(1)超音波撮像装置においては、超音波の集束波面を送波するので焦点における非線形作用は避けられない現象であり、焦点近傍および以遠では送波パルス自身がすでに第2高調波成分を大量に持っている。したがって、それによって造影剤以外からも第2高調波エコーが発生し造影剤からのエコーと区別できない。
このような送波パルスの非線形作用による妨害を目立たなくするためには、送波レベルを通常の撮像に用いられるレベルの数分の1以下に落とさなければならないが、観測したい2次効果の大きさは送波レベルの2乗に比例するので、送波レベルを落とすことはエコー受信に関して2重に不利に作用する。
(2)超音波送波用の送信信号それ自身にも第2高調波ないし観測系の受信周波数帯域に抵触するような周波数成分が含まれている場合があり、そのエコーもまた造影剤のエコーと区別がつかない。
これを防ぐには、超音波探触子の各振動子エレメント毎に送信用のリニアアンプ(linear amplifier)ないしは厳重なローパスフィルタを用い、送信信号にそのような周波数成分が含まれないようにする必要がある。
しかし、電子走査型の超音波探触子においては高性能になるほど多数の振動子エレメントが用いられるので、そのような多数の振動子エレメント毎に送信用のリニアアンプやローパスフィルタを用いることは装置の簡素化、小形化、低消費電力化に対して大きな障害となる。
(3)第2高調波による撮像においては、基本波を送波して2倍の周波数のエコーを受信するのであるから、広帯域の超音波探触子が必要である。比帯域幅の確保を入れると上下の周波数比で130%ないし150%もの超広帯域の超音波探触子を必要とする。これに対して通常の超音波撮像に用いられる超音波探触子の比帯域幅は70%程度であるので、そのまま使用することはできない。比帯域福が100%を越える超音波探触子を設計することは可能であるが、3〜4層以上の音響整合層を必要とする等の理由により実現化には多大の困難を伴う。
(4)マイクロバルーンの共振周波数f0は半径r0に対し
という関係がある。マイクロバルーンが第2高調波を送り返して来るのは、この共振周波数の前後のあまり広くない周波数帯域である。このため、マイクロバルーンの粒径に分布があるとその中の一部しか非線形エコーの発生に貢献せず効率が悪い。
(5)マイクロバルーン造影剤を被検体に注入し、その濃度の経時変化から注目する組織の機能を計測する場合、所定の時間にわたって継続的に同一部位を捉え続けなければならない。しかし、体内組織の運動や被検体の体動等のために注目部位は逃げやすくその追跡は容易ではない。
本発明は上記の問題点を解決するためになされたもので、その目的は、第2高調波による非線形超音波撮像を効率良く行える超音波撮像方法および装置並びに超音波探触子および超音波造影剤を実現することである。
(1)課題を解決するための第1の発明は、被検体に超音波を送波しそのエコーの第2高調波成分を利用する超音波撮像方法において、被検体に第1の強度の超音波と前記第1の強度の実質的に1/k倍の第2の強度の超音波とを交互に送波し、前記第1の強度で送波した超音波に基づくエコーと前記第2の強度で送波した超音波に基づくエコーとを受信し、前記第2の強度で送波した超音波に基づくエコー受信信号を実質的にk倍した信号と前記第1の強度で送波した超音波に基づくエコー受信信号との差の信号を利用することを特徴とする超音波撮像方法である。
課題を解決するための第1の発明において、kを2とすることが信号処理が容易になる点で好ましい。この場合、前記第2の強度での送波を2回行い、それに基づく2回の受信信号を加算することによって実質的に2倍することがノイズを低減する点で好ましい。
課題を解決するための第1の発明によれば、超音波の送波を2種類の強度で行い、それらに対応して得られる2種類のエコー受信信号の差を求めるようにしたので、非線形エコー源からのエコーをフィルタ等を用いないで抽出することができる超音波撮像方法が実現できる。
(2)課題を解決するための第2の発明は、被検体に超音波を送波しそのエコーの第2高調波成分を利用する超音波撮像方法において、被検体に第1の位相の超音波と前記第1の位相とは実質的に180°異なる第2の位相の超音波とを交互に送波し、前記第1の位相で送波した超音波に基づくエコーと前記第2の位相で送波した超音波に基づくエコーとを受信し、前記第1の位相で送波した超音波に基づくエコー受信信号と前記第2の位相で送波した超音波に基づくエコー受信信号との和の信号を利用することを特徴とする超音波撮像方法である。
課題を解決するための第2の発明において、前記第1の位相とは実質的に90°位相が異なる第3の位相の超音波と実質的に270°位相が異なる第4の位相の超音波とをそれぞれ送波し、前記第1〜4の位相で送波した超音波に対するエコー受信信号の和の信号を求めることが非線形エコー源からのドプラ信号を得る点で好ましい。
課題を解決するための第2の発明によれば、超音波の送波を複数の位相で行い、それらに対応して得られる複数のエコー受信信号の和を求めるようにしたので、非線形エコー源からのエコーをフィルタ等を用いないで抽出することができる超音波撮像方法が実現できる。
(3)課題を解決するための第3の発明は、被検体に超音波を送波しそのエコーの第2高調波成分を利用する超音波撮像方法において、基本周波数より所定周波数だけ高い周波数の信号と前記基本周波数より前記所定周波数だけ低い周波数の信号とを合成した送信信号に基づく超音波を被検体に送波することを特徴とする超音波撮像方法である。
課題を解決するための第3の発明によれば、送波超音波の2つの周波数が非線形エコー源においてミキシングされるので、基本周波数の2倍の周波数のエコー信号を得ることができる超音波撮像方法が実現できる。
(4)課題を解決するための第4の発明は、被検体に超音波を送波し、前記送波した超音波に基づくエコーを受信し、前記エコー受信信号をその基本波の半波長分ずらした信号と前記エコー受信信号との和の信号を求めることを特徴とする超音波撮像方法である。
課題を解決するための第4の発明によれば、基本波の半波長ずらしの加算によって、基本波成分を消去し第2高調波成分を抽出することができる超音波撮像方法が実現できる。
(5)課題を解決するための第5の発明は、被検体に超音波を送波しそのエコーの第2高調波成分を利用する超音波撮像方法において、超音波ビームの形成に関わる1対の振動子について、前記1対の振動子から送波された超音波が形成する送波ビームにおいて振動周波数の第2高調波成分が互いに打ち消し合う位相となるように1対の送信信号で駆動するとともに、前記1対の振動子の受信信号が形成する受波ビームにおいて振動周波数の第2高調波成分が互いに強め合う位相となるように1対の受信信号を加算することを特徴とする超音波撮像方法である。
課題を解決するための第5の発明によれば、超音波ビームの形成に関わる1対の振動子について、1対の送信信号で駆動するとともにそれら振動子の1対の受信信号を加算するようにしたので、送波ビームには第2高調波成分が含まれず、また、受波ビームには第2高調波成分のみが含まれる超音波撮像方法を実現することができる。
(6)課題を解決するための第6の発明は、被検体に超音波を送波しそのエコーの第2高調波成分を利用する超音波撮像方法において、被検体内を超音波ビームで3次元的に走査して被検体内の注目点の変位を求め、前記注目点の変位に基づいて関心領域を追跡することを特徴とする超音波撮像方法である。
課題を解決するための第6の発明において、少なくとも1回は被検体内を精密に3次元走査してこの精密な走査に基づく3次元像を求め、以後は被検体内の前記注目点のみを走査して前記注目点の変位に基づいて前記3次元像を変形させることが実時間の3次元像を得る点で好ましい。
課題を解決するための第6の発明によれば、注目点の変位に基づいて関心領域を追跡するようにしたので、特徴が明確でない関心領域についてその変位を追跡でき、造影剤を用いた計測を正確に行うことができる超音波撮像方法が実現できる。
(7)課題を解決するための第7の発明は、被検体に超音波を送波しそのエコーの第2高調波成分を利用する超音波撮像装置において、被検体に第1の強度の超音波と前記第1の強度の実質的に1/k倍の第2の強度の超音波とを交互に送波する送波手段と、前記第1の強度で送波した超音波に基づくエコーと前記第2の強度で送波した超音波に基づくエコーとを受信する受信手段と、前記第2の強度で送波した超音波に基づくエコー受信信号を実質的にk倍した信号と前記第1の強度で送波した超音波に基づくエコー受信信号との差の信号を求める演算手段とを具備することを特徴とする超音波撮像装置である。
課題を解決するための第7の発明において、kを2とすることが信号処理が容易になる点で好ましい。この場合、前記第2の強度での送波を2回行い、それに基づく2回の受信信号を加算することによって実質的に2倍することがノイズを低減する点で好ましい。
課題を解決するための第7の発明によれば、超音波の送波を2種類の強度で行い、それらに対応して得られる2種類のエコー受信信号の差を求めるようにしたので、非線形エコー源からのエコーをフィルタ等を用いないで抽出することができる超音波撮像装置が実現できる。
(8)課題を解決するための第8の発明は、被検体に超音波を送波しそのエコーの第2高調波成分を利用する超音波撮像装置において、被検体に第1の位相の超音波と前記第1の位相とは実質的に180°異なる第2の位相の超音波とを交互に送波する送波手段と、前記第1の位相で送波した超音波に基づくエコーと前記第2の位相で送波した超音波に基づくエコーとを受信する受信手段と、前記第1の位相で送波した超音波に基づくエコー受信信号と前記第2の位相で送波した超音波に基づくエコー受信信号との和の信号を求める演算手段とを具備することを特徴とする超音波撮像装置である。
課題を解決するための第8の発明において、前記第1の位相とは実質的に90°位相が異なる第3の位相の超音波と実質的に270°位相が異なる第4の位相の超音波とをそれぞれ送波し、前記第1〜4の位相で送波した超音波の対するエコー受信信号の和の信号を求めることが非線形エコー源からのドプラ信号を得る点で好ましい。
課題を解決するための第8の発明によれば、超音波の送波を複数の位相で行い、それらに対応して得られる複数のエコー受信信号の和を求めるようにしたので、非線形エコー源からのエコーをフィルタ等を用いないで抽出することができる超音波撮像装置が実現できる。
(9)課題を解決するための第9の発明は、被検体に超音波を送波しそのエコーの第2高調波成分を利用する超音波撮像装置において、基本周波数より所定周波数だけ高い周波数の信号と前記基本周波数より前記所定周波数だけ低い周波数の信号とを合成した送信信号に基づく超音波を被検体に送波する送波手段を具備することを特徴とする超音波撮像装置である。
課題を解決するための第9の発明によれば、送波超音波の2つの周波数が非線形エコー源においてミキシングされるので、基本周波数の2倍の周波数のエコー信号を得ることができる超音波撮像装置が実現できる。
(10)課題を解決するための第10の発明は、被検体に超音波を送波する送波手段と、前記送波した超音波に基づくエコーを受信する受信手段と、前記エコー受信信号をその基本波の半波長分ずらした信号と前記エコー受信信号との和の信号を求める演算手段とを具備することを特徴とする超音波撮像装置である。
課題を解決するための第10の発明によれば、基本波の半波長ずらしの加算によって、基本波成分を消去し第2高調波成分を抽出することができる超音波撮像装置が実現できる。
(11)課題を解決するための第11の発明は、被検体に超音波を送波しそのエコーの第2高調波成分を利用する超音波撮像装置において、超音波ビームの形成に関わる1対の振動子について前記1対の振動子から送波された超音波が形成する送波ビームにおいて振動周波数の第2高調波成分が互いに打ち消し合う位相となるように1対の送信信号で駆動する駆動手段と、前記1対の振動子の受信信号が形成する受波ビームにおいて振動周波数の第2高調波成分が互いに強め合う位相となるように1対の受信信号を加算する加算手段とを具備することを特徴とする超音波撮像装置である。
課題を解決するための第11の発明によれば、超音波ビームの形成に関わる1対の振動子について、1対の送信信号で駆動するとともにそれら振動子の1対の受信信号を加算するようにしたので、送波ビームには第2高調波成分が含まれず、また、受波ビームには第2高調波成分のみが含まれる超音波撮像装置を実現することができる。
(12)課題を解決するための第12の発明は、被検体に超音波を送波しそのエコーの第2高調波成分を利用する超音波撮像装置において、被検体内を超音波ビームで3次元的に走査する走査手段と、エコー受信信号から被検体内の注目点の変位を求める変位算出手段と、前記注目点の変位に基づいて関心領域を追跡する追跡手段とを具備することを特徴とする超音波撮像装置である。
課題を解決するための第12の発明において、少なくとも1回は被検体内を精密に3次元走査してこの精密な走査に基づく3次元像を求め、以後は被検体内の前記注目点のみを走査して前記注目点の変位に基づいて前記3次元像を変形させることが実時間の3次元像を得る点で好ましい。
課題を解決するための第12の発明によれば、注目点の変位に基づいて関心領域を追跡するようにしたので、特徴が明確でない関心領域についてその変位を追跡でき、造影剤を用いた計測を正確に行うことができる超音波撮像装置が実現できる。
(13)課題を解決するための第13の発明は、第1の周波数を含む周波数帯域を有する第1の振動子と、前記第1の周波数の2倍の周波数を含む周波数帯域を有する第2の振動子とを具備することを特徴とする超音波探触子である。
課題を解決するための第11の発明において、前記第1の振動子と前記第2の振動子が互い違いに配列されることが振動子アレイを均一化する点で好ましい。また、課題を解決するための第13の発明において、振動子アレイが前記第1の振動子が連なったアレイと前記第2の振動子が連なったアレイによって構成されることが製作が容易になる点で好ましい。
課題を解決するための第13の発明によれば、第1の振動子と第2の振動子を備えることにより、f0と2foの2つの周波数を有する超音波探触子を実現することができる。
(14)課題を解決するための第14の発明は、可溶性のマイクロバルーンの粒径分布が実質的に1:2以内であることを特徴とする超音波造影剤である。課題を解決するための第14の発明によれば、マイクロバルーンの粒径分布を1:2としたので励起超音波に対して効率よく非線形エコーを発生する超音波造影剤を実現することができる。
以上詳細に説明したように、課題を解決するための第1の発明によれば、超音波の送波を2種類の強度で行い、それらに対応して得られる2種類のエコー受信信号の差を求めるようにしたので、非線形エコー源からのエコーをフィルタ等を用いないで抽出することができる超音波撮像方法が実現できる。
また、課題を解決するための第2の発明によれば、超音波の送波を複数の位相で行い、それらに対応して得られる複数のエコー受信信号の和を求めるようにしたので、非線形エコー源からのエコーをフィルタ等を用いないで抽出することができる超音波撮像方法が実現できる。
また、課題を解決するための第3の発明によれば、送波超音波の2つの周波数が非線形エコー源においてミキシングされるので、基本周波数の2倍の周波数のエコー信号を得ることができる超音波撮像方法が実現できる。
また、課題を解決するための第4の発明によれば、基本波の半波長ずらしの加算によって、基本波成分を消去し第2高調波成分を抽出することができる超音波撮像方法が実現できる。
また、課題を解決するための第5の発明によれば、超音波ビームの形成に関わる1対の振動子について、1対の送信信号で駆動するとともにそれら振動子の1対の受信信号を加算するようにしたので、送波ビームには第2高調波成分が含まれず、また、受波ビームには第2高調波成分のみが含まれる超音波撮像方法を実現することができる。
また、課題を解決するための第6の発明によれば、注目点の変位に基づいて関心領域を追跡するようにしたので、特徴が明確でない関心領域についてその変位を追跡でき、造影剤を用いた計測を正確に行うことができる超音波撮像方法が実現できる。
また、課題を解決するための第7の発明によれば、超音波の送波を2種類の強度で行い、それらに対応して得られる2種類のエコー受信信号の差を求めるようにしたので、非線形エコー源からのエコーをフィルタ等を用いないで抽出することができる超音波撮像装置が実現できる。
また、課題を解決するための第8の発明によれば、超音波の送波を複数の位相で行い、それらに対応して得られる複数のエコー受信信号の和を求めるようにしたので、非線形エコー源からのエコーをフィルタ等を用いないで抽出することができる超音波撮像装置が実現できる。
また、課題を解決するための第9の発明によれば、送波超音波の2つの周波数が非線形エコー源においてミキシングされるので、基本周波数の2倍の周波数のエコー信号を得ることができる超音波撮像装置が実現できる。
また、課題を解決するための第10の発明によれば、基本波の半波長ずらしの加算によって、基本波成分を消去し第2高調波成分を抽出することができる超音波撮像装置が実現できる。
また、課題を解決するための第11の発明によれば、超音波ビームの形成に関わる1対の振動子について、1対の送信信号で駆動するとともにそれら振動子の1対の受信信号を加算するようにしたので、送波ビームには第2高調波成分が含まれず、また、受波ビームには第2高調波成分のみが含まれる超音波撮像装置を実現することができる。
また、課題を解決するための第12の発明によれば、注目点の変位に基づいて関心領域を追跡するようにしたので、特徴が明確でない関心領域についてその変位を追跡でき、造影剤を用いた計測を正確に行うことができる超音波撮像装置が実現できる。
また、課題を解決するための第13の発明によれば、第1の振動子と第2の振動子を備えることにより、f0と2foの2つの周波数を有する超音波探触子を実現することができる。
また、課題を解決するための第14の発明によれば、マイクロバルーンの粒径分布を1:2としたので、励起超音波に対して効率よく非線形エコーを発生する超音波造影剤を実現することができる。
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。
(1)全体構成
図1に超音波診断装置のブロック図を示す。本装置は本発明の実施の一形態である。なお、本装置の構成によって本発明の装置に関する実施の一形態が示される。また、本装置の動作によって本発明の方法に関する実施の一形態が示される。
図1において、超音波プローブ1は図示しない被検体に超音波ビームを送波するとともに被検体からのエコーを受波するものである。超音波プローブ1は本発明における超音波探触子の実施の形態の一例である。被検体には可溶性マイクロバルーンを主体とする造影剤が注入され、この造影剤に基づいて超音波撮像が行われる。なお、造影剤については後に改めて説明する。
超音波プローブ1は周波数帯域が異なる2種類の振動子エレメントを有している。一方の振動子エレメントの周波数帯域にはマイクロバルーンの共振周波数が含まれ、他方の振動子エレメントの周波数帯域にはその2倍の周波数が含まれる。超音波プローブ1については後に改めて説明する。
送受信部2は超音波プローブ1を駆動して超音波ビームを送波させるとともに超音波プローブ1のエコー受波信号を受信するものである。被検体内は超音波ビームが形成する音線によって走査される。送受信部2は所定の基本周波数の送信信号で超音波プローブ1を駆動するとともに受信信号からその第2高調波成分を抽出する構成になっている。送受信部2は本発明における送波手段、受信手段および走査手段の実施の形態の一例である。送受信部2については後に改めて説明する。
送受信部2が受信したエコー信号は、Bモード処理部3で処理されBモード画像データが作成される。Bモード処理部3は動作切り換えによりMモード画像データを作成することもできる。
また、送受信部2が受信したエコー信号は、ドプラ処理部4で処理されドプラスペクトラムデータが作成される。ドプラ処理にはパルスドプラモードとCW(continuous wave)ドプラモードとがある。
また、送受信部2が受信したエコー信号は、カラードプラ処理部5で処理されカラードプラ画像データが作成される。カラードプラ画像はCFM(color flow mapping)画像とも呼ばれる。
ディジタル・スキャン・コンバータ部6はBモード画像データ、ドプラスペクトラムデータおよびカラードプラ画像データについて走査変換した映像信号を表示部7と録画部8に入力するものである。
表示部7は映像入力信号に基づいて画像を表示するものである。録画部8は映像入力信号を録画するものである。録画部8としては例えばビデオテープレコーダ(video taperecorder)が用いられる。
データ処理部9は以上の各部と信号の授受を行いかつデータ処理を行って各部の動作を制御する。データ処理部9は、また、造影剤画像の濃度の経時変化に基づいて組織機能の計測をも行う。その際、注目する部位が体動等により変位する場合でもそれを自動的に追跡するようになっている。データ処理部9は本発明における変位検出手段および追跡手段の実施の形態の一例である。このような変位検出および追跡については後に改めて説明する。
データ処理部9はコンピュータとデータ処理プログラムによって構成される。データ処理部9はまた記憶部10に対してデータの読出および書込を行う。記憶部10には後述の3次元画像データが記憶される。操作部11は操作者によって操作されデータ処理部9に入力信号や指令信号を与えるものである。
(2)造影剤
一般的な造影剤としての基本波での反射強度はマイクロバルーンの径が大きいほど大きい。そこで、末梢血行系で塞栓が起きる限界寸法の数μm近辺を粒径の分布中心とされる。この場合、超音波の最適照射周波数は2〜1MHzないしそれ以下になり、そのエコーに含まれる第2高調波の周波数は通常の超音波撮像における観測系の周波数帯域に入る。したがって、観測系としては通常の超音波撮像における観測系を利用し、送波を通常の超音波撮像の半分の周波数で行うのが良いことになる。
マイクロバルーンの粒径に分布があるとその中の一部しか非線形エコーの発生に貢献せず効率が悪いので、粒径分布が狭い(分布曲線が鋭い)マイクロバルーンを用いることにする。粒径の分布は、径の最小値と最大値の比が1:2以内であることが非線形エコーの発生効率を高める点で好ましい。また、粒径分布を狭くすると非線形エコーの周波数分布が狭くなり、フィルタで分離するのに極めて好都合になる。
(3)超音波プローブ
図2に、超音波プローブ1の実施の形態の一例を断面図によって示す。図2において、振動子アレイ101がバッキング材102上に設けられている。なお、音響整合層等については図示を省略する。振動子アレイ101は2種類の振動子エレメントaとbを互い違いに配置することによって構成される。
なお、振動子エレメントa,bは互い違いにせずに、図3に示すように、振動子エレメントaのみによるアレイと振動子エレメントbのみによるアレイを1列に並べるようにしても良い。
図2の構成は2種類の振動子エレメントがアレイの全長にわたって均一に分布する点で好ましい。図3の構成はアレイの製作が容易な点で好ましい。
振動子エレメントaおよび振動子エレメントbはそれぞれ例えば64チャンネル分ずつ設けられる。1チャンネルは1つの振動子エレメントで構成しても良く、また、複数の振動子エレメントで構成しても良い。
振動子エレメントaおよびbはそれぞれ異なった周波数帯域を有する。それらの周波数帯域の例を図4に示す。図4において、Baが振動子エレメントaの周波数帯域、Bbが振動子エレメントbの周波数帯域である。
周波数帯域Baの下限付近がマイクロバルーンの共振周波数f0(例えば2MHz)に相当するようになっている。周波数帯域Bbの上限付近が第2高調波の周波数2f0(例えば4MHz)に相当するようになっている。
帯域BaおよびBbはいずれも比帯域幅が例えば70%となっている。これによって、帯域Baの高域部分と帯域Bbの低域部分が重複し共通帯域Bcが形成される。
超音波の送波は振動子エレメントaが形成する64チャンネルのアレイにより帯域Baで行われ、受波は振動子エレメントbが形成する64チャンネルのアレイにより帯域Bbで行われる。これによって、周波数f0によってマイクロバルーンの励振が行われ、マイクロバルーンの共振による第2高調波2f0のエコーが受波される。
すなわち、単一の超音波プローブによりマイクロバルーン励振周波数とその第2高調波をともに取り扱うことができる。なお、送波および受波に際して送受信部2により超音波のビームフォーミングが行われるのはいうまでもない。エコー受信信号は動作モードに応じて、Bモード画像、ドプラスペクトラム画像、CFM画像等の形成に利用される。
なお、マイクロバルーンを用いない通常の撮像を行う時は、振動子エレメントaのアレイのみによる送受波、振動子エレメントbのアレイのみによる送受波、および振動子エレメントaのアレイと振動子エレメントbのアレイとを同時に使用した送受波を行うことができる。
振動子エレメントaのアレイのみによる送受波を行う場合は、周波数帯域がBaの64チャンネルのプローブとして使用することができる。振動子エレメントbのアレイのみによる送受波を行う場合は、周波数帯域がBbの64チャンネルのプローブとして使用することができる。振動子エレメントaのアレイと振動子エレメントbのアレイとを同時に使用した場合は、周波数帯域がBcの128チャンネルのプローブとして使用することができる。
超音波プローブ1の実施の他の形態を図5および図6に示す。図5は平面図、図6はA−A断面図である。図5および図6において、円板状の振動子アレイ103がバッキング材104の上に設けられる。振動子アレイ103は2種類の振動子エレメントaおよびbによって構成される。
振動子エレメントaと振動子エレメントbは扇形の振動板として形成され、バッキング材104の上に互い違いに配置されて全体として円板状のアレイを構成している。円板状のアレイを凹面形にするのが超音波ビームを集束させる点で好ましい。
振動子エレメントは例えば全体として偶数個(2,4,6,8,…)用いられ、振動子エレメントaとbに半数ずつに割り当てられる。その場合、各エレメントを同一の形状にすると、それぞれの円板材料から切り取った振動子エレメントを全部無駄なく用いて2組のプローブを作ることができ、材料の利用率が高くなる。
振動子エレメント配列の他の形態を図7〜図9に示す。図7に示す配列は、ストライプ状の振動子エレメントa,bを交互に配列したものである。この配列は振動子エレメントの密度を高める点で好ましい。図8に示す配列は、賽の目状の振動子エレメントa,bをモザイク状(市松模様)に配列したものである。この配列は振動子エレメントの密度をさらに高める点で好ましい。
図9に示す配列は、円環状の振動子エレメントaの内側に円板状の振動子エレメントbを同心的に配置したものである。なお、両者の関係を入れ換えて振動子エレメントbを円環状とし振動子エレメントaを円板状としても良い。この配列は構成が単純な点で好ましい。
振動子エレメントaは振動周波数f0を有するものであり、振動子エレメントbは振動周波数2f0を有するものである。マイクロバルーン造影剤を用いる場合、超音波の送波は振動子エレメントaによって行われ、受波は振動子エレメントbによって行われる。マイクロバルーン造影剤を用いない場合は、振動子エレメントaまたはbの何れか一方または両方を用いた送受波を行うことができる。
図5〜9に示す超音波プローブはCWドプラ用のプローブとして用いるのに最適である。勿論それに限定されるものではなく、メカニカル・セクタスキャン用のプローブまたはコンパウンドスキャン用のプローブとして用いるようにしても良い。
(4)送受信部
図10に、送受信部2の実施の形態の一例のブロック図を1チャンネル分について示す。同様な構成が各チャンネル毎に設けられる。図10において、送信信号発生器201から発生する送信信号は、送信器202で増幅され、フィルタ203でフィルタリングされ、送受切換スイッチ204を通じて振動子エレメント100に与えられ、超音波として送波されるようになっている。なお、送波に当たっては、図示しないビームフォーマによって送波ビームのステアリングないしフォーカシング等が行われる。
振動子エレメント100が受波したエコー信号は、送受切換スイッチ204を通じて受信器205に入力され、受信器205で増幅され、フィルタ206でフィルタリングされ、A/D変換器207でアナログ/ディジタル変換されてメモリ208に記憶される。なお、受信に当たっては、図示しないビームフォーマによって受波ビームのステアリングないしフォーカシング等が行われる。
送信信号発生器201から発生する送信信号の周波数、振幅、位相、継続時間等はコントローラ209によって制御されるようになっている。送受切換スイッチ204の切換やA/D変換器207の動作タイミングもコントローラ209によって制御される。
コントローラ209は例えばMPU(micro processor unit)によって構成される。コントローラ209は、また、メモリ208に記憶されたデータについて後述するような演算を行う。コントローラ209は本発明における演算手段の実施の形態の一例である。
送信信号発生器201の出力振幅の切換により、同一音線につき100%振幅の送波と50%振幅の送波が交互に繰り返され、それらの送波に対応する2種類の受信信号がメモリ208に記憶される。
送波振幅の切換は、音線毎に逐一行っても良く、また、超音波走査のフレーム毎に行うようにしても良い。音線毎に逐一行うのは2種類の送波の時間差が少ない点で好ましい。フレーム毎に行うのは振幅の切換頻度を落とせる点で好ましい。
コントローラ209は、同一音線の受信信号毎に、50%送波による受信信号を2倍して100%送波による受信信号との差を求め1回分の受信信号とする。 被検体内のエコー源が全て線形の反射源であるとき、すなわち送波振幅に比例したエコーを返すものであるときは、100%送波による受信信号と50%送波による受信信号を2倍したものとは全ての周波数成分が同じ値になる。したがって、両者の差を求めることにより、送波の基本波成分はもとより送波にもともと含まれている高調波成分も相殺されて消える。
これに対して、被検体内にマイクロバルーン造影剤があるときはそのエコーの中の非線形成分は送波振幅の2乗に比例するので、100%送波による受信信号と50%送波による受信信号を2倍したものとの間には相違が生じる。したがって両者の差を求めることによりこのような非線形エコー源からのエコーを得ることができる。
すなわち、第2高調波を取り出すためのフィルタ等を特に用いなくても非線形エコー源からのエコーだけを得ることができる。さらに、第2高調波を取り出すためのフィルタを用いたとしてもそれを通過してしまう、送信系および受信系にもともと含まれる非線形成分も取り除くことができる。
したがって、送信器202および受信器205として特別にリニアリティの良いものを用いる必要はなく、通常の超音波撮影に用いられるものをそのまま用いて良い。また、フィルタ203および206も通常の超音波撮影に用いられるものをそのまま用いて良く、それぞれ厳格なローパスフィルタおよび第2高調波フィルタである必要はない。すなわち、第2高調波による超音波撮影のために特別な送受信機構を必要としない。
なお、送波の振幅は100%と50%に限らず、所定のレベルとその1/2として良い。また、1/2とは限らず任意の比率1/k(k>1)とし、対応する受信信号をk倍するようにしても良い。
また、1/2レベル送波による受信信号を2倍する代わりに、1/2レベルでの送受信を同一音線に2回行って得られた受信信号を加算するようにしても良い。この方法は、加算によるノイズの平均化作用によりノイズの少ない受信信号が得られる点で好ましい。
図11に、送受信部2の実施の形態の他の例のブロック図を1チャンネル分について示す。図11において、図10と同様の部分には同一の記号を付して説明を省略する。図11においてはフィルタ206とA/D変換器207の間に復調器210が挿入されており、これによって、受信信号を周波数2f0で復調するようになっている。
コントローラ209によって送信信号発生器201の出力位相を切り換えることにより、同一音線につき、周波数f0の0°位相の送波と180°位相の送波が交互に繰り返される。なお、送波位相の切換は超音波走査のフレーム単位で行うようにしても良い。
それらの送波に対応する2種類の受信信号が復調器210により2f0で復調されA/D変換器207でディジタル信号に変換されてメモリ208に記憶される。コントローラ209は、0°位相の送波に対する受信信号と180°位相の送波に対する受信信号との和を求め1回分の受信信号とする。
受信信号が2f0で復調されることにより、復調後の信号において基本周波数成分については0°位相の送波に対応する受信信号と180°位相の送波に対応する受信信号は互いに逆極性となるので、和をとることにより相殺される。
一方、第2高調波成分については基本周波数f0の180°の位相シフトは360°の位相シフトに相当するから、復調後の信号において0°位相の送波に対応する受信信号と180°位相の送波に対応する受信信号は同極性となり和をとることにより倍加する。すなわち、エコーの基本周波成分は相殺され第2高調波成分が強め合うので、特別なフィルタを用いなくても第2高調波のみのエコーを得ることができる。以上の状況を図12に示す。
観点を変えて説明すれば、図13に示すように一定の繰り返し周期PRT(pulse repetition time)で発生する周波数f0のパルス信号のフーリエ変換は図14に示すようになり、周波数f0の部分の周波数スペクトラムと周波数2f0の部分のそれとはぴったり一致する順序で並ぶ。ここで、スペクトラムの間隔はPRF(pulse repetition frequency)となる。PRFはPRTの逆数である。
これに対して、本形態のようにPRT毎にパルスの位相を反転すると(図15)その周波数スペクトラムは図16に示すようになる。すなわち、第2高調波2f0はPRFの奇数次になり、基本周波数f0の位置にはスペクトラムが存在しなくなる。
ただし、基本周波数成分にドプラシフトがある場合、その分は相殺されずドプラ信号として残る。したがって、本形態はBモード用に第2高調波成分を抽出する用途に加えて、ドプラモード用に基本周波数成分のドプラシフト成分を抽出する用途にも適用できる。
CWドプラモードを実施するときは、図17に示すように送信信号発生器201に周波数f0の連続波を発生させ、その位相を一定の周期で0°と180°とに切り換える。このとき、エイリアシングを防止するため位相切換の周期の逆数(PRF相当)の1/2は検出したいドプラシフトより十分大きくする必要がある。
送波の実施形態の他の例としては、基本周波数f0の送信信号を90°ずつ位相を変えて同一音線に4回ずつ送波する方法もある。すなわち、0°,90°,180°および270°の位相で順次に送波するものである。そして、それぞれのエコー受信信号を2f0で復調しディジタル化してメモリ208に記憶し、次いで4つの受信信号を全加算する。
この場合、基本周波数f0の90°は第2高調波の180°に相当するから4つの受信信号を全加算することにより基本周波数成分に加えて第2高調波成分も打ち消す。この状況を図18に示す。
このとき、第2高調波成分にドプラシフトがある場合はその成分は4つの信号の全加算によっても打ち消されないで残る。すなわち、本形態は主として第2高調波のドプラシフトを抽出するものとなる。ただし、基本周波数のドプラシフトもある成分は抽出される。
CWドプラモードを実施するときは、図19に示すように送信信号発生器201に周波数f0の連続波を発生させ、その位相を一定の周期で0°,90°,180°,270°と切り換える。このとき、位相切換の周期の逆数(PRF相当)の1/2は検出したいドプラシフトより十分大きくしてエイリアシングを防止する必要がある。
図20に、第2高調波成分についてCWドプラモードを実施するときの送信信号の他の形態を示す。図20に示す送信信号は周波数がf0+Δfとf0−Δfの2つの信号を合成したものである。
この信号が非線形エコー源に照射されるとその非線形性により周波数f0+Δfとf0−Δfのミキシングが行われ周波数2foのエコーが得られる。この状態を図21にスペクトラムによって示す。
図21に示すように、このような送受信によれば送信信号に基本周波数f0が含まれなくなるので、それを除去するための手段を全く必要とせずに第2高調波成分に関するCWドプラ計測を行うことができる。なお、この場合もΔf/2は検出したいドプラシフトより十分大きくしてエイリアシングを防止する必要がある。
図22に、送受信部2の実施の形態の他の例のブロック図を1チャンネル分について示す。図22において、図10と同様の部分には同一の記号を付して説明を省略する。図22においてはA/D変換器207とメモリ208の間に基本波除去器211が挿入されており、これによって、受信信号から基本周波数f0の成分が除去されるようになっている。
基本波除去器211は、図23に示すように、基本波の半波長(λ/2)に相当する遅延時間を有する遅延回路212を通した信号とそれを通さない信号との和を加算器213で加算するように構成されている。遅延回路212は例えばシフトレジスタ等によって実現される。
遅延回路212を通ることにより基本波成分は位相が180°変わるが、第2高調波成分は360°変わる。したがって、これらが遅延を受けない入力信号と加算されることにより、基本波成分は打ち消し合って消滅し第2高調波成分が倍加する。すなわち、第2高調波の抽出が行われる。
なお、遅延回路212にアナログ遅延回路を用い加算器213にアナログ加算器を用いることによりアナログの基本波除去器を構成することができる。その場合は基本波除去器はA/D変換器207の前に設けられる。
基本波除去器211はコントローラ209の機能によって実現するようにしても良い。すなわち、メモリ208に記憶された受信信号について、コントローラ209により同一音線の信号同士を基本波の半波長だけずらして加算すれば良い。これによって基本波成分を消去して第2高調波成分を抽出することができる。このようにするれば基本波除去器211のハードウェアを省略することができるので好都合である。
図24に、送受信部2の実施の形態の他の例のブロック図を隣合う2チャンネル分について示す。同様なチャンネル対が超音波プローブ1の全ての振動子について設けられる。図24において、図10と同様の部分には同一の記号を付して説明を省略する。
ここで、これら2つのチャンネルは送波および受波の超音波ビームの形成に関わる1対のチャンネルである。両チャンネルにおいて、送信信号発生器201(201’)〜送受信切換スイッチ204(204’)およびコントローラ209は本発明における駆動手段の実施の形態の一例である。また、コントローラ209は本発明における加算手段の実施の形態の一例である。
コントローラ209は送信信号発生器201および201’を制御してそれらが発生する送信信号の間に基本波の90°に相当する位相差を与えるようになっている。これによって、振動子100および100’からはこのような位相差を持つ超音波がそれぞれ送波される。
なお、図示しないビームフォーマにより、振動子100および100’から送波される超音波は同一の音線ないし焦点を持つようにビームフォーミング処理される。ただし、ビームフォーミングによって上記90°の位相差を損なわないようになっている。
基本波の90°に相当する位相差を与える方法としては、送信信号発生器201と201’が発生する送信信号の波形を互いに90°の位相差を持つものにする方法と、同一の波形について90°の位相差に相当する時間差を与える方法がある。後者は実現が容易な点で好ましい。
あるいは、振動子100および100’の超音波放射面の位置を基本波の90°すなわち基本波の4分の1波長(λ/4)に相当する距離だけ超音波の進行方向に異ならせるようにしても良い。この場合、送信信号発生器201,201’が発生する送信信号の位相を変えないで良いのが好ましい。
基本波の90°に相当する位相差は第2高調波に対しては180°の位相差となる。このため、振動子100および100’から送波される超音波に第2高調波成分が含まれていたとしても送波ビームにおいては打ち消し合って消滅する。したがって、被検体内のエコー源には基本波(および第3高調波)のみからなる超音波が照射される。このようにして、フィルタを用いることなく送波超音波から第2高調波成分を取り除くことができる。
振動子100および100’がそれぞれ受波したエコー信号はそれぞれの受信系で受信処理されてメモリ208および208’に記憶される。なお、受信に当たり図示しないビームフォーマによって受波のビームフォーミングすなわちビームのステアリングやフォーカシング等が行われる。
エコー受信信号については、メモリ208および208’にそれぞれ記憶された受信信号をコントローラ209によって基本波の180°に相当する位相差で足し合わせるようになっている。
これによって、受信信号の基本波成分が打ち消し合って消滅し、一方、第2高調波成分については基本波の180°に相当する位相差は360°となって同位相となるから加算によって倍加する。すなわち、第2高調波のみからなる受信信号を得ることができる。このようにして、フィルタを用いることなく第2高調波のエコーを抽出することができる。
なお、振動子100と100’として基本波のλ/4だけ超音波放射面がずれたものを用いたときは、2つの受信信号の間にすでに基本波の90°の位相差があるのでさらに90°の位相差を付加して加算することにより第2高調波のエコーを抽出することができる。
(5)3次元撮影および組織変位の追跡
図25に、超音波プローブ1による被検体内の走査の様子を示す。超音波プローブ1としては振動子エレメントの2次元アレイを有するものが用いられる。送受信部2はそのような超音波プローブ1のビームフォーミングを制御して被検体内を3次元走査する。
被検体内の3次元走査は少なくとも最初の1回は所望の空間分解能が得られる程度に十分に密な音線によって行われ、その受信信号に基づいてBモード処理部3によりBモード画像が形成され、このBモード画像データがデータ処理部9により記憶部10に記憶される。これによって記憶部10には所望の空間分解能の3次元画像(静止画像)が保持される。
この3次元画像について注目点の決定がなされる。注目点としては、例えば図26に示すように、角部、高輝度部、音線に直交する距離方向の界面、音線に平行な方位方向の界面等が選ばれる。これらの注目点は数点ないし十数点あれば十分である。
注目点の決定は手動または自動で行われる。手動の場合は操作者が表示部7に表示された画像上で指定する。自動の場合は、データ処理部9により画像データから2次微分等によってエッジ検出を行い、その中からハフ(Hough)変換等により音線に直交する界面と平行な界面を抽出し、それら界面の例えば微分値が最大になる点に注目点を定める。
データ処理部9は送受信部2を制御することにより、次回以降の走査をこれらの注目点のみについて行わせる。このような走査は数十本の音線によって行えるので実時間で走査することができる。
受信信号に基づいて3次元像が形成され、記憶部10に記憶される。この3次元像は注目点の現在位置を示すものとなる。
ところで、被検体内の組織は、変位や変形はあっても短時間内に発生したり消滅したりはせず、また、配列の順序も入れ替わることはない。したがって、注目点の変位から3次元像の変形量を推定し最初に求めた精密な3次元像をそれに合わせて変形すれば、比較的良い近似でその時点の被検体内の状態を表す3次元像を得ることができる。
図27に、画像の変形の説明図を示す。なお、説明の便宜上、2次元に縮退して表現してある。画像の変形は次のように行われる。
(1)最初の走査によって正規の音線密度による元画像を得る(図27(a))。
(2)次の回の粗い走査によって注目点の位置を求め、注目点の新たな位置と元の位置とを比較する(図27(b))。
(3)注目点について元の位置からの変位を示すベクトルを求める(図27(c))。
(4)得られたベクトルを外延補間して画像の全ピクセルについての変位ベクトルを求める(図27(d))。
(5)全ピクセルの変位ベクトルに基づいて元の画像を変形させ、現時点の画像とする(図27(e))。
注目点の走査、変位ベクトルの計算および元画像の変形は、正規の音線密度で3次元走査するよりも遙かに短時間で行うことができる。したがって、上記のような元画像の変形を行うことにより、所望の空間分解能の3次元像を実時間で得ることができる。
以下、注目点のみについての走査と注目点の変位に応じた元画像の変形を繰り返すことにより実時間の3次元像を得ることができる。そして、この画像を表示部7で表示することにより実時間の3次元画像表示が行える。なお、元画像の変形は、画像データの読出アドレスを変換するテーブルを用い、そのアドレス変換テーブルを変位ベクトルに応じて書き換えることによって行うのが高速化の点で好ましい。
また、元画像は一定の間隔で撮り直すようにすることがより実態に忠実な3次元像を得る点で好ましい。また、画像の変形は常に元画像について行う代わりに変形済みの直前の画像について行うようにしても良い。
上記のようにして注目点の変位が常に追跡されるので、造影剤の注入部位が体動等により変位しても注目点の変位に基づいてその所在を追跡することができる。したがって、常にその部位の現在位置における造影剤の濃度値等を測定することができる。これによって初めて正確な計測が行え、例えば図28に示すような造影剤の測定カーブを得ることができる。