JP3706732B2 - 車両のエンジン停止制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、アイドル運転時に所定の条件が成立するとエンジンを停止させて燃料消費量を節減する車両のエンジン停止制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
エンジンを走行用駆動源とする従来の車両は、一旦始動したエンジンはドライバーがイグニッションスイッチをOFFしない限り停止しないので、例えば信号待ちの間エンジンが無駄なアイドル運転を続行して燃料を無駄に消費する問題があった。これを回避するには、車両が停止する度にドライバーがイグニッションスイッチをOFFしてエンジンを停止させれば良いが、このようにするとドライバーはエンジンの始動および停止を繰り返し行わなければならないために、その操作が極めて面倒である。
【0003】
そこで、マニュアルトランスミッションを搭載した市販車両において、車両が停止してから1〜2秒後に自動的にエンジンを停止させ、この状態からクラッチペダルの踏み込みが検出されると自動的にエンジンを再始動することにより、燃料消費量の節減を図るものが知られている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら上記従来のものは、車両が停止した1〜2秒後からクラッチペダルが踏み込まれるまでの間だけしかエンジンが停止しないので、燃料消費量を更に節減するためには、車両の操作性を損なわない範囲でエンジンの停止時間を可能な限り延長することが望まれる。
【0005】
本発明は前述の事情に鑑みてなされたもので、オートマチックトランスミッションを備えた車両において、車両の操作性を損なわない範囲でエンジンの停止時間を可能な限り延長して燃料消費量の節減を図ることを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1に記載された発明は、火花点火式のエンジンと、エンジンの駆動力を駆動輪に伝達するオートマチックトランスミッションと、オートマチックトランスミッションのシフトポジションを検出するシフトポジション検出手段と、車両運転中のドライバーによる制動操作を検出する制動操作検出手段と、エンジンへの燃料供給を制御する燃料供給制御手段と、車両の減速状態を検出する減速状態検出手段と、減速状態検出手段により車両の減速状態を検出したときに燃料供給制御手段によるエンジンへの燃料供給を遮断する手段を含むエンジン出力制御手段とを備えてなり、前記エンジン出力制御手段は、車両減速時の燃料供給制御手段による燃料供給の遮断後において、シフトポジション検出手段により検出したシフトポジションが走行ポジションにあり且つ制動操作検出手段により制動操作が検出されていない場合には前記燃料供給を再開してエンジンの運転を維持する一方、シフトポジション検出手段により検出したシフトポジションが非走行ポジションにある場合と、シフトポジション検出手段により検出したシフトポジションが走行ポジションにあり且つ制動操作検出手段により制動操作が検出されている場合には何れもエンジンを停止させることを特徴とする。
【0007】
上記構成によれば、車両減速時の燃料供給制御手段によるエンジンへの燃料供給の遮断後において、シフトポジションが走行ポジションにあり且つ制動操作が検出されていない場合には、前記燃料供給を再開してエンジンの駆動が維持されるので、望ましくないエンジン停止を回避して必要なアイドル運転を実行することができ、一方、シフトポジションが非走行ポジションにある場合と、シフトポジションが走行ポジションにあっても制動操作が検出されている場合には何れもエンジンが停止されるので、不要なアイドル運転を行うことなく最大限にエンジンを停止させて燃料消費量を節減することができる。
【0008】
ここで非走行ポジションは実施例のニュートラルポジションおよびパーキングポジションに対応し、走行ポジションは実施例の前進走行ポジションおよび後進走行ポジションに対応する。
【0009】
また請求項2に記載された発明は、請求項1の構成に加えて、エンジンの停止状態を判定するエンジン停止状態判定手段と、エンジンを始動するエンジン始動手段とを備えてなり、エンジン停止状態判定手段によりエンジンの停止状態が判定されたときに、エンジン出力制御手段の指令によりエンジン始動手段がエンジンを始動することを特徴とする。
【0010】
上記構成によれば、エンジンが停止状態にあるときに、エンジン始動の条件が整うとエンジン始動手段が作動して自動的にエンジンが始動するので、その都度ドライバーがエンジン始動操作を行う必要がなくなって操作性が向上する。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を、添付図面に示した本発明の実施例に基づいて説明する。
【0012】
図1〜図10は本発明の一実施例を示すもので、図1はオートマチックトランスミッションを備えたハイブリッド車両の全体構成図、図2はクルーズ/アイドルモードの説明図、図3は加速モードの説明図、図4は減速モードの説明図、図5はモータのアシスト力によるエンジンの負荷軽減を説明するグラフ、図6はクレーム対応図、図7はメインルーチンのフローチャートの第1分図、図8はメインルーチンのフローチャートの第2分図、図9はメインルーチンのステップS17のサブルーチンのフローチャート、図10はアイドルエンジン停止制御の一例を示すタイムチャートである。
【0013】
図1に示すように、ハイブリッド車両はエンジンEおよびモータMを備えており、エンジンEの駆動力および/またはモータMの駆動力はオートマチックトランスミッションTaを介して駆動輪たる前輪Wf,Wfに伝達される。またハイブリッド車両の減速時に前輪Wf,Wf側からモータM側に駆動力が伝達されると、モータMは発電機として機能して所謂回生制動力を発生し、車体の運動エネルギーを電気エネルギーとして回収する。
【0014】
モータMの駆動および回生の制御は、マイクロコンピュータよりなる電子制御ユニット1に接続されたパワードライブユニット2により行われる。パワードライブユニット2には電気二重層コンデンサよりなる蓄電手段としてのキャパシタ3が接続される。キャパシタ3は、最大電圧が2.5ボルトのセルを12個直列に接続したモジュールを、更に6個直列に接続したもので、その最大電圧は180ボルトである。ハイブリッド車両には各種補機類を駆動するための12ボルトの補助バッテリ4が搭載されており、この補助バッテリ4はキャパシタ3にダウンバータ5を介して接続される。電子制御ユニット1により制御されるダウンバータ5は、キャパシタ3の電圧を12ボルトに降圧して補助バッテリ4を充電する。
【0015】
キャパシタ3の最大電圧は180ボルトであるが、過充電による劣化防止のために実際に使用される最大電圧は170ボルトに抑えられ、またダウンバータ5の作動確保のために実際に使用される最小電圧は80ボルトに抑えられる。
【0016】
電子制御ユニット1は、前記パワードライブユニット2および前記ダウンバータ5に加えて、エンジンEへの燃料供給を制御する燃料供給制御手段6の作動と、キャパシタ3に蓄電された電力により駆動されるスタータモータ7の作動とを制御する。そのために、電子制御ユニット1には、従動輪たる後輪Wr,Wrの回転数に基づいて車速Vを検出する車速センサS1 からの信号と、エンジン回転数Neを検出するエンジン回転数センサS2 からの信号と、オートマチックトランスミッションTaのシフトポジション(ニュートラルポジション、パーキングポジション、前進走行ポジションおよび後進走行ポジション)を検出するシフトポジションセンサS3 からの信号と、ブレーキペダル8の操作を検出するブレーキスイッチS4 からの信号と、キャパシタ3の残容量を検出するキャパシタ残容量センサS7 からの信号と、補助バッテリ4から持ち出される消費電力を検出する12ボルト系消費電力センサS8 からの信号とが入力される。
【0017】
電子制御ユニット1は減速状態検出手段M1およびエンジン出力制御手段M2(図6参照)を備えており、減速状態検出手段M1は車速センサS1 で検出した車速Vの変化、スロットル開度センサで検出したスロットルバルブの閉動作、吸気負圧等に基づいて車両が減速燃料カット状態にあることを検出し、またエンジン出力制御手段M2は燃料供給制御手段6によりエンジンEへの燃料供給を遮断してエンジンEを停止させる。
【0018】
次に、各走行モードにおけるエンジンEおよびモータMの制御の概略を説明する。
▲1▼クルーズ/アイドルモード
図2に示すように、車両のクルーズ走行時あるいはエンジンEのアイドル運転時には、モータMはエンジンEにより駆動される発電機として機能する。12ボルトの補助バッテリ4から持ち出される消費電力をダウンバータ5の上流の電力から推定し、前記12ボルト系消費電力を補充し得る電力をモータMで発電して補助バッテリ4側に供給する。
▲2▼加速モード
図3に示すように、車両の加速走行時には、キャパシタ3から持ち出される電力でモータMを駆動してエンジンEの出力をアシストするとともに、補助バッテリ4から持ち出される12ボルト系消費電力を補充する。モータMが発生するアシスト量は、キャパシタ3の残容量、シフトポジション、エンジン回転数、スロットル開度、吸気負圧等に基づいてマップ検索により決定される。
▲3▼減速モード
図4に示すように、車両の減速走行時には、駆動輪である前輪Wf,WfからモータMに逆伝達される駆動力で回生制動を行うとともに、モータMが発電した回生電力でキャパシタ3を充電し、かつ補助バッテリ4から持ち出される12ボルト系消費電力を補充する。モータMが発生する回生制動量はシフトポジション、エンジン回転数および吸気負圧に基づいてマップ検索により決定される。
【0019】
図5(A)は車両が10・15モードで走行する際の車速V(細線参照)およびモータMの駆動/回生量(太線参照)を示すものである。車両の加速走行時にはモータMが駆動力を発生してエンジンEの負荷を軽減することにより燃料消費量を節減することができ、また車両の減速走行時にはモータMが回生制動力を発生し、本来は機械的制動により失われる運動エネルギーを電気エネルギーとして効果的に回収することができる。
【0020】
図5(B)はエンジンEの負荷に対応する吸気負圧を示すもので、太線はモータMによるアシストを行った場合のものであり、細線はモータMによるアシストを行わない場合のものである。全般的に太線は細線よりも下方に位置しており、モータMのアシスト力がエンジンEの負荷軽減に寄与していることが分かる。
【0021】
ところで、一般の車両は減速時に燃料カットを行い、エンジン回転数がアイドル回転数まで低下すると、エンジンEが停止しないように燃料カットを中止してアイドル運転を維持し得る量の燃料の供給を再開するようになっている。しかしながら本実施例では、所定の運転条件が成立したときに燃料カットに続く燃料供給の復帰を行わずにエンジンEを停止させ、前記所定の運転条件が成立しなくなったときに燃料供給の復帰を行ってエンジンEを再始動することにより、アイドル運転時にエンジンEを極力停止させて更なる燃料消費量の節減を図るようになっている。
【0022】
次に、クレーム対応図である図6に基づいて、本実施例のアイドルエンジン停止制御装置の構成を説明する。
【0023】
燃料供給制御手段6は、オートマチックトランスミッションTaを介して前輪Wf,Wfを駆動するエンジンEに対する燃料供給を、電子制御ユニット1からの指令に基づいて制御する。電子制御ユニット1はシフトポジションセンサS3 から入力されるシフトポジションと、ブレーキスイッチS4 から入力される制動状態とに基づいて、エンジンEのアイドル運転を許可するか、あるいはアイドル運転を禁止してエンジンEを停止させるかを判断する。アイドル運転を許可する場合には、電子制御ユニット1の指令により燃料供給制御手段6が燃料カットからの燃料供給を再開してアイドル運転を可能にし、またアイドル運転を禁止する場合には、燃料供給制御手段6が燃料カットからの燃料供給の再開を禁止してエンジンEを停止させる。
【0024】
前記燃料供給再開エンジン回転数がアイドル回転数以上に設定されているときに、エンジン回転数センサS2 の出力に基づいてエンジンEが停止状態にあることが検出されると、スタータモータ7が駆動されてエンジンEが自動的に始動する。
【0025】
次に、図7および図8のフローチャートに基づいて、図1に示す車両のアイドルエンジン停止制御の具体的内容を説明する。
【0026】
先ず、ステップS1でスタータスイッチがOFFしているとき、即ちドライバーによるエンジン始動操作が行われていないとき、ステップS2でスタータスイッチOFF→ON判定フラグF FCMGSTの状態を判別する。イグニッションスイッチをONしたときのスタータスイッチOFF→ON判定フラグF FCMGSTの初期値は「0」であり、その後にステップS1でドライバーによるエンジン始動操作が行われてスタータスイッチがONしたときに、ステップS15でスタータスイッチOFF→ON判定フラグF FCMGSTは「1」にセットされ、イグニッションスイッチをOFFするまで「1」にセットした状態に維持される。
【0027】
従って、ドライバーがイグニッションスイッチをONしてからスタータスイッチをONするまでの間、ステップS2の答えは「0」になってステップS13に移行するため、後述するステップS12でのエンジン始動は実行されることはない。つまり、この車両は後述するようにアイドル運転時のエンジン停止と、それに続くエンジン始動とがドライバーによるスタータスイッチの操作に関わらず行われるが、最初にドライバーがスタータスイッチをONして車両を走行させる意思を示さない限り、エンジンEが自動的に始動されることはなく、これにより無駄なエンジン始動を回避して燃料消費量を節減することができる。
【0028】
而して、ステップS1でドライバーがスタータスイッチをONすると、ステップS15でスタータスイッチOFF→ON判定フラグF FCMGSTが「1」にセットされ、ステップS16で後述する後進走行ポジション判定ディレータイマーtmSFTRがセットされた後に、ステップS11に移行する。ステップS11では、エンジン回転数センサS2 で検出したエンジン回転数Neがエンジンストール判定回転数NCRと比較され、Ne<NCRであってエンジンEが停止状態にあれば、ステップS12でスタータモータ7が自動的に作動してエンジンEを始動する。その結果、エンジンEが始動してNe≧NCRになると、前記ステップS12におけるエンジン始動をパスしてステップS13に移行する。
【0029】
続いて、ステップS13でアイドルエンジン停止制御実行フラグF FCMGを「0」にセットする。アイドルエンジン停止制御実行フラグF FCMGは、アイドル運転時にエンジンEを停止させるか否かを識別するためのもので、それが「0」にセットされた状態では、燃料カットに続く燃料供給の再開が実行され、エンジン出力制御手段M2の指令によりアイドル運転を維持可能な量の燃料が供給されてエンジンEがアイドル運転状態に維持されるが、それが「1」にセットされた状態では、エンジン出力制御手段M2の指令により燃料カットに続く燃料供給の再開が禁止されて(あるいはアイドル運転が維持不能な量の燃料だけが供給されて)アイドル運転を行わずにエンジンEが停止させられる。尚、アイドルエンジン停止制御実行フラグF FCMGは、後から詳述する所定の条件が成立したときに、ステップS18で「1」にセットされる。続くステップS14で、後述する車速判定フラグF FCMGVが「0」にセットされる。
【0030】
さて、ステップS1でドライバーがスタータスイッチをONしてエンジンEを始動した後にスタータスイッチをOFFすると、ステップS2では既にスタータスイッチOFF→ON判定フラグF FCMGSTが「1」にセットされているために、ステップS3に移行する。ステップS3で、シフトポジションセンサS3 により検出したシフトポジションが後進走行ポジションでなければ、ステップS4で前記後進走行ポジション判定ディレータイマーtmSFTRをセットし、またステップS3でシフトポジションが後進走行ポジションであれば、ステップS5で所定時間(例えば、0.5秒)が経過して後進走行ポジション判定ディレータイマーtmSFTRがタイムアップしているか否かを判定する。その結果、ステップS5で後進走行ポジション判定ディレータイマーtmSFTRがタイムアップしていなければステップS1に復帰し、タイムアップしていればステップS11に移行する。
【0031】
その意味するところは以下の通りである。本実施例の車両は、ブレーキペダル8が踏まれてアイドルエンジン停止制御が実行されているときに、ブレーキペダル8から足を離すと前記アイドルエンジン停止制御が中止されてエンジンEが自動的に再始動されるが、オートマチックトランスミッションTaを搭載した本車両が、車庫入れ等を行うべくブレーキペダル8のON/OFF操作を繰り返してクリープ走行しながら後進する場合、仮にブレーキペダル8をON/OFFする度にエンジンEが停止および再始動を繰り返すとすると、スムーズな後進クリープ走行が難しくなる問題がある。また車庫入れ等を行う際に前進走行から後進走行に切り換えるべくブレーキペダル8を踏むとアイドルエンジン停止制御によりエンジンEが停止するが、仮に後進走行ポジションにシフトチェンジしてもブレーキペダル8から足を離さない限りエンジンEが再始動されないとすると、微妙な後進クリープ走行がスムーズに行われなくなる問題がある。
【0032】
しかしながら、本実施例ではステップS3でシフトポジションが後進走行ポジションにあるときにステップS11,S12に移行し、そのときエンジンEが停止していれば速やかに再始動を行い、かつステップS13でアイドルエンジン停止制御実行フラグF FCMGを「0」にセットしてアイドルエンジン停止制御を中止するので、エンジンEをアイドル運転状態に維持して上記各問題を解決することができる。しかもシフトポジションが後進走行ポジションにある時間が、後進走行ポジション判定ディレータイマーtmSFTRにより計時される0.5秒以上にならないと上記制御が実行されないので、セレクトレバーを操作する過程で瞬間的に後進走行ポジションが確立された場合に不必要な制御が行われるのを回避することができる。
【0033】
続いて、ステップS6で前記車速判定フラグF FCMGVの状態を判別する。車速判定フラグF FCMGVは、車両が発進した直後には「0」にセットされており、次のステップS7において、車速センサS1 で検出した車速Vが所定車速(例えば、15km/h)以上になると、ステップS8で車速判定フラグF FCMGVが「1」にセットされる。従って、ステップS7で車速Vが15km/h以上にならない限り、必ずステップS13に移行してアイドルエンジン停止制御実行フラグF FCMGが「0」にセットされ、アイドルエンジン停止制御が中止されるので、アイドルエンジン停止制御が実行されることはない。
【0034】
その意味するところは以下の通りである。車庫入れ時や渋滞時に車両がブレーキペダル8をON/OFFさせながら極低速でクリープ走行するような場合にアイドルエンジン停止制御の実行を許容すると、ブレーキペダル8のON/OFFに伴ってエンジンEの停止および再始動が繰り返し行われてしまい、その結果スムーズな走行ができなくなる可能性がある。しかしながら、車速Vが15km/h未満のときにアイドルエンジン停止制御の実行を禁止することにより、上記問題を解決することができる。
【0035】
続くステップS19で、減速状態検出手段M1により車両が減速状態にあることが検出されるとステップS9に移行し、ステップS9でシフトポジションがニュートラルポジションまたはパーキングポジションにある場合、あるいは前記ステップS9でシフトポジションが前進走行ポジションにあっても、ステップS10でブレーキペダル8が踏まれてブレーキスイッチS4 がONしている場合には、ステップS17に移行してキャパシタ残容量判定フラグF FCMGCAPの状態を判定する。
【0036】
キャパシタ残容量判定フラグF FCMGCAPは、キャパシタ3に蓄電された電力の残容量が停止したエンジンEを再始動するのに充分であるか否かを識別するもので、ステップS17でキャパシタ残容量判定フラグF FCMGCAPが「1」にセットされていれば、キャパシタ3の残容量がエンジンEを再始動するのに充分であると判定し、ステップS18に移行してアイドルエンジン停止制御実行フラグF FCMGが「1」にセットされる。その結果、エンジン出力制御手段M2からの指令に基づいて燃料供給制御手段6が燃料カットに続く燃料供給の再開を禁止することにより、エンジン回転数Neがアイドル回転数まで低下したときにエンジンEが停止させられる。一方、ステップS17でキャパシタ残容量判定フラグF FCMGCAPが「0」にセットされていれば、キャパシタ3の残容量がエンジンEを再始動するのに充分な余裕がないと判定し、ステップS13においてアイドルエンジン停止制御実行フラグF FCMGが「0」にセットされる。その結果、燃料供給制御手段6が燃料カットに続く燃料供給を通常通り再開することにより、エンジン回転数Neがアイドル回転数まで低下したときにアイドル運転が許容される。
【0037】
以上のように、シフトポジションがニュートラルポジションまたはパーキングポジションにあるとき、あるいはシフトポジションが前進走行ポジションにあってもブレーキペダル8が踏まれている制動中に、エンジンEをアイドル運転させずに停止させるので、エンジンEの不要なアイドル運転を最小限に抑えて燃料消費量を最大限に節減することができる。但し、前述したように、シフトポジションが後進走行ポジションにある場合と、車速Vが15km/h未満の場合と、キャパシタ3の残容量がエンジンEを再始動するのに充分な余裕がない場合とには、アイドルエンジン停止制御の実行が禁止される。
【0038】
図10はアイドルエンジン停止制御の一例を示すタイムチャートである。
【0039】
車両のクルーズ走行中の時刻t1 にドライバーがブレーキペダル8を踏んでブレーキスイッチS4 がONすると、アイドルエンジン停止制御実行フラグF FCMGが「1」にセットされると同時に、燃料供給制御手段6による燃料カットが実行され、車速Vが次第に減少する。時刻t2 おいてエンジン回転数Neがアイドル回転数まで低下しても、アイドルエンジン停止制御実行フラグF FCMGが「1」にセットされているために燃料供給制御手段6は燃料供給を再開せず、その結果エンジンEはアイドル運転を行うことなく停止する。時刻t3 にドライバーがブレーキペダル8から足を離してブレーキスイッチS4 がOFFすると、アイドルエンジン停止制御実行フラグF FCMGが「0」にセットされると同時に、燃料供給制御手段6による燃料カットが終了して燃料供給が再開され、エンジンEが始動して車両は再び走行可能になる。
【0040】
次に、図9のフローチャートを参照しながら、キャパシタ残容量判定フラグF FCMGCAPのセット(図7のフローチャートのステップS17参照)について説明する。
【0041】
先ずステップS61で、エンジン回転数センサS2 で検出したエンジン回転数Neをエンジンストール判定回転数NCRと比較し、Ne≧NCRであってエンジンEが運転状態にあれば、ステップS62で、キャパシタ残容量センサS7 で検出したキャパシタ3の残容量QCAPからエンジンEの始動に必要なキャパシタ3の容量QCAPIDLを減算することにより、キャパシタ3の残容量の余裕分QCAPABLを算出する。そしてステップS63で12ボルト系消費電力積算値DVPSUMをゼロにセットする。
【0042】
一方、前記テップS61でエンジンEが停止状態にあれば、ステップS64で、12ボルト系消費電力センサS8 で検出した12ボルト系電力消費量瞬時値DVP(つまり補助バッテリ4から持ち出される電力の瞬時値)を、12ボルト系消費電力積算値DVPSUMの前回値DVPSUM(n−1)に加算することにより、12ボルト系消費電力積算値DVPSUMの今回値DVPSUM(n)を算出する。そしてステップS65で、前記ステップS64で算出した12ボルト系消費電力積算値DVPSUM(n)に単位変換係数KDVPを乗算することにより、12ボルト系消費電力積算値換算結果QDVPを算出する。
【0043】
続くステップS66で、前記ステップS62で算出したキャパシタ3の残容量の余裕分QCAPABLと、前記ステップS65で算出した12ボルト系消費電力積算値換算結果QDVPとを比較する。エンジンEが停止するとキャパシタ3に対する充電は行われなくなり、かつ12ボルト系の消費電力(つまり12ボルト系消費電力積算値換算結果QDVP)はキャパシタ3から持ち出されるため、キャパシタ3の残容量QCAPは次第に減少する。
【0044】
而して、ステップS66で12ボルト系消費電力積算値換算結果QDVPがキャパシタ3の残容量の余裕分QCAPABL未満であれば、即ち、キャパシタ3の残容量QCAPがエンジンEの始動に必要なキャパシタ3の容量QCAPIDLを越えていれば、キャパシタ3の電力でエンジンEが始動可能であると判断し、ステップS67でキャパシタ残容量判定フラグF FCMGCAPを「1」にセットしてアイドルエンジン停止制御の実行を許可する。一方、ステップS66で12ボルト系消費電力積算値換算結果QDVPがキャパシタ3の残容量の余裕分QCAPABL以上であれば、即ち、キャパシタ3の残容量QCAPがエンジンEの始動に必要なキャパシタ3の容量QCAPIDL以下になれば、キャパシタ3の電力でエンジンEが始動不能になる可能性があると判断し、ステップS68でキャパシタ残容量判定フラグF FCMGCAPを「0」にセットしてアイドルエンジン停止制御の実行を禁止する。
【0045】
このように、スタータモータ7を駆動するキャパシタ3の残容量QCAPを監視しながらアイドルエンジン停止制御の実行の許可および禁止を判定するので、キャパシタ3の残容量QCAPが不足してエンジンEが始動不能になるのを確実に回避しつつ、アイドルエンジン停止制御を最大限に実行させて燃料消費量を節減することができる。
【0046】
以上、本発明の実施例を詳述したが、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更を行うことが可能である。
【0047】
例えば、実施例ではエンジンEおよびモータMを走行用駆動源とするバイブリッド車両を例示したが、本発明はエンジンEだけを走行用駆動源とする車両に対しても適用することができる。
【0048】
また実施例では燃料カットに続く燃料供給の復帰を行わずにエンジンEを停止させているが、目標エンジン回転数をアイドル回転数よりも低い回転数に設定してエンジンEを停止させることもでき、これら燃料供給量の制御に加えて点火制御を併用することもできる。
【0049】
またエンジンEを始動するための特別のスタータモータ7を設けることなく、走行用のモータMをスタータモータとして利用することが可能である。更に、本発明のエンジン始動手段はスタータモータ7やモータMに限定されず、走行中の車両の運動エネルギーを用いてエンジンEを始動する、所謂「押し掛け」のような場合を含むものとする。例えば、図7のフローチャートのステップS7で車速Vが15km/h未満のときに、図8のフローチャートのステップS12でエンジンEを始動する場合がこれに相当する。
【0050】
またキャパシタ3に代えて充電可能なバッテリを用いることも可能である。
【0051】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、車両減速時の燃料供給制御手段によるエンジンへの燃料供給の遮断後において、シフトポジションが走行ポジションにあり且つ制動操作が検出されていない場合には、前記燃料供給を再開してエンジンの駆動が維持されるので、望ましくないエンジン停止を回避して必要なアイドル運転を実行することができ、一方、シフトポジションが非走行ポジションにある場合と、シフトポジションが走行ポジションにあっても制動操作が検出されている場合には何れもエンジンをアイドル運転させずに停止させるので、エンジンの不要なアイドル運転を最小限に抑えて(即ち最大限にエンジンを停止させて)燃料消費量を最大限に節減することができる。
【0052】
また請求項2に記載された発明によれば、エンジンが停止状態にあるときに、エンジン始動の条件が整うとエンジン始動手段が作動して自動的にエンジンが始動するので、その都度ドライバーがエンジン始動操作を行う必要がなくなって操作性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】オートマチックトランスミッションを備えたハイブリッド車両の全体構成図
【図2】クルーズ/アイドルモードの説明図
【図3】加速モードの説明図
【図4】減速モードの説明図
【図5】モータのアシスト力によるエンジンの負荷軽減を説明するグラフ
【図6】クレーム対応図
【図7】メインルーチンのフローチャートの第1分図
【図8】メインルーチンのフローチャートの第2分図
【図9】メインルーチンのステップS17のサブルーチンのフローチャート
【図10】アイドルエンジン停止制御の一例を示すタイムチャート
【符号の説明】
E エンジン
S2 エンジン回転数センサ(エンジン停止状態判定手段)
S3 シフトポジションセンサ(シフトポジション検出手段)
S4 ブレーキスイッチ(制動操作検出手段)
Ta オートマチックトランスミッション
Wf 前輪(駆動輪)
M1 減速状態検出手段
M2 エンジン出力制御手段
6 燃料供給制御手段
7 スタータモータ(エンジン始動手段)
Claims (2)
- 火花点火式のエンジン(E)と、
エンジン(E)の駆動力を駆動輪(Wf)に伝達するオートマチックトランスミッション(Ta)と、
オートマチックトランスミッション(Ta)のシフトポジションを検出するシフトポジション検出手段(S3 )と、
車両運転中のドライバーによる制動操作を検出する制動操作検出手段(S4 )と、
エンジン(E)への燃料供給を制御する燃料供給制御手段(6)と、
車両の減速状態を検出する減速状態検出手段(M1)と、
減速状態検出手段(M1)により車両の減速状態を検出したときに燃料供給制御手段(6)によるエンジン(E)への燃料供給を遮断する手段を含むエンジン出力制御手段(M2)とを備えてなり、
前記エンジン出力制御手段(M2)は、車両減速時の燃料供給制御手段(6)による燃料供給の遮断後において、シフトポジション検出手段(S3 )により検出したシフトポジションが走行ポジションにあり且つ制動操作検出手段(S4 )により制動操作が検出されていない場合には前記燃料供給を再開してエンジン(E)の運転を維持する一方、シフトポジション検出手段(S3 )により検出したシフトポジションが非走行ポジションにある場合と、シフトポジション検出手段(S3 )により検出したシフトポジションが走行ポジションにあり且つ制動操作検出手段(S4 )により制動操作が検出されている場合には何れもエンジン(E)を停止させることを特徴とする、車両のエンジン停止制御装置。 - エンジン(E)の停止状態を判定するエンジン停止状態判定手段(S2 )と、エンジン(E)を始動するエンジン始動手段(7)とを備えてなり、エンジン停止状態判定手段(S2 )によりエンジンの停止状態が判定されたときに、エンジン出力制御手段(M2)の指令によりエンジン始動手段(7)がエンジン(E)を始動することを特徴とする、請求項1に記載の車両のエンジン停止制御装置。
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