JP3703519B2 - 光学活性体の製造方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、アルカリゲネス属に属する微生物由来のエステラーゼによる光学活性体の製造方法に関する。本発明の製造方法により得られる光学活性体のうち、例えば、シアンヒドリン誘導体は、種々の生理活性化合物の合成中間体として有用なマンデル酸やヒドロキシフェニルブタン酸などのα−ヒドロキシカルボン酸エステルの合成中間体として、2−メチル−1,3−プロパンジオールモノエステルは、光学活性ビタミンEや光学活性ムスコンの合成中間体として、アゼチジノン誘導体は、抗生物質などの医薬品の合成中間体として、またインドール−3−エタノール誘導体は、抗炎症剤、鎮痛剤等として有用な(1S,4R)−シス−1−エチル−1,3,4,9−テトラヒドロ−4−(フェニルメチル)ピラノ[3,4−b]インドール−1−酢酸の合成中間体としてそれぞれ有用である。
【0002】
【従来の技術】
従来、酵素を利用した光学活性な化合物の製造方法としては、シュードモナス属に属する微生物由来のリパーゼを用いた下記の方法が知られている。
光学活性なシアンヒドリン誘導体の製造方法としては、▲1▼2−アセトキシ−3−フェニルプロパンニトリルエステルを、シュードモナス属に属する微生物由来のリパーゼの存在下、不斉加水分解する方法、▲2▼マンデロニトリルエステルを、シュードモナス属に属する微生物由来のリパーゼの存在下、不斉加水分解する方法、▲3▼2−アセトキシ−3−メチル−3−ヘキセノニトリルエステル等のシアンヒドリンエステル誘導体を、シュードモナス属に属する微生物由来のエステラーゼの存在下、不斉加水分解する方法、▲4▼1−ヒドロキシ−2−アリロキシプロピオニトリルを、シュードモナス属に属する微生物由来のリパーゼの存在下、不斉アシル化する方法[ジャーナル オブ ケミカルソサエティー ケミカル コミュニケーションズ(J.Chem.Soc.Chem.Commun. )1989年、1391-1394 頁;リービッヒ アナーレン デア ヘミー(Liebigs Ann. Chem.)1991年、47-54 頁;特公平6−30621号公報;テトラヘドロン レターズ(Tetrahedron Letters )26巻、5533-5534 頁(1985年)参照]などが知られている。
【0003】
光学活性な2−メチル−1,3−プロパンジオールモノエステルの製造方法としては、シュードモナス属に属する微生物由来のリパーゼを用いて2−メチル−1,3−プロパンジオールジエステルを不斉加水分解する方法が知られている(特表平1−503196号公報参照)。
【0004】
光学活性なアゼチジノン誘導体の製造方法としては、4−フェニル−1−アシロキシメチル−2−アゼチジノンを、シュードモナス属に属する微生物由来のリパーゼの存在下、不斉加水分解する方法[ケミカル ファーマシューティカル
ビュレタン(Chem.Pharm.Bull )、40巻、2227-2229 頁(1992年)参照]が知られている。
【0005】
また、(1S,4R)−シス−1−エチル−1,3,4,9−テトラヒドロ−4−(フェニルメチル)ピラノ[3,4−b]インドール−1−酢酸の製造方法としては、ラセミ体のインドール−3−エタノール誘導体を環化させることによりシス−1−エチル−1,3,4,9−テトラヒドロ−4−(フェニルメチル)ピラノ[3,4−b]インドール−1−酢酸のラセミ体に導き、次いでボルネオールエステルとし、これを光学分割することにより、目的物を得る方法が知られている[ジャーナル オブ メディシナル ケミストリー(Journal of Medicinal Chemistry)、31巻、1244頁(1988年)]。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、シュードモナス属に属する微生物由来のリパーゼを用いた上記の光学活性なシアンヒドリン誘導体の製造方法は、基質の仕込濃度が低く酵素の使用量が多いこと、目的化合物の光学純度が低いことなどの欠点を有しており、また、同じくシュードモナス属に属する微生物由来のリパーゼを用いた光学活性な2−メチル−1,3−プロパンジオールモノエステルの製造方法においては、酵素反応時に高価な乳化剤を使用し、4℃以下に冷却して反応を行っていることから、いずれも工業的に有利な製造方法とはいい難い。さらに、シュードモナス属に属する微生物由来のリパーゼを用いた上記の光学活性なアゼチジノン誘導体の製造方法は、基質の仕込濃度が低く酵素の使用量が多いことなどの点から、工業的に有利な製造方法とはいい難い。また、(1S,4R)−シス−1−エチル−1,3,4,9−テトラヒドロ−4−(フェニルメチル)ピラノ[3,4−b]インドール−1−酢酸の製造方法においては、光学分割する際に高価な試薬を用いており、工業的に有利な製造方法とはいい難い。
【0007】
しかして、本発明の目的は、容易に入手可能なアルカリゲネス属に属する微生物由来のエステラーゼを用い、光学純度の高い光学活性体をより高い収率で工業的に有利に製造する方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、上記の目的は、アルコールエステルをエステラーゼにより加水分解して光学活性なアルコールおよびその対掌体であるエステルを製造する方法において、アルコールエステルの不斉加水分解能を有し、アルカリゲネス属に属する微生物由来であり、かつ分子量10万〜30万、等電点3.5〜4.4、およびオリーブオイルの加水分解反応の至適温度50℃〜70℃の物理化学的性質を有するエステラーゼを使用し、かつ得られる光学活性なアルコールおよびその対掌体であるエステルが3級の不斉炭素原子を有することを特徴とする光学活性体の製造方法を提供することにより達成される。
【0009】
本発明において用いられるエステラーゼとしては、アルコールエステルを不斉加水分解する能力を有し、アルカリゲネス属に属する微生物に由来するものであり、かつ分子量10万〜30万、等電点3.5〜4.4、およびオリーブオイルの加水分解反応の至適温度50℃〜70℃の物理化学的性質を有するものであればよく、好ましくは、分子量15万〜20万、等電点4.0〜4.2、およびオリーブオイルの加水分解反応の至適温度55℃〜65℃の物理化学的性質を有するもの、より好ましくは分子量18万〜19万、等電点4.1、およびオリーブオイルの加水分解反応の至適温度60℃の物理化学的性質を有するものである。本発明において用いられるエステラーゼは、かかる性質を有する酵素またはその含有物であれば、精製酵素であっても粗酵素であってもよい。なお、本発明において、エステラーゼとはリパーゼを含む広義のエステラーゼを意味する。
【0010】
上記のエステラーゼは、一般的な方法に従って、該エステラーゼを産生するアルカリゲネス属に属する微生物の培養上清から調製することが可能である。また、市販のエステラーゼを用いることも可能である。市販のエステラーゼとしては、例えば名糖産業株式会社製のリパーゼQL(以下、これをリパーゼQLと略称することがある。)などが好ましい。
【0011】
本発明の製造方法において基質となるアルコールエステルは、これを不斉加水分解した場合に、得られる光学活性なアルコールおよびその対掌体であるエステルの不斉炭素原子が3級炭素原子であれば特に制限されない。すなわち、得られる光学活性体の不斉炭素原子の4つの結合手のうち1つが水素原子と結合し、他の3つは水素原子以外の原子と結合していればよい。
【0012】
本発明の製造方法において基質となるアルコールエステルをより具体的に示すと、例えば次の化合物を挙げることができる。
▲1▼一般式(I)
【0013】
【化5】
【0014】
(式中、R1 およびR2 はそれぞれ置換基を有していてもよいアルキル基、アルケニル基、アルキニル基またはアリール基を表す。)
で示されるシアンヒドリンエステル[以下、これをシアンヒドリンエステル(I)と略記することがある。]、
▲2▼一般式(II)
【0015】
【化6】
【0016】
(式中、R3 およびR4 はそれぞれ置換基を有していてもよいアルキル基、アルケニル基、アルキニル基またはアリール基を表す。)
で示される1,3−プロパンジオールジエステル[以下、これを1,3−プロパンジオールジエステル(II)と略記することがある。]、
▲3▼一般式(III)
【0017】
【化7】
【0018】
(式中、R5は置換基を有していてもよいアルキル基、アルケニル基、アルキニル基またはアリール基を表し、R6 は置換基を有していてもよいアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基またはアリールチオ基を表し、R7は水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基またはアリールチオ基を表す。)で示されるアゼチジノン誘導体[以下、これをアゼチジノン誘導体(III)と略記することがある。]、および〔4〕一般式(IV)
【0019】
【化8】
【0020】
(式中、R8 は置換基を有していてもよいアルキル基、アルケニル基、アルキニル基またはアリール基を表す。)
で示されるインドール−3−エタノール誘導体[以下、これをインドール−3−エタノール誘導体(IV)と略記することがある。]。
【0021】
一般式(I)、(II)、(III)および(IV)においてR1 、R2 、R3 、R4、R5 、R6 、R7 およびR8 がそれぞれ表すアルキル基としては、直鎖状または分岐鎖状の炭素数1〜10のアルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基などが挙げられる。アルケニル基としては、直鎖状または分岐鎖状の炭素数2〜10のアルケニル基が好ましく、例えば、ビニル基、1−ブテニル基、1−メチル−1−ブテニル基、2−プロペニル基などが挙げられる。アルキニル基としては、直鎖状または分岐鎖状の炭素数2〜10のアルキニル基が好ましく、例えば、プロパルギル基、1−プロピニル基、1−ブチニル基、エチニル基などが挙げられる。
【0022】
これらのアルキル基、アルケニル基およびアルキニル基は置換基を有していてもよく、置換基としては、塩素原子、臭素原子、弗素原子などのハロゲン原子;フェニル基;クロロフェニル基、ブロモフェニル基、フルオロフェニル基などのハロゲン原子で置換されたフェニル基;メチルフェニル基、エチルフェニル基などの炭素数1〜6の低級アルキル基で置換されたフェニル基などが挙げられる。置換基を有するアルキル基、アルケニル基、アルキニル基およびアリール基の具体例としては、ベンジル基、フェノキシフェニルビニル基、クロロフェニルビニル基、ブロモフェニルビニル基、フルオロフェニルビニル基、メチルフェニルビニル基、エチルフェニルビニル基などの置換フェニルアルケニル基などが挙げられる。
【0023】
また、一般式(I)、(II)、(III)および(IV)においてR1 、R2 、R3、R4 、R5 、R6 、R7 およびR8 がそれぞれ表すアリール基としては、例えばフェニル基、ナフチル基などが挙げられる。これらのアリール基は置換基を有していてもよく、置換基としては、塩素原子、臭素原子、弗素原子などのハロゲン原子;メチル基、エチル基、プロピル基などの炭素数1〜6の低級アルキル基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基などの炭素数1〜6の低級アルコキシル基が挙げられる。置換基を有するアリール基の具体例としては、クロロフェニル基、ブロモフェニル基、フルオロフェニル基、メチルフェニル基、エチルフェニル基、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基などが挙げられる。
【0024】
一般式(III)においてR6 およびR7 がそれぞれ表すアリールチオ基としては、フェニルチオ基などが挙げられる。アリールチオ基のアリール基部分は置換基を有していてもよく、かかる置換基としては、R1 、R2 、R3 、R4 、R5 、R6 、R7 およびR8 がそれぞれ表すアリール基が有することがある置換基と同様の基が挙げられる。
【0025】
上記のシアンヒドリンエステル(I)を加水分解することにより、一般式(V)
【0026】
【化9】
【0027】
(式中、*は不斉炭素原子を表し、R9 は水素原子または式−CO−R1 で示される基を表し、R1 およびR2 は前記定義のとおりである。)
で示されるシアンヒドリン誘導体[以下、これをシアンヒドリン誘導体(V)と略記することがある。]が得られ、1,3−プロパンジオールジエステル(II)を加水分解することにより、一般式(VI)
【0028】
【化10】
【0029】
(式中、*、R3 およびR4 は前記定義のとおりである。)
で示される1,3−プロパンジオールモノエステル[以下、これを1,3−プロパンジオールモノエステル(VI)と略記することがある。]が得られ、アゼチジノン誘導体(III)を加水分解することにより、一般式(VII)
【0030】
【化11】
【0031】
(式中、R10は水素原子または式−CO−R5 で示される基を表し、*、R5 、R6 およびR7 は前記定義のとおりである。)
で示されるアゼチジノン誘導体[以下、これをアゼチジノン誘導体(VII)と略記することがある。]が得られ、また、インドール−3−エタノール誘導体(IV)を加水分解することにより、一般式(VIII)
【0032】
【化12】
【0033】
(式中、R11は水素原子または式−CO−R8 で示される基を表し、*およびR8 は前記定義のとおりである。)
で示されるインドール−3−エタノール誘導体[以下、これをインドール−3−エタノール誘導体(VIII)と略記することがある。]が得られる。
【0034】
シアンヒドリン誘導体(V)のうち、R9 が水素原子である化合物をシアンヒドリン誘導体(V-1)、R9 が式−CO−R1 で示される基である化合物をシアンヒドリン誘導体(V-2)とし、アゼチジノン誘導体(VII)のうち、R10が水素原子である化合物をアゼチジノン誘導体(VII-1)、R10が式−CO−R5 で示される基である化合物をアゼチジノン誘導体(VII-2)とし、インドール−3−エタノール誘導体(VIII)のうち、R11が水素原子である化合物をインドール−3−エタノール誘導体(VIII-1)、R11が式−CO−R8 で示される基である化合物をインドール−3−エタノール誘導体(VIII-2)とする。
【0035】
本発明の加水分解反応は、基質となるアルコールエステルの水溶性が高い場合(例えば、1,3−プロパンジオールジエステル(II)など)、適当な緩衝液溶液中または水溶液中で行うことができる。ここで緩衝液としては、例えばリン酸−クエン酸緩衝液、リン酸緩衝液などが用いられる。また、アルコールエステルの水溶性があまり高くない場合には、高い基質濃度、基質による失活緩和、反応後の基質および生成物と酵素の分離工程の簡略化などを目的に、二相系で反応を行うことがより好ましい結果を与える。
【0036】
二相系で反応を行う場合、エステラーゼを水相に溶解し、これに基質であるアルコールエステルを溶解した有機相を加えることにより、反応を行うことができる。水相としては、適当な緩衝液または水溶液を用いることができ、ここで緩衝液としては、例えばリン酸−クエン酸緩衝液、リン酸緩衝液などが用いられる。また、有機相としては、ベンゼン、トルエンなどの芳香族炭化水素系溶媒;テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、イソプロピルエーテルなどのエーテル系溶媒;四塩化炭素、塩化メチレン、クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素系溶媒;ヘキサン、シクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素系溶媒などの水と混和しない有機溶媒を用いることが好ましい。特にヘキサン、イソプロピルエーテルを用いることが基質による失活の緩和効果の点で好ましい。有機相と水相との比は容積比として1:0.1〜1:10の範囲が好ましい。
【0037】
本発明の加水分解反応における基質であるアルコールエステルの反応開始時の反応液中での濃度(二相系で反応を行う場合には有機溶媒中の濃度)は、1〜80重量%の範囲が好ましく、5〜50重量%の範囲がより好ましい。用いる酵素量は、例えば酵素と基質の重量比として1:5〜1:1000の範囲が好ましい。反応温度は、10〜70℃の範囲が好ましく、20〜60℃の範囲がより好ましい。また、反応速度を高めるために反応液を振盪または撹拌することが好ましく、また撹拌速度によって反応速度を調節することも可能である。
【0038】
反応開始時のpHは、用いる基質の種類によって適宜選択することができるが、pH8以下であることが好ましく、pH5〜pH7の範囲であることがより好ましい。なお、基質がシアンヒドリンエステル(I)である場合には、得られるシアンヒドリン誘導体(V-1)が中性からアルカリ性の条件下ではラセミ化することから、酸性下の領域、特にpH3〜pH6の範囲の酸性条件下で反応を行うことが好ましい。この場合、加水分解に伴って生成するカルボン酸の酸性のために、反応進行中は反応液のpHが酸性に保たれるため、特にpH調整を行う必要はない。
【0039】
反応の進行は高速液体クロマトグラフィーなどの分析手段によって追跡し、得られる光学活性なアルコールとアルコールエステルとのモル比がほぼ1:1になった時点で反応を止めるのが好ましい。反応終了後、有機相を直接遠心分離するか、または反応液にジエチルエーテルなどの有機溶媒を添加して抽出を行い、得られた有機相を遠心分離することにより、簡便に酵素を含む水相と、生成物である光学活性なアルコールおよびアルコールエステルとを分離することができる。
【0040】
加水分解反応終了後の酵素水溶液は、適当な塩基性化合物、例えば10重量%水酸化ナトリウム水溶液などによって反応開始時のpHに調整することにより、繰り返し使用することができる。また、繰り返し使用時に新たにエステラーゼを添加することにより反応時間を一定に保つことができる。
【0041】
【実施例】
以下、参考例および実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
なお、下記実施例において、(R)−インドール−3−エタノールエステル誘導体(II)の光学純度は、光学活性な固定相を用いる高速液体クロマトグラフィーにより測定した。また、(R)−2−メチル−1,3−プロパンジオールモノエステルの光学純度は、これをベンジル誘導体に導いた後、同様に光学活性な固定相を用いる高速液体クロマトグラフィーにより測定した。
【0042】
実施例1〜6
リパーゼQLを用いたシアンヒドリン酢酸エステル(ラセミ体)の不斉加水分解反応
250mMリン酸−クエン酸緩衝液のpHを4に調整し、この溶液0.6mlにリパーゼQL(名糖産業株式会社製)4.2mgを溶解し、マンデロニトリルアセテート(実施例1)、2−アセトキシ−3−フェニルプロパンニトリル(実施例2)、2−アセトキシ−4−フェニルブチロニトリル(実施例3)、4−メトキシマンデロニトリルアセテート(実施例4)、3−クロロマンデロニトリルアセテート(実施例5)、または2−アセトキシイソバレリルニトリル(実施例6)0.3gをイソプロピルエーテル1.5mlに溶解した溶液を添加し、37℃で激しく振盪させながら反応させ、対応する(R)−シアンヒドリン酢酸エステルを得た。結果を表1に示す。
【0043】
【表1】
【0044】
実施例7
リパーゼQLを用いたシアンヒドリン酪酸エステル(ラセミ体)の不斉加水分解反応
250mMリン酸−クエン酸緩衝液のpHを4に調整し、この溶液0.6mlにリパーゼQL4.2mgを溶解し、マンデロニトリルブチレート0.3gをイソプロピルエーテル1.5mlに溶解した溶液を添加し、37℃で激しく振盪させながら反応させ、対応する(R)−シアンヒドリン酪酸エステルを得た。結果を表2に示す。
【0045】
【表2】
【0046】
比較例1〜2
リパーゼPLを用いたシアンヒドリン酢酸エステル(ラセミ体)の不斉加水分解反応
250mMリン酸−クエン酸緩衝液のpHを4に調整し、この溶液0.6mlにリパーゼPL(アルカリゲネス属に属する微生物由来のリパーゼ;分子量35〜37万、等電点4.5およびオリーブオイルの加水分解反応の至適温度37〜40℃;名糖産業株式会社製)4.2mgを溶解し、マンデロニトリルアセテート(比較例1)、または2−アセトキシイソバレリルニトリル(比較例2)0.3gをイソプロピルエーテル1.5mlに溶解した溶液を添加し、37℃で激しく振盪させながら反応させ、対応する(R)−シアンヒドリン酢酸エステルを得た。結果を表3に示す。
【0047】
【表3】
【0048】
参考例1
2−メチル−1,3−プロパンジオールジアセテートの製造法
2−メチル−1,3−プロパンジオール100.0gを無水酢酸230.0gおよびピリジン173gの混合液に溶解し、16時間室温で撹拌した。反応終了後、酢酸エチルを加えた後、1N塩酸を添加し、有機層を酸洗浄した。水層に酢酸エチルを添加し、水層中の2−メチル−1,3−プロパンジオールジアセテートを抽出し、更にこの操作を2回繰り返した。酢酸エチル層を集め、飽和重曹水で洗浄し中和した。この飽和重曹水による洗浄操作を更に1回行った後、飽和食塩水で2回洗浄し、有機層を無水硫酸ナトリウムを用いて乾燥した。有機層を減圧下に蒸留し、149.0g(収率85.6%)の2−メチル−1,3−プロパンジオールジアセテートを得た。
【0049】
実施例8
リパーゼQLを用いた2−メチル−1,3−プロパンジオールジアセテートの不斉加水分解反応
50mMリン酸−クエン酸緩衝液のpHを7に調整し、該緩衝液200mlにリパーゼQL0.67gを溶解し、次いで2−メチル−1,3−プロパンジオールジアセテート10gを加え、10重量%水酸化ナトリウム水溶液でpHを7に制御しながら、反応温度を37℃に保ち、激しく撹拌しながら3時間反応させた。反応終了時の転化率は63.4%、2−メチル−1,3−プロパンジオールモノアセテートは(R)−体であり、その光学純度は、95.5%であった。
【0050】
実施例9
リパーゼQLを用いた1−ヒドロキシメチル−4−フェニル−2−アゼチジノン酢酸エステル(ラセミ体)の不斉加水分解反応
50mMリン酸−クエン酸バッファー(pH6.0)200mlにリパーゼQL92.6mgを溶解し、1−ヒドロキシメチル−4−フェニル−2−アゼチジノン酢酸エステル(ラセミ体)80gおよびヘキサン400mlを添加し、2.5N水酸化ナトリウムによりpHを6に維持しながら撹拌し、37℃、18時間反応させた。反応終了時の転化率は51.0%であり、加水分解された1−ヒドロキシメチル−4−フェニル−2−アゼチジノンの光学純度は98%となり、その選択性はR体であった。また、加水分解されなかった1−ヒドロキシメチル−4−フェニル−2−アゼチジノン酢酸エステルの光学純度は100%であり、その選択性はS体であった。
【0051】
実施例10
リパーゼQLを用いた1−ヒドロキシメチル−4−フェニル−2−アゼチジノン酪酸エステル(ラセミ体)の不斉加水分解反応
50mMリン酸−クエン酸バッファー(pH6.0)100μlにリパーゼQL0.3mgを溶解し、1−ヒドロキシメチル−4−フェニル−2−アゼチジノン酪酸エステル(ラセミ体)50mgおよびヘキサン200μlを添加し、37℃、18時間撹拌しながら反応させた。反応終了時の転化率は49.5%であり、加水分解された1−ヒドロキシメチル−4−フェニル−2−アゼチジノンの光学純度は100%となり、その選択性はR体であった。また、加水分解されなかった1−ヒドロキシメチル−4−フェニル−2−アゼチジノン酪酸エステルの光学純度は95.0%であり、その選択性はS体であった。
【0052】
実施例11
リパーゼQLを用いたβ−ベンジル−インドール−3−エタノール酢酸エステル(ラセミ体)の不斉加水分解反応
β−ベンジル−インドール−3−エタノール酢酸エステル(ラセミ体)5mgをアセトニトリル、アセトン、3級ブタノール、エタノール、クロロホルム、イソプロピルエーテル各50μlに溶解した後、50mMリン酸−クエン酸緩衝液のpHを7に調整し、リパーゼQL3mgを該緩衝液450μlに溶解したものを添加し、14時間激しく攪拌させながら反応させた。この時、加水分解されたβ−ベンジル−インドール−3−エタノールは(R)−体であり、その転化率およびβ−ベンジル−インドール−3−エタノールの光学純度を表4に示す。
【0053】
【表4】
【0054】
【発明の効果】
本発明によれば、容易に入手可能なアルカリゲネス属に属する微生物由来のエステラーゼを用いることにより、光学純度の高い光学活性体がより高い収率で工業的に有利に製造される。
Claims (5)
- アルコールエステルをエステラーゼにより加水分解して光学活性なアルコールおよびその対掌体であるエステルを製造する方法において、アルコールエステルの不斉加水分解能を有し、アルカリゲネス属に属する微生物由来であり、かつ分子量10万〜30万、等電点3.5〜4.4、およびオリーブオイルの加水分解反応の至適温度50℃〜70℃の物理化学的性質を有するエステラーゼを使用し、かつ得られる光学活性なアルコールおよびその対掌体であるエステルが3級の不斉炭素原子を有することを特徴とする光学活性体の製造方法。
Priority Applications (1)
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JP9388595A JP3703519B2 (ja) | 1994-05-31 | 1995-04-19 | 光学活性体の製造方法 |
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