JP3691960B2 - 雨樋 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、線膨張係数が小さく、四季の温度変化や昼夜の温度差(以下、単に「温度差」という場合がある。)による伸縮量の少ない雨樋に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年の住宅のデザインの多様化、近代化に伴い、雨樋として、各種形状に成形することができる硬質塩化ビニル等の合成樹脂製の雨樋が汎用されている。
ところで、硬質塩化ビニル等の合成樹脂製の雨樋は、線膨張係数が大きいため、温度差によって、その長手方向に大きく伸縮することとなり、これによって、雨樋が継手部から外れたり、蛇行等の変形を起こす等の問題があった。
【0003】
この問題点に対処するために、雨樋の長手方向に連続する鉄芯を配設するようにした雨樋(以下、「鉄芯入り雨樋」という。)が提案されているが、この雨樋の場合、重量が重く、切断がしにくい等の施工上の問題に加えて、切断した雨樋の端面からサビが発生するという耐久性についての問題があった。
また、雨樋の中心部にガラス繊維製の芯材を配設するとともに、芯材の表面を硬質塩化ビニルからなる表層材により覆った雨樋も提案されているが、この雨樋の場合、線膨張係数が大きく、温度差による伸縮量を少なくするという要件を満たすものではなかった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の従来の雨樋の有する問題点に鑑み、線膨張係数が小さく、温度差による伸縮量の少ない、施工性及び耐久性の良好な雨樋を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明の雨樋は、繊維からなる芯材を配設するとともに、該芯材の表面を熱可塑性発泡樹脂からなる表層材により覆った雨樋において、前記芯材に、雨樋の長手方向に連続する繊維と、この繊維と直交する方向に連続し、前記雨樋の長手方向に連続する繊維を固定する繊維とからなり、両繊維の重量比が4:1〜8:1で、前記両繊維は各繊維をまとめて繊維束に形成し、該繊維束をそれぞれ隙間をあけて並設して構成した、目付量が50〜500g/m 2 のクロスを用いたことを特徴とする。
【0006】
この雨樋は、繊維からなる芯材を配設することにより、雨樋全体としての線膨張係数を小さくすることができるとともに、雨樋の表層材を熱可塑性発泡樹脂で以て構成することにより、表層材自体の温度差により生じる応力要因に関係する表層材自体の弾性率を低減することができ、さらに、発泡させることによっての断熱性の向上による温度上昇の抑制効果と相俟って、温度差による伸縮量を少なくすることができる。
また、この雨樋は、繊維からなる芯材と、熱可塑性発泡樹脂からなる表層材とからなることから、重量が軽く、ハサミ又はノコギリ等による切断がし易いことから施工性が良好であり、さらに、切断した雨樋の端面からサビが発生することがなく、耐久性も良好なものとなる。
【0007】
そして、芯材に、雨樋の長手方向に連続する繊維と、この繊維と直交する方向に連続し、前記雨樋の長手方向に連続する繊維を固定する繊維とからなるクロスを用いることにより、芯材を所定の形状に保持することができ、芯材の表面を表層材により均一に覆って、耐久性を有する高品質の雨樋を得ることができる。
【0008】
さらに、芯材を、雨樋の長手方向に連続する繊維と、この繊維と直交する方向に連続し、前記雨樋の長手方向に連続する繊維を固定する繊維の重量比が4:1〜8:1で、前記両繊維は各繊維をまとめて繊維束に形成し、該繊維束をそれぞれ隙間をあけて並設して構成した、目付量が50〜500g/m 2 のクロスを用いることにより、外側の表層材と内側の表層材とを、繊維束の隙間を通して接続、一体化することができ、外側の表層材及び内側の表層材並びに芯材の剥離を防止することができ、耐久性を有する雨樋を得ることができる。
【0009】
また、表層材を構成する熱可塑性発泡樹脂の発泡倍率を、1.2〜3倍に設定することができる。
【0010】
これにより、雨樋として要求される機械的強度、耐候性等のほか、上記の弾性率、重量、切断性等の要件をバランスよく満たすことができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の雨樋の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0012】
この雨樋1は、図1に示すように、雨樋(軒樋)1の少なくとも長手方向に連続する繊維(繊維束)11aを備えた芯材11を配設するとともに、この芯材11の表面を熱可塑性発泡樹脂からなる外側の表層材12aと内側の表層材12bにより覆って構成するようにしている。
【0013】
芯材11を構成する繊維には、ガラス繊維、カーボン繊維、アラミド繊維等の高強度の長繊維を適用し、これにより、雨樋1全体としての線膨張係数を小さくなるようにする。
【0014】
この場合において、芯材11には、雨樋1の長手方向(縦方向)に連続する繊維11aと、この繊維と直交する方向(横方向)に連続し、雨樋1の長手方向に連続する繊維11aを固定する繊維(繊維束)11bとからなるクロスを用いることが望ましい。
なお、芯材11として、ガラス繊維、カーボン繊維、アラミド繊維等の単繊維(単位長さの比較的短い繊維が、一方向に重なり合って1本に連なった状態になったものを含む。)を用いることも可能ではあるが、この場合、クロスと比較して、大量の単繊維を含有させないと目的とする線膨張係数を得ることができず(単繊維の両端は線膨張係数の低下に寄与しないため)、また、製造上も雨樋1の長手方向に単繊維が揃いにくく、製造に困難を伴うことが予想される。
【0015】
この場合、芯材11を構成するクロスに用いる繊維は、繊維束径が、例えば、ガラス繊維の場合には、300〜1500テックス(g/1000m)のものが適当であり、300テックス以下であると、目付量が同じであれば、目が詰まって芯材11と、この芯材11の表面を覆う熱可塑性発泡樹脂からなる外側の表層材12a及び内側の表層材12bとの密着性が低下し、線膨張係数が大きくなるとともに、外側の表層材12a及び内側の表層材12b並びに芯材11が剥離し易くなり、目的とする低伸縮性で、耐久性を有する雨樋を得ることができず、一方、1500テックス以上であると1本の繊維束径が大きくなり、同様の問題が生じる。
なお、芯材11を構成する繊維が、カーボン繊維の場合には、50〜900テックス(g/1000m)のものが適当であり、50テックス以下又は900テックス以上では、上記と同様の理由により問題がある。
【0016】
また、芯材11を構成するクロスの目付量は、50〜500g/m2が適当であり、50g/m2以下であると線膨張係数が大きくなり、目的とする低伸縮性の雨樋を得ることができず、一方、500g/m2以上であると目が詰まって芯材11と、この芯材11の表面を覆う熱可塑性発泡樹脂からなる外側の表層材12a及び内側の表層材12bとの密着性が低下し、線膨張係数が大きくなるとともに、外側の表層材12a及び内側の表層材12b並びに芯材11が剥離し易くなり、目的とする低伸縮性で、耐久性を有する雨樋を得ることができない。
【0017】
また、雨樋1の長手方向に連続する繊維11aと、この繊維と直交する方向に連続する繊維11bの重量比(以下、「縦横比」という。)を、4:1〜8:1、さらに好ましくは、6:1程度に設定するようにする。
この場合、縦横比が4:1以上に横目付比が大きくなると、線膨張係数が大きくなり、目的とする低伸縮性の雨樋を得ることができず、8:1以上に縦目付比が大きくなると、芯材11を所定の形状に保持することが困難となり、製造上芯材11の表面を表層材12a,12bにより均一に覆うことには困難を伴うことが予想される。
なお、クロスの編み方(クロスの形態)は、本実施例のものに限定されるものではない。
【0018】
また、芯材11は、連続する繊維をまとめて繊維束、例えば、ロービング又はヤーンに形成し、この繊維束を隙間をあけて並設して構成することが望ましい。
これにより、上記の50〜500g/m2の目付量で以て、芯材11の表面を覆う熱可塑性発泡樹脂からなる外側の表層材12aと内側の表層材12bとを、芯材11を構成する繊維束の隙間11cを通して接続、一体化することができ、外側の表層材12a及び内側の表層材12b並びに芯材11の剥離を防止することができ、目的とする低伸縮性で、耐久性を有する雨樋1を得ることができる。
【0019】
また、表層材12a,12bを構成する熱可塑性発泡樹脂には、塩化ビニル、塩素化塩化ビニル、アクリル樹脂のほか、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、アクリロニトリル−アクリルゴム−スチレン共重合体、アクリロニトリル−塩素化ポリエチレン−スチレン共重合体、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ナイロン等のエンジニアリングプラスチック、ポリエチレンテレフタレート、非晶性ポリエチレンテレフタレート(ポリジメチルシクロヘキサンテレフタレート)等のポリエステル及びこれらの変性樹脂を用い、さらに、これらの樹脂に、必要に応じて、各種の添加剤等を施すこと、例えば、耐候性を向上するために、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系等の紫外線吸収剤を添加したり、表層材12a,12bの保護層として、耐候性の良好なアクリル系樹脂等の耐候層を多層押出成形、コーティング等により形成したり、衝撃強度を向上するために補強剤を添加したり、加工性を改善するために改質剤、加工助剤を添加したり、線膨張率の低下や剛性の向上を図るために炭酸カルシウム、タルク、マイカ、ガラスビーズ等の無機フィラーや、ガラス繊維、カーボン繊維、アラミド繊維等を添加することができる。
また、これらの樹脂を発泡させる方式としては、アゾジカーボンアミド等のアゾ系発泡剤等の公知の発泡剤を使用する化学的発泡方式のほか、窒素ガス、炭酸ガス、ブタンガス、ヘプタンガス、フロンガス等のガスを使用するガス発泡方式を用いることができる。
【0020】
この場合において、表層材12a,12bを構成する熱可塑性発泡樹脂の発泡倍率は、1.2〜3倍に設定することが好ましく、これにより、雨樋として要求される機械的強度、耐候性等のほか、表層材自体の温度差により生じる応力要因に関係する表層材自体の弾性率、重量、切断性等の要件をバランスよく満たすことができる。特に、表層材12a,12b自体の弾性率を低減することができ、発泡させることによる断熱性の向上と相俟って、雨樋1の温度差による伸縮量を少なくすることができるものとなる。
なお、発泡倍率が1.2倍以下であると、表層材自体の弾性率が上がり、線膨張係数が大きくなり、目的とする低伸縮性の雨樋を得ることができず、一方、3.0倍以上であると、雨樋として要求される機械的強度が得られず、目的とする耐久性を有する雨樋を得ることができない。
【0021】
また、雨樋1の厚み(芯材11と表層材12a,12bを加えた厚み)は、1.0〜5.0mm、さらに好ましくは、1.5〜3.5mmが適当であり、1.0mm以下では機械的強度が低下し、目的とする低伸縮性で、耐久性を有する雨樋を得ることができず、一方、5.0mm以上では表層材12a,12bに対する芯材11の線膨張係数の影響度が弱くなり、線膨張係数が大きくなり、目的とする低伸縮性の雨樋を得ることができない。
【0022】
なお、本実施例の雨樋1においては、芯材11を雨樋1の本体部1aにのみ配設するようにしたが、芯材11を雨樋1の本体部1aから耳部1b,1cにかけて配設するように構成することもできる。
【0023】
次に、本発明の雨樋の製造装置及びこの装置による雨樋の製造工程の一例を、図2に基づいて説明する。
この雨樋の製造装置は、押出機2、オフセットダイ3、冷却槽を備えたサイジング4及び引取機5から構成される。
そして、この製造装置を用いて雨樋1を製造するに当たっては、まず、オフセットダイ3にコイル状に巻かれた芯材11、例えば、繊維束径が1200テックス、目付量450g/m2、縦横比6:1のガラス繊維製クロスの一端を挿入し、サイジング4を介して、引取機5まで通すようにする。
次に、押出機2を運転し、押出機2のシリンダ温度を、表層材12a,12bを構成する熱可塑性発泡樹脂、例えば、適宜の発泡剤を添加した硬質塩化ビニル樹脂に応じて、140〜170℃に設定して、樹脂を押し出し、オフセットダイ3から樹脂が出てきたところで引取機5を運転するようにする。
これにより、オフセットダイ3の内部において、芯材11の表面を熱可塑性発泡樹脂からなる外側の表層材12aと内側の表層材12bにより覆い、さらに、サイジング4により、全体形状を所定の形状、例えば、断面略角形に賦形しながら、引取機5により引き取りをかけることにより、長尺の雨樋1を得ることができる。
このようにして製造した雨樋の特性値を次に示す。
【0024】
【実施例】
(実施例1)
この雨樋は、厚さが2.8mm、発泡倍率が2倍で、線膨張係数は2.0×10−51/℃であった。
この線膨張係数の値は、従来の硬質塩化ビニル樹脂製の雨樋(厚さ1.4〜1.6mm)の線膨張係数が6.0〜7.0×10−51/℃であり、一方、硬質塩化ビニル樹脂製の鉄芯入り雨樋(厚さ1.6mm、鉄芯の厚さ0.2mm)の線膨張係数が1.8×10−51/℃であり、一方、雨樋の中心部にガラス繊維製の芯材を配設するとともに、芯材の表面を発泡させていない硬質塩化ビニルからなる表層材により覆った雨樋(厚さ1.5mm)の線膨張係数が3.0×10−51/℃であることを考慮すると、温度差による伸縮量を少なくするという要件を満たす十分小さい値になっているということができ、雨樋が継手部から外れたり、蛇行等の変形を起こすことを確実に防止することができるものである。
なお、この線膨張係数の値は、芯材11と、この芯材11の表面を覆う熱可塑性発泡樹脂からなる外側の表層材12a及び内側の表層材12bとの密着性を高めることにより、一層小さくすることが期待できるものである。
また、この雨樋は、重量が軽く、ハサミ又はノコギリ等による切断がし易いことから施工性が良好であり、さらに、切断した雨樋の端面からサビが発生することがなく、耐久性も良好なものである。
【0025】
以上、本発明の雨樋を断面略角形の軒樋を例に説明したが、本発明の適用対象はこれに限定されず、各種の断面形状の軒樋のほか、縦樋等にも適用することができる。
【0026】
【発明の効果】
本発明の雨樋によれば、繊維からなる芯材を配設することにより、雨樋全体としての線膨張係数を小さくすることができるとともに、雨樋の表層材を熱可塑性発泡樹脂で以て構成することにより、表層材自体の温度差により生じる応力要因に関係する表層材自体の弾性率を低減することができ、さらに、発泡させることによっての断熱性の向上による温度上昇の抑制効果と相俟って、温度差による伸縮量を少なくすることができ、雨樋が継手部から外れたり、蛇行等の変形を起こすことを確実に防止することができる。
また、この雨樋は、繊維からなる芯材と、熱可塑性発泡樹脂からなる表層材とからなることから、重量が軽く、ハサミ又はノコギリ等による切断がし易いことから施工性が良好であり、さらに、切断した雨樋の端面からサビが発生することがなく、耐久性も良好なものとなる。
【0027】
そして、芯材に、雨樋の長手方向に連続する繊維と、この繊維と直交する方向に連続し、前記雨樋の長手方向に連続する繊維を固定する繊維とからなるクロスを用いることにより、芯材を所定の形状に保持することができ、芯材の表面を表層材により均一に覆って、耐久性を有する高品質の雨樋を得ることができる。
【0028】
さらに、芯材を、雨樋の長手方向に連続する繊維と、この繊維と直交する方向に連続し、前記雨樋の長手方向に連続する繊維を固定する繊維の重量比が4:1〜8:1で、前記両繊維は各繊維をまとめて繊維束に形成し、該繊維束をそれぞれ隙間をあけて並設して構成した、目付量が50〜500g/m 2 のクロスを用いることにより、外側の表層材と内側の表層材とを、繊維束の隙間を通して接続、一体化することができ、外側の表層材及び内側の表層材並びに芯材の剥離を防止することができ、耐久性を有する雨樋を得ることができる。
【0029】
また、表層材を構成する熱可塑性発泡樹脂の発泡倍率を、1.2〜3倍に設定することにより、雨樋として要求される機械的強度、耐候性等のほか、上記の弾性率、重量、切断性等の要件をバランスよく満たすことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の雨樋の一実施例を示し、(A)は一部を破断した全体斜視図、(B)は芯材を拡大した斜視図である。
【図2】 本発明の雨樋の製造装置の一例を示す説明図である。
【符号の説明】
1 雨樋
1a 本体部
1b 耳部
1c 耳部
11 芯材
11a 繊維(縦方向)
11b 繊維(横方向)
12a 表層材(外側)
12b 表層材(内側)
2 押出機
3 オフセットダイ
4 サイジング(冷却槽)
5 引取機
Claims (2)
- 繊維からなる芯材を配設するとともに、該芯材の表面を熱可塑性発泡樹脂からなる表層材により覆った雨樋において、前記芯材に、雨樋の長手方向に連続する繊維と、この繊維と直交する方向に連続し、前記雨樋の長手方向に連続する繊維を固定する繊維とからなり、両繊維の重量比が4:1〜8:1で、前記両繊維は各繊維をまとめて繊維束に形成し、該繊維束をそれぞれ隙間をあけて並設して構成した、目付量が50〜500g/m 2 のクロスを用いたことを特徴とする雨樋。
- 表層材を構成する熱可塑性発泡樹脂の発泡倍率が、1.2〜3倍であることを特徴とする請求項1記載の雨樋。
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