JP3694044B2 - アクリジニウム誘導体の発光方法及びその方法を用いた検査対象物質の検出方法 - Google Patents
アクリジニウム誘導体の発光方法及びその方法を用いた検査対象物質の検出方法 Download PDFInfo
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、アクリジニウム誘導体の発光方法、及びその発光方法を用いた検査対象物質の検出方法にも関する。
【0002】
【従来の技術】
診断や医療技術の進歩に伴い、各種疾病の早期発見や治療効果の確認のために、血清などの生体試料中に極微量で含まれる特定物質の検出法が求められ、種々の方法が開発されてきた。その中で特に化学発光法は、高感度であることから特に注目され、近年ますます拡大しつつある。化学発光法に実際に使用されている化学発光物質は、ルミノール、アクリジニウム誘導体又はアダマンタン化合物(PPD又はAMPPD)等であるが、なかでもアクリジニウム誘導体は、ウッドヘッド等が免疫測定に応用してから、その高感度性から特に注目されてきた(Clin.Chem.,29,1474-1479,1983)。
【0003】
アクリジニウム誘導体を用いて特定物質を検出する従来の方法では、アクリジニウム誘導体を標識物質として用いる。例えば、サンドイッチ法と呼ばれる免疫測定の場合では、まず、ポリスチレンなどの不溶性担体に固定化した特定物質に対する抗体に試料を接触させると、試料中に含まれる特定物質が、抗体との親和力により上記不溶性担体上に結合する。次に、特定物質に対する抗体にアクリジニウム誘導体を化学的に結合した標識抗体を、先の不溶性担体に接触させる。この操作により、標識抗体は、不溶性担体上に結合している特定物質の量に相関した量で不溶性担体上に結合する。次に、不溶性担体上に結合していない過剰の標識抗体を洗浄操作等により分離してから化学発光測定を行う。アクリジニウム誘導体は、強アルカリ条件下にて過酸化水素と反応させると強く発光する。従って、化学発光を誘発する試薬としては、通常、水酸化ナトリウムと過酸化水素の水溶液が使われる。このような化学発光を誘発する試薬を、先の不溶性担体上に結合している標識抗体に接触させ、アクリジニウム誘導体を化学反応により発光させる。この際の発光強度は、試料中の特定物質濃度に相関しているので、発光強度をフォトンカウンタ等により測定することで、試料中の特定物質濃度を求めることができる。
【0004】
このような一連の操作により、試料中の特定物質を高感度に検出することができるようになってきた。高感度化が可能になった理由は、モノクローナル抗体等の高性能な抗体の出現などだけでなく、やはり、アクリジニウム誘導体という量子収率の高い発光物質が、特に貢献しているは明らかである。しかしながら、このようなアクリジニウム誘導体を用いた方法にも幾つか問題点があり、その改善が求められている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
第1の問題点は、アクリジニウム誘導体の安定性である。アクリジニウム誘導体は、酸性条件下では長期間安定に保存することができるが、中性以上の条件下に晒されると偽塩基が形成され、この偽塩基となったアクリジニウム誘導体は、化学発光誘発試薬を接触させても発光不能になることが知られている(I.Weeks,I.Beheshti,F.McCapra,A.K.Campbell,and J.S.Woodhead,Clin.Chem.,29,1474-1479,1983; J.S.Littig and T.A.Nieman,J.Biolumin.Chemilumin.,8,25-31,1993)。
【0006】
一方、試料中の検査対象である特定物質と、アクリジニウム誘導体で標識した抗体等とを接触させ、効率よく特定物質を捕捉するためには、前記の接触を中性条件下にて行う必要がある。またアクリジニウム誘導体で標識される物質が、抗体のようなタンパク質であれば、その保存条件は中性条件であることが望ましい。しかし、アクリジニウム誘導体を標識物質として用いる場合には、前記のような中性条件がことのほか不都合となる。この対策として、アクリジニウム誘導体の偽塩基形成が、溶液のpHに依存して可逆的に変化する性質、すなわち、中性条件に晒されて偽塩基を形成しても、酸性に戻せばもとのアクリジニウム誘導体に戻る性質を利用する。具体的には、アクリジニウム誘導体を標識物質として用いて特定物質の検出を実施する際には、アクリジニウム誘導体で標識した抗体等によって試料中の特定物質を中性条件下にて捕捉した後、塩酸や硝酸などの酸を添加して酸性にし、一定時間保持してから化学発光操作を行うのが一般的になっている。
しかし、前記の方法は操作が煩雑になるだけでなく、アクリジニウム誘導体の偽塩基が酸によって完全にもとの状態に戻るわけではないので、本来の化学発光量を得ることはできない。更に、アクリジニウム誘導体で標識した抗体等の溶液を中性条件下で保存しておく過程で、アクリジニウム誘導体の一部は、暗反応によって分解してしまう(特開昭63−101368号、特開平1−261461号及び特開平6−9566号各公報)。従って、常に安定した結果を得ることは困難である。
【0007】
アクリジニウム誘導体の第2の問題点は、発光時間が非常に短い点である。化学発光誘発剤を添加してから1秒以内に発光のピークを迎え、その後急速に発光強度が低下し、数秒間で完結する。このような発光特性であるために、化学発光誘発剤を一定量添加すると同時に、発光強度を測定する必要がある。従って、発光強度を測定する装置は、完全自動装置であるか簡単な半自動装置であるかを問わず複雑になってしまう。その理由は、測定装置において、化学発光誘発剤を一定量添加する工程を行う部分は、装置のメンテナンスのために、オープンな構造とする必要があるのに対し、一方、発光強度を測定する工程を行う部分は、完全密閉され暗室化されていなければならない、という相反する問題を解決する必要があるからである。仮に発光時間がある程度長ければ、測定装置における化学発光誘発剤の添加工程と、発光強度測定工程との間に時間的及び空間的余裕が生まれることから、測定装置の設計に自由度が増し、より安価で信頼性の高い装置を供給することができるのである。
【0008】
このような状況を鑑みて、本発明者らは、アクリジニウム誘導体を用いた特定物質の検出法について鋭意研究を行った結果、アスコルビン酸を用いると、アクリジニウム誘導体を中性からアルカリ性条件下にて強く発光させることができることを見出し、更に、この現象を用いて特定物質を検出することもできることを見出した。本発明は、こうした知見に基づくものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
従って、本発明は、アクリジン環の9位に−C(=O)−基を介して置換基を有するアクリジニウム誘導体の発光方法において、アスコルビン酸を化学発光誘発剤として用いる(但し、水混和性アルコールが存在する場合を除く)ことを特徴とする、アクリジニウム誘導体の発光方法に関する。更に、本発明は、標識からの信号を検出することを用いて被検試料中の検査対象物質を検出する方法において、前記の発光方法によって得られる発光を標識からの信号とすることを特徴とする、検査対象物質の検出方法にも関する。
【0010】
以下、本発明を詳述する。
本発明で用いられるアクリジニウム誘導体は、アクリジン環の環窒素原子が4級化して対イオンを有しており、しかもアクリジン環の9位に−C(=O)−基を介して置換基を有し、そして、場合により1〜8位が1個又はそれ以上の置換基によって置換されていることのある化合物、即ち、以下の一般式(1):
【化1】
(式中、nは、0又は1〜8の整数であり、R1 、R2 及びR3 はそれぞれ独立に置換基であり、X- は対イオンである)
で表される化合物である。
【0011】
前記の一般式(1)で表されるアクリジニウム誘導体は、例えば、EP公開第830629号、特開昭63−57572号、特開昭63−101368号及び特開昭63−112564号各公報に記載されているとおり、化学発光物質として既に公知であり、これらのアクリジニウム誘導体を本発明方法でも用いることができる。具体的には、9−フェノキシカルボニル−10−メチルアクリジニウムフルオロスルホネート、2’,6’−ジメチルフェニル−10−メチルアクリジニウム−9−カルボキシレートフルオロスルホネート、2’,4’,6’−トリクロロフェニル−10−メチルアクリジニウム−9−カルボキシレートフルオロスルホネート、9−クロロカルボニル−10−メチルアクリジニウムクロライド、又は10−(3−スルホプロピル)−N−トシル−N−(3−スルホプロピル)−9−アクリジニウムカルボキサミド等を挙げることができる。
【0012】
従来の発光方法では、前述の通り、アクリジニウム誘導体を強アルカリ条件下に置き、そこに化学発光誘発剤としての過酸化水素を作用させることで強く発光させる。これに対して、本発明方法は、アクリジニウム誘導体に対する化学発光誘発剤としてアスコルビン酸を使用し、しかも前記化学発光誘発剤を中性からアルカリ性条件下で作用させることができ、従来は全く知られていなかった新規な方法である。本発明方法による発光反応の機構はまだ明らかではないので、本明細書において用いる「化学発光誘発剤」とは、従来の過酸化水素と同様の発光反応の機構を示すものに限定されるものではなく、アクリジニウム誘導体が存在する溶液中に本発明の化学発光誘発剤・アスコルビン酸が同時に存在して、その結果としてアクリジニウム誘導体が化学発光を起こせばよい。従って、アスコルビン酸がアクリジニウム誘導体と直接的に化学反応を起こして、発光する場合だけに限定されるものではなく、例えば溶液中に存在する溶存酸素に作用し、その溶存酸素を介して発光反応が進行していることも考えられ、この場合を排除するものではない。
【0013】
本発明方法では、中性からアルカリ性条件下で化学発光誘発剤・アスコルビン酸を作用させ、アクリジニウム誘導体を発光させることができる。ここで、中性からアルカリ性条件下とは、通常、pH6〜13を意味し、好ましくはpH6.5〜13、更に好ましくはpH7〜12である。pH6未満になると、発光強度が低下して検出が事実上困難となる。また、pHが13を越えると、アクリジニウム誘導体の偽塩基形成速度が速くなり、発光時間の短縮と発光強度の低下をもたらす。なお、酵素を用いる場合には、その酵素活性を発現できるpH11以下が好ましい。
【0014】
本発明方法では、化学発光誘発剤としてのアスコルビン酸又はその塩(例えば、アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩)をそのまま発光反応系に添加してもよいが、好ましくは、酵素反応を利用して、反応系内でアスコルビン酸又はその塩(例えば、アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩)を誘導する。酵素反応としては、アスコルビン酸又はその塩を誘導する酵素と基質との任意の組み合わせを用いることができるが、例えば、酵素アルカリホスファターゼに、基質としてのアスコルビン酸リン酸エステルを作用させると、酵素反応によってアスコルビン酸が生成される。
【0015】
本発明で用いることのできるアルカリホスファターゼは、中性からアルカリ性に至適pHがあれば、酵素の由来は問わないが、特に好ましくは、仔ウシ腸由来のアルカリホスファターゼである。
本発明で用いることのできるアルカリホスファターゼの基質としては、アスコルビン酸−2−リン酸エステル又はアスコルビン酸−3−リン酸エステル、あるいはそれらのアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩を挙げることができ、それら化合物の1種又はそれ以上を組み合わせて用いることができる。
【0016】
本発明方法によれば、アルカリ性ホスファターゼとその基質(例えば、アスコルビン酸リン酸エステル)との酵素反応によってアスコルビン酸を生成させてからアクリジニウム誘導体を接触させることができるので、アクリジニウム誘導体を、発光反応の直前まで酸性溶液として保存することが可能となる。
【0017】
本発明の前記発光方法を利用すると、例えば、生体試料中に存在する特定の微量成分の検出法において、標準物質に付した標識からの信号の検出を効率よく実施することができる。
標識を用いる特定物質の検出方法においては、被検試料中に存在する検査対象物質に対して種々の標準物質を用い、その標準物質に標識を付け、検査対象物質と標準物質とが参加する各種の反応の後に、標識からの信号を検出して、検査対象物質の検出を行う。
【0018】
すなわち、検査対象物質を含有する被検試料と、その検査対象物質に親和性を有し検査対象物質と複合体を形成することのできる標準物質を用いる場合、被験試料と過剰量の標準物質とを接触させることにより、検査対象物質と標準物質は、一定比率で複合体を形成する。ここで形成された複合体量は、標準物質が過剰量であることから、被検試料に含まれている検査対象物質量に相関している。従って、形成された複合体量が分かれば、被検試料中の検査対象物質量又は濃度を求めることができる。複合体量を求める方法は、形成された複合体を必要により既知の方法で分離し、その複合体の標準物質に付いている標識が発生する信号の強度、すなわち、標識に由来する化学発光の発光強度を測定することにより、検査対象物質の検出が達成される。
【0019】
また、検査対象物質と化学的あるいは免疫学的に同一又は類似の標準物質を用いる場合、検査対象物質及び標準物質双方に親和性が有り、複合体を形成することのできる第3の物質が参加する反応を利用することができる。この場合には、被検試料と一定量の標準物質及び第3の物質をそれぞれ接触させる。この工程により、検査対象物質と第3の物質、標準物質と第3の物質の複合体形成反応が競合し、被検試料中に含有される検査対象物質の量に相関して、標準物質と第3の物質とから形成される複合体の量は減少する。従って、この標準物質と第3の物質とから形成される複合体の量が分かれば、検査対象物質中の検査対象物質量又は濃度を求めることができる。複合体量を求める方法は、前記方法と同様に、標準物質に付いている標識に由来した化学発光の発光強度を測定すればよい。
【0020】
本発明による検出方法では、前記発光系に関与する化合物の1種を前記の標識として使用する。例えば、アクリジニウム誘導体、アスコルビン酸、基質と反応してアスコルビン酸を生成する酵素、又は酵素と反応してアスコルビン酸を生成する基質を標識として用いることができる。標識物質の選択は、試薬の保存条件、被検試料と標識化標準物質との接触工程の条件、発光反応の条件などを考慮して適切に行うことができる。
標識として酵素を用いると、酵素による増幅効果が得られ、高感度検出が可能になる点で有利である。従って、本発明による検出方法では、特にアルカリホスファターゼを標識物質として用い、酵素反応を介してアスコルビン酸を誘導してアクリジニウム誘導体を発光させ、検査対象物質の検出を実施するのが好ましい。
【0021】
検査対象物質が含まれる被検試料は、限定されるものではないが、特には生体試料、例えば、血液、血清、血漿、尿、唾液又は髄液や、細胞又は組織抽出物等を挙げることができる。
検査対象物質も限定されるものではないが、例えば、各種タンパク質、多糖類、脂質又は核酸を挙げることができ、より具体的には、フィブリノーゲン、アルブミン、AFP、CRP、HBS 抗体、HBC 抗体、HIV抗体、HTLV抗体、ホルモン等や、抗てんかん薬及びジゴキシン等の各種薬剤等を挙げることができる。また、検査対象物質の核酸には、特定の塩基配列を有するDNA断片なども含まれる。また、標識、例えば、アルカリホスファターゼを付ける被標識物質としては、検査対象物質に対する抗体、検査対象物質、相補的DNAなどである。
【0022】
本発明による検出方法を用いて、アルカリホスファターゼを標識とし、免疫学的方法により血清試料中のタンパク質を検出する場合について以下に説明する。この場合、検査対象物質のタンパク質を特異的に認識する抗体に、アルカリホスファターゼを既知の方法にて標識し、その標識抗体と血清中の目的タンパク質との間で抗原抗体反応を行わせ、必要に応じてB/F分離により未反応の標識抗体を除去し、続いて、例えば、以下の2通りの方法によって発光工程を実施することができる。
【0023】
1つの方法は、酵素反応と発光反応をワンステップで行う方法である。アルカリホスファターゼの基質としてアスコルビン酸のリン酸エステルを加え、アルカリホスファターゼの至適pHであるpH10近辺で酵素反応を行う、それと同時に、酸性条件下で保存してあったアクリジニウム誘導体を添加し、酵素反応によって生成するアスコルビン酸と接触させることで発光を生じさせる。これによって生じた発光は、従来法によるアクリジニウム誘導体の発光よりも、はるかに長い時間発光するので、従来のような特別に準備された装置を用いなくても、容易にその発光強度を測定することができる。
【0024】
もう1つの方法は、酵素反応と発光反応をツーステップで行う方法である。アスコルビン酸のリン酸エステルを加え、pH10近辺で酵素反応を一定時間行い、次に酵素反応を停止するための試薬、例えば、pH7のリン酸緩衝液を添加して酵素反応を停止する。そして、酸性条件下で保存してあったアクリジニウム誘導体を添加して、pH7の条件下で発光させる。このとき生じる発光の強度は、前記のワンスッテップ法と比較して数千分の一となるが、S/N比は前記方法と同等かそれ以上であり、また、発光時間は更に長時間となるため、血清中の目的とするタンパク質を高感度に検出することができる。
【0025】
ここで挙げた、本発明の応用例は一部の例であって、例えば、アクリジニウム誘導体とアスコルビン酸が接触して発光する際のpHは、その発光強度が最低限確保できるpH6から、アルカリホスファターゼが酵素活性を発現できるpH11までの範囲であれば、本発明は実施可能である。
更に本発明によれば、前記抗体を用いた免疫学的検出法だけではなく、核酸に対しても、その核酸と相補的な核酸との親和性を利用し、目的の核酸を検出することができる。
【0026】
本発明方法によれば、従来法のようにアクリジニウム誘導体を標識物質として使用するのではなく、標識物質として、アルカリ性ホスファターゼやその基質としてアスコルビン酸のリン酸エステルを用い、酵素反応によってアスコルビン酸を生成させてからアクリジニウム誘導体を接触させることができるので、免疫反応系にアクリジニウム誘導体を存在させる必要がなくなる。従って、アクリジニウム誘導体を、発光反応の直前まで酸性溶液として保存することが可能となる。更に、長時間の発光も可能となるため、従来法における種々の問題点を一挙に解消することができる。
【0027】
【実施例】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
実施例1:ワンステップ法による発光反応の発光パターン
仔ウシ腸由来のアルカリホスファターゼ溶液10μl(7×10-14 mol)に、10mMの炭酸ナトリウム緩衝液(pH10)で調製した、10mMのアスコルビン酸−2−リン酸のマグネシウム塩、及びアスコルビン酸−3−リン酸のマグネシウム塩の約1:1の混合物の溶液90μlと、塩酸でpH4に調整した、25μMの9−フェノキシカルボニル−10−メチルアクリジニウムフルオロスルホネート(PMA)50μlを、それぞれ加え、フォトンカウンタにて経過時間に対する発光強度を測定し、発光パターンを得た。その結果を図1と図2に示す。
【0028】
図1及び図2(更に後記図3)で、AP(+)は、アルカリホスファターゼ存在の場合、AP(−)は、アルカリホスファターゼ不存在の場合の結果を示す。図1から明らかなように、本発明方法によって発光時間が長くなり、また十分なS/N比が得られることがわかる。図2は、図1の発光初期部分の拡大図である。この図から発光の初期段階では、発光強度が直線的に増加することがわかる。従って、この直線部分の傾きを求めることにより、精度の高い測定が可能となる。
【0029】
実施例2:ツーステップ法による発光反応の発光パターン
実施例1と同量のアルカリホスファターゼに、実施例1と同様にアスコルビン酸のリン酸エステルを加え、15分間酵素反応を行った。次に0.5Mのリン酸緩衝液(pH7)100μlを加え、酵素反応を停止した。この反応溶液の100μlに、実施例1と同じアクリジニウム誘導体80μlを加え、直ちに、発光強度を測定し発光パターンを得た。その結果を図3に示す。
図3における縦軸の単位は、図1の縦軸の単位の1/1000に相当している。図3からわかるように、更に長時間安定した発光が得られた。
【0030】
実施例3:AFP(α−フェトプロテイン)の検出
96穴のマイクロプレートに、抗AFP抗体の希釈液100μlを分注し、4℃で17時間放置することにより、抗AFP抗体をマイクロプレートに吸着固定した。次に、マイクロプレートをTBSBT(0.05%−BSA,0.5ml/リットルのTween20,及び8.77g/リットルのNaClを含むトリス塩酸緩衝液)で3回洗浄し、未吸着の抗AFP抗体を取り除いた。このマイクロプレートに、トリス塩酸緩衝液にて調製した1%BSA溶液200μlを分注し、室温で2時間放置してブロッキングを行った。TBSBTで3回洗浄し、未吸着のBSAを取り除いた。
それぞれの濃度に希釈したAFPの標準溶液を、マイクロプレートに分注して、室温にて2時間抗原抗体反応を行った。TBSBTで3回洗浄してから、アルカリホスファターゼで標識した抗AFP抗体溶液を100μl分注し、室温にて30分間反応させた。TBSBTで5回洗浄し、未反応の標識抗体を取り除いた。次に酵素の基質として、実施例1及び2で用いた、アスコルビン酸のリン酸エステル溶液100μlを分注し、15分間酵素反応を行った。次に、0.5Mのリン酸緩衝液(pH7)100μlを分注して酵素反応を停止した。この反応溶液100μlを発光測定用容器に入れ、実施例1及び2で用いたアクリジニウム誘導体の溶液80μlを注入し、90秒後の発光強度を測定した。
この一連の操作で得られたAFPの検出曲線を、図4に示した。図4において実線と・(−・−)はAFPの検出曲線であり、破線(−−−)はAFP0g/mlの際の発光強度の平均値+3SDを示す。この実施例では、5ピコグラム/mlの濃度のAFPまで検出することが可能であった。
【0031】
【発明の効果】
本発明の発光方法によれば、アスコルビン酸を化学発光誘発剤として用いることにより、中性からアルカリ性条件下でアクリジニウム誘導体を発光させることができ、従来法の問題点を一挙に解決することができる。同時に発光強度は強くなり、また、発光時間も延長させることが可能となり、高精度に検査対象物質を検出することができる。この発光方法を応用して検査対象物質の検出を行うことで、例えば、アルカリホスファターゼを標識物質として用い、中性からアルカリ性条件下で不安定なアクリジニウム誘導体は、発光反応直前まで酸性条件下にて保存可能となった。また従来法よりも著しく発光時間が長いため、発光測定装置の構成の自由度が高くなるばかりでなく、より正確で高精度の検出方法を提供することができる。本発明により、化学発光分析法、例えばCLEIA(ケミルミネッセントエンザイムイムノアッセイ)等の酵素を標識物質として用い、その酵素活性を化学発光法により測定することで、試料中の検査対象物質を検出する方法において、化学発光物質としてアクリジニウム誘導体を用いた検査対象物質の検出方法に極めて有効な手段を提供するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】アルカリ性ホスファターゼの酵素反応とアクリジニウム誘導体の発光反応を、ワンステップで行った場合の発光パターンを示すグラフである。
【図2】図1の初期段階の拡大図である。
【図3】アルカリ性ホスファターゼの酵素反応とアクリジニウム誘導体の発光反応を、ツーステップで行った場合の発光パターンを示すグラフである。
【図4】アルカリ性ホスファターゼで標識した抗AFP抗体を用いて、AFPを検出した場合の検量線である。
Claims (6)
- アクリジン環の9位に−C(=O)−基を介して置換基を有するアクリジニウム誘導体の発光方法において、アスコルビン酸を化学発光誘発剤として用いる(但し、水混和性アルコールが存在する場合を除く)ことを特徴とする、アクリジニウム誘導体の発光方法。
- 酵素反応により生成するアスコルビン酸を用いる、請求項1に記載の方法。
- アスコルビン酸リン酸エステルとアルカリホスファターゼとの酵素反応により生成するアスコルビン酸を用いる、請求項2に記載の方法。
- 標識からの信号を検出することを用いて被検試料中の検査対象物質を検出する方法において、請求項1〜3のいずれか一項に記載の発光方法によって得られる発光を標識からの信号とすることを特徴とする、検査対象物質の検出方法。
- 検査対象物質を検出する方法が免疫学的反応である、請求項4に記載の方法。
- 基質と反応してアスコルビン酸を生成する酵素を標識として用いる、請求項4に記載の方法。
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