JP3694630B2 - 光電気回路基板 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、光通信モジュール等に用いられる光電気回路基板に関し、より詳細には、電気回路基板上に光導波路が形成された光電気回路基板に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、光通信モジュール等には、例えばシリコン基板に配線導体を用いた電気回路と光導波路を用いた光回路とを形成した光電気回路基板に各種の光デバイスを搭載したものが使われている。また、シリコン基板よりも電気的な高周波特性や機械的強度に優れ、さらに多層化による高い電気配線密度が実現できるセラミック回路基板に光導波路を形成した光電気回路基板が提案されている。
【0003】
一方、光導波路としては、例えば石英ガラス基板やシリコン基板上に火炎堆積法により成膜したシリカ膜を利用して3次元形状のクラッド部およびコア部を形成したシリカ系光導波路や、ニオブ酸リチウム単結晶基板をクラッド部とし、この基板上にチタンを熱拡散して3次元導波路形状にコア部を形成した光導波路等がある。
【0004】
しかしながら、これらのシリカ系光導波路等を形成するには約1000℃以上の高温の熱処理が必要であるため、電気回路基板上にこれら光導波路による光回路を形成する際に下地となる電気回路基板に損傷を与えることとなってしまう。
【0005】
これに対し、作製時に高温処理が必要なこれら従来のシリカ系光導波路等に代えて、低温形成が可能な有機系光学材料による光導波路が検討されている。この光導波路に利用される有機系光学材料としては、PMMA(ポリメチルメタアクリレート)・ポリカーボネート・ポリイミド・ポリシロキサン・BCB(ベンゾシクロブテン)・フッ素樹脂等が検討されている。
【0006】
これら有機系光学材料から成る光導波路の作製方法としては、シリコン基板やガラス基板上に下部クラッド層を形成し、次に、この下部クラッド層よりも高い屈折率を持つコア層を形成して、薄膜微細加工技術を用いてコア層をRIE(リアクティブイオンエッチング)等により加工してコア部を形成した後、コア部よりも低い屈折率を有する上部クラッド層を被覆して3次元形状の光導波路を形成する方法が行なわれている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、有機系光学材料による光導波路をセラミック回路基板等の電気回路基板上に形成しようとする場合、光導波路用の有機系光学材料と電気回路基板の電気配線である金属等から成る配線導体との密着強度が低いため、光導波路の作製工程やその後のデバイス実装等の後工程において、光導波路用の有機系光学材料から成る下部クラッド層が電気回路基板の配線導体から剥がれたり、下部クラッド層にクラックが発生するという問題点があった。
【0008】
本発明は上記従来技術の問題点に鑑みて案出されたものであり、その目的は、電気回路基板の配線導体上に十分な密着強度で有機系光導波路を形成した光電気回路基板を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の光電気回路基板は、上面に配線導体が形成された電気回路基板上に、少なくとも前記配線導体の表面に酸化珪素または珪素から成る中間層を形成して、この中間層の上に水酸基またはアルキル基を有する有機系光学材料から成る層を下部クラッド層とした有機系光導波路を形成したことを特徴とするものである。
【0010】
また、本発明の光電気回路基板は、上記構成において、前記有機系光学材料がシロキサン系ポリマであることを特徴とするものである。
【0011】
本発明の光電気回路基板によれば、電気回路基板の配線導体上に、少なくともこの配線導体の表面に酸化珪素または珪素から成る中間層を形成して、この中間層の上に水酸基またはアルキル基を有する有機系光学材料から成る層を下部クラッド層とした有機系光導波路を形成したことから、酸化珪素または珪素から成る中間層が、配線導体上に例えばスパッタリング法や電子ビーム蒸着法・イオンビーム蒸着法・レーザアブレーション成膜法・CVD法等の周知の方法により形成されることにより、活性の高い状態で配線導体表面に中間層が形成されることによる化学的な結合が行なわれることや配線導体表面への成膜材料粒子の打ち込みによる物理的なアンカー効果が得られることで配線導体に対して十分な密着強度を有するとともに、中間層の表面終端の水酸基と光導波路の下部クラッド層の水酸基やアルキル基とが脱水重合や脱アルコール重合によって強固に結合することとなり、金属等から成る配線導体上にも十分な密着強度で有機系光導波路を形成した光電気回路基板を得ることができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の光電気回路基板について図面を参照しつつ説明する。
【0013】
図1は本発明の光導波路の実施の形態の一例を示す断面図である。図1において、1は基板、2は基板1の上面に形成された配線導体であり、これらにより電気回路基板が構成されている。3は中間層、4は光導波路の有機系光学材料から成る下部クラッド層、5は光導波路のコア部、6は光導波路の上部クラッド層である。
【0014】
基板1は電気回路および光回路を形成して電気回路基板を構成するための基板であり、光集積回路基板や光電子混在基板等の光信号を扱う基板として使用される種々の基板、例えばシリコン基板やアルミナ基板・ガラスセラミック基板・多層セラミック電気回路基板・薄膜多層電気回路が形成されたセラミック電気回路基板・プラスチック電気配線基板等が使用できる。
【0015】
配線導体2は、基板1の表面や内部において所定の電気回路を形成して電気回路基板を構成するものであり、AuやPt・Al・Cu・W・Ti・Mo・Cr・Ni等の周知の電気配線用導体材料を使用して形成すればよい。この配線導体2は、例えばスパッタリング法・電子ビーム蒸着法・イオンビーム蒸着法・レーザアブレーション成膜法・CVD法等を利用して導体層を形成した後、フォトリソグラフィ等の薄膜加工技術を用いて所望の配線パターンに加工すればよい。また、スクリーン印刷等による周知のセラミック基板へのメタライジング技術等を利用して所望の配線パターンに形成してもよい。
【0016】
中間層3は、基板1の上面の少なくとも配線導体2の表面に形成された、酸化珪素または珪素から成る層である。この中間層3の形成方法としては、スパッタリング法・電子ビーム蒸着法・イオンビーム蒸着法・レーザアブレーション成膜法・CVD法等を利用することができる。中でも、スパッタリング法やイオンビーム蒸着法は、配線導体2表面への成膜材料粒子の打ち込み効果が大きいので、アンカー効果によって中間層3と配線導体2との密着強度が大きくなることから好適である。
【0017】
本発明において中間層3として酸化珪素または珪素を用いるのは、中間層3とその上に形成する下部クラッド層4との密着強度を十分に大きくすることができるためである。その理由は、酸化珪素または珪素から成る中間層3の表面は水酸基で終端することができることと、有機系光学材料から成る下部クラッド層4に水酸基やアルキル基が含まれることから、中間層3の表面の水酸基と下部クラッド層4の水酸基やアルキル基とが脱水重合や脱アルコール重合によって強固に結合し、両層の間で大きな密着強度が得られるためである。
【0018】
なお、有機系光学材料から成る下部クラッド層4自体に水酸基やアルキル基が含まれない場合であっても、下地が酸化珪素または珪素であれば、周知のシラン系カップリング材を用いることによって中間層3との間に中間層3と結合する水酸基やアルキル基と、下部クラッド層4との密着強度が大きい有機官能基とを有するものとすることができて、大きな密着強度を得ることができる。このようなシラン系カップリング材としては、グリシドキシプロピルトリメトキシシラン・ヘキサメトキシジメチルシラザン・メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン・トリメトキシシリルプロピルエチレンジアミン等が使用できる。
【0019】
中間層3の厚さとしては、酸化珪素または珪素が数分子層あるいは数原子層あれば原理的に問題ないが、一般的に配線導体2の表面は下地となる基板1の表面粗さを反映するため、例えば基板1としてアルミナ基板や窒化アルミニウム基板を用いた場合には、配線導体2表面は10nm以上の表面粗さを有することになるので、中間層3による十分な被覆性を得るためには10nm以上の厚さとすることが好ましい。
【0020】
一方、酸化珪素または珪素をスパッタリング法・電子ビーム蒸着法・イオンビーム蒸着法・レーザアブレーション成膜法・CVD法等で成膜した場合は、膜応力が100MPa以上であることが普通であり、層の厚さが厚い場合には、膜応力によって基板を大きく反らせたり、基板表面から層が剥がれたり、クラックが生じたりする問題がある。これに対し、中間層3の厚さが500nm以下であれば、有機系光学材料から成る下部クラッド層4と同程度の膜応力に抑えることができるので、そのような問題が生じることはない。
【0021】
配線導体2表面を含む基板1上面に、少なくとも配線導体2と下部クラッド層4との間に中間層3を介在させて形成される光導波路は、下部クラッド層4および上部クラッド層6から成るクラッド部4・6中にコア部5が形成された三次元導波路形状の光導波路である。その形成材料としては、例えばポリイミド・フッ化ポリイミド・シロキサン系ポリマ・PMMA・オレフィン系樹脂等から成り、末端基として水酸基またはアルキル基を有している有機系の光学材料から成る光導波路を用いる。
【0022】
光導波路の作製方法としては、まず下部クラッド層4を形成する。これにはポリイミド・フッ化ポリイミド・シロキサン系ポリマ・PMMA・オレフィン系樹脂等の有機系光学材料の有機溶媒溶液を、中間層3が形成された基板1にスピンコート法等により所定厚みに塗布し、熱処理することにより形成する。
【0023】
コア部5は、下部クラッド層4上にポリイミド・フッ化ポリイミド・シロキサン系ポリマ・PMMA・オレフィン系樹脂等の有機系光学材料の有機溶媒溶液を下部クラッド層4が形成された基板1に例えばスピンコート法等により所定厚みに塗布し、熱処理することにより層形成した後、フォトリソグラフィやRIE等の周知の薄膜微細加工技術を用いて所定の形状で形成すればよい。ここで、コア部5は下部クラッド層4よりも高い屈折率を有する材料とする。
【0024】
上部クラッド層6は、コア部5を形成した後に、ポリイミド・フッ化ポリイミド・シロキサン系ポリマ・PMMA・オレフィン系樹脂等の有機系光学材料の有機溶媒溶液を下部クラッド層4およびコア部5が形成された基板1に例えばスピンコート法等により所定厚みに塗布し、熱処理することにより形成する。
【0025】
ここで、コア部5の高さや幅・屈折率、下部クラッド層4の厚さ・屈折率、上部クラッド層6の厚さ・屈折率は、周知の光導波路理論を用いて所望の仕様で設計すればよい。
【0026】
以上のようにして、埋め込み型の三次元導波路形状の光導波路を作製する。
【0027】
本発明の光電気回路基板において、下部クラッド層4を形成する有機系光学材料としてシロキサン系ポリマを用いた場合には、例えばシロキサン系ポリマの有機溶媒をスピンコート法等により基板1に塗布した後、100℃から300℃程度の低温熱処理によって下部クラッド層4を形成することができ、また、屈折率を制御するために金属アルコキシドを混合して金属を含有したシロキサン系ポリマを容易に作製することができ、それにより所望の屈折率に精度良く制御できるので、光導波路の作製が容易となる。さらに、層形成の際の収縮が小さいので、基板1表面に形成した層の表面の平坦化性・平滑化性に優れており、基板1として表面粗さが大きな基板1や配線導体2による大きな起伏がある電気回路基板を用いた場合でもその上にも精度良く光導波路を作製することができる。
【0028】
また、シロキサン系ポリマはシロキサン結合を有しているため優れた熱的安定性を有する光導波路を形成することができる。さらに、水酸基やアルキル基を末端基とすることが容易であり、中間層3上に下部クラッド層4となる膜を形成した場合に、中間層3の表面の水酸基との脱水重合や脱アルコール重合によって中間層3との大きな密着強度が得られる。
【0029】
このような光導波路のクラッド部4・6およびコア部5に用いるシロキサン系ポリマとしては、基本的にポリマの骨格にシロキサン結合が含まれている樹脂であればよく、例えばポリフェニルシルセスキオキサン・ポリジフェニルシルセスキオキサン・ポリメチルフェニルシルセスキオキサン等を用いることができる。
【0030】
【実施例】
次に、本発明の光電気回路基板について具体例を説明する。
【0031】
<実施例1>
まず、Ti/Pt/Auの3層構造を有する最表面がAuから成る配線導体2を形成した窒化アルミニウムから成る基板1上の全面に、スパッタリング法を用いて厚さ10nmの酸化珪素層から成る中間層3を形成した。次に、クラッド部4・6がシロキサン系ポリマ、コア部5がチタン含有シロキサン系ポリマから成るステップインデックス型光導波路を形成した。このときコア部5およびクラッド部の屈折率をそれぞれ1.444および1.440として、コア部5の幅を8μm、高さを8μmとし、コア部5の上部の上部クラッド層6の厚さを4μmとした。また、基板1とコア部5との間の下部クラッド層4の厚さは12μmとした。
【0032】
このとき、作製中に光導波路層の剥がれやクラックの発生は見られなかった。また、光導波路形成後のダイシングによるチップ切り分けにおいても光導波路層の剥がれの発生は見られなかった。さらに、光導波路の導波路特性にも何ら問題は見られなかった。
【0033】
<実施例2>
本発明との比較のため、Ti/Pt/Auの3層構造を有する最表面がAuから成る配線導体を形成した窒化アルミニウム基板上に、クラッド部がシロキサン系ポリマ、コア部がチタン含有シロキサン系ポリマから成るステップインデックス型光導波路を形成した。このとき、実施例1と同様に、コア部およびクラッド部の屈折率をそれぞれ1.444および1.440として、コア部の幅を8μm、高さを8μmとし、コア部の上部の上部クラッド層の厚さを4μmとした。また、基板とコア部との間の下部クラッド層の厚さは12μmとした。
【0034】
中間層を形成しない本実施例の場合では、作製中に配線導体の部分において光導波路層の剥がれやクラックが見られた。
【0035】
以上のように、本発明によれば、電気回路基板の配線導体上にも十分な密着強度で有機系光導波路を形成した光電気回路基板を提供できることが確認できた。
【0036】
なお、本発明は以上の実施の形態の例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更・改良を加えることは何ら差し支えない。
【0037】
【発明の効果】
以上のように、本発明の光電気回路基板によれば、上面に配線導体が形成された電気回路基板上に、少なくとも配線導体の表面に酸化珪素または珪素から成る中間層を形成して、この中間層の上に水酸基またはアルキル基を有する有機系光学材料から成る層を下部クラッド層とした有機系光導波路を形成したことから、酸化珪素または珪素から成る中間層が、配線導体上に例えばスパッタリング法や電子ビーム蒸着法・イオンビーム蒸着法・レーザアブレーション成膜法・CVD法等の周知の方法により形成されることにより、活性の高い状態で配線導体表面に中間層が形成されることによる化学的な結合が行なわれることや配線導体表面への成膜材料粒子の打ち込みによる物理的なアンカー効果が得られることで配線導体に対して十分な密着強度を有するとともに、中間層の表面終端の水酸基と光導波路の下部クラッド層の水酸基やアルキル基とが脱水重合や脱アルコール重合によって強固に結合する。この結果、金属等から成る配線導体上にも十分な密着強度で有機系光導波路を形成した光電気回路基板を得ることができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の光電気回路基板の実施の形態の一例を示す断面図である。
【符号の説明】
1・・・基板
2・・・配線導体
3・・・中間層
4・・・光導波路の下部クラッド層(クラッド部)
5・・・光導波路のコア部
6・・・光導波路の上部クラッド層(クラッド部)
Claims (2)
- 上面に配線導体が形成された電気回路基板上に、少なくとも前記配線導体の表面に酸化珪素または珪素から成る中間層を形成して、該中間層の上に水酸基またはアルキル基を有する有機系光学材料から成る層を下部クラッド層とした光導波路を形成したことを特徴とする光電気回路基板。
- 前記有機系光学材料がシロキサン系ポリマであることを特徴とする請求項1記載の光電気回路基板。
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