JP3696736B2 - 製釘機および釘の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は製釘機および釘の製造方法、詳しくは破損しやすい部材または柔軟性を有する部材を継ぎ合わせる(仮止めを含む)のに好都合な釘の製釘機およびこの釘の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
釘は、打ち込みにより例えば複数枚の木板同士を継ぎ合わせる金具であり、細長い胴部の元側の端に平たい頭部が鍛造されている。釘の先端部は、その用途に応じて、例えば四角錐,六角錐,円錐などに成形されている。
従来、この釘の頭部の外径は、胴部の外径の3倍以下であった。これを圧造比に直すと2.5倍以下であった。圧造比とは、釘軸部の長さがこの釘軸部の外径の何倍かを表す値である。釘軸部とは、ダイスとパンチを用いて、線材(釘材料)から頭部を鍛造する際、ダイスから外方に突出して、パンチによりパンチングされる線材の先端部分をいう。換言すると、圧造比とは、圧造された結果頭部となる釘軸部にあって、その長さがその外径の何倍となるかを表す値である。
【0003】
ところで、従前より釘を連続的に自動製造する製釘機が知られている。この製釘機は、ダイスおよびパンチの他に、線材の自動送り手段と、線材を切断するカッタとを有している。自動送り手段により線材を釘の長さ分だけピッチ送りし、ダイスおよびパンチで頭部を鍛造した後、線材の先端部をカッタにより釘長さ分だけ切断する。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような従来技術に係る釘では以下の問題点があった。すなわち、例えば屋根瓦などの釘孔の大きさが大きい部材、軽量発泡コンクリートALCなどの壊れやすい部材、または、ゴム板などの柔軟性を有する部材を継ぎ合わせる場合には、大きい頭部の方が、釘による部材表面の押さえつけの面積が拡大されて好ましい。
ところが、頭部の鍛造には圧造比の制限がある。すなわち、釘軸部の長さが長くなり過ぎると、鍛造時に釘軸部が座屈して不良品が生じる。これを避けるには、頭部を薄くしなければならない。ところが薄くすると、ハンマなどで釘打ちする際の頭部の強度が保てない。
そこで、発明者は、鋭意研究の結果、釘の頭部を複数回のパンチングにより分割して鍛造すれば、上述した圧造比の規制を受けることなく、所定の強度を保って頭部を大径化することができることを知見し、この発明を完成させた。
【0005】
【発明の目的】
この発明は、堅固に釘止めすることができない部材でも良好に釘止めすることができる釘を提供することを、その目的としている。
また、この発明は、良好な頭部の強度が得られる釘を提供することを、その目的としている。
さらに、この発明は、大径化した頭部を有する釘を比較的低コストで、かつ比較的容易に製造することができる製釘機および釘の製造方法を提供することを、その目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
線材から得られた胴部および頭部を有し、この頭部は、線材の先端部をダイスによりクランプして所定長さの釘軸部を外方に突出させ、この釘軸部をパンチによりパンチングして成形することで得られる釘において、上記釘軸部の長さがこの釘軸部の外径の何倍かを表す圧造比が2.5倍を超えた釘である。
【0007】
釘の素材は、頭部を鍛造可能な材料であれば限定されない。例えば、請求項4に挙げた軟鉄,ステンレスなどが挙げられる。また、胴部の長さおよび直径も限定されない。
そして、釘の種類としては、例えば、先端が丸いボールポイント,先端部が傾斜カットされたベベルド・スクエアポイント,ボールスティクポイント,ブリードクリンチドポイント,バタフライポイント,チゼルポイント,クリンチポイント,カップドポイント,ダイヤモンドポイント,ダックビルポイント,ドルポイント(28度〜44度),フィッシュマウスポイント,J−クリンチポイント,ロングポイント,ショートポイント,ニードルポイント,ペンシルポイント,パイロットポイント,シャープポイント,シャードスクエアポイント,サイドポイント,ウェッジポイントなどが挙げられる。ただし、これらに限定されない。
釘によって継ぎ合わされる部材は限定されない。例えば、各種の木材,石材,各種のプラスチック材,コンクリート材,金属材,セラミックなどが挙げられる。
【0008】
好ましい圧造比は3.0倍以上、特に好ましくは3.8〜4.6倍である。2.5倍以下では、頭部の径が不充分であるという不都合が生じる。
また、この釘の製造方法は限定されない。
【0009】
線材から得られた胴部および頭部を有して、打ち込みにより複数の部材同士を継ぎ合わせる釘において、上記頭部の外径が、上記胴部の外径の3倍を超えた釘である。3倍以下では、押さえることができる面積が小さいという不都合が生じる。
【0010】
上記頭部の厚さが、上記釘軸部の外径の30%以上である釘である。
30%未満では、厚さが薄く強度が劣るという不都合が生じる。
【0011】
上記線材の材質が、ステンレス,軟鉄,銅および真鍮からなるグループの中から選択された1つである釘である。
【0012】
請求項1に記載した発明は、線材の先端部をクランプして所定長さの釘軸部を外方に突出させ、この釘軸部をパンチングして頭部を鍛造した後、この線材の先端部を釘長さ分で切断する製釘機において、上記釘軸部が複数の部分釘軸部に分割され、この各部分釘軸部を外方に突出して、線材の先端部をクランプするダイスと、上記各部分釘軸部をそれぞれパンチングすることで、上記頭部を複数回に分けて鍛造するパンチと、1回目のパンチング前に、線材を略釘の長さ分だけダイス側に送り込んで、上記部分釘軸部を上記ダイスの外方に突出させる第1の送り手段と、2回目以降のパンチング前に、順次、所定長さだけ線材をダイス側に送り込んで、上記ダイスから2番目以降の部分釘軸部を突出させる第2の送り手段と、上記頭部の鍛造後、線材の先端部を釘の長さに合わせて切断するカッタと、を備えた製釘機である。
【0013】
釘軸部を分割した部分釘軸部の数は限定されない。複数であればよい。
また、各部分釘軸部の長さも限定されない。それぞれが同じ長さであっても、異なる長さであってもよい。要は、各部分釘軸部を足した長さが釘軸部の長さであればよい。
さらに、製釘機の駆動形式は限定されない。例えば、後述するギヤクランク式などを採用することができる。これ以外の駆動形式としては、例えばまず線材を略所定の釘長さに切断後、この切断物を、軸方向をベルト幅方向に揃えてベルトコンベアにより間欠搬送し、しかも搬送途中で、釘軸部を外方に突出させた状態で、ダイスによりこの切断物の先端部付近をクランプし、その後、パンチにより釘軸部のパンチングを行うような製釘機でもよい。
【0014】
この第1の送り手段の構造は限定されない。線材をダイス側に略釘の長さ分だけ送り込んで、部分釘軸部をダイスの端から突出することができればよい。
また、第2の送り手段の構造も限定されない。すなわち、所定長さだけ線材をダイス側に送り込み、そのダイスから、2番目以降の各部分釘軸部をそれぞれ突出することができればよい。
カッタの刃先の形状は、選択された釘の先端部の形状により異なる。
【0015】
請求項2に記載した発明は、線材の先端部を、外方に所定長さの釘軸部を突出させてクランプし、この釘軸部をパンチングして頭部を鍛造した後、この線材の先端部を釘長さ分で切断する製釘機において、上記釘軸部が、第1の部分釘軸部と第2の部分釘軸部とに2分割され、この第1の部分釘軸部または第2の部分釘軸部を外方に突出して、線材の先端部をクランプするダイスと、上記第1の部分釘軸部を1回目にパンチングし、上記第2の部分釘軸部を2回目にパンチングすることで、上記頭部を鍛造するパンチと、1回目のパンチング前に、線材を略釘の長さ分だけダイス側に送り込んで、上記第1の部分釘軸部を上記ダイスの外方に突出させる第1の送り手段と、2回目のパンチング前に、さらに所定長さだけ線材をダイス側に送り込んで、上記ダイスから第2の部分釘軸部を突出させる第2の送り手段と、上記頭部の鍛造後、線材の先端部を釘の長さに合わせて切断するカッタと、を備えた製釘機である。
この第2の部分釘軸部の長さは限定されない。例えば、第1の部分釘軸部と同じでも、これより長くても、短くてもよい。
【0016】
請求項3に記載した発明は、全体の駆動形式が、ギヤクランク式である請求項1または請求項2に記載の製釘機である。
ギヤクランク式の製釘機とは、駆動部により大径なフライホイールおよびクランクアームを回転させることで、送りレバーを介して送り手段を作動させたり、ダイスの線材のクランプ動作,パンチの打撃動作,カッタの切断動作を所定タイミングで行う。この製釘機は、1分間に約600本の釘を製造することができる。
【0017】
請求項4に記載した発明は、線材の先端部を、外方に所定長さの釘軸部を突出させてダイスによりクランプし、この釘軸部をパンチによりパンチングして頭部を鍛造し、その後、この線材の先端部をカッタにより釘長さ分に切断する釘の製造方法において、上記釘軸部が複数の部分釘軸部に分割され、上記頭部は、上記複数の部分釘軸部を各々パンチングして分割鍛造される釘の製造方法である。
頭部を分割鍛造する回数は限定されない。例えば、2回に分けて行ってもよいし、3回以上に分けてもよい。
【0018】
請求項5に記載した発明は、線材の先端部を、外方に所定長さの釘軸部を突出させてダイスによりクランプし、この釘軸部をパンチによりパンチングして頭部を鍛造した後、この線材の先端部をカッタにより釘長さ分だけ切断し、しかも上記釘軸部が、第1の部分釘軸部と第2の部分釘軸部とに2分割された釘の製造方法であって、上記線材を略釘の長さ分だけダイス側に送り込んで、所定長さの上記第1の部分釘軸部をダイスの外方に突出し、この状態でこのダイスにより線材の先端部をクランプする工程と、このクランプ後、上記第1の部分釘軸部にパンチを打ちつけ、1回目のパンチングを行う工程と、1回目のパンチング後、線材を上記ダイス側にさらに送り込んで、上記第2の部分釘軸部をダイスの外方に突出させた後、このダイスにより、再度、線材の先端部をクランプする工程と、続いて、上記第2の部分釘軸部にパンチを打ちつけて、2回目のパンチングを行う工程と、上記頭部の鍛造後、カッタを用いて、上記ダイスから突出した線材の先端部を、釘長さ分の位置で切断する工程とを備えた釘の製造方法である。
【0019】
【作用】
この発明の釘は、例えば圧造比が2.5倍を超えたり、頭部の外径が胴部の外径の3倍を超えるような、大径化された頭部を有する釘である。この釘は、例えば釘を、複数回のパンチングをして分割鍛造される。
このように、頭部を大径化したので、釘止めした時の打撃力は、この表面積が大きな頭部の裏面から、継ぎ合わされる部材の表層の比較的広い範囲にわたって分散されていく。その結果、釘止めされる部材が、仮に堅固な釘止めに適さない部材、例えば屋根瓦などの破損しやすい部材や、ゴム板などの可撓性が大きな部材でも、釘打ち時のカケやワレを防いだり、釘打ち時またはその後の釘穴からの釘の抜けを防げるように、比較的堅固に被釘止物の釘止めをすることができる。
なお、この釘は、頭部が大きいことから、継ぎ合わせ部材の仮止めにも好適な金具である。
【0020】
特に、頭部の厚さが釘軸部の外径の30%以上確保されるので、従来の釘と略同等またはそれ以上の頭部の強度が良好に得られる。
また、製釘機にあっては、装置構成上、従来の製釘機に第2の送り手段を設けただけのものであるので、比較的簡単な装置改造により、既製の製釘機を、この発明の製釘機とすることができる。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施例を図面を参照して説明する。なお、ここではギヤクランク式の製釘機により製造されて、屋根瓦を屋根に止める釘を例にとる。
図1は、この発明の一実施例に係る釘の拡大正面図である。
図1において、10はこの発明の一実施例に係るステンレス製の釘であり、この釘10は、胴部11の一端に頭部12が鍛造されたものである。なお、胴部11の寸法は、直径d=2.8mm,長さL=50mmである。また、頭部12の寸法は、外径a=9.9mm,厚さt=0.9mmである。
この一実施例の釘10の特長は、頭部12の圧造比が4.0倍になった点である。これを、製造された釘10の寸法で言いかえると、頭部12の外径aが胴部11の外径dの3.5倍である。この際、頭部12の厚さtは、後述する釘軸部22a(図8参照)の外径の32%にあたる。
なお、従来釘との比較のために、図1中に、二点鎖線を用いて既存の釘100を示す。釘10と異なる点は、胴部110の一端に鍛造された頭部120の外径bである。この外径bは、釘10の外径aより2.1mmだけ短い。なお、頭部120の厚さは同寸となっている。
【0022】
このように、一実施例の釘10は、従来の釘100と比べた場合、その頭部12が大径化されている。これにより、図外の屋根に葺かれる屋根瓦の釘止め時に、その打撃力が、この大きな頭部12の裏面側から、その瓦の表面の比較的広い範囲に分散されていく。この結果、比較的ワレやカケが発生しやすい屋根瓦であっても、このような傷を受けることなく、比較的堅固に屋根瓦を釘止めすることができる。
また、前述したように、この一実施例の釘10は、頭部12の厚さtが、釘軸部22aの外径の32%のものである。これにより、釘打ち時、従来の釘100と略同等の頭部強度が確保される。
【0023】
次に、図2〜図9に基づいて、一実施例の釘を製造する際に用いられる製釘機およびそれを使用した製造方法を説明する。なお、説明の都合上、機長方向をX方向、機幅方向をY方向、上下方向をZ方向として説明する。
図2は、この発明の一実施例に係る製釘機の平面図である。図3は、この発明の一実施例に係る製釘機の正面図である。図4は、この発明の一実施例に係る製釘機の線材送り機構を示す拡大斜視図である。図5は、この発明の一実施例に係る第1の送り手段の拡大斜視図である。図6は、この発明の一実施例に係る第2の送り手段の拡大斜視図である。図7は、この発明の一実施例に係る第2の送り手段の分解斜視図である。図8(a)〜(f)は、この発明の一実施例に係る釘の頭部の鍛造工程を示す説明図である。
【0024】
図2および図3において、20はこの発明の一実施例に係る製釘機であり、この製釘機20は、上記釘10を、2回のパンチングにより分割鍛造する装置である。
製釘機20の具体的な構成を説明する。この製釘機20は、装置ベースとなる架台21と、X方向へピッチ送りされる釘材料である線材22をY方向の両側からクランプする一対のダイス23と、両ダイス23を通り越して外方に突出した釘軸部22a(線材22の先端部)を打撃するパンチ24と、X方向に往復移動して、この線材22を釘10の略長さ分だけピッチ送りする第1の送り手段25と、1回目のパンチング後、X方向に短く往復移動して、線材22を若干長さだけダイス23側に送り込む第2の送り手段26と、Y方向の両側から近接してきて、製造後の釘10を、線材22の先端部から切断する一対のカッタ27とを備えている。以下、各構成部品を詳細に説明する。
【0025】
架台21は台形の台であり、その上部に矩形のテーブル28が水平に固着されている。このテーブル28のX方向の一端中央部には、線材22の送り元側に向かって水平に延びる小テーブル28aが一体的に設けられている。
テーブル28の小テーブル28a側の端部には、線材22をダイス23側に円滑に送り込むガイドボクッス29が設けられている。このガイドボックス29よりテーブル中央側にはダイス23が設けられている。さらに、このダイス23よりテーブル中央側には、カッタ27が設けられている。また、パンチ24は、テーブル28の略中央部上に配置されている。
【0026】
小テーブル28a上には、線材22の供給ラインに沿って、下流側の第1の送り手段25と、上流側の第2の送り手段26とが並んでいる。この第2の送り手段26より上流側には、線材22の水平方向の曲がりを矯正する5個一組の矯正ローラ30が、千鳥足状に水平配列されている。また、小テーブル28aの上流側の端の中央部には、Z方向に延びる垂直プレート28bが一体的に形成されている。この垂直プレート28bには、線材22の垂直方向の曲がりを矯正する5個一組の矯正ローラ31が千鳥足状に垂直配列されている。線材22は、これらの矯正ローラ30,31間を通過することで真っ直ぐに矯正され、ダイス23側に送り込まれる。
【0027】
テーブル28のX方向の他端部上には、このテーブル28をY方向に横切るように、図外の駆動部(例えば電動モータ)により回転する長尺な駆動軸32が軸支されている。駆動軸32の一端部には、大径なフライホイール33が固着されている。また、駆動軸32の他端部には、クランクディスク34が固着されている。
クランクディスク34の外周部には、クランクピン35を介して、X方向に延びる長尺な送りロッド36の一端部が軸支されている。この送りロッド36の他端部は、上記第1の送り手段25を操作する、Y方向に延びた送りレバー37の一端部に軸支されている。
【0028】
送りレバー37は、その中央部付近が、小テーブル28aの元部から一側方に延びた突片部28cの先端部に、揺動軸38を介して軸支されている。この軸支により、送りレバー37は、水平面内で揺動可能になっている。
図外の駆動部により駆動軸32が回転すると、クランクディスク34,クランクピン35,送りロッド36,送りレバー37を介して、第1の送り手段25がX方向に往復移動し、線材22をダイス23側に向かって、略釘の長さ分だけピッチ送りする。
【0029】
次に、図4および図5を参照して、第1の送り手段25を詳細に説明する。
図5に示すように、第1の送り手段25は、主に、あり部を有するX方向に延びる一対のガイドレール39と、このあり溝に対応したあり形状を有し、両ガイドレール39に沿ってX方向に往復摺動するスライダ40と、このスライダ40上に搭載されて、線材22をクランプおよびクランプ解除しながら、線材22をダイス23側に送り込む送り部41とを備えている。
【0030】
この送り部41は、主に、上下側摺動ガイド板42,43と、両ガイド板42,43間にサンドイッチ状にボルト締結された厚肉な中間板44と、横長なコの字形をして、両側から線材22をクランプする一対のクランプローラ45と、両クランプローラ45を近接させたり離反させたりして、線材22のクランプおよびクランプ解除操作を行う摺動操作板46と、この摺動操作板46の操作源であるエアシリンダ49とを有している。
上下側摺動ガイド板42,43は、互いの内面側を向き合わせて配置される門形の板材である。なお、組み立て時、両ガイド板42,43と、中間板44との間には、後述する上下板46a,46bが摺動する上下の摺動溝が形成される。また、これらの部材42,43,44は、一対のボルト80により締結されている(図7参照)。
【0031】
ところで、図4に示すように、下側摺動ガイド板43の下部内には、上記送りレバー37の先端部37aが回動可能に挿入される平面視して円形の空洞部43aが形成されている。下側摺動ガイド板43の一側面には、この空洞部43aと連通した先端部37aの差し込み口が形成されている。
また、空洞部43aのX方向の両端部内には、一対の三日月片43bが収納されている。これらの三日月片43bと、この先端部37aとが組み合わさって、平面視して空洞部43aと略同径の回動部25aが構成される。送りレバー37の揺動に伴い送り部41がX方向に往復移動する際、この回動部25aは、両三日月片43bの円弧面と空洞部43aの内周面とを摺動面として、この往復動を円滑化させる。
【0032】
図5に示すように、上記摺動操作板46は、互いに平行で長尺な上下板46a,46bと、両者の元部を連結する短尺な側板46cとを有する。上下板46a,46bは、それぞれ対応する上下の摺動溝に、X方向に摺動可能に遊挿されている。
また、上下板46a,46bの先端部には、その両側縁から中央部付近にかけて、各々ダイス23側に若干傾斜したローラ軸ガイド溝46dが切欠形成されている。両ローラ軸ガイド溝46dは、クランプローラ45のローラ軸の摺動ガイドである。さらに、側板46cには、線材22の挿通孔46eが形成されている。
【0033】
そして、この挿通孔46eには、線材22の挿通孔を有するばね押さえ筒46fが嵌着されている。このばね押さえ筒46fの内面と、中間板44の元側の面(ダイス23側とは反対側の面)との間に、摺動操作板46をこのダイス23側とは反対側の方向に、常時、付勢するスプリング46gが介在されている。なお、線材22は、このばね押さえ筒46f内の挿通孔、スプリング46gの内部空間、および、中間板44のX方向の両面を貫通した挿通孔を介して、この第1の送り手段25内において、X方向に延びている。
【0034】
上板46aの中央部上には、先端部のダイス23側とは反対側の面にゴム片47aが固着されたストライカ47が立設されている。上側摺動ガイド板42の中央部には、X方向に延びた長穴42aが形成されており、ストライカ47は、この長穴42aを通して上方に突出している。また、上側摺動ガイド板42のダイス23側とは反対側の端の中間部には、取り付け片48を介してエアシリンダ49が取り付けられている。そのロッド49aの突出により、ロッド先端がゴム片47aを押して、長穴42aの長さ範囲で、摺動操作板46をダイス23側に移動させる。また、このロッド49aを引き込ませると、ゴム片47aからロッド先端が離れ、摺動操作板46が、スプリング46gのばね力によって元の位置まで引き戻される。
【0035】
中間板44のダイス23側の端部には、平面視して略コの字形をした大きな切欠部44aが形成されている。切欠部44aのY方向の両側には、この切欠部44aの内部空間に、ダイス23側に向かって徐々に溝幅が広がったテーパ溝を形成するための一対の溝ブロック50が配設されている。すなわち、このテーパ溝内には、両クランプローラ45がY方向に一列に並んだ状態で収納されている。これにより、中間板44の挿通孔から外方に突出した線材22は、これらのクランプローラ45間でクランプされることになる。
なお、両クランプローラ45による線材22のクランプは、エアシリンダ49のロッド49aがストライカ47をダイス23側に押すことで解除される。すなわち、摺動操作板46がダイス23側に若干長さだけ押し出されると、これにともない、テーパ溝内で線材22をクランプしていた両クランプローラ45が、両溝ブロック50の各テーパ面に沿って同方向に押し出される。
【0036】
この際、テーパ溝は前述したように外広がりの間口の広い溝である。しかも、上板46aのローラ軸ガイド溝46dは、この上板46aの両側縁から中央部付近にかけて、若干ダイス23側に傾斜した長穴状の溝である。したがって、このように両ローラ45がダイス23側に押し出されることで、各ローラ軸はそれぞれのローラ軸ガイド溝46d内でガタつき程度のものだがY方向への移動が自由となる。この結果、線材22のクランプ状態が解除されるのである。
【0037】
次に、図4,図6および図7を参照して、上記第2の送り手段26を詳細に説明する。
図4,図6,図7に示すように、第2の送り手段26の基本構成は第1の送り手段25と略同じである。そのため、ここでは第1の送り手段25と異なる点だけの説明とする。
すなわち、第2の送り手段26は、X方向に長い一対のガイドレール51上に、スライダ52を介して移動基板53を載置している。この移動基板53上には、送り部54が搭載されている。なお、移動基板53のX方向の両端には、Y方向に長い突片53a,53bが垂設されている。
【0038】
この送り部54は、上下側摺動ガイド板42A,43Aと、中間板44と、一対のクランプローラ45と、摺動操作板46と、を有している。また、送り部54の駆動源はエアシリンダ56である。これは、第2の送り手段26のダイス23側とは反対側に、ブラケット55を介して配置されている。ロッド56aの先端は突片53bの中間部に固着されている。すなわち、ロッド56aを出し入れすれば、ガイドレール51に沿って、送り部54がX方向に若干長さだけ往復移動する。この際、往きの送り量と、返りの戻り量とはそれぞれ5.1mmずつとしている。すなわち、第2の送り手段26による線材22のダイス23側へのピッチ送り量は、5.1mmである。
なお、下側摺動ガイド板43A内には、第1の送り手段25の場合のような回動部25aはない。また、移動基板53の上面には、ゴム片47a付きのストライカ47もない。さらに、上側摺動ガイド板42Aには、長穴42aは形成されていない。
【0039】
また、上記ガイドレール51のダイス23側の端部間には、ブラケット57を介して、第2の送り手段26による線材22の送り量を調整する送り量調整部材58が取り付けられている。この送り量調整部材58は、先端がダイス23側とは反対側に向けられたダブルナット式のボルトである。このボルトの先端が、ダイス23側に移動してきた突片53aに当たることで、この送り部54の送りが規制される。その他は、第1の送り手段25と略同じである。
【0040】
次に、この一実施例の製釘機20を用いた釘10の製造方法を説明する。
図2,図3に示すように、この製釘機20は、図外の駆動部により駆動軸32を回転し、送りロッド36,送りレバー37を介して、第1の送り手段25の送り部41をダイス23側に移動すると、この第1の送り手段25にクランプされた線材22がダイス23側に略釘の長さ分だけピッチ送りされた後、カッタで切断される。その結果、線材22の先端部がダイス23の外方に、第1の部分釘軸部22aの長さ分(H1=6.0mm)だけ突出する(図8(a)参照)。
その後、この状態でダイス23により線材22の先端部をクランプし、パンチ24により第1の部分釘軸部22aをパンチングする。これにより、頭部12の1回目の部分鍛造がなされる(図8(b)参照)。
【0041】
次いで、ダイス23による線材22のクランプ状態を解除するとともに、エアシリンダ49によりストライカ47を蹴って、摺動操作板46を少しだけダイス23側に押し出す。これにより、クランプローラ45による線材22のクランプ状態が解除される。
その後、送りレバー37の戻り側への動作に伴い、この送り部41をクランプ解除状態で元の位置まで引き戻す。これと同時に、エアシリンダ56のロッド56aを突出させて、第2の送り手段26の送り部54を若干距離だけダイス23側に移動させる。このとき、送り部54内のクランプローラ45は線材22をクランプしている。その結果、線材22が押し出され、第2の部分釘軸部22bが、ダイス23より外方に第2の部分釘軸部22bの長さ分(H2=5.1mm)だけわずかに突出する(図8(c)参照)。
【0042】
その後、ダイス23によって線材22をクランプし、さらにパンチ24により2回目のパンチングを行う。これにより、頭部12の2回目の部分鍛造が行われる(図8(d)参照)。
それから、ダイス23のクランプを解除し、これと同時にエアシリンダ56のロッド56aを引き込ませて、この送り部54を引き戻す。そして、送りレバー37により、再度、送り部41をダイス23側に移動させる。これにより、線材22が略釘の長さ分だけダイス23側に送り込まれる(図8(e)参照)。その結果、カッタ27の端より外方に、釘10の胴部11の長さ分の線材22が確保される。なお、この送り部41の移動時には、エアシリンダ49のロッド49aは引き込められていて、送り部41内で、線材22はクランプローラ45によってクランプされている。
その後、ダイス23により線材22をクランプし、この状態でカッタ27により、線材22の先端部が切断される。この際、カッタ27の切断面の形状に合わせて、胴部11の先端部が四角錘状に付形される。以上、これらの工程を略1分間に600本ほどの釘10が生産できる速さで、順次、繰り返す。
【0043】
この一実施例の製釘機20は、その基本的な装置構成上、従来の製釘機(図外)に第2の送り手段26を設けただけであって、その他は各構成体の動作のシーケンス制御を一部変更しただけである。これにより、比較的低コストで、かつ比較的簡単な装置改造により、既製の製釘機を、この発明の製釘機とすることができる。
なお、この一実施例の釘10と従来釘との見分け方は、頭部12の周縁を見れば簡単にわかる。それは、頭部12が2回のパンチングにより分割鍛造されているためである。すなわち、この頭部12を側面から注視すると、この部分が2層構造になっている。よって、このことから本発明品であることが容易に知れる。なお、3回以上のパンチングを行って分割鍛造した場合でも、同様に、この部分が3層以上の積層体になっていることを見つけることで、それが何回のパンチングを行い、分割鍛造されたものか、一目でわかる。
【0044】
【発明の効果】
この発明によれば、頭部を大径化したので、継ぎ合わされる部材が壊れやすかったり、可撓性が大きくて堅固に釘止めしにくい部材でも、良好に釘止めすることができる。
特に、頭部の厚さが釘軸部の外径の30%以上であるので、従来の釘と略同等またはそれ以上の頭部の強度が確実に得られる。
【0045】
また、製釘機および釘の製造方法では、頭部を複数回のパンチングにより分割鍛造するようにしたので、この釘を比較的低コストで、かつ比較的容易に製造することができる。しかも、上記製釘機にあっては、比較的簡単な改造作業で、既製の製釘機をこの発明の装置とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の一実施例に係る釘の拡大正面図である。
【図2】 この発明の一実施例に係る製釘機の平面図である。
【図3】 この発明の一実施例に係る製釘機の正面図である。
【図4】 この発明の一実施例に係る製釘機の線材送り機構を示す拡大斜視図である。
【図5】 この発明の一実施例に係る第1の送り手段の拡大斜視図である。
【図6】 この発明の一実施例に係る第2の送り手段の拡大斜視図である。
【図7】 この発明の一実施例に係る第2の送り手段の分解斜視図である。
【図8】 (a)〜(f)は、この発明の一実施例に係る釘の頭部の鍛造工程を示す説明図である。
【符号の説明】
10 釘、
11 胴部、
12 頭部、
20 製釘機、
22 線材、
22a 第1の部分釘軸部(釘軸部)、
22b 第2の部分釘軸部(釘軸部)、
23 ダイス、
24 パンチ、
25 第1の送り手段、
26 第2の送り手段、
27 カッタ。

Claims (5)

  1. 線材の先端部をクランプして所定長さの釘軸部を外方に突出させ、この釘軸部をパンチングして頭部を鍛造した後、この線材の先端部を釘長さ分で切断する製釘機において、
    上記釘軸部が複数の部分釘軸部に分割され、
    この各部分釘軸部を外方に突出して、線材の先端部をクランプするダイスと、
    上記各部分釘軸部をそれぞれパンチングすることで、上記頭部を複数回に分けて鍛造するパンチと、
    1回目のパンチング前に、線材を略釘の長さ分だけダイス側に送り込んで、上記部分釘軸部を上記ダイスの外方に突出させる第1の送り手段と、
    2回目以降のパンチング前に、順次、所定長さだけ線材をダイス側に送り込んで、上記ダイスから2番目以降の部分釘軸部を突出させる第2の送り手段と、
    上記頭部の鍛造後、線材の先端部を釘の長さに合わせて切断するカッタとを備えた製釘機。
  2. 線材の先端部を、外方に所定長さの釘軸部を突出させてクランプし、この釘軸部をパンチングして頭部を鍛造した後、この線材の先端部を釘長さ分で切断する製釘機において、
    上記釘軸部が、第1の部分釘軸部と第2の部分釘軸部とに2分割され、
    この第1の部分釘軸部または第2の部分釘軸部を外方に突出して、線材の先端部をクランプするダイスと、
    上記第1の部分釘軸部を1回目にパンチングし、上記第2の部分釘軸部を2回目にパンチングすることで、上記頭部を鍛造するパンチと、
    1回目のパンチング前に、線材を略釘の長さ分だけダイス側に送り込んで、上記第1の部分釘軸部を上記ダイスの外方に突出させる第1の送り手段と、
    2回目のパンチング前に、さらに所定長さだけ線材をダイス側に送り込んで、上記ダイスから第2の部分釘軸部を突出させる第2の送り手段と、
    上記頭部の鍛造後、線材の先端部を釘の長さに合わせて切断するカッタとを備えた製釘機。
  3. 全体の駆動形式が、ギヤクランク式である請求項1または請求項2に記載の製釘機。
  4. 線材の先端部を、外方に所定長さの釘軸部を突出させてダイスによりクランプし、この釘軸部をパンチによりパンチングして頭部を鍛造し、その後、この線材の先端部をカッタにより釘長さ分に切断する釘の製造方法において、
    上記釘軸部が複数の部分釘軸部に分割され、
    上記頭部は、上記複数の部分釘軸部を各々パンチングして分割鍛造される釘の製造方法。
  5. 線材の先端部を、外方に所定長さの釘軸部を突出させてダイスによりクランプし、この釘軸部をパンチによりパンチングして頭部を鍛造した後、この線材の先端部をカッタにより釘長さ分だけ切断し、しかも上記釘軸部が、第1の部分釘軸部と第2の部分釘軸部とに2分割された釘の製造方法であって、
    上記線材を略釘の長さ分だけダイス側に送り込んで、所定長さの上記第1の部分釘軸部をダイスの外方に突出し、この状態でこのダイスにより線材の先端部をクランプする工程と、
    このクランプ後、上記第1の部分釘軸部にパンチを打ちつけ、1回目のパンチングを行う工程と、
    1回目のパンチング後、線材を上記ダイス側にさらに送り込んで、上記第2の部分釘軸部をダイスの外方に突出させた後、このダイスにより、再度、線材の先端部をクランプする工程と、
    続いて、上記第2の部分釘軸部にパンチを打ちつけて、2回目のパンチングを行う工程と、
    上記頭部の鍛造後、カッタを用いて、上記ダイスから突出した線材の先端部を、釘長さ分の位置で切断する工程とを備えた釘の製造方法。
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