JP3706064B2 - シール形蓄電池 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、蓄電池を外気とは完全に遮蔽したものや、内部の発生ガスにより内圧が以上に高くなった場合にのみ、該発生ガスを外部に放出する安全弁装置を有するシール形蓄電池に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
最近の自動車は電装部品の増加に伴い、消費電力が大幅に増加する傾向にある。また、燃費向上と排出ガスの削減も大きな課題である。そのため、電源電圧を従来の14Vから42Vに増やし、同時に36V電池を利用した簡易型のハイブリッドシステムを導入して燃費と排ガス問題を解決する事が検討され、一部では既に実用化されている。
【0003】
このシステムに用いる36V電池には、コスト面でシール形の鉛蓄電池の採用が有望である。また、外形寸法は規格のDサイズやBサイズ(蓄電池型式表示中、幅×高さ区分を示すアルファベットにより通常この様に呼ばれる)が主流と見られる。
【0004】
この様な36V電池は、1個の電槽内を隔壁により目の字状に区切った9セルのモノブロック電槽を用いたシール形の鉛蓄電池を2個互いに密接して用いたり、1個の電槽内を隔壁により中央で2分すると共に、2分された各室を該中央の隔壁に直交する8枚の隔壁により区切って、電槽内を田の字状に区切った18セルのモノブロック電槽を用いたシール形の鉛蓄電池が採用される。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
シール形鉛蓄電池は、充電末期に正極から発生する酸素ガスを、負極と反応させて還元する事により電解液の減少を抑制するため、完全なメンテナンスフリー化ができる。また、電解液の量は、吸液性の高いガラスセパレータを用い、遊離液の無い程度に制限されているため、ポジションフリー化もできる。このため、液式鉛蓄電池に代わって自動車用として使用される様になりつつある。しかし、充電中に正極で発生した酸素ガスを負極で消費する反応は大きな発熱を伴う。また、酸素ガスの消費を円滑に行わせる目的で、電解液量を少なくしているために電池の熱容量が小さい。従って、電池温度が上昇し易い欠点がある。
【0006】
また、DサイズやBサイズの一体型電池では、従来6セルであった物が、36V電池では18セルが密着して並ぶ事になる。そのため、従来と比較して、著しく温度上昇が大きくなり、特に中央部分は周辺に比べ温度上昇が顕著となる。その結果、セル間に温度差が生じる。温度の高いセルと低いセルは充電効率やガス吸収性能が異なるために、セル間の充電状態が異なり、充放電を繰り返すうちにアンバランスな状態が拡がる。そして、温度上昇が顕著で過充電となる中央部のセルの劣化が進み、それが原因で電池全体が寿命に達する事となる。
【0007】
この問題を解決するには、電池中央部に位置するセルの温度を下げる必要がある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題を解決する為に、請求項1に記載の発明では電槽と蓋に、蓄電池の上面に開口する通気孔を形成すると共に、該電槽には、該通気孔に連接して側面に開口する連通孔が形成されて該電槽を2分し、該2分された各室は通気孔に直交する隔壁により多数のセル室に区画されてそれぞれのセル室に極板群が収納されていると共に、通気孔は少なくとも上下方向に形成されたリブにより3分割し、そのリブの下端は電槽側面に開口する連通孔の開口部の上端と同一かまたはそれより上方に位置させたものであり、請求項2に記載の発明では蓄電池の上面に開口する通気孔の幅を5〜10mmとしたものであり、請求項3に記載の発明では蓄電池の上面に開口する通気孔を分割するリブを、2分された室を多数のセル室に区画形成する隔壁と対応する位置に設けたものであり、請求項4に記載の発明では18個のセル室を有し各セル室内に収納された極板群は互いに直接に接続されているものであり、請求項5の発明では蓄電池の上面に開口する通気孔を分割するリブが、2分された室を各セル室に区画形成する隔壁と対応する位置に設けられていると共に、端部から3つ目のセル室と4つ目のセル室および6つ目のセル室と7つ目のセル室を区画する隔壁に対応する位置に設けられたリブを他のリブに比し長くしたものである。
【0009】
【作用】
蓄電池にその上面に開口する通気孔を設けると共に、これを少なくとも3分割し、更にこの通気孔を電槽側面に開口する連通孔に連接する事により、該側面から空気を通気孔に容易に導くことが出来ると共に、その流れを均一にし得て、全体的に空気を自然対流させることが出来、それによって、温度上昇を全体的に抑制出来、又リブ表面からの放熱による冷却効果も得られるものである。
【0010】
尚、通気孔の幅は5〜10mmが良く、5mm以下では充分な温度上昇の抑制が出来ず、又、10mm以上にしても通気孔による効果が飽和すると共に、所定の寸法の蓄電池を得ようした場合、極板群収納部分であるセル室の体積が少なくなりその分蓄電池容量が少なくなり好ましくない。
【0011】
更に、リブの位置を隔壁と対応する位置に設けることにより、電槽全体の強度を高めることが出来る。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明は、極板群が収納された電槽とその電槽上部の開口部を蓋により閉塞したシール形蓄電池において、蓄電池の電槽から蓋に至りその蓋上面に開口する通気孔を形成し、電槽には、該通気孔に連接し側面に開口する連通孔を形成し、更には、通気孔が、その上下方向に形成されたリブにより少なくとも3分割されているもので、該リブの下端は電槽側面に開口する連通孔の開口部の上端と同一かまたはそれより上方に位置させたものである。
【0013】
これら通気孔や連通孔を形成する事により、空気は自然対流し、蓄電池の充放電の繰り返しにより発熱して通気孔や連通孔内の空気が暖められても滞留することなく通気孔の上方へ抜け出ると共に、電槽側面に開口した連通孔から外の空気が入り込み、空気の自然対流により蓄電池の過度な温度上昇を防止するものである。
【0014】
以下、詳細な実施例を図に基づき説明する。
【0015】
【実施例1】
図1は本発明1実施例シール形鉛蓄電池1を示す図である。2はポリプロピレン等の合成樹脂からなる電槽、3は同材質からなる蓋である。
【0016】
該蓄電池1は図示の通り、長手方向の中央部に蓋3上面に開口し、該上面から電槽2に到る通気孔4が形成されている。この通気孔4は蓋3上面の端部を除きほぼ全長に渡り開口して形成されている。そしてその下方に電槽2の両側壁5、5に高さ50mmで開口する連通孔6が形成され、電槽2を2分する様に設けられている。
【0017】
更に、該連通孔4はリブ7により7分割されその下端は電槽2の側面5に開口する連通孔6の開口部8の上端より上方に位置する様にし、その内2つのリブのみその下端を該開口部8の上端と同じ位置になる様に形成したものである。
【0018】
尚、連通孔6は電槽2の側面のみならず、その底面にも開口するものとした。
【0019】
図2に示されるものは、上記実施例で用いた電槽2の上部開口部を示すものである。図示の通り、該電槽2は、長手方向中央に幅10mmの通気孔4とその下方に続く連通孔を設けて内部を2分し、その左右の室に各々9つのセル室9を隔壁10により区画形成した。
【0020】
尚、該電槽2は図示の通り、通気孔4は端部を除く部分に設け、両端部には形成せず、両端部は隔壁10aにより区画して2分したものである。
【0021】
そして、該通気孔4はそれぞれ隔壁10に対応する部分に設けたリブ7により7分割されている。そして図1に示す通り、2つのリブ、即ち、電槽2内の左右のいずれかの室において、端部から3つ目のセル室と4つ目のセル室を区画する隔壁に対応する部分に形成されたリブ7aと6つ目のセル室と7つ目のセル室を区画する隔壁に対応するリブ7bの2つのみを下方に長く形成し、その下部を電槽2の側壁5に形成した連通孔6の開口部8の上端と同じ位置にしたものである。これらの構造は電槽2の成形時に一体に成形した。
【0022】
この様に成形した電槽2の各セル室9に例えば鉛−カルシウム系の鉛合金からなる基板にそれぞれ正極活物質、負極活物質を塗布充填した正負極板を保液性に優れたガラスマットセパレータを介して交互に積層した極板群を収納して、各極板群を直列接続した後、該電槽2の通気孔4を除きその上端開口部を蓋で閉塞し、希硫酸からなる電解液を注液してシール形鉛蓄電池を製造した。
【0023】
尚、蓋の詳細は図示しないが、その裏面に電槽2の上部開口部と同様の周側壁、隔壁、通気孔およびリブを有し、更には、該蓋を電槽に施した際の各セル室にそれぞれ対応して1個ずつ安全弁用の中空の円筒状孔が蓋上面に突出形成されその上部にゴム弁が施されているものであり、蓋上面に覆い蓋(図1に符号3aとして示す)が施され安全弁室を形成し、該覆い蓋3aに図示しないが、小さな排気孔が適宜、実施例では2個形成した。
【0024】
この覆い蓋3aには更に、図1に示す通り、幅10mmの通気孔4とリブ7が電槽および蓋のそれと対応する位置に形成されている。
【0025】
また、図示しないが蓄電池の正負極端子が蓋上面に突出して設けられているものである。
【0026】
次ぎに、実施例1に記載のシール形鉛蓄電池において、連通孔6の開口部8の高さ、通気孔4の分割数、開口部8の上端に対する通気孔を分割するリブ7の高さ、通気孔4の幅を表1に記載の通り種種変えて、室温で、充電状態(SOC)70%、放電深度(DOD)5%の条件で充放電を200回繰り返し、200回繰り返した後に、蓄電池の各セル室の温度を測定した。その結果を表1に示した。
【0027】
尚、「最高」と記載した欄の数字は測定した各セル室温度の内、最も高い値を示したセル室の温度を示し、「差」と記載した欄の数字は、蓄電池の中央に位置する端部から5つ目のセル室内の温度と端部から1つ目のセル室内との温度の差を示した。
【0028】
【表1】
Figure 0003706064
【0029】
表1において、従来品とは通気孔と連通孔が形成されていないものである。また、実施例2〜7および比較例1〜4において、通気孔の分割はいずれも通気孔を等分する様に形成した。
【0030】
この表1からも明らかな通り、本発明実施例の蓄電池は、好ましいとされる最高温度80℃以下に抑えることが出来、蓄電池の温度上昇を抑えることが出来る。また、通気孔と連通孔を形成しても、分割数が2の2分割では、比較例4に示す通り、好ましいとされる最高温度80℃以下を達成出来ず、3分割以上であっても、比較例3に示す通り、該分割するリブの下端の高さを連通孔の開口部の上端の高さより低くした場合は最高温度を80℃以下にすることが出来なかった。
【0031】
また、通気孔の幅は比較例1に示す通り12mmにしても温度上昇の抑制効果の向上がそれほど見られず、比較例2に示す通り3mm場合は最高温度を80℃以下に抑制出来なかった。
【0032】
又、実施例品は「差」の値も小さく各セル室間の温度差も小さくなっていることを示している。
【0033】
尚、上記実施例では蓄電池上面に開口する通気孔を端部には形成しなかったが、端部にも形成してその全長に渡り開口させても良い。
【0034】
【発明の効果】
以上の通り、本発明によれば、蓄電池の過度な温度上昇を防止し得、更に、温度差も従来に比し小さく抑えられ、蓄電池の温度上昇および温度差に基づく劣化を極力抑えることが出来る等の効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施例シール形鉛蓄電池の斜視図。
【図2】 実施例1のシール形鉛蓄電池の電槽の平面図。
【符号の説明】
1…シール形鉛蓄電池
2…電槽
3…蓋
4…通気孔
5…側面
6…連通孔
7…リブ
8…開口部

Claims (5)

  1. 極板群が挿入された電槽とこれに施される蓋を備えるシール形蓄電池において、該電槽と蓋には蓄電池の上面に開口する通気孔が形成され、該電槽には、該通気孔に連接して側面に開口する連通孔が形成されて該電槽を2分し、該2分された各室は通気孔に直交する隔壁により多数のセル室に区画されてそれぞれのセル室に極板群が収納されていると共に、通気孔は少なくとも上下方向に形成されたリブにより3分割され、そのリブの下端は電槽側面に開口する連通孔の開口部の上端と同一かまたはそれより上方に位置することを特徴とするシール形蓄電池。
  2. 蓄電池の上面に開口する通気孔の幅が5〜10mmであることを特徴とする請求項1に記載のシール形蓄電池。
  3. 蓄電池の電槽は、その内部が通気孔と連通孔により2分され、該2分された各室は通気孔に直交する隔壁により多数のセル室に区画されてそれぞれのセル室に極板群が収納されていると共に、蓄電池の上面に開口する通気孔を分割するリブが、2分された室を多数のセル室に区画形成する隔壁と対応する位置に設けられていることを特徴とする請求項1および2に記載のシール形蓄電池。
  4. 電槽内の2分された各室は通気孔に直交する8枚の隔壁によりおのおの9個のセル室に区画形成され、蓄電池が18個のセル室を有し、各セル室内に収納された極板群は互いに直接に接続されていることを特徴とする請求項1乃至3に記載のシール形蓄電池。
  5. 蓄電池の上面に開口する通気孔を分割するリブが、2分された室を各セル室に区画形成する隔壁と対応する位置に設けられていると共に、端部から3つ目のセル室と4つ目のセル室および6つ目のセル室と7つ目のセル室を区画する隔壁に対応する位置に設けられたリブを他のリブに比し長くした事を特徴とする請求項4に記載のシール形蓄電池。
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