JP3693251B2 - 有機el素子 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は有機化合物層中に電子とホールを注入し、その再結合によって引き起こされる発光を利用する有機EL素子に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、情報機器の多様化及び省スペース化に伴い、CRTよりも低消費電力で空間占有面積の小さい平面表示素子へのニーズが高まってきている。このような表面表示装置としては、液晶等があるが、特に自己発光型で表示が鮮明な、また、直流低電圧駆動が可能な有機EL素子への期待が高まっている。有機EL素子は発光層が単層の場合もあるが、キャリア輸送層と発光層を積層した場合の方がより高輝度な発光を達成している。キャリア輸送層には、ホール輸送を目的にしたものと電子輸送を目的としたものがある。
【0003】
ホール輸送性材料としては、電子写真用有機感光体用として開発された多くのトリフェニルアミン系化合物等を使用できることが実証されており、非晶質で比較的高い熱安定性を有するものも見い出されている。
【0004】
一方、電子輸送性材料としては、オキサジアゾール化合物やトリアゾール化合物やペリレンイミド化合物の一部が知られているのみで、さらに可視域に吸収を有さない材料となるとわずかな材料群しか知られていない。さらに高い熱安定性を有するものはほとんど知られていない。構成要素として電子輸送層を有する場合、発光層に種々のホール輸送性材料を使用できることや励起子を挟い発光層中に閉じ込められることや励起子と陰極の相互作用による励起子失活を防ぐことが可能となり、様々な蛍光色を持つ発光材料を用いて高輝度な有機EL素子が作製できる長所がある。しかしながら、これまで安定性の高い電子輸送材料が無いことから電子輸送層を有する有機EL素子は耐久性が悪いという欠点を有している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、電子輸送性という構成要素を有しながらも耐久性の高い有機EL素子を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、陽極及び陰極と、これらの間に挟持された一層または複数層の有機化合物層より構成される有機EL素子において、前記有機化合物層中に下記一般式(I)で表される化合物を含有することを特徴とする有機EL素子が提供される。
【化2】
(式中、A1、A2は各々置換又は無置換の芳香族炭化水素基、置換又は無置換の芳香族複素環基を表わし、それぞれ同一でも異なっていても良い。又、R1、R2、R3は水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、水酸基を表し、それぞれ同じでも異なっていてもよい。)
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明は陽極及び陰極と、これらの間に挟持された一層または複数層の有機化合物層より構成される有機EL素子において、前記有機化合物層中に前記一般式(I)で表される化合物を含有させる事によっても耐久性の高い有機EL素子が得られる。
【0008】
前記一般式(I)において、A1、A2に適用される芳香族炭化水素基、あるいは芳香族複素環基としては、スチリル、フェニル、ビフェニル、ターフェニル、ナフチル、アントリル、アセナフテニル、フルオレニル、フェナントリル、インデニル、ピレニル、ピリジル、ピリミジル、フラニル、ピロニル、チオフェニル、キノリル、ベンゾフラニル、ベンゾチオフェニル、インドリル、カルバゾリル、ベンゾオキサゾリル、キノキサリル、ベンゾイミダゾリル、ピラゾリル、ジベンゾフラニル、ジベンゾチオフェニル、オキサゾリル、オキサジアゾリル基等が挙げられる。
【0009】
これらの芳香族炭化水素基、あるいは芳香族複素環基は更に一つ以上のハロゲン原子、水酸基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、トリフルオロメチル基、炭素数1〜12、好ましくは1〜6のアルキル基、炭素数1〜12、好ましくは1〜6のアルコキシ基、アリールオキシ基、フェニル基、スチリル基、ナフチル基、チオフェニル基、アラルキル基、ビフェニル基、ビチオフェニル基、フラニル基、ビフラニル基、ピロニル基、ビピロニル基等の置換基を有していてもよい。
また、前記一般式(I)において、R1、R2、R3における置換もしくは無置換のアルキル基としては、炭素数1〜12、好ましくは1〜6のアルキル基が挙げられ、その置換基としては、ハロゲン原子、水酸基、フェニル基、アルコキシ基、アミノ基等が挙げられる。置換もしくは無置換のアルコキシ基としては、炭素数1〜12、好ましくは1〜6のアルコキシ基が挙げられ、その置換基としては、ハロゲン原子、水酸基、アミノ基等が挙げられる。
【0010】
さらに、一般式(I)で表される化合物で形成される膜、あるいは一般式(I)で表される化合物を含有する膜を電子輸送層として使用する有機EL素子において、より一層良好な高輝度で耐久性に優れる素子が得られる。すなわち、陽極及び陰極の間に、発光層を含む一層以上の有機化合物層を有する有機EL素子において、発光層と陰極の間に少なくとも一層以上の電子輸送層を有し、その電子輸送層が前記一般式(I)で表される化合物からなるか、あるいは化1で表される化合物を含有する場合に耐久性に優れた有機EL素子が得られる。
【0011】
前記一般式(I)で表される化合物群は、一般有機溶媒への溶解性は低いものの蒸着等の成膜法により容易に均質で透明な膜を形成する。この膜は電子顕微鏡で観察すると緻密な微結晶膜であり、室温で大気下に放置しても1年以上均質透明なままであり安定性の高い膜である。従って、これらの化合物群を使用した有機EL素子は高い耐久性を有することができる。
【0012】
本発明は前記したように有機EL素子中あるいは構成要素として電子輸送層を有する有機EL素子中に特定の化合物を使用させたものであるが、かかる前記一般式(I)で表される化合物についてさらに以下に具体例を挙げて説明する。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0013】
【表1】
【0014】
【表2】
【0015】
【表3】
【0016】
本発明における有機EL素子は、以上で説明した化合物を単独、あるいは他の有機化合物と混在させて、真空蒸着法、溶液塗布法等により薄膜化し、好ましくは他の機能層と積層し、陽極及び陰極で挟持することにより構成される。
【0017】
本発明に係る有機EL素子の代表的な構成例として図1〜図6に示す。
【0018】
図1〜6において、1は陽極、2はホール輸送層、2aは第一ホール輸送層、2bは第二ホール輸送層、3は発光層、4は電子輸送層、4aは第一電子輸送層、4bは第二電子輸送層、5は陰極、6は有機化合物層、6aは発光材料、6bはホール輸送材料である。
【0019】
図1は、陽極1と陰極5の間に電子輸送層と発光層を設けたものである。
図2は、図1において陽極1と発光層3の間にホール輸送層2を設けたものである。
図3は、図2において電子輸送層4を二層以上の層としたもので、電子輸送層は第一電子輸送層4aと第二電子輸送層4bとからなる。
図4は、陽極1と陰極5の間に単層の有機化合物層6を設けたものである。
図5は、陽極1と陰極5との間に発光材料6aを分散させた電子輸送層4を設けたものである。
図6は、陽極1と陰極5の間に第一ホール輸送層2a、第二ホール輸送層2b、発光層3、第二電子輸送層4b及び第一電子輸送層4aを設けたものである。
【0020】
ところで、図4は電極間に有機化合物層を一層だけ設けた単層型の有機EL素子であるが、この場合の好ましい実施態様として分子分散ポリマー系が用いられる。例えば、Appl.Phys.Lett.,61(1992)761、Mol.Cryst.Liq.Cryst.,227(1993)277、応用物理、61(1992)1044にその例が記載されている。この様な単層型素子においても、前記一般式(I)で表される化合物を含有させる事により素子特性を改善できる。
【0021】
この場合、一般式(I)で表される化合物の添加は発光層となる有機化合物層のキャリア輸送性をコントロールするのに使用される。例えば、ポリ(メチルメタクリレート)やビスフェノールAポリカーボネート等の単独ではキャリア輸送性の無い溶媒可溶性のポリマー中へ従来公知のホール輸送性低分子材料と蛍光の強い発光材料と電子輸送性を付加する一般式(I)で表される化合物とを適当な量比で混合分散して一層の有機化合物層を形成し、単層型有機EL素子とする事ができる。
【0022】
又、ポリビニルカルバゾールのようなホール輸送性ポリマー中へ発光材料と電子輸送性を付加する一般式(I)で表される化合物を適当な量比で混合分散させて有機EL素子とする事もできる。
【0023】
この様なポリマー分散層の形成は、適当な有機溶媒にそれぞれの材料を溶解混合し、ディップコーティングやスピンコーティング等の方法で薄膜状に成膜できる。これまでこの様なポリマー分散系で電子輸送性を付加する材料として、2−(4−ビフェニルイル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(PBD)やトリス(8−キノリノラト)アルミニウム錯体(Alq)が使用されているが、PBDの場合は高濃度に分散させると結晶化が経時で発生し、素子劣化を引き起こす欠点が有り、Alqの場合はAlqの発光スペクトルよりも短波長の青色発光素子の作製には使用できない等の欠点が有る。
本発明で使用する一般式(I)で表わされる化合物を発光層中に分散させた素子ではこの様な欠点を回避できる。
【0024】
ポリマー分散系においてキャリア移動度が分散剤濃度に依存し、濃度が高いほど輸送性が高くなることは知られており、この点で本発明の素子は低い駆動電圧を実現でき、それにかかわる耐久性についても向上させる事ができる。本発明では有機化合物層中のポリマー濃度を30wt%未満にしても良好な発光層を作製できる。発光材料は0.1〜10wt%で良く、電子輸送材料の含有量はホール輸送性とのバランスで決定される。
【0025】
本発明においては、例えば、ホール輸送材料としてHTM−1を10〜45wt%、電子輸送材料として例示化合物No.1を80〜20wt%、発光材料としてクマリン6を1wt%、残りをビスフェノールAポリカーボネート樹脂として、1,2−ジクロロエタン溶液を作製し、ディッピングによってITO基板上に30〜200nmの厚さで成膜し、その上に真空蒸着により陰極を形成して有機EL素子を作製できる。
【0026】
陽極材料としてはニッケル、金、白金、パラジウムやこれらの合金、或いは酸化スズ(SnO2)、酸化スズインジウム(ITO)、アクセプター性不純物を含んだ酸化亜鉛(ZnO2)、沃化銅などの仕事関数の大きな金属やそれらの合金、化合物、更には、ポリ(3−メチルチオフェン)、ポリピロール等の導電性ポリマーなどを用いることができる。
【0027】
一方、陰極材料としては仕事関数の小さな銀、スズ、鉛、マグネシウム、マンガン、アルミニウム、リチウム、カルシウム、ストロンチウム等の金属、或いはこれらの合金、或いはn型のシリコン系半導体、ゲルマニウム系半導体、ドナー性不純物を含んだ酸化亜鉛等の半導体を使用できる。
【0028】
有機EL素子を面状発光体として使用する場合には、陽極及び陰極として用いる材料のうち少なくとも一方は、素子の発光波長領域において充分透明であることが望ましい。具体的には80%以上の光透過率を有することが望ましい。この場合、透明な電極の支持体として少なくとも一方はガラスやプラスチック等の透明基板が使用される。これら支持体と電極層の間には平滑性を上げるための層や支持体中からのイオンの拡散を防止する層や紫外線を吸収し、有機層への進入を防止する層や特定の波長を透過する干渉フィルター層を有していても良い。又、支持体の反電極側は紫外線透過防止層や反射防止膜やフィルターを有していてもよい。又、光を拡散させるために表面に凹凸を形成するような処理をしてもよい。又、カラーフィルターや干渉フィルターが積層されていてもよい。
【0029】
本発明の有機EL素子は上記のようにガラス等の透明基板上に順次積層されて素子として構成されるわけであるが、素子の安定性の向上、特に大気中の水分に対する保護のために、別の保護層を設けたり、素子全体をセル中に入れ、シリコンオイル等を封入するようにしたり、真空セル中に入れたりしても良い。保護層としては酸化ゲルマニウムが好適である。
【0030】
本発明で使用される他の構成要素であるホール輸送材料としては、従来公知のものが用いられ、例えば以下に示す化合物が利用できる。
【0031】
【表4】
【0032】
【表5】
【0033】
又、発光層材料としては、従来公知のものが利用でき、例えば以下に示した化合物が用いられる。
【0034】
【表6】
【0035】
又、従来公知のレーザ色素用蛍光材料やキナクリドン化合物、ナフタレンイミド化合物、ペリレンイミド化合物のような蛍光量子収率の高い材料も使用でき、単独での成膜性に劣る材料は適当な材料中へドーピングして使用できる。
【0036】
又、陰極からの電子注入性を改良するためや電子輸送性を改良するために、前記一般式(I)及び/又は一般式(II)で示される化合物と組み合わせて使用される電子輸送材料としては、従来公知の電子輸送材料が使用できるが、好ましくは電子輸送性発光材料であり、成膜性に優れる8−ヒドロキシキノリノールアルミニウム錯体を含むキレート金属錯体系化合物が使用される。
例えば、配位子として、次のような化合物を使用して、Al、Ga、Be、Mg、Zn等の金属とキレート化させた錯体化合物が使用できる。
【0037】
【表7】
【0038】
【実施例】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。
【0039】
実施例1
陽極として、ガラス基板上にSiO2層を下引き層として表面抵抗15Ω/□にスパッタ法により成膜されたインジウム−スズ酸化物(ITO)を用い、中性洗剤、酸素系洗浄剤、イソプロピルアルコールで順次洗浄した後、真空蒸着装置にセットし、1×10-4Paの真空度まで排気した。そしてホール輸送層として前記化合物(HTM−1)を40nm、発光層として前記化合物(EM−1)を15nm、第2電子輸送層として前記化合物No.1を20nm、第1電子輸送層として8−ヒドロキシキノリノールアルミニウム錯体を30nm順次蒸着した。さらに、基板上にマスクをセットし、Mg:Ag=10:1(蒸着速度比)の陰極合金を200nm形成し、発光面積が2mm×2mm角のEL素子を作製した。なお、蒸着時の基板温度は室温で行った。ここで第2電子輸送層に用いたNo.1の化合物層はホールが陰極側へ移動して第1電子輸送層に使用した8−ヒドロキシキノリノールアルミニウム錯体が発光してしまうのを防ぐ機能層として働いている。このようにして作製した素子の陽極及び陰極にリード線を介して直流パルス電源にて10msec周期でオンオフを繰り返すようにして電圧印加時の電流密度が30mA/cm2、デューティー比50%で駆動したところ、初期輝度300cd/m2であった。そのまま、3時間連続発光させた後の発光輝度は初期輝度の50%以上を維持していた。
【0040】
実施例2
第2電子輸送層に前記化合物No.22を使用する以外は実施例1と同様にしてEL素子を作製した。実施例1と同様にして駆動させたところ、初期輝度150cd/m2であり、3時間連続発光させた後の発光輝度は初期輝度の50%以上を維持していた。
【0041】
実施例3
第2電子輸送層に前記化合物No.26を使用する以外は実施例1と同様にしてEL素子を作製した。実施例1と同様にして駆動させたところ、初期輝度190cd/m2であり、50時間連続発光させた後の発光輝度は初期輝度の50%以上を維持していた。
【0042】
比較例1
第2電子輸送層に下記化合物を使用する以外は実施例1と同様にしてEL素子を作製した。
【化3】
電極に定電流直流電源を接続し、電流密度30mA/cm2で3時間連続駆動を行ったところ、初期輝度380cd/m2に対して初期輝度維持率が10%以下であった。
【0043】
比較例2
第2電子輸送層に下記化合物を使用する以外は実施例1と同様にしてEL素子を作製した。
【化4】
電極に定電流直流電源を接続し、電流密度30mA/cm2で3時間連続駆動を行ったところ、初期輝度400cd/m2に対して初期輝度維持率が10%以下であった。
【0044】
比較例3
第2電子輸送層に下記化合物を使用する以外は実施例1と同様にしてEL素子を作製した。
【化5】
電極に定電流直流電源を接続し、電流密度30mA/cm2で3時間連続駆動を行ったところ、初期輝度350cd/m2に対して初期輝度維持率が30%以下であった。
【0045】
【発明の効果】
本発明の有機EL素子は薄膜安定性に優れる電子輸送材料を使用しているため、発光色の異なる種々の発光材料を広い範囲で選択できるうえに連続駆動による輝度低下の少ない耐久性の高いものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る有機EL素子模式断面図。
【図2】本発明に係る有機EL素子模式断面図。
【図3】本発明に係る有機EL素子模式断面図。
【図4】本発明に係る有機EL素子模式断面図。
【図5】本発明に係る有機EL素子模式断面図。
【図6】本発明に係る有機EL素子模式断面図。
Claims (2)
- 陽極及び陰極の間に、発光層を含む一層以上の有機化合物層を有する有機EL素子において、発光層と陰極の間に少なくとも一層以上の電子輸送層を有し、該電子輸送層が前記一般式(I)で表される化合物を含有することを特徴とする請求項1記載の有機EL素子。
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