JP3704506B2 - シリコーンゴム架橋体の製造方法、架橋剤組成物及び架橋体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はシリコーンゴムの架橋剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
シリコーンゴムは耐熱・耐寒性に優れ、広い温度範囲で良好な圧縮復元性を示し、耐候性・耐オゾン性・電気特性・耐熱油性・耐薬品性・耐熱水性等に優れているため、有機過酸化物等を用いて架橋させることによりアノードキャップやデフロスター等の家電用部品、防水コネクタやOリング、プラグブーツ等の自動車関連部品の他、ゴム絶縁電線被覆材、複写機ロール、医療および食品関連製品として幅広く利用されている。
シリコーンゴムとしてはジメチルシリコーンゴム、メチルビニルシリコーンゴム、メチルフェニルシリコーンゴム、フロロシリコーンゴム等が一般的に使用されており、それぞれの特徴により使い分けられている。
これらのゴムは架橋剤のみを用いて架橋/成形されることは殆どなく、多くの場合これらのゴムに乾式又は湿式シリカ等の補強性充填剤、ケイそう土やクレイ、炭酸カルシウム等の非補強性充填剤やカーボンブラック等の着色顔料が配合され、混合して得られたシリコーンゴムコンパウンドに架橋剤として有機過酸化物を必要量添加混合した後、金型や熱風炉中で必要温度/必要時間加熱してシリコーンゴム成形物が得られる。
【0003】
シリコーンゴムの架橋には一般に有機過酸化物が架橋剤として使用されているが、主な有機過酸化物としてはジベンゾイルパーオキサイド、ビス(2−メチルベンゾイル)パーオキサイド、ビス(4−メチルベンゾイル)パーオキサイド、ビス(2,4−ジクロロベンゾイル)パーオキサイド等のジアシルパーオキサイド類の他、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3等のジアルキルパーオキサイド類、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシオクトエート等のアルキルパーエステル類や1,1−ジ−t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン等のパーオキシケタール類であり、成形法、成形温度、シリコーンゴムの種類等の各種条件により架橋剤の種類や添加量が選択される。
【0004】
シリコーンゴムの成形方法としては押出し成形、射出成形、圧縮成形、トランスファー成形等が挙げられるが、シリコーンゴムの主要な用途の一つである電線被覆材用途では押し出し成形後に空気中で常圧熱風架橋(HAVとも言う)する架橋方法が取られている。
この常圧熱風架橋では架橋しようとするゴムが周囲の空気と常に接触するため、酸素による架橋阻害でゴム表面に粘着性を帯びることがないよう、架橋剤として特定の有機過酸化物のみが使用されている。この架橋方法で使用可能な架橋剤としてはビス(4−メチルベンゾイル)パーオキサイド、ビス(2−メチルベンゾイル)パーオキサイドやビス(2,4−ジクロロベンゾイル)パーオキサイド等があげられ、これらジアシルパーオキサイド類のみが酸素の悪影響を受けにくい有機過酸化物として工業的に広く利用されている。
【0005】
一方、射出成形、圧縮成形、トランスファー成形等の金型を使用した金型プレス架橋では架橋しようとするシリコーンゴム表面が周囲の空気から遮断されるため、一般的にゴム工業で使用されている汎用有機過酸化物が利用可能であり、その具体例としては架橋効率が高く、且つ安価な2,5−ジメチル−2,5−ジ−(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジクミルパーオキサイド等ジアルキルパーオキサイド類、1,1−ジ−t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン等のパーオキシケタール類の他、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシオクトエート等のアルキルパーエステル類があげられる。
【0006】
これら有機過酸化物をシリコーンゴムの架橋剤として使用する場合、有機過酸化物をそのままの形で用いることは安全性の確保が難しく且つゴムへの分散に長時間を要するため、通常、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイル等のシリコーンオイルと乾式シリカ、湿式シリカ、炭酸カルシウム、珪藻土等の無機充填剤を配合した均一なペースト状またはシリコーンゴム及び更に必要に応じてシリコーンオイル及び着色剤等を配合したを固形状の架橋剤とし、シリコーンゴムへの分散性を向上させる工夫がなされている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながらシリコーンゴムの常圧熱風架橋でビス(4−メチルベンゾイル)パーオキサイド等のジアシルパーオキサイド類を架橋剤として使用した場合、得られたシリコーンゴム架橋体の表面の粘着性(タック)が完全に取りきれないこと、架橋速度が遅いため生産性が低いこと、架橋ゴム中に気泡(ボイド)が発生しやすいこと等の重大な欠陥を擁している。特に圧縮永久歪みが金型プレス架橋によって得られたシリコーンゴムに比べて劣るため、この架橋方法により得られる架橋ゴムの使用用途が限定されたものとなっている。
【0008】
一方、金型プレス架橋でもゴムの中に気泡が残った場合、気泡中の酸素の影響でその周辺のゴムが部分的に未加硫状態となり、著しく粘着性を帯びることや、型からはみ出したバリ部分も空気と接触するために未加硫状態となることから、架橋ゴムの離型性をはなはだ悪化させている。このように有機過酸化物を使用したシリコーンゴムの架橋技術においては、架橋方法によらず酸素による架橋阻害が深刻な問題であり、生産性を低下させる大きな原因ともなっている。
【0009】
シリコーンゴムの常圧熱風架橋で架橋体の表面粘着を防止する公知の技術としては特定の有機過酸化物とメチルハイドロジェンシリコーンオイル(通称H−オイル)を併用した特開昭54−48870号、特開平2−124977、特公平04−15263号および特公平4−15263号があるが、この方法で得られた架橋ゴムは表面粘着はある程度改善されるが、H−オイルを配合したシリコーンゴムコンパウンドが比較的短期間でスコーチを起こしたり、最も重要である機械的物性が低下する弊害があった。また特開平10−182972号ではメチル置換ベンゾイルパーオキサイドを用いて表面粘着性を改良する技術が示されているが、この方法によっても改良効果は十分でなく、実用化されてはいない。
【0010】
このようにシリコーンゴムの常圧熱風架橋による表面粘着性を改良する技術はいまだ種々の面で不完全であり、実用性に乏しいのが現実である。また金型プレス架橋においても空気との接触部位で発生するシリコーンゴムの不完全架橋による離型性不良を改良する実用化された技術はなく、架橋技術の改良が強く求められている。
【0011】
【課題を解決するための手段】
これらシリコーンゴムの架橋技術では未だ重大な欠陥が解決されておらず、これらを解決すべく鋭意検討した結果、有機過酸化物に下記式(1)で示されるリン酸または酸性リン酸エステル(以降、これらを総称して本発明ではリン酸化合物とする)を併用することにより常圧熱風架橋においても金型プレス架橋においても従来の技術と比べて、得られたシリコーンゴム架橋体の粘着性が極めて少ないばかりか、架橋速度が向上しボイドのない且つ機械的強度に優れたシリコーンゴム架橋体が得られることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
【0013】
(式中、R1、R2およびR3はそれぞれ独立して水素原子または炭素数1から18の炭化水素残基を表し、かつ少なくとも1つは水素原子を表す。)
【0014】
すなわち本発明は、
(A)上記式(1)で示されるリン酸化合物と有機過酸化物を併用することを特徴とするシリコーンゴム架橋体の製造方法。
(B)上記式(1)で示される化合物が酸性リン酸エステルであり、かつ炭素数1から18の炭化水素残基が直鎖または分岐のアルキル基またはフェニル基であることを特徴とする前記A記載のシリコーンゴム架橋体の製造方法。
(C)有機過酸化物がパーオキシカーボネート類であり、かつ架橋体の製造を常圧熱風架橋により行うことを特徴とする前記A記載のシリコーンゴム架橋体の製造方法。
(D)パーオキシカーボネート類がビス〔t−(C4−C10)アルキルパーオキシカルボニロキシ〕(C3−C10)アルカンまたはジまたはトリ(C2〜C3)アルキレングリコール−ビス〔t−(C4−C10)アルキルパーオキシカーボネート〕である前記C記載のシリコーンゴム架橋体の製造方法。
(E)パーオキシカーボネート類が1,6−ビス(t−ブチルパーオキシカルボニロキシ)ヘキサンまたはジエチレングリコール−ビス(t−ブチルパーオキシカーボネート)であることを特徴とする前記C記載のシリコーンゴム架橋体の製造方法。
(F)有機過酸化物がジアシルパーオキサイド類であり、かつ架橋体の製造を常圧熱風架橋により行うことを特徴とする前記A記載のシリコーンゴム架橋体の製造方法。
(G)ジアシルパーオキサイド類がビス〔非置換、クロル置換または(C1〜C3)アルキル置換ベンゾイル〕パーオキサイドである前記F記載のシリコーンゴム架橋体の製造方法。
(H)ジアシルパーオキサイド類がビス(4−メチルベンゾイル)パーオキサイドである前記G記載のシリコーンゴム架橋体の製造方法。
(I)有機過酸化物がジアルキルパーオキサイド類、パーオキシカーボネート類、パーオキシケタール類またはアルキルパーエステル類であり、かつ架橋体の製造を金型プレス架橋により行うことを特徴とする前記A記載のシリコーンゴム架橋体の製造方法。
(J)前記式(1)のリン酸化合物と有機過酸化物を含有することを特徴としたシリコーンゴム用架橋剤組成物。
(K)前記A乃至I載の架橋体の製造方法により得られたシリコーンゴム架橋体。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下に本発明を詳細に説明する。
前記式(1)におけるリン酸化合物としては、式(1)においてR1、R2およびR3はそれぞれ独立して水素原子または炭素数1〜18、好ましくは炭素数3〜12の炭化水素残基であり、かつ少なくとも1つは水素原子であるリン酸化合物が挙げられる。
炭化水素残基としては、脂肪族炭化水素残基、芳香族炭化水素残基のいずれでもよく、脂肪族炭化水素残基としては直鎖または分岐したアルキル基若しくは不飽和の脂肪族炭化水素残基が挙げられ、また芳香族炭化水素残基としては置換基を有してもよいフェニル基等が挙げられる。
アルキル基の具体例としてはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、1−メチルプロピル基、2−メチルプロピル基、t−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、イソデシル基、ドデシル基、オクタデシル基等が挙げられる。また、不飽和の脂肪族炭化水素残基としては例えば上記アルキル基におけるアルキル鎖の中に不飽和二重結合を有する基等が挙げられる。
式(1)のリン酸化合物で好ましい化合物としては、モノまたはジ(C3〜C12)アルキルホスフェート等が挙げられる。
【0016】
式(1)のリン酸化合物の具体例としてはリン酸、モノメチルホスフェート、ジメチルホスフェート、モノエチルホスフェート、ジエチルホスフェート、モノ−n−プロピルホスフェート、ジ−n−プロピルホスフェート、モノイソプロピルホスフェート、ジイソプロピルホスフェート、モノ−n−ブチルホスフェート、ジ−n−ブチルホスフェート、モノ−1−メチルプロピルホスフェート、ジ−1−メチルプロピルホスフェート、モノ−2−メチルプロピルホスフェート、ジ−2−メチルプロピルホスフェート、モノ−t−ブチルホスフェート、ジ−t−ブチルホスフェート、モノペンチルホスフェート、ジペンチルホスフェート、モノヘキシルホスフェート、ジヘキシルホスフェート、モノヘプチルホスフェート、ジヘプチルホスフェート、モノオクチルホスフェート、ジオクチルホスフェート、モノ−2−エチルヘキシルホスフェート、ジ−2−エチルヘキシルホスフェート、モノノニルホスフェート、ジノニルホスフェート、モノ−n−デシルホスフェート、ジ−n−デシルホスフェート、モノイソデシルホスフェート、ジイソデシルホスフェート、モノフェニルホスフェート、ジフェニルホスフェート、ラウリルアシッドホスフェート、ステアリルアシッドホスフェート等のほか、エチル−n−プロピルホスフェート、n−ブチルイソデシルホスフェート等の非対称酸性リン酸エステル化合物も具体例としてあげられる。
【0017】
本発明で使用される有機過酸化物における好ましいパーオキシカーボネート類としては1,6−ビス(t−ブチルパーオキシカルボニロキシ)ヘキサン、1,6−ビス(1,1−ジメチルプロピルパーオキシカルボニロキシ)ヘキサン、1,6−ビス(1,1−ジメチルブチルパーオキシカルボニロキシ)ヘキサン、1,6−ビス(1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシカルボニロキシ)ヘキサン、1,6−ビス(t−ブチルパーオキシカルボニロキシ)プロパン、1,6−ビス(t−ブチルパーオキシカルボニロキシ)ヘプタン等のビス〔t−(C4−C10)アルキルパーオキシカルボニロキシ〕((C3−C10)アルカン、ジエチレングリコール−ビス(t−ブチルパーオキシカーボネート)、ジエチレングリコール−ビス(1,1−ジメチルプロピルパーオキシカーボネート)、ジエチレングリコール−ビス(1,1−ジメチルブチルパーオキシカーボネート)、ジエチレングリコール−ビス(1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシカーボネート)、トリエチレングリコール−ビス(t−ブチルパーオキシカーボネート)等のジまたはトリ(C2〜C3)アルキレングリコール−ビス〔t−(C4−C10)アルキルパーオキシカーボネート〕、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキシルカーボネート、1,1−ジメチルプロピルパーオキシ2−エチルヘキシルカーボネート、1,1−ジメチルブチルパーオキシ2−エチルヘキシルカーボネート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ2−エチルヘキシルカーボネート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、1,1−ジメチルプロピルパーオキシイソプロピルカーボネート、1,1−ジメチルブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシイソプロピルカーボネート等のt−(C4〜C10)アルキルパーオキシ(C3−C8))アルキルカーボネート等が挙げられる。
【0018】
また好ましいジアシルパーオキサイド類としてはジベンゾイルパーオキサイド、ビス(2−メチルベンゾイル)パーオキサイド、ビス(3−メチルベンゾイル)パーオキサイド、ビス(4−メチルベンゾイル)パーオキサイド、ビス(2,4−ジメチルベンゾイル)パーオキサイド、ビス(3,5−ジメチルベンゾイル)パーオキサイド、ビス(2−クロロベンゾイル)パーオキサイド、ビス(3−クロロベンゾイル)パーオキサイド、ビス(4−クロロベンゾイル)パーオキサイド、ビス(2,4−ジクロロベンゾイル)パーオキサイド、ビス(3,5−ジクロロベンゾイル)パーオキサイド等のビス〔非置換またはクロル置換若しくは(C1〜C3)アルキル置換ベンゾイル〕パーオキサイド等が挙げられる。
【0019】
また、好ましいジアルキルパーオキサイド類としてはジ〔フェニル置換を有してもよい(C3〜C12)アルキル〕パーオキサイドまたはフェニル置換を有してもよい(C3〜C12)アルキルパーオキサイド基が2つ炭素数8〜12の炭化水素架橋基を介して結合したジアルキルパーオキサイドがあげられ、具体的にはジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、1,3−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド等が挙げられる。
【0020】
また、好ましいパーオキシケタール類としては1,1−ジ−t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキサン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、2,2−ビス(1,1−ジメチルプロピルパーオキシ)ブタン、2,2−ビス(1,1−ジメチルブチルパーオキシ)ブタン、2,2−ビス(1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ)ブタン、4,4−ジ−t−ブチルパーオキシ−n−ブチルバレレート等が挙げられる。
【0021】
また、好ましいアルキルパーエステル類としては、t−ブチルパーオキシベンゾエート、1,1−ジメチルプロピルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、1,1−ジメチルプロピルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、1,1−ジメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサヒドロテレフタレート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、1,1−ジメチルプロピルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、1,1−ジメチルブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート等が挙げられる。
【0022】
本発明のシリコーンゴム架橋体の製造方法においては、有機過酸化物を使用したシリコーンゴムの架橋方法はいずれも使用することができ、その主な方法としては常圧熱風架橋及び金型プレス架橋を挙げることができる。
本発明の常圧熱風架橋で使用される有機過酸化物としてはパーオキシカーボネート類およびジアシルパーオキサイド類が好ましい。パーオキシカーボネート類ではビス〔t−(C4−C10)アルキルパーオキシカルボニロキシ〕((C3−C10)アルカン及びジまたはトリ(C2〜C3)アルキレングリコール−ビス〔t−(C4−C10)アルキルパーオキシカーボネート〕が好ましく、その中で特に1,6−ビス(t−ブチルパーオキシカルボニロキシ)ヘキサンおよびジエチレングリコール−ビス(t−ブチルパーオキシカーボネート)が好ましい。また、ジアシルパーオキサイド類ではビス〔非置換またはクロル置換若しくは(C1〜C3)アルキル置換ベンゾイル〕パーオキサイドが好ましく、その中で特に好ましいのはビス(4−メチルベンゾイル)パーオキサイドおよびビス(2−メチルベンゾイル)パーオキサイドである。
【0023】
本発明の金型プレス架橋で使用される好ましい有機過酸化物としてはジアルキルパーオキサイド類、パーオキシカーボネート類、パーオキシケタール類およびアルキルパーエステル類等が挙げられる。ジアルキルパーオキサイド類で好ましいものとしてはジ〔フェニル置換を有してもよい(C3〜C12)アルキル〕パーオキサイドまたはフェニル置換を有してもよい(C3〜C12)アルキルパーオキサイド基が2つ炭素数8〜12の炭化水素架橋基を介して結合したジアルキルパーオキサイド類が挙げられ、特にジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサンが好ましい。パーオキシカーボネート類では上記常圧熱風架橋の場合と同じである。パーオキシケタール類では1,1−ジ−t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンが好ましい。また、アルキルパーエステル類ではt−ブチルパーオキシベンゾエートが好ましい。
【0024】
本発明方法によってシリコーンゴムの架橋体を製造するには、式(1)のリン酸化合物と有機過酸化物の共存下にシリコーンゴムを架橋すればよく、シリコーンゴムへの該リン酸化合物および有機過酸化物の添加はシリコーンゴムの架橋工程において両者が共存している状態にすることができるものであれば、いかなる方法でもよい。通常はシリコーンゴム、例えば必要に応じて補強性シリカその他の無機充填剤などを配合したシリコーンゴムコンパウンド等へ、該リン酸化合物および有機過酸化物を任意の順序で添加混合した後、架橋すればよい。シリコーンゴムへの該リン酸化合物および有機過酸化物の添加順序は任意であるが、通常は該リン酸化合物を先に添加混合して、次いで有機過酸化物を添加混合するかまたは両者を同時に、好ましくは両者を予め配合した架橋剤組成物として添加混合するのが好ましい。該架橋剤組成物として添加する方法は工程を簡略化する上でも、また均一な配合物を得られ易い点でも好ましい。
【0025】
式(1)のリン酸化合物の添加量はシリコーンゴムの架橋に改良効果をもたらす範囲であれば特に制限はなく、シリコーンゴム100質量部に対して通常0.01質量部以上、好ましくは0.03質量部以上であり、上限については通常5.0質量部以下、好ましくは1.0質量部以下である。リン酸化合物の添加量があまり少なすぎるとシリコーンゴムの架橋に際し、何ら改良効果を発揮せず、またあまり多すぎる場合にはシリコーンゴム架橋体の機械的強度が低下するため好ましくない。
前記式(1)で示されるリン酸化合物は一種類でも、また二種類以上を併用してよい。二種類以上を使用するときは、任意の順序で添加すればよいが、事前に均一に混合して使用する方が好ましい。
【0026】
有機過酸化物の添加量は目的とする架橋シリコーンゴムの性質、用途などにより異なるので一概に言えないが、有機過酸化物を工業的純品(90〜95%)換算でシリコーンゴム100質量部に対して通常0.05質量部以上、好ましくは0.1質量部以上であり、かつ通常5.0質量部以下、好ましくは2.0質量部以下である。有機過酸化物があまり低い添加量では必要とされる架橋ゴムの物性が得られず、逆に添加量が多すぎる場合では架橋ゴムに残存する有機過酸化物またはその分解生成物によりゴムの耐熱性が著しく低下する結果となる。また安全化のためこれら有機過酸化物を溶剤で希釈して使用する場合やゴムへの分散性や取り扱い易さを考慮した組成物では、その組成物の有機過酸化物含有量から計算して上記の添加量範囲内になるよう該組成物の添加量を決めればよい。
【0027】
該リン酸化合物及び有機過酸化物はそのままシリコーンゴムへ添加してもよいが、取り扱い上の利便性、安全性、シリコーンゴムへの分散性などの点から、希釈剤例えば、トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤および脂肪族炭化水素溶剤例えばヘキサン、ヘプタン、ノナン、オクタン等のノルマルパラフィン系溶剤またはイソパラフィン系溶剤等の脂肪族炭化水素系溶剤の他、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイルやメチルハイドロジェンシリコーンオイル(通称H−オイル)および、ポリエーテルやアミン、エポキシ等で変性した変性シリコーンオイル等のシリコーンオイルおよび、その他のシリコーンゴムに悪影響を与えない溶剤やシリまたはシリコーンゴムなどの固体の希釈剤等で希釈して使用することも可能である。これらの希釈剤は適宜1種または2種以上を併用してもよい。また該リン酸化合物及び有機過酸化物を、それぞれ上記の希釈剤で希釈して使用しても、また両者を一緒に上記の希釈剤で希釈して使用してもよい。希釈剤としてシリカやシリコーンゴムを使用すると架橋するシリコーンゴムへの分散性の向上やハンドリングの向上等の点で好ましい。
【0028】
好ましい添加方法の一つは前記したように式(1)のリン酸化合物と有機過酸化物を予め配合した後、シリコーンゴムへ添加するものである。両者のみを所望の比率で混合して架橋剤組成物として添加してもよいし、また所望により、更に希釈剤等の添加剤を加えて、両者と添加剤を含む架橋剤組成物として添加してもよい。該リン酸化合物、有機過酸化物、シリカ(例えば親水性シリカまたは疎水性シリカ)、シリコーンオイルやシリコーンゴムを配合し混練りしたペーストまたはガム状の形態とした架橋剤組成物として添加すると、シリコーンゴムへの分散性などの点で好ましい。
【0029】
また本発明の架橋方法においては、上記リン酸化合物及び有機過酸化物の他に、必要に応じて、通常ゴム工業で一般的に使用されているカーボンブラック、沈降製炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、タルク、クレー等の無機充填剤のほか、TAC、TAIC等の架橋助剤、スコーチ防止剤、加硫促進剤、吸水剤、酸化防止剤、UV安定剤、帯電防止剤、顔料、染料、カップリング剤、界面活性剤、可塑剤、プロセスオイル等の添加剤が架橋用シリコーンゴムに配合可能であり、これらは上記架橋工程において、上記リン酸化合物、有機過酸化物などと一緒に添加されてもよいし、また別個に添加されてもよい。
【0030】
上記リン酸化合物及び有機過酸化物、必要に応じて添加される添加剤のシリコーンゴムへの配合は常法により、例えばミキサー、ニーダー、ロールなどを用いて均一に混合すればよい。本発明の架橋体の製造方法においてはこのようして得られた上記リン酸化合物及び有機過酸化物を含むシリコーンゴムを常圧熱風架橋、金型プレス架橋などの常法により架橋すればよい。架橋温度は架橋方法、使用する有機過酸化物などにより異なるので一概に言えないが、通常80〜300℃、好ましくは100〜250℃程度である。常圧熱風架橋においては200〜250℃が好ましく、金型プレス架橋においては金型での100〜200℃の一次加硫と金型から取り出した後の200℃〜250℃での二次加硫が好ましい。
【0031】
上記本発明方法により架橋可能なシリコーンゴムとしてはポリシロキサン構造をその構成中に含むものであれば特に制限はなく、ジメチルシリコーンゴム、メチルビニルシリコーンゴム、メチルフェニルシリコーンゴム、フロロシリコーンゴム等の各種シリコーンゴム、シロキサンと各種重合体との共重合体、例えばシロキサンとポリスチレン、ポリウレタン、ポリエステル、ポリメタクリレート、ポリイミド、ポリカーボネート、EPM、EPDM、ポリエチレン、ポリブタジエン、NBR、SBR、ポリアクリレート、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等の各種重合体との共重合体またはシリコーンゴムと上記各種重合体とのポリマーブレンド体等をあげることが出来る。好ましくは主鎖がオルガノシロキサン結合からなるシリコーンゴムである。
【0032】
次に本発明の架橋剤組成物について説明する。
本発明の架橋剤組成物は前記した様に、式(1)のリン酸化合物と有機過酸化物、所望により更に希釈剤その他の添加剤を含むものである。
該リン酸化合物と有機過酸化物の配合比は任意の割合で配合可能であるが、好ましくは該リン酸化合物と有機過酸化物の比率(質量割合)は1:50〜1:1、より好ましくは1:20〜1:5である。本発明架橋剤組成物は上記リン酸化合物と有機過酸化物だけでもよいが、通常前記した希釈剤、また必要に応じてその他の添加剤を配合したものが好ましい。そのような本発明架橋剤組成物においては、該リン酸化合物と有機過酸化物の合計が20質量%以上が好ましく、より好ましくは30質量%以上、更に好ましくは40室量%以上で、100質量%以下、好ましくは80質量%以下、更に好ましくは70質量%以下、最も好ましくは、使用方法等により異なるが、65%以下程度であり、残部がその他の添加剤(希釈剤等)、であり、その量は0以上、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上、最も好ましくは35質量%以上であり、80質量%以下、好ましくは70質量%以下、更に好ましくは60質量%以下である。
希釈剤の配合量は有機過酸化物100質量部に対して、0〜500質量部、好ましくは20質量部〜300質量部程度である。希釈剤としては前記したものがいずれも使用しうるが、好ましいものとしてはシリカ、シリコーンオイル、シリコーンゴム等を挙げることができる。
【0033】
本発明架橋剤組成物で使用されるシリカとしては、架橋剤組成物に使用される上記リン酸化合物または有機過酸化物の効果を著しく阻害するものでなければ親水性シリカ、疎水性シリカのいずれも使用可能である。親水性シリカは一般的に親水性シリカとして使用されているもので良く、乾式法または湿式法などの方法により製造されたシリカの表面に水酸基を有するシリカである。親水性シリカの具体例としてはアエロジル50、アエロジル200,アエロジル300(以上日本アエロジル社製、商品名)、FK160、FK320、SIPERNAT50、SIPERNAT50S(以上DEGUSSA社製、商品名)、HDK−V15、HDK−N20、HDK−T30(以上WACKER社製、商品名)のほかレオロシールQS−10、レオロシールQS−20、レオロシールQS−30(以上トクヤマ社製、商品名)等が挙げられるがこれら乾式シリカのほかニップシールLP、ニップシールER、ニップシールNS−P(以上日本シリカ社製、商品名)やミズカシールP−526、ミズカシールP−603、ミズカシールP−554A(以上水沢化学社製、商品名)等の湿式シリカも使用可能である。ここで挙げた親水性シリカは一例であり、リン酸化合物や有機過酸化物に配合した場合にその組成物の貯蔵安定性を著しく損なわない限りあらゆる親水性シリカが使用可能である。
【0034】
また本発明の架橋剤組成物で使用される疎水性シリカとは乾式又は湿式シリカの表面の水酸基の全部又は一部をアルキル基やシラノール基で置換した構造を有するものであり、その具体例としてはアエロジルR972、アエロジルR972V、アエロジルRX200、アエロジルRY200(以上日本アエロジル製、商品名)、SIPERNAT D10、SIPERNAT D17(以上DEGUSSA社製、商品名)、レオロシールDM−10、レオロシールDM−20、レオロシールDM−30、レオロシールMT−10、レオロシールMT−20(以上トクヤマ製、商品名)、HDK−H15、H20、H30、H2000等(以上WACKER社製、商品名)等が挙げられる。
【0035】
なお本発明架橋剤ではこれら例示の疎水性シリカに限定されることなく、リン酸化合物または有機過酸化物の貯蔵安定性を著しく損なわない限りあらゆる疎水性シリカが使用可能である。例えばシリコーンオイルをシリカ表面に特殊コーティングした疎水性シリカも同様に使用可能である。
またこれらシリカは2種以上併用してもよい。通常2種以上併用しても効果上はあまり変わらない。本発明架橋剤中におけるこれらシリカの含量は架橋剤全体に対して通常0乃至50質量%程度であり、5質量%以上が好ましく、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは15質量%以上である。上限は使用するリン酸化合物、有機過酸化物およびシリコーンオイルの配合割合、目的とする架橋剤の形態(ペースト、ガム状)等によって変わるが、通常50質量%、好ましくは30質量%である。
【0036】
シリコーンゴムへの分散性やハンドリングの向上等を目的として本発明架橋剤組成物で使用されるシリコーンゴムとしてはジメチルシリコーンゴム、メチルビニルシリコーンゴム、メチルフェニルシリコーンゴム、フロロシリコーンゴム等が使用可能であり、リン酸化合物や有機過酸化物の貯蔵安定性を著しく損なわない限りあらゆるシリコーンゴムが使用できる。また、同様な目的で使用されるシリコーンオイルとしては希釈剤の項で記載したものと同じものがあげられる。シリコーンオイルはいずれの目的で使用されても本発明架橋剤中では同じ働きをするので、使用目的に応じて最適量を用いるのが好ましい。本発明架橋剤中にけるシリコーンゴムおよび、またはシリコーンオイルの配合量は架橋剤全体に対して通常0乃至70質量%程度、好ましくは10乃至50質量%程度である。
【0037】
また本発明架橋剤においては、貯蔵安定性を損なわない限り、ゴム工業で一般的に使用されているカーボンブラック、沈降製炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、タルク、クレー等の無機充填剤のほか、TAC、TAIC等の架橋助剤、スコーチ防止剤、加硫促進剤、吸水剤、酸化防止剤、UV安定剤、帯電防止剤、顔、染料、カップリング剤、界面活性剤、可塑剤、プロセスオイル等の添加剤が配合可能である。
これら添加剤は必要に応じて、通常使用される程度において使用すれば良く、例えば本発明架橋剤全体に対して、0乃至30質量%程度である。
【0038】
本発明の架橋剤組成物の形状は、安全化のため前記した各種溶剤で希釈した液状品のほか、分散性、取り扱い易さを考慮してシリカ、シリコーンオイル等の溶剤やシリコーンゴムを配合したペースト状またはガム状の組成物としても提供される。これら組成物の混合方法に特に制限はなく任意の順序で混合すれば良い。実際の製造は、まず、混合機でリン酸化合物の一種または二種以上と有機過酸化物または希釈された有機過酸化物を混合し、次いで親水性または疎水性シリカを徐々に仕込みながら混合した後、シリコーンオイルやシリコーンゴムを添加し、各成分が均一なペースト状またはガム状になるまで混合を行う。使用する混合機としてはニーダー、プラネタリーミキサー、押出機、バンバリーミキサー等があげられるが、最も好ましい混合機はニーダーまたはプラネタリーミキサーである。
【0039】
次に本発明のシリコーンゴム架橋体の製造方法について、好ましい態様の一つをより具体的に説明する。
まずシリコーンゴムに必要量の補強性シリカ(乾式シリカ)を配合し、バンバリーミキサーやニーダー等で均一に分散させる。必要に応じて前記した無機充填剤も添加されうる。 こうして得られたシリコーンゴムコンパウンドに本発明で示したリン酸化合物をシリコーンゴム100質量部に対して0.01〜5.0質量部、好ましくは0.03〜1.0質量部となるよう添加し、2本ロールで均一に分散させる。
次いで有機過酸化物を添加量で0.05〜5.0質量部、好ましくは0.1〜2.0質量部となるようこのシリコーンコンパウンドに添加し、2本ロールで均一に分散させる。
また必要に応じてカーボンブラックや顔料等の着色剤も使用可能である。
こうして得られたシリコーンゴムコンパウンドをプレス用金型に入れ、常温でプレスして1乃至5mm程度の適当な厚さ、例えば2mmのシート状に成形する。
【0040】
熱風架橋試験ではこのシートを200℃〜250℃に設定したギアーオーブンに入れ、5〜10分間加熱し、架橋を行う。得られた架橋ゴムを室温に戻し、表面粘着性を測定する。その後、同ー温度条件で2〜4時間の二次加硫を行い、得られた架橋ゴムの着色度およびJIS K−6301に準拠して機械的強度等を測定する。
金型プレス架橋試験を行う場合は得られたシリコーンゴムコンパウンドをプレス用金型に注入し、100〜200℃の架橋温度で架橋時間を5分〜60分の範囲で選定し100kg重/cm2程度の圧力でプレス架橋させることにより架橋ゴムが得られる。金型から外した架橋ゴムは通常、圧縮永久歪み等の機械的強度の向上を目的として架橋剤の揮発性分解残差を除去するために約200℃〜250℃の温度で2〜4時間の二次加硫が行われる。こうして得られた架橋ゴムの機械的強度を前記した方法により測定する。
【0041】
本発明の上記リン酸化合物および有機過酸化物をシリコーンゴムの架橋剤として併用した場合、常圧熱風架橋方法においては表面粘着性が極めて少なく、ボイドのない架橋ゴムを与え、金型プレス架橋においては離型性の優れた架橋ゴムを与える。さらにいずれの架橋方法によっても架橋速度が従来技術に比べて速く、且つ機械的強度の優れた架橋ゴムを与える。
【0042】
【実施例】
以下、本発明を実施例および比較例によって更に詳細に説明するが、本発明がこれら実施例によって制限されるものではない。
【0043】
実施例1
メチルビニルシリコーンゴム(商品名:TSE2571−5U、東芝シリコーン社製)とシリカ(商品名:アエロジル200)を表−1に示した配合量で混合してシリコーンゴムコンパウンドを得た。
リン酸化合物としてはモノ−n−ブチルホスフェート(略記号MBP)、有機過酸化物は1,6−ビス(t−ブチルパーオキシカルボニロキシ)ヘキサン(略記号TBPCH)の70%イソパラフィン系溶剤希釈品を使用し、それぞれシリコーンゴム100質量部に対する添加量はMBPが0.05質量部、TBPCHが0.6質量部になる量を、上記で得られたシリコーンゴムコンパウンドに加え、2本ロールで均一に分散させた。
得られたシリコーンゴムコンパウンドの架橋特性をキュラストメーター(JSRIII型)を用いて温度150℃で測定した。T10は最大トルクの10%に達するまでの時間、T90は最大トルクの90%に達する間での時間を表し、T90−T10は架橋速度の目安として用いられる。またMaxトルクは架橋中の最大トルク値を表し、架橋度の大小の指標となる。
【0044】
また、上記で得られたシリコーンゴムコンパウンドをプレス用金型に入れ、常温でプレスして2mmのシート状に成形した。
得られた成形体の常圧熱風架橋試験を200℃で10分間の架橋条件で、前記した方法で行い、二次加硫後の架橋ゴムについてJIS K−6301に準拠した引張試験、硬度測定および圧縮永久歪み試験を行った。
TBは破断時の引張強さ、EBは破断時の伸び、HSは硬度、CSは25%圧縮での100℃で22時間加熱後の圧縮永久歪みを表す。
架橋ゴムの表面粘着性は常圧熱風架橋後のゴムの表面を指触により判定し、表面粘着性の弱いものから順に1(粘着性なし)、2(わずかに粘着性あり)、3(やや粘着性あり)、4(粘着性あり)、5(粘着性大いにあり)の5段階で評価し、数値で表現した。 表面のボイドの有無は二次加硫後のゴムを目視により確認した。
試験結果を表−1に示した。
【0045】
実施例2
実施例1で使用したリン酸化合物(MBP)の代わりにジ−n−ブチルホスフェート(略記号DBP)を使用した以外は実施例1と全く同様に試験を行った。
試験結果を表−1に記載した。
【0046】
実施例3
実施例1で使用したリン酸化合物(MBP)の代わりにモノイソデシルホスフェート(略記号MIDP)を使用した以外は実施例1と全く同様に試験を行った。試験結果を表−1に記載した。
【0047】
実施例4
実施例1で使用したイソパラフィン系溶剤で70%に希釈された架橋剤の代わりにTBPCHが50質量部、MBPが6.3質量部、シリコーンオイル(商品名::SH−200、東芝シリコーン社製)が19質量部およびシリカ(商品名:アエロジル200)24.7質量部を配合し、前記した方法で混練りして、TBPCH純度が50%のペースト状架橋剤組成物(TBPCH−50)を作成した。得られたTBPCH−50を0.8部(TBPCH0.4部、MBP5.4×10−2部)使用して実施例1と同様に常圧熱風架橋試験を行った。試験結果を表−1に記載した。
【0048】
【0049】
実施例5
実施例1の有機過酸化物(TBPCH)の代わりにビス(4−メチルベンゾイル)パーオキサイド(略記号BMBP)50部をシリコーンオイル45部およびシリカ(商品名:アエロジル200)5部で50%に調整したペースト状架橋剤組成物を使用し、シリコーンゴム100質量部に対する添加量がMBPが0.1質量部、BMBP50%ペーストが1.3質量部(BMBP0.65部)になる量を加えた。得られたシリコーンゴムコンパウンドの架橋特性をキュラストメーター(JSRIII型)を用いて温度120℃で測定した。
そのほかの試験条件はすべて実施例1と同様である。 結果を表−2に記載した。
【0050】
実施例6
実施例5で得られたBMBPの50%ペーストを使用し、シリコーンゴム100質量部に対するDBPの添加量が0.1質量部、BMBP50%ペーストが1.3質量部(BMBP0.65部)になる量を加えた。そのほかの試験条件はすべて実施例5と同様である。 結果を表−2に記載した。
【0051】
実施例7
実施例5で得られたBMBPの50%シリコーンペーストを使用し、シリコーンゴム100質量部に対するMIDPの添加量が0.1質量部、BMBP50%ペーストが1.3質量部(BMBP0.65部)になる量を加えた。そのほかの試験条件はすべて実施例5と同様である。 結果を表−2に記載した。
【0052】
実施例8
シリコーンゴム100質量部に対する添加量はMBPが0.05質量部、DBPが0.05質量部、実施例5で得られたBMBP50%ペーストが1.3質量部(BMBP0.65部)になる量を加えた。そのほかの試験条件はすべて実施例5と同様である。 結果を表−2に記載した。
【0053】
【0054】
比較例1
式(1)のリン酸化合物を配合しない点を除き実施例1と同様にしてシリコーンゴムコンパウンドを作成し、実施例1と同様にして常圧熱風架橋を行った。 有機過酸化物は実施例1〜4と同じTBPCH70%イソパラフィン系溶剤希釈品を使用した。
結果を表−3に記載した。
【0055】
比較例2
式(1)のリン酸化合物を配合しない点を除き実施例1と同様にしてシリコーンゴムコンパウンドを作成し、実施例1と同様にして常圧熱風架橋を行った。有機過酸化物は実施例5〜8と同じBMBP50%ペーストを使用した。
結果を表−3に記載した。
【0056】
【0057】
実施例9
メチルビニルシリコーンゴムとシリカを表−4に示した配合量で混合してシリコーンゴムコンパウンドを得た。
リン酸化合物はMBPを、有機過酸化物はTBPCHの70%イソパラフィン系溶剤希釈品を使用し、それぞれシリコーンゴム100質量部に対する添加量はMBPが0.05質量部、TBPCH70%希釈品が0.6質量部(TBPCH0.42部)になる量を、上記で得られたシリコーンゴムコンパウンドに加え、2本ロールで均一に分散させた。
得られたシリコーンゴムコンパウンドの架橋特性をキュラストメーター(JSRIII型)を用いて測定した。
また、得られたシリコーンゴムコンパウンドの金型プレス架橋試験を、150℃で10分間の架橋条件で、前記した方法に従い行った。二次加硫後の架橋ゴムについてJIS K−6301に準拠した引張試験、硬度測定および圧縮永久歪み試験を行った。
金型からの離型性評価は架橋ゴムを金型から引き離す際に引き離しやすい順から1(離型性良好)、2(離型性やや良好)、3(離型性不良)、4(離型性大いに不良)の4段階で評価し、数値で表現した。試験結果を表−4に示した。
【0058】
実施例10
実施例9で使用したリン酸化合物(MBP)の代わりにDBPを使用した以外は実施例9と全く同様に試験を行った。試験結果を表−4に記載した。
【0059】
実施例11
実施例9で使用したリン酸化合物(MBP)の代わりにMIDPを、また有機過酸化物(70%TBPCH)の代わりに2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン(略記号DMBH)の50%シリコーンペーストを使用し、シリコーンゴム100質量部に対する添加量をMIDP 0.05質量部、50%DMBH 0.8質量部(DMBH0.4部)とし、170℃で10分間の架橋条件で、金型プレス架橋試験を行った。そのほかの試験条件はすべて実施例9と同じである。試験結果を表−4に記載した。
【0060】
実施例12
実施例11で使用したMIDP単独の代わりにMBP0.025質量部とDBP0.025質量部を併用した以外は実施例11と全く同様に試験を行った。試験結果を表−4に記載した。
【0061】
【0062】
比較例3
式(1)のリン酸化合物を配合しない点を除き実施例9と同様にしてシリコーンゴムコンパウンドを作成し、実施例9と同様にして金型プレス架橋試験を行った。結果を表−5に記載した。
【0063】
比較例4
式(1)のリン酸化合物を配合しない点を除き実施例11と同様にしてシリコーンゴムコンパウンドを作成し、実施例11と同様にして金型プレス架橋試験を行った。結果を表−5に記載した。
【0064】
【0065】
【発明の効果】
本発明のリン酸化合物および有機過酸化物またはこれらの架橋剤組成物を使用することによりシリコーンゴムの架橋において常圧熱風架橋方法では表面粘着性の極めて少く、ボイドのない架橋ゴムを、金型プレス架橋においては離型性の優れた架橋ゴムを与える。さらにいずれの架橋方法によっても架橋速度が従来技術に比べて速く、機械的強度が優れている架橋ゴムを与える。
Claims (11)
- 式(1)で示される酸性リン酸エステルおいて炭素数1から18の炭化水素残基が直鎖または分岐のアルキル基またはフェニル基であることを特徴とする請求項1に記載のシリコーンゴム架橋体の製造方法。
- 有機過酸化物がパーオキシカーボネート類であり、かつ架橋体の製造を常圧熱風架橋により行うことを特徴とする請求項1記載のシリコーンゴム架橋体の製造方法。
- パーオキシカーボネート類がビス〔t−(C4−C10)アルキルパーオキシカルボニロキシ〕(C3−C10)アルカンまたはジまたはトリ(C2〜C3)アルキレングリコール−ビス〔t−(C4−C10)アルキルパーオキシカーボネート〕である請求項3記載のシリコーンゴム架橋体の製造方法。
- パーオキシカーボネート類が1,6−ビス(t−ブチルパーオキシカルボニロキシ)ヘキサンまたはジエチレングリコール−ビス(t−ブチルパーオキシカーボネート)であることを特徴とする請求項3記載のシリコーンゴム架橋体の製造方法。
- 有機過酸化物がジアシルパーオキサイド類であり、かつ架橋体の製造を常圧熱風架橋により行うことを特徴とする請求項1記載のシリコーンゴム架橋体の製造方法。
- ジアシルパーオキサイド類がビス〔非置換、クロル置換または(C1〜C3)アルキル置換ベンゾイル〕パーオキサイドである請求項6記載のシリコーンゴム架橋体の製造方法。
- ジアシルパーオキサイド類がビス(4−メチルベンゾイル)パーオキサイドである請求項7記載のシリコーンゴム架橋体の製造方法。
- 有機過酸化物がジアルキルパーオキサイド類、パーオキシカーボネート類、パーオキシケタール類またはアルキルパーエステル類であり、かつ架橋体の製造を金型プレス架橋により行うことを特徴とする請求項1記載のシリコーンゴム架橋体の製造方法。
- 請求項1記載の式(1)の酸性リン酸エステルと有機過酸化物を含有することを特徴としたシリコーンゴム用架橋剤組成物。
- 請求項1乃至9載の架橋体の製造方法により得られたシリコーンゴム架橋体。
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