JP3702067B2 - Mri装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、NMR(核磁気共鳴)現象を利用してイメージングを行うMRI装置(磁気共鳴イメージング装置)に関する。
【0002】
【従来の技術】
Diffusion Weighted Imaging(拡散強調イメージング)は、水分子の微細でランダムな運動(IVIM,intravoxel incoherent motion) の特性を画像のコントラスト要因として、画像化した核磁気共鳴画像(Magnetic Resonance Imaging)であり、この画像上では例えば脳梗塞部分が高信号高輝度で表れ、健常部分が低信号低輝度で表される。
【0003】
拡散の度合いを強調するための手法としては古くから、図6に示すようなStejscal-Tanner のシーケンスが知られている(Stejscal EO,Tanner JE:Spin diffusion measurements:Spin echos in the presence of a time depentent field gradient.J Chem Phys,42:299-292,1965.)。
【0004】
これは拡散による水分子の微細な動きによるスピンの位相ズレを強調するために、スピンエコー法で、ある軸(一般的には任意であるが、図6の場合はリード方向)に180度パルスをはさんで、時間と振幅の等しい2つの勾配磁場パルスからなる付加的なMotion Probing Gradient (MPG)パルスを加えたものである。
【0005】
すなわち、最初の勾配磁場パルスによってスピンの位相ズレを与え、2番目の勾配磁場パルスによってスピンの位相ズレを元に戻すようにする。2つの勾配磁場パルスの間に水分子の位置が変化しなければ、信号強度には影響を与えないが、この間に水分子が運動していた場合には、スピンは位相分散を起し、エコー信号の強度を減らす結果となる。
【0006】
生体内では、分子の微視的な並進運動には拡散以外の運動も含まれるので、拡散強調イメージングで強調されるのは拡散だけでなく、微視的並進運動の総和、すなわち「みかけの拡散」ということになる。このため、拡散強調イメージングからは、みかけの拡散係数(ADC)が得られる。
【0007】
しかし、この拡散強調イメージングでは、MPGパルスを加えなければならないので、撮像時間が長くかかる。このため、患者の負担が大きく、患者の動きを抑制しきれず、体動アーチファクトが問題となってしまう。
【0008】
また、拡散強調イメージングでは、生体内での水分子のあらゆる動きによる位相変化が生じるため、拡散のみならず、体動、血流、呼吸動、心拍動などの大きな動き(bulk motion) による位相シフトも強調される。
【0009】
通常の2DFT法(2次元フーリエ変換法)では、繰り返し時間(TR)毎に位相エンコードを乃至数ラインずつ位相シフトさせながら、K空間全体を収集するが、1TR内でのエコーは200msec以内に収集されるため、動きによる位相シフトは同程度とみなせるが、TRが変わって動きの量が異なると、別のTRでのエコーの位相シフト量に違いが生じる。
【0010】
この違いは画像上では、各周波数成分で位置のシフト量が異なる、すなわちゴーストとして表れることになる。
上述の大きな動きの内、心拍動によるものは、ECG同期(心電同期)をかけて、各TRごとにR−R波内の同時相で収集して、動きによる位相シフトを同程度にすることで、ゴーストを軽減することができる。特に収集時相は、動きの激しい時相(R波前後の期間内)を避けることが行われている。
【0011】
このように拡散強調イメージングでは、通常、ECG同期を行うが、勾配磁場パルスを印加するためにシーケンス長が比較的長いので、多スライス撮像を行う場合、そのスライス枚数は少なくなってしまう。スライス枚数を多く設定した場合には、2つのR波にまたがって収集することになるが、R−R波間隔は必ずしも一定でないため、同期トリガから時間的に遠い後ろの時刻に収集されるスライスほど、TR間での動きの状態の変化が大きくなり、ゴーストが強く発生してしまう。また数心拍にわたって撮像すると、実質的なTRが延び、K空間上での1つの位相エンコードラインから次のラインのデータが収集されるまでの時間が長くなることになる。
【0012】
スライス枚数を増やすために、複数スライスを同時に励起し、画像を各スライスに分離する方法がある。この方法としては、Hadamard encoding による方法(S. P. Souza, J. Szumowski, C.L.Dumolin, D.P.Plewes, G. Glover : SIMA : Simultaneous Multislice Acqusition of MR Images by Hadamard-Encoded Excitation J.of Computer Assisted Tomography,12:1026-1039,1988) や、Fourier encodingによる方法((G.H.Glover,A.shimakawa:POMP(Phase Offset Multi-Planar)imaging:Book of abstract SMRM 241(1988)),(G.H. G1over : POMP (Phase Offset Multi-Planar)Volume Imaging:A New Technique J.of SMRI 457(1991)) がある。
【0013】
しかし、これらの方法では、各スライスを励起するRFパルスを同時刻に印加するために、各RFパルスのピーク位置が重なって、同時励起するスライス数を多くするほど、合成RFパルスのピークが高くなる。
【0014】
出力できるRFパルスのピークは、S.A.R.やRFアンプ、さらにRFコイルの耐久性などによって限界があるので、同時励起できるスライス数は制限を受けやすくなる。
【0015】
そこで、限られたRFピークの内で同時励起スライス数を増やすための方法として、各スライスを励起するパルスを少しずつすらして重ね合わせる方法(以下、Quad法と呼ぶ)が提案されている((Ching Yao,Li1y Shen,Jiang Wu,Margaret Kritzer : Parallel Multi-slice Imaging with Limited Peak RF Power.Book of abstract SMRM 427 (1993))。このQuad法では、1TR内で収集するエコーが1つであるため、撮像時間が長くなってしまうため、拡散強調イメージングに併用した場合、体動アーチファクトが発生するおそれが高くなる。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、拡散強調イメージングにおいて1心拍内で収集可能なスライス枚数を増加させるMRI装置を提供することにある。
【0017】
【課題を解決するための手段】
本発明は、静磁場中におかれた被検体に所定のパルスシーケンスで高周波磁場、勾配磁場を印加し、これによって発生する磁気共鳴信号を収集して磁気共鳴画像を構成するMRI装置において、周波数の相違する複数の高周波パルスを所定時間だけずらして印加することにより複数の領域をほぼ同時に励起する手段と、
水分子の拡散の度合いを強調するための付加的勾配磁場を印加する手段と、
勾配磁場の反転によりエコーを繰り返し発生させる手段とを有する。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して、本発明を一実施形態により説明する。
図1に本実施形態が適用されるMRI装置の構成を示す。磁石部1には、静磁場コイル2、勾配コイルセット3、高周波コイル(RFコイルともいう)4が装備される。
【0019】
静磁場コイル1は、静磁場電源6から電流の供給を受けて、磁石部1の略中央部に位置する略円筒形の撮像可能領域内に静磁場を発生する。撮像時には被検体は寝台5に載置された状態でこの撮像可能領域内に挿入される。
【0020】
なお、説明の便宜上、この撮像可能領域の中心を原点として、静磁場の向きと平行にZ軸をとって、直交3軸(XYZ)を規定する。
勾配コイルセット3には、磁場強度がXYZ各軸に沿って空間的に勾配するXYZ各軸の勾配磁場を撮像可能領域内に発生するために3組の勾配コイルが組み込まれている。勾配電源7は、この勾配コイルセット3に軸毎に電流を供給することが可能に構成されている。
【0021】
例えば、X、Y、Z各軸の勾配磁場は、任意に撮像スライスを決めるためのスライス選択用勾配磁場Gs 、空間的位置情報を位相情報としてMR信号に与えるための位相エンコード用勾配磁場Ge 、空間的位置情報を周波数情報としてMR信号に与えるためのリードアウト用勾配磁場Gr に対してそれぞれ対応される。
【0022】
高周波コイル4は、送信機8から高周波電流の供給を受けて、高周波磁場(RFパルスともいう)を発生する。なお、高周波磁場には、被検体内の対象原子核の磁化スピンを励起して横磁化成分を発生させるフリップ角が90度の励起パルスや、磁化スピンの位相の進み遅れを反転させるフリップ角が180度の反転パルスなどの種類がある。
【0023】
送信機8は、高周波信号を発生する発振部と、高周波信号の位相を選択する位相選択部と、位相選択された高周波信号の周波数を変調する周波数変調部と、周波数変調された高周波信号の振幅を例えばシンク間数に従って変調する振幅変調部と、振幅変調された高周波信号を増幅し、高周波コイル4に供給する高周波増幅部を有する。
【0024】
受信機9は、高周波コイル4を介して、横磁化から生じるMR信号を増幅するプリアンプと、検波されたMR信号をディジタル信号に変換するアナログディジタル変換部を有する。
【0025】
プロセッサ12は、受信機9からのMR信号に対して例えば2次元フーリエ変換(2DFT)を実行して、画像データを再構成する再構成部、再構成された画像データを出力する出力部を有する。ディスプレイ13は、プロセッサ12から出力された画像データを表示する。
【0026】
コントローラ11は、オペレータとのインターフェースとしてのコンソール14から撮像条件等を入力する入力部、入力された撮像条件に従ってパルスシーケンスデータを作成するパルスシーケンスデータ作成部、作成されたパルスシーケンスデータをシーケンサ10に出力する出力部、アベレージングや画像再構成等の信号処理に必要な情報をプロセッサ12に出力する出力部を有する。
【0027】
シーケンサ10は、コントローラ11から供給されたパルスシーケンスデータを解読し、それに従って勾配電源7、送信機8、受信機9を制御して、勾配パルスの印加、高周波パルスの印加、受信の各タイミングを調整する。
【0028】
次に本実施形態の動作について説明する。図2に本実施形態による拡散強調イメージングのパルスシーケンスを示す。拡散強調イメージングを行う際には、一定の大きさを持つた2つ1組の勾配磁場パルスを印加するために、励起パルスから第1エコーまでの時間を長くとる必要がある。このため、パルスシーケンス長はどうしても長くなり、現状ではMPGの強度にもよるが、130msccから200msecぐらいである。また、心拍動に起因する動き(CSF(脳脊髄液)の拍動など)影響を抑えるために、複数回の励起によりK空間を埋めるような撮像では、ECG同期を行う。人体でのR−R波間隔が800msec程度の場合、R−R波間隔が変動すること考慮して実際に収集に使用できる時間は700msec程度となり、1心拍内で撮像できるスライス枚数は3枚〜5枚程度となる。頭部撮像における、必要とすべき撮像範囲を考えると、3枚〜5枚程度では不足である。
【0029】
本実施形態では、1R−R波間隔内で収集できるスライス枚数の増加を図るための第1の工夫として、複数スライス同時励起法の1種であるQuad法を選択した。この方法では、例えば4スライスを同時励起すれば、1R−R波間隔内で収集できるスライス枚数は12枚〜20枚に増やすことができる。
【0030】
通常、スピンエコー法(SE法)においても、1心拍ごとでなく、複数の心拍にわたって収集すれば、必要なスライス枚数を確保することができるが、この場合、K空間上でのあるラインと隣のラインを収集する間の時間が長くなるので、体動などの人為的な動きにより位相シフト量が変わってしまう可能性が高くなる。特に0エンコード近辺の低周波数成分のデータを、短い時間の範囲で収集した方が、ゴーストが発生する可能性が低下する。
【0031】
ただし、同時励起したスライスを分離するために、位相エンコード数を同時励起スライス数倍にとる必要があり、トータルの撮像時間は通常法とほとんど変わらない。撮像時間が長くかかると、患者の負担が大きく、患者の動きを抑制しきれず、体動アーチファクトが問題となる。
【0032】
そこで、撮像時間を短縮させるために、複数回の勾配磁場の反転により、複数個のエコー(グラジエントエコー)を次々と発生させ、それぞれのエコーに異なる位相エンコードを与えることで、K空間上での複数ライン分のデータを一励起で収集する撮影法、本実施形態ではエコープラナー法(EPI法)をさらに組み合わせる。これが第2の工夫である。なお、この撮像時間の短縮には、励起パルス(RFパルス)後に反転パルス(RFパルス)を繰り返し印加するいわゆるRARE法あるいはfastSE法(高速スピンエコー法)でも効果的である。しかし、我々は、反転パルスのフリップ角(180度)の不完全性による疑似エコー(エコー時刻のずれたエコー)による画質劣化を危惧してfastSE法を採用せず、EPIを採用した。
【0033】
図3(a)に、図2に採用されているスピンエコー系のQuad法の基本的パルスシーケンスを示す。この図3(a)において、RF1は第1のスライスに対する高周波磁場を表し、RF2は第2のスライスに対する高周波磁場を表している。説明の便宜上、同時励起スライス数を“2”として説明する。
【0034】
まず、最初のスライス選択勾配磁場の印加と共に、第1のスライスに対する励起パルスと、第2のスライスに対する励起パルスとを若干ずらして印加する。続いて、2番目のスライス選択勾配磁場の印加と共に、第1のスライスに対する反転パルスと、第2のスライスに対する反転パルスとをそれぞれの印加時刻を若干ずらして印加する。第1のスライスのエコー時刻(TE1)と第2のスライスのエコー時刻(TE2)とが一致するように、励起パルスのずれ時間に対して反転パルスのずれ時間が調整されている。
【0035】
このようにQuad法では、RF印加時刻を若干ずらしているので、図3(b)に示すように、高周波パルスのピークが重なり合って、ピークが高くなりすぎることがなく、RFアンプやコイルのハード的なことによって同時励起できるスライス数の制限を緩和できる。
【0036】
そして、エコー毎に位相エンコードを1乃至数ラインずつ位相シフトさせながら、K空間全体を収集する。このとき、図4に示すように第1のスライスの画像と第2のスライスの画像とを位相エンコード方向に分離するために、位相エンコード数を同時励起スライス数倍にすると共に、第1のスライスに対する励起パルスの位相を例えば(+X)に固定し、第2のスライスに対する励起パルスの位相を繰り返し毎に180度ずつ進めていく。
【0037】
このようにして拡散強調イメージングにQuad法及びEPI法と併用することにより、体動によるアーチファクトを軽減しつつ、スライス枚数を増やすことができる。
【0038】
ところで、S.A.R.(specific absorption rate)の制約により、同時励起スライス枚数を多くとることができず、1心拍内で必要なスライス枚数が得られず、2心拍にわたって収集を行わざるを得ない場合がある。このような場合、必要スライス枚数(図では6スライス)を図5(a)に示すように収集した場合には、R−R波間隔が一定ではないため、同期トリガのR波から離れた時刻に収集されるスライスほど、K空間上における位相エンコード方向のデータ間での動きの状態の変化が大きくなり、ゴーストが強く発生することになる。
【0039】
そこで図5(b)のように、スライスを2つの群に分けて、それぞれの群ごとに同期をかければ、位相エンコード方向のデータ間での動きの状態の差が少なくなり、ゴーストを低減させることができる。
本発明は、上述した実施形態に限定されることなく、種々変形して実施可能であるのは勿論である。
【0040】
【発明の効果】
本発明によると、拡散強調イメージングに、周波数の相違する複数の高周波パルスを所定時間だけずらして印加することにより複数の領域をほぼ同時に励起する方法と、勾配磁場の反転によりエコーを繰り返し発生させる方法とを併用することにより、1心拍内で収集可能なスライス枚数を増加させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態が適用されるMRI装置の構成を示すブロック図。
【図2】本実施形態により1心拍内の撮像スライス枚数を増加可能な拡散強調イメージングのパルスシーケンスを示す図。
【図3】図2のパルスシーケンスに適用されるQuad法の基本的パルスシーケンスと、2段面同時励起の際のRFパルスの波形とを示す図。
【図4】2段面同時励起の際に、本実施形態におけるRFパルスの位相操作による画像シフトの説明図。
【図5】本実施形態による2心拍にわたる同時撮像法の説明図。
【図6】従来の拡散強調イメージングのパルスシーケンスを示す図。
【符号の説明】
1…磁石部、
2…静磁場コイル、
3…勾配コイルセット、
4…高周波コイル、
5…寝台、
6…静磁場電源、
7…勾配電源、
8…送信機、
9…受信機、
10…シーケンサ、
11…コントローラ、
12…プロセッサ、
13…ディスプレイ、
14…コンソール。

Claims (2)

  1. 静磁場中におかれた被検体に所定のパルスシーケンスで高周波磁場、勾配磁場を印加し、これによって発生する磁気共鳴信号を収集して磁気共鳴画像を構成するMRI装置において、
    周波数の相違する複数の高周波パルスを所定時間だけずらして印加することにより複数の領域をほぼ同時に励起する手段と、
    水分子の拡散の度合いを強調するための付加的勾配磁場を印加する手段と、
    勾配磁場の反転によりエコーを繰り返し発生させる手段とを有することを特徴とするMRI装置。
  2. データ収集を反復性生理的動作に対して同期して行うマルチスライス撮像時において、必要枚数のスライスを所定枚ずつの組に分けて、それぞれの組ごとに前記同期をかけることを特徴とする請求項1に記載のMRI装置。
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