流路に沿った方向で切断した際の断面図であり、図1(a3)は、図1(a2)のB−B’線断面図、図1(a1)は、図1(a2)のC−C’線断面図である。
【0048】
まずその構成について説明する。
【0049】
この液体吐出ヘッドは、素子基板(基板)1と天板(対向板)2とが積層状態で固着され、両板1,2の間に流路3が設けられている。流路3は、素子基板1、側壁7および天板(対向板)2に囲まれた細長い形状を有しており、1個の記録ヘッドに多数の流路3が設けられている。そして、この多数の流路3の上流側に同時に連通するように、大容積の共通液室6が設けられている。つまり、単一の共通液室6から多数の流路3に分岐した形状となっている。そして、共通液室6の液室高さは、流路3の流路高さよりも非常に高くなっている。また、多数の流路3に対応して、素子基板1には電気熱変換素子等の発熱体(気泡発生手段)10と可動部材11とが取付けられている。
【0050】
可動部材11は、一端支持の片持ち梁状であり、インクの流れの上流側(図1(a2)右側)で素子基板1に固定され、支点11aより下流側(図1(a2)左側)が素子基板1に対して図1(a2)上下方向に移動可能である。そして、可動部材11は、図1(a2)に示す初期状態においては、素子基板1との間にわずかな隙間を保ちつつ素子基板1に平行に位置する。
【0051】
本実施形態では、自由端11bが発熱体10のほぼ中央領域に位置するように可動部材11を配設し、この可動部材11の自由端11bの上方に可動部材11の上方への移動を規制する先端ストッパ(先端規制部)12aを設けると共にこの先端ストッパ12aの両側に側方ストッパ(側方規制部)12bを設け、可動部材11の変位規制時(可動部材接触時)に可動部材11と流路側壁7とのクリアランスを遮断するように構成した。
【0052】
前記構成により、気泡40の形状特性に関して、前後(上流と下流)の機能の分断化を機械的要素により一層確実に達成することができる。従来は、流路3の前後の流路抵抗等のバランスを最重要点として設計していたが、前記構成によれば機能分離化できることにより、設計自由度を格段に向上させることができるものである。
【0053】
自由端11bの位置Yと、先端ストッパ12aの端Xとは、素子基板1に対して垂直な面上に位置していることが好ましい。さらに好ましくは、これらX、Yとともに発熱体10の中心であるZも、素子基板1に対して垂直な面上に位置していることが好ましい。このようにすることにより、前記機能分離化をより効果的に行うことが出来る。
【0054】
また、先端ストッパ12aから下流側の流路3の高さが急激に高くなる形状となっている。この構成により気泡発生領域の下流側においては、可動部材11がストッパ(規制部)12によって規制された際にも十分な流路高さを有しているため、気泡40の成長を阻害することがなく、吐出口4に向かって液体をスムーズに向かわせることができると共に吐出口4の下端から上端までの高さ方向での圧力バランスの不均一が少なくなり、良好な液体の吐出を行うことができる。なお、可動部材11をもたない従来のヘッドにおいて、このような流路構成を採った場合は、ストッパ12の下流側で流路高さが高くなっている部分によどみが生じ、この部分に気泡が滞留しやすくなり、好ましいものではなかったが、本構成においては、上述したように液体の流れがこの部分まで及ぶため気泡滞留の影響は極めて少なくなる。
【0055】
さらに、ストッパ12を境として共通液室6側の天井形状は急激にたちあがるようになっている。この構成で可動部材11がない場合には、気泡発生領域の下流側の流体抵抗が上流側の流体抵抗よりも小さくなるため、吐出に用いられる圧力は吐出口4側に向かいにくいものであったが、本実施例においては、気泡形成時には可動部材11により気泡発生領域の上流側への気泡40の移動が実質的に遮断されているため、吐出に用いられる圧力は積極的に吐出口4側へ向かうと共に、インク供給時においては気泡発生領域の上流側の流体抵抗が小さくなっていることから気泡発生領域へインク供給が速やかになされる。
【0056】
前記構成によれば、気泡40の下流側への成長成分と上流側への成長成分とが均等ではなく、上流側への成長成分が少なくなり上流側への液体の移動が抑制される。上流側への液体の流れが抑制されるため、吐出後のメニスカスの後退量が減少し、その分リフィル時にメニスカスがオリフィス面よりも突出する量も減少する。したがってメニスカス振動が抑制されることとなり、低周波数から高周波数まであらゆる駆動周波数に於て安定した吐出が行われる。
【0057】
なお、本実施例においては、気泡40の下流側の部分と吐出口4との間は液流に対しまっすぐな流路構造を保っている「直線的連通状態」となっている。これは、より好ましくは、気泡40の発生時に生じる圧力波の伝播方向とそれに伴う液体の流動方向と吐出方向とを直線的に一致させることで、吐出滴66の吐出方向や吐出速度等の吐出状態をきわめて高いレベルで安定化させるという理想状態を形成することが望ましい。本発明では、この理想状態を達成、または近似させるための一つの定義として、吐出口4と発熱体10、特に気泡40の吐出口4側に影響力を持つ発熱体10の吐出口4側(下流側)とが直接直線で結ばれる構成とすればよく、これは、流路3内の流体がない状態であれば、吐出口4の外側から見て発熱体10、特に発熱体10の下流側が観察することが可能な状態である。
【0058】
次に、本実施形態の液体吐出ヘッドの吐出動作について詳しく説明する。
【0059】
図1(a2)では、発熱体10に電気エネルギー等のエネルギーが印加される前の状態であり、発熱体10が熱を発生する前の状態を示す。ここで重要なことは、まず、可動部材11の幅が流路3の幅に比べ十分小さいため可動部材11と流路側壁7とのクリアランスが確保されていることと、発熱体10の発熱によって発生する気泡40に対し、この気泡40の上流側半分に対面して位置し、かつ、可動部材11の変位を規制する先端ストッパ12aと、この先端ストッパ12aの両側に設けられた側方ストッパ12bとが設けられていることである。この先端ストッパ12a及び側方ストッパ12bによって可動部材の上方変位の規制が行われると共に、可動部材11の上方変位規制時に、可動部材11と、先端ストッパ12a及び側方ストッパ12bとの間の間隙が密閉され、気泡発生領域の上流側への液体の移動を抑制するものである。
【0060】
図1(b2)では、気泡発生領域内を満たす液体の一部が発熱体10によって加熱され、膜沸騰に伴う気泡40が発泡し始めた状態を示す。
【0061】
このとき、膜沸騰による気泡40の発生に基づく圧力波が流路3内に伝播し、それに伴い液体は気泡発生領域の中央領域を境に下流側及び上流側に移動し、上流側においては気泡40の成長に伴う液の流れにより可動部材11が変位し始める。また、上流側へのインクの移動は側方ストッパ12bと可動部材11の間をとおり共通液室側に向かう。この時点における側方ストッパ12bと可動部材11との間のクリアランスは大きいが、可動部材11が変位するにつれ狭くなっていく。
【0062】
図1(c2)では 可動部材がより変位し先端ストッパ12a及び側方ストッパ12bに接近した状態を示す。気泡40の発生に基づく圧力波がさらに伝播することにより、気泡発生領域の上流側では可動部材11が先端ストッパ12a及び側方ストッパ12bに接近し、下流側においては吐出口4から吐出滴66が吐出しつつある。
【0063】
このとき、先端ストッパ12a及び側方ストッパ12bと可動部材11側部のクリアランスは狭いため、気泡発生領域より上流側、すなわち、共通液室6側へ液体の通り抜けはかなり規制される。それに伴い可動部材11を境界として気泡発生領域側と共通液室6側の圧力差が大きく生じ、可動部材11は側方ストッパ12bに密着するかたちで押しつけられる。したがって、可動部材11と先端ストッパ12a及び側方ストッパ12bとの密着性が高まるため、可動部材11と流路側壁6とのクリアランスが十分に設けられていても、このクリアランス部分からの液体の漏れがなくなる。この構成により、気泡発生領域の共通液室6側に対する密閉性は高まり、共通液室6側に液体が漏れて吐出力を損失することが少なくなる。
【0064】
図1(d2)では、可動部材11は先端ストッパ12aおよび側方ストッパ12bに接近または接触するまで変位すると、それ以上の上方への変位が規制されるため、上流方向への液体の移動もそこで大きく制限される。それに伴い気泡40の上流側への成長も可動部材11で制限される。しかしながら、上流方向への液体の移動力は大きいため、可動部材11は上流方向へ引っ張られた形の応力を大きく受け、わずかながら上方凸状に変形を生じる。なお、このとき、気泡40は成長を続けているため可動部材11によって規制された気泡40の上流側成分における成長は、気泡40の下流側にて成長しようとするため、可動部材11を設けない場合に比べ、発熱体10の下流側における気泡40の成長高さが高くなっている。
【0065】
一方、前述したように気泡40の上流側の部分は可動部材11の変位が上限先端ストッパ12aおよび側方ストッパ12b及び側方ストッパ12bによって規制されているため、上流側への液流の慣性力によって可動部材11を上流側へ凸形状に湾曲させ応力をチャージさせるまでにとどまった状態で小さなサイズになっている。この部分全体としては、先端ストッパ12a、側方ストッパ12b部及び流路側壁7と可動部材11と支点33とで上流側の領域に進入する量をほとんど無にしている。
【0066】
これによって、上流側への液流を大幅に規制し、隣接した流路3への流体クロストークや、後述する高速リフィルを阻害する供給路系における液の逆流や圧力振動を防止する。
【0067】
図1(e2)では、前述した膜沸騰の後に気泡40内部の負圧が流路3内の下流側への液体の移動に打ち勝って、気泡40の収縮が開始された状態を示す。
【0068】
気泡40の収縮に伴い、可動部材11は下方変位するが、可動部材11自身片持ち梁ばねの応力と前述した上方凸変形の応力を持っており、それにより下方変位する速度を高める。そして、これに伴う低流路抵抗領域での下流方向への流れは流路抵抗が小さいため、急速に大きな流れとなって先端ストッパ12aおよび側方ストッパ12b部分を介し流路3へ流れ込む。このように、これらの動作で共通液室6側の液体を流路3内に誘導する。流路3内に導かれた液体はそのままストッパと下方変位した可動部材11との間をとおり、発熱体10の下流側に流れ込むと同時に、まだ消泡しきっていない気泡40に対し消泡を加速するように作用する。この液体の流れは、消泡を助けたあと、吐出口4方向にさらに流れを作りメニスカスの復帰を助け、リフィル速度を向上する。
【0069】
また、前述した可動部材11と先端ストッパ12aおよび側方ストッパ12bの間の部分を介した流路3への流れ込みは図1(d)に示すように天板2側の壁面での流速を高めるため、この部分での微少泡などの残留も極めて少なく、吐出の安定性に寄与している。
【0070】
さらに、消泡によるキャビテーション発生ポイントも気泡発生領域の下流側にずれるため、発熱体10に対するダメージが少なくなる。同時に、同現象によりこの領域での発熱体10へのこげの付着も少なくなるため、吐出安定性が向上する。
【0071】
なお、上述の構成では、側方ストッパ12bは対向板である天板2に設けられているものであるが、これに限られるものではなく、側壁7に設けられるようにしても良い。
【0072】
次に、図1に示した液体吐出ヘッドの製造方法について説明する。
図1に示した構成の液体吐出ヘッドは、例えば、以下のような第1、2の製造方法により製造することができる。
【0073】
(第1の製造方法)
図5〜図7は、図1に示した素子基板1上に可動部材11、先端ストッパ12aおよび側方ストッパ12bおよび流路側壁7を形成する方法を説明するための図である。図5(a)〜図7(b)の工程を経て、素子基板1上に可動部材11、先端ストッパ12aおよび側方ストッパ12bおよび流路側壁7が形成される。
【0074】
まず、図5(a)では、素子基板1の発熱体10側の面全体に、発熱体10との電気的な接続を行うための接続用パッド部分を保護するための第1の保護層として、不図示のTiW膜をスパッタリング法によって厚さ約5000Å形成する。この素子基板1の発熱体10側の面に、間隙形成部材71を形成するためのPSG(phospho silicate glass)膜を、スパッタリング法を用いて厚さ約5μm形成する。形成されたPSG膜を、周知のフォトリソグラフィプロセスを用いてパターニングし、図1に示した発熱体10と可動部材11との間の気泡発生領域に対応する位置に、素子基板1と可動部材11との間の間隙を形成するための、PSG膜からなる間隙形成部材71を形成する。
【0075】
間隙形成部材71は、後述するように誘電結合プラズマを使ったドライエッチングにより流路3を形成する際のエッチングストップ層として機能する。これは、素子基板1におけるパッド保護層としてのTiW層や、耐キャビテーション膜としてのTa膜、および抵抗体上の保護層としてのSiN膜が、流路3を形成するために使用するエッチングガスによりエッチングされてしまうからであり、これらの層や膜のエッチングが間隙形成部材71により防止される。そのため、流路3を形成するためにドライエッチングを行う際に素子基板1の発熱体10側の面や、素子基板1上のTiW層が露出しないように、それぞれの間隙形成部材71における流路3aの流路方向と直交する方向の幅は、流路3の幅よりも広くなっている。
【0076】
次に、図5(b)では、間隙形成部材71の表面、および素子基板1の間隙形成部材71側の面上に、プラズマCVD法を用いて、可動部材11を形成するための材料膜である厚さ約5μmのSiN膜72を形成する。
【0077】
次に、図5(c)では、SiN膜72の表面に、耐エッチング保護膜を形成した後、形成された耐エッチング保護膜を、周知のフォトリソグラフィプロセスを用いてパターニングし、SiN膜72表面の、可動部材11に対応する部分に耐エッチング保護膜73を残す。耐エッチング保護膜73は、エッチングにより流路3を形成する際の保護層(エッチングストップ層)となる。
【0078】
次に、図6(a)では、SiN膜72および耐エッチング保護膜73の表面に、流路側壁7を形成するためのSiN膜74を、マイクロ波CVD法を用いて厚さ約20μm形成する。ここで、マイクロ波CVD法によるSiN膜74の成膜に使用するガスとしては、モノシラン(SiH4)、窒素(N2)およびアルゴン(Ar)を用いた。そのガスの組み合わせとしては、前記以外にも、ジシラン(Si2H6)やアンモニア(NH3)などとの組み合わせや、混合ガスを用いてもよい。また、周波数が2.45[GHz]のマイクロ波のパワーを1.5[kW]とし、ガス流量としてはモノシランを100[sccm]、窒素を100[sccm]、アルゴンを40[sccm]でそれぞれのガスを供給して、圧力が5[mTorr]の高真空下でSiN膜74を形成した。また、ガスのそれ以外の成分比でのマイクロ波プラズマCVD法や、RF電源を使用したCVD法などでSiN膜74を形成してもよい。
【0079】
そして、SiN膜74の表面全体にエッチングマスク層を形成した後に、形成されたエッチングマスク層をフォトリソグラフィなどの周知の方法によってパターニングして、SiN膜74表面の、流路3に対応する部分を除いてエッチングマスク層75を残す。
【0080】
次に、図6(b)では、酸素プラズマエッチングによりSiN膜74およびSiN膜72をパターニングする。ここでは、耐エッチング保護膜73,エッチングマスク層75および間隙形成部材71をエッチングストップ層として、SiN膜74がトレンチ構造となるようにSiN膜74およびSiN膜72のエッチングを行う。
【0081】
次に、図6(c)では、可動部材11が変位するための空間を形成するために、この空間、すなわちSiN膜74が除去された部分を埋めるために、SiN膜74および耐エッチング保護膜73の表面などに厚膜レジスト76などを塗布した後、その厚膜レジスト76の表面をCMP(Chemical Mechanical Polishing)などの研磨によって平坦化する。
【0082】
次に、図7(a)では、先端ストッパ12aおよび側方ストッパ12bおよび流路側壁7を形成するための樹脂膜77を厚さ約30μmとなるように塗布する。そして、樹脂膜77の表面に、エッチング用のマスク78を形成する。この時、エッチング用のマスク78は流路側壁7および先端ストッパ12aおよび側方ストッパ12bに対応する部分に残るようにされている。
【0083】
次に、図7(b)では、樹脂膜77がトレンチ構造となるように樹脂膜77のエッチングを行う。その後、酢酸、りん酸および硝酸の混酸を用いて加温エッチングすることで、エッチング用のマスク78,エッチング保護膜73や間隙形成部材71を除去し、素子基板1上に可動部材11および流路側壁7を作り込む。その後、過酸化水素を用いて、素子基板1に形成したパッド保護層としてのTiW膜の、気泡発生領域およびパッドに対応する部分を除去する。そして、上述したように素子基板1上に可動部材11、先端ストッパ12aおよび側方ストッパ12bおよび流路側壁7を形成した後に、素子基板1の流路側壁7側の面に天板2を接合する。これにより、図1に示した液体吐出ヘッドが製造される。
【0084】
本実施形態の液体吐出ヘッドの製造方法により、先端ストッパ12aおよび側方ストッパ12bを高い精度で、かつ高密度に形成することができ、高精細で信頼性の高い液体吐出ヘッドを製造することができる。
【0085】
(第2の製造方法)
図8(a)〜(f)は、本発明の第2の液体吐出ヘッドの製造方法を説明するための工程説明図である。
【0086】
まず、予め発熱体10を備える基板1上に、窒化シリコン等の材料により、可動部材11を作成しておく(図8(a))。
【0087】
ついで、可動部材11を被覆する厚さまで溶解可能な樹脂層31を基板1上に設ける(図8(b))。本実施例では溶解可能な樹脂層31としてポジ型のレジストを用いて20μmの厚みとした。
【0088】
その後、溶解可能な樹脂層31を流路3となる部分を残すようにフォトリソグラフィーによってパターニングする(図8(c))。
【0089】
次いで、溶解可能な樹脂層31を被覆するように被覆樹脂層79を設ける(図8(d))。なお、本実施例においては、被覆樹脂層79としてネガ型のレジストであるカチオン重合開始剤を含むエポキシ樹脂を用いた。
【0090】
次いで、被覆樹脂層79の流路3に対応する部分をフォトリソグラフィーによって除去する(図8(e))。この時、被覆樹脂層79の除去部分の幅は溶解可能な樹脂層31の幅より狭く、且つ、可動部材11の幅よりも狭く形成される。このように形成することにより流路3に段差構造を形成し、この段差が前記側方ストッパ12bとなる。
【0091】
次いで、溶解可能な樹脂層31を溶出することにより、内部に可動部材11を有する流路3が形成される。最後に、被覆樹脂層79の開口面に天板2を接合することにより、可動部材11及び側方ストッパ12bを有する液体吐出ヘッドが完成する(図8(f))。
【0092】
(第3の製造方法)
図9(a)〜(e)は、本発明の第3の液体吐出ヘッドの製造方法を説明するための工程説明図である。
【0093】
まず、予め発熱体10を備える基板1上に、窒化シリコン等の材料により、可動部材11を作成しておき、ついで、可動部材11を被覆する厚さまで樹脂層81を基板1上に設ける(図8(a))。本実施例では樹脂層81としてネガ型のレジストを用いて20μmの厚みとした。
【0094】
その後、樹脂層81の流路3となる部分をフォトリソグラフィーによって除去する(図8(b))。
【0095】
次いで、別の治具82上に30μmの厚みのドライフィルム83を用意し、このドライフィルム83上に先ほどの基板1を樹脂層81が当接するように接合する(図8(c))。
【0096】
この状態でドライフィルム83のプリベークを行った後、ドライフィルム83の流路3に対応する部分に樹脂層81に設けられた開口幅より狭く、且つ、可動部材11の幅よりも狭い開口を形成する(図8(d))。このように流路3となる開口をフォトリソグラフィーにより形成することにより流路3に段差構造を形成し、この段差が前記側方ストッパ12bとなる。
【0097】
最後に、ドライフィルム83の開口面に天板2を接合することにより、可動部材11及び側方ストッパ12bを有する液体吐出ヘッドが完成する(図9(e))。
【0098】
(第2の実施形態)
図2は本発明の第2の実施形態を示す摸式図である。なお、図2は図1と対応するように示されており、同一の構成の説明は省略する。
【0099】
本実施形態では、気泡発生領域に近接して、可動部材11に素子基板1側に突出する凸部11c(以下、単に「下側凸部」と称する。)が設けられている点が実施例1と異なる。この下側凸部11cは、気泡発生領域で発生する気泡40を後方(上流側)に成長することを抑制するものであり、この下側凸部11cを設けたことにより、実施例1に比べ気泡40の後方成長が少なくなっていることが図2(b2)〜(e2)に示されている。そして、この下側凸部11cは後方への気泡の成長を抑制することで吐出エネルギー向上に寄与するものである。
【0100】
下側凸部11cが設けられる位置としては、可動部材11が素子基板1側に変位する際にこの下側凸部11cが基板1に当接することがあるため、少なくとも発熱体10周囲の段差部分から離れた位置に設けられることが望ましい。具体的には有効発泡領域から5μm以上離れていることが望ましい。また、あまりに気泡発生領域から離れすぎると、気泡40の後方成長抑制の効果を発揮できなくなるため、発熱体10の有効発泡領域から発熱体10の長さの略半分までの距離内に設けられていることが望ましい。すなわち、本実施例においては約45μmであり、好ましくは30μm以内、さらに好ましくは20μm以下となる。
【0101】
また、下側凸部11cの高さは可動部材11と素子基板1間の距離とほぼ等しいかそれ以下であり、本実施形態においては、下側凸部11cの先端と素子基板1はわずかにクリアランスを有している。
【0102】
この下側凸部11cによって、気泡発生領域で発生した気泡40は、可動部材11と素子基板1との間を上流方向へ伸延することが抑制され、上流方向への液体の移動が少なくなり、結果的にさらにリフィルを向上させることができる。
【0103】
一般に、気泡40の成長は気泡発生当初に急速に進行し、その後は緩やかな成長となる。本実施形態では、下側凸部11cにより、この気泡発生時点で気泡発生領域の上流側を実質的に密閉しており、上流側への気泡40の成長を抑制する。そして、発泡に伴う圧力波の上流側への進行を遮る。なお、下側凸部11cと素子基板1との間にごく微小な(例えば1〜2μmの)隙間があったとしても、その隙間を気泡40は通過できないので、実質的に密閉しているといえる。
【0104】
以下に本実施例の下側凸部11c付き可動部材11の製造方法について説明する。
【0105】
まず、図10(a)では、素子基板1の発熱体10側の面全体に、発熱体10との電気的な接続を行うための接続用パッド部分を保護するための第1の保護層としてのTiW膜をスパッタリング法によって厚さ約5000Å形成する。
【0106】
次に、図10(b)では、TiW膜の表面に、間隙形成部材21aを形成するためのAl膜をスパッタリング法によって厚さ約4μm形成する。
【0107】
次いで、図10(c)では、形成されたAl膜を、周知のフォトリソグラフィプロセスを用いてパターニングすることで、そのAl膜の、可動部材11の支持固定部に対応する部分および可動部材11の下側凸部11cに対応する部分23を除去し間隙形成部材21aを形成する。なお、このとき可動部材下側凸部11cに対応する部分23の開口距離は6μmとした。
【0108】
その後、図10(d)では、さらにAl膜をスパッタリング法によって約1μm形成する。そして、このAl膜の可動部材11の支持固定部に対応する部分のみを除去し、TiW膜の表面に間隙形成部材21bを形成する。従って、TiW膜表面の、可動部材11の支持固定部に対応する部分が露出することになる。この間隙形成部材21a、21bは、素子基板1と可動部材11との間の間隙を形成するための、Al膜からなるものである。そして、発熱体10と可動部材11との間の気泡発生領域に対応する位置を含む、TiW膜表面の、可動部材11の支持固定部に対応する部分を除く部分全てに形成されている。すなわち、この製造方法では、TiW膜表面の、流路側壁7に対応する部分にまで間隙形成部材21a、21bが形成されている。
【0109】
この間隙形成部材21a、21bは、後述するようにドライエッチングにより可動部材11を形成する際のエッチングストップ層として機能する。これは、TiW層や、素子基板1における耐キャビテーション膜としてのTa膜、および抵抗体上の保護層としてのSiN膜が、流路3を形成するために使用するエッチングガスによりエッチングされてしまうからであり、それらの層や膜のエッチングを防止するために、このような間隙形成部材21a、21bを素子基板1上に形成する。これにより、可動部材11を形成するためにSiN膜のドライエッチングを行う際にTiW膜の表面が露出することがなく、そのドライエッチングによるTiW膜および、素子基板1内の機能素子の損傷が間隙形成部材21aによって防止される。
【0110】
次に、図10(e)では、間隙形成部材21a、21bの表面全体および、TiW膜の、露出した面全体に、プラズマCVD法を用いて、可動部材11を形成するための材料膜である厚さ約5μmのSiN膜22を、間隙形成部材21a、21bを被覆するように形成する。そして、SiN膜22の表面に、スパッタリング法によりAl膜を厚さ約6100Å形成した後、形成されたAl膜を、周知のフォトリソグラフィプロセスを用いてパターニングし、SiN膜22表面の、可動部材11に対応する部分に第2の保護層としてのAl膜(不図示)を残す。その第2の保護層としてのAl膜は、可動部材11を形成するためにSiN膜22のドライエッチングを行う際の保護層(エッチングストップ層)すなわちマスクとなる。そして、誘電結合プラズマを使ったエッチング装置を用い、前記第2の保護層をマスクにしてSiN膜22をパターニングすることで、そのSiN膜22の残った部分で構成される可動部材11を形成する。そのエッチング装置ではCF4とO2の混合ガスを用いており、SiN膜22をパターニングする工程では、可動部材11の支持固定部が素子基板1に直接固定されるようにSiN膜22の不要な部分を除去する。可動部材11の支持固定部と素子基板1との密着部の構成材料には、パッド保護層の構成材料であるTiW、および素子基板1の耐キャビテーション膜の構成材料であるTaが含まれる。
【0111】
また、このエッチングの工程において、SiN膜22の不要な部分を除去することで露出する部分、すなわちエッチングされる領域には、上述したように間隙形成部材21a、21bが形成されているため、TiW膜の表面が露出することがなく、間隙形成部材21a、21bによって素子基板1が確実に保護される。
【0112】
次に、図10(f)では、酢酸、りん酸および硝酸の混酸を用いて、可動部材11に形成したAl膜からなる前記第2の保護層や、Al膜からなる間隙形成部材21a、21bを溶出して除去し、素子基板1上に可動部材11を作り込む。その後、過酸化水素を用いて、素子基板1に形成したTiW膜の、気泡発生領域およびパッドに対応する部分を除去する。
【0113】
なお、図10(g)は、図10(f)の上面図である。
【0114】
なお、図10に基づいて説明した製造方法では、2層のAl膜の可動部材11の支持固定部に対応する部分の除去はそれぞれの層毎に行ったが、2層のAl膜を形成した後に2層を一度に除去することによって行ってもよい。この場合には、パターニングが一度ですむため、各Al膜でのパターニングのずれのおそれがなくなる。
【0115】
なお、本実施例においては、より好ましい形態として、下側凸部11cと側方ストッパ12bのいずれも備える構成としたが、図14に示すように、側方ストッパ12cが設けられていない場合であっても下側凸部11cの気泡40の後方成長の抑制の効果は十分に得られるものであり、良好な吐出を行うことが出来るものである。
【0116】
(第3の実施形態)
図3は本発明の第3の実施形態を示す図である。なお、図3は図1と対応するように示されており、同一の構成の説明は省略する。
【0117】
本実施例は、可動部材11の側端に末広がり状にテーパー部11dを有しており、また、側方ストッパ12bの可動部材11の接触部にも同様に前記テーパ部11dと密着するようにテーパー形状12cをもうけている点が実施例2と異なる。
【0118】
実施例2と同様に、可動部材11の変位を側方ストッパ12bで規制すると共に、このテーパー部11d,テーパー形状12cがガイドとなって側方ストッパ12bと可動部材11の幅方向の位置ずれを補正し、最適な位置で当たるとともに、テーパー部11d,テーパー形状12cがより密着性を高めることで液体の移動抑制効果を高め、リフィル特性をさらに向上することができる。
【0119】
(第4の実施形態)
図4は本発明の第4の実施形態を示す図である。なお、図4は図1と対応するように示されており、同一の構成の説明は省略する。
【0120】
前記実施例1〜4は側方ストッパ12bは対向板である天板2から連続して設けられていたのに対し、本実施形態では側方ストッパ12b部が側壁7の途中からひさし状に突出しており、また、長さも流路3の上流側まで延在せず、流路3に対して短い部分、すなわち、発熱体10のほぼ中央部分から発熱体10の上流側端より20μmほど上流までとなっている。
【0121】
このため、側方ストッパ12bが高さ方向、長さ方向において、最小限に存在するため、流路幅の広い部分を最大限残し、かつ、側方ストッパ12bとしての効果を維持するものであり、消泡時における共通液室6側からの流体抵抗を非常に小さいものとすることができリフィル特性を一層向上させることができるものである。また、気泡40の後方への成長は下側凸部11cにより抑えられているため、側方ストッパ12bが設けられていない部分まで気泡40の遮断効果を得られないということはない。
【0122】
また、本実施形態では側方ストッパ12bの形状として側壁7より部分的に突出する形状としたが、図11のように側壁7自体が中央域で狭まる形状とすることによっても同様の効果を得られるものである。
【0123】
[第5の実施形態]
図15は本発明の第5の実施形態の液体吐出装置である液体吐出ヘッドの要部の側断面図である。まずその構成について説明する。
【0124】
この液体吐出ヘッドは、素子基板401と天板402とが積層状態で固着され、両板401,402の間に流路403が設けられている。流路403は、吐出口404側のノズル部分405と、供給路部分406とを含んでいる。ノズル部分405は、側壁407および天井408に囲まれた細長い流路であり、1個の記録ヘッドに多数のノズル部分405が設けられている。そして、この多数のノズル部分405の上流側に同時に連通するように、大容積の供給路部分406が設けられている。つまり、単一の供給路部分406から多数のノズル部分405に分岐した形状となっている。また、供給路部分406の天井409は、ノズル部分405の天井408よりも非常に高くなっている。多数のノズル部分405に対応して、素子基板401には電気熱変換素子等の発熱体(気泡発生手段)410と可動部材411とが取付けられている。
【0125】
可動部材411は、一端支持の片持ち梁状であり、インクの流れの上流側(図15右側)で素子基板401に固定され、構造支点411cより下流側(図15左側)が図15上下方向に移動可能である。そして、自由端411bが発熱体410の中心よりやや下流側に位置している。図15(a)に示す初期状態においては、可動部材411は素子基板1との間にわずかな隙間を保ちつつ素子基板401に平行に位置する。
【0126】
このような構成であり、図示しないインク容器から、供給路部分406を介して各ノズル部分405の吐出口404付近までインクが充填される。そして、図示しない駆動回路が、形成すべき画像に対応してインク吐出すべきノズル部分405の発熱体410に対し、選択的に駆動信号が供給される。駆動信号が供給された発熱体410は発熱し、図15(b)に示すように、発熱体410の周辺(気泡発生領域)のインクが加熱されて発泡する。こうして発生した気泡412により吐出口404側(図15左方)へ進行する圧力波が、インクを吐出口404から押し出す。こうして吐出されたインクが、図示しない被記録媒体(記録紙等)に付着して記録が行なわれる。一方、気泡412のうち供給路部分406側(図15右方)に向って成長する成分は、可動部材411を押し上げる。押し上げられた可動部材411は、自由端411bが天井408に当接することによりそれ以上の変形が抑止される。こうして、可動部材411に規制されて、気泡412の供給路部分406側(図15右方)への成長が抑制される。このように可動部材411は弁として作用する。
【0127】
この点についてより詳細に説明する。
【0128】
実質的に周りに流体抵抗がない状態で気泡412を発泡させた場合には図16(a)のような形状に気泡412は発泡するものであるが、この時、例えば図中左側に吐出口404があるとすれば、気泡412の左(下流)側半分が吐出に寄与し、右(上流)側半分がリフィル及びメニスカス振動に影響を与えるとして考えても良い。従って、気泡412の上流側半分の成長を抑制することが、上流側へのバック波及び液体の慣性力を抑制することになり、ノズル部分405のリフィル周波数が向上し、メニスカス振動が抑制されるものである。流路403内に可動部材411が設けられた場合、可動部材411の移動は気泡412発生時の圧力波による圧力分布がもたらした液体の移動によってなされるものであり、気泡412の成長形状もこの液体の移動によって決まる。そこで、上述のように気泡412の上流側の成長を抑制するためには、可動部材411によって気泡発生領域から上流側への液体の移動を少なくしてやればよい。可動部材411の移動に伴って上流側に可動部材411の変位可能な範囲の容積分の液体が移動することになるため、可動部材411の変位可能な範囲の容積を少なくすれば、気泡412の上流側の成長を抑制でき、効率的な液体の吐出が行えることになる。具体的には、実質的に周りに流体抵抗がない状態で気泡412を発泡させた場合における最大発泡時の気泡412の体積の半分に上流側の気泡412の成長、すなわち、可動部材411の移動に伴う液体の移動を抑えてやれば良いことになるが、可動部材411と発熱体410(基板401)との間にはクリアランスが設けられており、この部分にも気泡412が及ぶことを考えると、自由端411bが発熱体410の中心よりもやや下流側に位置するように可動部材411を配設し、可動部材411の変位可能な範囲の容積(上流側へ押し出される液体の体積、ここでは「可動部材411の変位領域の体積Vv」と称する)が、発生する気泡412の最大体積Vbの2分の1未満になるように構成した。これによって、気泡412の下流側への成長成分と上流側への成長成分とが均等ではなく、上流側への成長成分が少なくなり上流側への液体の移動が抑制される。上流側への液体の流れが抑制されるため、吐出後のメニスカスの後退量が減少し、その分リフィル時にメニスカスがオリフィス面よりも突出する量も減少する。なお、可動部材411の変位領域の体積Vvは、概略、「可動部材の自由端から支点までの長さ」×「可動部材の幅W」×「可動部材の最大変位高さ」/2で求めることができるが、ここで、注意すべきは、可動部材411の支点411aとは可動部材の構造支点(固定部)411cとは異なるということである。すなわち、可動部材411の長さが所定の長さを有する場合、通常、構造支点411cよりも下流側に実質的な支点411aが存在することになる。そして、前記した「可動部材の自由端から支点までの長さ」は、この実質的な支点411aで求めるべきものである。
【0129】
このような構成とすることにより、往復運動であるメニスカス振動が抑制されることとなり、低周波数から高周波数まであらゆる駆動周波数に於て安定した吐出が行われる。
【0130】
具体的に例示すると、バブルジェット式液体吐出ヘッドにおいて、気泡の最大成長時の高さが45μmの場合、発熱体10の発熱面の面積をShとすると、気泡の最大体積VbはSh×45[μm3]である。また、可動部材411の面積をSv、最大変位高さ(図15(a)に示すように可動部材411が天井に408に規制されてそれ以上の変形が行なえなくなった状態における高さ)をHvとすると、可動部材411の変位領域の体積VvはSv×Hv÷2[μm3]と近似することができる。
【0131】
そこで、例えば、発熱体410の発熱面の面積をShが40×115[μm]、可動部材11の面積Svが40×175[μm]、ノズル部分405の天井408の高さが35[μm]で可動部材の最大変位高さが25[μm]であると、気泡の最大体積Vbは、40×115×45=207000[μm3]であり、その2分の1は、103500[μm3]である。一方、可動部材411の変位領域の体積Vvは、40×175×25÷2=87500[μm3]である。このように、可動部材411の変位領域の体積Vvが、気泡の最大体積Vbの2分の1よりも小さくなるように、可動部材411およびノズル部分405の天井408が設定されていると、大きさや駆動電力が等しい発熱体を用いても、従来の液体吐出ヘッドよりも高いリフィル周波数で効率よくインク吐出がおこなえる。
【0132】
[第6の実施形態]
図17は、本発明の第6の実施形態の要部の側断面図である。なお、第5の実施形態と同じ構成については、同一の符号を付与し説明は省略する。
【0133】
本実施形態では、ノズル部分405の天井408から下方へ突出するストッパ412が、天井408に一体的に形成されている。第5の実施形態で説明したように、可動部材411により上流側への液体の慣性力を抑制してリフィル周波数向上とメニスカス振動抑制効果を得るために、本実施形態ではストッパの先端から素子基板401までの距離を25[μm]に設定している。さらに、インク吐出に寄与する発熱体410から下流側への気泡の成長のエネルギーを効率よく吐出口404側へ導くと、高い吐出力が得られる。そこで本実施形態では、ストッパ412が設けられている部分よりも下流側のノズル部分405の断面積を大きくして下流側の流路抵抗を低下させて、高効率化を図っている。ストッパ領域よりも下流側の流路抵抗を低下させるにはノズル断面積を大きくする方法と、発熱体からオリフィスまでの距離を短くする方法とがあるが、後者ではリフィル周波数が低下するため、本実施形態では前者の構成を採っている。この結果、吐出量、吐出速度とも増大し、高効率のインク吐出が実現している。
【0134】
図17に示す本実施形態についてより具体的に説明すると、発熱体410の面積Shが40×115[μm]、可動部材の面積Svが40×175[μm]、ストッパの先端から素子基板401までの距離が25[μm]で可動部材411の最大変位高さHvが15[μm]であり、気泡の最大体積Vbの2分の1が40×115×45÷2=103500[μm3]であるのに対して、可動部材411の変位領域の体積Vvが40×175×15÷2=52500[μm3]である。このように、可動部材411の変位領域の体積Vvが気泡の最大体積Vbの2分の1よりも小さく、大きさおよび駆動電力が同じ発熱体410を有する従来の液体吐出ヘッドはもとより、第5の実施形態のヘッドよりも高いリフィル周波数を実現できた。
【0135】
また、第5の実施形態と同様に、上流側への液体の流れが抑制されるため、吐出後のメニスカスの後退量も減少し、その分リフィル時にメニスカスがオリフィス面よりも突出する量も減少する。したがってこの往復運動であるメニスカス振動が抑制されることとなり、低周波数から高周波数まであらゆる駆動周波数に於て安定した吐出が行われた。
【0136】
ただし、ストッパの高さを低くしていくとノズル部分405内にインクが充填されるときの流路抵抗が高まり、後方への液体慣性力抑制効果よりもこの流路抵抗上昇の影響の方が大きくなると逆にリフィル周波数が低下してしまうため、ストッパ412が設けられた部分の、可動部材411の厚みを除いた流路高さは10[μm]以上が好ましく、15[μm]以上がより好ましい。
【0137】
[第7の実施形態]
図18は本発明の第7の実施形態の要部の側断面図である。なお、第5の実施形態と同じ構成については、同一の符号を付与し説明は省略する。
【0138】
本実施形態では、隣接するノズル部分405とのクロストークを可動部材411およびノズル部分405の側壁414で抑制しつつ、ノズル部分5内へのインクリフィルをしやすくするため、ノズル部分405の天井413を一部取り除いている。すなわち、ノズル部分405の供給路部分406側(上流側)端部が、第5の実施形態と同様な低い天井に覆われておらず、供給路部分406の高い天井409までの広い流路となっている。
【0139】
本実施形態によると、第5の実施形態と同様な発熱体410、可動部材411、可動部材411の最大変位高さであって、発泡時の挙動がほぼ同じであっても、リフィル時にはより速くインクがノズル部分5内に充填される。そのため、第5の実施形態よりも高い駆動周波数が達成し得る。
【0140】
側壁414の長さが短い方がリフィル周波数は高くなるが、逆にクロストークが大きくなってしまう。本発明者が検討したところ少なくとも発熱体410の上流側端部より10μm以上上流側まで側壁414が延びている場合にクロストーク抑制効果が得られることがわかった。
【0141】
[第8の実施形態]
図19は本発明の第8の実施形態の要部の側断面図である。なお、第5の実施形態と同じ構成については、同一の符号を付与し説明は省略する。
【0142】
本実施形態では、第7の実施形態と同様に、隣接するノズル部分405とのクロストークを可動部材411およびノズル部分405の側壁415で抑制しつつ、ノズル部分405内へのインクリフィルをしやすくするため、ノズル部分405の天井416を一部取り除いている。すなわち、ノズル部分405の供給路部分406側(上流側)端部が、第5の実施形態と同様な低い天井に覆われておらず、供給路部分406の高い天井409までの広い流路となっている。さらに、天井416に第6の実施形態と同様なストッパ417が一体形成されている。そして、ストッパ417が設けられている部分よりも下流側のノズル部分405の断面積を大きくして下流側の流路抵抗を低下させて、高効率化を図っている。
【0143】
[第9の実施形態]
図20は本発明の第9の実施形態の要部の側断面図である。なお、第5の実施形態と同じ構成については、同一の符号を付与し説明は省略する。
【0144】
本実施形態では、上流側への液体の慣性力を抑制する効果を高めるために、ノズル部分405の天井418の供給路部分406側(上流側)端部に傾斜部418aが設けられている。この傾斜部418aにより、可動部材411が上昇したときにインクの流れが遮断される。これによって、発泡時の上流側へのインク流がさらに減少し、メニスカス振動抑制効果がより高くなる。
【0145】
<サイドシュータタイプ>
ここでは、図1〜図4を用いて説明した液体吐出原理を、発熱体と吐出口が平行平面上で対面するサイドシュータタイプのヘッドに適用したものを説明する。図12はこのサイドシュータタイプのヘッドを説明するための図である。
【0146】
図12において、素子基板1上の発熱体10と天板2に形成された吐出口4とが相対するように配設されている。吐出口4は発熱体10上を通る流路3と連通している。発熱体10と液体との接する面の近傍領域には気泡発生領域が存在する。そして素子基板1上に2つの可動部材11が支持され、各々の可動部材は発熱体の中心を通る面に対して面対称となるように形成されており、各々の可動部材11の自由端は発熱体10上で向き合うように位置している。また、各々の可動部材11は発熱体10への投影面積を等しくしており、各々の可動部材11の自由端どうしは所望の寸法で隔てられている。ここで、各可動部材は発熱体の中心を通る面の分割壁で分割したと仮定した際、それぞれの分割された発熱体の中心付近に可動部材の自由端が位置するように設けられている。
【0147】
天板2には各可動部材11の変位をある範囲で規制するストッパ12が設けられている。共通液室13から吐出口4への流れにおいて、ストッパ12を境に上流側に、流路3と比較して相対的に流路抵抗の低い低流路抵抗領域が設けられている。この領域における流路構造は流路3よりも流路断面積が大きいことで、液体の移動に対し流路から受ける抵抗を小さくしている。
【0148】
また、図13は、一つの発熱体に対して一つの可動部材を設けた構成を示しており、図13(c),(d)は先端ストッパ12aに加え側方ストッパ12bを設けた構成を示している。なお、本実施形態では、上流側への液体の慣性力を抑制する効果を高めるために、流路に設けられた側方ストッパ12bの可動部材との接触面に流路の下流側に向かって前記基板から離れる方向の傾斜部12dが設けられている。この傾斜部12dにより、可動部材11が上昇したときに可動部材のストッパへの接触状態をより良好なものとすることができる。これによって、発泡時の上流側へのインク流がさらに減少し、メニスカス振動抑制効果がより高くなる。
【0149】
次に、本形態の構造による特徴的な作用・効果を図13を用いて説明する。
【0150】
図13(b)、(d)では、気泡発生領域11内を満たす液体の一部が発熱体10によって加熱され、膜沸騰に伴う気泡40が最大に成長した状態を示す。このとき、気泡40の発生に基づく圧力により流路3内の液体が吐出口4方向に移動し、気泡40の成長により各可動部材11が変位し、吐出口4から吐出滴66が飛び出そうとしている。ここで、上流方向への液体の移動は低流路抵抗領域によって大きな流れとなるが、可動部材11はストッパ12に接近または接触するまで変位すると、それ以上の変位が規制されるため、上流方向への液体の移動もそこで大きく制限される。同時に気泡40の上流側への成長も可動部材11で制限される。しかしながら、図13(b)では、上流方向への液体の移動力は大きいため、可動部材11で成長を制限された気泡40の一部は、流路3を形成する側壁と可動部材11の側部との間隙を通り、可動部材11の上面側に隆起している。すなわち、隆起気泡41を形成している。一方、図13(d)では、側方ストッパ12bにより可動部材11と流路側壁7とのクリアランスが遮断されているため、隆起気泡は形成されていない。
【0151】
かかる膜沸騰の後に気泡40の収縮が開始された場合、この時点では液体の上流方向への力が大きく残るため、可動部材11は未だストッパ12aに接触された状態であり、気泡40の収縮の多くは吐出口4から上流方向への液移動を生じさせる。したがって、メニスカスはこの時点で吐出口4から流路3内に大きく引き込まれ、吐出液滴66と繋がっている液柱を強い力ですばやく切り離す。その結果、吐出口4の外側にとり残される液滴すなわちサテライトが少なくなる。
【0152】
消泡工程がほぼ終了すると、低流路抵抗領域では液体の上流方向の移動力に対し可動部材11の反発力(復元力)が勝り、可動部材11の下方変位とそれに伴う低流路抵抗領域での下流方向への流れとが開始される。これと同時に、低流路抵抗領域での下流方向への流れは流路抵抗が小さいため、急速に大きな流れとなってストッパ12a部分を介し流路3へ流れ込む。
【0153】
このように本形態では、吐出用液体を低流路抵抗領域より供給することで、リフィル性をより高速に高めている。また、低流路抵抗領域に隣接する共通液室がさらに流路抵抗を小さくしているので、さらに高速リフィルを可能にしている。
【0154】
さらに、気泡40の消泡工程において、側方ストッパ12bと可動部材11との間隙が低流路抵抗領域から気泡発生領域11への液流を促進させるとともに、可動部材11がストッパ12aから離間して生じる可動部材11の表面を伝わる急速な液体供給と相まって、消泡をすみやかに完了させる。
【0155】
<可動部材>
先の実施形態において、可動部材は厚さ5μmの窒化シリコンで構成したが、これに限られることなく可動部材を構成する材質としては吐出液に対して耐溶剤性があり、可動部材として良好に動作するための弾性を有しているものであればよい。
【0156】
可動部材の材料としては、耐久性の高い、銀、ニッケル、金、鉄、チタン、アルミニュウム、白金、タンタル、ステンレス、りん青銅等の金属、およびその合金、または、アクリロニトリル、ブタジエン、スチレン等のニトリル基を有する樹脂、ポリアミド等のアミド基を有する樹脂、ポリカーボネイト等のカルボキシル基を有する樹脂、ポリアセタール等のアルデヒド基を持つ樹脂、ポリサルフォン等のスルホン基を持つ樹脂、そのほか液晶ポリマー等の樹脂およびその化合物、耐インク性の高い、金、タングステン、タンタル、ニッケル、ステンレス、チタン等の金属、これらの合金および耐インク性に関してはこれらを表面にコーティングしたもの若しくは、ポリアミド等のアミド基を有する樹脂、ポリアセタール等のアルデヒド基を持つ樹脂、ポリエーテルエーテルケトン等のケトン基を有する樹脂、ポリイミド等のイミド基を有する樹脂、フェノール樹脂等の水酸基を有する樹脂、ポリエチレン等のエチル基を有する樹脂、ポリプロピレン等のアルキル基を持つ樹脂、エポキシ樹脂等のエポキシ基を持つ樹脂、メラミン樹脂等のアミノ基を持つ樹脂、キシレン樹脂等のメチロール基を持つ樹脂およびその化合物、さらに二酸化珪素、チッ化珪素等のセラミックおよびその化合物が望ましい。本発明における可動部材としてはμmオーダーの厚さを対象にしている。
【0157】
次に、発熱体と可動部材の配置関係について説明する。発熱体と可動部材の最適な配置によって、発熱体による発泡時の液の流れを適正し制御して有効に利用することが可能となる。
【0158】
熱等のエネルギーをインクに与えることで、インクに急峻な体積変化(気泡の発生)を伴う状態変化を生じさせ、この状態変化に基づく作用力によって吐出口からインクを吐出し、これを被記録媒体上に付着させて画像形成を行うインクジェット記録方法、いわゆるバブルジェット記録方法の従来技術においては、図21に示すように、発熱体面積とインク吐出量は比例関係にあるが、インク吐出に寄与しない非発泡有効領域Sが存在していることがわかる。また、発熱体上のコゲの様子から、この非発泡有効領域Sが発熱体の周囲に存在していることがわかる。これらの結果から、発熱体周囲の約4μm幅は、発泡に関与されていないとされている。
【0159】
したがって、発泡圧を有効利用するためには、発熱体の周囲から約4μm以上内側の発泡有効領域の直上が可動部材に対し有効に作用する領域であるが、本発明の場合、気泡発生領域のほぼ中央領域(実際には中央から液の流れ方向に±約10μmの範囲)の上流側と下流側の気泡の液路内の液流に対する作用を独立的に作用せしめる段階と、総合的に作用せしめる段階とを区分せしめることに着目し、該中央領域より上流側部分のみが可動部材に対面するように、可動部材を配置するのが極めて重要であると、言える。本実施例においては、発泡有効領域を発熱体周囲から約4μm以上内側としたが、発熱体の種類や形成方法によっては、これに限定されるものではない。
【0160】
さらに、前述した実質的密閉空間を良好に形成するために、待機状態における可動部材と発熱体の距離は10μm以下とするのが好ましい。
【0161】
<素子基板>
以下に液体に熱を与えるための発熱体10が設けられた素子基板1の構成について詳細に説明する。
【0162】
図22は本発明の液体吐出装置の要部の側断面図を示したもので、図22(a)は後述する保護膜がある装置、図22(b)は保護膜がない装置である。
【0163】
素子基板1上には、前記した流路3を構成する溝を設けた溝付き天板2が配されている。
【0164】
素子基板1は、シリコン等の基体107に絶縁および蓄熱を目的としたシリコン酸化膜またはチッ化シリコン膜106を成膜し、その上に発熱体10を構成するハフニュウムボライド(HfB2)、チッ化タンタル(TaN)、タンタルアルミ(TaAl)等の電気抵抗層105(0.01〜0.2μm厚)とアルミニュウム等の配線電極104(0.2〜1.0μm厚)を図22(a)のようにパターニングしている。この配線電極104から抵抗層105に電圧を印加し、抵抗層105に電流を流し発熱させる。配線電極104間の抵抗層105上には、酸化シリコンやチッ化シリコン等の保護膜103を0.1〜2.0μm厚で形成し、さらにそのうえにタンタル等の耐キャビテーション層102(0.1〜0.6μm厚)が成膜されており、インク等の各種の液体から抵抗層105を保護している。
【0165】
特に、気泡の発生、消泡の際に発生する圧力や衝撃波は非常に強く、堅くてもろい酸化膜の耐久性を著しく低下させるため、金属材料のタンタル(Ta)等が耐キャビテーション層102として用いられる。
【0166】
また、液体、流路構成、抵抗材料の組み合わせにより、上述の抵抗層105に保護膜103を必要としない構成でもよくその例を図10(b)に示す。このような保護膜103を必要としない抵抗層105の材料としてはイリジュウム−タンタル−アルミ合金等が挙げられる。
【0167】
このように、前述の各実施形態における発熱体10の構成としては、前述の電極104間の抵抗層105(発熱部)だけででもよく、また抵抗層105を保護する保護膜103を含むものでもよい。
【0168】
各実施形態においては、発熱体10として電気信号に応じて発熱する抵抗層105で構成された発熱部を有するものを用いたが、これに限られることなく、吐出液を吐出させるのに十分な気泡を発泡液に生じさせるものであればよい。例えば、レーザ等の光を受けることで発熱するような光熱変換体や高周波を受けることで発熱するような発熱部を有する発熱体でもよい。
【0169】
なお、前述の素子基板1には、前述の発熱部を構成する抵抗層105とこの抵抗層105に電気信号を供給するための配線電極104で構成される発熱体10の他に、この発熱体10(電気熱変換素子)を選択的に駆動するためのトランジスタ、ダイオード、ラッチ、シフトレジスタ等の機能素子が一体的に半導体製造工程によって作り込まれていてもよい。
【0170】
また、前述のような素子基板1に設けられている発熱体10の発熱部を駆動し、液体を吐出するためには、前述の抵抗層105に配線電極104を介して図23に示されるような矩形パルスを印加し、配線電極104間の抵抗層105を急峻に発熱させる。前述の各実施形態のヘッドにおいては、それぞれ電圧24V、パルス幅7μsec、電流150mA、電気信号を6kHzで加えることで発熱体を駆動させ、前述のような動作によって、吐出口4から液体であるインクを吐出させた。しかしながら、駆動信号の条件はこれに限られることなく、発泡液を適正に発泡させることができる駆動信号であればよい。
【0171】
<記録装置>
図24には、前述の液体吐出装置を組み込み、吐出液体としてインクを用いたインクジェット記録装置を示している。キャリッジHCは、インクを収容する液体タンク部90と、液体吐出装置である記録ヘッド部200とが着脱可能なヘッドカートリッジを搭載しており、被記録媒体搬送手段で搬送される記録紙等の被記録媒体150の幅方向に往復移動する。
【0172】
不図示の駆動信号供給手段からキャリッジHC上の液体吐出手段に駆動信号が供給されると、この信号に応じて記録ヘッド部から被記録媒体に対してインク(記録液体)が吐出される。
【0173】
また、本実施形態の記録装置においては、被記録媒体搬送手段とキャリッジを駆動するための駆動源としてのモータ111、駆動源からの動力をキャリッジに伝えるためのギア112、113、キャリッジ軸115等を有している。この記録装置およびこの記録装置で行う液体吐出方法によって、各種の被記録媒体に対して液体を吐出することで良好な画像の記録物を得ることができた。
【0174】
図25は、本発明の液体吐出装置によりインクジェット式記録を行なうための記録装置全体のブロック図である。
【0175】
記録装置は、ホストコンピュータ300より印字情報を制御信号として受ける。印字情報は印字装置内部の入力インターフェイス301に一時保存されると同時に、記録装置内で処理可能なデータに変換され、ヘッド駆動信号供給手段を兼ねるCPU(中央処理装置)302に入力される。CPU302はROM(リード・オンリー・メモリー)303に保存されている制御プログラムに基づき、前記CPU302に入力されたデータをRAM(ランダム・アクセス・メモリー)304等の周辺ユニットを用いて処理し、印字するデータ(画像データ)に変換する。
【0176】
また、CPU302は前記画像データを記録用紙上の適当な位置に記録するために、画像データに同期して記録用紙および記録ヘッド部を搭載したキャリッジHCを移動する駆動用モータ306を駆動するための駆動データを作る。画像データおよびモータ駆動データは、各々ヘッドドライバ307と、モータドライバ305を介し、記録ヘッド部200および駆動用モータ306に伝達され、それぞれ制御されたタイミングで駆動され画像を形成する。
【0177】
このような記録装置に用いられ、インク等の液体の付与が行われる被記録媒体150としては、各種の紙やOHPシート、コンパクトディスクや装飾板等に用いられるプラスチック材、布帛、アルミニウムや銅等の金属材、牛皮、豚皮、人工皮革等の皮革材、木、合板等の木材、竹材、タイル等のセラミックス材、スポンジ等の三次元構造体等を対象とすることができる。
【0178】
また、この記録装置として、各種の紙やOHPシート等に対して記録を行うプリンタ装置、コンパクトディスク等のプラスチック材に記録を行うプラスチック用記録装置、金属板に記録を行う金属用記録装置、皮革に記録を行う皮革用記録装置、木材に記録を行う木材用記録装置、セラミックス材に記録を行うセラミックス用記録装置、スポンジ等の三次元網状構造体に対して記録を行う記録装置、または布帛に記録を行う捺染装置等をも含むものである。
【0179】
また、これらの液体吐出装置に用いる吐出液としては、それぞれの被記録媒体や記録条件に合わせた液体を用いればよい。
【0180】
【発明の効果】
本発明によると、可動部材により気泡発生領域の上流側への気泡の移動が実質的に遮断されているため、発泡圧力は主に吐出口側へ向かう。すなわち、気泡の下流側への成長成分と上流側への成長成分とが均等ではなく、上流側への成長成分が少なくなり上流側への液体の移動が抑制される。上流側への液体の流れが抑制されるため、吐出後のメニスカスの後退量が減少し、その分リフィル時にメニスカスがオリフィス面よりも突出する量も減少する。したがってメニスカス振動が抑制されることとなり、低周波数から高周波数まであらゆる駆動周波数において安定した吐出が行われる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態の液体吐出ヘッドの要部模式図であり、(a1)〜(e1)は流路に直交する方向に切断した断面図、(a2)〜(e2)は流路の流れ方向に沿った側断面図、(a3)は流路の流れ方向に沿った(a2)と直交する断面図である。
【図2】本発明の第2の実施形態の液体吐出ヘッドの要部模式図であり、(a1)〜(e1)は流路に直交する方向に切断した断面図、(a2)〜(e2)は流路の流れ方向に沿った側断面図、(a3)は流路の流れ方向に沿った(a2)と直交する断面図である。
【図3】本発明の第3の実施形態の液体吐出ヘッドの要部模式図であり、(a1)〜(e1)は流路に直交する方向に切断した断面図、(a2)〜(e2)は流路の流れ方向に沿った側断面図、(a3)は流路の流れ方向に沿った(a2)と直交する断面図である。
【図4】本発明の第4の実施形態の液体吐出ヘッドの要部模式図であり、(a1)〜(e1)は流路に直交する方向に切断した断面図、(a2)〜(e2)は流路の流れ方向に沿った側断面図、(a3)は流路の流れ方向に沿った(a2)と直交する断面図である。
【図5】本発明の第1の液体吐出ヘッドの製造方法を説明するための工程説明図である。
【図6】本発明の第1の液体吐出ヘッドの製造方法を説明するための工程説明図である。
【図7】本発明の第1の液体吐出ヘッドの製造方法を説明するための工程説明図である。
【図8】本発明の第2の液体吐出ヘッドの製造方法を説明するための工程説明図である。
【図9】本発明の第3の液体吐出ヘッドの製造方法を説明するための工程説明図である。
【図10】本発明の下方凸部付き可動部材の製造方法を説明するための工程説明図である。
【図11】本発明の第4の実施形態の変形例を示す液体吐出ヘッドの流路断面図である。
【図12】本発明の液体吐出方法を適用したサイドシュータタイプのヘッドを説明するための図である。
【図13】本発明の液体吐出方法を適用した別のサイドシュータタイプのヘッドを説明するための図である。
【図14】本発明の第2の実施形態の変形例を示す液体吐出ヘッドの要部模式図である。
【図15】本発明の第5の実施形態の要部断面図であり、(a)は初期状態、(b)は気泡の最大成長状態、(c)は液体吐出後の再充填(リフィル)状態を示している。
【図16】気泡の成長方向とその作用を説明するための断面図である。
【図17】本発明の第6の実施形態の要部断面図であり、(a)は初期状態、(b)は気泡の最大成長状態、(c)は液体吐出後の再充填(リフィル)状態を示している。
【図18】本発明の第7の実施形態の要部断面図であり、(a)は初期状態、(b)は気泡の最大成長状態、(c)は液体吐出後の再充填(リフィル)状態を示している。
【図19】本発明の第8の実施形態の要部断面図であり、(a)は初期状態、(b)は気泡の最大成長状態、(c)は液体吐出後の再充填(リフィル)状態を示している。
【図20】本発明の第9の実施形態の要部断面図であり、(a)は初期状態、(b)は気泡の最大成長状態、(c)は液体吐出後の再充填(リフィル)状態を示している。
【図21】発熱体面積とインク吐出量との相対関係を示すグラフである。
【図22】本発明の液体吐出ヘッドの縦断面図を示したもので、(a)は保護膜があるもの、(b)は保護膜がないものである。
【図23】本発明に使用する発熱体を駆動する波形図である。
【図24】本発明の液体吐出ヘッドを搭載した液体吐出装置の概略構成を示す図である。
【図25】本発明の液体吐出方法および液体吐出ヘッドにおいてインク吐出記録を動作させるための装置全体のブロック図である。
【符号の説明】
1 素子基板
2 天板
3 流路
4 吐出口
6 共通液室
7 側壁
10 発熱体
11 可動部材
11a 支点
11b 自由端
11c 下側凸部
11d テーパー部
12 ストッパ
12a 先端ストッパ
12b 側方ストッパ
12c テーパー形状
13 共通液室
21a 間隙形成部材
21b 間隙形成部材
22 SiN膜
31 樹脂層
33 支点
40 気泡
64 ストッパ
71 間隙形成部材
72 SiN膜
73 エッチング保護膜
74 SiN膜
75 エッチングマスク層
77 樹脂膜
78 マスク
79 被覆樹脂層
81 樹脂層
82 治具
83 ドライフィルム
401 素子基板
402 天板
404 吐出口
405 ノズル部分
406 供給路部分
407 側壁
408 天井
409 天井
410 発熱体
411 可動部材
411a 実質的な支点
411b 自由端
411c 構造支点
412 ストッパ
413 天井
414 側壁
415 側壁
416 天井
417 ストッパ
418 天井
418a 傾斜部
Claims (17)
- 液体中に気泡を発生させるための熱エネルギーを発生する発熱体と、前記液体を吐出する部分である吐出口と、該吐出口に連通するとともに、液体に気泡を発生させる気泡発生領域を有する流路と、前記気泡発生領域に設けられ前記気泡の成長に伴って変位する可動部材と、前記可動部材の変位を所望の範囲に規制する規制部と、を備え、前記流路は、前記発熱体を備える基板と、前記基板に対向する対向板と、前記基板と前記対向板との間に位置する両側壁と、で形成され、前記気泡発生時のエネルギーにより前記吐出口から前記液体を吐出する液体吐出ヘッドであって、
前記可動部材は前記発熱体の幅以上の幅を有する自由端を備え、
前記発熱体が形成する気泡発生領域に前記可動部材の該自由端が対向し、該可動部材は、前記基板と対向しており、前記可動部材の側端が前記側壁に対して対向しながら変位するものであり、
前記規制部は、変位した前記可動部材の自由端に対して接触する先端規制部と、前記気泡発生領域の側方にあり、前記可動部材に関して前記基板とは反対側に位置するとともに、変位した前記可動部材の側端の両側に対して少なくとも一部が接触し、かつ、前記流路を開放している側方規制部と、を備え、該側方規制部は前記気泡発生領域から発生する気泡を前記可動部材との接触によって規制することを特徴とする液体吐出ヘッド。 - 前記可動部材は、前記気泡発生領域に近接し、前記可動部材から前記基板側へ突出している凸部を有する請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
- 前記先端規制部と、前記可動部材の自由端とは、前記基板に対して垂直な面上に位置している請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
- 前記先端規制部と、前記可動部材の自由端と、前記発熱体の中心とは、前記基板に対して垂直な面上に位置している請求項3に記載の液体吐出ヘッド。
- 前記流路は、前記先端規制部より下流側に向かって流路断面積が増加している請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
- 前記規制部から上流側に対向板の面が前記基板に対してたちあがっている請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
- 前記先端規制部と側方規制部とが連続している請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
- 前記可動部材の側端は前記基板側に広がるテーパー部を有しているとともに、前記側方規制部は前記流路の中央に向かって狭まるテーパー形状を有している請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
- 前記側方規制部は流路の下流側に向かって前記基板から離れる方向の傾斜形状となっている請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
- 前記側方規制部が前記対向板に設けられている請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
- 前記側方規制部が前記側壁に設けられている請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
- 前記側方規制部が前記流路の中央において前記側壁から前記流路内に突出している請求項11に記載の液体吐出ヘッド。
- 前記側方規制部における流路の幅より、側方規制部よりも対向板側の流路の幅が大きい請求項11に記載の液体吐出ヘッド。
- 前記可動部材の変位領域の体積Vvと、前記気泡の最大体積Vbとが、
Vv<Vb/2
の関係にある請求項1に記載の液体吐出ヘッド。 - 液体中に気泡を発生させるための熱エネルギーを発生する発熱体と、前記液体を吐出する部分である吐出口と、該吐出口に連通するとともに、液体に気泡を発生させる気泡発生領域を有する流路と、前記気泡発生領域に設けられ前記気泡の成長に伴って変位する可動部材と、前記可動部材の変位を所望の範囲に規制する規制部と、を備え、前記流路は、前記発熱体を備える基板と、前記基板に対向する対向板と、前記基板と前記対向板との間に位置する両側壁と、で形成され、前記気泡発生時のエネルギーにより前記吐出口から前記液体を吐出する液体吐出ヘッドの液体吐出方法であって、
前記可動部材は前記発熱体の幅以上の幅を有する自由端を備え、
前記発熱体が形成する気泡発生領域に前記可動部材の該自由端が対向し、該可動部材は、前記基板と対向しており、前記可動部材の側端が前記側壁に対して対向しながら変位するものであり、
前記規制部は、変位した前記可動部材の自由端側に対して接触する先端規制部と、前記気泡発生領域の側方であり、前記可動部材に関して前記基板とは反対側に位置するとともに、変位した前記可動部材の側端の両側に対して少なくとも一部が接触し、かつ、前記流路を開放している側方規制部と、を備え、
前記可動部材が前記気泡の最大発泡前に前記規制部に接触し、前記側方規制部が前記気泡発生領域から発生する気泡を前記可動部材との接触によって規制することで、前記気泡発生領域を有する流路を前記吐出口を除いて閉じた空間とする工程を有することを特徴とする液体吐出方法。 - 液体中に気泡を発生させるための熱エネルギーを発生する発熱体と、前記液体を吐出する部分である吐出口と、該吐出口に連通するとともに、液体に気泡を発生させる気泡発生領域を有する流路と、前記気泡発生領域に設けられ前記気泡の成長に伴って変位する可動部材と、前記可動部材の変位を所望の範囲に規制する規制部と、を備え、前記流路は、前記発熱体を備える基板と、前記基板に対向する対向板と、前記基板と前記対向板との間に位置する両側壁と、で形成され、前記気泡発生時のエネルギーにより前記吐出口から前記液体を吐出する液体吐出ヘッドの液体吐出方法であって、
前記可動部材は前記発熱体の幅以上の幅を有する自由端を備え、
前記発熱体が形成する気泡発生領域に前記可動部材の該自由端が対向し、該可動部材が前記基板と対向しており、前記可動部材の側端が前記側壁に対して対向しながら変位するものであり、
前記規制部は、変位した前記可動部材の自由端側に対して接触する先端規制部と、前記気泡発生領域の側方であり、前記可動部材に関して前記基板とは反対側に位置するとともに、変位した前記可動部材の側端の両側に対して少なくとも一部が接触し、かつ、前記流路を開放している側方規制部を備え、
気泡の成長を伴って変位する前記可動部材の周囲の液体の流れを許容した後、前記可動部材が前記側方規制部に近づくにつれて、前記可動部材と前記側壁間の間隙よりも前記可動部材と前記側方規制部との距離が小さくなる工程を有し、この工程により気泡の可動部材側方への進出を抑制することを特徴とする液体吐出方法。 - 前記可動部材が前記側方規制部と接触することにより気泡発生領域の上流側が遮断された後、前記可動部材の側方より液体が回り込んで気泡発生領域に流入する工程と、該工程後に可動部材表面を伝わる液体の流入が前記可動部材側方からの液体の流入と併合される工程とを有する請求項16に記載の液体吐出方法。
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