JP3700564B2 - スクラップから混合希土類金属を回収する方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、2種以上の希土類元素 (即ち、混合希土類元素) を含有するスクラップから安定した組成で混合希土類金属を回収する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
希土類磁石やNi−水素電池の水素吸蔵電極として、希土類金属と他金属との合金である希土類合金の使用が近年増大している。これらの合金に含まれる希土類元素は、La、Ce、Pr及びNdといった、軽希土類と呼ばれる、原子番号の小さい希土類元素が多い。
【0003】
工業的に利用されている希土類合金は、多くの場合、1種類の希土類元素ではなく、数種の希土類元素を含有している。希土類元素は互いに性質が似ているため、希土類元素の資源は一般に複数の希土類元素を含有している。希土類元素を個々に分離するには、溶媒抽出やイオン交換処理を繰り返す必要があり、コストが高くなることと、性質が似ていることから、混合物であっても所定の性能が得られるため、希土類金属の工業材料としては混合希土類金属を使用することが多いからである。軽希土類元素が大部分を占める混合希土類金属の例として、LaとCeを主成分とするミッシュメタルがあり、Ni−水素電池の負極用水素吸蔵合金に多く用いられている。希土類磁石の主流であるNd−Fe−B合金の場合も、Nd以外にPrを含有しているのが普通である。
【0004】
希土類元素は地殻中に比較的多く含まれているが、採算性を考慮した工業ベースで利用できる濃度を有する希土類元素の資源は、中国、北米、オーストラリア、ロシア等に偏在しており、その供給事情は必ずしも安定したものではない。従って、希土類合金を含有する材料から希土類元素を金属として回収し、再利用することは重要である。
【0005】
希土類金属の回収対象として考えられる希土類元素含有材料には、使用済みの希土類磁石やNi−水素電池電極等、ならびにそれらの製造過程で発生した不良品や、切削加工中に発生する微粉等があり、本発明では、これらの材料を一括して、希土類元素を含有するスクラップ、または単にスクラップと呼ぶ。このスクラップの多くは2種以上の希土類元素を含有し、希土類元素以外の合金元素(例、希土類磁石の場合はFeやBまたはCo、電極の場合はNi)も含有している。
【0006】
2種以上の混合希土類元素を含むスクラップから希土類金属を回収する従来の方法は、鉱石から金属を抽出する方法を応用したものである。即ち、スクラップを酸で処理して、希土類以外の金属を分離した後、希土類元素を含む沈殿を焼成して、混合希土類金属の酸化物を作製する。この混合希土類金属の酸化物を、溶媒抽出やイオン交換処理等の湿式分離法を繰り返して、各希土類元素ごとに酸化物や塩化物等を作製し、これから電解や真空カルシウム還元等によって各希土類元素の単体金属を回収する。
【0007】
しかし、湿式分離法は大型の専用設備や多量の薬剤の使用を必要とし、従来から希土類元素の金属の生産を実施してきたものでなければ実施することは困難である。
【0008】
特開平9−157769号公報には、スクラップから希土類元素の化合物を回収する方法が開示されている。この方法は、スクラップを水素化により脆化させてから粉砕し、こうして得たスクラップの粉末を加熱して酸化物にしてから、酸で処理して希土類元素を浸出させ、沈殿する他金属と分離する。得られた希土類元素を含む溶液から、適当な反応で希土類元素の化合物を沈殿させて回収する。回収した希土類元素の化合物は、焼成して酸化物に転化させ、次いで精錬して希土類金属を生成させることができる。精錬法として、公知のフッ化物浴溶融塩電解法が利用できることが記載されている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、希土類金属資源のリサイクルを実現するため、2種以上の希土類元素を含むスクラップからの希土類金属の簡便な回収方法を確立することを目指したものである。
【0010】
本発明者らは、スクラップからの希土類金属の回収についての特徴的な点として下記に着目した。
▲1▼個々の希土類元素の単体金属を回収する必要はなく、希土類元素の混合金属を回収すればよいこと、
▲2▼回収した混合希土類金属を希土類合金の原料として用いる場合、同一回収ロット内の希土類元素の組成が安定し、また電解電極の溶出等により混入する不純物の少ないものが要求されること、および
▲3▼多くの場合、スクラップ中の希土類の概略組成が既知であり、スクラップから回収した希土類金属をスクラップと同一用途の希土類合金原料として使用することが多いこと。
【0011】
上記▲1▼に着目して、2種以上の希土類元素を混合希土類金属のままで回収すると、従来法のように、溶媒抽出やイオン交換処理を繰り返して各希土類元素の単体金属に分離する工程が不要となり、回収が簡便になる。また、スクラップから希土類元素以外の金属を分離する方法については、特開平9−157769号公報にも記載されているように、酸処理を利用した方法が利用できる。こうして希土類元素を含有する酸水溶液を得た後、常法に従って希土類元素を沈殿させ焼成し、得られた希土類金属の酸化物を溶融塩電解すると、希土類金属が回収できる。
【0012】
本発明者らが、中〜重希土類が混在した混合希土類元素を含有するスクラップから、上記のように酸処理、沈殿、焼成を経て得られた混合希土類金属の酸化物をフッ化物浴中で溶融塩電解したところ、往々にして電解反応が不安定になり、回収した混合希土類金属の組成が不安定なものになったり、電解温度が上昇して炉材、電極等から不純物が混入することが起き、上記▲2▼の要求を確実に満たすことが困難であることを見出した。
【0013】
本発明の具体的課題は、中−重希土類元素が混在した混合希土類元素を含有するスクラップから混合希土類金属を回収するための最終工程である、混合希土類酸化物のフッ化物浴溶融塩電解において、同一製造ロット内で安定した組成を有し、不純物の含有量の少ない、混合希土類金属を回収することのできる方法を開発することである。
【0014】
現在の希土類系合金の主用途である希土類磁石はNd、Pr等の軽希土類元素を主成分とするものであり、またNi−水素二次電池に用いられる希土類系水素吸蔵合金は同様に軽希土類を主成分とするミッシュメタルがほとんであることから、軽希土類元素を主成分とする混合希土類金属を安定した組成で回収する方法の提案は、希土類資源のリサイクルに有効である。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記具体的課題を解決すべく検討した結果、溶融塩電解に用いる溶融フッ化物浴がフッ化リチウムと希土類フッ化物とからなり、かつ電解に供する混合希土類金属の酸化物中の希土類元素が軽希土類元素をある割合より多く含んでいると、安定した組成を持ち、不純物の混入の少ない混合希土類金属が得られることを見出した。上記▲3▼に述べたように、スクラップ中の混合希土類元素の概略組成は既知であることが多いので、電解に供する酸化物中の希土類元素の組成比は、この既知のスクラップ概略組成に基づいて容易に調整できる。例えば、必要に応じて軽希土類金属を添加して、軽希土類元素の割合を電解の安定化に必要な割合以上にすればよい。
【0016】
ここに、本発明は、非軽希土類元素が混在した混合希土類元素を含有するスクラップから得た混合希土類酸化物を溶融フッ化物浴中で電解することにより、混合希土類金属を回収する方法であって、
前記溶融フッ化物浴が、フッ化リチウムを主体とし、フッ化リチウムと希土類のフッ化物とからなる浴であり、電解に供する前記酸化物中の軽希土類元素の合計含有量が、その全希土類元素含有量に対して 92 〜 98 質量%の範囲内となるように調整されることを特徴とする、スクラップからの混合希土類金属の回収方法である。
【0017】
本発明において、軽希土類元素とは、La、Ce、PrおよびNdを意味し、非軽希土類元素とは、それ以外の希土類元素 (即ち、中希土類および重希土類元素) である。また、混合希土類元素とは2種以上の希土類元素の混合物の意味であり、混合希土類酸化物または混合希土類金属とは、それぞれ2種以上の希土類元素の酸化物または金属の混合物という意味である。
【0018】
本発明の方法により混合希土類酸化物を電解すると、安定した組成を持ち、電解電極を構成するCやW等の混入の少ない混合希土類金属を回収できる理由は次のように推測される。
【0019】
希土類金属の溶融塩電解に用いるフッ化物浴は、フッ化リチウム (LiF) と希土類元素のフッ化物に加えて、Li以外の他のアルカリ金属やアルカリ土類金属のフッ化物を含有することが多く、特にフッ化バリウム(BaF2)を含有させることが多い。しかし、フッ化物浴がこのようなLiおよび希土類以外の金属を含有すると、回収された混合希土類金属にこれらの金属が混入することが避けられない。回収された混合希土類金属が、特にMg、Ca、Ba等のアルカリ土類金属を含有していると、これを磁石や電極の材料に用いた場合に特性を劣化させることがある。
【0020】
そのため、本発明では、希土類金属の溶融塩電解に用いるフッ化物浴として、フッ化リチウムと希土類フッ化物との混合物からなる浴、即ち、Li以外のアルカリ金属フッ化物やアルカリ土類金属フッ化物を実質的に含有しないフッ化物浴とする。この溶融フッ化物浴は、軽いLiFを多量に含んでいるため、全体として希土類酸化物より比重が小さい。
【0021】
電解に供した混合希土類酸化物が、非軽希土類元素、即ち、中〜重希土類元素を多く含んでいると、この酸化物を溶融フッ化物浴に投入した場合、比重差により電解槽の下に沈みがちになり、電解反応が不安定になる。そのような状態で電解して得た混合希土類金属中の各元素の組成は、同一製造ロット内であっても不安定で、変動し易くなる。これに対し、混合希土類酸化物が軽希土類元素を多く含んでいると、溶融フッ化物浴との比重差が小さくなり、安定して電解反応が進む結果、変動幅の小さい安定した組成の混合希土類金属を得ることができる。
【0022】
また、電解に供した混合希土類酸化物が軽希土類元素を多く含むと、電解温度を比較的低くすることができ、電解槽の損傷や電極を構成する例えばCやW等の溶出を抑制することができるので、それらが不純物として混合希土類金属に混入することが少なくなる。
【0023】
より好ましくは、このフッ化物浴中の希土類フッ化物は、電解に供する混合希土類元素の酸化物に存在するのと同じ希土類元素のフッ化物からなる。それにより、前述した電解の安定化効果がさらに高まる。
【0024】
【発明の実施の形態】
本発明の方法により混合希土類金属を安定した組成で回収することができる、非軽希土類元素が混在した混合希土類元素を含有するスクラップとしては、前述したように、使用済みの希土類磁石やNi−水素電池の電極等、ならびにそれらの製造過程で発生した不良品や切削加工中に発生する微粉等を包含する。
【0025】
このスクラップから、希土類元素を他の金属元素から分離して、混合希土類酸化物を得る。これは任意の方法で実施することができ、例えば、従来から知られているように、酸処理、沈殿、焼成の各工程を経る方法でよい。
【0026】
より具体的に説明すると、スクラップを必要に応じて粉砕した後、酸処理を利用して、希土類元素が溶解した酸水溶液を得る。粉砕は、水素化による脆化を利用してもよく、直接粉砕してもよい。酸処理は、まずスクラップ全体を強酸で溶解させてから、アルカリで溶液pHを調整し、Fe、Ni、Coなどの希土類以外の他金属を沈殿させて濾別する方法、特公平5−14777 号および特開平9−157769号各公報に記載のように、スクラップの粉末を酸化して他金属を難溶性酸化物にしてから強酸で処理して、希土類元素だけを選択的に溶解させる方法等が可能である。スクラップ全体を硫酸に溶解させた場合には、得られた溶液を濃縮すると、希土類元素の硫酸塩だけが沈殿するので、これを分離して、塩酸等の別の酸に溶解させて、希土類元素の酸水溶液を得ることもできる。
【0027】
他金属を分離した後の希土類元素の水溶液にシュウ酸もしくはシュウ酸塩または炭酸塩 (例、炭酸アンモニウム、炭酸ナトリウム等) を添加すると、希土類金属イオンは難溶性の希土類シュウ酸塩または炭酸塩となって沈殿するので、このシュウ酸塩または炭酸塩の沈殿を分離し、焼成すると、脱炭酸反応により希土類酸化物が得られる。
【0028】
こうして得られる希土類酸化物は、スクラップ中に含まれていた希土類元素の組成と実質的に同一組成で希土類元素を含有する。従って、スクラップが2種以上の希土類元素を含有していると、2種以上の希土類元素を含有する混合希土類酸化物が得られる。また、前述したように、スクラップは希土類元素の組成が判明している場合が多く、その場合には得られた混合希土類酸化物の希土類元素の組成もそれとほぼ同じであると推定することができる。
【0029】
この混合希土類酸化物を、溶融フッ化物浴中で電解して、混合希土類金属を回収する。電解に供する混合希土類酸化物は、上記のような処理を経て他の金属の大部分を除去したものであることが好ましい。例えば、焼結磁石のスクラップを粉砕して焼成しただけで得られるような、Feなどの他の金属を含有する酸化物中には、焼結に用いた有機物に由来するCが多量に残存しており、回収した混合希土類金属中にCが残る可能性があるので、好ましくない。
【0030】
また、Feなどを含有する混合希土類酸化物では、その酸化物の状態が不均一になり易いため、電解反応が不安定になり、安定した組成の混合希土類金属を得にくくなることがある。従って、安定した品質の混合希土類金属を回収するには、混合希土類酸化物中のFe、Ni、Co等の他の金属の含有量はそれぞれ0.1 質量%以下であることが好ましい。
【0031】
本発明によれば、電解に供する混合希土類酸化物には非軽希土類(即ち、中〜重希土類)の酸化物も混在しており、この酸化物中の全希土類元素含有量に対する軽希土類元素 (La、Ce、Nd、Pr) の合計量の割合が92〜98質量%の範囲内となるように、希土類組成を調整しておく。軽希土類元素の割合が92質量%を下回ると、溶融フッ化物浴との比重差が大きくなって、電解反応が安定しない上、電解温度の上昇から不純物の混入量も多くなる。
【0032】
従って、スクラップの希土類組成から判断して、混合希土類酸化物中の軽希土類元素の割合が92質量%に達しないと考えられる場合には、別に用意した軽希土類元素だけを含有する1種または2種以上の希土類酸化物、あるいは軽希土類含有量が非常に高い (例、95〜99質量%) の混合希土類酸化物を添加して、混合希土類酸化物中の軽希土類元素の割合を92質量%以上に高める。必要に応じて、適当な分析法により軽希土類元素の割合を調査することができる。
【0033】
電解に供する混合希土類酸化物中の軽希土類元素の割合が高いほど電解の安定性が高いので、軽希土類元素の割合は98質量%を超えてもよい。しかし、希土類酸化物をスクラップから作製する場合には、軽希土類元素の割合を98質量%より高くしようとすると、高価な軽希土類元素のみからなる酸化物を多量に添加することが一般に必要となり、スクラップの処理効率が低下する上、コストも悪化する。
【0034】
スクラップから希土類元素混合金属の酸化物を作製する方法は限定しない。例えば、硫酸や塩酸等の酸処理を施してスクラップ中の金属不純物を分離した後、蓚酸を加えて沈殿させた希土類元素混合物の蓚酸塩を焼成して希土類元素の混合金属の酸化物を得ることができる。
【0035】
上述した別の軽希土類元素の供給源を添加して軽希土類元素の割合を高める代わりに、スクラップの酸処理で得られた希土類元素の酸溶液から、公知の溶媒抽出および/またはイオン交換処理による希土類元素の分離法を利用して、中〜重希土類元素を部分的に除去することにより、軽希土類元素の割合を高めることもできる。
【0036】
溶融フッ化物浴による混合希土類酸化物の電解は、基本的には希土類金属の電解精錬で採用されているのと同様に実施することができる。この電解に使用されるフッ化物浴は、一般にLiFを主成分とする。本発明で使用するフッ化物浴は、前述したように、LiFと希土類フッ化物との2元系の浴であり、Li以外のアルカリ金属やアルカリ土類金属のフッ化物を実質的に含有しない。浴の希土類フッ化物は、好ましくは軽希土類元素を主体とし、より好ましくは電解すべき混合希土類酸化物中の希土類元素と同じ元素のフッ化物からなる。それにより、電解の安定性がさらに改善される。
【0037】
本発明における電解を実施するのに使用することができる電解装置の1例を図1に模式図で示す。
外皮内に耐火断熱材からなる外装と耐電解浴材からなる内装の2層構造の壁面を持つ電解槽中に、所定の温度に加熱された溶融塩電解浴が収容されている。本発明では、電解浴はLiFを主体とする溶融フッ化物浴である。電源 (図示せず) に接続された陽極の炭素電極と陰極のタングステン電極が、それぞれ電解槽上部から昇降自在に吊り下げられている。
【0038】
上部の原料供給装置 (図示せず) から、原料供給口を介して原料の混合希土類酸化物が投入される。原料は好ましくは粉末状である。電解浴中に投入された原料は、融解してフッ化物浴に溶け込み、イオン化した後、陰極で金属に還元され、混合希土類金属が陰極上に析出するが、電解浴温が混合希土類金属の融点より高ければ、析出金属は融解するので、ある程度たまると陰極から液滴となって落下し、電解槽下部に設けた受け箱に捕集される。受け箱に捕集された混合希土類金属は、回収設備 (図示せず) を用いて回収する。回収の頻度は、数十分に一回から一日に一回程度までさまざまである。
【0039】
電解条件のうち浴温は、一般に 750〜1100℃の範囲であるが、上述したように、析出金属が融解するよう回収する混合希土類金属の融点より高くすることが好ましい。この温度は、回収する混合希土類金属の希土類組成によってかなり変動し、例えば、La−Ce主体の場合には低く、Nd主体の場合には高くなる。電圧は7〜15V、電流密度は1500〜2000A/dm の範囲が一般的である。
【0040】
本発明の方法により回収された混合希土類金属は、スクラップと同じ製品の製造工程に原料として使用することが好ましいが、別の製品の製造原料に使用してもよいのはもちろんである。
【0041】
【実施例】
希土類磁石用Nd−Fe−B系合金のスクラップ (希土類元素として、Ndの他に、PrとDyを含有) を40%希硫酸で溶解した後、100 ℃に加熱して濃縮し、析出した希土類硫酸塩を濾取して、溶液状態のFeから分離した。この硫酸塩を希塩酸に溶解した後、シュウ酸を加えて、希土類シュウ酸塩を沈殿させた。このシュウ酸塩の沈殿を大気中1000℃で24時間焼成して、混合希土類酸化物を得た。この混合希土類酸化物中の希土類元素の組成比を、ICP 発光分光分析により求めた。一部の混合希土類酸化物では、別に用意した軽希土類酸化物 (酸化ネオジム) を添加し、混合希土類酸化物中の軽希土類元素の割合を増大させた。表1に、焼成で得られた混合希土類酸化物の希土類組成、軽希土類酸化物の添加の有無と添加後の希土類元素組成を示す。
【0042】
混合希土類酸化物からなる電解原料を、表1に示す浴組成および条件で溶融フッ化物浴により電解した。使用した電解装置は図1に示す構造のものであり、内装耐電解浴材は炭素材、陽極も炭素材、陰極はタングステンであった。電解槽の内寸は、直径500 mm×高さ500 mmであり、陰極の表面積は0.14 dm2、原料供給速度は4 kg/hr であった。
【0043】
各電解原料について、電解を10日間続けて、これを1ロットとした。この10日間の電解中に浴温は、回収金属の生成量が一定となるように次第に上昇させた。また、電流と電圧も浴温の調整のために増大させた。表1には最初と最後の浴温および電流・電圧を示す。
【0044】
1ロットの10日間の電解中に回収した混合希土類金属から分析用試料を1日に1個ずつ採取した。得られた同一ロット内の合計10個の試料について、各希土類元素の含有率をICP 質量分析を用いて定量した。この10個の試料の分析値から、同一ロット内の各希土類元素の平均含有率および標準偏差を求めて、標準偏差が0.30質量%以下の場合を合格とした。
【0045】
また、回収した混合希土類金属中の不純物含有率として、Cの含有率を燃焼赤外線吸収法、Wの含有率をICP 質量分析を用いて求めた。C含有率が0.03質量%以下、およびW含有率が0.025 質量%以下を合格とした。
【0046】
これらの分析結果を表2にまとめて示す。
なお、電解原料の混合希土類酸化物および回収された混合希土類金属は、スクラップを酸処理してFe等の他の金属を除去しても、それら他の金属がいくらか残存している。表1および2に示す希土類元素の組成は、それら金属不純物を除いて、希土類元素合計を100 wt%とした場合の質量比として示す。
【0047】
【表1】
【0048】
【表2】
本発明の範囲内の条件で電解して回収した混合希土類金属の各希土類元素の含有率は、何れの元素も標準偏差が0.30質量%以下で安定したものであり、また炉材および電極から混入した不純物であるCおよびWの濃度もそれぞれ0.03質量%以下および0.025 質量%以下の値を示し、良好であった。
【0049】
これに対し、軽希土類元素NdおよびPrの合計質量比が92質量%未満である比較例1では、NdおよびPrの標準偏差は0.30質量%を超えており、電解の安定性が不合格であった。また、比較例1では浴温がやや高くなったため、電極や電解槽からの不純物の混入が増大し、不純物量についても不合格となった。
【0050】
実施例1と実施例3とを比較すると、電解浴が電解原料と同じ希土類元素の混合物 (Nd、Pr、Dy) を含んでいる実施例3の方が、各希土類元素の含有率の標準偏差の値が小さく、さらに安定した組成の混合金属を回収できることを示している。
【0051】
【発明の効果】
希土類磁石や水素吸蔵電極の製造過程では、数%から数十%にのぼるスクラップが発生しているが、本発明により、それらのスクラップを有効に製造工程にリサイクルすることができる。さらに、現状ではほとんどリサイクルされていない磁石の切削加工による微粉や電池電極からの希土類金属の回収も可能となる。また、磁石合金や水素吸蔵合金を溶製する場合に発生するスラグ等からも、同様の処理で希土類金属を回収することができる。
【0052】
本発明によれば、スクラップ中の希土類組成とほぼ同じか、それより軽希土類元素の割合が増えた混合希土類金属を、変動幅の小さい安定した組成と少ない不純物混入量で回収することができるので、スクラップから回収した混合希土類金属を製造工程にリサイクルしても、製品の品質に悪影響を及ぼすことが避けられる。特に希土類磁石の場合には、希土類組成がわずかに変動しても磁気特性が著しく変化して、製品の性能が劣化することがあるので、組成の安定や不純物混入の抑制は重要である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施に使用できる溶融塩電解装置の構造の1例を示す模式図。
Claims (2)
- 非軽希土類元素が混在した混合希土類元素を含有するスクラップから得た混合希土類酸化物を溶融フッ化物浴中で電解することにより、混合希土類金属を回収する方法であって、
前記溶融フッ化物浴が、フッ化リチウムを主体とし、フッ化リチウムと希土類のフッ化物とからなる浴であり、電解に供する前記酸化物中の軽希土類元素の合計含有量が、その全希土類元素含有量に対して 92 〜 98 質量%の範囲内となるように調整されることを特徴とする、スクラップからの混合希土類金属の回収方法(但し、軽希土類元素とは、La、Ce、PrおよびNdを意味する)。 - フッ化物浴が、電解に供する混合希土類元素の酸化物に存在するのと同じ希土類元素のフッ化物を含有する請求項1記載の方法。
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