JP3889519B2 - リニアコンプレッサ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、シリンダ内に嵌装されたピストンをリニアモータによって往復運動させることにより、ガスを圧縮して外部に供給するリニアコンプレッサに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、冷凍システムに於いて、冷媒ガスを圧縮して供給する機構として、リニアコンプレッサが開発されている。例えば図4に示す如く、有底円筒体のハウジング101と、そのハウジング101の上端開口部に形成された低炭素鋼からなる磁気枠102と、この磁気枠102の中心部に形成されたシリンダ103と、シリンダ103内に往復可能に嵌装され、シリンダ103内空間に圧縮室104を区画形成するピストン105と、ピストン105を往復駆動する駆動源としてのリニアモータ106を備えている。
【0003】
そして、リニアモータ106には、環状の永久磁石107がシリンダ103の同心外方に配置され、ハウジング101に固着されている。この磁石107及び磁気枠102からなる磁気回路によって、シリンダ103の中心と同心の円筒状の間隙108に磁界Bを発生させる。間隙108には中心部にてピストン105に一体固定された樹脂からなる有底円筒状の可動体109が配設され、可動体109及びピストン105を往復可能に弾性支持するためのコイルスプリング110がハウジング101に固定されている。
【0004】
この可動体109の外周には、磁石107と対向する位置に電磁コイル111が巻回されており、リード線(図示せず)を介して所定周波数の交流電流を通電することで、間隙108を通る磁界との作用によりコイル111及び可動体109を駆動してピストン105をシリンダ103内で往復移動させ、圧縮室104で所定周期のガス圧を発生させるようになされている。
【0005】
一方、代表的な冷凍システムとして、図5に示す如く、リニアコンプレッサ121(圧縮機)、凝縮器122、膨張弁123及び蒸発器124をガス流路配管125にて接続した密閉式の冷凍システムが知られており、リニアコンプレッサ121は、蒸発器124で気化した冷媒ガスを、ガス流路配管125を通じて吸入して高圧に圧縮し、高圧となった冷媒ガスをガス流路配管125を経て凝縮器122に吐出する装置として使用されている。
【0006】
このため、図4に示すように、圧縮室104には、シリンダ103の上端部に設けられた弁機構112を介してハウジング101外部のガス流路配管125が接続されている。弁機構112は、ガス流路配管125を介して蒸発器124からの冷媒ガスの吸入のみを許容する吸入弁112aと、ガス流路配管125を介して凝縮器122への冷媒ガスの吐出のみを許容する吐出弁112bとから構成される。吸入弁112aは、低圧側のガス流路配管125と圧縮室104との冷媒ガスの圧力差によって、圧縮室104方向にガスを流入させる弁である。又、吐出弁112bは、圧縮室104内の冷媒ガス圧力が一定圧力以上となると開放するように、圧縮室104と高圧側のガス流路配管125との冷媒ガスの圧力差によって、高圧側のガス流路配管125方向にガスを流出させる弁である。尚、吸入弁112a及び吐出弁112bは、ともに板バネによって付勢されている弁である。
【0007】
以上の構成により、従来装置では吸入弁112aから吸入された冷媒ガスを圧縮室104で高圧に圧縮した後、吐出弁112bを介して凝縮器122に供給している。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
そして、従来のリニアコンプレッサ121では、ピストンの最大振幅範囲を設定し、できるだけ圧縮効率が良くなるようにピストン105の上死点位置がシリンダ103の上壁に近接するように設計されている。しかしながら、リニアコンプレッサ121では、何らかの原因で突発的に負荷が軽くなったとき、この急激な変化に制御が追従できず、ピストン105が上死点側へ設定最大範囲以上へ移動し、シリンダ103の上壁に衝突したり、可動体109が磁気枠102に衝突する虞れがあった。この結果、衝突により可動体109及び弁112a、112bが壊れたり、リード線が断線したりすることがあった。
【0009】
この対策として、特開平9−264262号公報に記載のように、可動体のピストン上死点側への変位がピストンの設定最大範囲以上となったことを、可動体の位置を検出することによって検知し、その検知に基づいて電源装置からの電力供給を停止させるものが提案されています。
【0010】
しかし、斯かる特開平9−264262号公報において提案のものは、可動体位置に基づいてピストン位置を判断しているが、一般に可動体はピストンシャフトを介してピストンに連結されているが、組立精度上その取付誤差が発生したり、運転時に可動体の撓みなどが発生するため、これらを考慮しなければならず、ピストンが上死点に達したときのピストンヘッドとシリンダ上壁の間隙(トップクリアランス)をある程度以上は小さくすることが出来なかった。
【0011】
本発明は斯かる点に鑑みてなされたものであって、ピストンの異常変位の発生による装置の破壊や故障発生を防止するとともに、トップクリアランスを小さくして高い体積効率を実現したリニアコンプレッサを提供するものである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明は、ハウジング内の両側に設けられた第1及び第2シリンダと、該第1及び第2シリンダ内に往復可能に嵌装され、各シリンダ内に圧縮室をそれぞれ区画形成する第1及び第2ピストンと、両端部が該第1及び第2ピストンに固着されているピストンシャフトと、所定周波数の交流電圧を印加して前記第1及び第2ピストンを往復駆動するリニアモータと、を有し、各圧縮室内でガスを圧縮して外部に供給するリニアコンプレッサにおいて、第1ピストンに一体的に取り付けられた突出部と、第1ピストンが上死点側へ設定最大範囲以上移動したときに、前記突出部と当接して接触を検知し、且つ第2ピストンが上死点側へ設定最大範囲以上移動したときに第1ピストンと当接して接触を検知する異常変位検知手段と、該異常変位検知手段からの検知信号に基づいて、前記交流電圧を制御する制御手段と、を備えていることを特徴としている。そして具体的には、前記第1ピストンは、第1シリンダ内に圧縮室を区画形成するピストン上部と、前記突出部としてのピストン下部と、該ピストン上部及びピストン下部間を一体的に連結する連結部とから構成され、前記異常変位検知手段は、前記第1ピストンが上死点側へ設定最大範囲以上移動したときに前記ピストン下部と当接して接触を検知し、且つ前記第2ピストンが上死点側へ設定最大範囲以上移動したときに前記第1ピストン上部と当接して接触を検知することを特徴としている。
【0013】
この構成を用いることにより、非常に簡単な構成によってピストン位置を直接検出することが出来、トップクリアランスを小さくすることができる。
【0014】
この構成を用いることにより、第1ピストン側に異常変位検知手段を1組設けるだけで良く、第2ピストン側に特別な構成を必要とせず、第1ピストン若しくは第2ピストンとシリンダ上壁との衝突を未然に防ぐことが出来る。
【0015】
そして、前記制御手段は、異常変位検知手段からの検知信号に基づいて、電源装置からの駆動電力の供給を停止させている。この構成を用いることにより、ピストンの異常変位の発生した場合に、即座に電磁コイルへの駆動電流供給が停止される。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明のリニアコンプレッサの一実施の形態について説明する。尚、前述の従来装置と同じ構成については同一符号を付して示しており、これらの部分の詳細な説明は省略する。
【0017】
本発明のリニアコンプレッサは、上記した図5に示す如く、密閉形の冷凍システムの圧縮機として用いられる。そして、そのリニアコンプレッサとしては、図1に示す如く、外周が密閉円筒状のハウジング1によって包囲され、リニアコンプレッサを密閉空間として保持している。このハウジング1は、その上部及び下部に圧縮室2、3を有している。
【0018】
そして、ハウジング1の上部には低炭素鋼からなる磁気枠(ヨーク)4が形成され、このヨーク4の中心部には上下方向に延びるシリンダ嵌装孔5が貫通形成され、このシリンダ嵌装孔5にはステンレス鋼からなる有底円筒状の第1シリンダ6が嵌合されている。
【0019】
第1シリンダ6内には、第1ピストン7が摺動可能に嵌装されており、第1シリンダ6と第1ピストン7により冷媒ガスの圧縮空間となる上部圧縮室2が区画形成される。そして、第1シリンダ6には外部のガス流路配管125に接続され、蒸発器124で気化した冷媒ガスを吸入するための第1吸入弁8aが設けられている。
【0020】
一方、第1シリンダ6と反対側のハウジング1の下部には、上下方向に延びる第2シリンダ9が設けられており、その第2シリンダ9内には第2ピストン10が摺動可能に嵌装されており、第2シリンダ9と第2ピストン10により冷媒ガスの圧縮空間となる下部圧縮室3が区画形成される。そして、上部圧縮室2と同様に、第2シリンダ9には外部のガス流路配管125と接続し、蒸発器124で気化した冷媒ガスを吸入するための第2吸入弁11aが設けられている。
【0021】
そして、第1ピストン7及び第2ピストン10は、ピストンシャフト12で連結されており、第1ピストン7側が開放された有底円筒状の可動体(ボビン)13がピストンシャフト12に一体固定されている。
【0022】
また、ヨーク4にはシリンダ嵌装孔5と同心状に配置された環状の凹部15が形成され、この凹部15の外側側面15aには環状の永久磁石16が内側側面との間に所定の間隙をあけて取り付けられており、この磁石16及びヨーク4によってリニアモータ17の磁気回路18が構成され、この磁気回路18によって磁石16と凹部15内側側面との間の間隙に所定強度の磁界を発生させるようにしている。そして、ボビン13が磁石16及びヨーク4からなる磁気回路18の一部に形成した間隙に配設され、ボビン13の外周に巻回された電磁コイル19に所定周波数の交流電流を電源装置(図示せず)から供給することによって第1ピストン7及び第2ピストン10をそれぞれ第1シリンダ6及び第2シリンダ9内で往復移動させ、上部圧縮室2及び下部圧縮室3において所定周期のガス圧を発生させるようになされている。そして、この電源装置は、その駆動電力を制御する制御手段(図示せず)からの制御指令に基づいて所定の駆動電流を電磁コイル19へ供給している。
【0023】
上記第1ピストン7は、第1シリンダ6内に圧縮室2を区画形成するピストン上部71と、ピストン上部71の可動体13側に配設されたピストン下部72と、ピストン上部71及びピストン下部72間を一体的に連結固定する連結部73とから構成され、ピストン上部71には図示していないがその周面にガスシール部材が設けられており、圧縮室2内の圧縮ガスがピストン上部71の背面空間側に漏出しないようにしている。連結部73は、ピストン上部71及びピストン下部72よりも直径が小さな円柱形状となっており、これらピストン上部71、連結部73、ピストン下部72によって第1ピストン7は、所謂ダンベル形状に構成されている。
【0024】
そして、連結部73の周面に対向するように異常変位検知手段としての導電電極部材21が配置され、第1ピストン7がその上死点側へ設定最大範囲以上移動したときに、ピストン下部72(突出部)に当接し、且つ第2ピストン10がその上死点側へ設定最大範囲以上移動したときにピストン上部71と当接する。具体的には、第1ピストン7及び第2ピストン10がストローク中心位置に位置している場合に、導電電極部材21とピストン下部72との距離をA、ピストン上部71とシリンダ上壁との距離をB、導電電極部材21とピストン上部71との距離をa、第2ピストン10上部とシリンダ上壁との距離をbとすると、A<B,a<bが満足する関係に導電電極部材21が配置されている。
【0025】
この導電電極部材21は、ピストン上部71又はピストン下部72に当接した場合に電気的な閉回路が形成されるように構成されており、この構成により第1ピストン7又は第2ピストン10が上死点側へ設定最大範囲以上移動したことを検知している。そして、非常停止装置22(制御手段)では、導電電極部材21による第1ピストン7又は第2ピストン10の異常変位検知に基づいて、電磁コイル19への駆動電流供給を即座に停止させている。そして、導電電極部材21はシリンダ6を貫通させて、ハウジング1外部の非常停止装置22に接続されているが、ハウジング1への漏電を防止するために導電電極部材21の貫通部には絶縁体23を両者間に介装させている。
【0026】
従って、第1ピストン7が上死点側へ設定最大範囲以上移動した場合には、図2に示すように、ピストン下部72に導電電極部材21が当接して、第1ピストン7の異常変位を検知することになる。一方、第2ピストン10がその上死点側へ設定最大範囲以上移動した場合には、図3に示すように、ピストン上部71に導電電極部材21が当接して、第2ピストン10の異常変位を検知することになる。このため、上記のように2ピストン構成の場合には、異常変位検知手段を1組設けるだけで良く、第2ピストン10側に特別な構成を必要としない。
【0027】
以上のように、上記構成によればトップクリアランスを小さくして高い体積効率を実現した状態で、ピストンの異常変位を簡単な構成で確実に検知することが出来る。
【0028】
尚、上記実施の形態の説明は、本発明を説明するためのものであって、特許請求の範囲に記載の発明を限定し、或は範囲を減縮する様に解すべきではない。又、本発明の各部構成は上記実施の形態に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能であることは勿論である。
【0029】
例えば、上記実施形態例では、2ピストン構成について説明したが、1ピストン構成のリニアコンプレッサについても適用可能である。
【0030】
【発明の効果】
以上述べた通り本発明によれば、非常に簡単な構成によってピストンの異常変位を確実に検知することが出来、ピストンとシリンダ上壁との衝突を未然に防ぐことが出来る。従って、トップクリアランスを小さくして高い体積効率を実現したリニアコンプレッサを提供し得る。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施の形態を示すリニアコンプレッサの断面図である。
【図2】 図1装置での第1ピストン7の上死点側への移動時の動作内容を説明するための断面図である。
【図3】 図1装置での第2ピストン10の上死点側への移動時の動作内容を説明するための断面図である。
【図4】 従来のリニアコンプレッサの断面図である。
【図5】 密閉型の冷凍システムの構成を示す概念図である。
【符号の説明】
1 ハウジング
2 上部圧縮室
3 下部圧縮室
6 第1シリンダ
7 第1ピストン
8 第1弁機構
9 第2シリンダ
10 第2ピストン
11 第2弁機構
12 ピストンシャフト
13 可動体(ボビン)
21 導電電極部材(異常変位検知手段)
22 非常停止装置(制御手段)
23 絶縁体
71 ピストン上部
72 ピストン下部(突出部)
73 連結部
Claims (3)
- ハウジング内の両側に設けられた第1及び第2シリンダと、
該第1及び第2シリンダ内に往復可能に嵌装され、各シリンダ内に圧縮室をそれぞれ区画形成する第1及び第2ピストンと、両端部が該第1及び第2ピストンに固着されているピストンシャフトと、所定周波数の交流電圧を印加して前記第1及び第2ピストンを往復駆動するリニアモータと、を有し、各圧縮室内でガスを圧縮して外部に供給するリニアコンプレッサにおいて、
前記第1ピストンに一体的に取り付けられた突出部と、
前記第1ピストンが上死点側へ設定最大範囲以上移動したときに、前記突出部と当接して接触を検知し、且つ前記第2ピストンが上死点側へ設定最大範囲以上移動したときに、前記第1ピストンと当接して接触を検知する異常変位検知手段と、
該異常変位検知手段からの検知信号に基づいて、前記交流電圧を制御する制御手段と、を備えていることを特徴とするリニアコンプレッサ。 - ハウジング内の両側に設けられた第1及び第2シリンダと、
該第1及び第2シリンダ内に往復可能に嵌装され、各シリンダ内に圧縮室をそれぞれ区画形成する第1及び第2ピストンと、両端部が該第1及び第2ピストンに固着されているピストンシャフトと、所定周波数の交流電圧を印加して前記第1及び第2ピストンを往復駆動するリニアモータと、を有し、各圧縮室内でガスを圧縮して外部に供給するリニアコンプレッサにおいて、
前記第1ピストンは、第1シリンダ内に圧縮室を区画形成するピストン上部と、ピストン下部と、該ピストン上部及びピストン下部間を一体的に連結する連結部とから構成され、
前記第1ピストンが上死点側へ設定最大範囲以上移動したときに、前記ピストン下部と当接して接触を検知し、且つ前記第2ピストンが上死点側へ設定最大範囲以上移動したときに、前記ピストン上部と当接して接触を検知する異常変位検知手段と、
該異常変位検知手段からの検知信号に基づいて、前記交流電圧を制御する制御手段と、を備えていることを特徴とするリニアコンプレッサ。 - 前記制御手段は、前記異常変位検知手段からの検知信号に基づいて、前記交流電圧の供給を停止させることを特徴とする、請求項1又は2のいずれかに記載のリニアコンプレッサ。
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