JP3702372B2 - 摺動絞り弁式気化器 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、気化器本体を貫通する吸気路に連設して絞り弁案内筒が形成されるとともに絞り弁案内筒内には吸気路を開閉制御する摺動絞り弁が移動自在に配置され、更に始動弁案内筒内に、摺動絞り弁より上流側の吸気路又は大気に連なる始動用空気通路と、摺動絞り弁より下流側の吸気路に連なる始動用混合気通路と、始動用燃料が供給される始動用燃料ノズルとが開口するとともに前記始動用空気通路、始動用混合気通路が始動弁案内筒内に移動自在に配置された始動弁にて開閉制御されるとともに始動用燃料ノズル内に始動弁に装着された始動用ニードル弁が挿入配置された始動装置を備えた摺動絞り弁式気化器に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、始動機構にアイドル調整機構を兼ねさせることにより、吸気効率低下の要素を除去するとともに配置上の自由度を拡大し、アイドリング時における空燃比を安定させた摺動絞り弁式気化器は特公平2−25022号公報に示されるもので以下よりなる。すなわち、気化器本体に設けられた吸気道のベンチュリ部の開度を調節すべく該気化器本体に摺動絞り弁が摺動可能に支持され、前記ベンチュリ部を迂回して設けられた始動用バイパスの途中には、該始動用バイパスを開閉すべくそれを横切って摺動可能なスタータ弁と、そのスタータ弁を外部から手動操作すべくスタータ弁に一体化された操作軸とを備える始動機構が設けられる摺動絞り弁式気化器において、前記始動機構のスタータ弁は、それの摺動方向に沿う軸線回りに回転可能に構成されると共に、該スタータ弁に対応して始動用バイパスに開口したアイドル調整用燃料ノズルに挿通し得るジエットニードルを保持し、前記操作軸は、気化器本体に対する前記軸線回りの回転動作が阻止され且つ前記軸線に沿う方向の進退動作が許容されたスライダに螺合され、さらに気化器本体には、前記スタータ弁の閉じ側への摺動限界を規制すべく前記スライダに係合し得るストッパ部が設けられる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
かかる従来の摺動絞り弁式気化器によると、回転動作が阻止され且つ軸線に沿う方向の進退動作が許容されるスライダを格別に用意し、そのスライダを操作軸に螺着する必要があること、及びスライダに係合しうるストッパ部を格別に用意する必要があること、より部品点数の増加とあいまって組みつけ工数が増加し、気化器の製造コスト高を招来して好ましいものでない。
【0004】
本発明は、かかる問題点に鑑み成されたもので、前記摺動絞り弁式気化器において、気化器の製造コストを低減すること、及び、機関減速運転後における加速運転を良好に行なうことのできる摺動絞り弁式気化器を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的は、気化器本体を貫通する吸気路を開閉制御する摺動絞り弁と;摺動絞り弁より上流側の吸気路又は大気に連なり、摺動弁案内筒の一側壁に開口する始動用空気通路と、摺動絞り弁より下流側の吸気路に連なり、始動弁案内筒の他側壁に開口する始動用混合気通路と、始動用燃料が供給され、始動弁案内筒の底部に開口する始動用燃料ノズルと、始動弁案内筒内に移動自在に配置され、始動用空気通路、始動用混合気通路の開口を開閉制御するとともに始動用燃料ノズル内に挿入され、上方に大径部,下方に小径部が形成されている始動用ニードル弁が取着された始動弁とを備えた摺動絞り弁式気化器において、上記始動弁には、当該始動弁の最下降位置において、始動弁の外周側面の円周方向に沿って穿設され、制御弁座とともに始動用空気通路と始動用混合気通路との連通面積を可変制御する制御溝が形成されているとともに、上方に向かう調整軸とが形成され、前記調整軸は、始動弁案内筒の上方開口部のメネジに螺着されるホルダー部材を貫通して上方に突出配置されるとともにその上端にノブが固着され、更に、上記ホルダー部材の長手軸心方向に穿設された連結杆ガイド溝内に上記調整軸に取着された連結杆が挿入されていることにより、上記始動弁の長手軸心方向の移動が許容されるとともに始動弁とホルダー部材とが同期的に回転可能に連結され、更に、始動弁は、当該始動弁とホルダー部材との間に縮設されたスプリングによって、始動弁案内筒の底部に向けて付勢され、その最下降位置において、ノブ又はホルダー部材を回転することによって制御弁座と始動弁の制御溝による始動用空気通路と始動用混合気通路との最低連通面積を制御した後に、ホルダー部材の回転を回転停止部材によって停止し、始動弁の前記最低連通面積制御位置において、始動用ニードル弁の大径部と始動用燃料ノズルとによって形成される始動用燃料ノズルの間隙を始動用燃料ノズルから始動用混合気通路に燃料が吸出されない微少なる間隙に制御したことによって達成される。
【0006】
【作用】
始動弁が始動弁案内筒内において、もっとも下方に位置する最下降位置において、ノブ又はホルダー部材を回転し、これによって制御弁座と始動弁の制御溝により始動用空気通路と始動用混合気通路との最低連通面積が制御され、かかる状態において、回転停止部材によってホルダー部材の回転が停止される。ここで機関のアイドリング運転時において、摺動絞り弁は吸気路を全閉状態に保持され、機関のアイドリング運転に必要なアイドリング空気量は、始動空気通路、最低連通面積にて制御された始動弁の制御溝、始動混合気通路を介して摺動絞り弁より下流側の吸気路に向けて制御されて、供給される。
一方、機関のアイドリング運転時において必要なアイドリング燃料は、パイロットアウトレット孔より摺動絞り弁より下流側の吸気路に向けて供給されるもので、前記アイドリング空気とアイドリング燃料とによって機関のアイドリング運転が行なわれる。
又、かかる機関のアイドリング運転時において、最下降位置にある始動弁に取着された始動用ニードル弁は、その大径部が始動用燃料ノズル内に挿入配置され、始動用燃料ノズルと始動用ニードル弁の大径部とによって微少間隙に形成されるので始動用燃料ノズルから始動混合気通路に向けて燃料が吸出されることはない。
摺動絞り弁が吸気路を高開度に開放した状態から吸気路を全閉状態に閉塞する機関の減速運転時において、摺動絞り弁より下流側の吸気路には始動弁の最低連通面積に制御された制御溝に相当して始動用空気通路、始動用混合気通路を介して空気が供給される。かかる状態において、始動用燃料ノズルと始動用ニードル弁との間に形成される間隙は微少に形成されるので、始動用燃料ノズルから始動用混合気通路を介して燃料が吸気路内に吸出されることが抑止される。而して、かかる減速運転時において、摺動絞り弁より下流側の吸気路を含む吸気管の内壁に燃料が付着することが抑止される。機関始動時において、ノブは長手軸心方向に沿って引かれる。これによると、始動弁は、始動用空気通路、始動用混合気通路を高開度に開放するとともに、始動用燃料ノズルと始動用ニードル弁の小径部とによって大なる間隙が形成され、これによって、始動に適した濃混合気が増量されて供給される。
【0007】
【実施例】
以下、本発明になる摺動絞り弁式気化器の一実施例を図により説明する。図1は、始動装置を含む摺動絞り弁式気化器の縦断面図。図2は図1における始動装置の拡大縦断面図。図3は図2のA−A線における横断面図。図4は図2のC−C線における要部拡大横断面図。1は、内部を吸気路2が側方に貫通して形成された気化器本体であり、吸気路2の中間部より上方に向かって摺動絞り弁案内筒3が連設され、その上部は開口する。4は気化器本体1の下方に対接して配置された浮子室本体であり、気化器本体1の下方凹部と浮子室本体4とにより浮子室5が形成され、浮子室5内には、フロート6が配置されるとともにフロート6によって移動されるフロートバルブが燃料流路の端部に配置せるバルブシートを開閉し、浮子室内に一定なる液面B−Bを形成保持する。尚、前記フロートバルブ、バルブシート、燃料流路は図示されない。7は、吸気路2の底部に開口するニードルジエットであり、このニードルジエットは主燃料ジエット8を介して浮子室5内の一定液面B−B下に連絡され、9は、ニードルジエット7より下流側の吸気路2の底部に開口するバイパス孔であり、バイパス孔9はブリード管を備えた低速燃料ジエット10を介して浮子室5内の一定液面B−B下に連絡され、更に、バイパス孔9より下流側の吸気路2の底部にはパイロットアウトレット孔11が開口し、このパイロットアウトレット孔11は低速燃料ジエット10とバイパス孔9とを連絡する低速燃料通路12より分岐する。13は摺動絞り弁案内筒3内に移動自在に配置されるとともに運転者によって操作させる操作ワイヤー(図示せず)に係止されて吸気路2を開閉制御する摺動絞り弁であり、その中心部には、下方に向かって突出するジエットニードル14が装着される。そして、前記ニードルジエット7内にジエットニードル14が挿入配置され、前記バイパス孔9は、摺動絞り弁13の下流側の端部13A(いいかえると摺動絞り弁13の機関側の端部であって図1における左側)より上流側(図1において右側)の吸気路2に開口し、前記パイロットアウトレット孔11は摺動絞り弁13より下流側の吸気路2Aに開口する。そして、摺動絞り弁13がもっとも下方に移動した状態において、吸気路2は摺動絞り弁13によって全閉状態に保持される。図1は摺動絞り弁13による吸気路2の全閉状態を示す。摺動絞り弁式気化器は以上によって形成される。
【0008】
始動装置Sは以下よりなる。20は上方に向かって開口する筒状の始動弁案内筒21が穿設された始動装置本体であり、始動弁案内筒21の一側壁には摺動絞り弁13より上流側の吸気路2B又は大気に連なる始動用空気通路22が開口するとともに始動弁案内筒21の他側壁には摺動絞り弁13より下流側の吸気路2Aに連なる始動用混合気通路23が開口し、さらに始動弁案内筒21の下方の底部には始動用燃料ノズル24が開口するもので、この始動用燃料ノズル24には、始動装置本体20の下方に配置した始動燃料槽25内の燃料が始動燃料制御ジエット26を介して供給される。始動燃料槽25は浮子室5内の一定液面B−B下と連絡され、浮子室5内の燃料が供給される。尚、始動装置本体20は気化器本体1と一体形成され、始動燃料槽25は浮子室本体4と一体形成されるのが好ましい。27は始動燃料制御ジエット26によって制御された燃料を微粒化させる為のブリード空気通路であり、浮子室5の一定液面B−Bの上部又は大気と連絡される。
【0009】
28は、始動弁案内筒21内に移動自在に配置された始動弁であり、始動弁28には上方に向かってのびる調整軸29が一体的に形成される。この始動弁28は、その外周部分において始動用空気通路22と始動用混合気通路23の開口を開閉制御するもので、図1、図2における始動弁28の位置状態は、始動弁28が始動弁案内筒21内においてもっとも下方に下がった最下降位置状態を示すもので、かかる状態により始動弁28が、上方へ移動することによって、始動用空気通路22、始動用混合気通路23は徐々にその開口を増加し、始動弁28が始動用空気通路22、始動用混合気通路23を横断して上方へ通過することによって始動用空気通路22、始動用混合気通路23は全開状態となる。そして、前記始動弁28が始動弁案内筒21内において、もっとも下方に下がった最下降位置状態において、始動弁28の外周面における下端28Aは図1に示される如く、始動用空気通路22、始動用混合気通路23に対し下方位置にあり、かかる始動弁28の最下降位置状態において、始動用空気通路22、始動用混合気通路23に対応する始動弁28の外周側面には制御溝28Bが穿設される。この制御溝28Bは、始動用混合気通路23と始動用空気通路22との接続部分に形成される制御弁座20Bとともに始動弁28の回転によって始動用空気通路22から始動用混合気通路23へ流下する空気量を可変制御する機能を有するもので、本例にあっては、始動弁28の長手軸心方向における溝幅Dが一定であって、始動弁28の円周方向においてその溝深さHを漸次変わるよう形成したもので、図4に示すごとく、始動弁28の時計方向において、その溝深さHが漸次増加する。以上によると、制御弁座20Bと制御溝28Bとによって形成される連通面積は、始動弁28の反時計方向への回転に応じてリニアに増加し、始動用空気通路22から始動用混合気通路23へ流下する空気量をその回転に応じて制御しうるものである。尚、制御溝28Bは、溝深さHを一定とし、始動弁28の長手軸心方向における溝幅Dを変化させてもよい。
【0010】
又、始動弁28には、長手軸心方向に沿って始動用ニードル弁30が一体的に取着されるもので、この始動用ニードル弁30は始動弁28の下端より下方に向かって突出し、始動用燃料ノズル24内に挿入配置される。前記、始動用ニードル弁30は、上方に大径部30Aが形成され、その下方に小径部30Bが連続して形成される。そして、始動弁28の始動弁案内筒21内における最下降位置状態において、始動用燃料ノズル24内には始動用ニードル弁30の大径部30Aが挿入配置され、一方始動弁28の始動用空気通路22、始動用混合気通路23に対する高開度位置状態あるいは全開位置状態(後述する始動弁28による始動用混合気供給状態)において、始動用燃料ノズル24内には始動用ニードル弁30の小径部30Aが挿入配置される。そして、特に始動用ニードル弁30の大径部30Aと、始動用燃料ノズル24とによって形成される間隙は極めて微少なる間隙に形成されなければならない。この微少な間隙とは、100ミクロン以下をいうもので、本実施例にあっては、始動用燃料ノズル24の内径を2ミリメートル、始動用ニードル弁30の大径部30Aの外径を1.95ミリメートルとし、それらによって形成される間隙を50ミクロンとした。尚、始動用ニードル弁30の小径部30Bは1ミリメートルとした。
【0011】
始動弁28より上方に向かう調整軸29には球状の係止突部29Aが形成され、この係止突部29Aは調整軸29の外径よりわずかに大径をなす。又、係止突部29Aより上方の調整軸29には、その長手軸心方向に直交する連結杆29Bが固着されるもので、この連結杆29Bは、調整軸29の外周面より側方に突出する。更に又、調整軸29の上端にはノブ31が一体的に固着される。32は、始動弁案内筒21の、始動装置本体20の上端面20Aへの上方開口部21Aを閉塞するホルダー部材であり、例えばナイロン等の合成樹脂材料にて形成される。ホルダー部材32は、調整軸29の係止突部29Aが長手軸心方向に沿って移動しうる挿通孔32Aがその中心部の長手軸心方向に貫通して穿設され、前記挿通孔32Aの上方には、調整軸29の係止突部29Aの外径より小径をなす環状の位置決め首部32Bが形成される。本例にあって、位置決め首部32Bの内径は調整軸29の外径と略同一径とした。又、ホルダー部材32の外径部分は以下の如く構成される。すなわち、32Cは、横断面が六角形の如き多角形状をなすスパナ掛け部であり、スパナ掛け部32Cより下方に向かってオネジ部32Dが突出して形成され、スパナ掛け部32Cより上方に向かい環状鍔部32Eを介して短円筒部32Fが突出して形成される。前記、短円筒部32Fには、その上端より長手軸心方向に沿って複数の縦溝32Hが穿設され、さらにホルダー部材32の下端から短円筒部32Fに向けて長手軸心方向に沿って連結杆ガイド溝32Jが穿設される。この連結杆ガイド溝32Jは調整軸29に固着された連結杆29Bを長手軸心方向に案内する。33は、ホルダー部材32のオネジ部32Dに螺着された回転停止部材である。
【0012】
そして、始動装置は、以下の如く組みつけられる。始動弁案内筒21内に始動用ニードル弁30を備えた始動弁28を挿入するとともに調整軸29の上端よりホルダー部材32の挿通孔32Aを挿通し、ホルダー部材32のオネジ部32Dを始動弁案内筒21の上方開口部21Aに刻設したメネジ21Bにあわせスパナ掛け部32Cを介してホルダー部材32を回転することによりホルダー部材32を始動弁案内筒21の上方開口部21Aのメネジ21Bに仮螺着する。仮螺着とは、以後においてホルダー部材32を回転して調整した後にホルダー部材を固定することによって始動弁28の制御溝28Bによる連通面積を調整する為である。そして、かかる状態において、始動装置本体20の上端面20Aとスパナ掛け部32Cとの間のホルダー部材32のオネジ部32Dにはナットよりなる回転停止部材33が螺着され、このとき回転停止部材33としてのナットの上面とスパナ掛け部32Cの下面との間、及びナットの下面と始動装置本体20の上端面20Aとの間には調整用の間隙がそれぞれ形成される。かかる状態において連結杆29Bはホルダー部材32の連結杆ガイド溝32J内に挿入配置される。又、始動弁案内筒21内には、一端が始動弁28に係止され、他端がホルダー部材32に係止されるスプリング34が縮設されるもので、これによると、調整軸29を含む始動弁28は図において下方に押圧され、このとき調整軸29の上端は、ホルダー部材32より上方に向かって突出し、このホルダー部材32より上方に向かって突出する調整軸29にノブ31を圧入して固定する。この状態において、始動弁28の下端28Aは、始動用空気通路22、始動用混合気通路23より下方位置にあるとともに制御溝28Bは始動用混合気通路23、始動用空気通路22に対応し、さらに始動用ニードル弁30の大径部30Aが始動用燃料ノズル24内に挿入され、それらによって形成される間隙は微少に制御される。本例にあって、その間隙は50ミクロンに制御された。
【0013】
次にその作用について説明する。まず、機関のアイドリング運転時について説明する。かかる状態において、摺動絞り弁13は、運転者による上方へのけん引力を受けるものでなく、吸気路2は全閉状態に保持される。そして、アイドリング運転に必要なアイドリング空気量は、以下のように調整される。すなわち、ホルダー部材32は又はノブ31を回転する。前記回転によると、ホルダー部材32の連結杆ガイド溝32J内に調整軸29に固着した連結杆29Bが配置されていることによって前記回転に同期して始動弁28が回転するもので、ホルダー部材32の時計方向への回転によると始動弁28の制御溝28Bと制御弁座20Bとによって形成される始動用空気通路22と始動用混合気通路23との連通面積は減少し、一方ホルダー部材32の反時計方向への回転によると制御溝28Bと制御弁座20Bとによって形成される連通面積は増加する。従って、ホルダー部材32又はノブ31を適当に所望の方向へ回転することによって始動弁28を回転すると、始動用空気通路22から制御溝28Bを介して始動用混合気通路23内へアイドリング運転に適したアイドリング空気量を適正に制御して供給することができるものである。
【0014】
そして、前記ホルダー部材32の回転調整後において、回転停止部材33を螺動し、回転停止部材33としてのナットを始動装置本体20の上端面20A上に当接して固定するもので、これによると、ホルダー部材32の以後の回転は阻止されるもので、始動弁28の長手軸心線回りの回転も阻止される。すなわち、このようにして調整された始動弁28の制御溝28Bによるアイドリング空気量は、再び回転停止部材33としてのナットを始動装置本体20の上端面20Aよりユルメ、ホルダー部材32を再度回転させない限り変化するものでなく、常に同一なるアイドリング空気量を供給しつづけることができる。尚、回転停止部材33としてネジを用い、始動装置本体20にネジを螺着し、このネジをホルダー部材32に押圧してホルダー部材32の回転を停止させてもよい。一方、かかる摺動絞り弁13の全閉状態において、パイロットアウトレット孔11には、アイドリング運転によって生起する吸気路2A内の負圧が作用するもので、これによると、低速燃料ジエット10、低速燃料通路12を介してアイドリング運転に適した低速燃料が摺動絞り弁13より下流側の吸気路2Aに向けて供給される。このパイロットアウトレット孔11、低速燃料ジエット10は機関へのセッティング作業によって選定される。而して、始動用混合気通路23を介して吸気路2A内に供給されるアイドリング用空気と、パイロットアウトレット孔11を介して吸気路2A内に供給されるアイドリング用燃料とが吸気路2Aを介して機関へ供給され、もって機関の良好なアイドリング運転を行なうことができる。尚、かかるアイドリング運転時において、始動装置Sの始動用燃料ノズル24内には、始動用ニードル弁30の大径部30Aが挿入されて、それらによって形成される間隙(本実施例では50ミクロン)が微少に制御されていることから、始動用燃料ノズル24から始動用混合気通路23に向けて燃料が吸出されることはなく、又、バイパス孔9にあっては、摺動絞り弁13が吸気路2を全閉状態に保持(摺動絞り弁13の下流側の端部13Aが吸気路2を閉塞)し、バイパス孔9に対して摺動絞り弁13より下流側の吸気路2A内の負圧が作用することがないことから、バイパス孔9より低速燃料が吸気路2内へ吸出されることがない。そして、運転者によって摺動絞り弁13がけん引操作力を受け、摺動絞り弁13が吸気路2を開放して吸気路2を流れる空気量を増加すると、その低開度域においては、バイパス孔9より低速燃料が付加的に増量され、その中、高開度域においては、ニードルジエット7から中、高速用燃料が付加的に増量されて、摺動絞り弁13の各開度における機関の運転が良好に行なわれる。
【0015】
次に、摺動絞り弁13が中、高開度に開放された状態から前記アイドリング運転状態、いいかえると摺動絞り弁13の全閉状態に急速に戻される機関の減速運転時について説明すると、摺動絞り弁13より下流側の吸気路2Aには、始動弁28によって制御されたアイドリング用空気が始動用混合気通路23を介して供給されるとともにパイロットアウトレット孔11を介してアイドリング用燃料が供給される。以上によると、パイロットアウトレット孔11より吸気路2A内に吸出された燃料が吸気路2Aの内壁に付着したとしても該燃料は始動用混合気通路23から吸気路2A内に向けて供給されるアイドリング用空気によって吹き飛ばされて吸気路2Aの内壁よりハク離し、かかるアイドリング用燃料が減速運転中において吸気路2Aに付着して滞溜することが抑止される。従って、かかる減速運転時より再び摺動絞り弁13を開放する加速運転時において、吸気路2Aの内壁に付着した燃料が一気に機関に向けて供給され、混合気が過濃となることがなく、特に減速運転後における加速運転を良好に行なうことができたものである。これは、特に減速運転が比較的長時間に渡って継続して行なわれる長坂の下り運転あるいは、加速、減速が連続して行なわれる例えばレース用機関に搭載される気化器として有効である。
【0016】
そして、機関雰囲気温度の低い状態における機関始動操作について説明すると、運転者は温度の低いことを感知し、ノブ31をつかむとともにスプリング34のバネ力に抗してノブ31を上方向へけん引移動し、これによると、係止突部29Aはホルダー部材32の位置決め首部32Bを外側方に向けて拡大した後に位置決め首部32Bに支承されて位置決め停止される。これによると、調整軸29、始動弁28はノブ31と同期して上方向へ移動し、始動弁28は始動用空気通路22、始動用混合気通路23を全開状態に保持し、一方始動用ニードル弁30の大径部30Aは始動用燃料ノズル24内より上方向へ脱出し、始動用燃料ノズル24内に小径部30Bが挿入され、小径部30Bと始動用燃料ノズル24とによって大なる間隙が形成保持される。かかる状態において、機関を始動操作すると、摺動絞り弁13より下流側の吸気路2A内に生起する大なる負圧が始動用混合気通路23に作用し、これによって始動用空気通路22よりアイドリング空気量に比較して増量された始動用空気を吸入するとともに始動用燃料ノズル24の大なる間隙よりアイドリング燃料に比較して増量された始動用燃料を吸出し、これらによって始動用混合気が形成され、この増量された始動用の濃混合気が始動用混合気通路23より吸気路2Aに向けて供給され、もって機関雰囲気温度の低い状態における機関の始動を円滑に行なうことができるものである。
【0017】
かかる機関の始動運転後における時間経過とともに、機関の暖機運転が完了すると、運転者はノブ31を下方に押圧するとともに係止突部29Aと位置決め首部32Bとの支承を解除するもので、始動弁28はスプリング34のバネ力とあいまって下方向へ移動し、始動弁28は始動弁案内筒21内の最下降位置に再び戻る。かかる始動弁28の最下降位置は、ホルダー部材32を前記において調整し、始動弁28の制御溝28Bによるアイドリング空気制御状態である。かかるアイドリング状態において、再び始動弁28の制御溝28Bにより始動用空気通路22、始動用混合気通路23は制御されたアイドリング用空気を吸気路2Aに向けて供給し、一方、始動用ニードル弁30の大径部30Aが始動用燃料ノズル24内に再び挿入されたので始動用燃料ノズル24から燃料が吸出されることはなく、再び前記パイロットアウトレット孔よりアイドリング用燃料が供給され、機関のアイドリング運転が行なわれる。
【0018】
【発明の効果】
以上の如く、本発明になる摺動絞り弁式気化器によると、連結杆を備えた始動弁、縦溝及び連結杆ガイド溝を備えたホルダー部材、回転停止部材を用意すればよいもので、従来に比して部品点数を削減できるとともにその組みつけが容易となったもので、特に始動装置の製造コストを低減できたことによって気化器の製造コストの低減を達成できたものである。更に、機関の減速運転時において、吸気路内には始動用混合気通路から空気のみを供給し、パイロットアウトレット孔から吸気路内に吸出される燃料を始動用混合気通路から供給される空気にて吹き飛ばし、吸気路の内壁への燃料の付着、滞溜を防止できたので、減速運転後における加速運転を良好に行なうことができたものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明になる摺動絞り弁式気化器の始動装置を含む一実施例を示す縦断面図。
【図2】図1における始動装置の拡大縦断面図。
【図3】図2のA−A線における縦断面図。
【図4】図2のC−C線における要部縦断面図。
【符号の説明】
2 吸気路
2A 摺動絞り弁より下流側の吸気路
2B 摺動絞り弁より上流側の吸気路
9 バイパス孔
11 パイロットアウトレット孔
13 摺動絞り弁
20 始動装置本体
20B 制御弁座
21 始動弁案内筒
22 始動用空気通路
23 始動用混合気通路
24 始動用燃料ノズル
28 始動弁
28B 制御溝
29 調整軸
29B 連結杆
30 始動用ニードル弁
30A 大径部
30B 小径部
32 ホルダー部材
32J 連結杆ガイド溝
33 回転停止部材
Claims (1)
- 気化器本体を貫通する吸気路を開閉制御する摺動絞り弁と;摺動絞り弁より上流側の吸気路又は大気に連なり、摺動弁案内筒の一側壁に開口する始動用空気通路と、摺動絞り弁より下流側の吸気路に連なり、始動弁案内筒の他側壁に開口する始動用混合気通路と、始動用燃料が供給され、始動弁案内筒の底部に開口する始動用燃料ノズルと、始動弁案内筒内に移動自在に配置され、始動用空気通路、始動用混合気通路の開口を開閉制御するとともに始動用燃料ノズル内に挿入され、上方に大径部,下方に小径部が形成されている始動用ニードル弁が取着された始動弁とを備えた摺動絞り弁式気化器において、上記始動弁には、当該始動弁の最下降位置において、始動弁の外周側面の円周方向に沿って穿設され、制御弁座とともに始動用空気通路と始動用混合気通路との連通面積を可変制御する制御溝が形成されているとともに上方に向かう調整軸とが形成され、前記調整軸は、始動弁案内筒の上方開口部のメネジに螺着されるホルダー部材を貫通して上方に突出配置されるとともにその上端にノブが固着され、更に、上記ホルダー部材の長手軸心方向に穿設された連結杆ガイド溝内に上記調整軸に取着された連結杆が挿入されていることにより、上記始動弁の長手軸心方向の移動が許容されるとともに始動弁とホルダー部材とが同期的に回転可能に連結され、更に、始動弁は、当該始動弁とホルダー部材との間に縮設されたスプリングによって、始動弁案内筒の底部に向けて付勢され、その最下降位置において、ノブ又はホルダー部材を回転することによって制御弁座と始動弁の制御溝による始動用空気通路と始動用混合気通路との最低連通面積を制御した後に、ホルダー部材の回転を回転停止部材によって停止し、始動弁の前記最低連通面積制御位置において、始動用ニードル弁の大径部と始動用燃料ノズルとによって形成される始動用燃料ノズルの間隙を始動用燃料ノズルから始動用混合気通路に燃料が吸出されない微少なる間隙に制御したことを特徴とする摺動絞り弁式気化器。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP15945994A JP3702372B2 (ja) | 1994-06-17 | 1994-06-17 | 摺動絞り弁式気化器 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP15945994A JP3702372B2 (ja) | 1994-06-17 | 1994-06-17 | 摺動絞り弁式気化器 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH084592A JPH084592A (ja) | 1996-01-09 |
JP3702372B2 true JP3702372B2 (ja) | 2005-10-05 |
Family
ID=15694231
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP15945994A Expired - Fee Related JP3702372B2 (ja) | 1994-06-17 | 1994-06-17 | 摺動絞り弁式気化器 |
Country Status (1)
Country | Link |
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JP (1) | JP3702372B2 (ja) |
-
1994
- 1994-06-17 JP JP15945994A patent/JP3702372B2/ja not_active Expired - Fee Related
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Publication number | Publication date |
---|---|
JPH084592A (ja) | 1996-01-09 |
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