JP3696306B2 - 位相検出器 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、多相の正弦波状の交流信号の周波数変化や位相変化に対して速い応答で追従する位相検出器に関する。
【0002】
【従来の技術】
交流系統で事故が発生すると、事故時の短絡電流、送電線遮断器の開放による事故除去等により、発電機のエネルギー収支が急変し、発電機の回転が乱れたり、また、複数の発電機間のエネルギー授受により交流系統の電力潮流が振動したりして電圧が変動する擾乱が発生する。近年、この擾乱を抑制するために交流系統の位相を検出し、その値を用いて直流送電、静止形無効電力補償装置等のパワーエレクトロニクス機器の位相制御を行なうことにより、交流系統の安定化の向上が図られている。このときに用いられる位相検出器としては、例えば、特開昭55-34851号に記載されている位相検出器がある。
【0003】
このような交流系統の位相検出に用いられる従来の位相検出器のブロック図を図8に示す。
従来の位相検出器は、三相交流系統電圧と後述する波形発生手段の出力信号との位相差を検出する位相差検出回路1と、この位相差検出回路1から位相差信号が入力され、誤差増幅、円滑化等の処理を行なうフィルタ回路2と、このフィルタ回路2の出力に応じた周波数で発振する発振回路3と、発振回路3の出力である検出位相θに対応した余弦波,正弦波を出力する波形発生手段4,5とからなる。
【0004】
この動作について説明する。まず、位相差検出回路1では、三相交流系統電圧と波形発生手段からの出力信号との位相差を演算により求める。この演算により求められた位相差信号はフィルタ回路2に入力され、誤差増幅,円滑化等の処理がなされる。また、このフィルタ回路2には交流系統周波数に応じた出力を保持するために、その内部には少なくとも積分要素が設けられている。
【0005】
発振回路3には、フィルタ回路2の出力が入力されて、この値に応じた周波数で発振し、検出位相θを出力する。この検出位相θは波形発生回路4,5に入力され再び余弦波,正弦波に変換され、位相差検出回路1にて三相交流系統電圧との位相差検出が繰り返される。
【0006】
このようにして、三相交流系統電圧と波形発生回路の出力信号との位相差が繰り返し求められ、その位相差Δθが零になるようにフィルタ回路2の出力及び発振回路3の発振周波数が調整される。そして、三相交流系統電圧と波形発生回路の出力信号との位相差が零になったとき、三相交流系統電圧と波形発生回路の出力信号とが同期したことになり、即ち、三相交流系統電圧の位相検出ができる。
【0007】
次に位相差検出回路の詳細を図9を参照して説明する。
3相2相変換回路10は三相交流系統電圧VR 、VS 、VT を入力として、次式にて二相電圧V1d、V1qに変換する。
【0008】
【数1】
Figure 0003696306
1q=V1 *sinθ1 (=VR
但し、V1 :交流系統電圧振幅
θ1 :交流系統電圧位相
そして、乗算回路11、加算回路12、振幅演算回路13、除算回路14、sin-1の演算回路15によって、(1)式の演算を行ない、交流系統電圧と波形発生回路の出力信号との位相差Δθを求める。ここでVFd、VFqは波形発生回路の出力信号である。
【0009】
【数2】
Figure 0003696306
【0010】
Fd=cosθ
Fq=sinθ
θ:検出位相
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、交流系統での事故は、交流電圧の低下を伴うために、従来の位相検出器では以下のような不具合が生じていた。
従来の位相検出器は、位相差のみに着目し交流電圧の大きさには依存しないような検出方法としている。更に、定常状態の交流系統で発生し得る周波数変動、位相変化に追従可能なように交流系統電圧の数サイクル程度の応答速度を有する。
【0012】
従来のような構成では、交流系統事故期間中は、交流電圧低下・不平衡・歪み等のため、位相差検出回路の位相差の演算式の分子の値が乱れ、更に、電圧の振幅が小さいため位相差の演算式の分母が小さくなるため、実際には僅かな位相差であっても、位相差検出回路の出力が不要に増大するおそれがある。
【0013】
このように、従来の位相検出器では交流系統の事故時に位相検出が大きくずれ、パワーエレクトロニクス機器の位相制御に支障をきたし、所望の制御ができず、交流系統の安定化に寄与できないどころか、安定性を悪化させてしまうおそれがある。
よって、本発明は交流系統の事故時でも位相検出を適切に行なうことのできる位相検出器を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1記載の位相検出器においては、位相検出中に交流系統において事故が発生すると、従来のような算出方法では、交流系統電圧の振幅が小さくなり、このことに起因し位相誤差が増大することを考慮して、交流系統電圧の振幅が小さいときには、検出位相の変化が小さくなるように補正することによって、交流系統事故時でも適切な位相検出を行なうことができる。
【0015】
本発明の請求項2記載の位相検出器においては、位相差検出手段に入力された交流系統電圧の振幅を、交流系統電圧の定常時の振幅で除算することによって、交流系統事故時には位相差誤差を補正することができ、適切な位相検出を行なうことができる。
【0016】
本発明の請求項3記載の位相検出器においては、交流系統電圧の振幅に応じて変化する振幅補正信号を求め、この振幅補正信号を位相差検出手段からの位相差信号に乗算し、新たな位相差信号として制御することによって、交流系統事故時には、位相差誤差を補正することができ、適切な位相検出を行なうことができる。
【0017】
本発明の請求項4記載の位相検出器においては、交流系統電圧の振幅に応じて変化する振幅補正信号を求め、この振幅補正信号に基づいてフィルタ手段のパラメータを変更することによって、交流系統事故時には位相差誤差による検出誤差を補正することができ、適切な位相検出を行なうことができる。
【0018】
本発明の請求項5記載の位相検出器においては、交流系統電圧の振幅に応じて変化する振幅補正信号を求め、この振幅補正信号を波形発生手段からの正弦波に乗算し、新たな正弦波として制御することによって、交流系統事故時には、位相差誤差を補正することができ、適切な位相検出を行なうことができる。
【0019】
本発明の請求項6記載の位相検出器においては、直前の交流系統電圧を記憶しておき、その値を用いて位相差検出手段にて位相差の検出を行なうので交流系統事故時でも適切な位相検出を行なうことができる。
【0020】
【実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
本発明の第1の実施の形態を図1を参照して説明する。
図1は第1の実施の形態の位相差検出回路の詳細図であり、位相検出器の他の構成は従来と同様の構成であるので説明を省略する。
【0021】
第1の実施の形態の位相差検出回路は、三相交流系統電圧VR 、VS 、VT を二相電圧V1d、V1qに変換する3相2相変換回路10と、上記二相電圧の振幅を定常状態の振幅V10で除算し正規化する正規化回路21と、正規化回路21の出力と波形発生回路の出力との乗算を行なう乗算回路22と、乗算回路22の出力の和を求める加算回路23とからなる。
【0022】
ここでは、位相差Δθが小さいときには、sin-1Δθ≒Δθなのでsin-1演算回路を除いた構成とする。
この位相差検出回路での位相差演算は、(2)式のようになる。
【0023】
【数3】
Δθ=VFd*V1q1 −VFq*V1d1 …(2)
但し、V1q1 =V1q/V10
1d1 =V1d/V10
Fd =sosθ
Fq =sinθ
10:交流電圧定格振幅
本実施の形態の定常状態、交流系統事故状態の演算について説明する。
【0024】
まず、定常状態においては、交流電圧が定格であるため、V1 ≒V10であり、(2)式の出力はほぼ従来の(1)式と一致する。
よって定常状態では、本実施の形態の位相差検出回路は、従来の位相差検出回路と同様の作用となる。
【0025】
次に、交流系統事故状態では、交流系統の電圧が低下すると、正規化回路21の出力V1d1 ,V1q1 の大きさが小さくなる。すると、位相差演算を行なう式(2)の値Δθも、交流系統電圧の振幅に比例して小さくなる。
【0026】
位相差信号Δθが小さくなるということは、フィルタ回路2の積分要素の出力変化も小さくなり、発振回路3の発振周波数の変化が小さくなる。特に、交流系統電圧が零になった場合は、発振回路3の周波数は変化せず、事前の周波数を維持する。
【0027】
よって、交流系統事故状態では、位相検出器の検出位相θは事前の位相に対して大きく変化しない。
更に、交流系統事故が除去され、交流電圧が復帰すると、正規化回路21の出力V1d1 ,V1q1 の大きさがもとに戻り、定常状態と同様に位相検出が行なわれる。
【0028】
従って、交流系統事故除去後に位相差があれば、高速に同期をとることができる。
以上のように、第1の実施の形態では、位相差演算に要する演算要素が少なくてすむことに加え、交流系統事故期間中は、事前に対して位相変化が少なく、事故除去後は高速に位相変化に追従できる位相検出器を提供できる。
【0029】
次に、本発明の第2の実施の形態を図2を参照して説明する。
第2の実施の形態では、位相差検出回路の入力が交流系統電圧の1相と1つの波形発生回路の出力となっている。
【0030】
図2は第2の実施の形態の位相検出器のブロック図である。
第2の実施の形態の位相検出器は、交流系統電圧VR と後述する波形発生回路の出力との位相差を検出する位相差検出回路1と、この位相差検出回路1からの位相差信号が入力され、誤差増幅、円滑化等の処理を行なう積分要素を含んだフィルタ回路2と、このフィルタ回路2の出力に応じた周波数で発振する発振回路3と、発振回路3の出力である検出位相θに応じた正弦波を出力する波形発生手段5とからなる。
【0031】
ここでは、フィルタ回路2と発振回路3と波形発生手段5は従来と同様であるので説明を省略し、位相検出回路1について説明する。
位相検出回路をディジタル系にて構成することによって、入力が1相分であっても直前のサンプリングデータを用いて、(3)式の演算を行ない、位相差ΔθR(n)を検出することができる。
【0032】
【数4】
Figure 0003696306
但し、VR1(n) =VR(n)/V10
10:交流電圧定格振幅
θs :サンプリング間隔
このようにして得られた位相差を用いて位相検出を行なうことにより、第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0033】
また、図3のように、三相分の信号を入力し、それぞれ各相毎に(3)式の演算を行ない、この3つの位相差の平均値、最大値又は最小値を位相差として用いても同様の効果を得ることができる。
【0034】
次に本発明の第3の実施の形態について説明する。
図4は第3の実施の形態の位相検出器のブロック図である。
第3の実施の形態の位相検出器は、三相交流系統電圧と後述する波形発生回路の出力との位相差を検出する位相差検出回路1と、三相交流系統電圧に従い所定の信号を出力する振幅演算回路31と、位相差検出回路1の出力と振幅演算回路31の出力とを乗算する乗算回路32と、この乗算回路32の出力が入力され、誤差増幅、円滑化等の処理を行なう積分要素を含んだフィルタ回路2と、このフィルタ回路2の出力に応じた周波数で発振する発振回路3と、発振回路3の出力である検出位相θに応じた余弦波,正弦波を出力する波形発生回路4,5とからなる。
【0035】
ここでは、位相差検出回路1とフィルタ回路2と発振回路3と波形発生回路4,5は従来と同様であるので説明を省略し、振幅演算回路31と乗算回路32の動作を説明する。
【0036】
振幅演算回路31では、まず、入力信号の振幅をピーク値検出法、振幅自乗法、面積法等のアルゴリズムにより検出する。そして、この入力信号の振幅に応じた値を出力する。
【0037】
尚、この値としては、入力信号の振幅に比例した信号でもいいし、入力信号の振幅の自乗に比例した信号でもいいし、また、入力信号の振幅に対応して、単調に増加あるいは減少する信号でもよい。更に、複数の入力信号がある場合には、複数の信号のうち、最小値又は平均値を用いてもよい。
【0038】
乗算回路32は、位相差検出回路1からの位相差と振幅演算回路31からの振幅補正信号との乗算を行ない交流系統電圧の振幅により位相差を補正している。
このように構成された第3の実施の形態の動作について説明する。
【0039】
まず、定常状態においては、交流電圧が定格であるため、振幅演算回路31の出力は‘1’であり、乗算回路32の出力は位相差検出回路1の出力Δθと等しい。
よって、定常状態では、従来の位相検出器と同様の作用となる。
【0040】
次に交流系統事故状態では、交流電圧が低下すると、振幅演算回路31の出力は小さくなるので、乗算回路32の出力も小さくなる。
乗算回路32の出力が小さくなるということは、フィルタ回路2の積分要素の出力変化も小さくなり、発振回路3の発振周波数の変化が小さくなる。特に交流電圧が零になった場合は、発振回路3の周波数は変化せず、事前の周波数を維持する。
【0041】
よって、交流系統事故状態では、位相検出器の検出位相θは事前の位相に対して大きく変化しない。
更に、交流系統事故が除去され、交流電圧が復帰すると、振幅演算回路31の出力がもとに戻り、定常状態と同様に位相検出が行なわれ、交流系統事故除去後に位相差があれば高速に同期をとることができる。
【0042】
次に本発明の第4の実施の形態について説明する。
図5は、第4の実施の形態の位相検出器のブロック図である。
第4の実施の形態の位相検出器は、三相交流系統電圧と後述する波形発生回路の出力との位相差を検出する位相差検出回路1と、三相交流系統電圧に従い所定の信号を出力する振幅演算回路31と、振幅演算回路31の出力に従って後述するフィルタ回路の比例ゲイン、積分ゲインを決定するパラメータ変更回路33と、位相検出回路1の出力を入力とし比例積分を行うフィルタ回路2と、このフィルタ回路2の出力に応じた周波数で発生する発振回路3と、発振回路3の出力である検出位相θに応じた余弦波,正弦波を出力する波形発生回路4,5とからなる。
【0043】
ここでは、位相差検出回路1と発振回路3と波形発生回路4,5と振幅演算回路31は第3の実施の形態と同様であるので説明を省略する。
パラメータ変更回路33は、振幅演算回路31の出力に応じて、フィルタ回路2の比例ゲインKp 、積分ゲインKi を(4)式により演算する。
【0044】
【数5】
p =Kp0×V1 (4)
i =Ki0×V1
但し、Kp0:定格電圧での比例ゲイン
i0:定格電圧での積分ゲイン
1 :振幅演算回路31の出力
フィルタ回路2は、パラメータ変更回路33により求められた比例ゲインKp 、積分ゲインKi を用いて、位相差検出回路1の出力を比例積分する。(5)式はその演算式である。
【0045】
【数6】
(n) =y(n-1) +Ki *Δθ(n) +Kp *(Δθ(n) −Δθ(n-1) )…(6)
但し、y:フィルタ回路2の出力
このように構成された第4の実施の形態の動作について説明する。
【0046】
まず、定常状態においては、交流電圧が定格であるため、振幅演算回路31の出力は‘1’であり、比例ゲインKp 、積分ゲインKi は変化しない。
よって、定常状態では従来と同様演算が行なわれる。
【0047】
次に、交流系統事故状態では、交流電圧が低下すると、振幅演算回路31の出力が小くなるので、パラメータ変更回路33によって求められる比例ゲインKp 、積分ゲインKi は小さくなる。
【0048】
比例ゲインKp 、積分ゲインKi が小さくなるとフィルタ回路2の出力変化が小さくなり、発振回路3の発振周波数の変化が小さくなる。特に、交流電圧が零になった場合には、比例ゲインKp 、積分ゲインKi が零になるため、フィルタ回路2の出力は変化せず、発振回路3は事前の周波数を維持する。
【0049】
よって、交流系統事故状態では、位相検出器の検出位相θは事前の位相に対して大きく変化しない。
更に、交流系統事故が除去され、交流電圧が復帰すると、振幅演算回路31の出力がもとに戻り、定常状態と同様に位相検出が行なわれ、交流系統事故除去後に位相差があれば高速に同期をとることができる。
【0050】
次に本発明の第5の実施の形態について説明する。
図6は、第5の実施の形態の位相検出器のブロック図である。
第5の実施の形態の位相検出器は、三相交流系統電圧と後述する波形発生回路35,36の出力との位相差を求める位相差検出回路1と、この位相差検出回路1の出力が入力され、誤差増幅、円滑化等の処理を行なう積分要素を含んだフィルタ回路2と、このフィルタ回路2の出力に応じた周波数で発振する発振回路3と、この発振回路3の出力である検出位相θに応じた余弦波,正弦波を出力する波形発生回路4,5と、三相交流系統電圧に従い所定の信号を出力する振幅演算回路31と、波形発生回路4,5の出力に振幅演算回路31の出力を乗算する波形補正回路35,36とからなる。
【0051】
以上のように構成し、交流系統電圧の振幅に従い従来位相差検出回路に直接入力されていた波形発生回路4,5の出力を、補正した後入力するようにしている。
【0052】
次に第5の実施の形態の動作について説明する。
まず、定常状態においては、交流電圧が定格であるため、振幅演算回路31の出力は‘1’であり、波形補正回路35,36の出力は波形発生回路4,5の出力と等しい。
【0053】
よって、定常状態では、従来と同様の演算が行なわれる。
次に、交流系統事故状態においては、交流電圧が低下すると、振幅演算回路31の出力が小さくなるので、位相差検出回路1への入力である波形補正回路35,36の出力も小さくなる。
【0054】
波形補正回路の出力が小さくなると、位相差検出回路1での演算結果も小さくなるので、フィルタ回路2の出力変化も小さくなり、発振回路3の発振周波数の変化が小さくなる。特に交流電圧が零になった場合には、位相差検出回路1の出力が零になるため、フィルタ回路2の出力は変化せず、発振回路3は事前の周波数を維持する。
【0055】
よって、交流系統事故状態では、位相検出器の検出位相θは事前の位相に対して大きく変化しない。
更に、交流系統事故が除去され、交流電圧が復帰すると、振幅演算回路31の出力がもとに戻り、定常状態と同様に位相検出が行なわれ、交流系統事故除去後に位相差があれば高速に同期をとることができる。
【0056】
次に第6の実施の形態について説明する。
図7は、第6の実施の形態の位相検出器のブロック図である。
第6の実施の形態の位相検出器は、三相交流系統電圧と後述する波形発生回路の出力との位相差を求める位相差検出回路1と、この位相差検出回路1の出力が入力され、誤差増幅、円滑化等の処理を行なう積分要素を含んだフィルタ回路2と、このフィルタ回路2の出力に応じた周波数で発振する発振回路3と、位相差検出回路1で三相交流系統電圧を3相2相変換した二相電圧V1d、V1qを入力とし、フィルタリングして基本波成分を抽出する基本波抽出回路41,42と、発振回路3の信号に同期して基本波抽出回路41,42の出力を記憶するメモリ回路43,44と、発振回路3の信号に同期してメモリ回路43,44に記憶されていた余弦波,正弦波を出力する波形発生回路45,46とからなる。
【0057】
このように構成することによって、位相差演算を発振回路の出力に同期しているときには、波形発生回路の出力を1サイクル前の余弦波,正弦波とすることができる。
【0058】
次に第6の実施の形態の動作について説明する。
まず、定常状態においては、交流電圧が定格であるため、メモリ回路に記憶された交流電圧の振幅は定格値である。従って、波形発生回路の出力信号の振幅は定格値となり、位相差検出回路の入力は全て定格値となるので、従来と同様の作用となる。
【0059】
次に、交流系統事故状態においては、交流電圧が低下すると、基本波抽出回路への入力が小さくなるためその出力も小さくなり、波形発生回路の出力も小さくなる。
【0060】
波形補正回路の出力が小さくなると、位相差検出回路1での演算結果も小さくなるので、フィルタ回路2の出力変化も小さくなり、発振回路3の発振周波数の変化が小さくなる。特に交流電圧が零になった場合には、位相差検出回路1の出力が零になるため、フィルタ回路2の出力は変化せず、発振回路3は事前の周波数を維持する。
【0061】
よって、交流系統事故状態では、位相検出器の検出位相θは事前の位相に対して大きく変化しない。
更に、交流系統事故が除去され、交流電圧が復帰すると、基本波抽出回路の出力がもとに戻り、定常状態と同様に位相検出が行なわれ、交流系統事故除去後に位相差があれば高速に同期をとることができる。
【0062】
本発明の請求項1記載の位相検出器においては、位相検出中に交流系統において事故が発生すると、従来のような算出方法では、交流系統電圧の振幅が小さくなり、このことに起因し位相誤差が増大することを考慮して、交流系統電圧の振幅が小さいときには、検出位相の変化が小さくなるように補正することによって、交流系統事故時でも適切な位相検出を行なうことができる。
【0063】
本発明の請求項2記載の位相検出器においては、位相差検出手段に入力された交流系統電圧の振幅を、交流系統電圧の定常時の振幅で除算することによって、交流系統事故時には位相差誤差を補正することができ、適切な位相検出を行なうことができる。
【0064】
本発明の請求項3記載の位相検出器においては、交流系統電圧の振幅に応じて変化する振幅補正信号を求め、この振幅補正信号を位相差検出手段からの位相差信号に乗算し、新たな位相差信号として制御することによって、交流系統事故時には、位相差誤差を補正することができ、適切な位相検出を行なうことができる。
【0065】
本発明の請求項4記載の位相検出器においては、交流系統電圧の振幅に応じて変化する振幅補正信号を求め、この振幅補正信号に基づいてフィルタ手段のパラメータを変更することによって、交流系統事故時には位相差誤差による検出誤差を補正することができ、適切な位相検出を行なうことができる。
【0066】
本発明の請求項5記載の位相検出器においては、交流系統電圧の振幅に応じて変化する振幅補正信号を求め、この振幅補正信号を波形発生手段からの正弦波に乗算し、新たな正弦波として制御することによって、交流系統事故時には、位相差誤差を補正することができ、適切な位相検出を行なうことができる。
【0067】
本発明の請求項6記載の位相検出器においては、直前の交流系統電圧を記憶しておき、その値を用いて位相差検出手段にて位相差の検出を行なうので交流系統事故時でも適切な位相検出を行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態の位相差検出回路の詳細図。
【図2】本発明の第2の実施の形態の位相検出器のブロック図。
【図3】本発明の他の実施の形態の位相検出器のブロック図。
【図4】本発明の第3の実施の形態の位相検出器のブロック図。
【図5】本発明の第4の実施の形態の位相検出器のブロック図。
【図6】本発明の第5の実施の形態の位相検出器のブロック図。
【図7】本発明の第7の実施の形態の位相検出器のブロック図。
【図8】従来の位相検出器のブロック図。
【図9】従来の位相差検出回路の詳細図。
【符号の説明】
1…位相差検出回路
2…フィルタ回路
3…発振回路
4,5,6,7,45,46…波形発生回路
21…正規化回路
31…振幅演算回路
32,35,36…乗算回路
33…パラメータ変更回路
43,44…メモリ回路

Claims (6)

  1. 交流系統電圧と後述する波形発生手段の出力との位相差を算出により求める位相差検出手段と、この位相差検出手段からの位相差が入力され少なくとも積分要素を有するフィルタ手段と、このフィルタ手段の出力に応じた周波数で発振し検出位相を出力する発振手段と、この発振手段からの位相を基に90°位相の異なった二相の正弦波を発生させる波形発生手段と、前記交流系統電圧の振幅が定常状態の交流系統電圧の振幅より小さいときには、検出位相の変化量が小さくなるように制御する補正手段とを具備したことを特徴とする位相検出器。
  2. 前記補正手段は、前記位相検出手段に入力された前記交流系統電圧の振幅を前記交流系統電圧の定常状態の振幅で除算する正規化手段からなることを特徴とする請求項1記載の位相検出器。
  3. 前記補正手段は、交流系統電圧の振幅に応じ変化する振幅補正信号を出力する振幅演算手段と、前記位相差検出手段からの位相差に前記振幅演算手段からの振幅補正信号を乗算し新たな位相差信号とする乗算手段とからなることを特徴とする請求項1記載の位相検出器。
  4. 前記補正手段は、交流系統電圧の振幅に応じ変化する振幅補正信号を出力する振幅演算手段と、この振幅演算手段からの振幅補正信号を基に前記フィルタ手段の比例ゲインと積分ゲインを変更するパラメータ変更手段とから構成したことを特徴とする請求項1記載の位相検出器。
  5. 前記補正手段は、交流系統電圧の振幅に応じ変化する振幅補正信号を出力する振幅演算手段と、前記波形発生手段からの正弦波に前記振幅演算手段からの振幅補正信号を乗算し、新たな正弦波とする乗算手段とからなることを特徴とする請求項1記載の位相検出器。
  6. 交流系統電圧と後述する波形発生手段の出力との位相差を演算により求める位相差検出手段と、この位相差検出手段からの位相差が入力され少なくとも積分要素を有するフィルタ手段と、このフィルタ手段の出力に応じた周波数で発振し検出位相を出力する発振手段と、前記交流系統電圧を3相2相変換した信号波の基本波成分を抽出する基本波抽出手段と、前記発振手段の信号に同 期して前記基本波抽出手段の出力を記憶する記憶手段と、前記発振手段の信号に同期して前記記憶手段に格納されている1サイクル前の基本波抽出手段の出力を出力する波形発生手段とを具備したことを特徴とする位相検出器。
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