JP3699619B2 - 電磁連結装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電磁力の利用により回転力を間欠的に伝達する電磁連結装置に関し、例えば、磁気回路を構成する第1の回転体と、当該第1の回転体の内側に相対回転可能に設けられた励磁コイルと、上記第1の回転体の上記磁気回路の一部を構成するよう当該第1の回転体に相対回転可能に設けられたヨークと、上記第1の回転体と軸方向に対向に配され上記磁気回路の一部を構成すると共に軸方向変位可能に設けられた可動子を有する第2の回転体とを備えた電磁連結装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
以下、従来の電磁連結装置を説明する。
複写機やファクシミリ等の給紙機構においては、紙送りローラを所定の回転位置から所定角度、例えば一回転だけ回転させて1枚の記録紙を装置内部に搬送させているが、この給紙機構における紙送りローラ軸の駆動装置として、電磁石への通電の制御によって、クラッチの接続動作と遮断動作とを行う電磁連結装置が適用されている。
【0003】
図6は、この種の電磁連結装置の一例を示す破断側面図である。
同図において、1は第1の回転体であり、この回転体は、断面コ字状の磁気回路を構成する環状の形態のもので、含浸油が適量含浸された含油焼結合金から成る第1の軸2とお椀状のロータ3とで構成されている。
4は励磁コイルであり、この励磁コイル4は、第1の回転体1の内側、即ち第1の軸2とロータ3との間隙に、第1の回転体1に対して相対回転可能に配置され、巻枠であるボビン12に巻装された環状のコイルである。
5はヨークであり、このヨーク5は、第1の回転体1の開口端側、即ち第1の軸2とロータ3との間隙の開放側(図の左側)に配置されて磁気回路の一部を構成し、第1の軸2に対して摺動自在即ち回転自在及び軸方向移動自在に取り付けられており、含浸油が適量含浸された含油焼結合金から成る。
6は第2の回転体であり、この第2の回転体6は、第1の回転体1と軸方向に対向して配され、ギヤー部7に板バネ8を介して固定されて上記磁気回路の一部を構成すると共に、軸方向変位可能に設けられた可動子9とで構成されている。10は第2の軸であり、この第2の軸10は、含浸油が適量含浸された含油焼結合金から成り、上記のロータ3を第1の軸2と共に挟持し、第1の軸2と第2の軸10とは圧入、或いは、図示されていない突起の食い込み等により一体的にに構成されている。
【0004】
上記のヨーク5には、第1の回転体1に対する回り止め手段を構成する回り止め突起5aがヨーク5の一部に設けられており、図示されていない外部の固定部に接続或いは係合されて、当該ヨーク5及び励磁コイル4が上記第1の軸2と共回りしないように構成されている。
又、上記の可動子9は、ギヤー部7の一端がロータ3の側面に当接した場合、このロータ3の側面と隙間Gを有するように位置決めされている。
又、上記ロータ3の摩擦面となる側壁部には、図示されていない複数の窓を設けて磁気抵抗を大きくしてあり、後述する磁束Φの内、ロータ3の内径側から外径側へと側壁部を通る分を減少させて、可動子9を経由して通る分を増加させている。
又、上記の第1の軸2及び第2の軸10並びにヨーク5は、磁気回路を形成するために、何れも含浸油が適量含浸された含油焼結合金で形成されており、ロータ3及び可動子9は磁性材、例えば鉄板で形成されている。
【0005】
次に、この電磁連結装置の動作について説明する。
図示されていない駆動軸の回転力が、ギヤー部7を介して第2の回転体6に伝えられると、可動子9を含む第2の回転体6が第2の軸10の周りを回転する。続いて、励磁手段としての励磁コイル4に電流を流してコイルを励磁させると、第1の軸2、ロータ3の側壁部、可動子9、ロータ3の筒状部及びヨーク5を通る磁束Φが生じて磁気回路が形成される。
可動子9は、こうして発生した磁力により、板バネ8の弾性力に抗して、ロータ3の側壁部に吸着される。この可動子9とロータ3の側壁部との側面間には、上記の吸着力と、可動子9−ロータ3間の摩擦係数とにより決まる力で、回転力が伝達される。
従って、第2の回転体6に与えられた回転力は、板バネ8、可動子9、ロータ3を介して第1の軸2に伝えられ、この第1の軸2に係合された図示されていない負荷装置の負荷軸が回転駆動されることになる。
他方、励磁コイル4への通電が停止されると、電磁力がなくなり、可動子9は板バネ8の復元力によってロー夕3から引き離されるので、第2の回転体6の回転力は第1の軸2へは伝達されず、図示しない負荷軸へは伝達されなくなる。その後、図示しない負荷装置は例えば機械的な摩擦等により自然に停止する。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記のように、従来の電磁連結装置では、第1の軸2及びヨーク5は、含浸油が適量含浸された含油焼結合金で形成されている。このため、耐久性(耐摺動性)に限界があり、油切れ及び油の劣化による焼き付け等の不都合が発生してロックしたり、負荷つれ回りが大きくなったり、摺動部の摩耗量が多くなったりするという問題があった。
又、含油焼結合金で形成されているヨーク5は、ロータ3との間で磁気的に平衡しようとして、ロータ3側へと引かれてスラスト荷重が掛かり、励磁コイル4がロータ3の側壁部側へ押され、励磁コイル4の巻枠であるボビン12がロータ3の側壁部と擦れてボビン12の端面の摩耗量が多くなり、更には、その摩耗粉により、ボビン12とロータ3との側面間でスティックスリップを起こして、ボビン12が共振すると共に異音を発生するという問題点があった。
又、ヨーク5がロータ3側へ引かれた際にヨーク3が傾くと、第1の軸2との摺動部が異常摩耗するという問題点もあった。
【0007】
又、第1の軸2及び第2の軸10並びにヨーク5は、含油焼結材であるためポーラスがあり、このポーラスの存在によって密度が低くなって磁気抵抗が大きくなるため、静摩擦トルクが出にくくなるという問題点があった。殊に、ヨーク5は、含油率の確保のため含浸油を適量含浸させておく必要上、密度を高くすることができなかった。
又、摺動性をよくするために銅(Cu)を入れる必要があったが、このために磁気特性をよくすることができず、トルクが出しにくいという問題点もあった。その上、静摩擦トルクが出にくくなるために、各部品間のクリアランスを小さくして磁気抵抗を小さくする必要が生じ、このため更に、磁気遮断特性が悪くなるという問題点が生じていた。磁気遮断特性が悪くなると、例えば、紙送りが送り過ぎとなって、紙づまりを引き起こしたりすることになる。
又、第1の回転体1に対するヨーク5の回り止め手段として、突起部を第1の回転体1の外側に出そうとすると、焼結合金であるために軸方向の全長が長くなってしまうという問題点があった。
又、含油焼結にて形成する場合は、その製造工程が複雑でコストが高くなるという問題点もあった。
【0008】
ヨーク5については、含油焼結にて形成されず、周方向に薄板を積層された構成のヨーク(鉄心)が、特公昭52ー26294号や特公昭57ー23815号の公報に開示されている。
しかし、これらの場合、各薄板を均等に整列させた後に、薄板間に樹脂を流し込んで形成しているため、磁気特性が悪くなってしまうという大きな問題点がある。
この磁気特性をよくするため、磁性粉末を含有する樹脂を使用すると、著しく製作コストが高くなるという問題点がある。
【0009】
本発明は、上記のような諸問題の解消を目的とし、耐久性に優れた高性能の電磁連結装置の提供を目的とする。
【0015】
この発明は、樹脂ブッシュの外径側には係合凸部が設けられ、ヨークの内径側には上記係合凸部に係合された係合凹部が設けられたことを特徴とする。
【0016】
又、この発明は、係合凸部は樹脂ブッシュの外径側に設けられたリブであり、係合凹部はヨークの内径側に設けられ上記樹脂ブッシュのリブと係合された切り欠きであることを特徴とする。
【0017】
又、この発明は、励磁コイルと反対側のヨークの切り欠き部分にて樹脂ブッシュのリブを熱変形させてヨークと樹脂ブッシュとを固定し、当該樹脂ブッシュを介して上記ヨークと励磁コイルの巻き枠とを一体化させたことを特徴とする。
【0018】
又、この発明は、第1の回転体の外周部と対向していないヨークの外径部の径が、対向しているヨークの外径部の径より小さく形成されたことを特徴とする。
【0019】
又、この発明は、励磁コイルと反対側のヨークの最外側の薄板の一部を外径径方向に延在させて、第1の回転体に対する回り止めとしたことを特徴とする。
【0022】
又、この発明は、薄板の各々に所定の形状及び配置の穴が設けられ、当該穴の形状及び配置が少なくとも2種類のパターンとされたことを特徴とする。
【0023】
又、この発明は、断面コ字状の第1の回転体の外周部と対向していない部分に積層される薄板は非磁性材で形成されたことを特徴とする。
【0024】
又、この発明は、第1の回転体に対する回り止めは、断面コ字状の第1の回転体1の外側へ薄板が折り曲げられて形成されたことを特徴とする。
【0025】
又、この発明は、ヨークの内周側に切り欠きが設けられ、当該切り欠きに潤滑材が充填されたことを特徴とする。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図について説明する。
実施の形態1.
以下、本発明の実施の形態1の電磁連結装置を図1に基づいて説明する。図1は本発明の実施の形態1の電磁連結装置を示す破断側面図である。尚、図6で示した従来の電磁連結装置と同一又は相当部分には同一符号を付し、その説明を省略する。
この実施の形態1の電磁連結装置は、断面コ字状の磁気回路を構成する環状の第1の回転体1と、当該第1の回転体1の内側、即ち断面コ字状に囲まれた空間51に、第1の回転体1に対して相対回転可能に設けられた環状の励磁コイル4と、上記第1の回転体1の空間51の開口端側(図の左側)に配置され、上記磁気回路の一部を構成するよう当該第1の回転体1に対して相対回転可能に設けられた環状のヨーク50と、上記第1の回転体1と当該軸方向に対向に配され上記磁気回路の一部を構成すると共に軸方向変位可能に設けられた可動子9を有する第2の回転体6とを備えたもので、上記ヨーク50が、環状の薄板を軸方向に積層して構成されたものである。
【0027】
図1に示すように、上記ヨーク50は、第1の軸2に嵌合するよう環状に形成された薄板(鋼板)を、当該第1の軸2の軸方向に適当枚数積層して構成されている。
このように、ヨーク50を薄板を積層した構造とする場合には、積層される各薄板に凹凸を設けて(非図示)、隣り合う薄板を互いに嵌合させて固定すると固定がより安定する。このような凹凸を設ける場合には、例えば、凸側の最後の1枚の薄板のみ穴とすることによって、ヨーク5の端面に凸がない構成とすることができる。勿論、このような凹凸による組み合わせ的な嵌合固定によらず、適宜、接着或いは溶接手段等により固定して構成することもできる。
上記のように、ヨーク50を積層される各薄板に凹凸を設けて互いに嵌合固定とすると、第1の軸2の軸方向に薄板が積層する構成であるため、製造工程を簡略化でき、生産性を向上させることができるため、製造コストを大幅にダウンすることができる。
又、従来のように、磁気抵抗が大きくなるポーラスを有する含油焼結合金を用いず、薄板、例えば鋼板を用いてヨーク50を構成することができるので、ヨーク50の密度を高くすることができ、磁気特性が著しく向上する。従って、トルクアップ及び装置の小型化を実現させることができる。
【0028】
上記実施の形態1において、上記のように構成されたヨーク50と第1の軸2との間に、樹脂にて成形された樹脂ブッシュ11を介在させている。
このように、樹脂ブッシュ11を介在させると、樹脂ブッシュ11の厚さ分のクリアランスが生じるため、磁気遮断特性を一段と向上させることができ、従って、クラッチの停止時間を短くすることができる。
又、樹脂ブッシュ11を介在させることにより、従来の含油焼結同士(同材同士)の摺動に比べ、含油焼結合金の第1の軸2と樹脂との摺動(異種材同士の摺動)となるため、摺動性を向上させることができる。これは、従来の同材同士では、含浸油の量・質のばらつきによって油膜の寿命にばらつきが生じ、これにより摺動寿命が左右されていたが、この実施の形態1では、樹脂の摩耗により左右されるだけで済むからである。
【0029】
又、上記実施の形態1において、励磁コイル4と反対側の1番外側に位置するヨーク50の薄板、即ち最外側の薄板の部分、即ち一部を外径方向に延在させて、外部の適当な部材と接続或いは係合する回りとめ手段(第1の軸2に対する回り止め)としての回り止め50aを形成している。
このように、回り止め手段としての回り止め50aを設けるに当り、積層される薄板の一枚の一部を外径方向へ延在させて形成してある。これは、従来の焼結合金の場合では強度を確保するために、軸方向へ或る程度の厚さ(長さ)が必要であったのに比べ、薄板の場合では大幅に薄くすることができ、その分、軸方向の長さを短くすることができる。
【0030】
又、上記実施の形態1において、断面コ字状の第1の回転体1の外周部52と対向していないヨーク50の外径部50bの径を、対向している外径部の径より小さく構成するとよい(非図示)。又、ヨーク50において、断面コ字状の第1の回転体1の外周部52と対向していない薄板を異種材、例えば非磁性材であるSUSとしてもよい(非図示)。
上記のように、ヨーク50の外径部50bの径を小さくしたり、当該外径部50bの薄板を、他の薄板と異なる非磁性材で形成することにより、対向していない外径部50bの部分へ磁束が飛びにくくなり、ヨーク50が励磁コイル4側へと引かれる力を小さくすることができ、従来のような不都合が解消される。
【0031】
即ち、従来は、ロータ3からの磁束が第1の回転体1の外周部52と対向していない部分へ飛ぶため、ヨーク5とロータ3と間での磁気的平衡維持の作用により、ヨーク5が励磁コイル4側へと無理に引かれて、コイル4がロータ3の側壁側へ押され、コイル4の巻枠であるボビン12がロータ3の側壁と擦れて、ボビン12の端面の摩耗量が多くなったり、更には、その摩耗粉により、ボビン12とロータ3の側壁間でスティックスリップを起こして、ボビン12が共振すると共に異音を発生するといった異音・摩耗の発生等の不都合が生じていたのであるが、この不都合を解消することができる。
【0032】
又、上記実施の形態1において、ヨーク50として積層される薄板の各々に所定形状・配置の穴を設ける構造として、上記穴の形状・配置は少なくとも2種類のパターンを有したものを積層する構成とするとよい(非図示)。
このように、積層される薄板の各々に所定形状・配置の穴を設ける構造とし、上記穴の形状・配置を、少なくとも2種類のパターンで形成した薄板を積層した構成とすることにより、従来の焼結合金や他の冷鍛材で形成した場合では、貫通穴や目くら穴を設けてヨーク5の軽量化を図っていたが、このような穴の形成は磁気的には極めて不利となる。しかし、形状や位置をずらせて穴を形成すると、磁気的損失を最小限にできると共に装置の軽量化を図ることができる。
尚、このように、各薄板に形状・配置が異なる穴を容易に設けることができるのも、ヨーク50が薄板の積層構造であるが故である。
【0033】
又、上記実施の形態1において、樹脂ブッシュ11を配設するに当たり、ヨーク50の内周面(内径側)にインサート成形等により当該樹脂ブッシュ11を固定する構成としてもよい。又、詳しくは後述するが、実施の形態5のように周方向に固定することもできる。
上記のように樹脂ブッシュ11をヨーク50に固定することにより、表面が粗い積層された薄板の内径側の摺動面での摺動を避けることができ、樹脂ブッシュ11の寿命を一段と向上させることができる。従って、製作コストが低く、磁気遮断特性に優れ、耐久性の高い、小型・軽量化にして性能に優れた電磁連結装置を提供することができる。
【0034】
尚、上記実施の形態1において、積層される薄板に既存のメッキ鋼板を使用することにより、錆びにくくすることができる。又、積層される薄板に電磁鋼板を使用することにより、一般の鋼板に比べて更に磁気特性を向上させることができ、トルクアップ及び装置の小型化を図ることができる。
【0035】
実施の形態2.
次に、本発明の実施の形態2の電磁連結装置を図2に基づいて説明する。図2は電磁連結装置の破断側面図である。
この実施の形態2は、上記実施の形態1と同様に、軸方向に薄板が積層されてヨーク50が構成されたものであり、実施の形態1の基本構成と異なる点は、当該ヨーク50と第1の軸2との摺動部に表面処理を施したことにある。ここに摺動部とは、第1の軸2とヨーク50とが摺動し合う面をいい、第1の軸2の周面やヨーク50の内周面をいう。
上記の表面処理は、耐摩耗性や摺動性を向上させる処理であり、この表面処理は適宜常套手段にて施す。この場合の表面処理は、第1の軸2の周面とヨーク50の内周面の双方、或いは何れか一方のみに施してもよい。
【0036】
上記実施の形態2によれば、ヨーク50と第1の軸2との間の摩擦係数を小さくすることができて、摺動性が向上すると共に、摩擦係数が小さくなるために、ヨーク50と第1の軸2との間の摺動がスムースになって安定し、ロストルクを低減することができる。
又、ヨーク50については、その摺動部についてのみ表面処理するのは手間がかかるので、ヨーク50をいわゆるどぶ付けする等により、ヨーク50の全表面にわたる表面処理を施してもよい、この場合、ヨーク50の防錆の効果も発揮される利点が有る。
【0037】
又、従来のように、ヨーク50が焼結部品である場合の表面処理に比べ、この実施の形態2のヨーク50は、焼結部品ではないので、前処理、即ちポーラスの目をつぶすためのサンドブラスト処理等が不要となる。従って、製作コストが削減される。
このように、実施の形態2によれば、対摩耗・対異音に有効で且つ所定の性能が長期間維持できると共に、摺動性が良好であるために耐久性が向上し、製作コストの低い高性能の電磁連結装置を提供することができる。
【0038】
実施の形態3.
次に、本発明の実施の形態3の電磁連結装置を図3に基づいて説明する。図3は電磁連結装置の破断側面図である。
この実施の形態3は、上記実施の形態1と同様に、軸方向に薄板が積層されてヨーク50が構成されたものであり、実施の形態1の基本構成と異なる点は、ヨーク50の第1の軸2に対する回り止め50cを、第1の回転体1の外側へ折り曲げて形成したことにある。
図3の50cが第1の回転体1の外側へ折り曲げられた形状を示すヨーク50の回り止めである。図示の回り止め50cは、ヨーク50の最外側の薄板を一旦僅かに第1の軸2の軸方向に折り曲げた上、更に、ヨーク50の外径方向へ延在するよう折り曲げられて形成されている。
【0039】
上記実施の形態3によれば、従来のように、回り止めを第1の軸2の軸方向へその全長を長く延ばして配置する必要がなく、僅かに折り曲げるだけで回り止め50cの位置を所望の位置に設定することができる。
従って又、回り止め50cの位置を、第1の軸2の軸方向の全長に亘って変えることなく、容易に移動させることができると共に、異音及び摩耗による不都合を解消でき、軽量化された電磁連結装置を提供することができる。
又、ヨーク50のロータ3の外周壁52と対向していない外径部分50bを減らし、小さく形成すことができるので、磁気的な平衡によって、励磁コイル4側に引かれることもなく、スラスト荷重を低減させることができる。これによっても、従来に比べて、一層異音及び摩耗による不都合することができ、更に、重量を大幅に低減することができる。
【0040】
実施の形態4.
次に、本発明の実施の形態4の電磁連結装置を図4に基づいて説明する。図4は電磁連結装置の破断側面図である。
この実施の形態4は、上記実施の形態1と同様に、軸方向に薄板が積層されてヨーク50が構成されたものであり、実施の形態1の基本構成と異なる点は、当該ヨーク50と励磁コイル4の巻枠であるボビン12とを一体化としたことにある。
この実施の形態4では、図4に示すように、上記実施の形態1において配設されて樹脂ブッシュ11(図1、図3)に代えて、樹脂製の巻枠であるボビン12のヨーク5側の一部を、第1の軸2とヨーク50との間に延在させた延在部110を以って、上記樹脂ブッシュ11と同様に筒状に形成してある。
この樹脂ブッシュ11の機能を果たす延在部110従って実質的には樹脂ブッシュ11と同様の延在部110は、上記実施の形態1において説明したヨーク50と樹脂ブッシュ11との固定手段をそのまま適用できる。
これにより、ヨーク50と巻枠(ボビン12)とを樹脂ブッシュ11の代替である延在部110を介して一体化した構成とする。
【0041】
この一体化の手段の一例を図5において説明する。
図に示すように、ヨーク50を構成する薄板の内径側に、第1の軸2の軸方向に亘って、少なくとも一つの適当な切り欠き5cを適宜設ける。この場合、更に、その切り欠き5cのサイズを、最外側の薄板1枚から数枚分に亘ってやや大きく切り欠き、図の5dの破線に示すように大きく形成しておくとよい。
そして、励磁コイル4の巻枠であるボビン12から延在形成された延在部110の表面に突出させて第1の軸2の軸方向に形成された回り止め用リブ(非図示)の端部、例えばヨーク50の最外側の薄板側のリブ部分を熱変形させる等により、ヨーク50を延在部110と一体化、従って、上記の延在部110を介してヨーク50と巻枠(ボビン12)とを一体化させている。
【0042】
尚、一体化の手段は、実施の形態1のように、単体として形成された樹脂ブッシュ11を、接着や溶着手段等その他適当な常套手段を用いて、巻枠(ボビン12)と一体化してもよい。
【0043】
上記実施の形態4によれば、励磁コイル4の巻枠であるボビン12とヨーク50とが一体化され、単体(単品)としての取り扱いができるだけでなく、実施の形態1に示すような単品としての樹脂ブッシュ11が不要となるので、構成部品点数の削減になると共に、組付け工程をも省くことができ、製作を容易にし製作コストの低い電磁連結装置を提供することができる。
【0044】
実施の形態5.
実施の形態5は、上記実施の形態1乃至4において、図5に示すように、ヨーク5の内径側(内周面)に、第1の軸2の軸方向に延在する切り欠き5cを適宜設けた構成としたものである。
従来の焼結合金により成形されたヨーク5では、比較的小さな切り欠き5cを設けようとしても、材質の脆さのため切り欠き形状を維持することができず、やむ終えず大きな切り欠きとぜざるを得ないが、大きく切り欠きを形成すると強度低下を招くという不都合があった。
しかし、本発明では、薄板を積層してヨーク50が構成されているため、小さな切り欠きをプレス加工等により容易に形成することができる。
【0045】
こうして、ヨーク50に切り欠き5cを形成しておくと、上記実施の形態1乃至4に示す形態のなかで、樹脂ブッシュ11若しくはこれに相応する延在部110を備えた構成とした電磁連結装置においては、当該樹脂ブッシュ11若しくはこれに相応する延在部110の周方向への回り止めの機能を果たさせることができる。
又、同様に、ヨーク50の内径側に延在部110が位置する巻枠(ボビン12)を備えた電磁連結装置においては、巻枠(ボビン12)の周方向への回り止めの機能を果たさせることができる。
【0046】
更に又、上記実施の形態1乃至4において、ヨーク50の内径側が、直接、第1の軸2に接する構成の電磁連結装置においては、当該切り欠き5cにグリース等の潤滑材を詰めておくことで、切り欠き5cを潤滑材溜りとして機能させることができ、樹脂ブッシュ11やこれに相応する延在部110等を用いずとも、ヨーク50と第1の軸2との摩擦を大幅に低減させることができ、長期に亘って円滑な回転や摺動性を維持させることができる。
【0047】
【発明の効果】
発明によれば、何れも、製作コストが低く、耐久性に優れた高性能の電磁連結装置の提供することができる。
【0051】
の発明によれば、ヨークに樹脂ブッシュが一体化され、樹脂ブッシュと第1の軸との摺動となるため、従来の含油焼結合金同士の摺動又は樹脂ブッシュとヨークとの摺動に比べて、摺動性が向上し、樹脂ブッシュの寿命を長く保つことができ、耐久性に優れた電磁連結装置を提供することができる。
【0052】
、この発明によれば、容易且つより確実に樹脂ブッシュをヨークに固定することができる。
【0053】
、この発明によれば、容易且つより確実に樹脂ブッシュをヨークに固定することができると共に、更に、ヨークと樹脂ブッシュと励磁コイルの巻枠とが一体化され、単品としての取り扱いができるので、組付けが容易となり、製作コストが低減される。
【0054】
、この発明によれば、ヨークが励磁コイル側へ引かれる力が小さくなるためスラスト荷重が減少し、これにより、励磁コイルがロータの側壁側へ押されることによって、励磁コイルの巻枠(ボビン)がロータの側壁部と擦れて巻枠(ボビン)端面の摩耗量が多くなったり、その摩耗粉により巻枠(ボビン)とロータの側壁間でスティックスリップを起こして巻枠(ボビン)が共振したり、異音を発生したりするという不都合を解消できる。
【0055】
、この発明によれば、第1の軸に対するヨークの回り止めを軸方向に亘って短く形成できるため、ヨークを軸方向に薄く形成でき、ヨークの構成材料が低減でき、製作コストを低減できる。
【0058】
、この発明によれば、ヨークの内周及び外周の対向面積を損なうことなく磁気的なロスを最小限にすることができると共に、ヨークの軽量化、ひいては電磁連結装置の小型軽量化を図ることができる。
【0059】
、この発明によれば、ヨークがコイル側へ引かれる力が小さくなるためスラスト荷重が減少し、従来のような異音・摩耗による不都合が解消される。更に、当該部分の外部への露出度が低くなるので、防錆効果も生ずる。
【0060】
、この発明によれば、従来の回り止めでは、軸方向に真っ直ぐな形状しか製作できず、その全長がやむを得ず長くなっていたため、ヨークのロータと対向していない部分のみの外径を小さくすることができなかったが、本発明では、ヨークのロータと対向していない部分の外径部を軸方向に減少(小さく)形成することができ、このように小さく形成することで、ヨークの軽量化と、ヨークがコイル側へ引かれる力を小さくすることができ、スラスト荷重を減少させることができる。これにより、従来のような異音・摩耗を解消することができる。
【0061】
又、この発明によれば、樹脂ブッシュを設けることなく、ヨークと第1の軸との間のロストルクを低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施の形態1に係る電磁連結装置を示す破断側面図である。
【図2】 実施の形態2に係る電磁連結装置を示す破断側面図である。
【図3】 実施の形態3に係る電磁連結装置を示す破断側面図である。
【図4】 実施の形態4に係る電磁連結装置を示す破断側面図である。
【図5】 実施の形態5に係る電磁連結装置のヨークを示す側面図である。
【図6】 従来の電磁連結装置を示す破断側面図である。
【符号の説明】
1 第1の回転体、2 第1の軸(シャフト)、3 ロータ、4 励磁コイル、5 ヨーク、5b 折り曲げられた回り止め、5c 切り欠き、5d 熱変形による固定部の切り欠き、6 第2の回転体、7 ギヤー、8 板バネ、9 可動子(アマチュア)、10 第2の軸(スリーブ)、11 樹脂ブッシュ、12ボビン(巻枠)、50 ヨーク、50a 回り止め、51 空間、52 外周部、110 延在部(樹脂ブッシュ)、Φ 磁束。

Claims (13)

  1. 磁気回路を構成する第1の回転体と、当該第1の回転体の内側に相対回転可能に設けられた励磁コイルと、上記第1の回転体の上記磁気回路の一部を構成するよう当該第1の回転体に相対回転可能に設けられたヨークと、上記第1の回転体と軸方向に対向に配され上記磁気回路の一部を構成すると共に軸方向変位可能に設けられた可動子を有する第2の回転体とを備えた電磁連結装置において、
    上記ヨークは薄板を軸方向に積層して構成され、
    上記ヨークと上記第1の回転体との間に樹脂ブッシュが設けられ、
    上記樹脂ブッシュと上記励磁コイルの巻枠とは一体であり、
    上記樹脂ブッシュが上記ヨークに固定され、
    上記樹脂ブッシュの外径側には係合凸部が設けられ、上記ヨークの内径側には上記係合凸部に係合された係合凹部が設けられたことを特徴とする電磁連結装置。
  2. 断面コ字状の磁気回路を構成する環状の第1の回転体と、当該第1の回転体の内側に相対回転可能に設けられた環状の励磁コイルと、上記第1の回転体の開口端側に配置され、上記磁気回路の一部を構成するよう当該第1の回転体に相対回転可能に設けられた環状のヨークと、上記第1の回転体と軸方向に対向に配され上記磁気回路の一部を構成すると共に軸方向変位可能に設けられた可動子を有する第2の回転体とを備えた電磁連結装置において、
    上記ヨークは環状の薄板を軸方向に積層して構成され、
    上記ヨークと上記第1の回転体との間に樹脂ブッシュが設けられ、
    上記樹脂ブッシュと上記励磁コイルの巻枠とは一体であり、
    上記樹脂ブッシュが上記ヨークに固定され、
    上記樹脂ブッシュの外径側には係合凸部が設けられ、上記ヨークの内径側には上記係合凸部に係合された係合凹部が設けられたことを特徴とする電磁連結装置。
  3. 係合凸部は樹脂ブッシュの外径側に設けられたリブであり、係合凹部はヨークの内径側に設けられ上記樹脂ブッシュのリブと係合された切り欠きであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電磁連結装置。
  4. 励磁コイルと反対側のヨークの切り欠き部分にて樹脂ブッシュのリブを熱変形させてヨークと樹脂ブッシュとを固定し、当該樹脂ブッシュを介して上記ヨークと励磁コイルの巻き枠とを一体化させたことを特徴とする請求項に記載の電磁連結装置。
  5. 断面コ字状の磁気回路を構成する環状の第1の回転体と、当該第1の回転体の内側に相対回転可能に設けられた環状の励磁コイルと、上記第1の回転体の開口端側に配置され、上記磁気回路の一部を構成するよう当該第1の回転体に相対回転可能に設けられた環状のヨークと、上記第1の回転体と軸方向に対向に配され上記磁気回路の一部を構成すると共に軸方向変位可能に設けられた可動子を有する第2の回転体とを備えた電磁連結装置において、
    上記ヨークは環状の薄板を軸方向に積層して構成され、
    上記第1の回転体の外周部と対向していない上記ヨークの外径部の径が、対向している上記ヨークの外径部の径より小さく形成されたことを特徴とする電磁連結装置。
  6. 断面コ字状の磁気回路を構成する環状の第1の回転体と、当該第1の回転体の内側に相対回転可能に設けられた環状の励磁コイルと、上記第1の回転体の開口端側に配置され、上記磁気回路の一部を構成するよう当該第1の回転体に相対回転可能に設けられた環状のヨークと、上記第1の回転体と軸方向に対向に配され上記磁気回路の一部を構成すると共に軸方向変位可能に設けられた可動子を有する第2の回転体とを備えた電磁連結装置において、
    上記ヨークは環状の薄板を軸方向に積層して構成され、
    上記励磁コイルと反対側の上記ヨークの最外側の薄板の一部を外径径方向に延在させて、上記第1の回転体に対する回り止めとしたことを特徴とする電磁連結装置。
  7. 磁気回路を構成する第1の回転体と、当該第1の回転体の内側に相対 回転可能に設けられた励磁コイルと、上記第1の回転体の上記磁気回路の一部を構成するよう当該第1の回転体に相対回転可能に設けられたヨークと、上記第1の回転体と軸方向に対向に配され上記磁気回路の一部を構成すると共に軸方向変位可能に設けられた可動子を有する第2の回転体とを備えた電磁連結装置において、
    上記ヨークは薄板を軸方向に積層して構成され、
    上記薄板の各々に所定の形状及び配置の穴が設けられ、当該穴の形状及び配置が少なくとも2種類のパターンとされたことを特徴とする電磁連結装置。
  8. 断面コ字状の磁気回路を構成する環状の第1の回転体と、当該第1の回転体の内側に相対回転可能に設けられた環状の励磁コイルと、上記第1の回転体の開口端側に配置され、上記磁気回路の一部を構成するよう当該第1の回転体に相対回転可能に設けられた環状のヨークと、上記第1の回転体と軸方向に対向に配され上記磁気回路の一部を構成すると共に軸方向変位可能に設けられた可動子を有する第2の回転体とを備えた電磁連結装置において、
    上記ヨークは環状の薄板を軸方向に積層して構成され、
    上記薄板の各々に所定の形状及び配置の穴が設けられ、当該穴の形状及び配置が少なくとも2種類のパターンとされたことを特徴とする電磁連結装置。
  9. 磁気回路を構成する第1の回転体と、当該第1の回転体の内側に相対回転可能に設けられた励磁コイルと、上記第1の回転体の上記磁気回路の一部を構成するよう当該第1の回転体に相対回転可能に設けられたヨークと、上記第1の回転体と軸方向に対向に配され上記磁気回路の一部を構成すると共に軸方向変位可能に設けられた可動子を有する第2の回転体とを備えた電磁連結装置において、
    上記ヨークは薄板を軸方向に積層して構成され、
    断面コ字状の上記第1の回転体の外周部と対向していない部分に積層される薄板は非磁性材で形成されたことを特徴とする電磁連結装置。
  10. 断面コ字状の磁気回路を構成する環状の第1の回転体と、当該第1の回転体の内側に相対回転可能に設けられた環状の励磁コイルと、上記第1の回転体の開口端側に配置され、上記磁気回路の一部を構成するよう当該第1の回転体に相対回転可能に設けられた環状のヨークと、上記第1の回転体と軸方向に対向に配され上記磁気回路の一部を構成すると共に軸方向変位可能に設けられた可動子を有する第2の回転体とを備えた電磁連結装置において、
    上記ヨークは環状の薄板を軸方向に積層して構成され、
    断面コ字状の上記第1の回転体の外周部と対向していない部分に積層される薄板は非磁性材で形成されたことを特徴とする電磁連結装置。
  11. 第1の回転体に対する回り止めは、断面コ字状の第1の回転体1の外側へ薄板が折り曲げられて形成されたことを特徴とする請求項に記載の電磁連結装置。
  12. 磁気回路を構成する第1の回転体と、当該第1の回転体の内側に相対回転可能に設けられた励磁コイルと、上記第1の回転体の上記磁気回路の一部を構成するよう当該第1の回転体に相対回転可能に設けられたヨークと、上記第1の回転体と軸方向に対向に配され上記磁気回路の一部を構成すると共に軸方向変位可能に設けられた可動子を有する第2の回転体とを備えた電磁連結装置において、
    上記ヨークは薄板を軸方向に積層して構成され、
    上記ヨークの内周側に切り欠きが設けられ、当該切り欠きに潤滑材が充填されたことを特徴とする電磁連結装置。
  13. 断面コ字状の磁気回路を構成する環状の第1の回転体と、当該第1の回転体の内側に相対回転可能に設けられた環状の励磁コイルと、上記第1の回転体の開口端側に配置され、上記磁気回路の一部を構成するよう当該第1の回転体に相対回転可能に設けられた環状のヨークと、上記第1の回転体と軸方向に対向に配され上記磁気回路の一部を構成すると共に軸方向変位可能に設けられた可動子を有する第2の回転体とを備えた電磁連結装置において、
    上記ヨークは環状の薄板を軸方向に積層して構成され、
    上記ヨークの内周側に切り欠きが設けられ、当該切り欠きに潤滑材が充填されたことを特徴とする電磁連結装置。
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