JP3693391B2 - α1−アンチキモトリプシンの調製 - Google Patents

α1−アンチキモトリプシンの調製 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本開示は一般的にはヒト血液血漿タンパク質の調製に関し、そしてより詳細にはヒト血漿から得たコーンIV−1画分(Fraction Cohn IV-1)ペースト懸濁物中に見られるようなACT、アルファ1−プロティナーゼインヒビター(PI)およびアンチトロンビンIII(AT−III)の混合物からアルファ1−アンチキモトリプシン(ACT)の調製に関する。
【0002】
【従来の技術】
第二次世界大戦前に、科学者および医者はヒト血漿が血液交換治療に使用できることを発見した。大戦中、戦争の打撃から全血および血漿の供給および保存は困難で、可能なかぎりの効果的処置を施すことができなかった。戦場で保存および使用できる血漿タンパク質の必要性から、コーンおよび他者(米国特許第2,390,074号明細書(1945)およびJ.Amer.Chem.Soc.,68;p459(1946))は、水−溶解性有機溶媒または中性塩の存在下で血漿中に存在するタンパク質を選択的な沈殿法により分画することができた。血漿分画法については“血漿タンパク質(Plasma Proteins)第2版、第III巻、第548-550頁、アカデミック出版、ニューヨーク、N.Y.(1977)を参照にされたい。次に濃縮されたタンパク質混合物を必要な患者に導入することができた。もし過剰な出血が問題であれば、医師はフィブリノーゲンの濃度が高い画分を注入することができた。もし患者が赤血球細胞が過剰に損失している火傷または他の外傷にかかっているならば、医師は血漿のコロイド−浸透性調節物質であるアルブミンを使用することができた。
【0003】
コーン画分ではタンパク質を選択的に沈殿させるためにエタノールを血漿に加え、そして零下の温度でpHを下げる。沈殿が上清と分離した後、別の画分を沈殿させるために上清のpHを下げ、かつ/またはさらにアルコールを加える。
【0004】
今日、この分画方法はある種の治療的特性を有する生物学的に活性なタンパク質を分離するために未だに使用されている。例えば第VIII因子または抗−血友病因子は血友病に有用であり、プラスミンの前駆体であるプラスミノーゲンは急性の血栓塞栓症の治療に使用され、免疫血清グロブリンおよび静脈ガンマグロブリンを含むガンマグロブリンは、先天的なガンマグロブリン欠損症、麻疹、灰白髄炎、ならびにAおよびB型肝炎の治療に使用され、フィブロネクチンは火傷、ショック、癌等の治療に有効であると確認され、アンチ−トロンビンIIIは凝固阻害物質であり、寒冷沈殿物はそれ自体が古典的な血友病に直接使用でき、血漿タンパク質画分およびアルブミンは火傷、挫傷、急性腹症および主に血漿液の損失を引き起こすが赤血球細胞は損失しない他の外傷に起因するショックの治療に有用であり、そしてα1-プロティナーゼインヒビターは気腫の治療に使用することができる。
【0005】
ヒトα1-アンチキモトリプシン(ACT)はこれまでヒト血漿または血清から単離されているだけのセリンプロテアーゼインヒビターである。ACTの正確な生物学的機能は明確にされていないが多機能性タンパク質のようであり、様々なその治療用の使用が提案されてきた(J.Lezdeyらの米国特許第5,008,242号明細書を参照にされたい)。
【0006】
ACTの重要な機能はキモトリプシン−様プロテアーゼ、マスト細胞カイメース、白血球カテプシンG(Beatty,K.,Bieth,J.,Travis,J.:セリンプロティナーゼと天然および酸化α1-プロティナーゼインヒビターならびにα1-アンチキモトリプシンとの会合のキネティック(Kinetic of association of serine proteinases with native and oxidized α1-proteinase inhibitor and α1-antichymotrypsin),J.Biol.Chem.1980;255-3931-3934を参照にされたい)、および膵臓エラスターゼ(Laine,A.,Davril,M.Rabaud,M.ら:ヒト血清α1-アンチキモトリプシンは膵臓エラスターゼのインヒビターである(Human serum α1-antichymotrypsin is an inhibitor of pancreatic elastases),Eur.J.Biochem.1985;151:327-331およびDavril,M.Laine,A.,Hayem,A.:ヒト膵臓エラスターゼ2とヒトα1-プロティナーゼインヒビターおよびα1-アンチキモトリプシンとの相互作用に関する研究(Studies on the interactions of human pancreatic elastase 2 with humanα1-proteinase inhibitor and α1-antichymotrypsin),Biochem.J.1987;245:699-704を参照にされたい)のようなプロテアーゼのインヒビターであるということを指示する証拠がある。
【0007】
タンパク質のタンパク質溶解−特性を示すACTの完全な、固く、そして複合した状態の生物的特性は、感染症、膵炎、肺疾患および皮膚の炎症を制御する治療的使用に重要な役割をもつかもしれない(Rubin,H.:アンチキモトリプシンの生物学および生化学ならびにその治療薬として可能な役割(The biology and biochemistry of antichymotrypsin and its potential roles as a therapeutic agent,Biol.Chem.Hoppe-Sayler 1992;373(7):497-502を参照にされたい)。
J.TravisらはACTをヒト血漿プールから均一に精製した(Travis,J.Garner,D.,Bowen,J.:ヒトα1-アンチキモトリプシン:精製および特性(Human α1-antichymotrypsin:purification and properties,Biochemistry 1978;17:5647-5651)。
【0008】
T.Katsunumaおよび共同研究者は腫瘍マーカーになると思われるDNA-結合タンパク質を均一に精製した(Katsunuma,T.ら;分子量64,000をもつ血清DNA結合タンパク質(64DP)およびその悪性疾患における診断的重要性(Purification of a serum DNA binding protein(64DP) with a molecular weight of 64,000 and its diagnostic signufucance in malignant diseases)、Biochem.and Biophys.Res.Comm.,93(2):552-557(1980))。後にDNA-結合タンパク質はACTであることが判明した。Katsunumaはヒト血清を出発物質として使用した。彼らは始めに64DPをDEAE Sephadexから225mM NaClで溶出した。透析後、この64DPをさらにDNAセルロースで精製した。最後に均一にするために、64DPを硫酸アンモニウムで沈殿させ、そして混入タンパク質からサイズ排除カラムで分離した。
【0009】
全血漿からの単離に加え、ヒトACTをクローン化し、配列決定し、そして大腸菌で発現させた(Rubin,H.ら、:組換え天然および変異体ヒトアンチキモトリプシンのクローニング、発現、精製および生物的活性(Cloning,expression purification and biological activity of recombinant native and variant human antichymotrypsins,J.Biol.Chem.1990;265:1199-1207を参照にされたい)。RubinらはSepharose Fast Qカラムを使用して粗細菌溶解物からACT活性を分離した。この部分精製ACTを次にDNAセルロースに吸着させ、そして350-400mM KClで溶出した。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
ACTの潜在的な利用性から、今では大量のACTをヒト血漿、特にPIおよびAT−III量が変化する血漿画分から、より効率よく調製する方法が必要とされている。
予期せずに、ACTがコーンIV−1画分から精製できることが分かった。IV−1画分は多くの様々なタンパク質を含み、そして分離が困難なのでこの血漿画分の商業的使用は妨げられて来た。したがってACTを単離することにより、この十分に利用されていない、そして通常は廃棄される血漿画分が有利に使用されるだろう。
【0011】
【課題を解決するための手段】
ヒト血清と比較してコーンIV−1画分ペーストは、PIおよびAT−IIIのようなより高濃度のタンパク質を含み、これらはACTに緊密に関連しており、ACTと一緒に精製されるものと期待される。IV−1ペーストの分画工程中で、ACTはわずか1−2倍に濃縮されただけであるが、一方PIは3−10倍、そしてAT−IIIは2−3倍濃縮される。IV−1ペースト中のタンパク質の濃度は30mgPI/gペースト、5mgAT−III/gペースト、そして5-10mgACT/gペーストである。これらの他のタンパク質からACTを分離する難しさ、そしてACTが少量成分であることを考慮すると、IV−1画分ペーストがACTの適当な源であるとは考えられないだろう。驚くべきことには2-3gのACTを90%以上の純度で、約2.9kgのIV−1ペーストからKatsunumaらの方法を変更して使用して単離できた。
【0012】
ACTのインビトロのセリンプロテアーゼインヒビターとして実証された使用に加えて(例えばPI研究の試薬として使用できる)、どのようにACTを治療目的に使用できるかを提案した。その考察を以下に詳細に記載する。
【0013】
アルファ1−プロティナーゼインヒビター(PI)およびアンチトロンビンIII(AT−III)をも含む溶液からヒトアルファ−1−アンチキモトリプシン(ACT)を調製する方法は次の工程を含んで成る:
(A)ACTを含む溶液を、ACTが吸着するに十分な伝導率(イオン強度)およびpHでイオン交換樹脂と接触させ、
(B)実質的にすべてのPIおよびAT−IIIを除去し、かつ吸着したACTを除去しないように十分なpHおよび伝導率を有する溶液を使用して吸着体を洗浄し、そして
(C)樹脂からACTを溶出する工程。
【0014】
1つの好適な態様では、工程(C)の後にさらに工程(C)からの溶出液をACTが吸着するに十分な条件およびpHでDNA-セルロースと接触させ、そして次にACTをDNA-セルロースから溶出させる精製工程が続く。
【0015】
別の好適な態様では、伝導率が1.0-2.5mmho/cmであり、そしてpHが約6.45-6.55であるACT、PIおよびAT-IIIの水溶液を含むコーンVI−1画分ペーストの懸濁液からACTを調製する。このACTは工程(A)を使用して、約pH6.5の陰イオン交換樹脂(すなわちDEAE-Sepharose:商標)により精製され、次にDEAE-Sepharose(商標)をpH約6.5および伝導率7.4−7.8mmho/cmの洗浄溶液で洗浄し、そしてACTをpH約6.5および伝導率9-10.5mmho/cmで溶出し、最終的にpH6.8でDNA-セルロースに吸着させ、最後にACTを溶出する。
【0016】
材料および方法
ヒト血漿由来の精製α1−アンチキモトリプシン、α1−アンチプロティナーゼインヒビターおよびアンチトロンビンIII、ヒトACTに対するウサギ抗体およびヒト好中球カテプシンGをアセンスリサーチ(Athens Research、アセンス、ジョージア州)から購入した。DNA−セルロース(5ml)をファルマシア社(Pharmacia,Inc)から購入した。天然のウシ胸腺DNAおよびスケールアップ工程のセルロースDNA−セルロース調製物、スクシニル-ala-ala-pro-phe-p-ニトロアニリドおよびウシキモトリプシンはシグマ化学社(Sigma Chemical Co.、セントルイス、モンタナ州)から購入した。コーンIV−1画分はミレス社(Miles Inc.)から得た。DEAE-Sepharose(商標)はファルマシア社の登録商標である。これはビーズ成型されたアガロース陰イオン交換物質である。
【0017】
スケールアップ工程のための DNA- セルロースの調製
DNA-セルロース(3L)をLitmanの方法に従い調製した(Litman,R.M.:デオキシリボ核酸-セルロースで単離したミクロコッカス ルテンス(ミクロコッカス ヒソデイキチカス)由来のデオキシリボ核酸ポリメラーゼ(A deoxyribonucleic acid polymerase from Micrococcus lutens(Micrococcus hysodeikicus)isolated on deoxyribonucleic acid-cellulose)、J.Biol.Chem、1968;243:6222-6233を参照にされたい)。セルロース(1kg)を10分間、1N HCL(15L)で洗浄し、水ですすぎ、そして風乾した。天然のウシ胸腺(16g)をセルロース(1kg)と8Lの10mM NaCL中で混合した。生硬な混合物を広げ、そして3-5時間風を当てて乾燥し、そして一晩広げておいた。乾燥マトリックスを砕き、そしてエタノールに再懸濁した。セルロースを架橋させるためにスラリーを次にUV照射した。
【0018】
ヒトACTの精製
コーンらの分画方法により一般的に調製したACT、PIおよびAT−IIIを含むコーンVI−1画分ペースト(J.Amer.Chem.Soc.1948;68:459)を、24容量の0.01M Tris pH9.3に懸濁し、そして40℃で1時間から1時間半加熱した。IV−1画分ペースト懸濁液をpH6.5に調整し(70リットル)、そして30kgのDEAE-Sepharose(商標)カラムに添加した。このDEAEカラムを1カラム容量の25mM NaKPO4 pH6.5で平衡化し、そして10カラム容量以上の75mM NaKPO4 pH6.5、1mM EDTAで一晩洗浄して安定生ベースラインを得た。部分精製したACTを3-5容量の100mM NaKPO4 pH6.5で溶出した。この100mM NaKPO4溶出液を0.01M K2HPO4 pH6.8(伝導率1-2mmho/cm)に対して、PM-10 3 ft2カートリッジ中で限外濾過/ディアフィルター(diafiltered)し、DNAカラムの筒の中で90分間、DNA-セルロース(3L)とバッチ様式で接触させた。カラムを85mM NaClを含む0.01M K2HPO4、1mM EDTA pH6.8(伝導率は8-9mmho/cm)洗浄緩衝液で底から上に向かって一晩洗浄した。溶出液のA280が安定な0.03となった後、カラムを330mM NaClを含む0.01M K2HPO4、1mM EDTA pH6.8溶出緩衝液で底から上に向かって溶出した。溶出液をアリコートに分けて−70℃で凍結した。
【0019】
ACTの酵素および阻害活性アッセイ
ヒト好中球カテプシンGおよびウシキモトリプシン エステオリティック活性(esterolytic activity)をスクシニル-ala-ala-pro-phe-p-ニトロアニリドを基質として使用して測定した(DelMar,E.G.,Largman,C.,Broderick,J.W.ら:キモトリプシンの新しい高感度基質(A sensitive new substrate for cymotrypsin),Anal.Biochem.1979;99:316-329を参照にされたい)。阻害活性は固定量の酵素(カテプシンG/キモトリプシン)をACTの量を変化させたものと混合して測定した。25℃で5分間インキューベーションした後、混合物のエステオリティック活性をアッセイした。精製された阻害剤で決定した比吸光度6.2(1%溶液、280mM)をタンパク質濃度の決定に使用した(Babul,J.,Stellwagen,E.:干渉光学レンズでのタンパク質濃度測定(Measurement of protein concentration with interferences of optics),Anal.Biochem.1969;28:216-221)。阻害比活性をタンパク質濃度あたりの阻害活性比で表した。
【0020】
RIDおよびELISAで測定したACTの抗原性活性
ACTの抗原性活性はバインディングサイト(Binding Site:サンディエゴ、カリフォルニア州)の放射状免疫拡散キットにより測定した。抗原性活性は酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)でも測定した。0.1-10ng/mlの濃度範囲の精製したACT標準または精製したACT調製試料をACT被覆プレートにウサギ抗体で捕らえた。ACTに対するビオチン化ウサギ抗体をプレートに加え、続いてパーオキシダーゼ結合ストレプトアビジンおよび基質(テトラメチルベンジジン)とインキューベーションし、活性を検出した。抗原性の比活性をタンパク質濃度あたりの抗原性活性として測定した。
【0021】
ELISAで測定したPIの抗原性活性
PIの抗原性活性は酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)で測定した。ヤギ抗−ヒトα1−アンチプロティナーゼインヒビター(カッペル:Cappel、ノースカロライナ州)を被覆抗体として使用する。精製したPI(アセンス リサーチ)、精製ACT調製試料または0.78-25ng/mlの濃度範囲の1.3mg/mLの血漿標準をヤギ抗-ヒトα1−アンチプロティナーゼインヒビター被覆抗体で捕らえた。パーオキシダーゼ結合ヤギ抗-ヒトα1−アンチプロティナーゼインヒビターをプレートに加え、続いて基質(テトラメチルベンジジン)とインキューベーションし、活性を検出した。試料を吸収対抗原濃度の標準曲線と比較した。
【0022】
AT− III (アンチトロンビン III )の酵素および阻害活性アッセイ
これは血漿標準または既知のAT−III活性濃縮物および試料を、ヘパリンを含む緩衝液で希釈し、そしてウシトロンビンとインキューベーションする(第一I段階)2−段階アッセイである。色素生産性基質S-2238(H-D-フェニルアラニル-L-ピペコリル-L-アルギニン-P-ニトロアニリン 2HCl、クロモジェニックス AB:Chromogenix AB、スウェーデン)を次に加え、そしてAT−IIIにより阻害されなかった過剰のトロンビンを加水分解し、P-ニトロアニリンを放出させ、そして405nmで定量する。AT−III濃度は405nmで測定した吸収による加水分解度(吸収)に逆比例する。
【0023】
SDS PAGEおよびウエスタンブロッティング
分析電気泳動はTris-グリシン8-16%ポリアクリルアミド勾配スラブゲル(ノベックス システム:Novex Systemから購入、サンディエゴ、カリフォルニア州)で、Tris-グリシン、0.1% SDS pH8.3を含むノベックスのゲル緩衝液系を使用して行った。精製したACT標準および試料調製物をTris-グリシン、2% SDS、10% β-メルカプトエタノールを含む試料緩衝液中で、10分間沸騰湯浴中で加熱して調製した。ノベックス システムの分子量電気泳動カリブレーションキットを分子量測定に使用した。タンパク質をクーマシーブリリアントブルーG-250により染色して検出した。ウエスタンブロッティングはゲルからニトロセルロース膜で行い、そしてヒトACTに対するウサギ抗血清およびアルカリリン酸塩結合ヤギ抗ウサギIgGで検出した。
【0024】
HPLC分析
アセンス リサーチからのACT標準およびスケールアップ工程の精製ACTをTSK3000SWで、0.05M Na2HPO4、0.15M NaCl pH6.5を移動相として使用して分析した。
【0025】
結果
ヒトACTを調製するために、コーンIV−1画分ペースト懸濁液を出発物質として使用した。IV−1画分ペーストはおよそ以下のmg/gペーストの3種のプロティナーゼインヒビターを含む:α1-プロティナーゼインヒビター(PI)--30.0:ACT--5−10.0、抗原性活性ELISAにより定めた、そしてAT−III--5.0、酵素阻害アッセイにより定めた。PEG沈殿、S-Sepharose(商標)およびQ-Sepharose(商標)クロマトグラフィーによるACT精製は純度が向上しなかったので好ましくなかった。精製法のための硫酸アンモニウム分画、キレートカラムおよびCibachrome Blue(商標)カラムは、ACTの収量が低いこと、および純度が低いので受け入れられなかった。
【0026】
低い伝導率(1.0-2.5mmho/cm)の0.01M Tris pH6.5中のIV−1画分ペースト懸濁液(20733-91-1)をDEAE-Sepharose(商標)に使用すると、全タンパク質の91%より多くが0.025M NaKPO4 pH6.5素通り画分(20767-36-1および-2)および0.075M NaKPO4 pH6.5洗浄画分(20767-36-3)に存在した(表1)。
【0027】
【表1】
Figure 0003693391
【0028】
50%よりも多くのACTが0.1M NaKPO4 pH6.5(20767-36-4および-5)で溶出し、そしてACTの比活性が7倍上昇した。しかしDNA-セルロースカラム(5ml)に直接添加したIV−1画分ペースト懸濁液(0.01M K2HPO4 pH6.8中)は、0.01M K2HPO4、0.33M NaCl pH6.8で溶出した後の回収率がわずか10%であり、そして純度は4-10倍上昇した。したがってDEAE-Sepharose(商標)は画分IV−1ペースト懸濁液からACTを調製する第一段階に好ましい。
【0029】
次の実施例は伝導率1.0-2.5mmho/cmで0.01M Tris pH6.5中のコーンIV−1画分ペースト懸濁液で行い、次にDEAE-Sepharose(商標)およびDNA-セルロースカラムクロマトグラフィーを行った。
【0030】
【実施例】
実施例1
コーンIV−1画分ペースト中のACTを0.01M Tris pH6.5に懸濁し、そしてDEAE-Sepharose(商標)カラムを通して精製した。カラムを0.025M−0.075Mのリン酸ナトリウム(NaHPO4) pH6.5、伝導率=1.9-5.3mmho/cm緩衝液で洗浄し、そして全ACTの3.6%が0.1M リン酸ナトリウム pH6.5(伝導率:6.5mmho/cm)(21864-4-C)で溶出し、全ACTの46%が0.2M リン酸ナトリウム pH6.5(伝導率 13.0mmho/cm)(21864-4-D)で溶出し、比活性が3.5倍上昇した(0.072mg ACT/mgタンパク質)(表2)。
【0031】
【表2】
Figure 0003693391
【0032】
しかし0.025M-0.075M リン酸ナトリウムカリウム(NaKPO4)pH6.5、伝導率:2.8-7.4mmho/cmの緩衝液洗浄で、部分精製されたACTが0.1M NaKPO4 pH6.5(伝導率:9-10mmho/cm)(21893-17-C)でDEAE-Sepharose(商標)から溶出し、そして45%の収量および5.6倍の比活性の増加を得た(0.134mgACT/mgタンパク質)(表2)。表2の結果はDEAE-Sepharose(商標)に0.025M NaKPO4 pH6.5(伝導率:2.8-3.0mmho/cm)の平衡化緩衝液系を使用し、そしてDEAE-Sepharose(商標)カラムにコーンIV−1画分ペースト懸濁液(伝導率1.0-2.5mmho/cm)を添加し、望ましくないタンパク質を0.075M NaKPO4 pH6.5(伝導率:7.0-7.8mmho/cm)で洗浄、そして部分精製されたACT(DEAE-溶出)を0.1M NaKPO4 pH6.5(伝導率:10mmho/cm)で溶出して、さらにDNA-セルロースカラムを通して精製することを示している。
【0033】
実施例2
低抗原性比活性(0.024mgACT/mgタンパク質)をもつコーンIV−1画分ペースト懸濁液(DP 1279)をDNA-セルロース(ファルマシア)を通す精製の出発物質として使用したとき、低収量のACT(17%)、低純度(抗原性比活性0.12-0.32mgACT/mgタンパク質)そして低ACT結合能(0.1-0.2mgACT/mL DNA-gel、表3)であった。
【0034】
【表3】
Figure 0003693391
【0035】
しかし、より高い抗原性比活性(0.16-0.25mgACT/mgタンパク質)をもつDEAE-溶出物(20767-93-1、21893-15-1)中の部分精製ACTを出発物質として使用すると、より高収量(61.2-67.1%)、より高純度(抗原性比活性1.07-1.47mgACT/mgタンパク質)およびより高いACT結合能(0.6-1.2mgACT/mL DNA-ゲル、表4)になった。これらのデータに基づき、DAN-セルロースは部分精製したDEAE-溶出物から精製ACTを調製するための第二工程であった。
【0036】
【表4】
Figure 0003693391
【0037】
実施例3
血漿からACTを調製するための全体的に好ましい方法を第2図に示す。推薦されるスケールアップ法で、IV−1画分ペースト懸濁液(70kg)から、pH6.5、伝導率1.0-2.0mmho/cmでDEAE-Sepharose(商標)カラム(30L)を通して部分精製された2つのロットのACTは、0.1M NaKPO4 pH6.5溶出液(伝導率9.5-10.5mmho/cm)で17-34%の収量、抗原比活性は0.022から0.108-0.194mgACT/mgタンパク質に上昇し、そして純度は4-9倍上昇した(表5)。
【0038】
【表5】
Figure 0003693391
【0039】
DF/UF工程を通してACT活性の重要な損失は無かった。DEAE-溶出物をさらにDNA-セルロースカラム(3L)を通して精製し、そして抗原性比活性が0.108-0.194から1.24mgACT/mgタンパク質に上昇した全収量6.9-13.5%を得た。2つのロットのDNA-溶出物(21869-35、21869-37)をさらにディアフィルターおよび限外濾過し、PBS緩衝液pH7.0に10-20mg/mLとし(21893-61-3および21882-68)、そしてさらにインビトロおよびインビボ実験のために−70℃に保存した。
【0040】
精製ACTの特性決定
A.抗原性および阻害活性
精製ACT(21893-61-3、21882-68)はコーンIV−1画分から自家調製DNA-セルロースカラムを含むスケールアップ法により調製し、ジョージア州、アトランタのアセンスリサーチから購入した精製ACT標準(凍結乾燥状態)と比較したとき、ヒトカテプシンGおよびウシキモトリプシンの両方に対する阻害活性の比活性が1mg/mg全タンパク質より高かった(表6)。
【0041】
【表6】
Figure 0003693391
【0042】
B.SDS PAGEおよびHPLC 分析
レーンあたり5μg、10μg、20μgを還元条件下で6-18% SDS−PAGEに添加したとき、血漿から調製したACT標準およびIV−1画分ペーストからの精製ACT(21893-61-3)は同様な分子量範囲(59.2-61.9kD)および同様な純度(≧90%)を有した。ウエスタンブロッティングにより、血漿およびIV−1画分ペーストから調製したACTは抗−ヒトACT抗体で検出できたが、抗−α1−PIまたは抗−AT−III抗体のいずれかの精製物では検出できる有意なバンドが無かった。精製ACT(21893-61-3)はウエスタンブロッティングで抗−ヒトACT抗体に結合する微量の分解した断片(25.5kD)を含んだ。HPLC分析では血漿およびIV−1画分ペーストの両方からの精製ACTは同様な保持時間および90%より高い純度をもつことが示された。
【0043】
C.IEF
アセンスリサーチのACT標準およびIV−1画分ペーストからの精製ACT(21893-61-3、21882-68)をNovex IEF(pH3-10、ノベックスシステム、サンディエゴ、カリフォルニア州)で分析した。4.6-5.1付近のAT−IIIおよび4-5のPIのpIと比較して、両方の血漿ACT(Laursen,I.およびLykkesfeldt,A.E.:ヒト乳癌細胞系、MCF-7由来のα1−アンチキモトリプシン−様66kDタンパク質の精製および特性決定(Purification and characterization of an α1-antichymotrypsin-like 66kD protein from the human breast cancer cell line,MCF-7),Biochem.Biophys.Acta.1992;1121:119-129)およびIV−1画分ペーストからのものは同様なpIを3.8-4.3付近に有した。
【0044】
D.精製ACT( 21882-68) の詳細
2回のスケールアップ工程からPBS緩衝液中に10mg/mlで調製した2.4gの精製ACT(21882-68)、ものの特性を決定した。精製したACTはIEF、SDS-PAGEおよびHPLCで90%以上の純度を有し、ACT標準(アンセンスリサーチから購入した)に匹敵する生物活性を有し、そしてLALアッセイではmgA280タンパク質あたり0.7エンドトキシン単位を含んだ(表7)。
【0045】
【表7】
Figure 0003693391
【0046】
考察
コーンIV−1画分ペーストは血漿(4-5mg/gタンパク質)よりもわずかに高濃度のACT(5-10mg/gペースト)を含む。したがってヒト血漿から分画したコーンIV−1画分ペースト懸濁液はさらに精製するための出発物質として好ましい。ヒトACTはヒト血漿プールから種々の方法(硫酸アンモニウム分画、Cibacron Blue(商標)クロマトグラフィー、SP-Sephadex(商標)またはQAE-Sephadex(商標)、DNA-セルロースおよびS-300クロマトグラフィーのような)により均一に精製される。しかし他の報告された結果とは反対に、硫酸アンモニウム分画または直接的なDNA-セルロースクロマトグラフィーでのACTの精製は、IV−1画分ペーストを出発物質として使用したとき低収量および低純度であった。
【0047】
Prolastin(商標)はIV−1画分ペースト懸濁液からPEG沈殿およびDEAE-Sepharose(商標)により精製された、市販されている血漿−由来PI調製物(ミレス社)であり、mgタンパク質あたり600μgのPIおよび少量のACT(mgタンパク質あたり29μg)を含んで成る。これはIV−1画分ペーストのPEG沈殿が低収量および低純度のACTを生じるという我々の知見を強く支持するものである。別の市販されている血漿タンパク質調製物は、IV−1画分ペースト懸濁液をヘパリン-アガロースクロマトグラフィーで調製したアンチトロンビンIIIである(Thrombate(商標)、ミレス社)。我々の実験では91%より多いACTがヘパリン−アガロースカラムに結合しなかったことを示した。これはACTがAT−III副産物として調製できる可能性を有することを意味している。
【0048】
コーンIV−1画分ペーストは3つの主なプロティナーゼインヒビターを含有する;PI(30mg/gペースト)、AT−III(5mg/gペースト)およびACT(5-10mg/gペースト)。これらのタンパク質はきわめて近いpI値を有し、それらはAT−IIIが4.6-5.1、PIが4-5、そしてACTが3.8-4.3である。また同様な分子量を有し、それらはAT−IIIが58kD、天然PIが53kD、そして天然ACTが68kDである。コーンIV−1画分ペーストからのPIおよびAT−IIIからのACTの至適な分離は正しい種類の陰イオン交換樹脂を正しい種類の緩衝液、pHおよびイオン強度(伝導率)で使用して精製ACT調製物からPIおよびAT−IIIを除去することに依存する。コーンIV−1画分ペースト懸濁液からのACT精製は、0.025M NaKPO4 pH6.5緩衝液(伝導率2.5-3mmho/cm)で前-平衡化したDEAE-Sepharose(商標)(Q-Sepharose(商標)ではない)を通してほとんどのPIを0.075M NaKPO4 pH6.5(伝導率7.4-7.8)で除去し、そしてACTを0.1M NaKPO4 pH6.5、9-10.5mmho/cm伝導率で溶出した。AT−IIIおよび微量のPIを含有するDEAE-溶出物から部分精製したACTをさらにDNA-セルロースを通して精製した。ほとんどのAT−IIIおよび微量のPIは、カラムを0.01M K2HPO4緩衝液、0.085M NaCl pH8.0 伝導率8-9mmho/cmで洗浄したときDNA-セルロースに結合せず、活性化されたACTのみが特異的にDNA-セルロースに吸着し、そして0.01M K2HPO4 pH6.8(伝導率24-25mmho/cm)中の0.33M NaClで溶出した。
【0049】
DNA-セルロースカラム後のACTの全体の収量および純度は、カラムに添加したACT溶液の純度に依存する。DNA-セルロースは部分精製したACT(DEAE-溶出物)を添加したときは非結合AT−IIIおよびPIを除去したが、コーンIV−1画分ペースト懸濁液をカラムに添加したときは除去しなかった。これにより高度に精製されたACT(ヒトカテプシンGおよびウシキモトリプシンの両方に対して阻害活性の比活性が1mg/mgタンパク質より高い)を得た。
【0050】
コーンIV−1画分ペーストから調製した精製ACTはヒト血漿から得た標準ACTと比較したとき、SDS PAGEおよびHPLC分析で同様な分子量を、そして同様な等電点を表す。抗原活性的に完全で、かつ活性なACTはコーンIV−1画分ペーストから精製でき、そしてさらにこのインビボの生物活性の研究がその治療的使用を支持するために必要である。
【0051】
上記実施例について、当業者は変更することがあるだろう。したがって本明細書に開示された発明は請求項によってのみ限定されるべきものと考える。
【0052】
本発明の特徴および主な態様は次の通りである。
【0053】
1.(A)混合物の水性懸濁液を、実質的にすべてのACTが吸着するpHおよび伝導率の条件下で吸着体と接触させ、
(B)実質的にすべてのPIおよびAT−IIIが溶出するのに十分なpHお よび伝導率の条件下で吸着体を洗浄し、そして
(C)樹脂からACTを溶出する、
工程を含んで成るアルファ-1アンチキモトリプシン(ACT)、アルファ-1-プロティナーゼインヒビター(PI)およびアンチトロンビンIII(AT−III)の混合物からアルファ-1-アンチキモトリプシンを分離する方法。
【0054】
2.工程(C)の溶出産物を、ACTが吸着するに十分な条件下でDNA-セルロースと接触させ、その後DNA-セルロースからACTを溶出サセルのに十分な条件下で溶出させる工程が続く上記1記載の方法。
【0055】
3.(A)ACT、PIおよびAT−IIIを含む水溶液を得、
(B)この溶液をACT、PIおよびAT−IIIがイオン交換樹脂に吸着させるために十分な伝導率およびpHでイオン交換樹脂と接触させ、
(C)実質的にすべてのPIおよびAT−IIIを溶出させるために十分なpHおよび伝導率の条件下で吸着体を洗浄し、
(D)ACTを樹脂から溶出して溶出液を形成し、
(E)溶出液をACTが吸着するに十分な条件およびpHでDNA-セルロースと接触させ、
(F)DNA-セルロースからACTを溶出させる、
工程を含んで成る、ヒトACT、ヒトアルファ1-プロティナーゼインヒビター(PI)およびヒトアンチトロンビンIII(AT−III)の混合物からヒトアルファ-1-アンチキモトリプシンを調製する方法。
【0056】
4.工程(A)の溶液がコーンIV−1画分ペースト懸濁液である上記3記載の方法。
【0057】
5.工程(B)のイオン交換樹脂が陰イオン交換樹脂であり、そして溶液のpHが約6.5および伝導率が約1.0-2.5mmho/cmである上記3記載の方法。
【0058】
6.工程(C)の洗浄がpHが約6.5、そして伝導率が7.0-7.8mmho/cmの水溶液で行われる上記3記載の方法。
【0059】
7.工程(E)の接触がpHが約6.8、そして伝導率が1.0-2.0mmho/cmの水溶液で行われる上記3記載の方法。
【0060】
8.少なくとも90%の純度、およびDelMarら、Anal.Biochem.,99:316(1979)に記載されたカテプシンGアッセイを使用した活性が1.0mg/mg全タンパク質より高い、高度に精製されたα1-アンチキモトリプシン生成物。
【0061】
9.医薬的に許容できるキャリアー中の上記8記載の生成物。
【図面の簡単な説明】
【図1】どのような好適な出発物質(コーンIV−1画分ペースト懸濁液)がヒト血漿から分画されるかを表す一般的なフローチャートである。
【図2】本発明の精製法を好適工程を表すフローチャートである。

Claims (2)

  1. アルファ−1−アンチキモトリプシン(ACT、アルファ-1-プロティナーゼインヒビター(PI)およびアンチトロンビンIII(AT−III)を含むコーンフラクションIV−1ペーストからのATの調製方法であって、
    (A) ACT、PIおよびAT−IIIを含むコーンフラクションIV−1ペーストの水溶液を得、
    (B) この水溶液を約1.0〜2.5mmho/cmの伝導率および約6.5のpHの条件下で陰イオン交換樹脂と接触させてACT、PIおよびAT− III を該陰イオン交換樹脂に吸着させ、
    (C) 実質的にすべてのPIおよびAT−IIIを溶出するために約6.5のpHおよび7.0〜7.8mmho/cmの伝導率の条件下で該陰イオン交換樹脂を洗浄し、
    (D) ACTを該陰イオン交換樹脂から溶出して溶出液を形成し、
    (E) 溶出液を約6.8のpHおよび1.0〜2.0mmho/cmの伝導率の条件下でDNAセルロースと接触させ ACT を該DNAセルロースに吸着させ、そして
    (F)該DNAセルロースから ACT を溶出させる、工程を含んで成る方法。
  2. 該陰イオン交換樹脂を7.4〜7.8mmho/cmの伝導率の条件下で洗浄して実質的にすべてのPIおよびAT−III を溶出させる請求項1記載の方法。
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