JP3706214B2 - 免疫学的分析方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、被検試料中の測定対象物質の免疫学的分析方法に関する。本発明によれば、被検試料、例えば、患者などから採取した血液、血清、血漿、髄液、又は尿等に含まれる微量な測定対象物質を迅速かつ高感度に免疫学的に定量的に測定することができる。
【0002】
【従来の技術】
高感度な免疫学的測定方法として、1950年代にはバーソンとヤーロウがラジオイムノアッセイを開発し、ngレベルの微量物質を定量することができるようになった。更に、1960年代に入ると、エングバールが同位元素の代わりに酵素を標識物質として使用することにより、同様の感度で取り扱い易いエンザイムイムノアッセイを開発した。その後も、蛍光物質、又は発光物質等で標識することにより、高感度で迅速な測定方法の開発が進められてきた。
【0003】
これらの測定方法を支える重要な材料は、測定対象物質をウサギやヤギに免疫して得られる抗血清から精製される抗体、すなわち、イムノグロブリンであり、この抗体の測定対象物質に対する結合力の強さが、高感度測定に欠かせないものである。
また、抗血清から得られる抗体は、ポリクローナル抗体といわれ、測定対象物質に対して種々の結合サイトと種々の結合力とを有するタンパク質的に異なるイムノグロブリンの集合である。この性質から測定方法に用いる際、反応順序に一定のルールが生まれてくる。
【0004】
二抗体法、すなわち、測定対象物質と同じタンパク質に標識を行った標識抗原と、被検試料との混合物に抗体を加え、一定時間反応させた後、イムノグロブリンに対する異種動物から得られた抗イムノグロブリンを第二抗体として加えて凝集塊を形成させ、遠心操作によって沈澱物を集め、その中に含まれる標識物質の量から被検試料中の測定対象物質を定量する方法は、代表的な測定方法の1つであり、このようにいくつかの反応段階を経て、測定が行われる。
フォワードサンドイッチ法、すなわち、プラスチックチューブやマイクロタイタープレートに抗体を吸着させた固相化抗体と、検体とを反応させた後、被検試料成分を洗浄除去してから標識抗体を加えて反応させ、もう一度洗浄操作を行ってから固相に固定化された標識物質の量を測定する方法も、この操作手順を変えると正確な測定結果が得られなくなる。
【0005】
しかし、1970年代に開発されたモノクローナル抗体調製法によって状況に変化がもたらされた。マウスの抗体産生細胞を選別し、一つのクローンから増殖させるモノクローナル抗体調製法では、タンパク質的に単一のイムノグロブリンを得ることができる。このモノクローナル抗体は抗原と結合しても凝集反応を起こさないため、ポリクローナル抗体を用いては実施することができなかった反応手順で測定をすることができるようになった。代表的なものは、ワンステップサンドイッチ法、あるいはシーマルテイニアスサンドイッチ法と呼ばれる方法、すなわち、固相化モノクローナル抗体、被検試料、及び固相化に使用したものと異なるクローンから得られた標識化モノクローナル抗体の三者を同時に反応させ、洗浄後、固相に固定化された標識物質の量を定量する方法であり、その他には、リバースサンドイッチ法、すなわち、まず検体と標識モノクローナル抗体とを反応させてから固相化抗体を加えて反応する方法でも検体中の測定対象物質を正確に定量できるようになった。
【0006】
ところが、この方法は操作が簡便であるというメリットを持つ代わりに、ポリクローナル抗体やモノクローナル抗体を用いた前記フォワードサンドイッチ法では起こらなかった、測定対象物質の過剰に起因するプロゾーン現象を起こすというデメリットを持っている。
非常に多くの測定対象物質が存在する場合に、実際の存在量よりも少なめに、ひどい場合は正常値と判定されるレベルに測定されてしまう危険性があるのは大きな問題である。
【0007】
これら高感度測定方法のもう一つの重要な要素に標識物質がある。初期段階で用いられた放射性同位元素は、低分子のため抗原や抗体の立体構造を変化させない、又は検出時間を長くすることにより感度を向上させることができる等のメリットがあったが、放射性同位元素使用方法に対する規制から、専用の施設まで必要になるという不自由さがあった。
【0008】
標識物質として次に考えられた酵素では、検出するためには基質の変化量を測定する必要があるため、一定の酵素反応時間が必要になるという面を持っている。現在、ペルオキシダーゼ、アルカリフォスファターゼ、ガラクトシダーゼ、又はグルコースオキシダーゼ等が標識酵素として広く応用されている。酵素を標識として使用するエンザイムイムノアッセイでは、初期には、基質に発色反応を起こし、吸光度として検出することができる物質が用いられていたが、最近では、発光反応を起こすことにより、より高感度な測定を実現している基質も開発されている。
蛍光物質、又は発光物質を用いる測定方法は、検出時間が短く、全体の測定に必要な時間を短縮することができるという特徴を持っており、フルオレッセイン、又はユーロピウムキレート等が蛍光物質として、ルミノール、アクリジニウムエステル、又は安定化ジオキセタン等が発光物質として種々の測定方法に応用されている。
【0009】
ここまで改良されてきた免疫測定方法ではあるが、輸血の現場ではより感染初期の被検試料を用いた場合でも陽性であることを検出する技術が望まれているし、初期癌の発見には、より高感度に腫瘍マーカーを測定することが望まれている。また、血栓の発生をより正確に捉えるためには凝固関連マーカーを、その他にもホルモン、又はサイトカイン等を高感度かつ迅速に測定したいという要望は止まないことから、それに答える測定方法の開発が望まれる。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
前記の種々開発された免疫学的測定方法において、高感度測定を実現するためには、長時間の反応が必要である。また、モノクローナル抗体は、高感度な免疫学的測定方法を構築するには非常に有効な材料であるが、測定方法によってはプロゾーン現象を起こし、誤った測定結果を出すことがあるという危険性を持っている。
従って、本発明の課題は、従来技術の前記の欠点を解消し、被検試料中に広い濃度範囲で存在する測定対象物質を短時間で、かつ正確に定量することができる免疫学的測定方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
前記課題は、本発明による、(1a)標識物質で標識され、測定対象物質と特異的に結合する第1のモノクローナル抗体又はその抗体フラグメントと、被検試料とを接触させる工程(以下、第1a工程)、(1b)前記測定対象物質と特異的に結合する第2の抗体であって、しかも測定対象物質への結合に関して第1モノクローナル抗体とは競合しない前記第2抗体又はその抗体フラグメントをその表面に担持する第2抗体固定化不溶性担体と、前記工程(1a)で形成された反応液とを接触させる工程(以下、第1b工程)、(2)第2抗体固定化不溶性担体と反応しなかった成分を反応液から除去する工程(以下、第2工程)、(3)前記標識物質で標識され、前記測定対象物質と特異的に結合する第3の抗体又はその抗体フラグメントと、前記工程(2)で得られた反応液とを接触させる工程(以下、第3工程)、(4)未反応の標識化第3抗体を反応液から除去する工程(以下、第4工程)、及び(5)前記工程(4)で得られた反応液において、前記標識に由来する信号を検出する工程(以下、第5工程)をこの順序で実施することを特徴とする、免疫学的分析方法(以下、3段階方法と称することがある)によって解決することができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0013】
本発明方法を用いて測定することのできる測定対象物質は、サンドイッチ法の測定対象となることができる物質、すなわち、2つ以上の抗原決定基を有することのできる物質であり、抗原決定基を一つしか持たない物質、例えば、低分子ホルモン、ペプチド、又は薬物などは前記測定対象物質から除外される。
【0014】
前記測定対象物質としては、例えば、各種タンパク質、多糖類、糖タンパク質、若しくは脂質タンパク質、又はそれらの複合体若しくは断片などを挙げることができる。具体的な測定対象物質の例としては、感染症関連マーカー(例えば、HBs抗原、又はHIV関連抗原など)、腫瘍関連抗原(例えば、AFP、CRP、CEA、又はPAPなど)、凝固線溶マーカー(例えば、プラスミノーゲン、アンチトロンビン−III 、D−ダイマー、又はトロンビン−アンチトロンビンIII 複合体など)、サイトカイン(例えば、インターフェロン、又はインターロイキンなど)、又はタンパク質性ホルモン(例えば、インシュリン、又はヒトコリオニックゴナドトロピンなど)等を挙げることができる。
【0015】
本発明方法を用いて測定することのできる被検試料としては、前記の測定対象物質を含む可能性のある試料、例えば、哺乳動物(特にはヒト)から採取した生体試料、例えば、血液、血清、血漿、髄液、又は尿などを挙げることができる。これらの生体試料を、そのまま、あるいは水又は適当な緩衝液などで適宜希釈して使用することができる。
【0016】
本発明方法においては、抗原抗体反応系への添加の時期が異なる3種類の抗体、すなわち、その添加順序に基づいて命名した第1抗体〔第1a工程又は第1工程で添加〕、第2抗体〔第1b工程又は第1工程で添加〕、及び第3抗体〔第3工程で添加〕を使用する。なお、これらの3種類の抗体は、反応系への添加時期が異なる点で区別されるものであって、それぞれの抗体の認識するエピトープが互いに異なることを意味するものではない。
【0017】
また、前記の第1抗体、第2抗体、及び第3抗体の代わりに、それぞれの抗体フラグメントを用いることもできる。抗体フラグメントとは、相当する抗体の一部分であって、それが由来する抗体の抗原結合部位をそのまま含む部分を意味し、例えば、F(ab’)2 、Fab、Fab’、又はFvなどが含まれる。これらの抗体フラグメントは、公知の方法によって調製することができる。以下の記載では、本発明方法において抗体を用いる場合に関して説明するが、特に断らない限り、抗体に関する説明は、そのまま抗体フラグメントに関しても適用される。
【0018】
本発明方法では、第1抗体として、目的とする測定対象物質に特異的に結合する1種類以上のモノクローナル抗体を使用することができる。本発明方法はサンドイッチ法を原理としているので、第1抗体としてポリクローナル抗体を用いると、測定対象物質上に存在する各種の結合サイトにポリクローナル抗体が結合して、抗体が測定対象物質を取り囲んでしまうため、その後に加える第2抗体が測定対象物質に結合することができないか、あるいは極めて困難になるという不都合が生じる。
【0019】
本発明方法において第2抗体として使用することができる抗体は、目的とする測定対象物質に特異的に結合し、しかも抗原結合に関して第1のモノクローナル抗体と競合しない抗体であれば、特に限定されるものではなく、1種類以上のモノクローナル抗体、若しくはポリクローナル抗体、又はそれらの組み合わせを使用することができる。
【0020】
本発明方法において第3抗体として使用することができる抗体は、目的とする測定対象物質に特異的に結合する抗体であれば、特に限定されるものではなく、1種類以上のモノクローナル抗体、若しくはポリクローナル抗体、又はそれらの組み合わせを使用することができる。第3抗体として、第1抗体と同じ抗体を用いることもできる。
【0021】
第1抗体、第2抗体、及び/又は第3抗体としてモノクローナル抗体を用いる場合には、例えば、目的とする測定対象物質を免疫源として、哺乳動物又は鳥類(例えば、ウサギ、マウス、又は鶏、好ましくはマウス)に免疫を行い、通常の操作によって、目的とする測定対象物質と特異的に結合するモノクローナル抗体を得ることができる。
より詳しくは、例えば、マウスに免疫を行う場合の例を挙げると、以下のとおりである。すなわち、BALB/cマウス又はC57BLマウス等の腹腔に、免疫源とフロイントコンプリートアジュバントとの混合物を注射し、更に免疫源とインコンプリートフロイントアジュバントとの混合物で追加免疫を行う。マウス血清に免疫源に対する力価上昇がみられてから、脾臓細胞を取り出し、ポリエチレングリコール法によってミエローマ細胞との融合を行う。HAT培地中で融合細胞を選択し、培地中の抗体をELISA法で確認する。目的の抗体が産生されているコロニーのクローニングを行い、単一クローンとしてから、腹腔内に打ち、抗体を産生させてから腹水を採取し、プロテインAカラム等でモノクローナル抗体を精製する。
【0022】
第2抗体及び/又は第3抗体としてポリクローナル抗体を用いる場合には、例えば、目的とする測定対象物質を免疫源として、哺乳動物又は鳥類(例えば、ウサギ、ヤギ、馬、又は鶏等)にモノクローナル抗体調製時と同じ操作で免疫を行うことによって、目的とする測定対象物質と特異的に結合するポリクローナル抗体を得ることができる。
【0023】
より詳しくは、例えば、測定対象物質を免疫源とし、その測定対象物質とフロイントコンプリートアジュバントとのエマルジョンを皮下に数カ所に渡って注射する。一定の期間が経過した後、追加免疫を2〜3回行い、試採血により得た抗血清に、測定対象物質に対する力価がみられた段階で大量採血を行い、抗血清を得る。通常のイムノグロブリン精製法に従って、抗血清を処理する。例えば、20〜33%飽和硫安分画に含まれるグロブリン画分を、DEAEカラムクロマトグラフィーによって更に精製することができる。前記のDEAEカラムクロマトグラフィーよりも更に好ましい精製方法は、アフィニティークロマトグラフィーによる精製方法であり、測定対象物質を固定化したカラムに抗血清を通して特異抗体を結合させ、血清成分を充分洗浄除去した後、溶離剤(例えば、チオシアン酸ナトリウム、酸性グリシン緩衝液、又は塩化マグネシウム等)を流して特異抗体を得ることができる。こうして得られたアフィニティー精製抗体を用いると、本発明方法を一層短時間かつ高感度で実施することができる。
【0024】
このようにして調製したポリクローナル抗体は、目的とする測定対象物質と特異的に結合することのできるポリクローナル抗体であり、測定対象物質への結合に関して第1のモノクローナル抗体とは競合しない抗体と、測定対象物質への結合に関して第1のモノクローナル抗体と競合する抗体の両方を含むことが理論的には予想される。しかしながら、第1のモノクローナル抗体と結合した測定対象物質にはまだ抗体と結合することのできる部位が残っており、固相化された第2抗体との反応時には、第2抗体に多種含まれるクローンの中、第1モノクローナル抗体と競合しないクローンが反応に関与するため、前記のポリクローナル抗体を、そのまま「測定対象物質への結合に関して第1のモノクローナル抗体と競合しない」第2抗体として用いることができる。
【0025】
第2抗体としてモノクローナル抗体を用いる場合には、例えば、前記のモノクローナル抗体調製方法で2種類又はそれ以上のクローンを調製し、測定対象物質への結合が相互に競合せず、かつ両者が同時に抗原に結合することのできるクローン2種類又はそれ以上を選択することにより、適当なモノクローナル抗体の組み合わせを選択することができる。この場合、いずれか1種類以上のモノクローナル抗体を第1のモノクローナル抗体として使用し、残りの1種類以上のモノクローナル抗体を第2抗体として振り分けて使用することができる。
【0026】
第1抗体、第2抗体、及び第3抗体、それぞれモノクローナル抗体である場合には、前記と同様にクローンを2種類以上選択し、それらの中から、抗原への結合が相互に競合せず、抗原に対し同時に結合することのできるクローン2種類又はそれ以上を選択することができる。
例えば、抗原への結合が相互に競合せず、かつ両者が同時に抗原に結合することのできるクローン2種類を選択し、そのいずれか一方のモノクローナル抗体を第1抗体及び第3抗体として使用し、残りの一方のモノクローナル抗体を第2抗体として使用することにより、相互の反応を妨害しない測定系を構成することができる。
抗原への結合が相互に競合せず、かつ同時に抗原に結合することのできるクローンを3種類以上選択することができた場合は、第1抗体及び第3抗体として使用する群と、第2抗体として使用する群とに分け、短時間に、より高感度な測定系を構築することができる組み合わせを実験的に選択して用いることができる。以上のように、モノクローナル抗体のみで、本発明による測定系を構成する場合には、最低2種類のクローンが必要であり、それ以上にクローンの種類を増やすことによって測定の感度を向上させることができるが、特に欠点は発生しない。
【0027】
本発明の好ましい態様によれば、第1抗体としては高い結合定数で抗原に結合することができるモノクローナル抗体を用いる。そのクローンの数は、第2抗体との結合に妨害とならない範囲で、1〜数種類の中から選択することができる。第2抗体としては、高い結合定数で抗原と結合することができ、第1抗体と競合しないモノクローナル抗体を1〜数種類用いるか、あるいは抗原との結合定数が高いポリクローナル抗体を使用すると、短時間により多く抗原、又は抗原−第1抗体複合体を結合することができるので望ましい。
第3抗体は、プロゾーン現象を防ぐための抗体なので、モノクローナル抗体であるか、ポリクローナル抗体であるかを問わず、抗原との結合定数が高い抗体を、より多く用いるのが好ましい。
【0028】
本発明方法では、第1のモノクローナル抗体を標識するのに用いる標識物質と、第3抗体を標識するのに用いる標識物質として、同一の標識物質を使用するのが好ましい。前記標識物質としては、通常の免疫学的測定方法に用いることのできる種々の標識物質を利用することができ、その選択には制限はない。具体的には、例えば、放射性同位元素、酵素、蛍光物質、又は発光物質等を挙げることができる。
【0029】
本発明方法では、標識抗体がモノクローナル抗体であるか、ポリクローナル抗体であるかを問わず、抗体を標識物質で標識する場合には、補体又はリウマチ因子等の影響を避けるため、生理活性部位を有するFcフラグメントを、例えば、ペプシン又はパパイン等の酵素で消化除去しておくことが望ましく、この消化除去操作で得られた抗体フラグメント、例えば、F(ab’)2 、Fab、又はFab’などを用いることが好ましい。また、遺伝子操作で得られるFvは、最初からFcフラグメントが存在しないので、このまま用いることができる。第2抗体としては、特に固相化しても反応性の低下しない点で、F(ab’)2 を用いることが好ましい。
第1のモノクローナル抗体又はその抗体フラグメント、及び第3抗体又はその抗体フラグメントにこれらの標識物質を結合する方法としては、現在までに案出された種々の結合方法を制限なく利用することができる。
【0030】
放射性同位元素標識法の例としては、例えば、クロラミンTを用いた放射性ヨードイオンの結合が一般的であり、広く行われている。本発明においても、前記方法を用いることができる。
【0031】
酵素を標識する方法としては、例えば、酵素と抗体との混合液にグルタルアルデヒドや、ジスクシンイミド等の架橋剤を加えて結合する一段階法、まず酵素にヘテロバイファンクショナルな架橋剤を結合して得られる活性化酵素を精製後、抗体のチオール基等に結合する二段階法、又はペルオキシダーゼが糖タンパク質であることを利用し、過ヨウ素酸酸化によりアルデヒドを生成させ、抗体のアミノ基に結合する方法等を挙げることができる。標識物質として用いることのできる酵素としては、例えば、ペルオキシダーゼ、アルカリフォスファターゼ、ガラクトシダーゼ、又はグルコースオキシダーゼ等を挙げることができる。
【0032】
標識物質として用いることのできる蛍光物質としては、例えば、フルオレッセインイソチオシアネート、ローダミンイソチオシアネート、又はユウロピウムキレート等を挙げることができる。フルオレッセインイソチオシアネート又はローダミンイソチオシアネートは、イソチオシアネート部分がアミノ基と反応性を持つので、弱アルカリ性溶液中で抗体と反応することにより、前記抗体を標識することができる。また、最近では蛍光の残光時間が長いユウロピウムキレートを用いた時間分解蛍光測定により、特異性及び感度を共に向上させる方法が知られており、例えば、ビスクロロスルホフェニルフェナンスロリンカルボン酸等のキレート剤をタンパク質に標識し、ユウロピウムとキレートを形成させて用いることができる。
【0033】
標識物質として用いることのできる発光物質としては、例えば、ルミノールの誘導体であるアミノブチルエチルイソルミノールのイソチオシアネート体、又はアクリジニウムエステルのスクシンイミド化されたものを挙げることができる。前記イソチオシアネート体は、タンパク質のアミノ基に結合し、過酸化水素とミクロペルオキシダーゼを加えることにより発光させて検出することができる。前記のアクリジニウムエステルのスクシンイミド化されたものは、タンパク質のアミノ基と結合し、アルカリ性過酸化水素で発光させて検出することができる。
【0034】
本発明方法において、第2抗体を固定するために使用する不溶性担体としては、従来の免疫学的測定方法用、特にラジオイムノアッセイ法やエンザイムイムノアッセイ法用に開発されてきた公知の不溶性担体を使用することができる。材料としては、例えば、多糖類樹脂(例えば、セファローズ、又はセファデックス等)、プラスチック材料(例えば、ポリスチレン、ポリアミド、又はアクリル系樹脂等)、又は磁石に対して結合性を持つ磁性材料(例えば、フェライト等)等を挙げることができる。形状も限定されるものではないが、例えば、ビーズ、マイクロタイタープレート、又はチューブ等を挙げることができ、各工程の操作、例えば、洗浄操作などに応じて適当な不溶性担体を選択することができる。
不溶性担体としては、より広い面積で被検試料と接することが望ましいため、一般に0.1〜10cm2 の表面積を持つものを用いることが好ましい。
【0035】
本発明方法では、モノクローナル抗体であるか、ポリクローナル抗体であるかを問わず、第2抗体を前記不溶性担体に固定化する場合には、補体又はリウマチ因子等の影響を避けるため、生理活性部位を有するFcフラグメントを、例えば、ペプシン又はパパイン等の酵素で消化除去しておくことが望ましく、この消化除去操作で得られた抗体フラグメント、例えば、F(ab’)2 、Fab、又はFab’などを用いることが好ましい。また、遺伝子操作で調製したFvは、Fcフラグメントを持たないため、そのまま使用することができる。第2抗体としては特にF(ab’)2 を用いることが好ましい。
【0036】
第2抗体固定化不溶性担体は、不溶性担体に第2抗体又はその抗体フラグメントを固定化することによって調製することができる。固定化方法としては、既に知られている方法を用いることができる。例えば、CNBr活性化された多糖類樹脂には抗体のアミノ基を介して共有結合が行われるし、プラスチック製担体には物理吸着法、カルボキシ基導入プラスチックにはカルボジイミド等を用いた化学結合法も使用することができる。また、アビジン固定化担体に対するビオチン化抗体の結合、又はプロテインA固定化担体に対する抗体の結合など他の結合性タンパク質を介して固定化する方法や、スペーサーを導入して抗体の反応性を確保する方法なども利用することができる。
【0037】
本発明による3段階方法における前記第1a工程では、前記のようにして調製された標識化第1モノクローナル抗体と、測定対象物質が含まれていると予想される被検試料とを接触させる。被検試料中に測定対象物質が含まれている場合には、その測定対象物質が前記標識化第1モノクローナル抗体と結合して、測定対象物質と標識化第1モノクローナル抗体とからなる免疫複合体(以下、標識化第1抗体/測定対象物質−免疫複合体、又は2成分免疫複合体)が形成される。通常、この第1a工程は、標識化第1モノクローナル抗体を含む溶液と被検試料とを混合することにより実施することができる。この際、標識化第1モノクローナル抗体を含む溶液により検体が希釈され、測定対象物質濃度が不要に下がるのを防ぐため、標識化第1モノクローナル抗体を含む溶液の液量は、被検試料の液量に比べて少な目に設定し、予備検討を行って測定項目によって最適な量を決めることができる。
【0038】
前記第1a工程で使用する標識化第1モノクローナル抗体の濃度は、ng/mlのレベル〜μg/mlのレベルの範囲が好ましく、これも予備検討を行って、測定項目によって最適な量を決定することができる。
被検試料と標識化第1モノクローナル抗体との反応は、通常の液体中抗原抗体反応であるから、反応時間や反応温度は通常の設定範囲とすることができる。反応は、一般には、温度は4℃〜45℃の間で、反応時間は瞬時から2時間までの範囲で実施することができる。この際、攪拌は反応を促進する効果があり、反応時間を短くするのに有効である。
【0039】
前記の第1a工程で標識化第1モノクローナル抗体と測定対象物質とを一定の設定時間接触させた後、続く第1b工程では、前記第1a工程で得られた反応液をそのまま使用して、その反応液に第2抗体固定化不溶性担体を添加し、混合する。第1a工程で得られた反応液中に、前記の2成分免疫複合体が存在する場合には、その複合体内の測定対象物質と不溶性担体上の第2抗体とが結合して、第2抗体固定化不溶性担体上に、前記の2成分免疫複合体と第2抗体とからなる免疫複合体(以下、標識化第1抗体/測定対象物質/第2抗体−免疫複合体、又は3成分免疫複合体)が担持される。また、前記第1a工程で得られた反応液中に、第1モノクローナル抗体とは結合しなかった測定対象物質が存在している場合(例えば、被検試料中に測定対象物質が多量に含まれ、標識化第1抗体の量が不足する場合など)にも、その測定対象物質が直接に第2抗体固定化不溶性担体上の第2抗体と結合して、測定対象物質/第2抗体−免疫複合体が不溶性担体上に担持される。こうして、第1モノクローナル抗体の結合に有無にかかわらず、被検試料中に存在した測定対象物質は、その量に比例して第2抗体固定化不溶性担体上に担持される。
【0040】
前記第1b工程で使用する第2抗体固定化不溶性担体の量は、それ自体の量としては特に限定されるものではないが、その表面にng〜μg単位の抗体が固定化されていることが好ましく、これも予備検討を行って、測定項目によって最適な量を決定することができる。
第1a工程からの反応液と第2抗体固定化不溶性担体とは、静置又は攪拌状態で一定時間反応させることができる。この際の攪拌は、反応に要する時間を短くする効果がある。また、反応温度は、通常の抗原抗体反応であるから、4℃〜45℃の範囲で行うことができ、温度を高くすると必要な反応時間を短くする効果がある。反応時間は1分〜24時間の範囲が普通であるが、安定な結果を迅速に得るという目的から3分〜30分間反応させることが望ましい。
【0041】
本発明による2段階方法においては、前記3段階方法において第1a工程及び第1b工程をこの順序で実施する代わりに、第1a工程及び第1b工程を同時に実施することができる。この第1工程では、前記のように調製した標識化第1モノクローナル抗体と、測定対象物質が含まれていると予想される被検試料と、第2抗体固定化不溶性担体とを接触させる。標識化第1モノクローナル抗体の濃度、及び第2抗体固定化不溶性担体の量は、第1a工程及び第1b工程で示した範囲と同じ範囲で使用することが好ましく、予備検討を行って、測定項目によって最適な量を決定することができる。
2段階方法における第1工程は、静置又は攪拌状態で一定時間反応させることができる。この際の攪拌は、反応に要する時間を短くする効果がある。また、反応温度は、通常の抗原抗体反応であるから、4℃〜45℃の範囲で行うことができ、温度を高くすると必要な反応時間を短くする効果がある。反応時間は1分〜24時間の範囲が普通であるが、安定な結果を迅速に得るという目的から3分〜30分間反応させることが望ましい。
【0042】
第2工程では、2段階方法による第1工程で得られる反応液、又は3段階方法における第1a工程及び第1b工程をこの順序で実施して得られる反応液から、第2抗体固定化不溶性担体と反応しなかった成分を、例えば、洗浄などの手段によって除去する。この第2工程における洗浄は、単に被検試料中の共存物質(測定対象物質以外の物質)を除くことを目的としているので、第2抗体固定化不溶性担体を含む部分とそれ以外の部分とを分離することによって実施することができる。従って、第1b工程又は第1工程で得られた反応液から、第2抗体固定化不溶性担体以外の液体部分を、例えば、吸引除去などによって除去し、続いて、例えば、蒸留水、緩衝液、又は界面活性剤含有緩衝液等で1〜4回程度の洗浄操作を行うことが好ましい。なお、前記の洗浄操作を行わなくても、以下の反応に対する影響が実質的にみられない場合には、被検試料を捨てるだけで洗浄操作を行わなくてもかまわない。
【0043】
次に、第3工程では、前記第2工程で得られた反応液に、標識化第3抗体を、例えば、緩衝液で所定の濃度に調整して加える。抗原の結合に関して第1抗体とは競合しない抗体が、標識化第3抗体に含まれている場合、あるいは、前記第2工程で得られた反応液中の不溶性担体上に、第2抗体とは結合しているが、標識化第1抗体とは結合していない測定対象物質(すなわち、測定対象物質/第2抗体−免疫複合体)が存在する場合には、標識化第3抗体は、不溶性担体上の測定対象物質に結合することができる。
被検試料中に測定対象物質が多量に含まれる場合であって、3段階方法の第1a工程及び第1b工程、又は2段階方法の第1工程において標識化第1抗体の量が不足し、標識化第1抗体とは結合していない測定対象物質が第2抗体と結合して不溶性担体上に担持されている場合であっても、第3工程では測定対象物質を含む被検試料を除去した後に、充分量の標識化第3抗体と反応させるため、不溶性担体上に担持されるすべての測定対象物質には標識化抗体が結合している。
【0044】
前記緩衝液に必要に応じてタンパク質及び/又は界面活性剤などを加えることによって、非特異的な吸着反応を抑制することができる。
反応時に含まれる標識化第3抗体の濃度は、1ng/ml〜100μg/mlの範囲が好ましく、これも予備検討を行って、測定項目によって最適な量を決定することができる。
この第3工程での反応も、通常の固相と液相との抗原抗体反応であるから、4℃〜45℃の温度範囲で、1分〜24時間反応させることができる。安定な結果を迅速に得ることができるので、3分〜30分間反応させることが望ましい。
【0045】
標識化第3抗体と、免疫複合体担持不溶性担体とを一定の時間接触させた後、続く第4工程において、反応液中に残った未反応の標識化第3抗体を、例えば、洗浄などの手段によって反応系から除去する。この第4工程における洗浄は、反応に関与しなかった標識化第3抗体を実質的に完全に除くことを目的としているので、第2抗体固定化不溶性担体を含む部分とそれ以外の部分とを分離することによって実施することができる。従って、第3工程で得られた反応液から、第2抗体固定化不溶性担体部分以外の液体部分を、例えば、吸引除去などによって除去し、続いて、例えば、蒸留水、緩衝液、又は界面活性剤含有緩衝液などから洗浄効果の高い液を選択して、1回〜5回程度の洗浄操作を行うことが好ましい。
【0046】
最後に、第5工程では、不溶性担体に結合した標識物質、すなわち、不溶性担体に固定化された第2抗体と結合した測定対象物質に結合することができた、第1抗体及び第3抗体を標識している物質に由来する信号の量を検出して測定する。
一般には、第1抗体及び第3抗体には同じ標識物質を用い、この標識物質が放射性同位元素の場合には、シンチレーションカウンターによって放射活性を測定することができる。標識物質が酵素の場合には、適当な基質を加え、一定時間後の基質の変化量を測定することができる。標識物質が蛍光物質の場合には、最適な励起光を当て、得られる蛍光強度を測定することができる。標識物質が発光物質の場合には、発光開始剤を加えてフォトマルチプライアーで発光量を測定することができる。予め、測定対象物質の標準物質を用いて、前記の操作を実施することにより、標準物質から得られる信号量から検量線を作製しておき、被検試料から得られる信号量(測定値)から、被検試料中の測定対象物質の量を定量的に測定することができる。
【0047】
【作用】
本発明による3段階方法の前半の反応、すなわち、第1a工程及び第1b工程における反応は、一般的なリバースサンドイッチ法における被検試料、標識抗体、及び抗体固定化不溶性担体を反応させるときの操作と同じである。この反応では、第2抗体固定化不溶性担体に結合した微量測定対象物質と標識抗体との反応は遅いが、液体中の微量測定対象物質と標識抗体との反応は速いという性質を利用し、まず、測定対象物質を含む被検試料と標識化第1モノクローナル抗体とを反応させる。この際、標識化第1抗体は、後の反応の妨害にならないようにモノクローナル抗体である必要がある。こうして得られた標識化第1モノクローナル抗体/測定対象物質−免疫複合体に、第2抗体固定化不溶性担体を加えると、前記の2成分免疫複合体は、測定対象物質より分子量が若干増えただけなので、測定対象物質のみの場合とほぼ同じ速さで第2抗体固定化不溶性担体上の第2抗体と反応することができる。一般的なリバースサンドイッチ法では、この第2工程終了後に除去操作を行い、標識物質を検出するが、プロゾーンによる誤った結果を出す危険性が存在する。
【0048】
また、本発明による2段階方法における第1工程は、一般的なワンステップサンドイッチ法における被検試料、標識抗体、及び抗体固定化不溶性担体を反応させる操作と同じである。ワンステップサンドイッチ法は液体中の微量測定対象物質と標識抗体の反応を行いながら、不溶性担体に固定化された抗体との反応も同時に行う、いわば、リバースサンドイッチ法をより簡略化した方法であり、効果としてもリバースサンドイッチ法に近い結果をもたらすことができる。
一般的なワンステップサンドイッチ法でも、この同時に行う第1工程終了後に除去操作を行い、標識物質を検出するが、プロゾーン現象による誤った結果を出す危険性が存在する。
そこで、本発明方法では、3段階方法の第1b工程、又は2段階方法の第1工程の終了後に同様の除去操作(第2工程)を実施し、更に標識化第3抗体を反応(第3工程)させ、続いて除去操作(第4工程)を行ってから標識物質の総和を検出(第5工程)する。この第3工程〜第5工程は、一般的なフォワードサンドイッチ法の操作に相当する。こうして、本発明方法では、標識化第1抗体と被検試料と第2抗体固定化不溶性担体とを反応させた後、除去操作を行ってから標識化第3抗体と反応させると、プロゾーン現象を起こさないというメリットを利用している。
【0049】
本発明方法は、リバースサンドイッチ法及びフォワードサンドイッチ法あるいはワンステップサンドイッチ法及びフォワードサンドイッチ法を組み合わせているので、被検試料中の測定対象物質が微量の場合には、リバースサンドイッチ法やワンステップサンドイッチ法における被検試料、標識抗体、及び抗体固定化不溶性担体を反応させる場合の操作に対応する前半工程部分が高感度な測定を可能とする。また、測定対象物質が前半の反応だけではプロゾーン現象を起こすほど大量な場合には、後半工程部分で加えた標識化第3抗体がプロゾーン現象を防ぐという役割を有している。従って、本発明方法により、短時間で高感度に測定を行うことができ、かつプロゾーン現象による不正確な結果をもたらさないという理想的な測定系を実現することができる。
【0050】
本発明方法の原理は、以上のようにリバースサンドイッチ法とフォワードサンドイッチ法との組み合わせ、あるいはワンステップサンドイッチ法とフォワードサンドイッチ法との組み合わせからなるが、測定操作の観点から見れば、被検試料に標識抗体を加えるツーステップサンドイッチ法と実質的に異なることはない。従って、その操作は、通常の免疫学的測定方法と比較して、特に煩雑ということはない。しかし、本発明方法によって得られる効果は、予想外に顕著なものであり、短い測定時間で、非常に高感度で、免疫学的測定を実現することができる。
【0051】
【実施例】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
実施例1:微量のヒトα−フェトプロテイン(AFP)の測定
(1)抗ヒトAFPポリクローナル抗体コートビーズの調製
常法に従って、抗ヒトAFPウサギ血清よりアフィニティークロマトグラフィーで得たポリクローナル抗体をペプシンで消化した後、ゲルろ過操作でF(ab’)2 画分を得、不溶性担体の表面に固定化するコート用抗体フラグメントとして用いた。150mM塩化ナトリウムを含む50mM酢酸緩衝液(pH5.0)でコート用抗体フラグメントを10μg/mlに調整し、密封できる容器中に抗体液40mlとスチレンビーズ(直径=3.2mm)800個とを入れ、4℃で一夜、容器を回転させることにより抗体フラグメントをスチレンビーズにコートした。
得られた抗ヒトAFPポリクローナル抗体フラグメントコートビーズ(以下、抗ヒトAFPポリクローナル抗体コートビーズと称する)を、生理食塩水で3回洗浄し、0.1%アジ化ナトリウムを含む生理食塩水中に保存した。
【0052】
(2)アクリジニウムエステル標識化抗ヒトAFPモノクローナル抗体の調製
通常の調製法によりヒトAFPに対するモノクローナル抗体を調製し、ペプシン消化によってF(ab’)2 分画を得、ラベル用抗体フラグメントとして用いた。0.1Mリン酸緩衝液(以下、PBSと称する)でラベル用抗体フラグメントを0.25mg/mlに調整し、その抗体フラグメント溶液1mlにスクシンイミド化されたアクリジニウムエステルのジメチルホルムアミド溶液(0.1mg/ml)0.1mlを加え、室温で15分間振盪反応させた後、0.2Mグリシン緩衝液(pH8.5)0.5mlを加えて更に15分間振盪反応させた。生理食塩水で平衡化したセファデックスG25カラムに反応液を通して、ボイド容量に溶出されるアクリジニウムエステル標識化抗ヒトAFPモノクローナル抗体フラグメント(以下、アクリジニウムエステル標識化抗ヒトAFPモノクローナル抗体と称する)をプールした。
【0053】
(3)ヒトAFPの測定
0.05%ツイーン20を含む20mM−PBS(pH7)(以下、ツイーンPBSと称する)を用いて、5ng/ml〜40pg/mlの範囲で標準ヒトAFPの希釈列溶液を調製した。この希釈列溶液0.1mlに、ツイーンPBSで抗体濃度2.5μg/mlに調整した、前記(2)で調製したアクリジニウムエステル標識化抗ヒトAFPモノクローナル抗体0.01mlを加え、混和後37℃において10分間静置反応した。
前記(1)で調製した抗ヒトAFPポリクローナル抗体コートビーズ(直径=3.2mm)3個を入れた反応チューブに、上記反応液0.1mlを入れ、37℃において5分間振盪反応した。
反応液から液体部分を吸引除去した後、残留したビーズを生理食塩水で一回洗浄した。ツイーンPBSで抗体濃度125ng/mlに調整した、前記(2)で調製したアクリジニウムエステル標識化抗ヒトAFPモノクローナル抗体0.1mlを前記の反応チューブに加え、37℃において5分間振盪反応した。
反応液から液体部分を吸引除去した後、残留したビーズをツイーンPBSで4回洗浄した。
反応チューブに40mM塩酸液0.1mlを加えた後、発光検出器にセットし、暗所で0.1M水酸化ナトリウムと20mM過酸化水素とを含む発光開始剤0.3mlを加えて発光量を測定した。
AFP濃度と発光量(カウント)との関係を表1に示す。
【0054】
【表1】
【0055】
実施例2:高濃度のAFPの測定
ツイーンPBSを用いて、1600ng/ml〜25ng/mlの範囲で標準AFPの希釈列溶液を調整した。実施例1に記載の手順に従って、発光量を測定した。
AFP濃度と発光量(カウント)との関係を表2に示す。
【0056】
【表2】
【0057】
比較例1:ツーステップサンドイッチ法によるAFPの測定
実施例1(1)で調製した抗ヒトAFPポリクローナル抗体コートビーズ(直径=3.2mm)3個を入れた反応チューブに、実施例1(3)で調製したAFPの希釈列溶液0.1mlを加え37℃において5分間振盪反応した。
反応液から液体部分を吸引除去した後、残留したビーズをツイーンPBSで4回洗浄した。抗体濃度250ng/mlに調整した、実施例1(2)で調製したアクリジニウムエステル標識化抗ヒトAFPモノクローナル抗体0.1mlを前記の反応チューブに加え、37℃において5分間振盪反応した。
反応液から液体部分を吸引除去した後、残留したビーズをツイーンPBSで4回洗浄した。反応チューブに40mM塩酸液0.1mlを加えた後、発光検出器にセットし、暗所で0.1M水酸化ナトリウムと20mM過酸化水素とを含む発光開始剤0.3mlを加えて発光量を測定した。
AFP濃度と発光量(カウント)との関係を表3に示す。
【0058】
【表3】
【0059】
【発明の効果】
本発明方法によれば、免疫学的測定法を短時間で行うことができ、更に被検試料中に広い濃度範囲で存在する測定対象物質にも対応した、正確な定量を行うことができる。
Claims (6)
- (1a)標識物質で標識され、測定対象物質と特異的に結合する第1のモノクローナル抗体又はその抗体フラグメントと、被検試料とを接触させる工程、
(1b)前記測定対象物質と特異的に結合する第2の抗体であって、しかも測定対象物質への結合に関して第1モノクローナル抗体とは競合しない前記第2抗体又はその抗体フラグメントをその表面に担持する第2抗体固定化不溶性担体と、前記工程(1a)で形成された反応液とを接触させる工程、
(2)第2抗体固定化不溶性担体と反応しなかった成分を反応液から除去する工程、
(3)前記標識物質で標識され、前記測定対象物質と特異的に結合する第3の抗体又はその抗体フラグメントと、前記工程(2)で得られた反応液とを接触させる工程、
(4)未反応の標識化第3抗体を反応液から除去する工程、及び
(5)前記工程(4)で得られた反応液において、前記標識に由来する信号を検出する工程
をこの順序で実施することを特徴とする、免疫学的分析方法。 - 前記標識物質が、発光物質、蛍光物質、酵素又は放射性同位元素である、請求項1に記載の方法。
- 第2抗体がポリクローナル抗体である、請求項1又は2に記載の方法。
- 第3抗体がモノクローナル抗体である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
- 第3抗体が第1抗体と同一のモノクローナル抗体である、請求項4に記載の方法。
- 第3抗体がポリクローナル抗体である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
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