JP3701258B2 - 長尺部材挿入方法及び成形金型 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、長尺部材挿入方法及び成形金型に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、金型内へ長尺状部材を中子として、又は、製品用芯材として、挿入して成形する場合がある。例えば、中空状の樹脂ローラー(樹脂長尺体)を射出成形により成形する場合、直線状の金型空間部内に長尺部材であるシャフトを配設して、環状断面を有するキャビティを構成し、そのキャビティに溶融樹脂を注入して行っている。
ローラー等の樹脂長尺体を成形する従来の成形金型は、図7に示すように、直線状の空間部42を持つ金型41の開口部側から、送り込み機構45により上端部43aが保持されたシャフト43を空間部42に挿入し、金型奥部へと進行させ、奥部に設けた固定孔部44にシャフト43の下端部43bを挿入し、金型41にシャフト43を固定させ、環状断面のキャビティを構成している。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
従来の成形金型は、シャフト43が長尺部材であるため、その下端部43bを金型41の奥部に設けた固定孔部44に挿入させることが困難であり、また、挿入に際し相互の芯がずれ易いため、シャフト43の下端部43bや孔部44を傷つけたり、かじりが発生するおそれがあった。
また、シャフト43の上端部43aを保持する送り込み機構45の位置調整精度にも限界があり、細長いシャフト43を、細長い空間部42に挿入し、さらに径の小さい孔部44に正確に挿入することは特に困難であった。また、孔部44の径の嵌合公差を大きくすることで挿入作業は容易となるが、挿入後シャフト43が不安定となり、成形品の製品精度が悪くなるという問題点がある。
【0004】
そこで本発明は、細長い金型空間部内に長尺部材を容易に同芯状に装着できる長尺部材挿入方法及び成形金型を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上述の目的を達成するために、本発明に係る長尺部材挿入方法は、テーパー状の誘導開口部から直線状金型空間部にパイプ状のガイド部材を挿入し、シャフトを該ガイド部材の段付き状中空部内へ一端部側から、縮径する複数のテーパー部を経て、挿入し、該シャフトの先端部を該ガイド部材の他端部側において摺接嵌合状態で通過させて芯合わせをし、該シャフトの該先端部を金型の奥部の取付け孔に挿入する。
また、上記シャフトの上記中空部への挿入は、上記ガイド部材の上記一端部の開口テーパー部から行われ、上記ガイド部材の上記他端部側において該シャフトの先端部を、最終テーパー部を経て、摺接嵌合状態で通過させる。
【0006】
また、上述の目的を達成するために、本発明に係る成形金型は、テーパー状の誘導開口部と直線状空間部を有する金型と、該空間部に挿入されるパイプ状のガイド部材と、該ガイド部材の中空部に挿入され該金型の該奥部の取付け孔に挿入されるシャフトと、を備え、上記ガイド部材の上記中空部が、上記シャフトの外径と略同一の内径を有する調芯孔部と、該調芯孔部の内径より大きい内径の誘導孔部と、を有し、さらに、上記ガイド部材の一端部にシャフト挿入用の開口テーパー部を設け、該調芯孔部と該誘導孔部とが最終テーパー部を介して連通され、上記金型に挿入された上記ガイド部材の上記中空部に上記シャフトを挿入するよう構成したものである。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、図示の実施の形態に基づき、本発明を詳説する。
【0008】
本発明に係る長尺部材の挿入方法及び使用する成形金型は、例えば、細長い樹脂ローラー等の樹脂長尺体を成形するためのものであり、金型の細長い直線状空間部に細長いシャフト(長尺部材)を挿入して固定し、環状断面のキャビティを形成し、その後、キャビティ内に溶融樹脂を注入して、ローラー等の長尺体を成形するのに適用される。なお、成形される樹脂ローラーは、長さが300mm 以上のもので、直径が10mm程度のものがある。また、シャフト等の部材の径寸法は、1/100mm の精度が必要なものもある。
【0009】
そして、図1から図6に示した金型1の断面図に従って、長尺部材(シャフト)の挿入方法及び成形金型について説明する。
まず、図1に示すように、鉛直方向を長手方向とする縦長の金型1を配設する。この金型1は、その長手方向に直線状の空間部6を有し、上端部側が開口状となり、下端部側───奥部5側───は底面を有しかつ溶融樹脂の注入口13を形成している。そして、この空間部6は長手方向に同一円形断面を有している。
【0010】
さらに、この金型1の上端部は奥部5側へ向かって縮径するテーパー状の誘導開口部4を有しており、誘導開口部4のテーパー面は滑らかに、空間部6の内面形状に連続している。なお、図1の誘導開口部4は、金型1の上端部に別部材として配設しているが、金型本体部1aと一体物としてもよい。
そして、金型1の空間部6の奥部5には、後述する(図2に示す)シャフト2の先端部2aが挿入する取付け孔7を形成している。この取付け孔7は、空間部6の底面(端面)の中心部に設けられている。
【0011】
そして、図1の矢印aに示すように、パイプ状(筒状)のガイド部材3をテーパー状の誘導開口部4から直線状金型空間部6に挿入する。この挿入作業について説明すると、ガイド部材3の一端部3a側が図外の移動手段に連結されており、移動手段が矢印a方向へ移動することにより、ガイド部材3は所定位置に配設された上方開口状の金型1の空間部6に自動的に挿入される。この際、誘導開口部4がテーパー状であるため、ガイド部材3が長尺部材であっても、確実かつ滑らかに金型1の空間部6に挿入される。
【0012】
そして、図2はガイド部材3の他端部3b側が空間部6の奥部5に当接するまで完全に挿入された状態であり、挿入されたガイド部材3の軸心Mは、金型1(空間部6)の鉛直状の軸心Cと一致する。
【0013】
ガイド部材3について説明すると、このガイド部材3は、筒状の長尺部材であり、図2に示すように、ガイド部材3の中空部8は、後述するシャフト2の外径dと略同一の内径D1 を有する直線孔状の調芯孔部9と、調芯孔部9の内径D1 より大きい内径D2 の直線孔状の誘導孔部10と、を有している。そして、内径が異なる調芯孔部9と誘導孔部10とは、同一軸心Mとし、かつ、最終テーパー部12を介して滑らかに連通しており、ガイド部材3の中空部8は段付き円柱形状としている。
【0014】
そして、ガイド部材3の一端部3a側である誘導孔部10側をシャフト2の挿し口側とし、他端部3b側である調芯孔部9側を金型1の奥部5に配設されるシャフト2の出口側としている。そして、ガイド部材3の挿し口側となる一端部3a───誘導孔部10の開口端部側───にはシャフト挿入用の開口テーパー部11を形成している。また、調芯孔部9の軸心M方向の長さは、誘導孔部10の長さより短く設定している。
【0015】
ガイド部材3の中空部8について具体的に説明すると、例えば、シャフト2の外径dを8mmとした場合、調芯孔部9の内径D1 は8mmとし、誘導孔部10の内径D2 は9mmとしている。そして、開口テーパー部11の大径側(端部側)の径寸法は12mmとし、また、開口テーパー部11と最終テーパー部12の勾配───ガイド部材3の軸心Mとの傾斜角度───は、30°から50°とし、好ましくは45°としている。
【0016】
さらに、シャフト2の外径dと調芯孔部9の内径D1 は略同一としたが僅かに内径D1 を大きく設定し、ガイド部材3がシャフト2の外周面を摺動可能としている。さらに、ガイド部材3の調芯孔部9に対応する他端部3bの外径部と金型1の空間部6の内径は、略同一であるが、僅かにガイド部材3の外径を小さく設定し、ガイド部材3が空間部6内を走行自在としている。即ち、このガイド部材3は、後述するが、溶融樹脂注入時においては、ピストン部材として滑らかに軸心Cに沿って移動するものであり、ガイド部材3は、長尺部材であるがそのうち他端部3b側においてのみ、金型1及びシャフト2に摺動する。従って、ガイド部材3、シャフト2、金型1の寿命を長くすることができる。
【0017】
挿入方法の説明に戻るが、図2から図3に示すように、次に、長尺部材であるシャフト2をガイド部材3の上述の段付き状中空部8内へ一端部3a側から、縮径する複数のテーパー部A…を経て、挿入する。
即ち、テーパー部A…は、開口テーパー部11と最終テーパー部12とを備えており、シャフト2の中空部8への挿入は、ガイド部材3の一端部3aに形成した開口テーパー部11から行われ、シャフト2の先端部2aをガイド部材3の誘導孔部10により誘導させながら遊嵌状態で進行させ、図3に示すようにガイド部材3の他端部3b側において、シャフト2の先端部2aを、最終テーパー部12を経て、調芯孔部9により芯合わせをさせながら調芯孔部9を通過させる。即ち、調芯孔部9の内周面を摺動させて(摺接嵌合状態で)通過させる。
【0018】
従って、シャフト2の軸心Lはガイド部材3の軸心M(金型1の軸心C)に一致し、図4に示すように、シャフト2の先端部2aは金型1の奥部5の取付け孔7に自動的に芯合わせが行われ挿入される。
また、シャフト2の先端部2aの形状は、図4に示すように、本体部の外径dより小さい外径の小円柱状の差し込み部15を有する段付き形状としている。または、図示省略するが、シャフト2の形状は全長に渡って同一断面としたものでもよく、先端部2aを本体部と同径の差し込み部としてもよい。そして、この差し込み部15が取付け孔7に挿入される。
【0019】
取付け孔7と差し込み部15とのクリアランス(隙間)は、シャフト2(外径d)と調芯孔部9(内径D1 )とのクリアランス(隙間)より大きくなるよう設定している。そして、取付け孔7の軸心はガイド部材3の軸心Mに一致しているため、シャフト2の先端部2aは、調芯孔部9を通過後、スムーズに取付け孔7に挿入できる。なお、シャフト2の取付け孔7への挿入は、シャフト2の後端部2bを鉛直下向きに押圧する押圧杆21(図5)によりシャフト2を押し込んで行ってもよく、又は、シャフト2の自由落下により自動的に行ってもよい。
即ち、図4に示すようにシャフト2は、金型1の取付け孔7に挿入されているが、その取付け孔7により位置決めされるのではなく、ガイド部材3の調芯孔部9により位置決めされることとなる。
【0020】
また、シャフト2の挿入作業について説明すると、図2に示すように、シャフト2の後端部2bは保持部材16により保持され、シャフト2を吊り下げ状としており、保持部材16は位置補正手段17に連結杆19を介して支点18において吊り下げ自由状態で連結している。位置補正手段17は、シャフト2の軸心Lを金型1の鉛直軸心C(ガイド部材3の軸心M)と一致させるよう作動するものであり、具体的に説明すると、位置補正手段17は、支点18においてシャフト2を保持する保持部材16の軸線と鉛直線との傾きを補正して、シャフト2の軸心を鉛直状とする球面座手段と、球面座手段を平面的に2次元方向(X方向、Y方向)に移動させる水平2方向のリニア手段と、を有するものである。
【0021】
位置補正手段17の動作について説明すると、シャフト2の後端部2bを保持した保持部材16は、金型1の鉛直軸心C上に支点18が位置するよう上記リニア手段により2次元動作する。そして、シャフト2を保持する保持部材16は、球面座によりシャフト2を吊り下げ自由状態として、シャフト2の軸心Lを自動で鉛直状とする。従って、シャフト2の軸心Lは金型1の鉛直軸心C上に一致する。なお、この位置補正手段17の動作は、金型1の上方位置で予め芯ずれを補正してもよく、又は、位置補正手段17が矢印b方向へ下降しながら芯ずれを補正してもよいものであり、シャフト2はガイド部材3の中空部8へ、さらに正確に挿入される。また、シャフト2の後端部2bが、ガイド部材3の一端部3aに近接した際、保持部材16はシャフト2の後端部2bを放し、シャフト2を落下させる。
【0022】
次に、この成形金型1により樹脂長尺体を成形する方法について説明する。図4に示すように、金型1にシャフト2が配設された状態で、空間部6とシャフト2とにより環状キャビティ14を形成する。そして、空間部6の奥部5側に設けた、例えば円環状の薄いゲート部20(注入口13)から、図5に示すようにキャビティ14内に溶融樹脂Rの注入を行う。そして、シャフト2の後端部2bを鉛直下向きに押圧する押圧杆21により、シャフト2を金型1に軸心C方向保持しており、溶融樹脂Rの注入圧によりシャフト2がずれない(抜け出ない)ようにしている。
【0023】
そして、ガイド部材3がキャビティ14の注入口13側に配設された状態であるため、キャビティ14に注入された溶融樹脂Rは、ガイド部材3を金型1の軸心C方向の誘導開口部4側(矢印e)に押しながらキャビティ14内に充填していく。
即ち、ガイド部材3は、注入されてくる溶融樹脂Rに対して抵抗付加体として作用するもので、溶融樹脂Rに注入口13方向へ所定の流動抵抗を与えるものである。
【0024】
これにより、キャビティ14に注入された溶融樹脂Rの同一横断面の流動速度分布を均一とすることができる。即ち、溶融樹脂Rの上面を常に水平面状として充填させていく。従って、このガイド部材3の流動速度制御機能により、成形品の形状を長手方向全域に渡って均一にでき、寸法精度が高い長尺の成形品の形成が可能となる。
そして、図6に示すように、所定量の溶融樹脂Rが注入され、シャフト2を外嵌する長尺の樹脂成形品が成形される。
【0025】
そして、シャフト2を押さえていた押圧杆21、及び、ガイド部材3を図外の上方位置である待機位置に戻す。その後、パイプ状の樹脂成形品22とシャフト2とを金型1の空間部6から一緒に取り出し、精度の良い成形品22を得ることができる。
なお、本発明は、上述の実施の形態に限定されず、図示省略するが、例えば、金型の長手方向を水平方向横向きとしてもよい。
【0026】
【発明の効果】
本発明は上述の構成により次のような効果を奏する。
【0027】
(請求項1によれば)金型空間部6へのシャフト2の挿入の際、ガイド部材3のガイド作用により徐々に位置補正するため、シャフト2の先端部2aが引っ掛かることがなく、シャフト2、金型1及びガイド部材3に傷をつけることがない。
従って、シャフト2を金型奥部5の取付け孔7に簡単かつ正確に挿着でき、長尺体の成形に際し準備工程が迅速に行え、工数低減が図れ生産コストを下げることができる。
【0028】
(請求項2によれば)シャフト2及び金型1の加工精度・組み立て精度に左右されることなく、シャフト2の挿入開始時から、後のシャフト2の芯合わせまでスムーズに行え、迅速に金型1とシャフト2との組み立てが可能である。
【0029】
(請求項3によれば)シャフト2は、開口テーパー部11により誘導孔部10、最終テーパー部12へ誘導され、調芯孔部9により組み立て寸法精度を出すための最終位置の決定がされるため、シャフト2と金型1との組み立てが迅速かつ容易に行える成形金型を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の成形金型の実施の一形態を示す側部断面図である。
【図2】図1の状態の次の工程を示す成形金型の側部断面図である。
【図3】図2の次の工程を示す成形金型の側部断面図である。
【図4】図3の次の工程を示す成形金型の側部断面図である。
【図5】図4の次の工程を示す成形金型の側部断面図である。
【図6】図5の次の工程を示す成形金型の側部断面図である。
【図7】従来の成形金型の側部断面図である。
【符号の説明】
1 金型
2 シャフト
2a 先端部
3 ガイド部材
3a 一端部
3b 他端部
4 誘導開口部
5 奥部
6 空間部
7 取付け孔
8 中空部
9 調芯孔部
10 誘導孔部
11 開口テーパー部
12 最終テーパー部
A テーパー部
D1 内径
D2 内径
d 外径
Claims (3)
- テーパー状の誘導開口部4から直線状金型空間部6にパイプ状のガイド部材3を挿入し、シャフト2を該ガイド部材3の段付き状中空部8内へ一端部3a側から、縮径する複数のテーパー部A…を経て、挿入し、該シャフト2の先端部2aを該ガイド部材3の他端部3b側において摺接嵌合状態で通過させて芯合わせをし、該シャフト2の該先端部2aを金型1の奥部5の取付け孔7に挿入することを特徴とする長尺部材挿入方法。
- 上記シャフト2の上記中空部8への挿入は、上記ガイド部材3の上記一端部3aの開口テーパー部11から行われ、上記ガイド部材3の上記他端部3b側において該シャフト2の先端部2aを、最終テーパー部12を経て、摺接嵌合状態で通過させる請求項1記載の長尺部材挿入方法。
- テーパー状の誘導開口部4と直線状空間部6を有する金型1と、該空間部6に挿入されるパイプ状のガイド部材3と、該ガイド部材3の中空部8に挿入され該金型1の該奥部5の取付け孔7に挿入されるシャフト2と、を備え、上記ガイド部材3の上記中空部8が、上記シャフト2の外径dと略同一の内径D1 を有する調芯孔部9と、該調芯孔部9の内径D1 より大きい内径D2 の誘導孔部10と、を有し、さらに、上記ガイド部材3の一端部3aにシャフト挿入用の開口テーパー部11を設け、該調芯孔部9と該誘導孔部10とが最終テーパー部12を介して連通され、上記金型1に挿入された上記ガイド部材3の上記中空部8に上記シャフト2を挿入するよう構成したことを特徴とする成形金型。
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