JP3705199B2 - シリンダヘッドの冷却水通路形成方法および該通路形成用中子 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、サーモスタットハウジングを有するシリンダヘッドの冷却水通路形成方法および該通路用中子に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
シリンダヘッドの冷却水通路には、サーモスタットとバイパス通路が設けられて、ラジエータを通さずに冷却水を循環できる通路が設けられている(例えば、実開平7−35741号公報)。上下2段に冷却水通路が設けられたシリンダヘッドでは、シリンダヘッドの一方の側面にサーモスタットハウジングが設けられると共に、この一方の側面から他方の側面に向ってバイパス通路が設けられて、サーモスタットハウジングとバイパス通路を連通させた構造のものが知られている。
【0003】
このようなシリンダヘッドの上下2段の冷却水通路の形成方法は、従来図2のような中子を用いて行われている。図において、(a)が下段冷却水通路形成用中子100であり、(b)が上段冷却水通路形成用中子200である。図に明らかなように、気筒中心(cyl.中心)が4箇所設けられており、直列4気筒のエンジンのためのシリンダヘッドを製造するための中子100、200である。
【0004】
サーモスタットハウジング形成用中子201は図の(b)のように上段冷却水通路形成用中子200の端部一側にオーバーハング状態で一体に設けられている。また、バイパス通路形成用中子101は、図の(a)のように、下段冷却水通路形成用中子100の端部外側に設けられ、製品(シリンダヘッド)の外部に張り出す巾木102、103を介して下段冷却水通路形成用中子100と一体にされている。
【0005】
シリンダヘッドを製造して内部に上下2段の冷却水通路を形成する際には、図3に示すように、前記下段冷却水通路形成用中子100を下にし、その上に上段冷却水通路形成用中子200を重ねて主型300内に固定する。主型300内で、上、下段冷却水通路形成用中子100、200を固定するために、巾木302、303が更に必要となっている。即ち、前記バイパス通路形成用中子101を一体化した巾木102と対応するようにサーモスタットハウジング形成用中子201から巾木302を一体に設けると共に、巾木103と対応するように上段冷却水通路形成用中子200から巾木303を一体に設け、これらの巾木102、103、302、303を製品の外部で固定するようにしている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、シリンダヘッドを製造する際には、冷却水通路形成用中子を強固に固定することが重要であり、また、精度良く固定することが重要である。この点、図2、3に示した冷却水通路形成用中子100、200の固定方法は巾木102、103、302、303によって精度良く堅固に固定するには有効であったが、これら巾木102、103、302、303が製品(シリンダヘッド)の外側に設けられるために、中子が大型化するばかりでなく、中子の強度や成形上の理由で形状に制約を受ける問題があった。また、図4に示すように、理想的な製品外形が線400に示すような形状であるにもかかわらず、巾木(102、302)の内側に駄肉401が付いてしまう問題もあった。
【0007】
本発明は、上記の諸事情を背景としてなされたものであり、冷却水通路形成用中子の大型化を避けることができるシリンダヘッドの冷却水通路形成方法および該通路用中子を提供することを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成する本発明のシリンダヘッドの冷却水通路形成方法のうち、請求項1記載の発明は、冷却水通路が複数に分離して形成されているシリンダヘッドの冷却水通路形成方法において、
少なくとも一つの冷却水通路形成用中子に、開口部形成部分とボトムバイパス孔形成部分を有するサーモスタットハウジング形成用中子を一体に設け、他の少なくとも一つの冷却水通路形成用中子に接続部形成部分を有するバイパス通路形成用中子を一体に設け、これら2つの冷却水通路形成用中子を組んで、前記サーモスタットハウジング形成用中子の開口部形成部分とボトムバイパス孔形成部分および前記バイパス通路形成用中子の接続部形成部分とバイパス通路下巾木を縦方向に沿って位置させて前記ボトムバイパス孔形成部分と前記接続部形成部分とを重ね合わせ、前記サーモスタットハウジング形成用中子およびバイパス通路形成用中子に加わる荷重を前記ボトムバイパス孔形成部分と前記接続部形成部分との重ね合わせ面を介して前記バイパス通路下巾木によって支持することを特徴とする。
【0009】
請求項1記載の発明によれば、サーモスタットハウジング形成用中子の開口部形成部分とボトムバイパス孔形成部分、および、バイパス通路形成用中子の接続部形成部分とバイパス通路下巾木を製品内で縦方向に沿って重ねることができ、製品の外部に巾木を設けることなく冷却水通路の形成を行うことができる。したがって、冷却水通路形成用中子の大型化を避け、また製品に駄肉が付かないようにすることができる。
【0010】
請求項2記載の発明は、請求項1の発明において、前記サーモスタットハウジング形成用中子の開口部形成部分とボトムバイパス孔形成部分、および前記バイパス通路形成用中子の接続部形成部分とバイパス通路下巾木が鉛直方向に沿って位置していることを特徴とする。
【0011】
請求項2記載の発明によれば、開口部形成部分とボトムバイパス孔形成部分、および、バイパス通路形成用中子の接続部形成部分とバイパス通路下巾木が鉛直方向に沿っているので、サーモスタットハウジング形成用中子とバイパス通路用中子に加わる荷重を確実にバイパス通路下巾木で支持することができる。
【0012】
請求項3記載の発明は、上記請求項1または2の発明において、サーモスタットハウジング形成用中子を一体に設けた冷却水通路形成用中子を上にし、バイパス通路形成用中子を一体に設けた冷却水通路形成用中子を下にして、サーモスタットハウジング形成用中子のボトムバイパス孔形成部分とバイパス通路形成用中子の接続部形成部分を接するように重ね合わせることを特徴とする。
【0013】
本発明では、通常は、上段側冷却水通路と下段側冷却水通路を有する冷却水通路の形成に適用され、該通路の形成では、サーモスタットハウジング形成用中子を一体に設けた冷却水通路形成用中子を上にし、バイパス通路形成用中子を一体に設けた冷却水通路形成用中子を下にして鋳造に供する。ただし、本発明としては、これに限定されるものではなく、さらに側方通路等の他の冷却水通路を有するものであってもよい。
【0014】
請求項4記載の発明は、上記請求項1〜3のいずれかの発明において、サーモスタットハウジング形成用中子の開口部形成部分に形成された押さえ面と、ボトムバイパス孔形成部分とバイパス通路形成用中子の接続部形成部分の重ね面とバイパス通路下巾木の支持下面が互いに略平行とされることを特徴とする。
【0015】
請求項4記載の発明によれば、バイパス通路下巾木の下面を主型で支持する支持面とし、サーモスタットハウジング形成用中子の上面を押さえ面としてこれらの間に加わる荷重をこれらの面と上記重ね面を介して確実に支持することができる。この結果、冷却水通路形成用中子を堅固に固定して、固定の精度を向上することができる。
【0016】
また、請求項5記載のシリンダヘッドの冷却水通路用中子は、開口部形成部分およびボトムバイパス孔形成部分を有するサーモスタットハウジング形成用中子が一体に設けられた一の冷却水通路形成用中子と、接続部形成部分を有するバイパス通路形成用中子が一体に設けられた他の冷却水通路形成用中子とが重ねられた、冷却水通路が複数に分離して形成されているシリンダヘッドの冷却水通路形成用中子において、前記一の冷却水通路形成用中子の一端に、バイパス孔形成部分が内側を向き開口部形成部分が外側を向くようにサーモスタットハウジング形成用中子が設けられ、前記他の冷却水通路形成用中子の一端に、内側に向けた曲がり部が形成され該曲がり部の先端側に接続部形成部分が位置するようにバイパス通路用中子が設けられ、該曲がり部の外側部分に巾木支持部が設けられて、前記ボトムバイパス孔形成部分と前記接続部形成部分とが重なり合っているとともに、前記開口部形成部分外側面と前記巾木支持部に連なる巾木の外側支持面との間に加わる荷重方向に略沿って前記開口部とバイパス孔形成部分および接続部形成部分と巾木支持ならびに巾木外側支持面とが位置していることを特徴とする。
【0017】
なお、上記曲がり部の外側部分に設けられる巾木は、該曲がり部と一体のものでも別体のものであってもよい。一体のものでは上記巾木支持部は曲がり部と巾木との連結部分となる。また、上記中子は、一の中子と他の中子の他に、他の中子を構成に含むものであってもよい。
そして、請求項5記載の構成によれば、前記開口部形成部分外側面と前記巾木外側支持面との間に加わる荷重を、巾木と開口部のみで支持することができ、余分な巾木が不要になる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のシリンダヘッドの冷却水通路形成方法について、上下2段に冷却水通路を形成する実施の形態を図1を参照して説明する。この実施形態においても、下段冷却水通路形成用中子10にバイパス通路形成用中子11を一体に設け、上段冷却水通路形成用中子20にサーモスタットハウジング形成用中子21をオーバーハング状態で一体に設け、主型30内で、下段冷却水通路形成用中子10を下にし、その上に上段冷却水通路形成用中子20を重ねる点は、図2を参照して説明した従来の方法と同様である。
【0019】
本発明においては、前記バイパス通路形成用中子11の端部を上方に湾曲する曲がり部11aとし、その下側にバイパス通路下巾木12を一体に設ける。曲がり部11aとバイパス通路下巾木12との連結部が本発明の巾木支持部となる。バイパス通路下巾木12の下面12aは水平に形成するとともに、このバイパス通路下巾木12の鉛直方向上方に、バイパス通路の端部となる接続部形成部分13を配し、その上面13aを水平に形成する。これにより下巾木12の下面12aと接続部形成部分13の上面13aとが互いに平行になる。一方、上段冷却水通路形成用中子20の端部にサーモスタットハウジング形成用中子21を一体に設ける。該サーモスタットハウジング形成用中子21は、ボトムバイパス孔形成部分22が下方に形成され、開口部形成部分23が上方に位置するように形成されている。前記ボトムバイパス孔形成部分22の下面22aは水平に形成するとともに、この下面22aの上方に前記開口部形成部分23が位置している。該開口部形成部分23の一側には、前記ボトムバイパス孔形成部分22の下面22aの鉛直方向上方に対応させて、水平押さえ面23aを形成する。ボトムバイパス孔形成部分22の下面22aと開口部形成部分23の水平押さえ面23aとは互いに平行とする。
【0020】
主型30内に、上記下段冷却水通路形成用中子10を下にして、その上に上段冷却水通路形成用中子20を重ねて設置するに当たっては、バイパス通路形成用中子11に設けたバイパス通路下巾木12の下面12aを主型30に着座させて支持するとともに、接続部形成部分13の上面13aの上に、サーモスタットハウジング形成用中子21のボトムバイパス孔形成部分22の下面22aを重ね合わせる。
【0021】
このようにして重ねることで、下段冷却水通路形成用中子10側のバイパス通路下巾木12、接続部形成部分13、上段冷却水通路形成用中子20側のボトムバイパス孔形成部分22および開口部形成部分23が鉛直線上に沿ってそれぞれ位置する。また、各部の面、すなわち、バイパス通路下巾木12の下面12a、バイパス通路下巾木12の支持部、接続部形成部分13の上面13a、上段冷却水通路形成用中子20側のボトムバイパス孔形成部分22の下面22aおよび開口部形成部分23の水平押さえ面23aも鉛直線上に沿って位置することになる。
そこで、サーモスタットハウジング形成用中子21の開口部形成部分23に形成した水平押さえ面23aを介して上型31で押さえることで、サーモスタットハウジング形成用中子21とバイパス通路形成用中子11とをバイパス通路下巾木12で支持し、上下の冷却水通路形成用中子10、20を固定する。上記により水平押さえ面23aとバイパス通路下巾木12の下面12aに加わる荷重方向に沿って下面12a、バイパス通路下巾木12の支持部、上面13a、下面22aおよび水平押さえ面23aが位置していることになる。
【0022】
このようにしてシリンダヘッドに冷却水通路を形成することによって、上下の冷却水通路形成用中子10、20を固定するための巾木を製品の外側に設けることなくサーモスタットハウジング形成用中子とバイパス通路形成用中子を支持することができる。この結果、中子の大型化を避けることができ、中子のためのコストを低減し、しかも、製品の外側形状の設計も巾木の存在を考慮することなくできるので、設計の自由度を向上することもできる。また、巾木を製品の外側に設けないために駄肉が付く原因を除くこともできる。
【0023】
バイパス通路形成用中子11に設けたバイパス通路下巾木12を主型30で支持し、そして、サーモスタットハウジング形成用中子21を上型31で押さえることで、上下の冷却水通路形成用中子10、20を堅固に固定することができ、しかも固定の精度も良くできるので、製品の内部に上下の冷却水通路を正確に形成することができ、品質の向上を図ることができる。
【0024】
前記のように、サーモスタットハウジング形成用中子21のボトムバイパス孔形成部分22の下面22aを、バイパス通路形成用中子11の接続部形成部分13の上面13aに接するようにすることで、サーモスタットハウジングとバイパス通路が互いに連通した状態で製品を製造することができる。
【0025】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明のシリンダヘッドの冷却水通路形成方法によれば、冷却水通路形成用中子に設けられるサーモスタットハウジング形成用中子の開口部形成部分とボトムバイパス孔形成部分、および、バイパス通路形成用中子の接続部形成部分とバイパス通路下巾木を縦方向、好ましくは鉛直線上に配置してバイパス通路下巾木のみで支持できるようにしたので、製品外に巾木を設ける必要がなく、駄肉の発生を回避でき、さらに冷却水通路形成用中子が大型化しないようにできる。また、冷却水通路形成用中子を堅固にしかも精度良く固定することができ、冷却水通路を製品内に正確に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施形態における上、下段冷却水通路形成用中子を重ねて固定した状態の一部正面図である。
【図2】 従来の方法を説明する図で、(a)は下段冷却水通路形成用中子の平面図、(b)は上段冷却水通路形成用中子の平面図である。
【図3】 同じく上、下段冷却水通路形成用中子を重ねて固定した状態の正面図である。
【図4】 従来の方法における駄肉を説明する部分図である。
【符号の説明】
10 下段冷却水通路形成用中子
11 バイパス通路形成用中子
11a 曲がり部
12 バイパス通路下巾木
12a 下面
13 接続部形成部分
13a 上面
20 上段冷却水通路形成用中子
21 サーモスタットハウジング形成用中子
22 ボトムバイパス孔形成部分
22a 下面
23 開口部形成部分
23a 水平押さえ面
30 主型
31 上型
Claims (5)
- 冷却水通路が複数に分離して形成されているシリンダヘッドの冷却水通路形成方法において、
少なくとも一つの冷却水通路形成用中子に、開口部形成部分とボトムバイパス孔形成部分を有するサーモスタットハウジング形成用中子を一体に設け、他の少なくとも一つの冷却水通路形成用中子に接続部形成部分を有するバイパス通路形成用中子を一体に設け、これら2つの冷却水通路形成用中子を組んで、前記サーモスタットハウジング形成用中子の開口部形成部分とボトムバイパス孔形成部分および前記バイパス通路形成用中子の接続部形成部分とバイパス通路下巾木を縦方向に沿って位置させて前記ボトムバイパス孔形成部分と前記接続部形成部分とを重ね合わせ、前記サーモスタットハウジング形成用中子およびバイパス通路形成用中子に加わる荷重を前記ボトムバイパス孔形成部分と前記接続部形成部分との重ね合わせ面を介して前記バイパス通路下巾木によって支持することを特徴とするシリンダヘッドの冷却水通路形成方法。 - 前記サーモスタットハウジング形成用中子の開口部形成部分とボトムバイパス孔形成部分、および前記バイパス通路形成用中子の接続部形成部分とバイパス通路下巾木は、鉛直方向に沿って位置していることを特徴とする請求項1記載のシリンダヘッドの冷却水通路形成方法。
- サーモスタットハウジング形成用中子を一体に設けた冷却水通路形成用中子を上にし、バイパス通路形成用中子を一体に設けた冷却水通路形成用中子を下にして重ねるように組んで、サーモスタットハウジング形成用中子のボトムバイパス孔形成部分とバイパス通路形成用中子の接続部形成部分を接するように重ね合わせることを特徴とする請求項1または2に記載のシリンダヘッドの冷却水通路形成方法。
- サーモスタットハウジング形成用中子の開口部形成部分に形成された押さえ面と、ボトムバイパス孔形成部分とバイパス通路形成用中子の接続部形成部分の重ね面とバイパス通路下巾木の支持下面が互いに略平行とされることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のシリンダヘッドの冷却水通路形成方法。
- 開口部形成部分およびボトムバイパス孔形成部分を有するサーモスタットハウジング形成用中子が一体に設けられた一の冷却水通路形成用中子と、接続部形成部分を有するバイパス通路形成用中子が一体に設けられた他の冷却水通路形成用中子とが重ねられた、冷却水通路が複数に分離して形成されているシリンダヘッドの冷却水通路形成用中子において、
前記一の冷却水通路形成用中子の一端に、バイパス孔形成部分が内側を向き開口部形成部分が外側を向くようにサーモスタットハウジング形成用中子が設けられ、前記他の冷却水通路形成用中子の一端に、内側に向けた曲がり部が形成され該曲がり部の先端側に接続部形成部分が位置するようにバイパス通路用中子が設けられ、該曲がり部の外側部分に巾木支持部が設けられて、前記ボトムバイパス孔形成部分と前記接続部形成部分とが重なり合っているとともに、前記開口部形成部分外側面と前記巾木支持部に連なる巾木の外側支持面との間に加わる荷重方向に略沿って前記開口部形成部分とバイパス孔形成部分および接続部形成部分と巾木支持ならびに巾木外側支持面とが位置していることを特徴とするシリンダヘッドの冷却水通路形成用中子。
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