JP3706319B2 - 鉄骨ラーメン構造物 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐震性能を向上することができる建築物の鉄骨ラ−メン構造物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より知られている鉄骨ラーメン構造物を図面を参照して説明すると、図13は従来型鉄骨ラーメン構造物の側面図、図14は図13中の連結部の拡大図、図15は他の在来形鉄骨ラーメン構造物の側面図、立面図および底面図、図16はさらに他の在来形鉄骨ラーメン構造物の側面図、立面図および底面図である。なお、以下の説明中、上下は構造物の上下に対応して使用している。
【0003】
各図において、1は柱材、2は梁材で、特に図13に示す梁材2は梁中央材2a、梁端部材2bとによって構成されている。4は床板、6は梁材2の下端フランジ、7は梁材2の上端フランジ、8はウエブ、9は斜め補剛材、20はDogbone形状下端フランジ、21は梁材2のウエブ8に形成した逆T字形スロット、31は連結部材である。
【0004】
在来形鉄骨ラーメン構造の内、上記図13、図14に示すものは、
1)鉄骨ラ−メン構造物を構成するフランジ付き梁中央材2aの両端に連結部Rを設ける。
2)連結部Rにおいて、梁中央材2aの両端部と2つの梁端部材2bの端部を、複数の添え板31を介して連結する。
3)2つの梁端部材2bはそれぞれ柱1に固定され、柱1、梁端部材2bおよび梁端部材2bに連結された梁中央材2aにより、建築物の構造フレ−ムを構成する。
4)そして、上記構造フレ−ムにおいて、制震構造として例えば特開平10−18637号公報に示すように、梁端部材3の端部と添え板31との連結部に摩擦もしくは粘弾性ダンパ−を設置している。
5)上記制震構造では、地震時等に梁に曲げ応力が作用し、梁材端部と添え板との摩擦面にすべりを許容することによって、連結部に回転変形が生じながらダンパ−効果を発揮する。
【0005】
しかしながら、上記の制震構造では以下のような問題点がある。
前記制震構造のダンパ−設置位置において、梁中央材2aと梁端部材2bの端部の上下フランジと添え板31を、摩擦ダンパ−を介して連結すると、その梁材同士の連結部Rに生じる回転変形の中心が上下フランジの中間に位置し、各梁材端部2bの上下フランジ7、6と添え板31との摩擦面に同量の大きなすべりが発生する。
【0006】
この結果、梁材端部2bの上フランジ7と添え板31との摩擦面に発生する大きなすべりにより、図14に示すように通常梁材上端に設けられる床板4に亀裂や圧壊による大きな損傷が生じ、地震等の被災後に大規模な補修が必要となる。また、前記制震構造のダンパ−設置位置において、梁材端部2bの左右ウエブを添え板31を介して従来の高力ボルト摩擦接合により連結することは、上下フランジ7、6と添え板31との接触面に設置された摩擦ダンパ−に発生するすべり変形を著しく困難にする。
【0007】
また、図15に示す他の従来型の鉄骨ラーメン構造物では、上記制震構造とは別に、鉄骨ラ−メン構造物を構成するフランジ付き鉄骨梁材の柱材との接合部近傍位置に、図15に示すように下端フランジ6の幅を約20%程度減少させた長さ約200mm程度のDogbone形状の領域(Dogbone形状下端フランジという)20を設ける。その位置に合わせて、梁材のウエブ8に約20mm幅の逆T形スロット21を設け、Dogbone形状下端フランジ20とその上方ウエブとの縁切りを行う。Dogbone形状下端フランジ20には、地震時等に梁材に生じる曲げ応力により、幅の広い上端フランジ7に先行して梁材長手方向に均一の塑性ひずみが発生することにより、鋼材の塑性ひずみを利用したダンパ−効果を梁材に付加することが出来る。
【0008】
この制震構造により、地震時等に、梁材の両端に設置したDogbone形状下端フランジ20では、梁材長手方向の圧縮及び引張の繰り返し塑性ひずみにより入力エネルギ−を消費させ、一方、梁材上端フランジ7の曲げ降状を許容しないことで、通常梁上端に設置させる床板に発生する亀裂を抑制し、補修の軽減を図ることが出来る。さらに、梁材のウエブ8に、図15に示すように逆T字形スロット21の左右に梁材に作用するせん断力を伝達するための斜め補剛材9を設ける構造となっている。
【0009】
しかしながら、上記制震構造では以下のような問題点がある。
地震時等に、鉄骨ラ−メン構造物を構成するフランジ付き鉄骨梁材の両端に設置したDogbone形状下端フランジ20には、大きな圧縮及び引張の繰り返し塑性ひずみの発生を許容するため、Dogbone形状下端フランジ20に亀裂や局部座屈等が発生し、梁材での曲げ応力の負担が出来なくなる。
また、地震時等に、前記Dogbone形状下端フランジ20には、大きな圧縮・引張の繰り返し塑性ひずみの発生を許容するため、鋼材のひずみ硬化に伴い、Dogbone形状下端フランジ20が負担する曲げ応力が上昇し、それに伴い上端フランジの曲げ降状を防止できなくなり、その結果、床板に大きな亀裂が発生する。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明では、
地震時等に対象技術の梁材端部のダンパ−配置位置に発生する回転変形の中心を、梁上下フランジの中間位置より床板側(梁断面上方)へ移動させ、連結部上端の変形に比較し下端に生じる変形を大きくすることにより、前記図13、図14に示す構造物が有する問題点を解決する。
また、梁材の両端に設置したDogbone形状下端フランジの代替として、地震時等に大きな変形を受けても安定した摩擦力を保持し習動することが出来る摩擦ダンパ−を下端フランジに適用することにより、前記図15に示す構造物が有する問題点を解決する。
【0011】
【課題を解決するための手段】
このため本発明が採用した解決手段は、
フランジ付き鉄骨梁材で構成する鉄骨ラ−メン構造物において、梁材と柱材との接合部近傍位置の梁材の下端フランジおよびそれに続くウエブにスロットを設け、前記スロットの左右に位置する梁材を添え板を介して高張力ボルトによって締めつけ連結し、前記スロットを挟んだいずれか一方の連結箇所が梁材長手方向へのすべり変形を発生させることが出来る摩擦ダンパ−として構成されていることを特徴とする鉄骨ラ−メン構造物である。
また、前記スロットは梁材高さに対して4/5程度の位置までを切り離す形状として構成したことを特徴とする鉄骨ラ−メン構造物である。
また、前記スロットには、前記下端フランジ連結部に梁材のせん断力が直接作用しないように、梁材のウエブに斜めの補剛材を配置したことを特徴とする鉄骨ラーメン構造物である。
また、鉄骨ラ−メン構造物を構成するフランジ付き鉄骨梁材を梁中央材と梁端部材とで構成し、梁中央材の両端と梁端部材とを複数の添え板を介して連結した鉄骨ラ−メン構造において、前記連結部における左右の上端フランジを、添え板を介しそれぞれ高張力ボルトによってすべりが生じないよう摩擦接合し、左右の下端フランジは前記連結部を挟んだ少なくともいずれか一方の連結箇所が梁材長手方向へのすべり変形を発生させることが出来る摩擦ダンパ−として構成されていることを特徴とする鉄骨ラ−メン構造物である。
また、前記上端フランジの連結に使用する添え板には、前記下端フランジ連結部に梁材のせん断力が直接作用しないように切り離された梁材のウエブと同程度の断面積を有した形鋼を利用することを特徴とする鉄骨ラ−メン構造物である。
【0012】
【実施の形態】
以下、本発明に係る実施形態としての鉄骨ラーメン構造物の説明をすると、図1は第1実施形態に係る構造物の側面図、図2は図1の要部拡大図である。
各図において、1は柱材、2は梁材、4は床板、5はスロット、6は下端フランジ、7は上端フランジ、8はウエブ、9は斜め補剛材、10は添え板、11は摩擦摺動材、12は鋼製フィラー、13は高張力ボルト、14は摺動用長孔であり、添え板10、摩擦摺動材11、高張力ボルト13、下端フランジ6に形成した摺動用長孔14によって摩擦ダンパーを構成している。
【0013】
本形態では、
1)鉄骨ラ−メン構造物のフランジ付き鉄骨梁材において、梁材2と柱材1との接合部近傍の梁材2のウエブ8および下端フランジ6に下方からスロット5を設ける。
2)スロット5の長さは、梁材断面の下端フランジ6からウエブ8にわたって鉛直上方に梁材断面高さの約4/5程度とする。スロット5の幅は、スロット5により切り離された左右の下端フランジ6およびウエブ8が、地震時等に起こる回転変形によって、接触しないようにするために十分な大きさとする。
【0014】
3)スロット5により切り離された左右の下端フランジ6は、その上下面に設置する添え板10を介して連結する。左右の下端フランジ6のいずれか一方と添え板10の連結は、高張力ボルト13の締めつけにより生じる下端フランジ6と添え板10との接触面の摩擦力を利用する。
4)左右の下端フランジ6と添え板10との他側の連結箇所には、一定の摩擦力を保持しつつ梁長手方向へのすべり変形が容易に可能となる、すなわち摩擦力とすべりの関係が完全剛塑性型の特性を有する摩擦ダンパ−(添え板10、摩擦摺動材11、高張力ボルト13、下端フランジ6に形成した摺動用長孔14によって構成される)を設置する。
【0015】
5)梁材2に形成したスロット5では、地震時等にスロット5の下方に設置された摩擦ダンパ−10、11、13、14にすべり変形が生じると、その梁長手方向への変形に対する剛性は、スロット5上方の連続した梁材2の剛性に比較して極めて小さくなる。その結果、地震時等に梁材のスロット5に生じる回転変形の中心はスロット5の上方へ大きく移動し、梁材2の上端に発生する長手方向の変形を抑制できる。
6)スロット5の下方に設置された摩擦ダンパ−には、地震時等に、梁長手方向に大きなすべり変形が発生するが、これは前記図15に示す従来技術に観られる下端フランジ6の鋼材の塑性ひずみに依存する変形ではなく、下端フランジ6と添え板10との間の摩擦滑りによるため、鋼材の疲労劣化及び累積塑性ひずみに伴う亀裂の発生や局部屈等の発生を防止できる。
【0016】
7)摩擦ダンパ−を設置する連結箇所では、下端フランジ6の上下面と添え板10との間の接触面にすべり変形を生じさせ、さらに安定した摩擦力を得ることを目的として、下端フランジの上下面と添え板との間に、摩擦摺動材11を挟み込んでいる。一方、摩擦ダンパ−を設置しない連結箇所では、下端フランジの上下面と添え板との間に摩擦摺動材と同じ厚みを持つ鋼材(フィラ−)12を挟み込んで、添え板10に曲がりが生じないようにした上で、高張力ボルト13により締めつけた従来型の高力ボルト摩擦接合を用いる。
8)摩擦ダンパ−を設置する連結箇所における下端フランジ6の高張力ボルト13を貫通させるための孔14は、下端フランジ6の上下面と添え板10との間の接触面にすべり変形を生じさせる際に、高張力ボルト13と孔縁との接触を避けるため、梁長手方向に平行の長孔とする。
【0017】
9)梁材2に作用するせん断力が下端フランジ6の連結部に直接伝達することによって、下端フランジ6の連結部にすべり変形が起こりにくくなることを防止するために、スロット5の左右には斜め補剛材9を設ける。斜め補剛材9の使用により、梁材に作用するせん断力の伝達に必要なスロット5の左右に切り離されたウエブ8の連結部材を介しての連結が不要となり、下端フランジ6の連結部にすべり変形が容易に発生するとともに、スロット5に生じる回転変形の中心をスロット5の上方に移動させることが出来る。
【0018】
続いて本発明の第2実施形態を説明する。この実施形態は図13に示す従来構造物の改良型であり、図3は第2実施形態に係る構造物の側面図、図4は図3の要部拡大側面図とその断面図の例である。
【0019】
図3、図4において、
1)鉄骨ラ−メン構造物のフランジ付き鉄骨梁材において、柱材1と梁材2との接合部の近傍の2か所で梁材を切り離し、梁材2を梁端部材2bと梁中央材2aに分離する。
2)梁材2の梁端部材2bと梁中央材2aの連結部において、梁端部材2bと梁中央材2aの端部の上端フランジ7は、その上下面に設置する添え板10、15を介して連結する(図4参照)。この時、上端フランジ7の上に配置する添え板10は図4中の(a)(b)(c)に示すように平板鋼、CT形鋼、みぞ形鋼等を使用することができ、また上端フランジの下面に配置する添え板15は同図(a)(b)(c)に示すように平板鋼、山形鋼等を選択して使用する。左右の上端フランジ7と添え板10、15の連結部は、高張力ボルト13の締めつけを行い、地震時等に上端フランジ7と添え板10、15の連結部にすべり変形が生じないようにするため、在来の高力ボルト摩擦接合により剛接する。
【0020】
3)梁端部材2bと梁中央材2aの連結部において、梁端部材2bと梁中央材2aの下端フランジ6は、添え板10を介して、第1実施形態と同様の摩擦ダンパ−を利用し連結する。
4)梁端部材2bと梁中央材2aの連結部において、梁端部材2bと梁中央材2aの端部ウエブ同士は、両梁材端部2bの下端フランジ6の連結部のすべり変形の発生を容易にするため、添え板10を介して連結しない。
5)梁材2に作用するせん断力が下端フランジ6の連結部に直接伝達することによって、下端フランジ連結部にすべり変形が起こりにくくなることを防止するために、上端フランジ7の連結部に利用する添え板10に、例えば図4(b)(c)に示すように切り離した梁材ウエブと同様の断面積を有する腹材(ウエブ)を持つ形鋼16、17を利用する。また添え板15には図4(a)(b)に示すような山形鋼を利用する。梁材に生じるせん断力は、梁端部材と梁中央材の連結部において、上端フランジ連結部の連結に利用する腹材を持つ添え板により伝達する。
【0021】
上記実施形態において説明したスロット付き下端フランジ連結部を有する鉄骨ラ−メン構造物の耐震性能を調査し、本発明の効果を確認するために、地震時を模擬した載荷実験を行った。実験の概要とその結果について説明する。
実験に用いた鉄骨ラ−メン構造物の試験体Aは前述した第1実施形態に対応する図5、図6に示す構造物であり、図5、図6はスロット付き下端フランジ連結部を設けた構造の試験体A及び下端フランジ連結部の詳細である。図中19はエンドプレートである。また、試験体Bは前述した図15に示す構造物であり、前記従来形構造物で示したDogbone形状下端フランジ20とウエブに逆T字型スロット21を有している。さらに、試験体Cは図16に示す構造物であり、図16は比較のための通常のスロットと下端フランジ連結部のない構造としてある。
【0022】
本実験では、試験体A,B,Cとして、全て片持ち梁形式の試験体を適用している。試験体の梁材寸法は、断面せい=400mm、フランジ幅=200mm、フランジ厚さ=13mm、ウエブ厚さ=8mm、梁材長=1300mmとし、柱材寸法は、断面せい=400mm、フランジ幅=400mm、フランジ厚さ=16mm、ウエブ厚さ=11mm、柱材長=1200mmとした。
【0023】
スロット付き下端フランジ連結部を設けた構造の試験体Aにおいては、梁材端部の柱材との結合面から梁長手方向に300mm離れた位置にスロット5の中心が来るように、下端フランジ6の下面から梁断面せいの約4/5の高さのところまで30mmの幅でスロット5を設けた。スロット5を設けることによって切断された左右の下端フランジ6を繋ぐために、下端フランジ6の上下面に添え板10を配置し、高張力ボルト13によって添え板10と下端フランジ6を緊結した。下端フランジ6の下面に当てた添え板の寸法は、図6に示すように、幅=200mm、長さ=350mm、厚さ=12mmとしてある。下端フランジの上面に当てた2枚の添え板の寸法は、図6に示すように幅=75mm、長さ=350mm、厚さ=12mmとしてある。
【0024】
図6に示すように、下端フランジ6の上下面と添え板10との間には、摩擦ダンパ−を設置する側には、摩擦摺動材11として高強度アルミニウム合金板を挟み込み、一方固定側には鋼製フィラ−12を挟み、下端フランジ6と添え板10との間の寸法調整をしている。摩擦ダンパ−を設置する側の上下添え板10の外側には、図6に示すように、ボルト軸剛性調節用の座金18を付加している。下端フランジ6と添え板10を緊結するための高張力ボルト13が貫通できるように、下端フランジ6、添え板10、摩擦摺動材11、鋼製フィラ−12、座金18には、それぞれ図6に示すように、円孔を設ける。また、摩擦ダンパ−を設置する側の下端フランジ6には、下端フランジ6と添え板10との間ですべり変形が起こる際に貫通しているボルト13が下端フランジ6に当たることを防止するため、図6に示すような長孔14を設ける。
【0025】
試験体Aにおいては、スロットの左右の断面に作用するせん断力に抵抗させるために、図5に示すように、二枚の斜め補剛板9が上下のフランジ7、6とウエブ8に溶接されている。
図15に示す比較例の試験体Bでは、梁端から100mm離れた位置から先端方向へ下端フランジ幅を約20%減少させるため下端フランジをDogbone形状20に切断し、加えてその位置に合わせウエブに幅20mmの逆T字形スロット21を設けている。また、スロット21の左右の断面に作用するせん断力に抵抗させるために、図15に示すように、二枚の斜め補剛板9が上下のフランジ6、7とウエブ8に溶接されている。
図16に示す比較例の試験体Cは、梁材にスロット及び下端フランジ連結部共に設けられていない通常の鉄骨ラ−メン構造物である。
【0026】
前記の試験体A,B,Cに対して、図7に示すような装置を用いて、柱材との付け根から1450mmの位置の材に、地震時に作用するせん断力を模擬した荷重を繰り返し作用させた。繰り返し荷重の履歴は、部材角Rは0.0025ラジアンで正負1サイクル、引き続き部材角R=0.005ラジアンで正負1サイクル、その後さらに部材角R=0.010ラジアンで正負3サイクル、部材角R=0.020ラジアンで正負各3サイクルとした。ただし、試験体Cについては、載荷履歴に部材角R=0.030ラジアンでの正負1サイクルの載荷を追加している。ここで部材角Rとは、片持ち梁先端の載荷点の変形量をその全長である1450mmで除した値である。
【0027】
前記した試験体C,B,Aの実験結果を図8〜図12に示す。
試験体Cでは、図8に示すように、R=0.006ラジアンの変形で梁端部において上下のフランジが曲げ降状した。その後、前述した荷重履歴に従って正負の加力を繰り返したところ、梁端部フランジの塑性化とひずみ硬化が進行することによって荷重が上昇し、最大荷重は計算で求めた全塑性モ−メントに対応する荷重の約1.37倍となった。また、R=0.030ラジアンのサイクルの載荷途中に、梁端のウエブの溶接部に亀裂が発生するとともに、梁端部フランジが局部座屈を起こし耐力低下が生じた。
【0028】
試験体Bでは、図9に示すように、R=0.005ラジアンの変形で梁端部において上下のフランジが曲げ降状した。その後、前述した荷重履歴に従って正負の加力を繰り返したところ、梁端部フランジの塑性化とひずみ硬化が進行することによって荷重が上昇し、最大荷重は計算で求めた全塑性モ−メントに対応する荷重の約1.44倍となった。また、R=0.020ラジアンのサイクルの載荷途中に、Dogbone形状下端フランジの局部座屈の発生した後、Dogbone形状下端フランジの破断により急激な耐力の低下を生じた。
【0029】
次に、試験体Aの実験結果を図10、図11、図12に示す。なお、試験体A1、A2、A3は、下端フランジ連結部に設置した摩擦ダンパーの高力ボルトに対して加力開始前に導入した初期ボルトの軸力が、それぞれT=120kN、150kN、180kNとした試験体である。試験体A1、A2、A3は、いずれもせん断力と部材角の履歴曲線は完全弾塑性型の履歴ル−プを描き、試験体B,Cに観られるような、梁端フランジの塑性化とひずみ硬化の進行によるせん断力の増加は発生しない。さらに、試験体A1,A2,A3では、本実験における載荷履歴中において、試験体B,Cに観られるような急激な耐力低下は発生しなかった。また、試験体A1,A2,A3の負担せん断力は、設置した摩擦ダンパ−の摩擦力より計算したすべり抵抗せん断力により評価できる結果となった。
【0030】
以上本発明の実施形態について説明してきたが、添え板の大きさ、摩擦摺動材の材質等は対象となる構造物によって適宜変更することができることは当然である。
また本発明はその精神または主要な特徴から逸脱することなく、他のいかなる形でも実施できる。そのため、前述の実施形態はあらゆる点で単なる例示にすぎず限定的に解釈してはならない。
【0031】
【発明の効果】
本発明によれば、
従来の鉄骨ラ−メン構造物において、梁材の両端位置に下方からスロットを設け左右に切り離された梁材下端フランジ同士を連結する添え板との接触面に摩擦ダンパ−を設置するため、地震等により梁材上端に設置された床板に生じる損傷を軽減できる。
【0032】
また、梁を構成するフランジ付き鉄骨材の長手方向の端部近傍において、スロットと下端フランジ連結部を設けているため、添え板と下端フランジとの間に発生する摩擦力とすべりに伴う仕事の原理によって地震のエネルギ−を消費させ、梁端部鋼材の塑性化や梁端溶接部の破断などによる損傷を防止することが出来、構造物の崩壊を回避することが可能になる。
等々の優れた効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施形態に係る構造物の側面図である。
【図2】図1の要部拡大図である。
【図3】第2実施形態に係る構造物の側面図である。
【図4】図3の要部拡大側面図とその断面図である。
【図5】スロット付き下端フランジ連結部を設けた構造の試験体Aの側面図、断面図および底面図である。
【図6】図5の下端フランジ連結部の詳細図である。
【図7】試験体を試験する装置の構成図である。
【図8】試験体Cの実験結果を示すグラフである。
【図9】試験体Bの実験結果を示すグラフである。
【図10】試験体Aにおいて摩擦ダンパ−の高力ボルトに対して加力開始前に導入した初期ボルト軸力がT=120kNの時の実験結果を示すグラフである。
【図11】試験体Aにおいて摩擦ダンパ−の高力ボルトに対して加力開始前に導入した初期ボルト軸力がT=150kNの時の実験結果を示すグラフである。
【図12】試験体Aにおいて摩擦ダンパ−の高力ボルトに対して加力開始前に導入した初期ボルト軸力がT=180kNの時の実験結果を示すグラフである。
【図13】従来型鉄骨ラーメン構造物の側面図である。
【図14】図13中の連結部の拡大図である。
【図15】他の在来形鉄骨ラーメン構造物の側面図、断面図および底面図である。
【図16】さらに他の在来形鉄骨ラーメン構造物の側面図、断面図および底面図である。
【符号の説明】
1 柱材
2 梁材
4 床板
5 スロット
6 下端フランジ
7 上端フランジ
8 ウエブ
9 斜め補剛材
10 添え板
11 摩擦摺動材
12 鋼製フィラー
13 高張力ボルト
14 摺動用長孔
15 添え板(山形鋼)
16 添え板(CT型鋼)
17 添え板(みぞ型鋼)
18 座金
19 エンドプレート
20 Dogbone形状下端フランジ
21 逆T字形スロット

Claims (5)

  1. フランジ付き鉄骨梁材で構成する鉄骨ラ−メン構造物において、梁材と柱材との接合部近傍位置の梁材の下端フランジおよびそれに続くウエブにスロットを設け、前記スロットの左右に位置する梁材を添え板を介して高張力ボルトによって締めつけ連結し、前記スロットを挟んだいずれか一方の連結箇所が梁材長手方向へのすべり変形を発生させることが出来る摩擦ダンパ−として構成されていることを特徴とする鉄骨ラ−メン構造物。
  2. 前記スロットは梁材高さに対して4/5程度の位置までを切り離す形状として構成したことを特徴とする請求項1に記載の鉄骨ラ−メン構造物。
  3. 前記スロットには、前記下端フランジ連結部に梁材のせん断力が直接作用しないように、梁材のウエブに斜めの補剛材を配置したことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の記載の鉄骨ラーメン構造物。
  4. 鉄骨ラ−メン構造物を構成するフランジ付き鉄骨梁材を梁中央材と梁端部材とで構成し、梁中央材の両端と梁端部材とを複数の添え板を介して連結した鉄骨ラ−メン構造において、前記連結部における左右の上端フランジを、添え板を介しそれぞれ高張力ボルトによってすべりが生じないよう摩擦接合し、左右の下端フランジは前記連結部を挟んだ少なくともいずれか一方の連結箇所が梁材長手方向へのすべり変形を発生させることが出来る摩擦ダンパ−として構成されていることを特徴とする鉄骨ラ−メン構造物。
  5. 前記上端フランジの連結に使用する添え板には、前記下端フランジ連結部に梁材のせん断力が直接作用しないように切り離された梁材のウエブと同程度の断面積を有した形鋼を利用することを特徴とする請求項4記載の鉄骨ラ−メン構造物。
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