JP3700987B2 - 光学活性ヒドロキシニトリル及び光学活性シアノエステルの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、光学活性ヒドロキシニトリル及びその合成中間体である光学活性シアノエステルの製造方法に関し、さらに詳述すれば、芝や農作物の食害虫であるマメコガネ(Popillia japonica Newman)やドウガネブイブイ(Anomala cupreaHope)の性フェロモン合成中間体として、或いは各種医薬品、農薬、生理活性物質の合成中間体として有用な光学活性ヒドロキシニトリル及び光学活性シアノエステルを、常温下極めて容易に、且つ製造上の安全性も高く、しかも選択的に高純度の光学括性体を高収率で得ることができる製造方法を提供することにある。
【0002】
光学活性ヒドロキシニトリル及び光学活性シアノエステルは、各種医薬品、農薬、生理活性物質等の合成中間体として着目されている。例えば光学活性ヒドロキシニトリルは、加水分解することにより、容易に光学活性ヒドロキシカルボン酸あるいは光学活性ラクトンに誘導することができるため、極めて利用用途の広い合成中間体として位置付けられている。
【0003】
特に、光学活性(R)−ヒドロキシニトリルの一つである一般式(37)で示される光学活性(R)−4−ヒドロキシ−5−テトラデシノニトリルは、芝害虫マメコガネ(Popillia japonica Newman)の性フェロモン合成中間体の一つとされている(Pirkle, W. H. et al, J. Org. Chem., 44, 2169(1979))。また、この(R)−4−ヒドロキシ−5−テトラデシノニトリルは、芝害虫マメコガネ(Popillia japomca Newman)の性フェロモンの合成中間体の一つである一般式(38)で示される(R)−5−(1−デシニル)オキサシクロペンタン−2−オンに容易に誘導することができる重要な物質ともされている (Shuji Senda et al; Agrical. Biological. Chem., 47. 2595-2598(1983) )。
【化79】
【化80】
【0004】
また、同じく(R)−ヒドロキシニトリルのひとつである一般式(39)で示される(R)−4−ヒドロキシ−5−ドデシノニトリルは、芝害虫ドウガネブイブイ(Anomala cuprea Hope)の合成中間体の一つである一般式(40)で示される(R)−5−(1−オクテニル)オキサシクロぺンタン−2−オンに容易に誘導することができる重要な物質である(Leal, W. S.; Naturwissenschafen, 78,521-523(1991))。
【化81】
【化82】
【0005】
マメコガネ(Popillia japonica Newman)は、鞘目コガネムシ科に属する甲虫で、本来日本に在中する害虫であったが、米国に輸出したアイリスの球根に潜入して大発生して以来、米国ではジャパニーズ・ビートル(Japanese beetle) と呼ばれ、果樹、農作物等を食害する大害虫として位置付けられており、その被害総額も多大なものとなっている。また、日本においても近年、ゴルフ場の芝に対する食害が深刻化されており、このような食害対策について鋭意検討がなされている。一方、 ドウガネブイブイ(Anomala cuprea Hope)も同じく鞘目コガネムシ科に属する甲虫で、日本各地に分布しており、成虫はマメ類、ウメ、アンズ、ブドウ、クリ、ナシなどの種々の樹木の葉を網目状に食害し、特にブドウ園での被害が深刻化されている害虫の一種である。
この様なマメコガネ(Popillia japonica Newman)、ドウガネブイブイ(Anomala cuprea Hope) 等の害虫の防除方法としては、従来では農薬や殺虫剤等を使用する化学的防除法が中心に使用されていたが、この化学的防除法では、農作物への残留毒性や生命体への危険性、環境保全等の問題、さらには殺虫剤等の使用による農作物や土壌への好ましくない生物的活性などが問題視されてくるようになり、近年ではこのような化学的防除法に代わってフェロモンを利用した防除法が着目されてくるようになり、その研究開発が盛んに行われている。
【0006】
また、近年、各種医薬品、農業、生理活性物質にしめる高純度の光学活性体の重要性は増大する一方である。その理由は、生体中における、基質と酵素或いはリガンドとレセプターの関係は、構造的に厳密に制限されており、基質特異性、鏡像異性体選択性は非常に明確に区別されているからである。このため、活性を示す鏡像体と逆の対掌鏡像体が含まれると、反応が阻害される例も知られている。このマメコガネフェロモンの場合でも、活性体である(R)−5−(1−デシニル)オキサシクロペンタン−2−オンに対し、その対掌鏡像体である(S)−5−(1−デシニル)オキサシクロペンタン−2−オンが2%含まれると、マメコガネ誘引活性が1/3以下にまで低下するという報告例がある(Tumlinson,J.H. et al. Scinemce, 197, 789(1977))。これらのことから、各種医薬品、農薬、生理活性物質として活性を示す光学活性体の高純度でかつ効率よく製造を行うための研究開発が盛んに行われている。
【0007】
【従来の技術】
従来、光学活性ヒドロキシニトリルを製造する方法としては、▲1▼対応するラセミ体ヒドロキシニトリルを光学活性ナフチルエチルイソシアネートと反応させジアステレオカルバメートに誘導した後、高速液体クロマトグラフィーで分離する方法(Pirkle, W.H. et al., J. Org. Chem., 44, 2169(1979))、▲2▼対応するケトニトリルを酵母を用いて不斉還元する方法(Gopalan, A. et al., Synth.Commun., 21.1321(1991))、▲3▼対応するシアノエステルをリパーゼを用いて不斉加水分解する方法 (Takagi, Y. and Itoh, T., Bull. Chem. Soc. Jpn., 66, 2949(1993))、特開平6−217792号公報)、▲4▼光学活性(R)−ヒドロキシニトリル、光学活性(S)−ヒドロキシニトリルとを含有する混合物(ラセミ体ヒドロキシニトリルも含まれる)を加水分解酵素を用いて不斉アシル化する方法(特開平6−217792号公報)、或いは▲5▼▲4▼の不斉アシル化する方法と▲3▼の不斉加水分解する方法とを組み合わせた方法(特開平6−217792号公報)が報告されてきた。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、▲1▼では分割剤である光学活性ナフチルエチルイソシアネートが高価であり、また高速液体クロマトグラフィーによる分取では大量処理が困難である。▲2▼は反応が水系であるため、反応の際の基質濃度が低いため生産性が低いこと、水に不安定な基質には利用できないため使用する基質が制限されること、さらに後処理操作が煩雑になるため汎用性に欠け、そのうえ光学活性ヒドロキシニトリルの鏡像異性体のうちどちらか一方の絶対立体配置の光学活性体しかえられない。▲3▼は▲2▼と同様水系であることと、エステル基が結合している不斉炭素の側鎖にフェニル基が含まれないと反応性が非常に低下するといった基質に対する制限が厳しく、また反応速度が非常に遅い。▲5▼は水系の加水分解反応を使用することと、異なる酵素反応の組み合わせにより、製造操作が煩雑になる等の課題が存在した。
【0009】
これらを解決するために、▲4▼の非水系溶媒中で加水分解酵素を用いて不斉アシル化する方法が開示されたが、これは加水分解酵素と基質であるヒドロキシニトリルとの基質特異性、鏡像異性体選択性が高い場合には非常に有効であるが、一般にはこれら基質特異性、鏡像異性体選択性が非常に高い加水分解酵素を探索することは多大な時間と経費が必要となる。
【0010】
その上、不斉アシル化された光学活性シアノエステルを目的物とする場合には、(1)反応の極初期段階においてもほぼ純粋に光学活性な光学活性シアノエステルを得ることは困難であり、しかも酵素反応が進行するに従って光学純度は漸次低下するため、ほぼ純粋な光学活性シアノエステルを得るためには1回の加水分解酵素を用いた光学分割反応では不充分である。
また、(2)酵素反応が進行するに従って光学純度は漸次低下するため、光学純度あるいは収率のどちらかが低くなることは避けられず、高純度の光学活性シアノエステルを得るためにはその収率が低く抑えられる。さらに、加水分解酵素を用いた光学分割反応ではその収率は基質に含まれる目的とする光学活性ヒドロキシニトリルの濃度に依存するため、収率がその濃度を超えることはない。
また、不斉アシル化反応では上記した様に酵素反応が進行するに従って光学純度は漸次低下し、さらに反応生成物の光学活性シアノエステルの光学純度はサンプリングした反応液から直接リアルタイム的に測定することは不可能であるため、ほぼ純粋な光学活性ヒドロキシニトリルを得るための酵素反応を終了するタイミングを正確に判断することは非常に困難である。しかも酵素反応は各加水分解酵素の基質特異性、鏡像異性体選択性および反応条件に依存しているため、酵素反応を行う毎に酵素反応を終了するタイミングが異なり、ほぼ純粋な光学活性ヒドロキシニトリルを得るための酵素反応を終了するタイミングを常に正確に決定することはさらに困難となる。このため、酵素反応を終了するタイミングを早くに誤ると、収率が低くなることになり、逆に反応生成物の光学活性シアノエステルを目的物とした場合、この酵素反応を終了するタイミングを遅くに誤ると、目的の光学純度以下の光学純度を有した光学活性シアノエステルしか得ることができず、反応生成物の光学活性シアノエステルを目的物とした場合の製造方法ではほぼ純粋な光学活性ヒドロキシニトリルが確実に得られるとは限らない。これを解決するために未反応の光学活性ヒドロキシニトリルを目的物とする製造方法を採用すれば、未反応の光学活性ヒドロキシニトリルは酵素反応が進行するに従って光学純度が上昇するため上記問題点は解決されるが、(3)加水分解酵素の鏡像異性体選択性は完全ではなくても、(R)−体か(S)−体のどちらかの光字活性ヒドロキシニトリルにのみ優先的であり、これは基質ヒドロキシニトリルの構造に依存しており、不斉アシル化反応で未反応の光学活性ヒドロキシニトリルが目的物となる加水分解酵素が常に入手できるとは限らない。
従って、上記実情に鑑み、業界ではより汎用性に適した方法で高光学純度の光学活性ヒドロキシニトリル及び光学活性シアノエステルを簡便かつ収率良く得ることができる製造方法の創出が望まれていた。
【0011】
この発明の目的は、より汎用性に適した方法で簡便かつ収率良く95%e.e.以上の高光学純度の光学活性ヒドロキシニトリル及びその中間体生成物である光学活性シアノエステルを得ることができる製造方法を提供する点にある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
この発明は、高純度の光学活性ヒドロキシニトリルを得るために、少なくとも一般式(1)で示される光学活性(R)−ヒドロキシニトリルと、一般式(2)で示される光学活性(S)−ヒドロキシニトリルとを含有する混合物に、加水分解酵素存在下、有機溶媒中でカルボン酸またはカルボン酸誘導体を作用させ(R)−光学活性体を優先的にアシル化して一般式(3)で示される光学活性(R)−シアノエステルとし、次いでこの光学活性(R)−シアノエステル(3)と光学活性(S)−ヒドロキシニトリル(2)とを分離し、さらに光学活性(R)−シアノエステル(3)を加水分解して一般式(4)で示される光学活性(R)−ヒドロキシニトリルを得る光学分割工程に引き続いて、この光学分割工程で得られた光学活性(R)−ヒドロキシニトリル(4)に、再度、加水分解酵素を作用させ(R)−光学活性体を優先的にアシル化して一般式(5)で示される光学活性(R)−シアノエステルとし、次いでこの光学活性(R)−シアノエステル(5)と光学活性(R)−ヒドロキシニトリルとを分離し、一般式(6)で示される光学活性(R)−シアノエステルを得、さらに先の光学活性(R)−シアノエステル(3)を加水分解して一般式(7)で示される光学活性(R)−ヒドロキシニトリルを得る光学分割工程を少なくとも1回繰り返して光学純度95%e.e.以上の光学活性ヒドロキシニトリルを得る光学活性ヒドロキシニトリルの製造方法である。
【化83】
【化84】
【化85】
【化86】
【化87】
【化88】
【化89】
(但し、式中R1 は次の一般式(8)又は一般式(9)で示される化合物、式中R3 は炭素数1〜12のアルキル基、アラルキル基、ハロアルキル基のいずれかを示す。*は不斉炭素を示す。)
【化90】
【化91】
(但し、式中、R2 は炭素数1〜10の直鎖又は分岐アルキル基を示す。)
【0013】
また、この発明は、高純度の光学活性シアノエステルを得るために、少なくとも一般式(1)で示される光学活性(R)−ヒドロキシニトリルと、一般式(2)で示される光学活性(S)−ヒドロキシニトリルとを含有する混合物に、加水分解酵素存在下、有機溶媒中でカルボン酸またはカルボン酸誘導体を作用させ(R)−光学活性体を優先的にアシル化して一般式(3)で示される光学活性(R)−シアノエステルとし、次いでこの光学活性(R)−シアノエステル(3)と光学活性(S)−ヒドロキシニトリル(2)とを分離し、さらに光学活性(R)−シアノエステル(3)を加水分解して一般式(4)で示される光学活性(R)−ヒドロキシニトリルを得る光学分割工程に引き続いて、この光学分割工程で得られた光学活性(R)−ヒドロキシニトリル(4)に、再度加水分解酵素を作用させ(R)−光学活性体を優先的にアシル化して一般式(5)で示される光学活性(R)−シアノエステルとし、次いでこの光学活性(R)−シアノエステル(5)と光学活性(R)−ヒドロキシニトリルとを分離し、一般式(6)で示される光学純度95%e.e.以上の光学活性(R)−シアノエステルを得るか、又は引き続いて先の光学活性(R)−シアノエステル(3)をさらに加水分解して一般式(7)で示される光学活性(R)−ヒドロキシニトリルを得るまでに至る光学分割工程を少なくとも1回繰り返した後、さらにこの光学分割工程で得られた光学活性(R)−ヒドロキシニトリル(7)に、加水分解酵素を作用させ(R)−光学活性体を優先的にアシル化して一般式(13)で示される光学活性(R)−シアノエステルとし、次いでこの光学活性(R)−シアノエステル(13)と光学活性(R)−ヒドロキシニトリルとを分離し、一般式(14)で示される光学純度95%e.e.以上の光学活性(R)−シアノエステルを得る光学活性シアノエステルの製造方法である。
【化92】
【化93】
【化94】
【化95】
【化96】
【化97】
【化98】
【化99】
【化100】
(但し、式中R1 は、次の一般式(8)又は一般式(9)で示される化合物、式中R3 は炭素数1〜12のアルキル基、アラルキル基、ハロアルキル基のいずれかを示す。*は不斉炭素を示す。)
【化101】
【化102】
(但し、式中、R2 は炭素数1〜10の直鎖又は分岐アルキル基を示す。)
【0014】
上記の光学活性ヒドロキシニトリル及び光学活性シアノエステルの各製造方法(以下、第1製法と称する。)によって、前述した課題(1)を悉く解消する。
【0015】
また、この発明は、高純度の光学活性シアノエステルおよび光学活性ヒドロキシニトリルを収率よく製造するために、 一般式(15)で示される光学活性(R)−ヒドロキシニトリルと一般式(16)で示される光学活性(S)−ヒドロキシニトリルとを含有する混合物に、加水分解酵素存在下、有機溶媒中でカルボン酸又はカルボン誘導体を作用させ、(R)−光学活性体を優先的にアシル化して一般式(17)で示される光学活性(R)−シアノエステルとし、この光学活性(R)−シアノエステル(17)と光学活性(S)−ヒドロキシニトリル(16)とを分離することなく有機溶媒中で一般式(18)で示されるトリアルキルリン酸或いは一般式(19)で示されるトリアルコキシリン酸、一般式(20)で示されるカルボン酸、ジエチルアゾジカルボキシレートを作用させ、光学活性(S)−ヒドロキシニトリル(16)のみを一般式(21)で示される光学活性(R)−シアノエステルとし、次いで前記一般式(17)で示される光学活性(R)−シアノエステルと上記一般式(21)で示される光学活性(R)−シアノエステルを加水分解して一般式(22)で示される光学活性(R)−ヒドロキシニトリルを得る光学分割工程に引き続いて、この光学分割工程で得られた光学活性(R)−ヒドロキシニトリル(22)に、再度加水分解酵素を作用させ(R)−光学活性体を優先的にアシル化して一般式(23)で示される光学活性(R)−シアノエステルとし、次いでこの光学活性(R)−シアノエステル(23)と光学活性(R)−ヒドロキシニトリルとを分離し、一般式(24)で示される光学活性(R)−シアノエステルを得、さらにこの光学活性(R)−シアノエステル(24)を加水分解して一般式(25)で示される光学活性(R)−ヒドロキシニトリルを得る光学分割工程を少なくとも1回行って95%e.e.以上の光学活性ヒドロキシニトリルを得る光学活性ヒドロキシニトリルの製造方法である。
【化103】
【化104】
【化105】
【化106】
【化107】
(上記一般式(18)及び一般式(19)中、R4 は炭素数1〜12のアルキル基、アラルキル基、ハロアルキル基のいずれかを示す。)
【化108】
(R5 は炭素数1〜12のアルキル基、アラルキル基、ハロアルキル基、水素原子のいずれかを示す。)
【化109】
【化110】
【化111】
【化112】
【化113】
(但し、式中R1 は、次の一般式(8)又は一般式(9)で示される化合物、式中R3 は炭素数1〜12のアルキル基、アラルキル基、ハロアルキル基のいずれかを示す。*は不斉炭素を示す。)
【化114】
【化115】
(但し、式中、R2 は炭素数1〜10の直鎖又は分岐アルキル基を示す。)
【0016】
またこの発明は、一般式(15)で示される光学活性(R)−ヒドロキシニトリルと一般式(16)で示される光学活性(S)−ヒドロキシニトリルとを含有する混合物に、加水分解酵素存在下、有機溶媒中でカルボン酸又はカルボン誘導体を作用させ、(R)−光学活性体を優先的にアシル化して一般式(17)で示される光学活性(R)−シアノエステルとし、この光学活性(R)−シアノエステル(17)と光学活性(S)−ヒドロキシニトリル(16)とを分離することなく有機溶媒中で一般式(18)で示されるトリアルキルリン酸或いは一般式(19)で示されるトリアルコキシリン酸、一般式(20)で示されるカルボン酸、ジエチルアゾジカルボキシレートを作用させ、光学活性(S)−ヒドロキシニトリル(16)のみを一般式(21)で示される光学活性(R)−シアノエステルとし、次いで前記一般式(15)で示される光学活性(R)−シアノエステルと上記一般式(21)で示される光学活性(R)−シアノエステルを加水分解して一般式(22)で示される光学活性(R)−ヒドロキシニトリルを得る光学分割工程に引き続いて、この光学活性(R)−ヒドロキシニトリル(22)に、再度加水分解酵素を作用させ(R)−光学活性体を優先的にアシル化して一般式(23)で示される光学活性(R)−シアノエステルとし、次いでこの光学活性(R)−シアノエステル(23)と光学活性(R)−ヒドロキシニトリルとを分離し、95%e.e.以上の一般式(24)で示される光学活性(R)−シアノエステルを得るか、又は引き続いてこの光学活性(R)−シアノエステル(24)をさらに加水分解して一般式(25)で示される光学活性(R)−ヒドロキシニトリルを得るまでに至る光学分割工程を少なくとも1回行った後、さらにこの光学分割工程で得られた光学活性(R)−ヒドロキシニトリル(25)に、再度加水分解酵素を作用させ(R)−光学活性体を優先的にアシル化して一般式(26)で示される光学活性(R)−シアノエステルとし、次いでこの光学活性(R)−シアノエステル(26)と光学活性(R)−ヒドロキシニトリルとを分離し、一般式(27)で示される95%e.e.以上の光学活性(R)−シアノエステルを得る光学活性シアノエステルの製造方法である。
【化116】
【化117】
【化118】
【化119】
【化120】
(上記一般式(18)及び一般式(19)中、R4 は炭素数1〜12のアルキル基、アラルキル基、ハロアルキル基のいずれかを示す。)
【化121】
(R5 は炭素数1〜12のアルキル基、アラルキル基、ハロアルキル基、水素原子のいずれかを示す。)
【化122】
【化123】
【化124】
【化125】
【化126】
【化127】
【化128】
(但し、式中R1 は、次の一般式(8)又は一般式(9)で示される化合物、式中R3 は炭素数1〜12のアルキル基、アラルキル基、ハロアルキル基のいずれかを示す。*は不斉炭素を示す。)
【化129】
【化130】
(但し、式中、R2 は炭素数1〜10の直鎖又は分岐アルキル基を示す。)
【0017】
上記の光学活性ヒドロキシニトリル及び光学活性シアノエステルの各製造方法(以下、第2製法と称する。)により上記従来の課題(2)を悉く解消する。
【0018】
さらに確実に高純度の光学活性ヒドロキシニトリルを製造するために、一般式(28)で示される光学活性(R)−ヒドロキシニトリルと一般式(29)で示される光学活性(S)−ヒドロキシニトリルとを含有する混合物に、加水分解酵素存在下、有機溶媒中でカルボン酸またはカルボン酸誘導体を作用させ、未反応の光学活性ヒドロキシニトリルが95%e.e.以上の一般式(30)で示される光学活性(S)−ヒドロキシニトリルとなるまで(R)−光学活性体を優先的にアシル化して一般式(31)で示される光学活性(R)−シアノエステルとし、次いでこの光学活性(R)−シアノエステル(31)と95%e.e.以上の光学活性(S)−ヒドロキシニトリル(30)とを分離し、さらに有機溶媒中で一般式(32)で示されるトリアルキルリン酸、一般式(33)で示されるトリアルコキシリン酸、一般式(34)で示されるカルボン酸、ジエチルアゾジカルボキシレートを光学活性(S)ヒドロキシニトリル(30)に作用させ、95%e.e.以上の光学活性(S)−ヒドロキシニトリル(30)を95%e.e.以上の一般式(35)で示される光学活性(R)−シアノエステルへと変換し、95%e.e.以上の光学活性(R)−シアノエステルを得、さらにこの光学活性(R)−シアノエステル(35)を加水分解して95%e.e.以上の一般式(36)で示される光学活性(R)−ヒドロキシニトリルを得る光学活性ヒドロキシニトリルの製造方法である。
【化131】
【化132】
【化133】
【化134】
【化135】
【化136】
(上記一般式(32)及び一般式(33)において、R4 は炭素数1〜12のアルキル基、アラルキル基、ハロアルキル基のいずれかを示す。)
【化137】
(R5 は炭素数1〜12のアルキル基、アラルキル基、ハロアルキル基、水素原子のいずれかを示す。)
【化138】
【化139】
(但し、式中R1 は次の一般式(8)又は一般式(9)で示される化合物、式中R3 は炭素数1〜12のアルキル基、アラルキル基、ハロアルキル基のいずれかを示す。*は不斉炭素を示す。)
【化140】
【化141】
(但し、式中、R2 は炭素数1〜10の直鎖又は分岐アルキル基を示す。)
【0019】
また、一般式(28)で示される光学活性(R)−ヒドロキシニトリルと一般式(29)で示される光学活性(S)−ヒドロキシニトリルとを含有する混合物に、加水分解酵素存在下、有機溶媒中でカルボン酸またはカルボン酸誘導体を作用させ、未反応の光学活性ヒドロキシニトリルが95%e.e.以上の一般式(30)で示される光学活性(S)−ヒドロキシニトリルとなるまで(R)−光学活性体を優先的にアシル化して一般式(31)で示される光学活性(R)−シアノエステルとし、次いでこの光学活性(R)−シアノエステル(31)と95%e.e.以上の光学活性(S)−ヒドロキシニトリル(30)とを分離し、さらに有機溶媒中で一般式(32)で示されるトリアルキルリン酸、一般式(33)で示されるトリアルコキシリン酸、一般式(34)で示されるカルボン酸、ジエチルアゾジカルボキシレートを光学活性(S)−ヒドロキシニトリル(30)に作用させ、95%e.e.以上の光学活性(S)−ヒドロキシニトリル(30)を95%e.e.以上の一般式(35)で示される光学活性(R)−シアノエステルへと変換し、95%e.e.以上の光学活性(R)−シアノエステルを得る光学活性シアノエステルの製造方法である。
【化142】
【化143】
【化144】
【化145】
【化146】
【化147】
(上記一般式(32)及び一般式(33)において、R4 は炭素数1〜12のアルキル基、アラルキル基、ハロアルキル基のいずれかを示す。)
【化148】
(R5 は炭素数1〜12のアルキル基、アラルキル基、ハロアルキル基、水素原子のいずれかを示す。)
【化149】
(但し、式中R1 は次の一般式(8)又は一般式(9)で示される化合物、式中R3 は炭素数1〜12のアルキル基、アラルキル基、ハロアルキル基のいずれかを示す。*は不斉炭素を示す。)
【化150】
【化151】
(但し、式中、R2 は炭素数1〜10の直鎖又は分岐アルキル基を示す。)
【0020】
上記の光学活性ヒドロキシニトリル及び光学活性シアノエステルの各製造方法(以下、第3製法と称する。)により上記従来の課題(3)を悉く解消する。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、さらに具体的に詳述する。図1はこの発明の第1製法の製造工程を示すスキームである。
図1に示す通り、本発明の第1製法は、光学的に純粋でないヒドロキシニトリル、すなわち前記一般式(1)で示される光学活性(R)−ヒドロキシニトリルと一般式(2)で示される光学活性(S)−ヒドロキシニトリルとを少なくとも含有する混合物を出発物質としている。
【化152】
【化153】
(但し、式中R1 は次の一般式(8)又は一般式(9)で示される化合物、式中R3 は炭素数1〜12のアルキル基、アラルキル基、ハロアルキル基のいずれかを示す。*は不斉炭素を示す。)
【化154】
【化155】
(但し、式中、R2 は炭素数1〜10の直鎖又は分岐アルキル基を示す。)
【0022】
この混合物は光学活性(R)−ヒドロキシニトリルと光学活性(S)−ヒドロキシニトリルとを含有する混合物であればよく、例えば両者が等量含まれる一般式(10)で示されるラセミヒドロキシニトリルが好適に使用できる。
【化156】
(但し、式中R1 は一般式(11)又は一般式(12)で示される化合物を示す。 *は不斉炭素を示す.)
【化157】
【化158】
(但し、式中R2 は炭素数1〜10の直鎖又は分岐アルキル基を示す。)
【0023】
このラセミヒドロキシニトリルの具体例としては、4−ヒドロキシ−5−テトラデシノニトリル、 4−ヒドロキシ−5−トリデシノニトリル、4−ヒドロキシ−5−ドデシノニトリル、4−ヒドロキシ−5−ウンデシノニトリル、4ーヒドロキシ−6−デシノニトリル、4−ヒドロキシ−5−ノニノニトリル、4−ヒドロキシ−5−テトラデセノニトリル、4−ヒドロキシ−5−トリデセノニトリル、4−ヒドロキシ−5−ドデセノニトリル、4−ヒドロキシ−5−ウンデセノニトリル、4−ヒドロキシ−5−デセノニトリル、4−ヒドロキシ−5−ノネノニトリル等が例示される。特に一般式(41)で示される4−ヒドロキシ−5−テトラデシノニトリルを出発物質として用いると、芝害虫マメコガネ(Popillia japonica Newman)の性フェロモン合成中間体を合成できる。また、同じく一般式(42)で示される4−ヒドロキシ−5−ドデシノニトリルを出発物質として用いると、作物害虫ドウガネブイブイ(Anomala cuprea Hope) の性フェロモン合成中間体を合成することができる。
【化159】
【化160】
【0024】
このようなラセミヒドロキシニトリルは容易に製造できる物質である。具体例として、4−ヒドロキシ−5−ドデシノニトリルの合成の一実施例を例示すると、3−ホルミルプロピノニトリルと1−オクチルマグネシウムブロミドとを室温で反応させることにより容易に合成することができる(Pirkle, W. H. et al, J. Org. Chem. 43, 2091(1978))。
【0025】
この発明の第1製法においては、具体的には、前記したラセミヒドロキシニトリル((R)−ヒドロキシニトリルと(S)−ヒドロキシニトリルとの等量混合物)に加水分解酵素存在下、有機溶媒中で、カルボン酸またはカルボン酸誘導体をアシル基供与体として作用させ、立体選択的アシル化反応を行い、前記ラセミヒドロキシニトリルのうちの(R)−光学活性体を優先的にアシル化して一般式(3)で示される光学活性(R)−シアノエステルとする。
【化161】
(但し、式中R1 は次の一般式(8)又は一般式(9)で示される化合物、式中R3 は炭素数1〜12のアルキル基、アラルキル基、ハロアルキル基のいずれかを示す。*は不斉炭素を示す。)
【化162】
【化163】
(但し、式中、R2 は炭素数1〜10の直鎖又は分岐アルキル基を示す。)
【0026】
この反応に用いる加水分解酵素としては、豚膵臓由来リパーゼ、細菌由来リパーゼ、酵母由釆リパーゼ、かび由来リパーゼ等のリパーゼ類、豚膵臓エステラーゼ、コレステロールエステラーゼ等が挙げられる。これらの酵素は粗精品でも粗精製品でもよく、しかもこの形態も特に限定されるものではなく、粉末状、顆粒状、あるいは酵素を含む微生物菌体(処理菌体、休止菌体)の乾燥物等を適宜任意に用いることができる。これらの酵素はそのまま用いることもできるが、固定化担体に固定して用いることもできる。また反応終了後に回収した酵素を再利用することも可能である。
【0027】
また、この反応に用いる有機溶媒は、非水系有機溶媒であれば良く、具体例としては、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、イソオクタン等の鎖状脂肪族炭化水素、シクロぺンタン、シクロヘキサン等の環状脂肪族炭化水素、ジクロロメタン、トリクロロメタン、四塩化炭素等の含ハロゲン炭化水素、べンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、ジエチルエーテル、イソプロピルエーテル、 n−ブチルエーテル等のエーテル類等ヒドロキシニトリルを溶解する任意の非水系溶媒が限定されることなく挙げられる。
【0028】
この反応に用いられるカルボン酸あるいはカルボン酸誘導体は加水分解酵素の基質となり得る範囲であればよく、好ましくは炭素数2〜20程度のカルボン酸あるいはカルボン酸誘導体が好適に使用できる。具体的にはカルボン酸としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ラウリル酸、ミリスチン酸、ステアリン酸等が好適に例示される。またカルボン酸誘導体としては、前記カルボン酸類のエステル類、特にビニルエステルあるいはイソプロペニルエステル等のエノールエステル類が好ましく提示される。或いは前記カルボン酸類の無水物も例示でき、鎖状カルボン酸無水物としては酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸等の無水物が、また環状カルボン酸無水物としてはコハク酸無水物、グルタル酸無水物等が好適に例示される。
【0029】
この反応におけるラセミヒドロキシニトリルとカルボン酸またはカルボン酸誘導体との配合率は特に限定はされない。また、この反応の反応温度は酵素の活性温度内であれば良く、通常0℃〜70℃、より望ましくは15〜50℃の温度の範囲が使用される。
【0030】
この立体選択的アシル化反応終了後この反応により得られた一般式(43)で示される光学活性(R)−シアノエステルと一般式(44)で示される光学活性(S)−ヒドロキシニトリルとを分離する。
【化164】
【化165】
(但し、式中R1 は、前記と同様、一般式(8)又は一般式(9)で示される化合物、式中R3 は炭素数1〜12のアルキル基、アラルキル基、ハロアルキル基のいずれかを示す。*は不斉炭素を示す。)
【0031】
この分離方法としては特に限定はされないが、水難性有機溶媒と水とからなる2相系溶媒を用いた抽出による分離方法、カラムを用いる分離方法、蒸留による分離方法などが挙げられる。このようにして得られた光学活性(R)−シアノエステルは、次いで、炭酸カリウム等のアルカリで加水分解することにより、容易に同じ光学純度の一般式(4)で示される光学活性(R)−ヒドロキシニトリルに誘導することができる。
【化166】
(但し、式中R1 は、前記と同様、一般式(8)又は一般式(9)で示される化合物、式中R3 は炭素数1〜12のアルキル基、アラルキル基、ハロアルキル基のいずれかを示す。*は不斉炭素を示す。)
【0032】
この光学分割工程に引き続いて、この光学分割工程で得られた光学活性(R)−ヒドロキシニトリルに、再度、加水分解酵素を作用させ(R)−光学活性体を優先的にアシル化して一般式(5)で示される光学活性(R)−シアノエステルとし、次いでこの光学活性(R)−シアノエステルと光学活性(S)−ヒドロキシニトリルとを分離し、一般式(6)で示される光学純度95%e.e.以上の光学活性(R)−シアノエステルを得るものである。
また、さらに、この一般式(6)で示される光学活性(R)−シアノエステルをさらに加水分解すれば一般式(7)で示される光学純度95%e.e.以上の光学活性ヒドロキシニトリルを得るものである。
【化167】
【化168】
【化169】
(但し、式中R1 は、前記の通り、次の一般式(8)又は一般式(9)で示される化合物、式中R3 は炭素数1〜12のアルキル基、アラルキル基、ハロアルキル基のいずれかを示す。*は不斉炭素を示す。)
【化170】
【化171】
(但し、式中、R2 は炭素数1〜10の直鎖又は分岐アルキル基を示す。)
【0033】
なお、光学分割工程は、上記では2回繰り返しているが、さらに光学分割を繰り返して製造することもできる。実際には、2回の光学分割で光学純度>99%e.e.の光学活性ヒドロキシニトリル及び光学活性シアノエステルを得ている。
【0034】
図2はこの発明の第2製法の製造工程を示すスキームである。
図2に示す通り、この第2製法においても、第1製法と同様、光学的に純粋でないヒドロキシニトリル、すなわち一般式(15)で示される光学活性(R)−ヒドロキシニトリルと一般式(16)で示される光学活性(S)−ヒドロシニトリルとを含有する混合物を出発物質として使用する。
【化172】
【化173】
(但し、式中R1 は次の一般式(8)又は一般式(9)で示される化合物、式中R3 は炭素数1〜12のアルキル基、アラルキル基、ハロアルキル基のいずれかを示す。*は不斉炭素を示す。)
【化174】
【化175】
(但し、式中、R2 は炭素数1〜10の直鎖又は分岐アルキル基を示す。)
【0035】
この混合物は光学活性(R)−ヒドロキシニトリルと光学活性(S)−ヒドロキシニトリルとを含有する混合物であればよく、例えば両者が等量含まれる一般式(10)で示されるラセミヒドロキシニトリルが好適に使用できる。
【化176】
(但し、式中R1 は一般式(11)又は一般式(12)で示される化合物を示す。 *は不斉炭素を示す。)
【化177】
【化178】
(但し、式中R2 は炭素数1〜10の直鎖又は分岐アルキル基を示す。)
【0036】
このラセミヒドロキシニトリルの具体例としては、前記本発明の第1製法と同じく、4−ヒドロキシ−5−テトラデシノニトリル、 4−ヒドロキシ−5−トリデシノニトリル、4−ヒドロキシ−5−ドデシノニトリル、4−ヒドロキシ−5−ウンデシノニトリル、4ーヒドロキシ−6−デシノニトリル、4−ヒドロキシ−5−ノニノニトリル、4−ヒドロキシ−5−テトラデセノニトリル、4−ヒドロキシ−5−トリデセノニトリル、4−ヒドロキシ−5−ドデセノニトリル、4−ヒドロキシ−5−ウンデセノニトリル、4−ヒドロキシ−5−デセノニトリル、4−ヒドロキシ−5−ノネノニトリル等が例示される。特に一般式(41)で示される4−ヒドロキシ−5−テトラデシノニトリルを出発物質として用いると、芝害虫マメコガネ(Popillia japonica Newman)の性フェロモン合成中間体を合成できる。また、同じく一般式(42)で示される4−ヒドロキシ−5−ドデシノニトリルを出発物質として用いると、作物害虫ドウガネブイブイ(Anomala cuprea Hope)の性フェロモン合成中間体を合成することができる。
【化179】
【化180】
【0037】
このようなラセミヒドロキシニトリルは容易に製造できる物質である。具体例として、4−ヒドロキシ−5−ドデシノニトリルの合成の一実施例を例示すると、3−ホルミルプロピノニトリルと1−オクチルマグネシウムブロミドとを室温で反応させることにより容易に合成することができる(Pirkle, W. H. et al, J. Org. Chem. 43, 2091(1978))。
【0038】
この発明の第2製法においては、具体的には、前記したラセミヒドロキシニトリル((R)−ヒドロキシニトリルと(S)−ヒドロキシニトリルとの等量混合物)に加水分解酵素存在下、有機溶媒中で、カルボン酸またはカルボン酸誘導体をアシル基供与体として作用させ、立体選択的アシル化反応を行い、前記ラセミヒドロキシニトリルのうちの(R)−光学活性体を優先的にアシル化して一般式(17)で示される光学活性(R)−シアノエステルとする。
【化181】
(但し、式中R1 は次の一般式(8)又は一般式(9)で示される化合物、式中R3 は炭素数1〜12のアルキル基、アラルキル基、ハロアルキル基のいずれかを示す。*は不斉炭素を示す。)
【化182】
【化183】
(但し、式中、R2 は炭素数1〜10の直鎖又は分岐アルキル基を示す。)
【0039】
この反応に用いる加水分解酵素としては、豚膵臓由来リパーゼ、細菌由来リパーゼ、酵母由来リパーゼ、かび由来リパーゼ等のリパーゼ類、豚膵臓エステラーゼ、コレステロールエステラーゼ等が挙げられる。これらの酵素は粗精品でも粗精製品でもよく、しかもこの形態も特に限定されるものではなく、粉末状、顆粒状、あるいは酵素を含む微生物菌体(処理菌体、休止菌体)の乾燥物等を適宜任意に用いることができる。これらの酵素はそのまま用いることもできるが、固定化担体に固定して用いることもできる。また反応終了後に回収した酵素を再利用することも可能である。
【0040】
また、この反応に用いる有機溶媒は、非水系有機溶媒であれば良く、具体例としては、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、イソオクタン等の鎖状脂肪族炭化水素、シクロぺンタン、シクロヘキサン等の環状脂肪族炭化水素、ジクロロメタン、トリクロロメタン、四塩化炭素等の含ハロゲン炭化水素、べンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、ジエチルエーテル、イソプロピルエーテル、 n−ブチルエーテル等のエーテル類等ヒドロキシニトリルを溶解する任意の非水系溶媒が限定されることなく挙げられる。
【0041】
この反応に用いられるカルボン酸あるいはカルボン酸誘導体は加水分解酵素の基質となり得る範囲であればよく、好ましくは炭素数2〜20程度のカルボン酸あるいはカルボン酸誘導体が好適に使用できる。具体的にはカルボン酸としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ラウリル酸、ミリスチン酸、ステアリン酸等が好適に例示される。またカルボン酸誘導体としては、前記カルボン酸類のエステル類、特にビニルエステルあるいはイソプロペニルエステル等のエノールエステル類が好ましく提示される。或いは前記カルボン酸類の無水物も例示でき、鎖状カルボン酸無水物としては酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸等の無水物が、また環状カルボン酸無水物としてはコハク酸無水物、グルタル酸無水物等が好適に例示される。
【0042】
この反応におけるラセミヒドロキシニトリルとカルボン酸またはカルボン酸誘導体との配合率は特に限定はされない。また、この反応の反応温度は酵素の活性温度内であれば良く、通常0℃〜70℃、より望ましくは15〜50℃の温度の範囲が使用される。
【0043】
この立体選択的アシル化反応終了後この反応により得られた一般式(45)で示される光学活性(R)−シアノエステルと一般式(46)で示される光学活性(S)−ヒドロキシニトリルとを分離することなく、有機溶媒中で一般式(18)で示されるトリアルキルリン酸或いは一般式(19)で示されるトリアルコキシリン酸、一般式(20)で示されるカルボン酸、ジエチルアゾジカルボキシレート(DEAD)の存在下に反応させ、混合物中、光学活性(S)−ヒドロキシニトリルのみを一般式(21)で示される光学活性(R)−シアノエステルへと変換し、反応液全体を光学活性(R)−シアノエステルへと導く。
【化184】
【化185】
(但し、式中R1 は、前記と同様、一般式(8)又は一般式(9)で示される化合物、式中R3 は炭素数1〜12のアルキル基、アラルキル基、ハロアルキル基のいずれかを示す。*は不斉炭素を示す。)
【0044】
このようにして得られた光学活性(R)−シアノエステルは次いで、炭酸カリウム等のアルカリで加水分解することにより、同じ光学純度の一般式(22)で示される(R)−ヒドロキシニトリルに誘導する。
【化186】
一般式(22)
(但し、式中R1 は、前記と同様、一般式(8)又は一般式(9)で示される化合物、式中R3 は炭素数1〜12のアルキル基、アラルキル基、ハロアルキル基のいずれかを示す。*は不斉炭素を示す。)
【0045】
この光学分割工程に引き続いて、この光学分割工程で得られた光学活性(R)−ヒドロキシニトリルに、再度、加水分解酵素を作用させ(R)−光学活性体を優先的にアシル化して一般式(23)で示される光学活性(R)−シアノエステルとし、次いでこの光学活性(R)−シアノエステルと光学活性(S)−ヒドロキシニトリルとを分離し、一般式(24)で示される高純度の光学活性(R)−シアノエステルを得る。
【0046】
また、さらに、この一般式(24)で示される光学活性(R)−シアノエステルをさらに加水分解すれば一般式(25)で示される高純度の光学活性ヒドロキシニトリルを得るものである。
【化187】
【化188】
【化189】
(但し、式中R1 は、前記の通り、次の一般式(8)又は一般式(9)で示される化合物、式中R3 は炭素数1〜12のアルキル基、アラルキル基、ハロアルキル基のいずれかを示す。*は不斉炭素を示す。)
【化190】
【化191】
(但し、式中、R2 は炭素数1〜10の直鎖又は分岐アルキル基を示す。)
【0047】
分離方法としては特に限定はされないが、水難性有機溶媒と水とからなる2相系溶媒を用いた抽出による分離方法、カラムを用いる分離方法、蒸留による分離方法などが挙げられる。
【0048】
なお、光学分割工程は、上記では2回繰り返しているが、さらに光学分割を繰り返して製造することもできる。実際には、2回の光学分割で光学純度>99%e.e.の光学活性ヒドロキシニトリル及び光学活性シアノエステルを得ている。
【0049】
図3はこの発明の第3製法の製造工程を示すスキームである。
図3に示す通り、この第3製法においても、第1製法及び第2製法と同様、光学的に純粋でないヒドロキシニトリル、すなわち一般式(28)で示される光学活性(R)−ヒドロキシニトリルと一般式(29)で示される光学活性(S)−ヒドロシニトリルとを含有する混合物を出発物質として使用する。
【化192】
【化193】
(但し、式中R1 は次の一般式(8)又は一般式(9)で示される化合物、式中R3 は炭素数1〜12のアルキル基、アラルキル基、ハロアルキル基のいずれかを示す。*は不斉炭素を示す。)
【化194】
【化195】
(但し、式中、R2 は炭素数1〜10の直鎖又は分岐アルキル基を示す。)
【0050】
この混合物は光学活性(R)−ヒドロキシニトリルと光学活性(S)−ヒドロキシニトリルとを含有する混合物であればよく、例えば両者が等量含まれる一般式(10)で示されるラセミヒドロキシニトリルが好適に使用できる。
【化196】
(但し、式中R1 は一般式(11)又は一般式(12)で示される化合物を示す。 *は不斉炭素を示す。)
【化197】
【化198】
(但し、式中R2 は炭素数1〜10の直鎖又は分岐アルキル基を示す。)
【0051】
このラセミヒドロキシニトリルの具体例としては、前記本発明の第1製法と同じく、4−ヒドロキシ−5−テトラデシノニトリル、 4−ヒドロキシ−5−トリデシノニトリル、4−ヒドロキシ−5−ドデシノニトリル、4−ヒドロキシ−5−ウンデシノニトリル、4ーヒドロキシ−6−デシノニトリル、4−ヒドロキシ−5−ノニノニトリル、4−ヒドロキシ−5−テトラデセノニトリル、4−ヒドロキシ−5−トリデセノニトリル、4−ヒドロキシ−5−ドデセノニトリル、4−ヒドロキシ−5−ウンデセノニトリル、4−ヒドロキシ−5−デセノニトリル、4−ヒドロキシ−5−ノネノニトリル等が例示される。特に一般式(41)で示される4−ヒドロキシ−5−テトラデシノニトリルを出発物質として用いると、芝害虫マメコガネ(Popillia japonica Newman)の性フェロモン合成中間体を合成できる。また、同じく一般式(42)で示される4−ヒドロキシ−5−ドデシノニトリルを出発物質として用いると、作物害虫ドウガネブイブイ(Anomala cuprea Hope)の性フェロモン合成中間体を合成することができる。
【化199】
【化200】
【0053】
このようなラセミヒドロキシニトリルは容易に製造できる物質である。具体例として、4−ヒドロキシ−5−ドデシノニトリルの合成の一実施例を例示すると、3−ホルミルプロピノニトリルと1−オクチルマグネシウムブロミドとを室温で反応させることにより容易に合成することができる(Pirkle, W. H. et al, J. Org. Chem. 43, 2091(1978))。
【0054】
この発明の第3製法においては、具体的には、前記したラセミヒドロキシニトリル((R)−ヒドロキシニトリルと(S)−ヒドロキシニトリルとの等量混合物)に加水分解酵素存在下、有機溶媒中で、カルボン酸またはカルボン酸誘導体をアシル基供与体として作用させ、立体選択的アシル化反応を行い、前記ラセミヒドロキシニトリルのうちの(R)−光学活性体を優先的にアシル化して一般式(31)で示される光学活性(R)−シアノエステルとする。
【化201】
(但し、式中R1 は次の一般式(8)又は一般式(9)で示される化合物、式中R3 は炭素数1〜12のアルキル基、アラルキル基、ハロアルキル基のいずれかを示す。*は不斉炭素を示す。)
【化202】
【化203】
(但し、式中、R2 は炭素数1〜10の直鎖又は分岐アルキル基を示す。)
【0055】
このアシル化反応は、前記一般式(29)で示される光学活性(S)−ヒドロキシニトリルが高純度の一般式(30)で示される光学活性(S)−ヒドロキシニトリルとなるまで続けられる。
【化204】
【化205】
一般式(30)
(但し、式中R1 は次の一般式(8)又は一般式(9)で示される化合物、式中R3 は炭素数1〜12のアルキル基、アラルキル基、ハロアルキル基のいずれかを示す。*は不斉炭素を示す。)
【化206】
【化207】
(但し、式中、R2 は炭素数1〜10の直鎖又は分岐アルキル基を示す。)
【0056】
この反応に用いる加水分解酵素としては、豚膵臓由来リパーゼ、細菌由来リパーゼ、酵母由来リパーゼ、かび由来リパーゼ等のリパーゼ類、豚膵臓エステラーゼ、コレステロールエステラーゼ等が挙げられる。これらの酵素は粗精品でも粗精製品でもよく、しかもこの形態も特に限定されるものではなく、粉末状、顆粒状、あるいは酵素を含む微生物菌体(処理菌体、休止菌体)の乾燥物等を適宜任意に用いることができる。これらの酵素はそのまま用いることもできるが、固定化担体に固定して用いることもできる。また反応終了後に回収した酵素を再利用することも可能である。
【0057】
また、この反応に用いる有機溶媒は、非水系有機溶媒であれば良く、具体例としては、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、イソオクタン等の鎖状脂肪族炭化水素、シクロぺンタン、シクロヘキサン等の環状脂肪族炭化水素、ジクロロメタン、トリクロロメタン、四塩化炭素等の含ハロゲン炭化水素、べンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、ジエチルエーテル、イソプロピルエーテル、 n−ブチルエーテル等のエーテル類等ヒドロキシニトリルを溶解する任意の非水系溶媒が限定されることなく挙げられる。
【0058】
この反応に用いられるカルボン酸あるいはカルボン酸誘導体は加水分解酵素の基質となり得る範囲であればよく、好ましくは炭素数2〜20程度のカルボン酸あるいはカルボン酸誘導体が好適に使用できる。具体的にはカルボン酸としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ラウリル酸、ミリスチン酸、ステアリン酸等が好適に例示される。またカルボン酸誘導体としては、前記カルボン酸類のエステル類、特にビニルエステルあるいはイソプロペニルエステル等のエノールエステル類が好ましく提示される。或いは前記カルボン酸類の無水物も例示でき、鎖状カルボン酸無水物としては酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸等の無水物が、また環状カルボン酸無水物としてはコハク酸無水物、グルタル酸無水物等が好適に例示される。
【0059】
この反応におけるラセミヒドロキシニトリルとカルボン酸またはカルボン酸誘導体との配合率は特に限定はされない。また、この反応の反応温度は酵素の活性温度内であれば良く、通常0℃〜70℃、より望ましくは15〜50℃の温度の範囲が使用される。
【0060】
この立体選択的アシル化反応終了後、この反応により得られた一般式(47)で示される光学活性(R)−シアノエステルと一般式(48)で示される光学活性(S)−ヒドロキシニトリルとを分離する。
【化208】
【化209】
(但し、式中R1 は次の一般式(8)又は一般式(9)で示される化合物、式中R3 は炭素数1〜12のアルキル基、アラルキル基、ハロアルキル基のいずれかを示す。*は不斉炭素を示す。)
【化210】
【化211】
(但し、式中、R2 は炭素数1〜10の直鎖又は分岐アルキル基を示す。)
【0061】
分離方法としては特に限定はされないが、水難性有機溶媒と水とからなる2相系溶媒を用いた抽出による分離方法、カラムを用いる分離方法、蒸留による分離方法などが挙げられる。
【0062】
この反応により得られた前記一般式(30)で示される光学活性(S)−ヒドロキシニトリルを、有機溶媒中で一般式(32)で示されるトリアルキルリン酸或いは一般式(33)で示されるトリアルコキシリン酸、一般式(34)で示されるカルボン酸、ジエチルアゾジカルボキシレート(DEAD)の存在下に反応させ、光学活性(S)−ヒドロキシニトリルを高純度の光学活性(R)−シアノエステルへと導く。
【0063】
このようにして得られた高純度の光学活性(R)−シアノエステルは次いで、炭酸カリウム等のアルカリで加水分解することにより、容易に同じ光学純度の一般式(36)で示される高純度の(R)−ヒドロキシニトリルに誘導することができる。
【化212】
(但し、式中R1 は、前記と同様、一般式(8)又は一般式(9)で示される化合物、式中R3 は炭素数1〜12のアルキル基、アラルキル基、ハロアルキル基のいずれかを示す。*は不斉炭素を示す。)
【0064】
【実施例】
以下、この発明に係る光学活性ヒドロキシニトリル及び光学活性シアノエステルの製造方法について、実施例を挙げて一層詳細に説明する。なお、この発明は以下の実施例により何ら限定されるものではない。
下記実施例において、(R)−体および(S)−の光学純度は、ヒドロキシニトリル(シアノエステルの場合はまずエタノール、水酸化ナトリウムにより加水分解したヒドロキシニトリルに変換)をピリジン、塩化ベンゾイルにより対応するベンゾエートに誘導した後、光学活性な固定相を有するカラムを用いた高速液体クロマトグラフィーにより決定した。
【0065】
(実施例1)イソプロピルエーテル(400ml)、ラセミ4−ヒドロキシ−5−ドデシノニトリル(10g)、無水酪酸(4.1g)
、リパーゼ(商品名;アマノPS)(10g)を混合して懸濁液を調製した。この懸濁液を25℃で14時間攪拌した後反応液を濾過し、得られた濾液を減圧濃縮した。得られた油状物質をへキサン・酢酸エチル系のシリカゲル系クロマトグラフィーにより精製し、4.3gの(R)−4−プロピオニルオキシ−5−ドデシノニトリル(光学純度89%e.e.)と6.1gの(S)−4−ヒドロキシ−5−ドデシノニトリル(光学純度48%e.e.)を得た。得られた(R)−4−プロピオニルオキシ−5−ドデシノニトリルは、赤外線吸収スペクトルの吸収波長(cm-1)が2930、2900、2840、2220、1740、1460、1430、1380、1250、1040であったこと(図4参照)、及びプロトン磁気共鳴スペクトル(400MHz)分析のσ値が、0.88(3H,t,J=7.IHz)、0.94(3H, t, J=7.3HZ)、1.23〜1.38(6H, m)、1.45〜1.52(2H, m)、1.57〜1.70(2H, m)、2.06〜2.12(2H, m)、2.19(2H, td, J=6.8, 2.OHz)、2.53(2H, td, J=7.3, 3.9Hz)、4.48〜4.53(1H、m) であったこと(図5参照)、及びGC/MSスペクトル分析の分子量ピークが、M+1=264であったことから同定された。また(S)−4−ヒドロキシ−5−ドデシノニトリルについても赤外線吸収スペクトルの吸収波長(cm-1 )が3400、2900、2830、2220、1430、1330、1140、1050であったこと(図6参照)、及びプロトン磁気共鳴スペクトル(400MHz)分析のσ値が、0.88(3H, t, J=7.1Hz)、1.21〜1.39(6H,m)、1.45〜1.51(2H, m)、2.19(2H, td, J=6.8, 2.OHz)、2.53(2H, td, J=7.3, 3.9Hz)、4.48〜4.53(1H, m) であったこと(図7参照)、及びGC/MSスペクトル分析の分子量ピークが、M+1=194であったことから同定された。上記で得られた(R)−4−プロピオニルオキシ−5−ドデシノニトリル(光学純度89%e.e.)をメタノールに溶解し、1.5当量の炭酸カリウムを加え室温で1昼夜攪拌し、次いで反応液のメタノールを減圧濃縮により溶媒を除去し、ジエチルエーテルにて抽出し、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧濃縮し、3.1gの(R)−4−ヒドロキシ−5−ドデシノニトリル(光学純度89%e.e.)を得た。この(R)−4−ヒドロキシ−5−ドデシノニトリルは、赤外線吸収スペクトルの吸収波長(cm-1)及びプロトン磁気共鳴スペクトル(400MHz)分析のσ値及びGC/MSスペクトル分析の分子量ピークが、前記(S)−4−ヒドロキシ−5−ドデシノニトリルと同様であったことから同定された。上記で得られた(R)−4−ヒドロキシ−5−ドデシノニトリル(光学純度89%e.e.)とイソプロピルエーテル(120ml) 、無水酪酸(2.6g)、リパーゼ(商品名;アマノPS)(4g)を混合して懸濁液を調製した。この懸濁液を25℃で18時間攪拌した後反応液を濾過し、得られた濾液を減圧濃縮した。得られた油状物質をへキサン・酢酸エチル系のシリカゲル系クロマトグラフィーにより精製し、3.4gの(R)−4−プロピオニルオキシ−5−ドデシノニトリル(光学純度99%e.e.)と0.6gの(R)−4−ヒドロキシ−5−ドデシノニトリル(光学純度60%e.e.)を得た。この(R)−4−プロピオニルオキシ−5−ドデシノニトリルは、前記(R)−4−プロピオニルオキシ−5−ドデシノニトリルと、また(R)−4−ヒドロキシ−5−ドデシノニトリルは前記(S)−4−ヒドロキシ−5−ドデシノニトリルと、赤外線吸収スペクトルの吸収波長(cm-1)及びプロトン磁気共鳴スペクトル(400MHz)分析のσ値及びGC/MSスペクトル分析の分子量ピークが同様であったことから同定された。また、上記で得られた(R)−4−プロピオニルオキシ−5−ドデシノニトリル(光学純度99% e.e.)をメタノールに溶解し、 1.2当量の炭酸カリウムを加え室温で1昼夜攪拌することにより、90%の収率で(R)−4−ヒドロキシ−5−ドデシノニトリルを得た。
【0066】
(実施例2)イソプロピルエーテル(400ml)、ラセミ−4−ヒドロキシ−5−ドデシノニトリル(10g)、無水酪酸(6.1g)、リパーゼ(商品名;アマノPS)(10g)を混合して懸濁液を精製した。この懸濁液を25℃で18時間攪拌した後反応液を濾過し、得られた濾液を減圧濃縮し、12.3g の油状物質((R)−4−プロピオニルオキシ−5−ドデシノニトリルと(S)−4−ヒドロキシ−5−ドデシノニトリルの混合物)を得た。得られた油状物の一部をへキサン−酢酸エチル系のシリカゲル系クロマトグラフィーにより分離し光学純度を決定した結果、(R)−4−プロピオニルオキシ−5−ドデシノニトリルは83%e.e.、(S)−4−ヒドロキシ−5−ドデシノニトリルは91%e.e.であった。上記で得られた油状物質(12.3g)、トリフェニルホスフィン(13g)、酪酸(4.4g)、無水テトラヒドロフラン(100ml)を混合して懸濁液を調製した。この懸濁液にジエチルアゾジカルボキシレート(DEAD)(8.6g)をテトラヒドロフラン(20ml)に溶解した溶液を0℃で30分かけて滴下し、滴下終了後反応温度を室温にし、この温度で1時間攪拌した後、減圧濃縮し、44gの油状物物質((R)−4−プロピオニルオキシ−5−ドデシノニトリルと反応副生成物の混合物)を得た。この油状物質をメタノールに溶解し、1.5当量の炭酸カリウムを加え、室温で1昼夜攪拌し、次いで反応液のメタノールを減圧濃縮により溶媒を除去し、ジエチルエーテルにて抽出し、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧濃縮し、ヘキサン・酢酸エチル系のシリカゲル系クロマトグラフィーにより精製し、8.7gの(R)−4−ヒドロキシ−5−ドデシノニトリル(光学純度87%e.e.)を得た。この(R)−4−プロピオニルオキシ−5−ドデシノニトリルは、赤外線吸収スペクトルの吸収波長(cm-l)及びプロトン磁気共鳴スペクトル(400MHz)分析のσ値及びGC/MSスペクトル分析の分子量ピークが前記実施例1と同様であったことから同定された。上記で得られた(R)−4−ヒドロキシ−5−ドデシノニトリル(光学純度87%e.e.)とイソプロピルエーテル(350ml)、無水酪酸(6.5g)、リパーゼ(商品名;アマノPS)(7g)を混合して懸濁液を調製した。この懸濁液を25℃で30時間攪拌した後反応液を濾過し、得られた濾液を減圧濃縮した。得られた油状物質をへキサン−酢酸エチル系のシリカゲル系クロマトグラフィーにより精製し、8.2gの(R)−4−プロピオニルオキシ−5−ドデシノニトリル(光学純度99%e.e.)と2.8gの(R)−4−ヒドロキシ−5−ドデシノニトリル(光学純度55%e.e.)を得た。この(R)−4−プロピオニルオキシ−5−ドデシノニトリルおよび(R)−4−ヒドロキシ−5−ドデシノニトリルは、赤外綿吸収スペクトルの吸収波長(cm-1) 及びプロトン磁気共鳴スペクトル(400MHz)分析のσ値及びGC/MSスペクトル分析の分子量ピークが前記実施例1と同様であったことから同定された。また、上記で得られた(R)−4−プロピオニルオキシ−5−ドデシノニトリル(光学純度99% e.e.)をメタノールに溶解し、1.2当量の炭酸カリウムを加え室温で1昼夜攪拌することにより、90%の収率で(R)−4−ヒドロキシ−5−ドデシノニトリルを得た。
【0067】
(実施例3)イソプロピルエーテル(400ml)、ラセミ4−ヒドロキシ−5−ドデシノニトリル(10g)、無水酪酸(8g)、リパーゼ(商品名;アマノPS)(10g)を混合して懸濁液を調製した。この懸濁液を25℃で21時間攪拌した後反応液を濾過し、得られた濾液を減圧濃縮した。得られた油状物質をへキサン・酢酸エチル系のシリカゲル系クロマトグラフイーにより精製し、7.8gの(R)−4−プロピオニルオキシ−5−ドデシノニトリル(光学純度73%e.e.)と3.8gの(S)−4−ヒドロキシ−5−ドデシノニトリル(光学純度99.4%e.e.)を得た。この(R)−4−プロピオニルオキシ−5−ドデシノニトリルおよび(S)−4−ヒドロキシ−5−ドデシノニトリルは、赤外線吸収スペクトルの吸収波長(cm-1)及びプロトン磁気共鳴スペクトル(400MHz)分析の値及びGC/MSスペクトル分析の分子量ピークが前記実施例1と同様であったことから同定された。上記で得られた(S)−4−ヒドロキシ−5−ドデシノニトリル(光学純度99.4%e.e.)、トリフェニルホスフィン(10g)、酪酸(3.5g)、無水テトラヒドロフラン(30ml)を混合して懸濁液を調製した。この懸濁液にジエチルアゾジカルボキシレート(DEAD)(7g)をテトラヒドロフラン(10ml)に溶解した溶液を0℃で20分かけて滴下し、滴下終了後反応温度を室温にし、この温度で1時間攪拌した後、減圧濃縮し、26gの油状物質((R)−4−プロピオニルオキシ−5−ドデシノニトリルと反応副生成物の混合物)を得た。この油状物質をへキサン・酢酸エチル系のシリカゲル系クロマトグラフィーにより精製し、5.0gの(R)−4−ヒドロキシ−5−ドデシノニトリル(光学純度99.4%e.e.)を得た。この(R)−4−プロピオニルオキシ−5−ドデシノニトリルは、赤外綿吸収スペクトルの吸収波長(cm-l)及びプロトン磁気共鳴スペクトル(400MHz)分析のσ価及びGC/MSスペクトル分析の分子量ピークが前記実施例1と同様であったことから同定された。
【0068】
(実施例4)
イソプロピルエーテル(400ml)、ラセミ4−ヒドロキシ−5−テトラドデシノニトリル(10g)、無水酪酸(6.4g)、リパーゼ(商品名;アマノPS)(10g)を混合して懸濁液を調製した。この懸濁液を25℃で18時間攪拌した後反応液を濾過し、得られた濾液を減圧濃縮した。得られた油状物質をへキサン・酢酸エチル系のシリカゲル系クロマトグラフィーにより精製し、5.9gの(R)−4−プロピオニルオキシ−5−テトラドデシノニトリル(光学純度90%e.e.)と4.8gの(S)−4−ヒドロキシ−5−テトラドデシノニトリル(光学純度93%e.e.)を得た。上記で得られた(R)-4−プロピオニルオキシ−5−テトラドデシノニトリル(光学純度90%e.e.)をメタノールに溶解し、1.5当量の炭酸カリウムを加え室温で1昼夜攪拌し、次いで反応液のメタノールを減圧濃縮により溶媒を除去し、ジエチルエーテルにて抽出し、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧濃縮し、5.1gの(R)-4−ヒドロキシ−5−テトラドデシノニトリル(光学純度90%e.e.)を得た。上記で得られた(R)-4−ヒドロキシ−5−テトラドデシノニトリル(光学純度90%e.e.)とイソプロピルエーテル(200ml)、無水酪酸(6.2g)、リパーゼ(商品名;アマノPS)(5g)を混合して懸濁液を調製した。この懸濁液を25℃で43時間攪拌した後反応液を濾過し、得られた濾液を減圧濃縮した。得られた油状物質をへキサン・酢酸エチル系のシリカゲル系クロマトグラフィーにより精製し、5.5gの(R)−4−プロピオニルオキシ−5−テトラドデシノニトリル(光学純度99%e.e.)と0.7gの(R)−4−ヒドロキシ−5−テトラドデシノニトリル(光学純度73%e.e.)を得た。
【0069】
(実施例5)
イソプロピルエーテル(400ml)、ラセミ4−ヒドロキシ−5−テトラドデシノニトリル(10g)、無水酪酸(6.4g)、リパーゼ(商品名;アマノPS)(10g)を混合して懸濁液を調製した。この懸濁液を25℃で18時間攪拌した後反応液を濾過し、得られた濾液を減圧濃縮し、11.9gの油状物質((R)−4−プロピオニルオキシ−5−テトラドデシノニトリルと(S)−4−ヒドロキシ−5−テトラドデシノニトリルの混合物)を得た。得られた油状物質のー部をへキサン・酢酸エチル系のシリカゲル系クロマトグラフィーにより分離し光学純度を決定した結果、(R)−4−プロピオニルオキシ−5−テトラドデシノニトリルは93%e.e.、(S)−4−ヒドロキシ−5−テトラドデシノニトリルは93%e.e.であった。
上記で得られた油状物質(11.9g)、トリフェニルホスフィン(14g)、酪酸(4.6g)、無水テトラヒドロフラン(100ml)を混合して懸濁液を調製した。この懸濁液にジエチルアゾジカルボキシレート(DEAD)(9g)をテトラヒドロフラン(20ml)に溶解した溶液を0℃で30分かけて滴下し、滴下終了後反応温度を室温にし、この温度で1時間攪拌した後、減圧濃縮し、51gの油状物質((R)−4−プロピオニルオキシ−5−テトラドデシノニトリルと反応副生成物の混合物)を得た。この油状物質をメタノールに溶解し、1.5当量の炭酸カリウムを加え室温で1昼夜攪拌し、次いで反応液のメタノールを減圧濃縮により溶媒を除去し、ジエチルエーテルにて抽出し、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧濃縮し、ヘキサン・酢酸エチル系のシリカゲル系クロマトグラフィーにより精製し、9.1gの(R)−4−ヒドロキシ−5−テトラドデシノニトリル(光学純度93%e.e.)を得た。上記でで得られた(R)−4−ヒドロキシ−5−テトラドデシノニトリル(光学純度93%e.e.)とイソプロピルエーテル(370ml)、無水酪酸(7.7g)、リパーゼ(商品名;アマノPS)(10g)を混合して懸濁液を調製した。この懸濁液を25℃で40時間攪拌した後反応液を濾過し、得られた濾液を減圧濃縮した。得られた油状物質をへキサン・酢酸エチル系のシリカゲル系クロマトグラフィーにより精製し、10.3gの(R)−4−プロピオニルオキシ−5−テトラドデシノニトリル(光学純度99%e.e.)と20gの(R)−4−プロピオニルオキシ−5−テトラドデシノニトリル(光学純度99%e.e.)と2.0gの(R)−4−ヒドロキシ−5−テトラドデシノニトリル(光学純度55%e.e.)を得た。
【0070】
(実施例6)
イソプロピルエーテル(400ml)、ラセミ4−ヒドロキシ−5−テトラドデシノニトリル(10g)、無水酪酸(7g)、リパーゼ(商品名;アマノPS)(10g)を混合して懸濁液を調製した。この懸濁液を25℃で20時間攪拌した後反応液を濾過し、得られた濾液を減圧濃縮した。得られた油状物質をへキサン・酢酸エチル系のシリカゲル系クロマトグラフィーにより精製し、5.3gの(R)−4−プロピオニルオキシ−5−テトラドデシノニトリル(光学純度91%e.e.)と4.5gの(S)−4−ヒドロキシ−5−テトラドデシノニトリル(光学純度99.6%e.e.)を得た。上記で得られた(S)−4−ヒドロキシ−5−テトラドデシノニトリル(光学純度99.6%e.e.)、トリフェニルホスフィン(12g)、酪酸(4.3g)、無水テトラヒドロフラン(40ml)を混合して懸濁液を精製した。この懸濁液にジエチルアゾジカルボキシレート(DEAD)(8.5g)をテトラヒドロフラン(10ml)に溶解した溶液を0℃で30分かけて滴下し、滴下終了後反応温度を室温にし、この温度で1時間攪拌した後、減圧濃縮し、33gの油状物質((R)−4−プロピオニルオキシ−5−テトラドデシノニトリルと反応副生成物の混合物)を得た。この油状物質をへキサン・酢酸エチル系のシリカゲル系クロマトグラフィーにより精製し、6.3gの(R)−4−プロピオニルオキシ−5−テトラドデシノニトリル(光学純度99.6%e.e.)を得た。また上記で得られた(R)−4−プロピオニルオキシ−5−テトラドデシノニトリル(光学純度91%e.e.)をメタノールに溶解し、1.5当量の炭酸カリウムを加え室温で1昼夜攪拌し、次いで反応液のメタノールを減圧濃縮により溶媒を除去し、ジエチルエーテルにて抽出し、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧濃縮し、5.1gの(R)−4−ヒドロキシ−5−テトラドデシノニトリル(光学純度91%e.e.)を得た。上記で得られた(R)−4−ヒドロキシ−5−テトラドデシノニトリル(光学純度91%e.e.)とイソプロピルエーテル(200ml)、無水酪酸(6.2g)、リパーゼ(商品名;アマノPS)(5g)を混合して懸濁液を調製した。この懸濁液を25℃で35時間攪拌した後反応液を濾過し、得られた濾液を減圧濃縮した。得られた油状物質をへキサン・酢酸エチル系のシリカゲル系クロマトグラフィーにより精製し、5.4gの(R)−4−プロピオニルオキシ−5−テトラドデシノニトニル(光学純度99.2%e.e.)と0.8gの(R)−4−ヒドロキシ−5−テトラドデシノニトリル(光学純度46%e.e.)を得た。この結果、合計11.7gの(R)−4−プロピオニルオキシ−5−テトラドデシノニトリル(光学純度99.4%e.e.)を得た。
【0071】
【発明の効果】
以上の通り、本発明の第1製法は、少なくとも光学活性(R)−ヒドロキシニトリルと光学活性(S)−ヒドロキシニトリルとを含有する混合物に、加水分解酵素存在下、有機溶媒中でカルボン酸またはカルボン酸誘導体を作用させ(R)−光学活性体を優先的にアシル化して光学活性(R)−シアノエステルとし、次いでこの光学活性(R)−シアノエステルと光学活性(S)−ヒドロキシニトリルとを分離し、さらに光学活性(R)−シアノエステルを加水分解して光学活性(R)−ヒドロキシニトリルを得る光学分割工程に引き続いて、この光学分割工程で得られた光学活性(R)−ヒドロキシニトリルに、再度、加水分解酵素を作用させ(R)−光学活性体を優先的にアシル化して光学活性(R)−シアノエステルとし、次いでこの光学活性(R)−シアノエステルと光学活性(S)−ヒドロキシニトリルとを分離し、高純度の光学活性(R)−シアノエステルを得る製造方法、又はさらにこの光学活性(R)−シアノエステルを加水分解して光学活性(R)−ヒドロキシニトリルを得る光学分割工程を繰り返す製造方法であるため、光学純度95%e.e.以上の高純度の光学活性(R)−シアノエステル及び光学活性ヒドロキシニトリルを簡易に得ることができる。
【0072】
また、本発明の第2製法によれば、光学活性(R)−ヒドロキシニトリルと光学活性(S)−ヒドロキシニトリルとを含有する混合物に、加水分解酵素存在下、有機溶媒中でカルボン酸又はカルボン誘導体を作用させ、(R)−光学活性体を優先的にアシル化して光学活性(R)−シアノエステルとし、この光学活性(R)−シアノエステルと光学活性(S)−ヒドロキシニトリルとを分離することなく有機溶媒中で特定のトリアルキルリン酸或いはトリアルコキシリン酸、カルボン酸、ジエチルアゾジカルボキシレート(DEAD)を作用させ、光学活性(S)−ヒドロキシニトリルのみを光学活性(R)−シアノエステルとし、次いでこれらの光学活性(R)−シアノエステルを加水分解して光学活性(R)−ヒドロキシニトリルを得る光学分割工程に引き続いて、この光学分割工程で得られた光学活性(R)−ヒドロキシニトリルに、再度加水分解酵素を作用させ(R)−光学活性体を優先的にアシル化して光学活性(R)−シアノエステルとし、次いでこの光学活性(R)−シアノエステルと光学活性(S)−ヒドロキシニトリルとを分離し、高純度の光学活性(R)−シアノエステルを得る製造方法であるため、高純度の光学活性シアノエステルを収率よく製造することができる。
また、さらにこの光学活性(R)−シアノエステルを加水分解して光学活性(R)−ヒドロキシニトリルを得る光学分割工程を少なくとも1回行えば高純度の光学活性ヒドロキシニトリルを収率よく簡易に所望とする光学活性ヒドロキシニトリルを製造することができる。
【0073】
また、本発明の第3製法によれば、光学活性(R)−ヒドロキシニトリルと光学活性(S)−ヒドロキシニトリルとを含有する混合物に、加水分解酵素存在下、有機溶媒中でカルボン酸またはカルボン酸誘導体を作用させ、未反応の光学活性ヒドロキシニトリルが高純度の光学活性(S)−ヒドロキシニトリルとなるまで(R)−光学活性体を優先的にアシル化して光学活性(R)−シアノエステルとし、次いでこの光学活性(R)−シアノエステルと高純度の光学活性(S)−ヒドロキシニトリルとを分離し、さらに有機溶媒中で特定のトリアルキルリン酸、トリアルコキシリン酸、カルボン酸、ジエチルアゾジカルボキシレート(DEAD)を作用させ、高純度の光学活性(S)−ヒドロキシニトリルを高純度の光学活性(R)−シアノエステルへと変換し、高純度の光学活性(R)−シアノエステルを得る製造方法であるので、確実に高純度の光学活性シアノエステルを効率よく製造することができる。
また、さらにこの高純度の光学活性(R)−シアノエステルを加水分解すれば同程度の高純度の光学活性(R)−ヒドロキシニトリルをそのまま得ることができるので、確実に高純度の光学活性ヒドロキシニトリルを効率よく製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の第1製法の製造工程を示すスキームである。
【図2】この発明の第2製法の製造工程を示すスキームである。
【図3】この発明の第3製法の製造工程を示すスキームである。
【図4】実施例1で得られた(R)−4−プロピオニルオキシ−5−ドデシノニトリルの赤外線吸収スペクトル図である。
【図5】同プロトン磁気共鳴スペクトル図である。
【図6】実施例1で得られた(S)−4−ヒドロキシ−5−ドデシノニトリルの赤外線吸収スペクトル図である。
【図7】同プロトン磁気共鳴スペクトル図である。
Claims (14)
- 一般式(15)で示される光学活性(R)−ヒドロキシニトリルと一般式(16)で示される光学活性(S)−ヒドロキシニトリルとを含有する混合物に、リパーゼ存在下、有機溶媒中でカルボン酸又はカルボン誘導体を作用させ、(R)−光学活性体を優先的にアシル化して一般式(17)で示される光学活性(R)−シアノエステルとし、この光学活性(R)−シアノエステル(17)と光学活性(S)−ヒドロキシニトリル(16)とを分離することなく有機溶媒中で一般式(18)で示されるトリアルキルリン酸或いは一般式(19)で示されるトリアルコキシリン酸、一般式(20)で示されるカルボン酸、ジエチルアゾジカルボキシレートを作用させ、光学活性(S)−ヒドロキシニトリル(16)のみを一般式(21)で示される光学活性(R)−シアノエステルとし、次いで前記一般式(17)で示される光学活性(R)−シアノエステルと上記一般式(21)で示される光学活性(R)−シアノエステルを加水分解して一般式(22)で示される光学活性(R)−ヒドロキシニトリルを得る光学分割工程に引き続いて、この光学分割工程で得られた光学活性(R)−ヒドロキシニトリル(22)に、再度リパーゼを作用させ(R)−光学活性体を優先的にアシル化して一般式(23)で示される光学活性(R)−シアノエステルとし、次いでこの光学活性(R)−シアノエステル(23)と光学活性(R)−ヒドロキシニトリルとを分離し、一般式(24)で示される光学活性(R)−シアノエステルを得、さらにこの光学活性(R)−シアノエステル(24)を加水分解して一般式(25)で示される光学活性(R)−ヒドロキシニトリルを得る光学分割工程を少なくとも1回行って光学純度95% e.e. 以上の光学活性ヒドロキシニトリルを得ることを特徴とする光学活性ヒドロキシニトリルの製造方法。
- 一般式(15)で示される光学活性(R)−ヒドロキシニトリルと一般式(16)で示される光学活性(S)−ヒドロキシニトリルとを含有する混合物に、リパーゼ存在下、有機溶媒中でカルボン酸又はカルボン誘導体を作用させ、(R)−光学活性体を優先的にアシル化して一般式(17)で示される光学活性(R)−シアノエステルとし、この光学活性(R)−シアノエステル(17)と光学活性(S)−ヒドロキシニトリル(16)とを分離することなく有機溶媒中で一般式(18)で示されるトリアルキルリン酸或いは一般式(19)で示されるトリアルコキシリン酸、一般式(20)で示されるカルボン酸、ジエチルアゾジカルボキシレートを作用させ、光学活性(S)−ヒドロキシニトリル(16)のみを一般式(21)で示される光学活性(R)−シアノエステルとし、次いで前記一般式(17)で示される光学活性(R)−シアノエステルと上記一般式(21)で示される光学活性(R)−シアノエステルを加水分解して一般式(22)で示される光学活性(R)−ヒドロキシニトリルを得る光学分割工程に引き続いて、この光学活性(R)−ヒドロキシニトリル(22)に、再度リパーゼを作用させ(R)−光学活性体を優先的にアシル化して一般式(23)で示される光学活性(R)−シアノエステルとし、次いでこの光学活性(R)−シアノエステル(23)と光学活性(R)−ヒドロキシニトリルとを分離し、95%e.e.以上の一般式(24)で示される光学活性(R)−シアノエステルを得るか、又は引き続いてこの光学活性(R)−シアノエステル(24)をさらに加水分解して一般式(25)で示される光学活性(R)−ヒドロキシニトリルを得るまでに至る光学分割工程を少なくとも1回行った後、さらにこの光学分割工程で得られた光学活性(R)−ヒドロキシニトリル(25)に、再度リパーゼを作用させ(R)−光学活性体を優先的にアシル化して一般式(26)で示される光学活性(R)−シアノエステルとし、次いでこの光学活性(R)−シアノエステル(26)と光学活性(R)−ヒドロキシニトリルとを分離し、一般式(27)で示される95%e.e.以上の光学活性(R)−シアノエステルを得ることを特徴とする光学活性シアノエステルの製造方法。
- 前記ラセミヒドロキシニトリルが4−ヒドロキシ−5−テトラデシノニトリルである請求項3記載の光学活性シアノエステルの製造方法。
- 前記ラセミヒドロキシニトリルが4−ヒドロキシ−5−ドデシノニトリルである請求項3記載の光学活性シアノエステルの製造方法。
- 前記カルボン酸誘導体がカルボン酸無水物である請求項2乃至5のいずれかに記載の光学活性シアノエステルの製造方法。
- 前記トリアルキルリン酸或いはトリアルコキシリン酸がトリフェニルホスフィンである請求項2乃至6のいずれかに記載の光学活性シアノエステルの製造方法。
- 一般式(28)で示される光学活性(R)−ヒドロキシニトリルと一般式(29)で示される光学活性(S)−ヒドロキシニトリルとを含有する混合物に、リパーゼ存在下、有機溶媒中でカルボン酸またはカルボン酸誘導体を作用させ、未反応の光学活性ヒドロキシニトリルが95% e.e. 以上の一般式(30)で示される光学活性(S)−ヒドロキシニトリルとなるまで(R)−光学活性体を優先的にアシル化して一般式(31)で示される光学活性(R)−シアノエステルとし、次いでこの光学活性(R)−シアノエステル(31)と95% e.e. 以上の光学活性(S)−ヒドロキシニトリル(30)とを分離し、さらに有機溶媒中で一般式(32)で示されるトリアルキルリン酸、一般式(33)で示されるトリアルコキシリン酸、一般式(34)で示されるカルボン酸、ジエチルアゾジカルボキシレートを光学活性(S)−ヒドロキシニトリル(30)に作用させ、95% e.e. 以上の光学活性(S)−ヒドロキシニトリル(30)を95% e.e. 以上の一般式(35)で示される光学活性(R)−シアノエステルへと変換し、95% e.e. 以上の光学活性(R)−シアノエステルを得、さらにこの光学活性(R)−シアノエステル(35)を加水分解して95% e.e. 以上の一般式(36)で示される光学活性(R)−ヒドロキシニトリルを得ることを特徴とする光学活性ヒドロキシニトリルの製造方法。
- 一般式(28)で示される光学活性(R)−ヒドロキシニトリルと一般式(29)で示される光学活性(S)−ヒドロキシニトリルとを含有する混合物に、リパーゼ存在下、有機溶媒中でカルボン酸またはカルボン酸誘導体を作用させ、未反応の光学活性ヒドロキシニトリルが95% e.e. 以上の一般式(30)で示される光学活性(S)−ヒドロキシニトリルとなるまで(R)−光学活性体を優先的にアシル化して一般式(31)で示される光学活性(R)−シアノエステルとし、次いでこの光学活性(R)−シアノエステル(31)と95% e.e. 以上の光学活性(S)−ヒドロキシニトリル(30)とを分離し、さらに有機溶媒中で一般式(32)で示されるトリアルキルリン酸、一般式(33)で示されるトリアルコキシリン酸、一般式(34)で示されるカルボン酸、ジエチルアゾジカルボキシレートを光学活性(S)−ヒドロキシニトリル(30)に作用させ、95% e.e. 以上の光学活性(S)−ヒドロキシニトリル(30)を95% e.e. 以上の一般式(35)で示される光学活性(R)−シアノエステルへと変換し、95% e.e. 以上の光学活性(R)−シアノエステルを得ることを特徴とする光学活性シアノエステルの製造方法。
- 前記ラセミシアノエステルが4−ヒドロキシ−5−テトラデシノニトリルである請求項10記載の光学活性シアノエステルの製造方法。
- 前記ラセミシアノエステルが4−ヒドロキシ−5−ドデシノニトリルである請求項10記載の光学活性シアノエステルの製造方法。
- 前記カルボン酸誘導体がカルボン酸無水物である請求項9乃至12のいずれかに記載の光学活性シアノエステルの製造方法。
- 前記トリアルキルリン酸或いはトリアルコキシリン酸がトリフェニルホスフィンである請求項9乃至13のいずれかに記載の光学活性シアノエステルの製造方法。
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