JP3702491B2 - 内燃機関のegr制御装置 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、内燃機関の排気ガス中の窒素酸化物(NOx )低減に有効なEGR(Exhaust Gas Recirculation:排気ガス再循環)制御装置に関するもので、特に、ディーゼル機関への搭載に適したEGR制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、運転者のアクセル踏込量と機関回転数とに基づいて燃料噴射量(以下、単に『噴射量』ともいう)を制御し、燃料を供給するディーゼル機関に適用されたEGR制御装置が知られている。このEGR制御装置においては、排気ガスの再循環量を制御するEGRバルブの詰まりや固着・摺動不良等が発生し、制御不良状態となると所定のEGR量が得られない。特に、固着・摺動不良で常にEGRバルブが開弁状態のときには、図15に示すような機関回転数Ne と噴射量Qとの関係におけるEGR実行領域(斜線を施した領域)以外の領域でもEGR制御が実施される恐れがあり、このような場合には、ディーゼル機関特有のスモーク特性の悪化を引起こすこととなる。このため、EGRバルブの異常検出及びフェイルセーフを行う必要がある。
【0003】
内燃機関のEGR制御装置におけるEGRバルブの異常検出及びフェイルセーフに関連する先行技術文献としては、特公昭63−9103号公報及び特開平2−275056号公報にて開示されたものが知られている。
【0004】
前者には、EGRバルブ近傍に補助バルブを設け、EGRバルブの異常時には補助バルブにて閉弁させる技術、また、後者には、EGRバルブのEGRバルブ開度に応じて燃料噴射量を補正制御する技術がそれぞれ示されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、前者では、EGRバルブの異常時にはEGR制御を禁止することでフェイルセーフ機能を有しているが、従来に比して補助バルブ等の新たな追加によるコストアップが避けられず、また、その補助バルブ自身の作動信頼性が問題となるため実用的ではなかった。
【0006】
また、後者のものにおいては、EGRバルブのEGRバルブ開度とEGR量との関係の変化(EGRバルブの詰まりによる変化)に応じてEGRバルブの全作動領域(図16に示すα領域)で噴射量補正を行っている。
【0007】
ここで、ディーゼル機関においては、EGRバルブが固着・摺動不良等でEGRバルブ開度が固定状態となる故障モードのときには、図16にβ領域として示すような、EGRバルブ開度に対するEGRバルブ位置の交点以上の高負荷領域で負荷(噴射量)を減量補正すべきであり、後者の噴射量補正制御を適用したときには、図16のγ領域及びδ領域では適切な補正が実施されないこととなる。即ち、図16のγ領域では、噴射量補正が不要であるにもかかわらず、噴射量減量補正が実施されることによるドライバビリティ(Drivability)の悪化、また、δ領域では噴射量補正が実施されないことによるスモークの異常発生等が起こるためディーゼル機関に対するEGR制御装置として適合しているとは言えなかった。
【0008】
そこで、この発明は、かかる不具合を解決するためになされたもので、EGRバルブの異常時におけるドライバビリティ悪化及びディーゼル機関でのスモークの異常発生を最小限に抑えることが可能な内燃機関のEGR制御装置の提供を課題としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
請求項1にかかる内燃機関のEGR制御装置は、内燃機関の排気系から取出した排気ガスの一部であるEGRガスを前記内燃機関の吸気系に導入するEGRバルブと、前記EGRバルブの異常を検出する検出手段と、前記検出手段でEGR作動領域下での前記EGRバルブの異常が検出されたときのEGR量またはEGRバルブ開度を算出する演算手段と、前記演算手段で算出された前記EGRバルブの異常検出値に応じ、この時点より高負荷側の領域におけるEGR系異常と判定されないときの通常状態での燃料噴射量に対する、前記EGRバルブの異常が検出されたときのEGR量またはEGRバルブ開度に基づく減量補正量を予め記憶し、この記憶内容に基づきEGR系異常が検出された前記EGR量またはEGRバルブリフト量に対応する前記内燃機関の負荷となっている時点より高負荷側での燃料噴射量を前記減量補正量によって減量補正する補正手段とを具備するものである。
【0010】
請求項2にかかる内燃機関のEGR制御装置は、請求項1の前記補正手段が、前記演算手段で算出された前記EGR量または前記EGRバルブ開度の実値と、目標とする前記EGR量または前記EGRバルブ開度との差分に応じて、この差分が大きい程大きく燃料噴射量を減量補正するものである。
【0011】
【作用】
請求項1の内燃機関のEGR制御装置においては、演算手段では内燃機関の排気系から取出した排気ガスの一部であるEGRガスを内燃機関の吸気系に導入するEGRバルブの異常がEGR作動領域下で検出手段にて検出されたときのEGR量またはEGRバルブ開度が算出される。この算出されたEGRバルブの異常検出値に応じ、補正手段によりこの時点より高負荷側の領域におけるEGR系異常と判定されないときの通常状態での燃料噴射量に対する、EGRバルブの異常が検出されたときのEGR量またはEGRバルブ開度に基づく減量補正量を予め記憶され、この記憶内容に基づきEGR系異常が検出されたEGR量またはEGRバルブリフト量に対応する内燃機関の負荷となっている時点より高負荷側での燃料噴射量が上記減量補正量によって減量補正される。このため、EGRバルブが固着・摺動不良等の何らかの異常を起こし、EGRバルブが開閉途中で停止すると、そのときのEGR量またはEGRバルブ開度より少なくなるような高負荷側に対応する指令値により内燃機関が制御されるときのみ燃料噴射量が減量補正される。
【0012】
請求項2の内燃機関のEGR制御装置の補正手段では、請求項1の作用に加えて、演算手段で算出されたEGR量またはEGRバルブ開度の実値と、目標とするEGR量またはEGRバルブ開度との差分に応じて、この差分が大きい程大きく燃料噴射量が減量補正される。このため、異常となったEGRバルブのEGR量またはEGRバルブ開度のときに内燃機関の制御における燃料噴射量の減量補正が0とされ、それより高負荷側で差分が大きい程、燃料噴射量に対して大きく減量補正される。
【0013】
【実施例】
以下、本発明を具体的な実施例に基づいて説明する。
【0014】
図1は本発明の一実施例にかかる内燃機関のEGR制御装置が適用されたディーゼル機関を示す概略構成図である。
【0015】
図1において、1はディーゼル機関である内燃機関、3は内燃機関1に燃料を供給する燃料噴射ポンプ、5は排気ガスを排気側から吸気側に循環させるEGR装置、7は本システムを制御するECU(Electronic Control Unit:電子制御装置)である。
【0016】
以下、各構成要素について詳細に説明する。
【0017】
まず、内燃機関1では、吸気口11から吸気通路13を介して燃焼室15内に空気を吸入し、排気通路17へ排気ガスを排出する。また、内燃機関1のシリンダヘッド1aには燃料噴射ノズル19が取付けられており、この燃料噴射ノズル19は図示しない渦流室を介して燃焼室15内にディーゼル機関用の液体燃料を噴射する。なお、シリンダヘッド1aには図示しないグロープラグが取付けられている。
【0018】
内燃機関1の燃料噴射ポンプ3は、図2に示すように、内燃機関1のクランク軸(図示略)の回転と連動して回転されるポンプ駆動軸23を備えている。このポンプ駆動軸23には、燃料を加圧するためのフィードポンプ24(図2では90°展開して示す)が連結され、その先端には周面に多数の歯が突出形成された回転歯車25が取付けられている。これらフィードポンプ24及び回転歯車25は、ポンプ駆動軸23によって直接的に回転駆動される。
【0019】
回転歯車25の外周面に接近する位置には、ローラリング26に取付けられた回転センサ27が設けられている。この回転センサ27は電磁ピックアップで構成され、回転歯車25の各歯が回転センサ27に近接して通過する毎にパルス状の検出信号が出力される。
【0020】
ポンプ駆動軸23には、更に、フェイスカム28が設けられており、このフェイスカム28がポンプ駆動軸23の回転に伴って回転されることにより、プランジャ29が軸線の方向に往復動されるように構成されている。また、プランジャ29の往復動作のタイミングは、ローラリング26の回転角位置によって決定される。このローラリング26の回転角位置は、タイマピストン30(図2では90°展開して示す)によって可変制御されている。更に、タイマピストン30の位置はタイミング制御バルブ(TCV)31により制御される。したがって、タイミング制御バルブ31によって燃料噴射時期が制御される。
【0021】
また、燃料噴射ポンプ3本体には、タイマピストン30で動作タイミングが制御されるプランジャ29に対応して、スピルポート32が設定されており、このプランジャ29からの燃料逃がし時期が電磁スピルバルブ33によって制御される。つまり、電磁スピルバルブ33によって燃料噴射量が制御される。
【0022】
具体的に述べると、電磁スピルバルブ33の通電時においてはスピルポート32がオフとなる。そして、プランジャ29の動作に対応して圧送された燃料が図示しない高圧室において所定圧力に達すると、燃料の逆流や後垂れを防止するデリバリバルブ34を介して吐出され、内燃機関1に配設した燃料噴射ノズル19に供給される。このようにして、燃料噴射ノズル19から燃料が噴射される。
【0023】
また、内燃機関1の運転状態を検出するセンサとして、アクセルペダル36の踏込量を検出するアクセルセンサ72、機関回転数を検出する回転数センサ35、冷却水温を検出する水温センサ75、シフト位置を検出するシフト位置センサ39が設けられ、これらのセンサは、ECU7に接続されている。また、このECU7には、アクチュエータである電磁スピルバルブ33及びタイミング制御バルブ31が接続されている。
【0024】
EGR装置5は、吸気通路13と排気通路17とを連通する排気還流路41と、排気還流路41に配置されて流路を開閉するEGRバルブ43とを備えている。このEGRバルブ43は、圧力の違いによってEGRバルブ開度を変更するものであり、排気還流路41を開閉する弁体44と、弁体44を先端に有するプランジャ45と、プランジャ45を担持するダイヤフラム47と、ダイヤフラム47の変化位置に基づいてEGRバルブ開度を検出するリフトセンサ71と、負圧が導入されるダイヤフラム室59とを備えている。また、ダイヤフラム室59は、導管61を経て負圧制御バルブ63、バキュームポンプ64に接続されている。
【0025】
負圧制御バルブ63は、周知のように、内燃機関1のクランク軸(図示略)とベルトを介して接続されたバキュームポンプ64の生成する負圧をECU7から印加される電流値に応じて大気と混合し所望の負圧を作るものである。なお、ECU7から印加される電流値の制御は500Hzの矩形波の通電時間比(デューティ比)で行われ、ECU7での内部演算もデューティ比にて行われる。ここで、EGRバルブ43に開弁指令を行うときには、ECU7にてデューティ比を大きくして電流値を増加し、負圧制御バルブ63で作る負圧を大きくし、閉弁指令を行うときには、デューティ比を小さくして電流値を減少し、負圧制御バルブ63で作る負圧を小さくする(即ち、大気圧に近づける)ように制御する。
【0026】
ECU7は、周知の図示しないCPU、ROM、RAM、入力ポート、出力ポート、バスライン等を備えたマイクロコンピュータとして構成されており、入力ポートには回転数センサ35、リフトセンサ71が接続され、出力ポートには負圧制御バルブ63が接続されている。なお、入力ポートには運転状態を検出するその他のセンサとして、アクセルペダル36の踏込量からアクセル開度を検出するアクセルセンサ72、吸気圧から吸気量を算出するために用いられる吸気圧センサ73、内燃機関1の冷却水温を検出する水温センサ75等が接続されている。
【0027】
次に、本発明の一実施例にかかる内燃機関のEGR制御装置で使用されているECU7内のCPUのEGR量算出の処理手順を図3のフローチャートに基づき、図4〜図7のマップ等を参照して説明する。なお、本処理は8ms毎の割込処理の中で実行される。
【0028】
図3において、まず、ステップS101では、回転数センサ35より検出される機関回転数Ne 及びスピルリング位置センサ(図示略)により検出される内燃機関1の負荷(噴射量)QFINに応じて、基本EGR指令値DEBSEが算出される。この基本EGR指令値DEBSEとは、EGRバルブ43の弁体44の開度(EGRバルブ開度)を制御するための基本値であり、具体的には、負圧制御バルブ63の制御信号の基本値である。
【0029】
基本EGR指令値DEBSEは、機関回転数Ne 及び負荷QFINの関数として図4に示すように、格子状にマップ化され予めECU7内のROMに記憶されている。よって、この基本EGR指令値DEBSEは、図4のマップを補間演算することにより、精密に求めることができる。
【0030】
次にステップS102に移行して、ステップS101での基本EGR指令値DEBSEの算出と同様の手順により、図5に示すような、機関回転数Ne 及び負荷QFINのマップから目標リフトTELFが算出される。次にステップS103に移行して、リフトセンサ71の出力電圧をA/D変換した値VELFと以前にEGRバルブ43が全閉位置にあるときのリフトセンサ71の出力電圧をA/D変換した値VELFGとの差分により実リフトAELFが次式(1)にて算出される。なお、Kは定数である。
【0031】
【数1】
AELF=K・(VELF−VELFG) ・・・(1)
次にステップS104に移行して、後述のEGR系異常判定処理が実行される。そして、ステップS105に移行し、ステップS104の処理結果として設定されるEGR異常フラグがオンであるかが判定される。ステップS105の判定条件が成立しないときには、ステップS106以降のフィードバック制御を実行する。まず、ステップS106で、ステップS102及びステップS103で算出された目標リフトTELFと実リフトAELFとの差分(TELF−AELF)に応じて、フィードバック補正デューティ比例項(以下、『P項』と略記する)LDFINPが算出される。P項LDFINPは、図6(a)に示すような特性のグラフが図6(b)に示すようにマップ化されており、予めECU7内のROMに記憶されている。このP項LDFINPは、図6(b)のマップを補間演算することにより、精密に求めることができる。
【0032】
次にステップS107に移行して、ステップS102及びステップS103で算出された目標リフトTELFと実リフトAELFとの差分(TELF−AELF)に応じて、I項変化量ΔIの値が算出される。このI項変化量ΔIは、図7(a)に示すような特性のグラフが図7(b)に示すようにマップ化されており、予めECU7内のROMに記憶されている。また、I項変化量ΔIは、図7(b)のマップを補間演算することにより、精密に求めることができる。
【0033】
次にステップS108に移行して、ステップS107で算出されたI項変化量ΔIが以前の割込処理で算出したI項学習値LDFINI(i-1) に加算され、今回のI項学習値LDFINI(i) が次式(2)にて算出される。
【0034】
【数2】
LDFINI(i) =LDFINI(i-1) +ΔI ・・・(2)
一方、ステップS105の判定条件が成立するときには、EGR系に異常があるものとして、ステップS109に移行して、P項LDFINP及びI項学習値LDFINIを共に0とし、フィードバック制御が禁止される。
【0035】
ステップS108またはステップS109における処理ののち、ステップS110に移行し、ステップS101、ステップS106及びステップS108で算出された基本EGR指令値DEBSE、P項LDFINP及びI項学習値LDFINI(i) が加算され、最終EGR指令値DEFINが次式(3)にて算出され、本ルーチンを終了する。
【0036】
【数3】
DEFIN=DEBSE+LDFINP+LDFINI(i) ・・・(3)
したがって、この最終EGR指令値DEFINを用いて負圧制御バルブ63が制御されることによって、EGRバルブ43の開度が調節される。具体的には、最終EGR指令値DEFINを負圧制御バルブ63のデューティ比に対応させ、上述したように、負圧制御バルブ63の制御を行って、EGRバルブ43のダイヤフラム室59の負圧が調節されることにより、EGRバルブ開度が制御される。
【0037】
次に、図3のステップS104におけるEGR系異常判定処理について図8のフローチャートに基づいて詳述する。
【0038】
まず、ステップS201では、EGR指令値DEFINが0(即ち、EGRバルブ43全閉指令)であり、かつ、実リフトAELFが0でない所定値である状態がa秒以上継続しているかが判定される。ステップS201の判定条件が成立しないときには、ステップS202に移行し、目標リフトTELFと実リフトAELFとの差分の絶対値|TELF−AELF|が所定値b(mm)以上あるような不一致で離れた状態がc秒以上継続しているかが判定される。ステップS201またはステップS202の判定条件が成立するときには、ステップS203に移行し、EGR異常カウンタCEFAILが「1」インクリメントされる。次にステップS204に移行して、EGR異常フラグがオンとされる。そして、ステップS205に移行し、EGR異常ランプが点灯され、本ルーチンを終了する。
【0039】
一方、ステップS202の判定条件が成立しないときには、ステップS206に移行し、EGR異常カウンタCEFAILの値が所定のd回以上であるかが判定される。ステップS206の判定条件が成立するときには、EGRバルブ43のプランジャ45等に摺動不良があるとして上述のステップS204に移行し、同様のEGR異常時の処理が実行される。ここで、ステップS206の判定条件が成立しないときには、ステップS207に移行し、EGR異常フラグがオフとされる。そして、ステップS208に移行し、EGR異常ランプが消灯され、本ルーチンを終了する。
【0040】
なお、EGRバルブ43が全閉状態となったままの不良については、本発明の目的とするところの主旨と異なるため、本実施例では論述しないこととする。また、EGR系異常判定の判定条件としては、上述した以外でもEGRバルブ固着判定可能な判定条件であれば如何なるものでもよい。
【0041】
次に、本発明の一実施例にかかる内燃機関のEGR制御装置で使用されているECU7内のCPUの燃料噴射ポンプ3の噴射量算出の処理手順を図9のフローチャートに基づき、図10、図11及び図12のマップ等を参照して説明する。
【0042】
図9において、まず、ステップS301では、回転数センサ35より検出される機関回転数Ne とアクセルセンサ72により検出されるアクセル開度Accp に応じて、基本噴射量QBASEが算出される。この基本噴射量QBASEは、等アクセル開度にて機関回転数が上昇するにつれて噴射量を減少させ、機関回転数の安定化を可能とするガバナ特性を実現するものである。
【0043】
基本噴射量QBASEは、機関回転数Ne 及びアクセル開度Accp の関数として図10(a)に示すような特性のグラフが図10(b)に示すようにマップ化されており、予めECU7内のROMに記憶されている。この基本噴射量QBASEは、図10(b)のマップを補間演算することにより、精密に求めることができる。
【0044】
次にステップS302〜ステップS305の処理(図9の二点鎖線で囲まれた部分)により最大噴射量QFULLの演算を実行するが、この最大噴射量QFULLは図11(a)に示すように、内燃機関1の性能に関連する機関回転数Ne 及び過給圧Pinから決まるスモーク限界とチャンバ温度や排気温度とから決定される。
【0045】
ステップS302では、基本最大噴射量QFULL0 が算出される。この基本最大噴射量QFULL0 は、無過給時の最大噴射量に対応しており、図11(b)に示すような機関回転数Ne の1次元マップから算出される。次にステップS303に移行して、過給時最大噴射量QFULL1 が算出される。この過給時最大噴射量QFULL1 は、ステップS302で算出される基本最大噴射量QFULL0 に対して過給時のオフセット分を表す最大噴射量であり、基本最大噴射量QFULL0 と同様に、図11(c)に示すような機関回転数Ne の1次元マップから算出される。次にステップS304に移行して、過給圧補正係数K2 が算出される。この過給圧補正係数K2 は、ステップS303で算出される過給時最大噴射量QFULL1 に対する補正係数であり、図11(d)に示すような過給圧センサ(図示略)からの検出電圧VPinの1次元マップから算出される。そして、ステップS305に移行し、最大噴射量QFULLが次式(4)にて算出される。
【0046】
【数4】
QFULL=K2 ×QFULL1 +QFULL0 ・・・(4)
次にステップS306に移行して、ステップS301で求められた基本噴射量QBASEとステップS305で求められた最大噴射量QFULLとを比較して小さい方の値をQFINAとすることによりEGR系異常と判定されないとき(即ち、通常状態のとき)の噴射量が算出される。次にステップS307に移行して、EGR異常時噴射量補正値QEFAIL が算出される。このステップS307における演算処理は、本実施例において本発明の要旨を最も端的に表している部分であり、その詳細については後述する。次にステップS308に移行し、ステップS306で求められたQFINAとステップS307で求められたEGR異常時噴射量補正値QEFAIL との差分から次式(5)のように最終噴射量QFIN が算出される。
【0047】
【数5】
QFIN =QFINA−QEFAIL ・・・(5)
次にステップS309に移行して、最終噴射量からフェイスカム指令角度への変換が実行される。このステップS309では、最終噴射量QFIN の物理量データ(単位:mm3 /sec 等)を実際の燃料噴射ポンプ3への噴射量指令値ANGSPV(°CA)に変換するが、燃料噴射ポンプ3のプランジャ29によって圧送される実際の噴射量とプランジャ29のリフト量に対応するフェイスカム28のフェイスカム指令角度θ(°CA)との間には図12(a)に示すような関係があり、実際に燃料噴射ポンプ3に指令する噴射量指令値ANGSPVが、図12(b)に示す機関回転数Ne と最終噴射量QFIN との2次元マップから算出される。なお、ステップS309以降において、電磁スピルバルブ33を実際に駆動する処理については省略する。
【0048】
次に、図9のステップS307におけるEGR異常時噴射量補正値QEFAIL 算出処理について図13のフローチャートに基づき、図14のマップを参照して詳細に説明する。
【0049】
まず、ステップS401で、EGR異常フラグがオンであるかが判定される。ステップS401の判定条件が成立するときには、図3のステップS102で求められた目標リフトTELFが図3のステップS103で求められた実リフトAELF以下であるかが判定される。ステップS402の判定条件が成立するときには、ステップS403に移行し、EGR異常時噴射量補正値QEFAIL が算出され、本ルーチンを終了する。
【0050】
EGR異常時噴射量補正値QEFAIL は、図14に示すように機関回転数Ne 、負荷(噴射量)QFINA及び実リフトAELFをパラメータとして3次元マップ化されており、予めECU7内のROMに記憶されている。このEGR異常時噴射量補正値QEFAIL は、図14のマップを補間演算することにより、精密に求めることができる。
【0051】
一方、ステップS401またはステップS402の判定条件が成立しないときには、前述の図16の特性図におけるγ領域にあり、ドライバビリティの維持を図るためにEGR異常時であっても噴射量補正の必要なしと判断され、ステップS404に移行し、EGR異常時噴射量補正値QEFAIL が0とされ、本ルーチンを終了する。
【0052】
このように、本実施例の内燃機関のEGR制御装置は、内燃機関1の排気系から取出した排気ガスの一部であるEGRガスを内燃機関1の吸気系に導入するEGRバルブ43と、EGRバルブ43の異常を検出するECU7にて達成される検出手段と、前記検出手段でEGR作動領域下でのEGRバルブ43の異常が検出されたときのEGR量またはEGRバルブ開度を算出するECU7にて達成される演算手段と、前記演算手段で算出された前記EGRバルブの異常検出値に応じ、この時点より高負荷側の領域におけるEGR系異常と判定されないときの通常状態での燃料噴射量に対する減量補正量を予め記憶し、この記憶内容に基づきEGR系異常が検出された時点より高負荷側での燃料噴射量を減量補正するECU7にて達成される補正手段とを具備するものであり、これを請求項1の実施例とすることができる。
【0053】
したがって、ECU7では内燃機関1の排気系から取出した排気ガスの一部であるEGRガスをその吸気系に導入するEGRバルブ43の異常がEGR作動領域下でECU7にて検出されたときのEGR量またはEGRバルブ開度が算出され、この算出されたEGRバルブの異常検出値に応じ、補正手段によりこの時点より高負荷側の領域におけるEGR系異常と判定されないときの通常状態での燃料噴射量に対する減量補正量が記憶され、この記憶内容に基づきEGR系異常が検出された時点より高負荷側でECU7により燃料噴射量が減量補正される。
【0054】
故に、EGRバルブ43の固着・摺動不良等による異常時において、適切に燃料噴射量の減量補正が実施されることで、ドライバビリティ悪化が抑えられると共に、ディーゼル機関におけるスモークの異常発生が抑えられる。
【0055】
また、本実施例の内燃機関のEGR制御装置のECU7にて達成される補正手段は、ECU7にて達成される演算手段で算出された前記EGR量または前記EGRバルブ開度の実値と、目標とする前記EGR量または前記EGRバルブ開度との差分に応じて燃料噴射量を減量補正するものであり、これを請求項2の実施例とすることができる。
【0056】
したがって、ECU7によるEGRバルブ43の異常が検出されたときのEGR量またはEGRバルブ開度の実値と、目標とするEGR量またはEGRバルブ開度との差分に応じて燃料噴射量が減量補正される。即ち、異常となったEGRバルブのEGR量またはEGRバルブ開度のときに内燃機関の制御における燃料噴射量の減量補正が0とされ、それより高負荷側で差分が大きい程、燃料噴射量に対して大きく減量補正される。このため、EGRバルブ43の固着・摺動不良等による異常時の燃料噴射量に対する減量補正量が適切に可変されるためドライバビリティ悪化が抑えられると共に、ディーゼル機関におけるスモークの異常発生が最小限に抑えられる。
【0057】
ところで、本実施例では、EGRバルブ43がそのEGRバルブ開度を検出するリフトセンサ71を有するシステムについて述べたが、本発明を実施する場合には、これに限定されるものではなく、EGR量を検出可能な他のセンサとして、例えば、エアフローメータ、酸素(O2 )センサ、吸気圧センサ等を用いたシステムにおいても同様の効果を得ることができる。
【0058】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1の内燃機関のEGR制御装置によれば、演算手段では内燃機関の排気系から取出した排気ガスの一部であるEGRガスを内燃機関の吸気系に導入するEGRバルブの異常がEGR作動領域下で検出手段にて検出されたときのEGR量またはEGRバルブ開度が算出される。この算出されたEGRバルブの異常検出値に応じ、補正手段によりこの時点より高負荷側の領域におけるEGR系異常と判定されないときの通常状態での燃料噴射量に対する、EGRバルブの異常が検出されたときのEGR量またはEGRバルブ開度に基づく減量補正量が予め記憶され、この記憶内容に基づきEGR系異常が検出されたEGR量またはEGRバルブリフト量に対応する内燃機関の負荷となっている時点より高負荷側での燃料噴射量が上記減量補正量によって減量補正される。これにより、EGRバルブの固着・摺動不良等による異常時において、適切に燃料噴射量の減量補正が実施されることで、ドライバビリティ悪化を抑えることができる。また、ディーゼル機関に適用することで、EGRバルブの異常時におけるスモークの異常発生を抑えることができる。
【0059】
請求項2の内燃機関のEGR制御装置によれば、請求項1の効果に加えて、演算手段で算出されたEGR量またはEGRバルブ開度の実値と、目標とするEGR量またはEGRバルブ開度との差分に応じて燃料噴射量が、この差分が大きい程大きく減量補正される。これにより、EGRバルブの固着・摺動不良等による異常時の燃料噴射量に対する減量補正量が適切に可変されるためドライバビリティ悪化を抑えることができる。また、ディーゼル機関に適用することで、EGRバルブの異常時におけるスモークの異常発生を最小限に抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は本発明の一実施例にかかる内燃機関のEGR制御装置が適用されたディーゼル機関を示す概略構成図である。
【図2】 図2は図1の燃料噴射ポンプを示す詳細断面図である。
【図3】 図3は本発明の一実施例にかかる内燃機関のEGR制御装置で使用されているECUのCPUのEGR量算出の処理手順を示すフローチャートである。
【図4】 図4は図3のフローチャートで用いられる基本EGR指令値DEBSE算出のマップである。
【図5】 図5は図3のフローチャートで用いられる目標リフトTELF算出のマップである。
【図6】 図6は図3のフローチャートで用いられるP項LDFINP算出のグラフ及びマップである。
【図7】 図7は図3のフローチャートで用いられるI項変化量ΔI算出のグラフ及びマップである。
【図8】 図8は図3のステップS104におけるEGR系異常判定処理を詳細に示すフローチャートである。
【図9】 図9は本発明の一実施例にかかる内燃機関のEGR制御装置で使用されているECU内のCPUの燃料噴射ポンプの噴射量算出の処理手順を示すフローチャートである。
【図10】 図10は図9のフローチャートで用いられる基本噴射量QBASE算出のグラフ及びマップである。
【図11】 図11は図9のフローチャートで用いられる最大噴射量QFULL、基本最大噴射量QFULL0 、過給時最大噴射量QFULL1 及び過給圧補正係数K2 算出のグラフ及びマップである。
【図12】 図12は図9のフローチャートで用いられる最終噴射量QFIN から燃料噴射ポンプ3のフェイスカム指令角度θ算出のグラフ及びマップである。
【図13】 図13は図9のステップS307におけるEGR異常時噴射量補正値QEFAIL 算出処理を詳細に示すフローチャートである。
【図14】 図14は図13のフローチャートで用いられるEGR異常時噴射量補正値QEFAIL 算出のマップである。
【図15】 図15は内燃機関のEGR制御装置の機関回転数Ne と噴射量Qとの関係におけるEGR実行領域を示すグラフである。
【図16】 図16は内燃機関のEGR制御装置の負荷(噴射量)とEGRバルブ開度との関係におけるEGRバルブ異常時の噴射量補正領域を説明するグラフである。
【符号の説明】
1 内燃機関
3 燃料噴射ポンプ
5 EGR装置
7 ECU(電子制御装置)
43 EGRバルブ
63 負圧制御バルブ
71 リフトセンサ
Claims (2)
- 内燃機関の排気系から取出した排気ガスの一部であるEGRガスを前記内燃機関の吸気系に導入するEGRバルブと、
前記EGRバルブの異常を検出する検出手段と、
前記検出手段でEGR作動領域下での前記EGRバルブの異常が検出されたときのEGR量またはEGRバルブ開度を算出する演算手段と、
前記演算手段で算出された前記EGRバルブの異常検出値に応じ、この時点より高負荷側の領域におけるEGR系異常と判定されないときの通常状態での燃料噴射量に対する、前記EGRバルブの異常が検出されたときのEGR量またはEGRバルブ開度に基づく減量補正量を予め記憶し、この記憶内容に基づきEGR系異常が検出された前記EGR量またはEGRバルブリフト量に対応する前記内燃機関の負荷となっている時点より高負荷側での燃料噴射量を前記減量補正量によって減量補正する補正手段と
を具備することを特徴とする内燃機関のEGR制御装置。 - 前記補正手段は、前記演算手段で算出された前記EGR量または前記EGRバルブ開度の実値と、目標とする前記EGR量または前記EGRバルブ開度との差分に応じて、この差分が大きい程大きく燃料噴射量を減量補正することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関のEGR制御装置。
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