JP3702028B2 - リニアコンプレッサ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、シリンダ内に嵌装されたピストンをリニアモータによって往復運動させることにより、ガスを圧縮して外部に供給するリニアコンプレッサに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、冷凍システムに於いて、冷媒ガスを圧縮して供給する機構として、リニアコンプレッサが開発されている。例えば図2に示す如く、密閉状のハウジング101と、そのハウジング101内に形成されたシリンダ102と、シリンダ102内に往復可能に嵌装され、シリンダ102内空間に圧縮室103を区画形成するピストン104と、ピストン104を往復駆動する駆動源としてのリニアモータ105を備えている。尚、図2ではハウジング101とシリンダ102が一体形成され、磁気枠として低炭素鋼で構成さている。そして、リニアモータ105には、環状の永久磁石106がシリンダ102の同心外方に配置され、ハウジング101に固着されている。この磁石106およびハウジング101、シリンダ102の磁気枠からなる磁気回路によって、シリンダ102の中心と同心の円筒状の間隙107に磁界Bを発生させる。間隙107には中心部にてピストン104に一体固定された樹脂からなる有底円筒状の可動体108が配設され、可動体108およびピストン104を往復可能に弾性支持するためのコイルスプリングからなるピストンスプリング109がハウジング101に固定されている。
【0003】
この可動体108の外周には、磁石106と対向する位置に電磁コイル110が巻回されており、リード線111を介して所定周波数の交流電流を通電することで、間隙107を通る磁界との作用によりコイル110および可動体108を駆動してピストン104をシリンダ102内で往復移動させ、圧縮室103で所定周期のガス圧を発生させるようになされている。
【0004】
一方、代表的な冷凍システムとして、図3に示す如く、リニアコンプレッサ121(圧縮機)、凝縮器122、膨張弁123及び蒸発器124をガス流路125にて接続した密閉式の冷凍システムが知られており、リニアコンプレッサ121は、蒸発器124で気化した冷媒ガスを、ガス流路125を通じて吸入して高圧に圧縮し、高圧となった冷媒ガスをガス流路125を経て凝縮器122に吐出する装置として使用されている。
【0005】
このため、図2に示すように、圧縮室103には、ハウジング101に設けられた弁機構112を介してハウジング101外部のガス流路125が接続されている。弁機構112は、ガス流路125を介して蒸発器124からの冷媒ガスの吸入のみを許容する吸入弁112aと、ガス流路125を介して凝縮器122への冷媒ガスの吐出のみを許容する吐出弁112bとから構成される。吸入弁112aは、低圧側のガス流路125と圧縮室103との冷媒ガスの圧力差によって、圧縮室103方向にガスを流入させる弁である。又、吐出弁112bは、圧縮室103内の冷媒ガス圧力が一定圧力以上となると開放するように、圧縮室103と高圧側のガス流路125との冷媒ガスの圧力差によって、高圧側のガス流路125方向にガスを流出させる弁である。尚、吸入弁112a及び吐出弁112bは、ともに板バネによって付勢されている弁である。
【0006】
以上の構成により、従来装置では吸入弁112aから吸入された冷媒ガスを圧縮室103で高圧に圧縮した後、吐出弁112bを介して凝縮器122に供給している。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
そして、従来のリニアコンプレッサ121では、ピストンの最大振幅範囲を設定し、できるだけ圧縮効率が良くなるようにピストン104の上死点位置がシリンダ102の上壁に近接するように設計されている。しかしながら、リニアコンプレッサ121は上述のようにピストンスプリング109のみによりハウジング101に対して弾性支持されているだけであるため、突発的な負荷変動によりピストン104が上死点側へ設定最大範囲以上へ移動し、シリンダ102の上壁に衝突したり、可動体108が磁気枠に衝突することが度々発生していた。
【0008】
この結果、衝突により可動体108及び弁112a、112bが壊れたり、リード線111が断線したりする虞れがあった。
この対策として、ピストン104の異常変位発生時に、電磁コイル110への供給電流を停止させることが考えられるが、慣性によって供給電流を停止しても即座にピストン104の移動を停止させることができず、上記課題を依然として有していた。
【0009】
本発明は斯かる点に鑑みてなされたものであって、ピストンの異常変位の発生による装置の破壊や故障発生を防止し、装置の信頼性及び耐久性を向上させたリニアコンプレッサを提供するものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、ハウジング内に設けられたシリンダと、該シリンダ内に往復可能に嵌装され、シリンダ内に圧縮室を区画形成するピストンと、中心部にてピストンに一体固定された有底円筒状の可動体が、磁石および磁気枠からなる磁気回路の一部に形成した間隙に配設され、該可動体の外周に巻回された電磁コイルへの所定周波数の交流の供給によりピストンを往復駆動するリニアモータと、前記電磁コイルに駆動電力を供給する電源装置と、前記ピストンをシリンダ内で往復動可能にハウジングに対して弾性支持するピストンスプリングと、前記ピストンが上死点側へ設定最大範囲以上移動したときに、前記可動体と当接して該ピストンの下死点側への付勢力を与えると共に、該可動体との接触を検知する異常変位検知手段と、該異常変位検知手段からの当接検知信号に基づいて、前記電源装置の供給出力を制御する制御手段と、を備えたリニアコンプレッサである。
【0011】
この構成を用いることにより、ピストンの異常変位発生時には、電磁コイルへの駆動電力を即座に制御すると共に、ピストン及び可動体のピストン上死点側への変位力を吸収するため、ピストンがシリンダに衝突して弁などを破壊したり、可動体が磁気枠に衝突して破壊されることがない。
【0012】
また、好ましくは、前記可動体は樹脂で構成され、前記異常変位検知手段との当接部分に円環状の金属板が固着されており、前記異常変位検知手段は、前記可動体と当接してピストンの下死点側への付勢力を与える電気伝導体と、該電気伝導体が前記金属板に接触時に、電気的な閉回路を形成して前記可動体との接触を検知する当接検知回路と、を有している。
【0013】
この構成を用いることにより、可動体の構造的補強が図られると共に、異常変位検知手段と可動体との接触を確実に検知することができる。
更に、前記制御手段は、前記異常変位検知手段からの当接検知信号に基づいて、前記電源装置からの駆動電力の供給を停止させる。
【0014】
この構成を用いることにより、電磁コイルへの駆動電力供給が停止され、ピストン及び可動体の変位力を慣性力のみにすることができる。
加えて、前記電気伝導体は金属製のコイルスプリングで構成されている。
【0015】
この構成を用いることにより、前記異常変位検知手段を簡易な構成とすることができ、リニアコンプレッサの小型、軽量化を図ることができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明のリニアコンプレッサの一実施の形態について説明する。尚、前述の従来装置と同じ構成については同一符号を付して示しており、これらの部分の詳細な説明は省略する。
【0017】
本発明のリニアコンプレッサは、上記した図3に示す如く、密閉形の冷凍システムの圧縮機として用いられる。そして、そのリニアコンプレッサとしては、図1に示す如く、外周が密閉円筒状のハウジング1によって包囲され、リニアコンプレッサを密閉空間として保持している。このハウジング1は非磁性の有底円筒体であり、その上端開口部に磁気枠(ヨーク)としての低炭素鋼からなる上壁2が形成されている。そして、このヨーク2の中心部には上下方向に延びるシリンダ嵌装孔3が貫通形成され、このシリンダ嵌装孔3には非磁性材料としてのステンレス鋼からなる有底円筒状のシリンダ4が嵌合されている。
【0018】
シリンダ4内には、ピストン5が摺動可能に嵌装されており、シリンダ4とピストン5により冷媒ガスの圧縮空間となる圧縮室6が区画形成される。そして、シリンダ4には外部のガス流路125と接続するための弁機構7が形成されており、7aはガス流路125を介して蒸発器124で気化した冷媒ガスを吸入するための吸入弁であり、7bは圧縮室6で圧縮された高圧の冷媒ガスをガス流路125を介して凝縮器122に吐出するための吐出弁である。
【0019】
上記ピストン5には、軽量な非磁性材料である樹脂から構成され、ピストン5側が開放された有底円筒状の可動体(ボビン)8が、ピストン5の支持ロッド9に一体固定されており、そのボビン8及びピストン5を往復可能に弾性支持するためのコイルスプリングからなるピストンスプリング10が、ハウジング1底面の中心部と支持ロッド9との間に固着されている。また、ボビン8のヨーク2対向面には、円環状の金属板81が固着されている。
【0020】
そして、ピストン5及びボビン8は、両者を往復駆動する駆動源としてのリニアモータ11に駆動接続されている。
ヨーク2にはシリンダ嵌装孔3と同心状に配置された環状の凹部12が形成され、この凹部12の外側側面12aには環状の永久磁石13が内側側面12bとの間に所定の間隙Sをあけて取り付けられており、この磁石13及びヨーク2によってリニアモータ11の磁気回路14が構成されている。この磁気回路14によって磁石13と凹部12内側側面との間の間隙Sに所定強度の磁界を発生させるようにしている。
【0021】
そして、上記ボビン8が間隙Sにおいて往復動可能に配設されており、このボビン8の外周部には、磁石13と対向する位置に電磁コイル15が巻回されており、リード線16を介して所定周波数(本実施例では60Hz)の交流電流を電源装置17から通電することにより、間隙Sを通る磁界との作用によってコイル15及びボビン8を駆動してピストン5をシリンダ4内で往復移動させ、圧縮室6で所定周期のガス圧を発生させるようになされている。電源装置17は、その駆動電力を制御する制御回路(制御手段)18からの制御指令に基づいて所定の駆動電流を電磁コイル15へ供給している。
【0022】
一方、ヨーク2のボビン8対向面には、ピストン5が上死点側へ設定最大範囲以上へ移動したときにボビン8と当接して、ピストン5及びボビン8をピストン5の下死点側への付勢力を与える電気伝導体としての金属製のコイルスプリング21が複数個(本実施の形態では等間隔に4個配設)設けられており、このコイルスプリング21にボビン8の金属板81が当接した時に電気的な閉回路を形成して、コイルスプリング21へのボビン8の接触を検知する当接検知回路22が設けられている。ここで、当接検知回路22は、いずれかのコイルスプリング21が金属板81に当接した場合に電気的な閉回路が形成されるように、金属板81との接続がなされている(図示せず)。但し、全てのコイルスプリング21が金属板81に当接した場合に電気的な閉回路が形成されるように構成させても構わない。そして、このコイルスプリング21及び当接検知回路22によって、異常変位検知手段23が構成されている。
【0023】
当接検知回路22において、コイルスプリング21へのボビン8の接触を検知した場合には、その検知信号が制御回路18に供給され、制御回路18では電磁コイル15への供給駆動電流の指令値を0とし、電源装置17から電磁コイル15への駆動電力の供給を停止させている。
【0024】
これにより、ピストン5の異常変位発生時には、電磁コイル15への駆動電流供給を即座に停止させると共に、ピストン5及びボビン8のピストン上死点側への変位力を吸収するため、ピストン5が弁7a、7bに衝突して弁7a、7bを破壊したり、ボビン8がヨーク2に衝突して破壊されることがない。また、ボビン8のヨーク2対向面には、円環状の金属板81が固着されているため、ボビン8の構造的補強が図られる。従って、リニアコンプレッサの破壊や故障発生を防止し、装置の信頼性及び耐久性が向上する。
【0025】
尚、上記実施の形態の説明は、本発明を説明するためのものであって、特許請求の範囲に記載の発明を限定し、或は範囲を減縮する様に解すべきではない。又、本発明の各部構成は上記実施の形態に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能であることは勿論である。
【0026】
例えば、上記実施の形態の説明では、電気伝導体21としてのコイルスプリングで構成する場合について説明したが、板状スプリングで構成させても構わない。
【0027】
また、制御回路18では、ピストンの異常変位発生時に、電磁コイルへの駆動電流供給を即座に停止させているが、この他に駆動電流が減少させたり、或いは逆電流を供給させたりしても構わない。
【0028】
さらに、ピストン5及びボビン8を別体で形成する場合について説明したが、同一体で構成してもよく、永久磁石13をヨーク2の内側側面に固着する構成にしてもよい。加えて、ハウジング1、ヨーク2及びシリンダ4を同一体で構成してもかまわない。但し、この場合には、磁気回路13を形成させるために、ヨーク2と同一物で構成する必要がある。
【0029】
【発明の効果】
以上述べた通り本発明によれば、ピストンの異常変位発生時には、電磁コイルへの駆動電力を即座に制御すると共に、ピストン及び可動体のピストン上死点側への変位力を吸収するため、ピストンがシリンダに衝突して弁などを破壊したり、可動体が磁気枠に衝突して破壊されることがない。このため、リニアコンプレッサの破壊や故障発生を防止し、リニアコンプレッサの長寿命化及び高信頼性を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態を示すリニアコンプレッサの断面図である。
【図2】従来のリニアコンプレッサの断面図である。
【図3】密閉型の冷凍システムの構成を示す概念図である。
【符号の説明】
1 ハウジング
2 ヨーク(磁気枠)
3 シリンダ嵌装孔
4 シリンダ
5 ピストン
6 圧縮室
7 弁機構
8 可動体(ボビン)
9 支持ロッド
10 ピストンスプリング
11 リニアモータ
12 凹部
13 永久磁石
14 磁気回路
15 電磁コイル
16 リード線
17 電源装置
18 制御回路(制御手段)
21 コイルスプリング(電気伝導体)
22 当接検知回路
23 異常変位検知手段
81 金属板
S 間隙

Claims (4)

  1. ハウジング内に設けられたシリンダと、該シリンダ内に往復可能に嵌装され、シリンダ内に圧縮室を区画形成するピストンと、
    中心部にてピストンに一体固定された有底円筒状の可動体が、磁石および磁気枠からなる磁気回路の一部に形成した間隙に配設され、該可動体の外周に巻回された電磁コイルへの所定周波数の交流の供給によりピストンを往復駆動するリニアモータと、
    前記電磁コイルに駆動電力を供給する電源装置と、
    前記ピストンをシリンダ内で往復動可能にハウジングに対して弾性支持するピストンスプリングと、
    前記ピストンが上死点側へ設定最大範囲以上移動したときに、前記可動体と当接して該ピストンの下死点側への付勢力を与えると共に、該可動体との接触を検知する異常変位検知手段と、
    該異常変位検知手段からの当接検知信号に基づいて、前記電源装置の供給出力を制御する制御手段と、を備えていることを特徴とするリニアコンプレッサ。
  2. 前記可動体は樹脂で構成され、前記異常変位検知手段との当接部分に円環状の金属板が固着されており、
    前記異常変位検知手段は、前記可動体と当接してピストンの下死点側への付勢力を与える電気伝導体と、該電気伝導体が前記金属板に接触時に、電気的な閉回路を形成して前記可動体との接触を検知する当接検知回路と、を有することを特徴とする、請求項1記載のリニアコンプレッサ。
  3. 前記制御手段は、前記異常変位検知手段からの当接検知信号に基づいて、前記電源装置からの駆動電力の供給を停止させることを特徴とする、請求項1または2記載のリニアコンプレッサ。
  4. 前記電気伝導体は金属製のコイルスプリングで構成されていることを特徴とする、請求項2または3のいずれかに記載のリニアコンプレッサ。
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