JP3692442B2 - 灰中ダイオキシンの熱分解装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、ごみ焼却設備で発生する灰、たとえば飛灰中に含まれるダイオキシンを分解する装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
飛灰中に含まれるダイオキシンは、飛灰を、所定の温度、たとえば200〜500℃、好ましくは300〜400℃、望ましくは350℃程度に加熱することにより熱分解することが知られている。
【0003】
従来、飛灰中に含まれるダイオキシンを熱分解する装置として、金属で形成されかつ両端が閉鎖されるとともに、内部全体が熱分解処理室となされた横型円筒状の熱分解槽と、熱分解処理室内に設けられかつ熱分解処理室内に投入された飛灰を攪拌する攪拌機と、熱分解槽の周壁の周囲に配置されかつ熱分解処理室内の飛灰を加熱する電気ヒータとを備えたものが考えられている。
【0004】
そして、この装置では、熱分解処理室内に不活性ガス、たとえば窒素ガスを注入して無酸素雰囲気とし、室内に投入された飛灰を攪拌機で攪拌しつつ、電気ヒータにより槽外から加熱することによりダイオキシンを熱分解するようになっている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の装置を用いた熱分解方法では、槽内の飛灰を電気ヒータにより槽外から加熱しているので加熱効率が悪く、飛灰が所定の温度、たとえば350℃に達するまでに長い時間を要するという問題があった。
【0006】
この発明の目的は、上記問題を解決し、灰を効率良く所定の温度まで加熱することができ、ダイオキシンの熱分解に要する時間を短縮することができる灰中ダイオキシンの熱分解装置を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための装置と発明の効果】
請求項1の発明による灰中ダイオキシンの熱分解装置は、所定温度に加熱された加熱媒体を用いて灰中ダイオキシンを熱分解させる装置であって、所定温度に加熱された加熱媒体とダイオキシンを含有する灰とを受け入れる気密室、および気密室内で加熱媒体と灰とを混合する混合装置からなり、かつ加熱媒体の有する熱で灰を所定温度に加熱して灰中ダイオキシンを熱分解させる熱分解処理装置と、熱分解処理装置の気密室から排出された加熱媒体と処理済み灰とを分離する分離装置と、分離装置において分離された加熱媒体を熱分解処理装置の気密室に戻す加熱媒体搬送装置と、加熱媒体搬送装置の搬送経路の途中で加熱媒体を所定温度に加熱する媒体加熱装置と、分離装置において分離された処理済み灰を所定温度以下に冷却する冷却装置とを備えており、加熱媒体搬送装置が、上下方向に伸びる筒状昇降路と、昇降路内を上下動する加熱媒体積載用かごと、かごを昇降させる昇降駆動装置とよりなり、昇降路の周壁下端部に、分離装置において分離された加熱媒体を昇降路内に導入して下降位置にあるかご内に投入する加熱媒体投入口が形成され、同上端部に、上昇位置にあるかご内の加熱媒体を昇降路外に排出する加熱媒体排出口が形成されており、媒体加熱装置が、加熱媒体搬送装置の昇降路の外部に設けられたガス加熱装置と、昇降路内とガス加熱装置との間で媒体加熱用ガスを循環させるガス循環装置とを備えているものである。
【0008】
請求項1の発明の灰中ダイオキシンの熱分解装置によれば、熱分解処理装置の気密室内に、ダイオキシンを含有した灰と、所定温度に加熱された加熱媒体とが投入される。そして、混合装置により、灰と加熱媒体とが混合されることによって、灰が効率良く所定温度、たとえば350℃以上、好ましくは400℃を越えた温度に加熱され、その結果灰中ダイオキシンが熱分解される。処理済みの灰と加熱媒体とは気密室から排出され、分離装置により分離される。分離された加熱媒体は、加熱媒体搬送装置により熱分解処理装置の気密室に戻される間に、媒体加熱装置によって加熱された後、再度気密室内に投入される。一方、分離された処理済み灰は、冷却装置により所定温度、たとえば200℃以下、好ましくは60℃以下に急冷された後排出される。
【0009】
そして、熱分解処理装置の気密室に投入された灰および加熱媒体を混合装置によって混合することにより、灰が加熱媒体の有する熱で加熱されるので、従来の装置に比べて加熱効率が飛躍的に向上し、気密室内の灰を比較的短時間で所定の温度まで加熱することができる。したがって、灰に含有されているダイオキシンの熱分解に要する時間を短縮することが可能になる。また、加熱媒体は、分離装置により分離された後、加熱媒体搬送装置により熱分解処理装置の気密室に搬送され、この搬送の途中で加熱された後気密室に投入されるので、加熱媒体を繰り返し使用することが可能になる。さらに、ダイオキシンの熱分解処理が行われかつ分離装置により分離された灰は、冷却装置により急冷されるので、処理済み灰の安定化を図ることができ、ダイオキシンの再生成を防止することができる。
【0010】
また、加熱媒体は、加熱媒体搬送装置により熱分解処理装置の気密室に搬送される間に、ガス加熱装置により加熱されかつ昇降路内を通過する媒体加熱用ガスによって加熱される。したがって、全ての加熱媒体を効率良く加熱することができる。
請求項1の発明による灰中ダイオキシンの熱分解装置において、熱分解処理装置の混合装置が、スパイラルリボン状の回転翼を備えていることが好ましい。この場合、加熱媒体と灰とを効果的に攪拌混合することができ、灰の加熱時間を短縮することができる。
【0011】
請求項1の発明による灰中ダイオキシンの熱分解装置において、分離装置が、熱分解処理装置の気密室から排出される処理済み灰および加熱媒体の混合物を受け入れる分離槽と、分離槽内の高さの中間部に設けられ、かつ加熱媒体の通過を防止しうる灰通過間隙を有する板状の分離具とを備えており、分離槽の上端部に混合物受入口が、同下端部に灰送出口が設けられ、分離槽の周壁における混合物受入口と灰送出口との間の高さ位置に加熱媒体出口が設けられ、分離具が加熱媒体出口に向かって下方に傾斜させられていることが好ましい。この場合、分離装置の構成が比較的簡単なものとなる。
【0012】
上記分離具の水平面に対する傾斜角度が5〜45度となされていることが好ましい。この場合、灰を分離具の下方に落下させ、加熱媒体だけを分離槽からスムーズに排出することができる。上記傾斜角度が5度未満であれば、加熱媒体が分離具の上に滞留することがあり、45度を越えると灰も加熱媒体とともに排出されることがある。
【0013】
上記分離具が、互いに間隔をおいて並列状に配された複数の棒状金属材からなり、隣り合う金属材間の間隙が灰通過間隙となされ、灰通過間隙の幅が、加熱媒体の大きさの0.2〜0.9倍となされていることが好ましい。また、上記分離具がふるいからなり、ふるいの網目の大きさが、加熱媒体の大きさの0.2〜0.9倍となされていることが好ましい。いずれの場合も、加熱媒体の分離具下方への落下が防止され、灰だけが分離具の下方へ落下する。上記間隙の幅または網目の大きさが、加熱媒体の大きさの0.2倍未満であると、灰の分離具下方への落下がスムーズに行われず、0.9倍を越えると加熱媒体が分離具下方へ落下するおそれがある。
【0014】
請求項2の発明による灰中ダイオキシンの熱分解装置は、請求項1の発明において、加熱媒体搬送装置のかごの加熱媒体載置用底板が、多数の通風間隙を備えているものである。この場合、かごの加熱媒体載置用底板に乗せられた加熱媒体を一層効率良く加熱することができる。
【0015】
請求項2の発明による灰中ダイオキシンの熱分解装置において、加熱媒体載置用底板が、互いに間隔をおいて並列状に配された複数の棒状金属材からなり、隣り合う金属材間の間隙が通風間隙となされ、通風間隙の幅が、加熱媒体の大きさの0.2〜0.9倍となされていることが好ましい。また、請求項2の発明による灰中ダイオキシンの熱分解装置において、加熱媒体載置用底板が網状体からなり、網状体の網目が通風間隙となされ、網状体の網目の大きさが、加熱媒体の大きさの0.2〜0.9倍となされていることが好ましい。いずれの場合も、加熱媒体の落下を防止するとともに、加熱媒体載置用底板を通過する媒体加熱用ガスによる加熱効率が向上する。
【0016】
請求項3の発明による灰中ダイオキシンの熱分解装置は、請求項1または2の発明において、かごの周面に、昇降路の内周面に沿って転動する転動体が設けられているものである。この場合、かごの昇降がスムーズに行われる。
【0017】
請求項4の発明による灰中ダイオキシンの熱分解装置は、請求項1〜3のうちのいずれかの発明において、かごが上昇位置にあるさいに、かごの加熱媒体載置用底板が、加熱媒体排出口に向かって下方に傾斜させられているものである。
【0018】
請求項5の発明による灰中ダイオキシンの熱分解装置は、所定温度に加熱された加熱媒体を用いて灰中ダイオキシンを熱分解させる装置であって、所定温度に加熱された加熱媒体とダイオキシンを含有する灰とを受け入れる気密室、および気密室内で加熱媒体と灰とを混合する混合装置からなり、かつ加熱媒体の有する熱で灰を所定温度に加熱して灰中ダイオキシンを熱分解させる熱分解処理装置と、熱分解処理装置の気密室から排出された加熱媒体と処理済み灰とを分離する分離装置と、分離装置において分離された加熱媒体を熱分解処理装置の気密室に戻す加熱媒体搬送装置と、加熱媒体搬送装置の搬送経路の途中で加熱媒体を所定温度に加熱する媒体加熱装置と、分離装置において分離された処理済み灰を所定温度以下に冷却する冷却装置とを備えており、加熱媒体搬送装置が、上下方向に伸びる筒状昇降路と、昇降路内に配置されたスクリューコンベアと、スクリューコンベアを回転させる回転駆動装置とよりなり、昇降路の周壁下端部に、分離装置において分離された加熱媒体を昇降路内に導入する加熱媒体投入口が形成され、同上端部に加熱媒体を昇降路外に排出する加熱媒体排出口が形成されており、媒体加熱装置が、加熱媒体搬送装置の昇降路の外部に設けられたガス加熱装置と、昇降路内とガス加熱装置との間で媒体加熱用ガスを循環させるガス循環装置とを備えているものである。この場合、加熱媒体は、加熱媒体搬送装置により熱分解処理装置の気密室に搬送される間に、ガス加熱装置により加熱されかつ昇降路内を通過する媒体加熱用ガスによって加熱される。したがって、全ての加熱媒体を効率良く加熱することができる。
【0019】
請求項6の発明による灰中ダイオキシンの熱分解装置は、請求項5の発明において、スクリューコンベアの羽根に多数の通風穴が形成されているものである。この場合、媒体加熱用ガスによる加熱媒体の加熱効率が一層向上する。
【0020】
請求項7の発明による灰中ダイオキシンの熱分解装置は、請求項1〜6のうちのいずれかの発明において、媒体加熱用ガスが、不活性ガスからなるものである。この場合、不活性ガス雰囲気中において加熱媒体を加熱することができ、加熱媒体に付着した灰からダイオキシンが再生成されない。
【0021】
請求項7の発明において、不活性ガスとしては、窒素ガスや焼却施設の燃焼排ガスが用いられる。燃焼排ガスを用いる場合、コストが安くなる。
【0022】
請求項9の発明による灰中ダイオキシンの熱分解装置は、請求項1〜8のうちのいずれ かの発明において、熱分解処理装置が、気密室内に不活性ガスを供給する不活性ガス供給装置を備えているものである。この場合、ダイオキシンを含有した灰の加熱媒体による加熱を、不活性ガス雰囲気中で行うことができ、ダイオキシンの熱分解が一層促進される。
【0023】
【発明の実施形態】
以下、この発明の実施形態を、図面を参照して説明する。なお、以下の説明において、「鉄」という語はステンレス鋼を除いた鉄系合金および純鉄を意味するものとし、「銅」という語は純銅および銅系合金を意味するものとする。また、この明細書において、「球」という語は、完全な球体の他に、だ円球等の球体に近似した形状のものも含む意味で用いられる。また、以下の説明において、図1の上下、左右をそれぞれ上下、左右といい、図2の右側を前、左側を後というものとする。
【0024】
図1および図2はこの発明による熱分解装置の全体構成を示し、図3〜図7はその要部を示す。
【0025】
図1および図2において、灰中ダイオキシンの熱分解装置は、ステンレス鋼、鉄、銅、セラミックス、ガラスおよび砂利からなる群から選ばれた少なくとも1つの材料で形成された球状体よりなりかつ所定温度に加熱された加熱媒体(A)とダイオキシンを含有する飛灰(B)とを受け入れる気密室(2)、および気密室(2)内で加熱媒体(A)と飛灰(B)とを混合する混合装置(3)からなり、かつ加熱媒体(A)の有する熱で飛灰(B)を所定温度に加熱して飛灰(B)中のダイオキシンを熱分解させる熱分解処理装置(1)と、熱分解処理装置(1)から排出された加熱媒体(A)と処理済み飛灰(B)とを分離する分離装置(4)と、分離装置(4)において分離された加熱媒体(A)を熱分解処理装置(1)の気密室(2)に戻す加熱媒体搬送エレベータ(5)(加熱媒体搬送装置)と、加熱媒体搬送エレベータ(5)の搬送経路の途中で加熱媒体(A)を所定の温度に加熱する媒体加熱装置(6)と、分離装置(4)において分離された処理済み飛灰(B)を所定温度以下に冷却する冷却装置(7)とを備えている。
【0026】
図3に示すように、熱分解処理装置(1)は、内部全体が気密室(2)となされた熱分解槽(8)と、熱分解槽(8)の気密室(2)内に、窒素ガス、燃焼排ガス等の不活性ガスを供給して気密室(2)内を不活性ガス雰囲気とする不活性ガス供給装置(9)とを備えている。熱分解槽(8)の周壁は、その上端部を除いて下方に向かって縮径された円錐状となされている。熱分解槽(8)の頂壁に飛灰投入口(11)が形成され、飛灰投入口(11)に、飛灰を貯留しているホッパ(12)の下端開口がロータリバルブ(13)を介して接続されている(図2参照)。そして、ダイオキシンを含有した飛灰(B)が所定量ずつ気密室(2)内に投入されるようになっている。なお、飛灰投入口(11)とホッパ(12)の下端開口とは、ロータリバルブ(13)に代えて、開閉自在なダンパやスライドゲート等を介して接続されていてもよい。また、熱分解槽(8)の周壁上端部に加熱媒体投入口(14)が形成されている。熱分解槽(8)の下端に加熱媒体(A)および処理済み飛灰(B)からなる混合物を排出する混合物排出口(15)が形成されている。混合物排出口(15)には開閉自在のスライドゲート(16)が設けられている。なお、スライドゲート(16)に代えて、開閉自在のダンパが設けられていてもよい。
【0027】
図3に示すように、熱分解処理装置(1)の混合装置(3)は、気密室(2)内に配置された垂直回転軸(17)と、垂直回転軸(17)に固定されたスパイラルリボン状回転翼(18)とを備えている。垂直回転軸(17)は、熱分解槽(8)の頂壁上に設置された電動機(19)によりその軸線の周りに回転させられるようになっている。スパイラルリボン状回転翼(18)の外周縁は、上端から下方に向かって縮径された円錐面上に位置している。
【0028】
分離装置(4)は、熱分解槽(8)の真下に配置され、かつ熱分解処理装置(1)の気密室(2)から排出される処理済み飛灰(B)および加熱媒体(A)を受け入れる分離槽(21)と、分離槽(21)内の上部に設けられ、かつ加熱媒体(A)の通過を防止しうる灰通過間隙(22a)を有する板状分離具(22)とを備えている。図3および図4に示すように、分離槽(21)の頂壁には処理済み飛灰(B)と加熱媒体(A)との混合物を受け入れる混合物受入口(23)が形成されており、この混合物受入口(23)はスライドゲート(16)を介して熱分解槽(8)の混合物排出口(15)に接続されている。また、分離槽(21)の下部は下方に向かって狭まったホッパ状となされ、その下端に、分離された処理済み飛灰(B)を送り出す灰送出口(24)が形成されている。また、分離槽(21)の周壁上端部における右側部分に、分離された加熱媒体(A)を送り出す加熱媒体送出口(25)が形成されており、分離具(22)は加熱媒体送出口(25)に向かって下方に傾斜させられている。分離具(22)の水平面に対する傾斜角度は5〜45度である。分離具(22)は、前後方向に間隔をおいて並列状に配された左右方向に伸びる複数の金属棒(26)と、左右方向に間隔をおいて複数配され、かつこれらの金属棒(26)を連結する前後方向に伸びる連結棒(27)とからなり、隣り合う金属棒(26)および連結棒(27)に囲まれた間隙が灰通過間隙(22a)となされている。灰通過間隙(22a)の前後方向の幅は、加熱媒体(A)の直径の0.2〜0.9倍となされている。なお、分離具(22)としては、金属棒(26)に代えて帯状金属板やワイヤ等を用いて形成されたものや、ふるいからなるものを用いてもよい。ふるいを用いる場合、ふるいの網目の大きさを、加熱媒体(A)の直径の0.2〜0.9倍とする。
【0029】
加熱媒体搬送エレベータ(5)は、熱分解槽(8)および分離槽(21)の右方に位置するとともに上下方向に伸び、かつ上端が熱分解槽(8)の上端よりも上方に、下端が分離槽(21)の下端よりも下方に位置する上下両端が閉鎖された角筒状昇降路(28)と、昇降路(28)内を上下動する加熱媒体積載用かご(29)と、かご(29)を昇降させる昇降駆動装置(31)とよりなる。昇降路(28)の前壁下端部に、分離装置(4)において分離され、かつ分離槽(21)の加熱媒体送出口(25)から出てきた加熱媒体(A)を昇降路(28)内に導入して下降位置にあるかご(29)内に投入する加熱媒体投入口(32)が形成されている。また、昇降路(28)の左側壁の上端部に、上昇位置にあるかご(29)内の加熱媒体(A)を昇降路(28)外に排出する加熱媒体排出口(33)が形成されている。昇降路(28)の加熱媒体投入口(32)と分離槽(21)の加熱媒体送出口(25)とは、加熱媒体送出口(25)側から加熱媒体投入口(32)側に向けて下り傾斜状となされた連通管路(34)により通じさせられている。連通管路(34)には、スライドゲート(35)が開閉自在に設けられている。連通管路(34)には、スライドゲート(35)に代えて、ダンパが開閉自在に設けられていてもよい。昇降路(28)の加熱媒体排出口(33)と熱分解槽(8)の加熱媒体入口(15)とは、加熱媒体排出口(33)側から加熱媒体入口(15)側に向けて下り傾斜状となされた連通管路(36)を介して通じさせられている。連通管路(36)には、スライドゲート(37)が開閉自在に設けられている。連通管路(36)には、スライドゲート(37)に代えて、ダンパが開閉自在に設けられていてもよい。
【0030】
図5および図6に示すように、加熱媒体用かご(29)の加熱媒体載置用底板(38)は左斜め下向きに傾斜しており、かご(29)が上昇位置にあるときに、ここに載置された加熱媒体(A)は、加熱媒体排出口(33)から転がり出て連通管路(36)を通り、加熱媒体投入口(14)から熱分解槽(8)の気密室(2)内に転がって入るようになっている。加熱媒体載置用底板(38)は、前後方向に間隔をおいて並列状に配された左右方向に伸びる複数の金属棒(39)と、左右方向に間隔をおいて複数配され、かつこれらの金属棒(39)を連結する前後方向に伸びる連結棒(41)とからなり、隣り合う金属棒(39)および連結棒(41)に囲まれた間隙が通風間隙(38a)となされている。通風間隙(38a)の前後方向の幅は、加熱媒体(A)の直径の0.2〜0.9倍となされている。なお、底板(38)としては、金属棒(39)に代えて帯状金属板やワイヤ等を用いて形成されたものや、網状体からなるものを用いてもよい。網状体を用いる場合、その網目が通風間隙となり、その網目の大きさは、加熱媒体(A)の直径の0.2〜0.9倍とする。加熱媒体用かご(29)には、昇降路(28)の内周面に沿って転動する転動体(図示略)が取り付けられている。昇降駆動装置(31)は、電動機(42)と、電動機(42)の軸に取り付けられた巻き上げドラム(43)と、巻き上げドラム(43)に巻き取られるとともに、先端がかご(29)に固定されたワイヤ(44)とよりなる。
【0031】
媒体加熱装置(6)は、加熱媒体搬送エレベータ(5)の昇降路(28)の外部に設けられたガス加熱装置(45)と、昇降路(28)内とガス加熱装置(45)との間で媒体加熱用ガスを循環させるガス循環装置(46)とを備えている。昇降路(28)の周壁における高さの中央部よりも下方の部分にガス入口(47)が形成され、同じく高さの中央部よりも上方の部分にガス出口(48)が形成されている。ガス入口(47)とガス出口(48)との上下方向の間隔はかご(29)の高さとほぼ等しくなっている。ガス循環装置(46)は、一端が昇降路(28)のガス入口(47)に接続されるとともに、他端がガス出口(47)に接続されたガス循環用配管(49)を備えており、この配管(49)の途中にガス加熱装置(45)が設けられている。また、ガス循環装置(46)は、ガス加熱装置(45)で加熱された媒体加熱用ガスを昇降路(28)内に送り込み、昇降路(28)でかご(29)により搬送されている加熱媒体(A)の加熱に供されたガスをガス加熱装置(45)に戻す送風機(図示略)を備えている。
【0032】
図7に示すように、冷却装置(7)は、両端が閉鎖された横向き冷却筒(51)と、冷却筒(51)の周囲に配置されたウォータジャケット(52)とを備えている。冷却筒(51)の周壁の右端部上側に処理済み飛灰投入口(53)が形成され、ロータリーバルブ(54)を介して分離槽(21)の灰送出口(24)に接続されている。また、冷却筒(51)の左端部下側に処理済み飛灰排出口(55)が形成されている。冷却筒(51)内に、処理済み飛灰投入口(53)から投入された処理済み飛灰(B)を処理済み飛灰排出口(55)側に搬送するとともに混合する、たとえばスクリューコンベアからなる搬送兼混合装置(56)が配置されている。そして、投入口(53)から冷却筒(51)内に投入された処理済み飛灰(B)は、搬送兼混合装置(56)により排出口(55)まで混合されつつ搬送される間に、ウォータジャケット(52)内を流れる冷却水により所定温度以下に冷却される。なお、図示の例では、搬送兼混合装置(56)は、回転軸(57)にねじ状に曲げられてなる羽根(58)が固着されたスクリューコンベアからなるが、これに限るものではなく、回転軸(57)に、羽根(58)の面内に位置する曲面状のパドルが、回転軸(57)の長さ方向に間隔をおいて複数固着されたスクリューコンベアからなるものであってもよい。
【0033】
上記構成の熱分解装置を用いての灰中ダイオキシンの熱分解は、次のようにして行われる。
【0034】
すなわち、予め全てのロータリーバルブ(13)(54)およびスライドゲート(16)(35)(37)をそれぞれ閉状態としておき、加熱媒体搬送エレベータ(5)のかご(29)の加熱媒体載置用底板(38)上に加熱媒体(A)を乗せ、これを昇降駆動装置(31)により上昇させる。この上昇時に、ガス循環装置(46)によって昇降路(28)内とガス加熱装置(45)との間で窒素ガスや燃焼排ガス等の不活性ガスからなる媒体加熱用ガスを循環させることにより、ガス加熱装置(45)において加熱された媒体加熱用ガスにより、加熱媒体(A)を高温、たとえば350〜500℃程度に加熱する。
【0035】
かご(29)が上昇位置に来ると、スライドゲート(37)を開状態として加熱媒体(A)を熱分解槽(8)の気密室(2)内に投入する。また、ロータリバルブ(13)を開状態とし、ホッパ(12)内のダイオキシン含有飛灰(B)を飛灰投入口(11)から気密室(2)内に所定量投入する。
【0036】
ついで、スライドゲート(37)およびロータリバルブ(13)を閉状態とするとともに、不活性ガス供給装置(9)により不活性ガスを供給して、熱分解槽(8)の気密室(2)内を不活性ガス雰囲気としておく。ついで、電動機(19)により垂直回転軸(17)を回転させることによって、スパイラルリボン状回転翼(18)により飛灰(B)と加熱媒体(A)とを、1〜120分間混合し、飛灰(B)を所定温度、たとえば350℃以上、好ましくは400℃を越える温度に加熱して飛灰(B)中のダイオキシンを熱分解する。
【0037】
ついで、スライドゲート(16)を開状態とし、処理済み飛灰(B)と加熱媒体(A)との混合物を、排出口(15)および混合物受入口(23)を経て気密室(2)から分離槽(21)内に投入する。ここで、スライドゲート(16)を閉状態とするとともに、スライドゲート(35)を開状態とする。分離槽(21)内に投入された処理済み飛灰(B)と加熱媒体(A)とは分離具(22)により分離され、処理済み飛灰(B)は灰通過間隙(22a)を通って分離具(22)の下方に落下し、灰送出口(24)および処理済み飛灰投入口(53)を経て冷却筒(51)内に入る。一方、加熱媒体(A)は、分離具(22)上を転がり、さらに加熱媒体送出口(25)から転がり出て連通管路(34)に入り、この連通管路(34)を通って加熱媒体投入口(32)から下降位置にあるかご(29)の載置用底板(38)上に載る。そして、かご(29)が上昇する間に再度加熱されて利用される。
【0038】
分離された処理済み飛灰(B)は、搬送兼混合装置(56)により混合されつつ処理済み飛灰排出口(55)に送られる間に、ウォータジャケット(52)内を流れる冷却水により所定温度、たとえば200℃以下、好ましくは60℃以下に急冷され、その結果処理済み飛灰(B)の安定化が図られてダイオキシンの再生成が防止される。その後、処理済み飛灰(B)は処理済み飛灰排出口(55)から排出される。
【0039】
図8はこの発明の他の実施形態を示す。
【0040】
この実施形態の場合、加熱媒体搬送装置(60)は、熱分解槽(8)および分離槽(21)の右方に位置するとともに上下方向に伸び、かつ上端が熱分解槽(8)の上端よりも上方に、下端が分離槽(21)の下端よりも下方に位置する上下両端が閉鎖されたる円筒状昇降路(61)と、昇降路(61)内に配置されたスクリューコンベア(62)と、昇降路(61)の頂壁上に配置されかつスクリューコンベア(62)を回転させる回転駆動用電動機(63)(回転駆動装置)とよりなる。昇降路(61)の周壁における加熱媒体投入口(32)よりも下方にガス入口(47)が形成され、同じく上端部にガス出口(48)が形成されている。その他の構成は、図1〜図7に示す実施形態と同一であり、同一部分には同一符号を付してある。
【0041】
この装置では、加熱媒体(A)はスクリューコンベア(62)により昇降路(61)内を上昇させられる間に、媒体加熱装置(6)により加熱される。
【0042】
図8に示す実施形態において、スクリューコンベア(62)の羽根(62a)には、図9に示すように、多数の通風穴(64)が形成されていることが好ましい。
【0043】
上記2つの実施形態において、媒体加熱装置(6)は、ガス加熱装置(45)により加熱された媒体加熱用ガスを昇降路(28)(61)内に送り込むことによって搬送中の加熱媒体(A)を加熱しているが、これに加えて、またはこれに代えて昇降路(28)(61)の周囲に電気ヒータを配置しておき、この電気ヒータによって搬送中の加熱媒体(A)を加熱してもよい。
【0044】
図10および図11は冷却装置の変形例を示す。
【0045】
図10および図11において、冷却装置(7)の冷却筒(51)内に配置されている搬送兼混合装置(70)は、回転軸(57)に、その周方向に180度離隔した位置にある2つの攪拌パドル(71)からなる対が、その長さ方向に間隔をおいて複数対固着されたものである。回転軸(57)の長さ方向に隣り合う2つの対の攪拌パドル(71)は、回転軸(57)の周方向に互いに90度ずれた位置にある。また、各攪拌パドル(71)は、回転軸(57)を図11に矢印で示す方向に回転させたさいに、処理済み飛灰(B)を処理済み飛灰投入口(53)から処理済み飛灰排出口(55)側に搬送しうるように、若干ねじられている。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明による灰中ダイオキシンの熱分解装置の全体構成を示す一部切り欠き正面図である。
【図2】 同じく一部切り欠き左側面図である。
【図3】 熱分解処理装置および分離装置を拡大して示す垂直断面図である。
【図4】 図3のIV−IV線拡大断面図である。
【図5】 媒体搬送エレベータの一部分を拡大して示す垂直断面図である。
【図6】 図5のVI−VI線拡大断面図である。
【図7】 冷却装置を拡大して示す垂直断面図である。
【図8】 この発明の他の実施形態を示す一部切り欠き正面図である。
【図9】 図8に示す実施形態のスクリューコンベアの変形例を示す部分拡大図である。である。
【図10】 冷却装置の変形例を示す図7相当の図である。
【図11】 図10の冷却装置の搬送兼混合装置を示す部分斜視図である。
【符号の説明】
(1):熱分解処理装置
(2):気密室
(3):混合装置
(4):分離装置
(5):加熱媒体搬送エレベータ(加熱媒体搬送装置)
(6):媒体加熱装置
(7):冷却装置
(9):不活性ガス供給装置
(18):回転翼
(21):分離槽
(22):分離具
(22a):灰通過間隙
(23):混合物受入口
(24):灰送出口
(25):加熱媒体出口
(26):金属棒(棒状金属材)
(28):角筒状昇降路
(29):加熱媒体用かご
(31):昇降駆動装置
(32):加熱媒体投入口
(33):加熱媒体排出口
(38):加熱媒体載置用底板
(38a):通風間隙
(39):金属棒(棒状金属材)
(45):ガス加熱装置
(46):ガス循環装置
(60):加熱媒体搬送装置
(61):円筒状昇降路
(62):スクリューコンベア
(62a):羽根
(63):回転駆動用電動機(回転駆動装置)
(64):通風穴
(A):加熱媒体
(B):飛灰
Claims (9)
- 所定温度に加熱された加熱媒体を用いて灰中ダイオキシンを熱分解させる装置であって、所定温度に加熱された加熱媒体とダイオキシンを含有する灰とを受け入れる気密室、および気密室内で加熱媒体と灰とを混合する混合装置からなり、かつ加熱媒体の有する熱で灰を所定温度に加熱して灰中ダイオキシンを熱分解させる熱分解処理装置と、熱分解処理装置の気密室から排出された加熱媒体と処理済み灰とを分離する分離装置と、分離装置において分離された加熱媒体を熱分解処理装置の気密室に戻す加熱媒体搬送装置と、加熱媒体搬送装置の搬送経路の途中で加熱媒体を所定温度に加熱する媒体加熱装置と、分離装置において分離された処理済み灰を所定温度以下に冷却する冷却装置とを備えており、加熱媒体搬送装置が、上下方向に伸びる筒状昇降路と、昇降路内を上下動する加熱媒体積載用かごと、かごを昇降させる昇降駆動装置とよりなり、昇降路の周壁下端部に、分離装置において分離された加熱媒体を昇降路内に導入して下降位置にあるかご内に投入する加熱媒体投入口が形成され、同上端部に、上昇位置にあるかご内の加熱媒体を昇降路外に排出する加熱媒体排出口が形成されており、媒体加熱装置が、加熱媒体搬送装置の昇降路の外部に設けられたガス加熱装置と、昇降路内とガス加熱装置との間で媒体加熱用ガスを循環させるガス循環装置とを備えている灰中ダイオキシンの熱分解装置。
- 加熱媒体搬送装置のかごの加熱媒体載置用底板が、多数の通風間隙を備えている請求項1記載の灰中ダイオキシンの熱分解装置。
- かごの周面に、昇降路の内周面に沿って転動する転動体が設けられている請求項1または2記載の灰中ダイオキシンの熱分解装置。
- かごが上昇位置にあるさいに、かごの加熱媒体載置用底板が、加熱媒体排出口に向かって下方に傾斜させられている請求項1〜3のうちのいずれかに記載の灰中ダイオキシンの熱分解装置。
- 所定温度に加熱された加熱媒体を用いて灰中ダイオキシンを熱分解させる装置であって、所定温度に加熱された加熱媒体とダイオキシンを含有する灰とを受け入れる気密室、および気密室内で加熱媒体と灰とを混合する混合装置からなり、かつ加熱媒体の有する熱で灰を所定温度に加熱して灰中ダイオキシンを熱分解させる熱分解処理装置と、熱分解処理装置の気密室から排出された加熱媒体と処理済み灰とを分離する分離装置と、分離装置において分離された加熱媒体を熱分解処理装置の気密室に戻す加熱媒体搬送装置と、加熱媒体搬送装置の搬送経路の途中で加熱媒体を所定温度に加熱する媒体加熱装置と、分離装置において分離された処理済み灰を所定温度以下に冷却する冷却装置とを備えており、加熱媒体搬送装置が、上下方向に伸びる筒状昇降路と、昇降路内に配置されたスクリューコンベアと、スクリューコンベアを回転させる回転駆動装置とよりなり、昇降路の周壁下端部に、分離装置において分離された加熱媒体を昇降路内に導入する加熱媒体投入口が形成され、同上端部に加熱媒体を昇降路外に排出する加熱媒体排出口が形成されており、媒体加熱装置が、加熱媒体搬送装置の昇降路の外部に設けられたガス加熱装置と、昇降路内とガス加熱装置との間で媒体加熱用ガスを循環させるガス循環装置とを備えている灰中ダイオキシンの熱分解装置。
- スクリューコンベアの羽根に多数の通風穴が形成されている請求項5記載の灰中ダイオキシンの熱分解装置。
- 媒体加熱用ガスが、不活性ガスからなる請求項1〜6のうちのいずれかに記載の灰中ダイオキシンの熱分解装置。
- 不活性ガスが、窒素ガスまたは燃焼排ガスである請求項7記載の灰中ダイオキシンの熱分解装置。
- 熱分解処理装置が、気密室内に不活性ガスを供給する不活性ガス供給装置を備えている請求項1〜8のうちのいずれかに記載の灰中ダイオキシンの熱分解装置。
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