JP3693371B2 - ウォータビークルの噴射ノズル角制御装置 - Google Patents

ウォータビークルの噴射ノズル角制御装置 Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明はウォータビークルの噴射ノズル角制御装置およびそれに用いるアクチュエータに関する。さらに詳しくは、船底より水を取り込み、後方のノズルより水を噴出させて推進力を得る、いわゆるウォータジェット推進タイプのウォータビークルにおける、噴射ノズルの角度を電気駆動により制御する装置、およびそれに好適に用いられるアクチュエータに関する。
【0002】
【従来の技術】
ウォータジェット推進タイプのウォータビークルは、たとえば図10に示すように、水上滑走に適した船体101と、その前方上面に左右に回動自在に設けられるハンドル102と、船体101の後方上部に設けられるシート103とからなる。そして船体101の前方の内部にはエンジン104がマウントされ、後方の船底付近には、船底に開口し、船体内を通って後方に延びる流路105が設けられている。そしてエンジン104から後方に向かって延び、流路105内を通る推進軸106にはインペラ107が取り付けられている。流路105の後端はしだいに径が小さくされて固定ノズル108となっており、その後方には左右に揺動自在に可動ノズル109が設けられている。また一般的には、可動ノズル109は前記ハンドル102と押し引きコントロールケーブル110などで連結され、それによりハンドル102の左右の揺動操作により可動ノズル109の向きを左右に変化させ、船体101の進行方向を変えるようにしている。
【0003】
また推進力の変化により船体の前方が持ち上がったり下がったりするのを立て直す(補正する)ため、図11に示すように、運転席に設けた手動操作レバー111により、押し引きコントロールケーブル110を介して上下に揺動自在に取り付けた可動ノズル109の上下角度(トリム角)を調節するトリム角制御装置も知られている(従来例1という))。さらに図12に示すように、モータMおよび減速機113により、ネジ114を往復回転させ、そのネジ114に螺合させたナット115を往復移動させて、可動ノズルに連結されたコントロールケーブル110を往復操作する電動式のトリム角制御装置も知られている(従来例2)。
【0004】
さらに実公昭60−4876公報では、可動ノズルを水平状態から垂直下方を向くまでの範囲で回動自在とし、運転席の手動操作レバーでノズルの噴射方向を調節できるようにした装置が提案されている。このものは滑走に入る前の静止状態では下方にジェット水流を噴き出し、船体の後部が水没するのを抑制すると共に、滑走状態では後方にジェット水流を噴出させて高速の滑走状態を得ようとするものである(従来例3)。他方、進行方向を変えるとき、ハンドルの回動操作に応じて可動ノズルを左右に振ると同時に上向きに振らせるものが提案されている(特公平4−64920号公報)。このものは船体が旋回するとき、船体の傾きにより左右に振れたノズルが下向きになるのを防ぎ、旋回時の噴射効率を向上させることができる(従来例4)。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
前記従来例1のトリム角制御装置は、手動操作レバー111により操作するものであるので、推力(噴流)が大きい場合はレバー操作が重く、場合により操作ができない。またウォータビークルの高性能化に伴い、エンジンの回転数などの運転条件に応じた自動制御(アクティブ制御)が望まれるが、手動操作レバー111を使用しているものではアクティブ制御はできない。他方、従来例2の電動式トリム角制御装置は、ネジ114とナット115の組合せで回転動作を直進動作に変換しているので、その構造上、寸法が大きくなる。しかも強度上、ネジやナットなどの金属部品を多用するので、重量が重くなると共に、防錆対策が難しい。さらにナット115の位置やネジ114の回転角は検出しにくいので、それらをフィードバックしてアクティブ制御させるように変更することが困難である。
【0006】
また従来例3のノズル角度調節装置も手動レバーによる操作であり、前記従来例1のものと同じ問題がある。従来例4の装置はハンドルの回動に応じてノズル左右方向と上下方向を同時に制御するものであり、ある意味で機械的に自動制御を達成しているともいえるが、それぞれの角度を独立して操作することはできないので、他の目的、たとえばトリム角制御に応用することはできない。
【0007】
本発明は推力が大きい場合でも簡単に可動ノズルの向きを変えることができ、しかもフィードバック制御およびアクティブ制御を容易に適用できるウォータビークルの噴射ノズル角制御装置を提供することを技術課題としている。さらに本発明はそのような装置に用いる、軽量でコンパクトに構成しうる電動式のアクチュエータを提供することを技術課題としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の噴射ノズル角制御装置は、運転席のスイッチ操作により正転・逆転するモータと、そのモータの出力軸に連結されるウォームおよびそのウォームと噛み合うウォームホイールからなる第1減速機と、その第1減速機のウォームホイールの軸に連結される太陽ギヤ、太陽ギヤと噛み合う第1遊星ギヤ、第1遊星ギヤと外側から噛み合う静止リングギヤ、第1遊星ギヤと一体に自転および公転する、第1遊星ギヤより大径の第2遊星ギヤ、第1遊星ギヤおよび第2遊星ギヤを自転および公転自在に支持するキャリヤ、および第2遊星ギヤと外側から噛み合う回転リングギヤからなる遊星ギヤ式の第2減速機と、前記第2減速機の回転リングギヤに固定される出力レバーとからなるアクチュエータと、一端がその出力レバーにより往復操作されると共に、他端が、揺動制御対象である噴射ノズルに連結されているコントロールケーブルとからなり、前記噴射ノズルが水平軸周りに上下に揺動自在に支持されており、前記コントロールケーブルの押し引き操作によりウォータビークルのトリム角を制御するものであり、前記回転リングギヤが、円板部と、その円板部の外周から立ち上がるリング部と、円板部の中心部からリング部と同じ側に立ち上がるボス部とを有しており、そのボス部に外面に向かって開口する凹所が形成されると共に、その凹所に前記出力レバーの回動角を検出するためのポテンショメータの検出軸が連結されており、前記静止リングギヤに支持されるブラケットにポテンショメータの本体が支持されており、前記ポテンショメータの出力を表示するインジケータが運転席に設けられていることを特徴としている。その場合、前記スイッチからの指令値と角度検出器の検出値の差に基づいてモータの回転をフィードバック制御する制御回路を設けるのが好ましい。
【0009】
た、運転席のスイッチのほかに、噴流駆動用のエンジン出力に応じてトリム角の大きさを制御する制御回路を設けるのが好ましい。そのような制御回路では、たとえばエンジンの回転数が所定値以下の状態が所定時間以上継続したとき、トリム角を小にし、エンジンの回転数が所定値以上の状態が所定時間継続したとき、トリム角を大にするべくモータを制御するようにする。さらに、前記噴流駆動用のエンジン出力に応じてトリム角を制御する自動制御モードと運転席のスイッチによりトリム角を制御するマニュアルモードとをエンジンスタート時に選択することができ、さらに自動制御モードからマニュアルモードへの復帰をスイッチによりできるようにするものが好ましい。
【0011】
上述した装置においては前記ボス部の凹所に弾力製を有する高分子材料製のクッションリングが埋め込まれ、そのクッションリングに前記出力レバーの回動角を検出するためのポテンショメータの検出軸が連結されており、前記静止リングギヤに支持されるブラケットにポテンショメータの本体が支持されているものが好ましい。また前記回転リングギヤの円板部の外面に、前記ボス部と同心状に筒部が突設されており、その筒部の外周面が前記ブラケットに回転自在に支持されているものが好ましい。さらに、前記回転リングギヤの下端に静止リングギヤの外側と係合して回転リングギヤの回転範囲を規制するための突起が設けられているものが好ましい。
【0012】
【作用】
本発明の装置では、運転席のスイッチを操作することにより、モータの正転・停止・逆転を切り換える。モータの回転は遊星ギヤ式の減速機により減速され、出力レバーが回動する。それによりコントロールケーブルが引き出されたり、押し戻され(あるいは送り出し)たりし、その他端側の噴射ノズルの角度が制御される。このように本発明の装置では、モータを駆動源としているので、推進力が大きい場合でも容易に操作することができる。しかも遊星ギヤ式の減速機を採用しているので、計量・コンパクトに構成することができ、コントロールケーブルを介して電気回路などは船体の前方など、水しぶきが入ってこない安全な位置に設置することができる。
【0013】
減速機の出力部ないし出力レバーに角度検出器、とくにポテンショメータを設けたものでは、その角度検出器の出力を運転席のインジケータに表示したり、あるいはスイッチによる指令値との差に基づくフィードバック制御を行うことができる。モータと遊星ギヤ式減速機との間にウォームギヤ式の減速機を介在させたものでは、全体の大きさをコンパクトにしながら、減速比を大きくすることができる。また外力に対する自己拘束性が確実になる。
【0014】
遊星ギヤ式の減速機は噛み合い率を高くすることができるので、主要なギヤ要素を合成樹脂製とすることができ、それにより軽量化および防錆性の向上が図られる。さらに出力レバーは所定の角度範囲を揺動させるだけであるので、ノズル角度を迅速かつ正確に変更することができる。そのためとくに船体のトリム角を調節するのに適している。その場合はエンジンの回転数に応じて目標値を変化させることにより、いわゆるアクティブ制御を容易に行うことができる。すなわちエンジンの回転数が低いときはトリム角を小にし、エンジン回転数が高いときはトリム角を大にする。そのときエンジン回転数が一定時間経過したときにモータに指令を送るようにすれば、瞬間的な変化に対しては応答せず、安定した制御を行うことができる。
【0015】
また本発明の装置は、モータの回転がウォームギヤ式の第1減速機で減速された後、ウォームホイールが太陽ギヤを回転させる。それにより静止リングギヤと噛み合っている第1遊星ギヤがキャリヤにより支持されながら自転および公転する。そのとき第1遊星ギヤと一体の第2遊星ギヤは、第1遊星ギヤと一緒の公転および自転を行うが、第2遊星ギヤと外側から噛み合っている回転リングギヤは、静止リングギヤと第1遊星ギヤの歯数比と、回転リングギヤと第2遊星ギヤの歯数比との差に応じた分だけわずかに回転する。それにより大きいギヤ比で減速することができる。
【0016】
遊星ギヤ式の減速機は噛み合い率を高くすることができるので、太陽ギヤ、第1および第2遊星ギヤ、静止および回転リングギヤなどのギヤ要素を合成樹脂製とすることができ、それによりアクチュエータの軽量化および防錆性の向上が図られる。また回転リングギヤに凹所を有するボスを設け、その凹所に埋め込んだ弾力性を有する高分子材料製のクッションリングにポテンショメータの検出軸を連結するときは、エンジンなどから振動が伝わってくる場合でも、正確に回転角を検出することができる。その場合、回転リングギヤの外面に筒部を設け、その筒部の外周面をポテンショメータを取りつけるブラケットで回転自在に支持させるときは、回転リングギヤおよびそれに内蔵される遊星ギヤを確実に支持することができる。
【0017】
【実施例】
つぎに図面を参照しながら本発明の制御装置およびアクチュエータを説明する。図1は本発明の噴射ノズル角制御装置を備えたウォータビークルの一実施例を示す概略断面図、図2は本発明のアクチュエータの一実施例を示す、カバーを外した状態における正面図、図3はその一部切り欠き斜視図、図4は図2のIV-IV 線拡大断面図、図5は図2のアクチュエータの組立前の状態を示す、図4と同じ部分の断面図、図6は図2のアクチュエータの組立前の状態を示す要部斜視図、図7は図2のアクチュエータの制御回路および周辺機器の関係を示すブロック図、図8は図7の制御回路の実施例を示すブロック図、図9は上記制御回路の制御の流れを示すフローチャートである。
【0018】
図1に示すウォータビークル1は、船体および推進駆動部の構造については図10の従来のものと基本的に同じであるので、同じ部分には同じ符号を付して説明を省略する。このものの可動ノズルのトリム角を制御する制御装置Aは、ハンドル2に取りつけたスイッチ3と、そのスイッチ3の操作によりモータ、ウォームギヤ式の減速機および遊星ギヤ式の減速機を介して出力レバーを回動操作するアクチュエータ4と、前記出力レバーにより押し引き操作される押し引きコントロールケーブル5とから構成されている。押し引きコントロールケーブル5の他端は可動ノズル6に固定されたレバー7に連結されている。さらに運転席には、出力レバーの操作状態を表示するインジケータ8が設けられている。
【0019】
前記アクチュエータ4は図2および図3に示すように、箱型のケース本体10aとカバー10bとからなるケース10と、その内部に収容されるモータM、ウォームギヤ式の第1減速機11、第1減速機11の出力をさらに減速する遊星ギヤ式の第2減速機12、その出力により90°以下、とくに60〜80°程度の角度で回動する出力レバー13とから構成されている。出力レバー13はコントロールケーブル5の索端ロッド14に対して、中立状態ではほぼ直角になるように連結されている。
【0020】
前記ケース10は、平面形状で、一端側(図2の右側)の幅が広く、他端側の幅が狭い箱形を呈している。そして幅が狭い側の端部15は、深さが浅くなっており、その壁16にはコントロールケーブル5の導管17がケーブルキャップ17aにより固定されている。ケース本体10aの周辺の3か所には、船体へ取りつけるための取りつけボス18が設けられており、内側の数カ所にはカバー10bを取りつけるためのねじ穴ないしインサート挿入用の深穴19が設けられている。そしてカバー10bが当接する端面には、深穴19を囲むように、1本のパッキン溝20が形成されており、ゴムないし合成樹脂エラストマー製のひもからなるパッキン21が挿入されている。なおケース本体10aおよびカバー10bは防錆の観点から、合成樹脂成型品ないしステンレススチール製が好ましい。
【0021】
ケース本体10aの幅が広い部分の底部22には2〜3本のボス23が突設されており、そのボス23にウォームギヤ式の第1減速機11がネジにより取りつけられている(図4参照)。この第1減速機11は公知のウォームギヤ・ウォームホイールユニットを採用することができ、その場合は、モータMはそのユニットケースに対し、ウォームを収容する細長い筒状部11aと同心状に取りつけて、前記ケース本体10aの幅が狭い部分に収容することができる。モータMは公知の直流モータであり、モータMに被せるように設置したサーキットボード24の制御回路により、極性が切り換えられて、正転・停止・逆転の制御が行われる。
【0022】
前記コントロールケーブル5の索端ロッド14の基部側は、ケーブルキャップ17aに対してその一端がボール・ソケット連結されたガイドパイプ25内に摺動自在に収容されており、その端部に内索26が連結されている。したがって索端ロッド14はケーブルキャップ17aに対して摺動自在および所定の角度範囲内で回動自在である。なおガイドパイプ25の自由端には蛇腹ブーツ25aが設けられている。このような索端ロッド14の連結形態は従来公知である。
【0023】
つぎに図4、図5および図6を参照して遊星ギヤ式の第2減速機12の詳細を説明する。図4および図5において、符号27は第1減速機11の出力軸28にトルク伝達可能に固定される太陽ギヤであり、符号29はユニットケースに固定される静止リングギヤである。太陽ギヤ27は出力軸28との嵌合を確実にするため、金属製のものが好ましい。静止リングギヤ29は図6に示すように、内歯30を備えたリング部31と、その周囲に張り出した板状の支持部32とからなる。支持部32にはユニットケースに取りつけるためのボス33が複数個設けられている。さらにリング部31の左右の両側から、ブラケット支持用の一対の突起34が突出している。なお図4に示すように、リング部31の背面側には、ギヤの剛性向上のためにリング部31の肉厚を厚くしたことに伴い、成型時のヒケ防止のためのスリット35が刻まれている。
【0024】
太陽ギヤ27と静止リングギヤ29の内歯30との間には、図4〜5に示すように、3個の第1遊星ギヤ36がそれぞれ噛み合うように介在されている。本実施例では、図5に示すように、それぞれの第1遊星ギヤ36はその第1遊星ギヤより歯数が多い第2遊星ギヤ37と同心状に一体に形成されている。そして3組の第1・第2遊星ギヤ36・37は、両側からキャリヤ38で支持されている。キャリヤ38はそれぞれ環状の板材からなるサポート部39、40と、それらのサポート部の内面の3か所から突出する軸部41、42とからなり、軸部41、42の先端同士は突起と凹部とで嵌合させ、ビス43で連結している。第1遊星ギヤ側のサポート部39は図4のように組み立てたとき、静止リングギヤ29の歯面と摺動することにより、支持される。なお本実施例では静止リングギヤ29の中央部は貫通しているが、ユニットケースと当接する側を、中央に太陽ギヤを通す開口を設けた底板で塞いでもよい。第1・第2遊星ギヤ36、37およびキャリア38はそれぞれポリアセタールなどの合成樹脂から成形するのが好ましい。
【0025】
第2遊星ギヤ37の外側には、前記静止リングギヤ29と同心状に対向して配置される回転リングギヤ44の内歯45が噛み合っている。図5に示すように回転リングギヤ44は円板部46とその周囲から立ち上がるリング部47とを有し、そのリング部47の内周に内歯45が形成されている。その内歯45のピッチ円径は静止リングギヤ29のピッチ円径より大きく、歯数も2〜4枚程度多い。そして静止リングギヤ29と第1遊星ギヤ36との歯数の比率は、回転リングギヤ44と第2遊星ギヤ37との歯数の比率より大きい。なお回転リングギヤ44においても、リング部47の背面側にギヤの真円度の変形(撓み)防止のためのスリット48が形成されている。
【0026】
回転リングギヤ44の円板部46の中央には、外側(図4の左側)に向かって開口する凹所49を備えたカップ状のボス50が内側に向かって突出しており、その内部にクッションリング51が嵌着されている。このクッションリング51はポテンショメータ53の検出軸53aを連結するためのものである。さらに円板部46の内側には、前記キャリア38の第2遊星ギヤ37側のサポート部40の内面を摺動自在に支持するための環状突起52が設けられている。他方、円板部46の外側には、図5に示すように、ポテンショメータ53の円筒状の突部53bと摺動自在に嵌合する環状突起54が設けられている。
【0027】
回転リングギヤ44の外面には、図5および図6に示すように出力レバー13を支持するための角筒状の突起55、56および出力レバー13の側面と嵌合する立ち壁57、58が突設されている。なお回転リングギヤ44の下端には、静止リングギヤ29の外側に設けた一対のストッパ(図2の符号29a)と係合して回転リングギヤ44の回転範囲を規制するための突起59が突出している。回転リングギヤ44もポリアセタールなどの合成樹脂から成形するのが好ましい
【0028】
前記静止リングギヤ29の左右のブラケット支持用の突起34の前面には、板状のブラケット60が固定されている。そのブラケット60の中央部にはポテンショメータ53の突部53bを通すと共に、前記外面側の環状突起54の外周面をブッシュ61を介して摺動自在に支持する円形の開口62が形成されている。ブラケット60は通常、ステンレス鋼などの耐食性の高い金属板あるいは合成樹脂板で成形する。
【0029】
前記出力レバー13は前記回転リングギヤ29の角筒状突起55、56と嵌合する矩形状の嵌合孔63、64を有し、環状突起54を通すための円形の開口65を有する。さらにその下端には、コントロールケーブル5の索端ロッド14と連結するためのピン66を固定している。出力レバー13はステンレス鋼などの耐食性の高い金属板から構成するのが好ましいが、合成樹脂など、他の材料を用いてもよい。
【0030】
前記のように構成されるアクチュエータ4において、モータMが回転して第1減速機の出力軸28が図6の矢印C方向に回転すると、太陽ギヤ27も同じ方向に回転する。それにより静止リングギヤ29と噛み合っている第1遊星ギヤ36が矢印D方向に自転しながら矢印E方向に公転する。そして第2遊星ギヤ37も第1遊星ギヤ36と同じ方向に、同じ回転数で自転および公転する。そのとき第1遊星ギヤと静止リングギヤの歯数の比と、第2遊星ギヤと回転リングギヤの歯数の比とが同じであれば、回転リングギヤは回転しないが、両者の比に差があれば、その差に応じて回転リングギヤがたとえば矢印F方向にゆっくりと回転する。それにより高い減速比が得られる。回転リングギヤ44が回転すると、それに固定されている出力レバー13も同じ方向に回動し、コントロールケーブル5の索端ロッド14を、たとえば押し操作する。逆にモータMが逆転方向に回転すると、前記とは逆にコントロールケーブル5の索端ロッド14を引き操作する。
【0031】
上記のアクチュエータ4を採用した図1の噴射ノズル角制御装置Aは、アクチュエータ4の出力レバー13が下(索端ロッドと直角)を向いているときに可動ノズル6が水平方向を向く中立位置となるように設定する。そしてそのときのポテンショメータ53の出力電圧はフルレンジの半分になるようにする。それによりモータMが中立位置より正転方向に回転すると、可動ノズル6は下向き(矢印G方向)に、たとえば−15〜15°程度角度を変更し、モータMが逆方向に回転すると、可動ノズル6が上向き(矢印H方向)に操作される。運転席のハンドル2に設けたスイッチ3は、たとえばモータMの正転・停止・逆転に対応する3位置のセレクトスイッチとすることができ、その場合は単純にスイッチ3の操作で可動ノズル6を上向きあるいは下向きにマニュアル操作することができる。なお操作時間により、その角度を調節するようにしてもよい。可動ノズル6の角度はコントロールケーブル5を介して出力レバー13の角度と一対一で対応しているので、その角度はポテンショメータ53で検出され、運転席のインジケータ8に表示される。この場合はポテンショメータ53は単にトリム角の表示用に用いられるだけである。
【0032】
他方、スイッチ3をたとえばダイヤル式のボリュームスイッチとし、そのスイッチ3の出力とポテンショメータ53からの出力とを比較して、その差が常時ゼロになるようにモータMの回転方向および回転数を調節すれば、いわゆるネガティブフィードバック制御とすることができ、トリム角は若干の遅れ時間を含む追従制御とすることができる。このような追従制御は、トリム角を連続的に変化させる連続制御の形式、あるいはトリム角を段階的に変化させる段階制御の形式のいずれによっても行うことができる。また前記フィードバック制御はアナログ制御でも、またデジタル制御でも行うことができる。
【0033】
さらに上記のいずれかの制御方法に対して、エンジンの出力、とくに回転数の大小に応じて、トリム角の正負・大小を自動的に制御するアクティブ制御を導入することもできる。図7のブロック線図はそのような自動制御を行うための回路の一例を示している。図7においてサーキットボード(回路基板)24には、A/D変換器やCPU、メモリーなどの制御要素からなる制御回路71が組み込まれており、それぞれ入出力ポート72を介してインジケータ8、スイッチ3、エンジン回転数検出器73、電源(バッテリ)74、ポテンショメータ53、モータMなどの周辺機器に接続されている。
【0034】
インジケータ8は前述のウォータビークルAの運転者にポテンショメータ53の出力、すなわち出力レバー13回動角度(トリム角の指標となる)を常時知らせるものである。スイッチ3は運転者がトリム角を上げたいとき、あるいは下げたいときに、自発的にモータMの駆動電源の入り切りおよび極性の変更を行うマニュアル操作用のものである。さらに本実施例では、自動制御とマニュアル制御の選択スイッチを兼ねており、スイッチを押しながらエンジンをスタートさせると自動制御モードに移行し、押さずにエンジンスタートするとマニュアル操作モードになるようにしている。また自動制御中でも、スイッチ3を操作すると直ちにマニュアル操作に復帰できるようにするのが好ましい。エンジン回転数検出器73は、ウォータビークルの推力を発生するエンジンの回転数を発電機の電圧などで検出するようにしたものであり、アクティブ制御のためにトリム角の増大、減少、そのままの状態の維持を選択する基準を定めるものである。エンジン回転数検出器としては、たとえばCDIマグネットなどを採用しうる。
【0035】
前記制御回路71は、図8に示すように、エンジンのスタート時にスイッチ3が押されていたか否かを検出し、それにより運転モードを変更する手段75、エンジンの回転数が低速の基準値、たとえば2000rpm 以下かそれを越えているか、あるいは高速の基準値、たとえば5000rpm 以上か否かを比較判断する手段77、その状態が所定時間、たとえば3秒間維持されたか否かの判断基準となるタイマー回路78、前記基準値を記憶しておくメモリー79、検出値に応じてモータMに正転・停止・逆転の指令を出す中央処理装置(CPU)80、プログラムを記憶しておくメモリー81、インジケータ11やモータMなどの外部機器に制御信号や駆動信号を出力するドライバー82などから構成されている。
【0036】
つぎに図9を参照して、前記アクチュエータ4および制御回路72を用いてトリム角のアクティブ制御をする場合を説明する。まずエンジンスタート時にスイッチ3が押されていたか否かを判断し(ステップS1)、押されていない場合は自動制御を解除し、マニュアル制御モードに移行させる(ステップS2)。エンジンスタート時にスイッチ3が押されていた場合は、自動制御モードに移行する。自動制御モードでは、まずエンジン回転数が3000rpm 以下の状態が3秒以上続いたか否かを判断し(ステップS3)、続いていない場合は中間状態として、アクチュエータに信号を送らず、中立状態(水平状態)のトリム角を維持する。そして3秒以上続いた場合は、低速状態と判断して、出力レバーをポテンショメータ53のCCW(フルレンジの方向)に対応する方向に回動させるべくモータMに指令を出す(ステップS4)。その指令により、モータが正転し、出力レバーは図2の矢印F方向(CW方向)に回転する。それによりコントロールケーブルの内索が押され、図1の状態でノズルの出口を下向きにし、トリム角を下向きとする。
【0037】
ついでエンジン回転数5000rpm 以上の状態が3秒以上持続したか否かを判断し(ステップS5)、続いていない場合はそのままのトリム位置を維持させる。続いた場合は高速運転時と判断し、出力レバーをポテンショメータ53のCW方向(ゼロレンジの方向)に対応する方向に回動させるべくモータMを逆転させ、エンジンスタート時のノズル位置(すなわち最初にメモリーしていた位置)にする(ステップ6)。このようにしてエンジン回転数に応じた適切なトリム角度が達成される。
【0038】
上記実施例ではトリム角は上向き、下向きのいずれかを選択するだけであったが、もちろんエンジン回転数に対し、それに比例した、あるいは特定の関数関係となるトリム角に調節するように制御することもできる。
【0039】
【発明の効果】
本発明のウォータビークルの噴射ノズル制御装置は、駆動源としてモータを採用し、遊星ギヤ式の減速機で大きく減速するので、噴射ノズルの推力が大きい場合でも簡単に向きを変えることができる。またポテンショメータで噴射ノズルの角度をフィードバックすることができるので、エンジンの出力に応じたアクティブ制御を容易に適用することができる。
【0040】
本発明のアクチュエータは、減速機として遊星ギヤ式のものを採用しているので、軽量でコンパクトに構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の噴射ノズル角制御装置を備えたウォータビークルの一実施例を示す概略断面図である。
【図2】本発明のアクチュエータの一実施例を示す、カバーを外した状態における正面図である。
【図3】上記アクチュエータの一部切り欠き斜視図である。
【図4】図2のIV-IV 線拡大断面図である。
【図5】上記アクチュエータの組立前の状態を示す、図4と同じ部分の断面図である。
【図6】上記アクチュエータの組立前の状態を示す要部斜視図である。
【図7】上記アクチュエータの制御回路および周辺機器の関係を示すブロック図である。
【図8】上記制御回路の実施例を示すブロック図である。
【図9】上記制御回路の制御の流れを示すフローチャートである。
【図10】従来のウォータビークルの一例を示す概略断面図である。
【図11】従来の手動式トリム角制御装置の一例を示す要部構成図である。
【図12】従来の動力式トリム角制御装置の一例を示す要部構成図である。
【符号の説明】
1 ウォータビークル
A 制御装置
3 スイッチ
4 アクチュエータ
5 押し引きコントロールケーブル
6 可動ノズル
8 インジケータ
M モータ
11 第1減速機
12 第2減速機
13 出力レバー
14 索端ロッド
27 太陽ギヤ
29 静止リングギヤ
36 第1遊星ギヤ
37 第2遊星ギヤ
38 キャリヤ
44 回転リングギヤ
53 ポテンショメータ
60 ブラケット
73 エンジン回転数検出器

Claims (8)

  1. 運転席のスイッチ操作により正転・逆転するモータと、そのモータの出力軸に連結されるウォームおよびそのウォームと噛み合うウォームホイールからなる第1減速機と、その第1減速機のウォームホイールの軸に連結される太陽ギヤ、太陽ギヤと噛み合う第1遊星ギヤ、第1遊星ギヤと外側から噛み合う静止リングギヤ、第1遊星ギヤと一体に自転および公転する、第1遊星ギヤより大径の第2遊星ギヤ、第1遊星ギヤおよび第2遊星ギヤを自転および公転自在に支持するキャリヤ、および第2遊星ギヤと外側から噛み合う回転リングギヤからなる遊星ギヤ式の第2減速機と、前記第2減速機の回転リングギヤに固定される出力レバーとからなるアクチュエータと、一端がその出力レバーにより往復操作されると共に、他端が、制御対象である噴射ノズルに連結されているコントロールケーブルとからなり、
    前記噴射ノズルが水平軸周りに上下に揺動自在に支持されており、前記コントロールケーブルの押し引き操作によりウォータビークルのトリム角を制御するものであり、前記回転リングギヤが、円板部と、その円板部の外周から立ち上がるリング部と、円板部の中心部からリング部と同じ側に立ち上がるボス部とを有しており、そのボス部に外面に向かって開口する凹所が形成されると共に、その凹所に前記出力レバーの回動角を検出するためのポテンショメータの検出軸が連結されており、前記静止リングギヤに支持されるブラケットにポテンショメータの本体が支持されており、
    前記ポテンショメータの出力を表示するインジケータが運転席に設けられている、
    噴射ノズル角制御装置。
  2. 前記スイッチからの指令値とポテンショメータの検出値の差に基づいてモータの回転をフィードバック制御する制御回路を備えている請求項記載の装置。
  3. 運転席のスイッチのほかに、噴流駆動用のエンジン出力に応じてトリム角を制御する制御回路を備えている請求項記載の装置。
  4. 前記噴流駆動用のエンジン出力に応じてトリム角を制御する自動制御モードと運転席のスイッチの指令値とポテンショメータの検出値の差に応じてトリム角を制御するマニュアルモードとをエンジンスタート時に選択することができ、さらに自動制御モードからマニュアルモードへの復帰をスイッチによりできる請求項3記載の装置。
  5. 前記第1および第2遊星ギヤ、静止リングギヤ、キャリヤおよび回転リングギヤが合成樹脂製であり、前記太陽ギヤおよび出力レバーが金属製である請求項1記載の装置。
  6. 前記ボス部の凹所に弾力製を有する高分子材料製のクッションリングが埋め込まれ、そのクッションリングに前記出力レバーの回動角を検出するためのポテンショメータの検出軸が連結されており、前記静止リングギヤに支持されるブラケットにポテンショメータの本体が支持されている請求項1記載の装置
  7. 前記回転リングギヤの円板部の外面に、前記ボス部と同心状に筒部が突設されており、その筒部の外周面が前記ブラケットに回転自在に支持されている請求項記載の装置
  8. 前記回転リングギヤの下端に静止リングギヤの外側と係合して回転リングギヤの回転範囲を規制するための突起が設けられている請求項1記載の装置。
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