JP3695431B2 - 分離装置および分離装置の製造方法 - Google Patents

分離装置および分離装置の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、試料を分離する装置および方法に関し、さらに詳細には、微小スケールで様々なサイズの物質、例えば細胞、核酸断片、あるいは、アミノ酸・ペプチド・タンパク質などの有機分子、金属イオン、コロイド、ラテックスビーズなどを分離する際などに用いる好適な分離装置および分離方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
細胞や核酸・タンパク質など生体物質の分析では、試料をあらかじめ分離精製しておくことが重要な技術的課題となっている。こうしたニーズに対応するため、従来、超遠心分離装置やキャピラリ電気泳動を用いた分離技術が広く用いられてきた。
【0003】
しかしながら、超遠心分離装置やキャピラリー電気泳動は、分離に長時間を要する上、試料が大量に必要となる。また、分離能についても、必ずしも満足できる水準にはない。
【0004】
一方、米国特許5,837,115号には、多数の障害物をアレイ状に配置した分離装置が開示されている。分離対象としては、細胞やウイルス、巨大分子、微小粒子等が例示されている。しかしながらこの技術は、以下の点でなお改善の余地を有していた。
【0005】
第一に、巨大分子や粒子が原因となって目詰まりが生じることがあり、スループットの向上に限界があった。
【0006】
第二に、多数の障害物を狭い間隔で精密に作製することが困難なため、障害物の間隔を充分に小さくすることは困難であった。特に、200nm以下の間隔で多数の障害物を精密に作製することは、当時の技術水準ではきわめて困難であった。したがって、その適用範囲も一定のものに限られていた。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記事情に鑑みなされたものであって、小さいサイズの物質を、少量の試料で短時間に優れた分離能で分別でき、目詰まり等の問題も少ない分離技術を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、試料の通る流路と、該流路の非金属材料からなる内壁に複数の凹部が形成されてなる試料分離領域と、を備え、前記流路の延在方向と垂直な方向に電圧無印加で、前記成分の形状または大きさに由来し、前記試料分離領域を前記成分が通過する経路長に応じて、前記試料中の成分を分離するように構成されたことを特徴とする分離装置、が提供される。
【0009】
また本発明によれば、非金属材料からなる基板と、前記基板の表面が選択的に除去されて形成されてなる溝部からなる試料の流路と、前記流路に試料を導く試料導入部と、前記流路中に設けられた、試料を複数の成分に分離する試料分離領域と、前記試料分離領域で分離された試料を分析または分取する試料回収部とを備え、前記試料分離領域は、前記流路の内壁が選択的に除去されてなる複数の凹部が形成されてなることを特徴とする分離装置が提供される。
また本発明によれば、試料の通る流路と、該流路内壁に複数の凹部が形成されてなる試料分離領域と、を備え、少なくとも一つの前記凹部は、溝状の形状を有し、その開口幅は、前記試料分離領域の上流側で小さく、下流側で大きいことを特徴とする分離装置が提供される。
また本発明によれば、試料の通る流路と、該流路内壁に複数の凹部が形成されてなる試料分離領域と、を備え、複数の前記凹部が柱状の形状を有し、前記試料分離領域の下流側に位置する前記凹部の開口幅は、前記試料分離領域の上流側に位置する前記凹部の開口幅よりも大きいことを特徴とする分離装置が提供される。
この構成において、前記流路が基板上に形成されてもよい。
また、この構成において前記流路は前記基板上に形成された溝部からなり、前記基板上に樹脂層が設けられ、該樹脂層に前記溝部が設けられた構成とすることができる。
本発明の分離装置において、中空の管を有し、前記管の中空部分が前記流路をなす構成とすることができる。
また、本発明の分離装置において、前記流路に試料を導く試料導入部と、前記試料分離領域に連通する試料回収流路と、前記試料回収流路に連通し、前記試料分離領域で分離された試料を分析または分取する試料回収部とを備えることができる。
【0010】
また本発明によれば、基板上に形成された溝部からなる試料の流路と、前記流路に試料を導く試料導入部と、前記流路中に設けられた、試料を複数の成分に分離する試料分離領域と、前記試料分離領域で分離された試料を分析または分取する試料回収部とを備え、前記試料分離領域は、前記流路内壁に複数の凹部が形成されてなり、上記基板上に樹脂層が設けられ、当該樹脂層に上記溝部が設けられ、上記樹脂層が光硬化性樹脂からなることを特徴とする分離装置が提供される。
【0011】
また本発明によれば、上記の分離装置において、上記試料中の分離目的成分に対して外力を付与する手段をさらに備えたことを特徴とする分離装置が提供される。
【0013】
本発明の装置は、米国特許5,837,115号等に開示されている従来の技術とは、異なる原理で試料を分離する。米国特許5,837,115号に代表される技術では、分子サイズの大きい物質ほど、障害物によって通過を阻害される程度が大きくなる。したがって、大きいサイズの物質は、小さいサイズの物質よりも後から排出される形で分離がなされる。
【0014】
これに対して本発明の装置は、被分離対象となる物質のサイズが小さいほど、試料分離領域中で凹部にトラップされ、長い経路を通ることになる。すなわち、小さいサイズの物質は、大きいサイズの物質よりも後から排出される形で分離がなされる。サイズの大きい物質は比較的スムーズに分離領域を通過するので、目詰まりの問題が低減され、スループットが顕著に改善される。特に核酸やタンパク質等の分離においては、分子の慣性半径もきわめて広い範囲に及ぶため、巨大サイズの物質が目詰まりしやすく、また、いったん、こうした物質が目詰まりすると洗浄しても脱離させることが困難となる。本発明によれば、このような問題が解決されるため、核酸やタンパク質等の分離に好適に適用できる。
【0015】
この分離装置では、複数の凹部が群をなし密集して形成された領域を試料分離領域とする。本発明において、複数の凹部とは、分離機能を担保しうる程度の数の凹部のことをいう。本発明においては、この凹部の開口部最大径をきわめて狭く設定することもできる。この場合、従来では予想すらできなかったさまざまな物質を分離、分別することができる。たとえば核酸やタンパク質の分離に際しては、上記凹部が数百ナノメートルオーダー以下の微小な開口部を有することが望まれる。
【0016】
開口部の形状は、例えば円形、楕円形、多角形などいずれでもよく、特に制限されない。本発明において凹部の開口部最大径とは、開口部の一点と他の一点とを結んでできる任意の直線のうち最も長い直線の長さをいう。
【0017】
また、本発明において凹部の深さ方向は必ずしも重力と同じ方向である必要はない。たとえば流路壁面に水平方向に凹部が設けられていてもよい。
【0018】
このような狭い開口径で凹部を形成することは、従来技術ではなしえなかったが、本発明者は、このような構造の分離装置を、後述するように微細加工用レジストのカリックスアレーンを用いた電子線リソグラフィ技術を利用して凹部を形成することにより作製できることを見いだした。
【0019】
この発明においては、凹部の開口部最大径は、トラップされる分子の大きさを決定し、凹部の深さはトラップされる量とトラップされている時間を決定する。また、凹部の間隔は、測定ピークのブロードニングの程度に影響する。これらの値は、それぞれ個別に任意の値に設定することができるため、サイズの分布が広い試料についても、スループットの低下をもたらすことなく高い分離能で分離することができる。たとえば、凹部の開口部最大径分布を広くする等の設計により、小さいサイズの分子および大きいサイズの分子の両方に適応し、優れた分離効率を実現することができる。
ここで、上記凹部の開口部最大径(例えば図2におけるφ)、凹部間の間隔(例えば図2におけるp)および流路の深さ(例えば図2におけるD)については、分離しようとする試料に含まれる複数の成分の大きさの中央値Mや標準偏差σなどを考慮して適宜選択することもできる。こうすることにより、分離効率を最適化することができる。例えば、凹部の開口部最大径をM、凹部間の間隔をM、流路の深さをM+2σとすることができる。また、凹部の開口部最大径を2M、凹部間の間隔を2M、流路の深さを2M+2σとすることもできる。
【0020】
また本発明によれば、試料の通る流路と、該流路内壁に複数の凹部が形成されてなる試料分離領域と、を備え、上記凹部は陽極酸化法により設けられた構成とすることができる。陽極酸化法によれば、所望のサイズの凹部および凹部の間隔を有する分離装置が少ない工程で実現できる。
【0021】
また本発明によれば、試料の通る流路と、該流路内壁に複数の凹部が形成されてなる試料分離領域と、を備え、上記凹部がテーパー形状を有し、上記凹部の開口部の最大径が底部の最大径よりも大きいことを特徴とする分離装置が提供される。この分離装置においては、分離対象の分子はそのサイズが小さいほど、凹部での滞在時間が長くなる。従って、分離能のさらなる向上を図ることができる。
また、本発明によれば、試料の通る流路と、該流路内壁に複数の凹部が形成されてなる試料分離領域と、を備え、上記流路内壁の表面が親水化処理されたことを特徴とする分離装置が提供される。この分離装置においては、流路内壁に分子が粘着することが抑制されるため、より良好な分離能を実現することができる。
【0022】
また本発明によれば、試料の通る流路と、該流路内壁に複数の凹部が形成されてなる試料分離領域と、を備え、隔壁により上記流路が複数の分岐流路に分割され、上記隔壁に、隣接する分岐流路に連通する複数の孔が設けられたことを特徴とする分離装置が提供される。上記複数の孔は、試料に含まれる分子のうち、一定のサイズより小さいものを分離するための試料分離孔である。凹部による分離の場合、小さい分子の流出は遅くなるが、この分離装置によれば、試料分離孔よりも小さいサイズの分子についても大きな分子と同様の迅速さで分取することが可能となる。
【0023】
また本発明によれば、試料の通る流路と、該流路内壁に複数の凹部が形成されてなる試料分離領域と、を備え、上記隔壁の少なくとも一方の面に、複数の凹部が形成されたことを特徴とする分離装置が提供される。こうすることにより、少なくとも1つの分岐流路において、上記した凹部による分離効果を得ることができる。
【0024】
また本発明によれば、試料の通る流路と、該流路内壁に複数の凹部が形成されてなる試料分離領域と、を備え、上記隔壁の両面に複数の凹部が形成され、一方の面に設けられた凹部の開口部の最大径と、他方の面に設けられた凹部の開口部の最大径とが異なることを特徴とする分離装置が提供される。これにより、各々の分岐流路における分離対象分子のサイズに対応して精密な分離を実現することが可能となる。
【0025】
また本発明によれば、試料の通る流路と、該流路内壁に複数の凹部が形成されてなる試料分離領域と、を備え、上記試料分離領域中に、複数の凹部が設けられた突起部を具備することを特徴とする分離装置が提供される。こうすることにより、凹部を有する表面の面積を増大させることができるため、分離能が向上する。
【0028】
また本発明によれば、試料の通る流路と、該流路内壁に複数の凹部が形成されてなる試料分離領域と、を備え、上記流路が複数設けられ、これらの流路と交差する液体試料導入用流路が設けられたことを特徴とする分離装置が提供される。この装置においては、1箇所に試料を導入することにより上記複数の流路に試料を導入することが可能であるため、分析の効率を大幅に向上させることができる。ここで、上記流路および上記液体試料導入用流路が交差する箇所と上記試料分離領域との間に、複数の柱状体が配設されている構成としてもよい。この場合、流路に流れ込む分子のサイズを制限することが可能になるため、所望のサイズの分子についての分析を迅速かつ正確に実現することができる。
【0029】
本発明における試料としては、さまざまなものが含まれるが、たとえば核酸またはタンパク質を試料とした場合、より効果的である。これらの試料の分離に際しては、小さいサイズの分子を高い分離能で分離しなければならないため、数百ナノメートルオーダー以下の微小な間隙が設けられた構造が必須となる。一方、巨大物質による目詰まりを効果的に抑制することも要求される。本発明によれば、これらの要求の双方に充分に対応できるため、核酸またはタンパク質の分離に好適である。
【0030】
また本発明によれば、基板上に試料の通る流路を設ける工程と、該流路内壁に複数の凹部を形成する工程とを含む分離装置の製造方法であって、陽極酸化法により上記凹部を形成する工程を含むことを特徴とする分離装置の製造方法が提供される。陽極酸化法によれば、極めて少ない工程で、かつ精密な制御を必要とせずに所望のサイズの凹部を有する分離装置を得ることができる。
【0031】
また本発明によれば、上記の分離装置の製造方法であって、通電することにより凹部を設ける工程において、電圧を連続的に降下させることを特徴とする分離装置の製造方法が提供される。この製造方法によれば、テーパー状の凹部を設けることができる。
【0032】
また本発明によれば、上記の分離装置の製造方法において、前記基板上に試料の通る流路を設ける工程が、前記基板上に樹脂層を設ける工程と、該樹脂層に溝部を設ける工程とを含むことを特徴とする分離装置の製造方法が提供される。例えば、可塑性樹脂により上記樹脂層を設け、この樹脂層に対して金型を押圧することにより上記溝部を設けることもできる。この方法によれば、簡便に上記流路を形成することできる。そのため歩留まりよく上記分離装置を供給することが可能となる。
【0033】
また、上記の分離装置の製造方法において、上記樹脂層が光硬化性樹脂であってもよい。この場合、より一層簡便に上記流路を形成することが可能となる。
【0034】
また本発明によれば、一対の基板にそれぞれ流路となる溝部を設ける工程と、上記一対の基板にそれぞれ設けられた溝部同士の位置が合うように、上記一対の基板を、上記流路となる溝部が設けられた面同士で対向させ、かつ上記一対の基板の間に複数の凹部を有する板状部材を配置した状態で上記一対の基板と上記複数の凹部を有する板状部材とを接合することにより、上記板状部材により二層に分割された流路を設ける工程とを含む分離装置の製造方法が提供される。この製造方法によれば、複数の流路を有する分離装置を得ることが可能となる。
【0035】
また本発明によれば、上記の分離装置の製造方法において、上記複数の凹部を有する板状部材が、複数の試料分離孔をさらに有することを特徴とする分離装置の製造方法が提供される。この製造方法により、上記した、隣接する分岐流路に連通する複数の試料分離孔が設けられたことを特徴とする分離装置を得ることができる。
【0036】
【発明の実施の形態】
本発明において、流路や試料分離領域は、シリコン基板や石英等のガラス基板あるいはシリコン樹脂、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート等の樹脂基板の表面に形成することができる。たとえば、これらの基板の表面に溝部を設け、これを表面部材によって封止し、これらによって囲まれた空間内に流路や試料分離領域を形成することができる。
【0037】
本発明における凹部は、たとえば、上記基板を所定のパターン形状にエッチングすることにより形成することができる。その際のリソグラフィ工程は、フォトリソグラフィおよび電子ビームリソグラフィのいずれを用いてもよい。また、これ以外の方法として、可塑性樹脂表面への金型からの転写により凹部を形成する方法、陽極酸化法を採用することもできる。
【0038】
凹部は、円柱、楕円柱、円錐、楕円錐のものが好適に用いられるが、直方体、三角錐等、さまざまな形状を採用することができる。また、凹部のサイズは、分離目的に応じて適宜設定される。たとえば、
(i)細胞とその他の成分の分離、濃縮
(ii)細胞を破壊して得られる成分のうち、固形物(細胞膜の断片、ミトコンドリア、小胞体)と液状分画(細胞質)の分離、濃縮
(iii)液状分画の成分のうち、高分子量成分(DNA、RNA、タンパク質、糖鎖)と低分子量成分(ステロイド、ブドウ糖等)の分離、濃縮
といった処理において、
(i)の場合、1μm〜10μm、
(ii)の場合、100nm〜1μm、
(iii)の場合、1nm〜100nm、
とすることができる。
【0039】
凹部の深さについても用途に応じて適宜設定することができるが、たとえば5〜2000nmとすることができる。
【0040】
隣接する凹部の平均間隔は、好ましくは200nm以下、より好ましくは100nm以下、さらに好ましくは70nmとする。下限については特にないが、たとえば5nm以上とすることができる。なお、凹部の間隔とは、凹部の中心点間距離をいう。
【0041】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態についてさらに説明する。
【0042】
図1は、本発明に係る分離装置の一例を示す図である。基板110上に分離用流路112が形成され、これと交差するように投入用流路111および回収用流路114が形成されている。投入用流路111、分離用流路112および回収用流路114には、それぞれその両端に液溜め101a、b、102a、b、103a、bが形成されている。分離用流路112には、検出部113が設けられている。装置の外形寸法は用途に応じて適宜な値が選択されるが、通常は、図示したように、縦5mm〜5cm、横3mm〜3cmの値とする。
【0043】
この装置を使って試料の分離を行う方法について説明する。試料は、まず液溜め102a、bに注入される。この試料は、投入用流路111を通過し、投入用流路111および分離用流路112の交差する点で、分離用流路112に投入される。液溜め101aおよび101bには電極が設けられており、これを用いて分離用流路112の両端には電界が印加される。この電界による外力を受けて、試料は分離用流路112を投入用流路111側から回収用流路114側へ移動していく。分離用流路112の内部には多数の凹部が一定の間隔で設けられており、この部分を通過する際、分子の大きさ等により試料が分離される。したがって、様々な分子サイズの分子を含む試料を分離用流路112中に導くと、その大きさにしたがって、液溜め103a、bに格納されるタイミングが相違することとなり、試料の分離が行われる。
【0044】
ここで、上記の電極が設けられた液溜めの構造について、図29および図3を参照して説明する。図29は、図1における液溜め101a付近の拡大図である。また図3は、図29におけるA−A'断面図である。分離用流路112および液溜め101aが設けられた基板110上には、緩衝液を注入できるようにするための開口部802が設けられた被覆801が配設される。また被覆801の上には、外部電源に接続することができるように伝導路803が設けられる。さらに図3に示されるように、電極板804が液溜め101aの壁面と伝導路803とに沿うように配設させる。電極板804と伝導路803とは圧着され、電気的に接続される。なお、その他の液溜めについても上記と同様な構造を有する。
【0045】
なお、図1において、分離用流路112と投入用流路111とは直交しているが、これに限られない。たとえば分離用流路112と投入用流路111とが45度の角度で交わる構成を採用しても上記と同様の効果が得られる。回収用流路114についても同様である。
【0046】
また、液溜め102a、102bおよび投入用流路111を設けない構成を採用することもできる。この場合は、液溜め101aから緩衝液を注入し、分離用流路112を緩衝液で満たした後、試料を液溜め101aから注入する。同様に液溜め103a、103bおよび回収用流路114を省略することもできる。この場合は液溜め101bから分離された試料を分取することができる。
【0047】
図2は、図1中の分離用流路112の構造を詳細に示したものである。図2中、基板110に幅W、深さDの溝部が形成され、この溝の底部に、直径φ、深さdの円柱形状の穴が等間隔pで規則正しく形成されている。なお、流路の幅W、流路の深さD、穴の直径φ、穴の深さd、穴の間隔pについては、たとえば図示されたサイズとすることができる。また、後述の図5、図6、図7、図8に示される形態においても、W、D、φ、d、pについて同様のサイズとすることができる。
【0048】
この流路は、実際には図3のように被覆部により覆われている。すなわち、基板に形成された流路が被覆部によって封止されて空間を形成しており、この空間内を試料が移動する。この被覆部は、試料に含まれる水分の蒸発を防止する役割を有する
【0049】
次に、多数の穴が設けられた構造が試料分離手段として機能する理由について、図4を参照して説明する。図4中、試料分離領域には、複数の穴部が所定の間隔で形成されている。この領域を通過する際、穴の径よりも大きなサイズの分子は、穴にトラップされることなく流路を素通りするため、短い時間でこの領域を通過する。一方小さいサイズの分子は、基板に設けられた穴にトラップされて長い経路を通ることになる。この結果、小さいサイズの物質は、大きいサイズの物質よりも後から排出される形で試料が分離される。
【0050】
上記のように本発明の装置では、目詰まりの原因となりやすいサイズの大きい物質は比較的スムーズに分離領域を通過する方式となるので、目詰まりの問題が低減され、スループットが顕著に改善される。
【0051】
図4に示した分離方式を実現する試料分離領域の構造の例について、図5を参照して説明する。図5に示したように、この試料分離領域は、開口部最大径φの凹部が間隔pにて規則的に形成されている。
【0052】
図6は他の試料分離領域の例である。この例では凹部が列をなして整然と配列されている。
【0053】
図3は他の試料分離領域の例である。この例では流路を進むにしたがってサイズの大きな凹部が配列された構成となっている。
【0054】
図3は他の試料分離領域の例である。この例では開口径の異なる凹部がランダムに配列された構成となっている。
【0055】
図7は他の試料分離領域の例である。この例では凹部がストライプ状に形成されている。すなわち、凹部はホールではなく、溝となっている。この場合、φ、pはそれぞれ溝の幅、溝と溝との間隔を表している。
図3は他の試料分離領域の例である。この例では、流路を進むにしたがって幅が広くなる溝が流路中にもうけられた構成となっている。
【0056】
図8は他の試料分離領域の例である。図7と同様、凹部がストライプ状に形成されているが、試料の流れ方向に対するストライプの方向が、図7では平行であったのに対し、図8では垂直の関係となっている。この場合においても、φ、pはそれぞれ溝の幅、溝と溝との間隔を表している。
【0057】
試料分離領域を、図3、図3、図3に示すような構成とすることにより下記のような効果が得られる。
【0058】
穴や溝のサイズよりも大きな分子には、穴による分離効果が得られ難い。従って、穴や溝のサイズを一定にすると、その穴や溝のサイズよりも大きなサイズの分子に対する分解能は小さい分子に比べて低下してしまう。また、穴や溝のサイズを一定にすると、大きな分離効果が得られる分子サイズのレンジが狭くなってしまう。そのため、流路を図3、図3、図3に示すような構造とすることにより、大きなサイズの分子に対する分解能を高くすることができるとともに、十分な分離効果が得られる分子サイズのレンジを広くすることができる。
【0059】
本発明において、凹部の開口部の最大径は、分離しようとする成分(核酸、アミノ酸、ペプチド・タンパク質などの有機分子、キレートした金属イオンなどの分子・イオン)のサイズに合わせて適宜に選択される。たとえば、分離したい分子群のサイズの中央値に相当する慣性半径と同程度か、それよりもわずかに小さめあるいは大きめとするのが好ましい。具体的には、上記中央値に相当する慣性半径と、凹部の開口部の最大径との差異を、100nm以内、より好ましくは10nm以内、最も好ましくは1nm以内とする。凹部の開口部の最大径を適切に設定することにより、分離能が一層向上する。
【0060】
また、上記実施形態では凹部を一定間隔で配設した例を示したが、試料分離領域内において凹部を異なる間隔で配設することもできる。こうすることで大・中・小等の複数の大きさの分子・イオンを効率的に分離することができる。また、凹部の配置に関し、図5に示されるように、試料の進行方向に対して互い違いに凹部を配置する方法を採用することも有効である。こうすることにより、凹部と分子との遭遇機会が増すため、目詰まりを効果的に防止しつつ目的の成分を効率的に分離することができる。
【0061】
また、上記実施形態では、凹部が円柱状である例を示したが、これに限られない。凹部の内径が底面に近づくに従って小さくなっているテーパー状の形態を採用することもできる。例えば、図19(a)に示されるように、凹部の内径が段階的に小さくなっている形態や、図19(b)または(c)に示されるような、凹部の内径が連続的に小さくなっている形態が挙げられる。これらの場合、小さい分子ほど凹部の奥深くまで移動可能であるため、当該凹部に滞在する時間が長くなる。その結果、分離能がさらに向上する。
【0062】
このようなテーパー状の凹部は種々の手法により設けることができる。例えば上記した陽極酸化法により凹部を設ける際に、電圧を徐々に降下させることにより、テーパー状の凹部を設けることができる。
【0063】
また、エッチングによりテーパー状の凹部を設けることも可能である。例えば基板としてシリコンを用いる場合、まず、設けようとする凹部の底面の内径と同程度の内径を有する縦穴をドライエッチングにより設ける。次に、この縦穴に対して等方性のエッチング液を用いたウエットエッチングを行う。このとき、縦穴におけるエッチング液の交換速度は、縦穴の底面において最も小さく、縦穴の底面から開口部へ向かうにつれて大きくなる。このため、縦穴の底面付近ではサイドエッチングがほとんど生じず、内径はほとんど広がらない。その一方で、底面から開口部へ近づくにつれてサイドエッチングの程度が大きくなることから、それに伴って内径も広がることになる。こうしてテーパー状の凹部を設けることもできる。
【0064】
さらに、上記実施形態においては、凹部を平面上に配置させた例を示したが、立体的に配置させることも可能である。例えば、流路に分離板を設けることにより流路を二層に分割し、分離板および流路壁に凹部を設けることができる。
【0065】
本発明に係る分離装置は、小さい分子ほど流出が遅くなるという特性を有している。大きな分子と同様の迅速さで小さい分子を分取するために、上記の分離板に目的の分子のサイズと同程度の口径の貫通孔を設けることができる。このようにすれば、目的とする小さい分子は、凹部の設けられた流路を迂回することができる。そのため、大きな分子と同様の迅速さで小さな分子を分取することができるとともに、それ以外の分子の分離を実現することが可能となる。
【0066】
図20は流路を二層に分割した形態の一例を示す図である。図20(a)は、流れ方向に対する垂直断面図である。流路309が分離板319により二層に分割されている。図20(b)は、図20(a)中のA−A'面における断面図である。分離板319には部分的に貫通孔320が設けられており、貫通孔320を通過可能な分子は図中の下方の流路309に移動する。このような構造を採用することにより、流路が一層である構造では流出時間が遅い、小さな分子を迅速に分取することが可能となる。さらに分離板319に、凹部321よりも小さな凹部322を設けることもできる(図20(c))。このようにすることにより、下方の流路309において小さな分子の精密な分離を実現できる。
【0067】
また、図21(a)または図21(b)のように、流路にピラーや突起を設け、当該ピラーまたは突起および流路壁に凹部を設けることもできる。このようにすることにより、凹部を備えた分離領域の面積を増大させることができるため、分離能の向上を図ることができる。
【0068】
本発明に係る分離装置は、内部に緩衝液を導入した状態で使用されることが好ましい。ここで、流路壁面や被覆部などの流路表面がプラスチックなどの疎水性材料で構成されている場合、緩衝液を流路内へ導入することは通常、容易ではない。緩衝液を円滑に導入する方法としては、たとえば図9に示す方法を採用することができる。図示した方法では、遠心管151のホルダー153中にチップ150を固定した状態で遠心分離を行うことにより緩衝液がチップ150に導入される。なお、緩衝液を導入する困難を解消する方法として、分離装置内の流路表面にシリコン酸化膜等の親水性膜を形成することも有効である。
【0069】
本発明の分離装置では、図11に示すように、分離用流路112の両端に電圧が印加され、これにより試料が分離用流路112中を移動する。ここで、試料に外力を与えるための電圧以外に、電気浸透流を抑制するための電圧を印加してもよい。図11ではこの目的のため、基板にゼータ補正電圧を印加している。このようにすれば電気浸透流が抑制され、測定ピークのブロードニングを有効に防止することができる。
【0070】
なお本発明において、試料に外力を付与する手段は電圧に限られない。例えば、流路に緩衝液を導入しない状態で、分離対象試料を含んだ緩衝液を導入する場合、この緩衝液が毛細管現象により自動的に流路に流入する。この過程で分離を実現することも可能である。
【0073】
また、分離領域を備えた流路が複数設けられ、その流路と交差し、かつ当該分離領域に試料を導入する目的の試料導入用流路がもうけられた形態を採用することもできる。図23に示される分離装置はその一例である。この分離装置には、凹部を備えた分離領域323を有する流路309が複数設けられている。分離対象試料は、試料導入口324から導入され、リザーバー325へ向かって拡散する。試料導入口324とリザーバー325との間の流路326は分離能を賦与されておらず、分離能を有する複数の流路309へ試料を運ぶためのものである。試料が流路326に満たされた後、リザーバー327からリザーバー328方向へ試料を泳動させることにより、同時に分離・解析を実行することができるため、分析の効率が向上する。また各流路309ごとに、異なる特性をもつ分離領域323を備えることにより、種々の解析を同時に実施することが可能となる。さらに図24のようにリザーバー327を一つとした形態を採用することもできる。この例の場合、リザーバー327から全ての流路309にバッファを注入することができるため、効率的である。
【0074】
さらに、図23または図24に示される形態においては、分離領域が設けられた流路と試料導入用流路とが交差する箇所にピラーメッシュを配設することもできる。図25はその一例を示す図である。流路309と流路326との交差点において、ピラーメッシュ329は微少なピラーが配設されてなっている。このピラーメッシュ329は濾過機能を有しており、ピラーのピッチを制御することにより、所望する範囲の大きさの分子のみを分離領域323へと通過させることができるため、所望の分析を迅速かつ正確に実施することができる。なお、図25においては、分離領域が設けられた流路と試料導入用流路とが直交している例を示したが、これに限られず、任意の角度で交わった構成としても上記の効果を得ることができる。
【0075】
また、ピラーメッシュ329を備えた場合、弱い駆動力(たとえば微弱な電界)を分離対象の分子群に与えることによって、泳動を開始する前においては図26(a)に示されるように広がっていた試料は、ピラーメッシュ329によって堰き止められる。このため、図26(b)のように当該分子群は濃縮され、細いバンドを形成する。次に、一時的に強い駆動力(たとえば強い電界)を分離対象の分子群に与えると、当該分子群は濃縮された状態を保ちつつピラー列を通過する。これは、特にDNAやタンパク質のような高分子の場合、分子サイズがピラー同士の間隔よりも大きい場合であっても、ピラー列が一列ないし数列程度であれば当該分子は伸長することによりピラー間をすり抜けることができることによる(レプテーション効果)。当該分子群は、ピラーメッシュ329を通過後も細いバンド状態を保っているため、分離後のピークの重なりが少なくなることから高精度の分離が実現する。なお、分離用流路のリザーバーに試料を直接投入しても図26(b)のように、十分細いバンドが得られるため、投入用流路が不要であるという特長もある。
【0076】
なお、図25および図26においては、分離領域が設けられた流路と試料導入用流路とが直交している例を示したが、これに限られず、任意の角度で交わった構成としても上記の効果を得ることができる。
【0077】
[エッチングによる凹部の作製方法]
凹部の作製方法の一例を以下に示す。工程の詳細について図10を参照して説明する。
【0078】
まず、図10(a)に示すように、シリコン基板201を用意し、その上にカリックスアレーン電子ビームネガレジスト203を塗布する(図10(b))。次に、電子ビーム(EB)を用い、試料の流路となる部分を露光する。現像はキシレンを用いて行い、イソプロピルアルコールによりリンスする。この工程により、図10(c)に示すように、パターニングされたレジスト204が得られる。
【0079】
つづいて、これをマスクとして、シリコン基板201をエッチングする(図10(d))。レジストを除去した後(図10(e))、再度全面にポジ型フォトレジスト205を塗布する(図10(f))。その後、流路部分が露光するようにマスク露光をし、現像を行う(図10(g))。ポジ型フォトレジスト205は、シリコン基板201に所望の凹部(穴部)が形成されるようにパターニングされている。
【0080】
次に、シリコン基板201をCF、CHFの混合ガスを用いてRIEエッチングする(図10(h))。レジストをアセトン、アルコール、水の混合液を用いた有機洗浄により除去した後(図10(i))、ガラス210で静電接合を行いシーリングして分離装置を完成する(図10(j))。
【0081】
上記のようにして分離装置を試作したところ、外観上、問題がないことが確認された。
【0082】
[陽極酸化法による凹部の作製方法]
次に、上記とは異なる方法、すなわち陽極酸化法による凹部の作製方法について説明する。
【0083】
陽極酸化法とは、電解液中で酸化させたい金属(例えばアルミニウム、チタン、ジルコニウム、ニオブ、ハフニウム、タンタルなど)を陽極として通電し、酸化させる処理のことをいう。この処理法においては、酸性電解液を用い、通電による水の電気分解により、陰極では水素が生成するが、陽極では酸素が生成せず、金属表面に酸化被膜層が形成される。アルミニウムの場合、この酸化被膜層はポーラスアルミナと呼ばれ、図12に示されるように、ポーラスアルミナ層316は各セル331の中央に細孔330を持った周期的構造を有する。これらの構造は自己組織的に形成されるため、パターニングを必要とせず、容易にナノ構造を得ることができる。セルの間隔は酸化電圧に比例(2.5nm/V)し、アルミニウムの場合では酸化電圧により硫酸(〜30V)、シュウ酸(〜50V)、リン酸(〜200V)が酸性電解液として使用される。
【0084】
一方、細孔のサイズは酸化条件および酸化後の表面処理に依存する。酸化電圧の上昇に従って細孔の直径は拡大する。例えば、酸化電圧を5V、25V、80V、120Vとしたとき、それぞれ10nm、20nm、100nm、150nm程度の最大径を有する、開口部が円形ないし楕円形の細孔ができる。また、ポーラスアルミナを形成後、例えば3wt%のリン酸によりその表面をエッチングする表面処理が行われるが、この表面処理の時間が長いほど、細孔の直径は拡大することになる。
【0085】
以上のように、酸化電圧や表面処理の時間を適宜選択することにより、規則正しく整列し、かつ所望の間隔および直径を有する凹部を設けることが可能となる。
【0086】
なお、上記ポーラスアルミナをより均質に設けるためには、図15のように、陽極酸化する対象のアルミニウム層の周辺部を絶縁膜で覆いつつ、上記の陽極酸化を実施することが好ましい。図15(a)は絶縁性基板の上に形成されたアルミニウム層302の周辺部が絶縁膜311で覆われた状態を示す上面図である。絶縁膜311としては、たとえば感光性ポリイミドなどの絶縁性の樹脂を用いることができる。このようにすることにより、電極取付部312の周辺でのみ陽極酸化反応が速く進み、陽極から遠い部分では酸化されない領域ができる現象を抑制することができるため、アルミニウム層302全体にポーラスアルミナを均質に設けることが可能となる。
【0087】
また、阿相らの方法(J. Vac. Sci. Technol. B 19(2), 569 (2001))により、ポーラスアルミナを設けたい箇所に、モールドを用いて予め窪みを設けてから陽極酸化を実施することにより、ポーラスアルミナを所望の配置に設けることもできる。この場合も上記同様、電圧を制御することにより凹部の最大径を望みのものとすることができる。
【0088】
また、図15(b)に示すように、陽極酸化されない導電体(金など)をスライドガラス301上に設けられたアルミニウム層302に蒸着させることにより導電体層313を形成後、陽極酸化を実施することによってもアルミニウム層302全体にポーラスアルミナを均質に設けることが可能となる。なお、陽極酸化実施後、導電体層313は導電体が金の場合、金エッチャントにより取り除かれる。金エッチャントはヨウ化カリウムとヨウ素の水溶液を混合することによって得られる。混合比はヨウ化カリウム:ヨウ素:水=1:1:3(重量比)とする。
【0089】
さらに、流路壁に対してDNAやタンパク質などの分子が粘着することを防ぐために、流路壁をコーティングするなど、親水化処理をすることが好ましい。この結果、分離装置が良好な分離能を発揮することができる。コーティング材料としては、例えば、細胞膜を構成するリン脂質に類似した構造を有する物質が挙げられる。このような物質としてはリピジュア(登録商標、日本油脂社製)などが例示される。リピジュア(登録商標)を用いる場合は、0.5wt%となるようにTBEバッファなどの緩衝液に溶解させ、この溶液を流路内に満たし、数分間放置することによって流路壁をコーティングすることができる。
【0090】
また、流路壁をフッ素系樹脂、あるいは牛血清アルブミンによりコーティングすることによって、DNAなどの分子が流路壁に粘着することを防止することもできる。
【0091】
【実施例】
(実施例1)
本実施例に係る分離装置の作製について、以下説明する。
【0092】
図13(a)は上記した陽極酸化法を実施する装置の概略を表した断面図である。スライドガラス301上に、アルミニウムをE−gun蒸着装置により500nmの膜厚になるように蒸着させ、アルミニウム層302を形成した。次に、図13(a)に示されるように、直流電源307の正極、負極をそれぞれアルミニウム層302、白金電極306に接続し、電解液304に浸した。電解液304としては、0.3mol/Lのリン酸を使用した。
【0093】
直流電源307を電圧120Vに設定し、電流が完全に流れなくなるまで約5分間通電させることにより陽極酸化を行い、ポーラスアルミナ層316を形成した(図13(b))。次に、アルミニウム層302から直流電源307との配線を外し、スライドガラス301、アルミニウム層302およびポーラスアルミナ層316を電解液から取り出し、ポーラスアルミナ層316を5wt%のリン酸で浸すことにより、表面処理を行った。表面処理の条件は、30℃、40分間とした。凹部の直径120〜150nm、凹部の深さ500nm、凹部の間隔約250nmのポーラスアルミナが形成された。図28は得られたポーラスアルミナの表面の走査型電子顕微鏡写真である。
【0094】
以下、図14を参照して流路の形成について説明する。図14(a)〜(d)は、いずれも左側が上面図を、右側がその上面図のA−A'断面を表した図である。
【0095】
図14(a)は上記のようにして得られたポーラスアルミナ層316とスライドガラス301を表した図である。ポーラスアルミナ層316上に、スピンコート法により光硬化性樹脂 アロニックスUV−3750(東亜合成社製)を用いて光硬化性樹脂層308を設けた(図14(b))。スピンコート法の条件は、1回目:800rpm 5秒間、2回目:6000rpm 30秒間とした。次に、流路となる部分をマスクしつつ、光硬化性樹脂層308上にパターン露光を実施した。露光条件は13mW/cm 60秒間とした。その後、メチルイソブチルケトンで1分間、イソプロパノールで30秒間現像し、さらに光硬化性樹脂層308に対し、UVを照射することにより図14(c)に示される流路309を形成させた。流路309の長さは1.4mm、幅は80μm、深さは約3μmであった。
【0096】
こうして流路が形成された光硬化性樹脂層308上に、直径2mmの穴あけ加工を施したカバーガラス310を圧着した。図14(d)は、カバーガラス310が貼り付けられた状態を示している。
【0097】
上記のようにして得られた分離装置の流路を観察した結果、光硬化性樹脂により塞がれた凹部は認められなかった。また、流路壁からの液漏れも発生しないことも確認された。
【0098】
次に、カバーガラス310に施された穴の周辺部と、ガラス管(内径3mm、外径5mm、高さ5mm)とをエポキシ樹脂によって接着することによりリザーバーを設け、1×TBEバッファ(0.09Mトリスボレイト+2mM EDTA)を注入した。その後、165kbpのDNA100個を含むバッファを一方のリザーバーから注入した。その後、両方のリザーバーに白金線を挿入し、電圧(40V)を印加することによりDNAを電気泳動させた。同様の操作を10kbpのDNAについても実施した。なお、DNAの泳動速度は次のような操作により決定した。DNAを予め蛍光色素YOYO-1(Molecular probe社製)で処理しておき、蛍光顕微鏡で1000倍に拡大する。得られた映像をイメージインテンシファイア(浜松ホトニクス社製)により感度増強し、個々のDNAをトレースする。
【0099】
図22は、各サイズのDNAをそれぞれ100個づつトレースして、その泳動速度分布を示したグラフである。165kbpおよび10kbpのDNAの平均泳動速度はそれぞれ16.5μm/s、13.6μm/sであり、DNAのサイズによって泳動速度分布の差が認められ、分離能を有することが示唆された。
【0100】
100個づつのDNAについて計測した上記の結果では,両分子の速度分布の裾野が広く見えるが、次の理由で十分高い分離能を持つことが判明した。すなわち、トレースする分子数をNとするとき、ピークの標準偏差は1/N1/2に比例して小さくなることが知られている(中央極限定理)。一般に、電気泳動でできるバンドには約数十万個(10の7乗個)のDNA分子が含まれるので、同数のDNAについてトレースすれば、100個の場合と比較して,ピークの標準偏差は1000001/2分の1、すなわち0.003倍程度に小さくなる。従って、凹部による分離結果のピークは極めて鋭いものになるに間違いないからである。
【0101】
そこで上記分離装置に、165kbp、10kbpのDNAを含むバッファを適用してピークの保持時間を正確に計測してみたところ、表1に示すように、165kbp、10kbpのDNAの保持時間はそれぞれ84秒、105秒となり、互いに分離することが判明した。
【0102】
【表1】
Figure 0003695431
【0103】
比較のため、分離流路長14mmのアジレント社製の分離装置(バイオアナライザ)を用いたときの電気泳動分析結果を表2に示す。分離対象のDNAの大きさが一致していないため、両者の分離性能の比較はできないものの、アジレント社の分離装置が異なる大きさのDNAを2〜4秒の保持時間の差で分離している(表2)のに対し、本実施例の分離装置が165kbpおよび10kbpのDNAを21秒という長い保持時間の差で分離していることから優れた分離能を有していることがわかる。また、本実施例の分離装置は、アジレント社製の分離装置よりも極めて短い分離流路で上記の分離能を実現していることから、理論段数の高い優れた分離装置であることが証明された。さらに、アジレント社製の分離装置はゲルを用いた電気泳動によるものであるため、165kbpのDNAは大きすぎて目詰まりが起こり、分析することができない。一方、本実施例の分離装置は目詰まりが生じず、円滑に分析することが可能である。
【0104】
【表2】
Figure 0003695431
【0105】
このように、本分離装置は優れた分離能を有することが証明された。さらに、従来の分離装置においては目詰まりが生じてしまうことから適用が難しかった、上記の165kbpのDNAのような巨大な分子についても、本分離装置は適用可能であり、本分離装置の有用性が示された。
【0106】
なお、本実施例においては、光硬化性樹脂 アロニックスUV−3750(東亜合成社製)を用いたが、他の樹脂材料を採用しても上記と同様の分離装置が得られる。例えば、感光性ポリイミド樹脂により樹脂層を設け、パターン露光することによっても流路を設けることが可能である。感光性ポリイミド樹脂としては、住友ベークライト社製 CRC−3800などを使用することができる。
【0107】
(実施例2)
本発明の分離装置の性能をさらに確認するため、下記のような分離実験を行った。本実施例の分離装置は、以下のように作製した。
【0108】
まず、ポーラスアルミナ基板を次のようにして作製した。アセトン洗浄、SPM(硫酸過水)洗浄した50mm×76mmのスライドグラスの表面に1μmのアルミニウム薄膜をスパッタリングにて形成した。そのアルミニウム面を0.3M リン酸を電解液として、2℃、140Vの条件で電流が停止するまで陽極酸化を行った。生じたポーラスアルミナ膜を3wt%のリン酸に30℃で60分浸漬することにより、凹部の口径を拡大した。最終的な凹部の口径は、150nm〜200nm(平均170nm)であった。
【0109】
こうして得られたポーラスアルミナ基板に、光硬化性樹脂(アロニックスUV−3750、東亜合成社製)を1回目:800rpm 5秒間、2回目:6000rpm 30秒間、の条件で3μmの厚さにスピンコートした後、流路パターンをマスクしつつ60秒間露光し、アセトンで30秒間現像した。さらにUV照射により樹脂部分を硬化させることで分離用流路と試料導入用流路を成型した。流路パターンは、幅80μm、長さ40mmの分離用流路と、幅80μm、長さ30mmの試料導入用流路とが、当該試料導入用流路の中点で直交した形状とした。
【0110】
最後に、流路を形成した上記基板にリザーバー用の穴を開けたカバーガラスを光硬化性樹脂の粘着性を利用して張り付け、さらにガラス管リザーバーと白金電極をエポキシ系接着剤にて取り付けた。
【0111】
試料には、10kbp、165kbpの長さのDNA(T4ファージ)を用いた。観察のために、それぞれYOYO-1(Molecular probe社製)で染色して用いた。DNAの長さに関しては、蛍光の強度と分子形状から長さを容易に判別できるようにするという観点から選択した。これら2種類の長さのDNAを含む試料を、次の手順でパルス状に分離用流路に導入した。パルス状に導入するため、まず試料を試料導入用流路の一端に導入し、その端を−50V、他端を0Vになるように電圧を印可し、試料導入用流路に試料を導入した。この時、分離用流路の両端も0Vとして、試料導入用流路から分離用流路への試料の拡散が生じないようにした。次に、0.5秒間だけ試料導入用流路にかけた電圧を反転させて、試料を引き戻すことにより、分離用流路にかかる部分の試料の幅を細くした。最後に、分離用流路の近位端を−100V、遠位端を0V、試料導入用流路の両端を0Vにセットすることで、試料導入用流路から分離用流路へ試料がさらに引き込まれることを防ぎつつ、試料導入用流路と分離用流路の交点に存在する試料の細いパルス状のバンドだけを分離用流路に導入した。
【0112】
導入された試料は、分離用流路を通過するに従って、2種の長さのDNAそれぞれが構成する2つのバンドに分離された。試料導入用流路と分離用流路のクロス点から下流に5mmの位置において次の手法で蛍光量を実測した。蛍光顕微鏡を用い、染色したDNAを蛍光ランプで励起するとDNAの長さに応じて蛍光を発する。この蛍光を、蛍光顕微鏡に取り付けたフォトマルチプレクサ(浜松ホトニクス社製 H7467)で受け、その強度信号を記録した。同時に、流れている分子をハーフミラーを介して1000倍にて観察し、どの長さのDNAが通過しているかについても確認を行った。
【0113】
図3は、フォトマルチプレクサの信号強度(フォトンカウント)を縦軸、試料の導入からの経過時間を横軸としたグラフである。試料が導入された時点から、まず最初に165kbpのDNAが270秒でピークを形成し、ついで410秒付近に10kbpのDNAがピークを形成し、2種のDNAが明瞭に分離されていることがわかる。この結果から、この分離装置においては、サイズの大きな分子ほど分離用流路を速く通過することが示され、目詰まりをおこしにくいゲル濾過的分離機構を実現していることが明らかとなった。さらに、この分離結果をもとに理論カラム高さ(HETP:height equivalent to a theoretical plate)を計算した結果、165kbpのDNAについては9.7μm、10kbpのDNAについては32μmという結果が得られた。理論カラム高さは、分離能を計る指標の1つで、その長さが短いほど高い分離能であることを意味する。通常のゲルろ過カラム、例えば、DNAを含む生体高分子の分離に用いられるカラムの理論カラム高さは、概ね10μm〜100μmである。例えば、市販のカラム、Ohpack SB-80シリーズ(昭和電工株式会社製)の理論カラム高さは、25μmであり、同社の高分解能カラムGPC KF−40シリーズでも10μmであることから、本発明の分離装置は、理論カラム高さの観点から、それらのカラムと同程度の分離能を、数センチ角のチップで達成できていることがわかる。
【0114】
(実施例3)
実施例1および2では、ポーラスアルミナ層の上に光硬化性樹脂層を設けた後、流路を形成した。これに対して本実施例においては、図18に示すように、あらかじめエッチングにより流路309が形成されたシリコン基板317上に接着用樹脂を塗布することにより接着層318を設けた。その後、ガラス基板314上に、上記陽極酸化法により設けられたポーラスアルミナ層316と、接着層318とが接合することにより、本実施例に係る分離装置を得た。この分離装置は、製造工程が少ないことから大量生産に向くという特長を有する。
【0115】
(実施例4)
本実施例について図16および図17を参照して説明する。図16(a)〜(c)、図17(d)〜(g)は、いずれも左側が上面図を、右側がその上面図のA−A'断面を表した図である。
【0116】
ガラス基板314上に、エッチングにより流路309を設けた(図16(a))。次にガラス基板314上にスパッタリング法によりアルミニウムを蒸着させ、500nmの膜厚のアルミニウム層302を設けた(図16(b))。その後、ダマシンプロセスにより流路309上のアルミニウム層302のみを残し、その他は除去した(図16(c))。次に図17(d)に示されるように、アルミニウム層302に金製の引き出し電極315を接続し、実施例1で述べた陽極酸化を実施した。図17(e)は陽極酸化後の状態を示したものである。アルミニウム層が陽極酸化されることにより、流路にはポーラスアルミナ層316が形成されている。次に引き出し電極315をKIにより取り除き、図17(f)の状態にし、ガラス基板314と穴あけ加工を施したカバーガラス310とをガラス溶着により貼り付けた。図17(g)は、カバーガラス310が貼り付けられた状態を示している。
【0117】
本実施例の分離装置においては、流路はガラス基板およびカバーガラスにより密閉されているため、液漏れを効果的に防止することができる。また、本分離装置は構造および製造工程が簡単であるため、効率良く安定的に製造することが可能である。
【0118】
(実施例5)
本実施例の分離装置の凹部は、図19(c)に示される形状を有している。
【0119】
本実施例においては、基板としてシリコンを用いた。まず、塩素ガスおよび酸素を使用したドライエッチングにより、内径約10nmの縦穴をシリコン基板に設けた。次に、この縦穴に対し、硝酸:フッ酸:酢酸=1:1:1(容量比)のエッチング液を用いたウエットエッチングを実施した。この結果、開口部の直径120〜150nmで底部が20〜30nmのテーパー状の凹部がシリコン基板状に形成されていることを確認した。
【0120】
このようにして得られた基板上に、実施例1と同様の手法により流路を形成し、カバーガラスを貼り付けることにより本実施例に係る分離装置が得られた。
【0121】
(実施例6)
本実施例に係る分離装置は、図20(a)および図20(b)に示されるように、凹部321および貫通孔320を有する分離板319により流路309が二層に分割されている。
【0122】
分離板319上の凹部321は実施例1と同様、陽極酸化法により形成した。その後、分離板319の一部分の領域のみを電解質に浸し、再度陽極酸化を貫通孔320が形成されるまで行った。次に実施例1と同様に表面処理を行い、凹部321および貫通孔320を有する分離板319を得た。得られた分離板319と、あらかじめエッチングにより流路309が形成されたシリコン基板317とを接着用樹脂により接着し、図20(a)および(b)に示される分離装置を得ることができた。
【0123】
(実施例7)
本実施例は管状の分離装置であり、その断面図を図27(a)に示す。図のようにポーラスアルミナ層316とアルミニウム層332が同心円状に形成されている。本実施例の分離装置は次のようにして作製することができる。
【0124】
図27(b)のようにアルミニウム管333と牽引された白金線334をフォルダ335にセットし、アルミニウム管333内を電解液で満たす。このとき、白金線334は図27(c)の断面図に示されるようにアルミニウム管333の中心に位置させる。その後、陽極酸化を行うことによって図27(a)の断面図のように、アルミニウム管333内にポーラスアルミナ層316を形成することができる。こうして得られた分離装置はポンプに接続され、アルミニウム管内に導入された試料は当該ポンプにより移動・分離される。アルミニウム管から排出されるバッファを分取することによって、分離された試料を得ることができる。
【0125】
本実施例の分離装置はアルミニウム製の管であるため、自由に長さを選択できるとともに、曲げ加工などを施すことにより多彩なレイアウトを選択することができるメリットを有している。
【0126】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、試料分離領域中に、多数の凹部が設けられているため、サイズの分布が広い試料についても、目詰まりの発生やスループットの低下をもたらすことなく高い分離能で分離することができる。また、核酸やタンパク質等、サイズの小さい分子を高い分離能で迅速に分離することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る分離装置の一例を示す図である。
【図2】 図1中の分離用流路の構造を詳細に示した図である。
【図3】 図1中の分離用流路の構造を詳細に示した図である。
【図4】 試料の分離方式を説明するための図である。
【図5】 試料分離領域中の凹部の配置を示す図である。
【図6】 試料分離領域中の凹部の配置を示す図である。
【図7】 試料分離領域中の凹部の配置を示す図である。
【図8】 試料分離領域中の凹部の配置を示す図である。
【図9】 チップに緩衝液を導入する方法を説明する図である。
【図10】 本発明の分離装置の製造方法を説明するための図である。
【図11】 電気浸透流を調節するための補正電圧の印加方法を示す図である。
【図12】 ポーラスアルミナを説明するための図である。
【図13】 陽極酸化法を実施する装置を説明するための図である。
【図14】 流路の形成について説明するための図である。
【図15】 アルミニウム層の周辺部が絶縁膜あるいは導電体層で覆われた状態を示す図である。
【図16】 本発明の実施例に係る分離装置の製造工程を説明するための図である。
【図17】 本発明の実施例に係る分離装置の製造工程を説明するための図である。
【図18】 本発明の実施例に係る分離装置の製造工程を説明するための図である。
【図19】 本発明の分離装置の凹部の形状を説明するための図である。
【図20】 本発明の実施形態の一例を示す図である。
【図21】 本発明の実施形態の一例を示す図である。
【図22】 本発明の分離装置におけるDNAの泳動速度分布を示したグラフである。
【図23】 本発明の実施形態の一例を示す図である。
【図24】 本発明の実施形態の一例を示す図である。
【図25】 本発明の実施形態の一例を示す図である。
【図26】 ピラーメッシュの機能を説明するための図である。
【図27】 本発明の実施形態の一例およびその作製について説明するための図である。
【図28】 ポーラスアルミナの表面の走査型電子顕微鏡写真である。
【図29】 本発明の実施形態の一例における液溜めの構造を説明するための図である。
【図30】 本発明の実施形態の一例における液溜めの構造を説明するための図である
【図31】 本発明の分離装置におけるDNAの分離データを示すグラフである。
【図32】 試料分離領域中の凹部の配置を示す図である。
【図33】 試料分離領域中の凹部の配置を示す図である
【図34】 試料分離領域中の凹部の配置を示す図である。
【符号の説明】
101a、b 液溜め
102a、b 液溜め
103a、b 液溜め
110 基板
111 投入用流路
112 分離用流路
113 検出部
114 回収用流路
150 チップ
151 遠心管
153 ホルダー
201 シリコン基板
203 カリックスアレーン電子ビームネガレジスト
204 パターニングされたレジスト
205 ポジ型フォトレジスト
210 ガラス
301 スライドガラス
302 アルミニウム層
304 電解液
306 白金電極
307 直流電源
308 光硬化性樹脂層
309 流路
310 カバーガラス
311 絶縁膜
312 電極取付部
313 導電体層
314 ガラス基板
315 引き出し電極
316 ポーラスアルミナ層
317 シリコン基板
318 接着層
319 分離板
320 貫通孔
321,322 凹部
323 分離領域
324 試料導入口
325 リザーバー
326 流路
327,328 リザーバー
329 ピラーメッシュ
330 細孔
331 セル
332 アルミニウム層
333 アルミニウム管
334 白金線
335 フォル
01 被覆
802 開口部
803 伝導路
804 電極板

Claims (27)

  1. 試料の通る流路と、該流路の非金属材料からなる内壁に複数の凹部が形成されてなる試料分離領域と、を備え
    前記試料分離領域を試料中の成分が通過する経路長の前記成分の形状または大きさに由来する相違に応じて、前記流路の延在方向と垂直な方向に電圧無印加の状態で前記成分を分離するように構成されたことを特徴とする分離装置。
  2. 非金属材料からなる基板と、前記基板の表面が選択的に除去されて形成されてなる溝部からなる試料の流路と、前記流路に試料を導く試料導入部と、前記流路中に設けられた、試料を複数の成分に分離する試料分離領域と、前記試料分離領域で分離された試料を分析または分取する試料回収部とを備え、前記試料分離領域は、前記流路の内壁が選択的に除去されてなる複数の凹部が形成されてなることを特徴とする分離装置。
  3. 試料の通る流路と、該流路内壁に複数の凹部が形成されてなる試料分離領域と、を備え、
    少なくとも一つの前記凹部は、溝状の形状を有し、その開口幅は、前記試料分離領域の上流側で小さく、下流側で大きいことを特徴とする分離装置。
  4. 試料の通る流路と、該流路内壁に複数の凹部が形成されてなる試料分離領域と、を備え、
    複数の前記凹部が柱状の形状を有し、前記試料分離領域の下流側に位置する前記凹部の開口幅は、前記試料分離領域の上流側に位置する前記凹部の開口幅よりも大きいことを特徴とする分離装置。
  5. 請求項3または4に記載の分離装置において、前記流路が基板上に形成されたことを特徴とする分離装置。
  6. 請求項5に記載の分離装置において、前記流路は前記基板上に形成された溝部からなり、前記基板上に樹脂層が設けられ、該樹脂層に前記溝部が設けられたことを特徴とする分離装置。
  7. 請求項5または6に記載の分離装置において、前記基板が非金属材料からなることを特徴とする分離装置。
  8. 請求項3または4に記載の分離装置において、中空の管を有し、前記管の中空部分が前記流路をなすことを特徴とする分離装置。
  9. 請求項3乃至8いずれかに記載の分離装置において、
    前記流路に試料を導く試料導入部と、
    前記試料分離領域に連通する試料回収流路と、
    前記試料回収流路に連通し、前記試料分離領域で分離された試料を分析または分取する試料回収部とを備えることを特徴とする分離装置。
  10. 基板上に形成された溝部からなる試料の流路と、前記流路に試料を導く試料導入部と、前記流路中に設けられた、試料を複数の成分に分離する試料分離領域と、前記試料分離領域で分離された試料を分析または分取する試料回収部とを備え、前記試料分離領域は、前記流路内壁に複数の凹部が形成されてなり、前記基板上に樹脂層が設けられ、該樹脂層に前記溝部が設けられ、前記樹脂層が光硬化性樹脂からなることを特徴とする分離装置。
  11. 試料の通る流路と、該流路内壁に複数の凹部が形成されてなる試料分離領域と、を備え、前記凹部は陽極酸化法により設けられたことを特徴とする分離装置。
  12. 試料の通る流路と、該流路内壁に複数の凹部が形成されてなる試料分離領域と、を備え、前記凹部がテーパー形状を有し、前記凹部の開口部の最大径が底部の最大径よりも大きいことを特徴とする分離装置。
  13. 試料の通る流路と、該流路内壁に複数の凹部が形成されてなる試料分離領域と、を備え、前記流路内壁の表面が親水化処理されたことを特徴とする分離装置。
  14. 試料の通る流路と、該流路内壁に複数の凹部が形成されてなる試料 分離領域と、を備え、隔壁により前記流路が複数の分岐流路に分割され、前記隔壁に、隣接する分岐流路に連通する複数の孔が設けられたことを特徴とする分離装置。
  15. 請求項1に記載の分離装置において、前記隔壁の少なくとも一方の面に、複数の凹部が形成されたことを特徴とする分離装置。
  16. 請求項1または1に記載の分離装置において、前記隔壁の両面に複数の凹部が形成され、一方の面に設けられた凹部の開口部の最大径と、他方の面に設けられた凹部の開口部の最大径とが異なることを特徴とする分離装置。
  17. 試料の通る流路と、該流路内壁に複数の凹部が形成されてなる試料分離領域と、を備え、前記試料分離領域中に、複数の凹部が設けられた突起部を具備することを特徴とする分離装置。
  18. 試料の通る流路と、該流路内壁に複数の凹部が形成されてなる試料分離領域と、を備え、前記流路が複数設けられ、これらの流路と交差する液体試料導入用流路が設けられたことを特徴とする分離装置。
  19. 請求項18に記載の分離装置において、前記流路および前記液体試料導入用流路が交差する箇所と前記試料分離領域との間に、複数の柱状体が配設されていることを特徴とする分離装置。
  20. 請求項11乃至19いずれかに記載の分離装置において、前記流路は基板上に形成された溝部からなり、前記流路に試料を導く試料導入部と、前記試料分離領域で分離された試料を分析または分取する試料回収部とを備えることを特徴とする分離装置。
  21. 請求項乃至20いずれかに記載の分離装置において、前記試料中の分離目的成分に対して外力を付与する手段をさらに備えたことを特徴とする分離装置。
  22. 基板上に試料の通る流路を設ける工程と、該流路内壁に複数の凹部を形成する工程とを含む分離装置の製造方法であって、陽極酸化法により前記凹部を形成する工程を含むことを特徴とする分離装置の製造方法。
  23. 請求項22に記載の分離装置の製造方法であって、通電することにより凹部を設ける工程において、電圧を連続的に降下させることを特徴とする分離装置の製造方法。
  24. 請求項22または23に記載の分離装置の製造方法において、前記基板上に試料の通る流路を設ける工程が、前記基板上に樹脂層を設ける工程と、該樹脂層に溝部を設ける工程とを含むことを特徴とする分離装置の製造方法。
  25. 請求項24に記載の分離装置の製造方法において、前記樹脂層が光硬化性樹脂からなることを特徴とする分離装置の製造方法。
  26. 一対の基板にそれぞれ流路となる溝部を設ける工程と、前記一対の基板にそれぞれ設けられた溝部同士の位置が合うように、前記一対の基板を、前記流路となる溝部が設けられた面同士で対向させ、かつ前記一対の基板の間に複数の凹部を有する板状部材を配置した状態で前記一対の基板と前記複数の凹部を有する板状部材とを接合することにより、前記板状部材により二層に分割された流路を設ける工程とを含む分離装置の製造方法。
  27. 請求項2に記載の分離装置の製造方法において、前記複数の凹部を有する板状部材が、複数の試料分離孔をさらに有することを特徴とする分離装置の製造方法。
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