JP3691941B2 - 磁気記録媒体及びその支持体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、磁気テープなどの磁気記録媒体に用いられる支持体と該支持体を用いてなる強磁性金属薄膜型の磁性層を有する磁気記録媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年の磁気記録は高密度記録化の方向にあり、高周波数特性の優れた磁気記録媒体が要望されている。従来は磁性粉を適当なバインダーに分散させて支持体上に塗布したいわゆる塗布型の磁気記録媒体が主流であり、高密度記録に対する要求を満たすために種々の改善がなされているが、ほぼ限界に近づいている。
【0003】
塗布型の磁気記録媒体を超える性能を期待できる磁気記録媒体として、支持体に蒸着等により磁性金属を付着させた磁性層を有するいわゆる金属薄膜型の磁気記録媒体が開発されている。金属薄膜型の磁気記録媒体は、磁性層にバインダーを含まないことから磁性材料の密度を高められるため、高密度記録に有望であるとされている。金属薄膜型の磁性層としては、Co、Co−Ni、Co−Ni−P、Co−O、Co−Ni−O、Co−Cr、Co−Ni−Cr等が検討されている。金属薄膜型の磁気記録媒体を実用化する際の製造法としては、真空蒸着法が最も適しており、この方法でCo−Ni−Oからなる磁性層を形成したHi8方式VTR用テープやCo−Oからなる磁性層を形成したDVC(デジタルビデオカセット)用テープが既に実用化されている。
【0004】
高密度記録を達成する別の方法として、磁気記録媒体の支持体を薄膜化することが考えれられる。通常、磁気記録媒体の支持体としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル系プラスチックをはじめとする非磁性支持体が用いられ、その厚さは例えばVHS型のビデオテープでは16μm程度、8mmビデオテープでは9μm程度であるが、高密度記録(小型・長時間)を達成するために、より一層支持体の薄膜化を進める必要がある。薄膜化されたテープを用いる場合には、今までの厚いテープとの互換性(ヘッドの当たりや走行性など)を得ることが望まれ、この観点から、支持体として剛性の高いポリアミドフィルムが用いられている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、ポリアミドフィルムは現在市販されている量が従来のポリエステルフィルムと比べて格段に少なく、ポリアミドフィルムによる金属薄膜型磁気記録媒体の量的拡大には制約が多い。また、PETやPENをそのまま用いると、剛性が低いので、ヘッドタッチが悪くなり、走行不良や大幅な出力の低下を招くなどの点から、薄膜化には限界があった。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の問題点に鑑み、磁気記録媒体の薄膜化に適した支持体を得るために鋭意研究した結果、特定の構造を有するポリエステル系プラスチックフィルムを用い、更に該フィルムの両面に金属系の強化膜を設けたものを支持体とすることにより、ポリアミドフィルムを用いた場合と同等の剛性を有し、且つ表面性が良好となり出力特性に優れた磁気記録媒体が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち本発明は、粒子を含有し、表面粗さSRa値が10〜60nmであるフィラー面と、粒子と有機化合物を含有する被膜を有し、表面粗さSRa値が1〜6nmであるマット面を持ち、フィラー面の粒子の平均粒子径がマット面の被膜中の粒子の平均粒子径の2倍以上大きく、厚さ2〜5.5μmのポリエステル系プラスチックフィルムの両面に、金属、半金属及び合金並びにこれらの酸化物及び複合物から選ばれた金属材料からなる強化膜が形成されていることを特徴とする磁気記録媒体の支持体を提供するものである。
【0008】
また、本発明は、かかる本発明の支持体と、該支持体のマット面側に形成された磁性層を有する磁気記録媒体であって、該磁性層が前記支持体の強化膜自体からなるか該強化膜を含んで構成され、或いは該強化膜上に形成された少なくとも1層の強磁性金属薄膜から構成されることを特徴とする磁気記録媒体を提供するものである。
【0009】
<支持体>
本発明の支持体は、ポリエステル系プラスチックからなるフィルムと該フィルムの両面に設けられた金属系の強化膜からなる。
【0010】
ここで、ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリテトラメチレンテレフタレート、ポリ−1,4−シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタリンジカルボキシレート、ポリエチレン−p−オキシベンゾエートなどが挙げられる。特にポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)が好ましい。また、これらのポリエステルはホモポリエステルであってもコポリエステルであってもよい。
【0011】
また、本発明の支持体に用いられるポリエステル系フィルムは、厚さが2〜5.5μm、好ましくは3.5〜5.5μmである。本発明の支持体は特定のマット面とフィラー面を有するポリエステル系フィルムに金属系の強化膜を形成するものである。フィルムの曲げ剛性は、フィルムのヤング率、フィルムの厚さにより算出可能であり、更にフィルムの両面に何らかの層を形成する場合は、フィルムの曲げ剛性と形成する層の厚さとヤング率並びにフィルムの厚さから得られるパラメーターとを加味して算出される。このとき、最も外側に剛性の高い層を形成すること、更にはフィルムの両側の最も外側に剛性の高い層を形成することにより、高い曲げ剛性が得られる。曲げ応力がフィルムに加わるとフィルムの一面側は縮み他面側は伸びることになり、フィルムの伸び縮みを阻止することが曲げ剛性の向上につながる。よって、本発明の支持体としてフィルムの両面に硬い膜を形成させる意味がある。一般に金属は酸化物の方が硬度が高くなるので、強化膜の表面部を酸化することにより、本発明の効果は更に向上する。更に、厚さ2〜5.5μmの薄いポリエステル系フィルムを用いる場合でも、フィルムの両側に剛性の高い金属系の強化膜を形成し、その際、強化膜の厚さやヤング率を調節することにより、ポリアミドフィルムに匹敵する曲げ剛性の支持体を得ることができる。本発明のこのような知見によるものであるが、ポリエステル系フィルムの厚さが5.5μmを超えると、強化膜による曲げ剛性の向上効果は少なくなる。これは、一般にフィルムの曲げ剛性は厚さの3乗に比例することから、フィルムの厚さが増えるとフィルムの剛性そのものが向上し、強化膜による剛性の向上率が相対的に減少するからである。また、厚さが2μm未満のポリエステル系フィルムは、基本的にフィルム自体の曲げ剛性が低すぎるため、強化膜による剛性の向上が加味されても十分な剛性が発現するには至らない。本発明における強化膜による剛性の向上効果は厚さ3.5〜5.5μmのフィルムにおいて特に顕著である。
【0012】
また、本発明の支持体に用いられるポリエステル系フィルムは、マット面とフィラー面とを有する。ここで、マット面とは、粒子と有機化合物を含有する被膜が形成された面を言い、通常、該被膜上には微細突起が形成されている。また、フィラー面とは、フィルムに内在する粒子により表面突起が形成される面を言う。
【0013】
本発明に用いられるポリエステル系フィルムは、単層でも使用可能であるが、2層以上の積層フィルムを用いるのが好ましい。
【0014】
マット面の被膜に用いられる粒子の平均粒子径はフィラー面の粒子の平均粒子径の1/2 以下であり、好ましくは5〜50nm、より好ましくは8〜30nmであり、シリカ、炭酸カルシウム、アルミナ、ポリアクリル酸球、ポリスチレン球等が用いられるが、これらに限定されない。被膜中には該粒子は好ましくは0.5〜12.0重量%、より好ましくは0.6〜10.0重量%含まれる。また、有機化合物としては、有機高分子が好ましく、例えばポリビニルアルコール、トラガントゴム、カゼイン、ゼラチン、セルロース誘導体、水溶性ポリエステル、ポリウレタン等の有機高分子又はこれらのブレンド体が使用できるが、これらに限定されない。
【0015】
また、磁気記録媒体の磁性層の耐久性を更に増すために、必要に応じて、マット面を形成する被膜下のポリエステル系フィルム層内には平均粒子径が30〜150nm、好ましくは40〜100nmの粒子を0.01〜1.0重量%、好ましくは0.02〜0.8重量%含ませマット面上に更に表面突起を持たせても良い。ここで使用される粒子は炭酸カルシウム、シリカ、アルミナ、ポリスチレン等が例示されるがこれらに限定されない。
【0016】
フィラー面に用いられる粒子は炭酸カルシウム、シリカ、アルミナ、ポリスチレン等が例示されるがこれらに限定されない。この粒子の平均粒子径は好ましくは100〜1000nmであり、より好ましくは150〜900nmのものが用いられる。粒子の添加量は、好ましくは、フィラー面を構成するポリエステル層の0.05〜1.0重量%であり、より好ましくは0.08〜0.8重量%である。
【0017】
上記平均粒子径は下記の方法により測定されたものである。
即ち、電顕試験台上に粒子粉体を、この粒子ができるだけ重ならないように散在せしめ、電子顕微鏡(好ましくは透過型電子顕微鏡)により倍率100万倍程度で観測し、少なくとも100個の粒子の面積円相当径を求め、この数平均値をもって平均粒子径とする。
【0018】
なお、この平均粒子径をフィルムから求める場合下記の手法等により求められる。
【0019】
a)フィルムマット面に金スパッター装置により金薄膜蒸着層を20〜30nm(Anm)設け、電子顕微鏡(好ましくは走査型電子顕微鏡)により倍率10万倍程度で観測し、少なくとも100個の粒子の面積円相当径を求め、この数平均値より2Anm減じた値をもって平均粒子径とする。
【0020】
b)フィルムフィラー面をイオンエッチングしフィラー面の微粒子をフィルム表面から暴露し電子顕微鏡(好ましくは走査型電子顕微鏡)により倍率1万倍程度で観測し、少なくとも100個の粒子の面積円相当径を求め、この数平均値をもって平均粒子径とする。
【0021】
ポリエステル系フィルムの幅方向(磁気テープとしたときの長手方向に直交する方向)のヤング率は8000MPa以上が好ましく、更に好ましくは8000〜11800MPaである。幅方向のヤング率が8000MPa未満であると、本ポリエステル系フィルムから作成された支持体より作成された磁気記録媒体のビデオテープレコーダー、データーストリーマー装置内での記録、再生時、ヘッドの走行、テープ走行規制ガイドとの接触等によるテープエッジダメージが発生する場合がある。
【0022】
本支持体に用いられるポリエステル系フィルムの長手方向(磁気テープとしたときの長手方向)のヤング率は、6000MPa以下が好ましく、更に好ましくは3900〜5500MPaである。長手方向のヤング率が6000MPaを越えると、本ポリエステル系フィルムから作成された支持体の長手方向の剛性が高くなることがあり、本支持体より作成した磁気記録媒体の従来の磁気記録媒体との互換性がとれなくなる場合がないとは言えないので、長手方向のヤング率は6000MPa以下が好ましい。
【0023】
上記ポリエステル系フィルムのヤング率は、引張試験測定により得られる応力−ひずみ曲線におけるスタート点の立ち上がり勾配からASTM D−882−67に準じて測定され、単位はMPaで表す。このときのサンプル幅、実効長さは10mm、100mmとし、引張速度は100mm/minとした。
【0024】
本発明で用いるポリエステル系フィルムのマット面の微細突起個数は好ましくは300万個〜9000万個/mm2 、より好ましくは500万個〜8000万個/mm2 であり、フィラー面の微細突起個数は好ましくは5000個〜200万個/mm2 、より好ましくは1万個〜200万個/mm2 である。
【0025】
本発明においては、微細突起個数は顕微鏡観察で測定される。マット面の微細突起は1万倍以上(例えば3万倍)の倍率の電子顕微鏡で観察し、被膜の上に突起状に見えるものであり、その突起個数は電子顕微鏡(好ましくは走査型電子顕微鏡)で10視野以上観察して1mm2 あたりに換算して求める。また、フィラー面の微細突起は、1000倍程度の倍率の光学顕微鏡(好ましくは微分干渉顕微鏡)観察により突起状に見えるものであり、その突起個数は光学顕微鏡で1視野以上観察して1mm2 あたりに換算して求める。
【0026】
図7に本発明の支持体のマット面の構造を示す走査型電子顕微鏡写真(倍率3万倍)を、また図8に本発明の支持体のフィラー面の構造を示す微分干渉顕微鏡写真(倍率1000倍)をそれぞれ示した。
【0027】
このようなマット面とフィラー面とを有するポリエステル系フィルムは、以下の方法で得ることができる。
【0028】
溶融、成形、二軸延伸、熱固定からなる通常のプラスチックフィルム製造工程において、共押出し技術の使用により含有粒子を可能な限り除いたマット面用のポリエステル原料(A)と、平均粒子径100〜1000nmの粒子を0.05〜1.0重量%含有させたフィラー面用のポリエステル原料(B)を用いたA/B積層フィルムを押出し、縦方向に90〜150℃で2.5〜7.0倍延伸した後、A層表面に平均粒子径が5〜50nm、好ましくは8〜30nmの微細粒子を0.5〜12.0重量%、好ましくは0.6〜10.0重量%含む有機化合物からなる塗液を塗布する。次に横方向に90〜150℃で3.0〜7.0倍延伸した後、150〜220℃の温度で熱固定を行いつつ1.1倍以上、横に延伸する。このようにして原料A側表面にマット面、B層表面にフィラー面を形成させることができる。原料Aには磁気テープ磁性面の磁気ヘッドによる耐久性を更に増すために、微細粒子を含ませても良い。
【0029】
A層、B層の間に更に層を設け、3層以上の積層構造を有するポリエステル系フィルムを用いてもよい。
【0030】
また、かかるフィルムは、本発明に用いるポリエステル系フィルムのマット面の表面粗さSRa値は1〜6nmであるのが好ましく、より好ましくは2〜5nmである。一方フィラー面の表面粗さSRa値は10〜60nmであるのが好ましく、より好ましくは15〜50nmである。
【0031】
マット面のSRa値は表面A上に形成させた被膜内の微粒子種類、添加量、ポリエステルA層内部の微細粒子の調整により調整することができる。フィラー面のSRa値は層B内の粒子種類、添加量の調整により調整することができる。
【0032】
なお、この表面粗さSRa値はJIS B 0601で規定する中心線平均粗さ(Ra)に相当する中心線面平均粗さであり、次の方法により測定されたものである。
小坂研究所製の光触針式(臨界角焦点エラー検出方式)の3次元粗さ計(ET−30HK)を使用して測定した。SRa値の測定は試料表面にAl蒸着を施し光の反射率を増大させて行った。測定方向は幅方向とし、カットオフ値は0.08mm、測定長は0.1〜0.25mm、送りピッチは0.2μm、測定スピードは20μm/s、測定本数は100本とした。単位はnmとした。
【0033】
通常、本発明の支持体では、当該フィルムのマット面側に磁性層が形成され、フィラー面側にはバックコート層が形成される。
【0034】
また、フィルムの両面に形成される強化膜は、金属、半金属及び合金並びにこれらの酸化物及び複合物から選ばれた金属材料からなる。具体的には、Al、Cu、Zn、Sn、Ni、Ag、Co、Fe、Mnなどの金属、Si、Ge、As、Sc、Sbなどの半金属が挙げられる。これらの金属及び半金属の合金としては、Fe−Co、Fe−Ni、Co−Ni、Fe−Co−Ni、Fe−Cu、Co−Cu、Co−Au、Co−Y、Co−La、Co−Pr、Co−Gd、Co−Sm、Co−Pt、Ni−Cu、Mn−Bi、Mn−Sb、Mn−Al、Fe−Cr、Co−Cr、Ni−Cr、Fe−Co−Cr、Ni−Co−Cr等が挙げられる。また、これらの金属、半金属及び合金の酸化物は、例えば蒸着時に酸素ガスを導入することで容易に得られる。また、これらの金属、半金属及び合金の複合物としては、Fe−Si−O、Si−C、Si−N、Cu−Al−O、Si−N−O、Si−C−Oなどが挙げられる。
【0035】
強化膜の形成方法は問わないが、真空蒸着法が一般的であり、その他にもスパッタ法やイオンプレーティング法などを用いることができる。特に強化膜となる金属材料としては、コバルトを主体とする強磁性金属とその酸化物が好適であり、この場合、真空中の斜め蒸着により、強化膜を形成することが好ましい。
【0036】
強化膜の厚さは、20〜500nmが好ましく、より好ましくは50〜300nmである。
【0037】
本発明では、特に、強化膜が、金属、半金属及び合金から選ばれた金属材料の酸化物を含み、該強化膜中の酸素濃度の分布が該強化膜の表面近傍で大きいことが好ましく、更に、強化膜中の酸素濃度の分布が該強化膜の表面近傍と該強化膜と前記フィルムの界面近傍で大きいことが、フィルムの剛性の面で好ましい。このような酸素分布を有する強化膜は、成膜時又は成膜後、表面を酸化性ガスで強制的に酸化処理することにより作製することができる。また、強化膜中の酸素濃度分布の測定は、オージェ電子分光分析の深さ方向の分析により行うことができる。ただし、強化膜の表面やフィルムとの界面付近は異物の混入などの影響により、オージェプロファイルの形状を正確に求めることは困難であり、本発明においてこれらの部分の酸素濃度の変化は排除される。
【0038】
ここで、「酸素濃度が大きい」とは、相対的にその他の部分よりも酸素濃度が大きいことであり、特に濃度の変動が10原子%以上ある場合を含む。
【0039】
本発明において、強化膜はポリエステル系フィルムの両面に形成されるが、両面とも同一の金属材料で形成することが生産性の面から望ましく、特に本発明では両面の強化膜をCoとその酸化物から形成することが好ましい。
【0040】
<磁気記録媒体>
本発明の磁気記録媒体は、上記の本発明の支持体のマット面側に少なくとも一層の強磁性金属薄膜からなる磁性層を有する。磁性層は、本発明の支持体の強化膜自体からなるか該強化膜を含んで構成され、或いは該強化膜上に形成された少なくとも1層の強磁性金属薄膜から構成される。
【0041】
本発明において、金属薄膜型の磁性層を形成する磁性材料としては、通常の金属薄膜型の磁気記録媒体の製造に用いられる強磁性金属材料が挙げられ、例えばCo、Ni、Fe等の強磁性金属、また、Fe−Co、Fe−Ni、Co−Ni、Fe−Co−Ni、Fe−Cu、Co−Cu、Co−Au、Co−Y、Co−La、Co−Pr、Co−Gd、Co−Sm、Co−Pt、Ni−Cu、Mn−Bi、Mn−Sb、Mn−Al、Fe−Cr、Co−Cr、Ni−Cr、Fe−Co−Cr、Ni−Co−Cr等の強磁性合金が挙げられる。また、これら金属もしくは金属合金の窒化物、炭化物、酸化物も好ましい。
【0042】
高密度記録のためには磁気記録媒体の磁性層は、斜め蒸着又はスパッタなどにより基材上に形成される。斜め蒸着やスパッタの方法は特に限定されず、従来公知の方法に準ずる。蒸着の際の真空度は10-4〜10-7Torr程度である。
【0043】
特に、支持体の強化膜がCo等の強磁性金属から形成されている場合は、当該強化膜を磁性層としてもよく、特に本発明では、真空中での斜め蒸着により、支持体の一面にコバルトを主体とする強磁性金属を付着させて形成した強化膜を磁性層とすることが好ましい。この場合、蒸着中に酸素ガスを導入してコバルトを主体とする強磁性金属の酸化物が含まれるようにすることが一層望ましい。
【0044】
更に、支持体上にバックコート層を形成することができる。バックコート層は、カーボンブラックやバインダーを主成分とする厚さ0.2〜1.0μm程度の塗布型のバックコート層でもよいし、蒸着法、直流スパッタ法、交流スパッタ法、高周波スパッタ法、直流マグネトロンスパッタ法、高周波マグネトロンスパッタ法、イオンビームスパッタ法などの乾式メッキ手段により、真空中で金属又は半金属を支持体に付着させて形成された金属薄膜型のバックコート層でもよい。後者の場合、バックコート層として付着する金属としては、いろいろ考えられるが、Al、Cu、Zn、Sn、Ni、Ag、Coなど及びこれらの合金が用いられ、Al、CoやCu−Al合金が好適である。また、バックコート層を形成する半金属としては、Si、Ge、As、Sc、Sbなどが用いられ、Siが好適である。更に蒸着時に前記金属又は半金属に酸化反応、炭化反応等をさせた酸化膜、炭化膜などのようにセラミックス化したものも好適である。また、更に添加物をドープし、導電率を向上させることは好ましい。金属薄膜型のバックコート層の厚さは、0.05〜1.0μm程度である。バックコート層は金属薄膜型が好ましく、かかるバックコート層は、本発明の支持体の強化膜自体からなるか該強化膜を含んで構成され、或いは該強化膜上に形成された少なくとも1層の強磁性金属薄膜から構成されることが好ましい。特に支持体の強化膜をバックコート層とすることが好ましい。
【0045】
また、本発明の磁気記録媒体においては、磁性層上に厚さが1〜50nmの保護膜が設けられるのが好ましい。保護層を構成する材料として、Al等の金属の酸化物、窒化物、あるいは炭化物などの他、SiC等、及びそれを含む化合物などが考えられる。また、特に、炭素膜、中でもダイヤモンドライクカーボンが好ましい。ダイヤモンドライクカーボンよりなる保護層はフィジカルベーパーデポジション(PVD)法又はケミカルベーパーデポジション(CVD)法により形成される。特に、ECRプラズマCVD装置により形成される。即ち、真空槽内に配設された支持体上の磁性層に対してECRプラズマCVD装置を作動させ、磁性層に炭化水素系ガスのプラズマを吹き付ける。これにより、磁性層表面に保護層(ダイヤモンドライクカーボン層)が形成される。
【0046】
更に、本発明の磁気記録媒体においては、磁性層又は保護層上に適当な潤滑剤からなる潤滑剤層を形成することが好ましい。特にパーフルオロポリエーテル等のフッ素系の潤滑剤が好ましく、潤滑剤層の厚さは0.5〜10nm程度である。潤滑剤としては、例えば-[C(R)F-CF2-O]p-(但し、RはF,CF3, CH3などの基) 、特にHOOC-CF2(OC2F4)p(OCF2)q-OCF2COOH,F-(CF2CF2CF2O)n-CF2CF2COOH 等のカルボキシル基変性パーフルオロポリエーテル、HOCH2-CF2(OC2F4)p(OCF2)q-OCF2-CH2OH, HO-(C2H4O)m-CH2-(OC2F4)p(OCF2)q-OCH2-(OCH2CH2)n-OH, F-(CF2CF2CF2O)n-CF2CF2CH2OH等のアルコール変性パーフルオロポリエーテルが挙げられる。分子量は500〜50000のものが好ましい。具体的には、モンテカチーニ社の商品名「FOMBLIN Z DIAC」や「FOMBLIN Z DOL」、ダイキン工業社の商品名「デムナムSA」等がある。特に耐久性の面ではフッ素系アルキル基とアルキル基の両方を持つ潤滑剤の使用が好ましい。また、これらの潤滑剤を混合して使用することも好ましい。
【0047】
なお、本発明においては、バックコート層上にも上記のような潤滑剤層を形成することが走行性の面から好ましい。
【0048】
本発明において、各磁性層の厚さは、2層の場合、下層の磁性層の厚さが10〜200nm、上層の磁性層の厚さが5〜100nmが好ましく、3層の場合、下層の磁性層の厚さが10〜200nm、中間の磁性層の厚さが10〜100nm、上層の磁性層の厚さが5〜100nmが好ましい。また磁性層の数は高周波記録媒体程多い方が良いが、実用的な範囲としては2〜5層、特に2〜3層が適当と考えられる。多層の磁性層は、一層ずつ形成しても、二以上の装置を用いて連続的に成膜してもよい。
【0049】
また、本発明の磁気記録媒体の保磁力は、磁性層全体の保磁力として1200(Oe)(95KA/m)以上であるのが好ましく、特に1300(Oe)(103KA/m)以上が好ましい。
【0050】
【発明の実施の形態】
以下実施例にて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例17、18、20は比較例であるが、便宜的に実施例として示したものである。
【0051】
実施例1
(1)支持体の製造
下記の方法で、マット面とフィラー面を有する厚さ4.9μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを得た。
【0052】
実質的に不活性粒子を含有しないポリエチレンテレフタレートに平均粒子径60nmのシリカを0.03重量%含有させた原料Aと、実質的に不活性粒子を含有しないポリエチレンテレフタレートに平均粒子径300nmの炭酸カルシウムを0.20重量%含有させた原料Bとを厚み比5:1の割合で共押出しし、ロール延伸法で110℃で3.0倍に縦延伸した。
【0053】
縦延伸の後の工程で、片側表面Aの外側に下記水溶液を塗布した。
その後、ステンターにて横方向に105℃で3.3倍に延伸し、更に215℃で1.56倍に横延伸しながら熱処理し、中間スプールに巻き、スリッターで小幅にスリットし、円筒コアーにロール状に巻取り、マット面A(原料Aに水溶液を塗布し被膜を形成した面)とフィラー面B(原料Bよりなる面)を有する厚さ4.9μmのロール状ポリエステルフィルムを得た。
【0054】
本ポリエステルフィルムはマット面の微細突起個数が1800万個/mm2 で、SRa値が3nmであった。フィラー面の微細突起個数は25万個/mm2 で、SRa値が20nmであった。ヤング率は長手方向/幅方向で4200MPa/9000MPaであった。
【0055】
次いで、このPETフィルムの両面に、図1の装置を用いて、それぞれ厚さ120nmのCo強化膜を成膜し、強化膜が形成された支持体を製造した。この時の蒸着条件は、最大入射角60°、フィルム走行速度1.5m/分、電子銃パワー16kW、ノズル14aからの酸素ガス流量10SCCM、ノズル14cからの酸素ガス流量60SCCMであった。なお、図1は真空蒸着装置の概略図であり、図1において、1は支持体、10は冷却キャンロール、11はルツボ、12はCo、13は防着板、14a、14b、14cは酸素ガスノズル、15は電子銃、16は真空チャンバである。本例では酸素ガスノズル14bは使用しなかった。
【0056】
得られた支持体のマット面側の強化膜の元素分布をオージェ電子分光法により分析した結果を図3に示す。ここで、オージェ電子分光法は、電子銃条件として電子銃加速電圧10kV、エミッション電流10nA、倍率2000倍であり、エッチング条件として、エッチングガスがアルゴンガスで、加速電圧3kV、イオン電流300nAであり、この条件下で25秒間毎にエッチングして行った(以下同じ)。図3から、この支持体のマット面側の強化膜は、その表面近傍と、強化膜とPETフィルムの界面近傍で酸素濃度が高いことがわかる。
【0057】
(2)磁気テープの製造
上記で得られた支持体フィルムを再度図1の装置にセットし、支持体のマット面側のCo強化膜上に、厚さ90nmのCo磁性層を形成した。この時の蒸着条件は、フィルム走行速度1.3m/分、電子銃パワー15kW、ノズル14cからの酸素ガス流量50SCCMであった(ノズル14a、14bは使用せず)。
【0058】
次いで、該Co磁性層上にCVD法によりダイヤモンドライクカーボンからなる厚さ10nmの保護層を形成した。更に該保護層上とフィラー面側のCo強化膜上に、フッ素系潤滑剤〔商品名:AM2001(ダイキン工業社製)〕をそれぞれ厚さが2nmとなるように付着して潤滑剤層を形成した。
【0059】
上記により得られた、Co強化膜、Co磁性層、ダイヤモンドライクカーボン保護層及びフッ素系潤滑層が形成されたフィルムを8mm巾に裁断し、カセットケースにローディングし、8mmビデオテープを得た。
【0060】
(3)性能評価
上記で得られた8mmビデオテープについて、出力、走行性(ジッタ)及びヘッドタッチの指標としてエンベロープを以下の方法で評価した。走行性は走行に伴う電磁変換特性の変化を表すジッタを指標とした。その結果を表1に示す。
【0061】
▲1▼出力
8mmVTRを改造したデッキを用いて、表1の周波数での出力を測定し、本実施例1を基準(0dB)とする相対評価とした。
【0062】
▲2▼ジッタ
ジッタは、市販の8mmVTRを改造し、これにジッタメーターを接続して測定した。
【0063】
▲3▼エンベロープ
エンベロープは、アドバンテスト社のTR4171型スペクトラアナライザを用い、RBW=10kHz、VBW=30kHz、周波数スパン=0MHz、スイープタイム=40ms、アベレージ=16回の条件で得られた出力波形(エンベロープ)をオシロスコープで測定し、図2に示すように、出力波形の最大値Bと最小値Aから欠け量として下記のように算出した。
欠け量(dB)=20log(A/B)
欠け量の小さいもの程ヘッドタッチが良好である。
【0064】
実施例2
実施例1において、マット面の微細突起個数が8000万個/mm2 で、SRa値が2nmである以外は、同様の厚さ4.9μm、ヤング率は長手方向/幅方向で4200MPa/9000MPaのPETフィルムを用いて実施例1と同様に8mmビデオテープを製造し、実施例1同様の性能評価を行った。その結果を表1に示す。なお、ここで用いたPETフィルムは、実施例1のPETフィルム製造において、原料Aから平均粒子径60nmのシリカを除き、片面表面Aの外側に塗布される水溶液に含まれる極微細シリカの平均粒子径を10nmとした以外は実施例1と同様にして製造されたものである。
【0065】
実施例3
実施例1において、フィラー面の微細突起個数が100万個/mm2 で、SRa値が40nmである以外は、同様の厚さ4.9μm、ヤング率は長手方向/幅方向で4200MPa/9000MPaのPETフィルムを用いて実施例1と同様に8mmビデオテープを製造し、実施例1同様の性能評価を行った。その結果を表1に示す。なお、ここで用いたPETフィルムは、実施例1のPETフィルム製造において、原料Bに含まれる炭酸カルシウムの含有量を0.60重量%とした以外は実施例1と同様にして製造されたものである。
【0066】
実施例4
実施例1において、PETフィルムに代えて厚さ4.2μmポリエチレンナフタナフタレート(PEN)フィルムを用いた以外は実施例1と同様にして8mmビデオテープを製造し、実施例1同様の性能評価を行った。その結果を表1に示す。なお、ここで用いたPENフィルムは、マット面の微細突起個数が600万個/mm2 で、SRa値が2nmであった。フィラー面の突起個数は7万個/mm2 で、SRa値は17nmであった。ヤング率は長手方向/幅方向で5500MPa/11000MPaであった。また、このPENフィルムは実施例1のPETフィルム製造において、原料をポリエチレンテレフタレートからポリエチレン−2,6−ナフタレートと変更し、縦延伸温度、倍率を135℃で5.0倍とし、横延伸温度、倍率を135℃、6.0倍とし、更に160℃で1.2倍に横に延伸し、200℃で熱処理と変更した以外は実施例1と同様にして製造されたものである。
【0067】
実施例5
実施例1において、蒸着装置の酸素ガスノズル14aからの酸素ガスの導入をせずに両面の強化膜を形成し、その他は実施例1と同様にして、8mmビデオテープを製造し、実施例1同様の性能評価を行った。その結果を表1に示す。なお、得られた支持体のマット面側の強化膜の元素分布をオージェ電子分光法により分析した結果を図4に示す。図4から、この支持体のマット面側の強化膜は、その表面近傍で酸素濃度が高いことがわかる。
【0068】
実施例6
実施例1において、支持体に強化膜を形成する際に全く酸素ガスを導入をせず、その他は実施例1と同様にして、8mmビデオテープを製造し、実施例1同様の性能評価を行った。その結果を表1に示す。なお、得られた支持体のマット面側の強化膜の元素分布をオージェ電子分光法により分析した結果を図5に示す。図5から、この支持体のマット面側の強化膜は、酸素濃度がほぼ一定であることがわかる(表面近傍がわずかに酸素濃度が高いのは自然酸化によるものである)。
【0069】
実施例7
(1) 支持体の製造
実施例1の製造法において、共押出しフィルムの厚さを0.8倍、押出し速度を1.2倍とし、他は同様にして、マット面とフィラー面を有する厚さ3.5μmのPETフィルムを得た。
本ポリエステルフィルムのマット面の微細突起個数が1800万個/mm2 で、SRa値が3nmであった。フィラー面の突起個数は25万個/mm2 で、SRa値は20nmであった。ヤング率は長手方向/幅方向で4300MPa/9200MPaであった。
【0070】
次いで、このPETフィルムの両面に、図1の装置を用いて、マット面に厚さ100nmのSiOx 強化膜を成膜し、フィラー面に厚さ150nmのSiOx 強化膜を成膜し、強化膜が形成された支持体を製造した。この時の蒸着条件は、最大入射角40°、電子銃パワー18kW、ノズル14aからの酸素ガス流量20SCCM、ノズル14cからの酸素ガス流量30SCCMであり、フィルム走行速度はマット面で3m/分、フィラー面で4.5m/分であった。
【0071】
(2)磁気テープの製造および性能評価
上記で得られた支持体フィルムを再度図1の装置にセットし、支持体のマット面側のSiOx 強化膜上に、厚さ150nmのCo磁性層を形成した。この時の蒸着条件は、最大入射角60°、フィルム走行速度1.0m/分、電子銃パワー16kW、ノズル14cからの酸素ガス流量70SCCMであった(ノズル14a、14bは使用せず)。
【0072】
次いで、実施例1と同様にダイヤモンドライクカーボンからなる保護層、フッ素系潤滑剤を形成し、8mmビデオテープを製造し、実施例1同様の性能評価を行った。その結果を表1に示す。
【0073】
実施例8
実施例7において、SiOx 強化膜の形成の際に蒸着装置の酸素ガスノズル14bのみから酸素ガスを導入(流量50SCCM)して両面の強化膜を形成し、その他は実施例7と同様にして、8mmビデオテープを製造し、実施例1同様の性能評価を行った。その結果を表1に示す。なお、得られた支持体のマット面側の強化膜の元素分布をオージェ電子分光法により分析した結果を図6に示す。図6に示されるように、この支持体のマット面側の強化膜中の酸素濃度は、その表面近傍は自然酸化によりやや高くなり、深さ方向に向かうにつれて一旦酸素濃度が減少するが徐々に増加し、再度ゆるやかに減少している。
【0074】
実施例9
実施例7において、支持体のマット面に形成するSiOx 強化膜をNi−O強化膜に代えた以外は実施例7と同様にして、8mmビデオテープを製造し、実施例1同様の性能評価を行った。その結果を表1に示す。なお、Ni−O強化膜を形成する際の蒸着条件は、最大入射角50°、電子銃パワー12kW、フィルム走行速度1.2m/分、ノズル14aからの酸素ガス流量20SCCM、ノズル14cからの酸素ガス流量40SCCMであった。
【0075】
実施例10
実施例7において、PETフィルムに代えて厚さ2.5μmのPENフィルムを用いた以外は実施例7と同様にして8mmビデオテープを製造し、実施例7同様の性能評価を行った。その結果を表1に示す。
なお、ここで用いたPENフィルムは、マット面の微細突起個数が600万個/mm2 で、SRa値が2nmであった。フィラー面の突起個数は7万個/mm2 で、SRa値は17nmであった。ヤング率は長手方向/幅方向で6000MPa/11000MPaであった。また、このPENフィルムは実施例4のPENフィルム製造において、共押出しフィルムの厚さを0.7倍、押出し速度を1.2倍とし、他は同様にして得た。
【0076】
実施例11
実施例7において、厚さ5.5μmのPETフィルムを用いた以外は実施例1と同様にして8mmビデオテープを製造し、実施例1同様の性能評価を行った。その結果を表1に示す。
なお、ここで用いたPETフィルムは、マット面の微細突起個数が1600万個/mm2 で、SRa値が3nmであった。フィラー面の突起個数は15万個/mm2 で、SRa値は18nmであった。ヤング率は長手方向/幅方向で4300MPa/9100MPaであった。また、ここで用いられたPETフィルムは実施例1のPETフィルム製造において、共押出しフィルムの厚さを1.2倍とし、他は同様にして得た。
【0077】
実施例12
実施例9において、マット面側のNi−O強化膜とフィラー面側のSiOx 強化膜の厚さをそれぞれ2倍にした(フィルム走行速度を半分にした)以外は実施例1と同様にして、8mmビデオテープを製造し、実施例1同様の性能評価を行った。その結果を表1に示す。
【0078】
実施例13
実施例9において、マット面側のNi−O強化膜とフィラー面側のSiOx 強化膜の厚さをそれぞれ半分にした(フィルム走行速度を2倍にした)以外は実施例1と同様にして、8mmビデオテープを製造し、実施例1同様の性能評価を行った。その結果を表1に示す。
【0079】
実施例14
図1の装置を用いて、実施例1で得られたポリエステルフィルムのマット面に厚さ140nmのCo強化膜を成膜し、一方フィラー面には厚さ140nmのCo強化膜を成膜した。その後、実施例1と同様にマット面の強化膜上に保護層を形成し、更に該保護層上とフィラー面のCo強化膜上に潤滑剤層を形成した。その後実施例1と同様に8mmビデオテープを製造し、実施例1同様の性能評価を行った。その結果を表1に示す。
【0080】
実施例15
実施例1のPETフィルム製造において、215℃での横延伸倍率を1.24倍と変更した以外は実施例1と同様にして得た厚さ4.9μmのPETフィルムを用い、8mmビデオテープを製造し、実施例1同様の性能評価を行った。その結果を表1に示す。
なお、ここで用いたPETフィルムは、マット面の微細突起個数が2000万個/mm2 で、SRa値が3nmであった。フィラー面の突起個数は32万個/mm2 で、SRa値は25nmであった。ヤング率は長手方向/幅方向で4300MPa/7500MPaであった。
【0081】
実施例16
実施例4のPENフィルム製造において、縦延伸倍率を5.8倍と変更した以外は実施例4と同様にして厚さ4.2μmのPENフィルムを用い、8mmビデオテープを製造し、実施例1同様の性能評価を行った。その結果を表1に示す。
なお、ここで用いたPENフィルムは、マット面の微細突起個数が700万個/mm2 で、SRa値が2nmであった。フィラー面の突起個数は6万個/mm2 で、SRa値は16nmであった。ヤング率は長手方向/幅方向で6500MPa/11000MPaであった。
【0082】
実施例17
実施例1のPETフィルム製造において、原料B内の炭酸カルシウムの平均粒子径を8nmとした。その他は実施例1と同様にして厚さ4.9μmのポリエステルフィルムを得た以外は実施例1と同様にして8mmビデオテープを製造し、実施例1同様の性能評価を行った。その結果を表1に示す。
なお、ここで用いたPETフィルムは、マット面の微細突起個数が1800万個/mm2 で、SRa値が3nmであった。フィラー面の突起個数は300万個/mm2 で、SRa値は8nmであった。ヤング率は長手方向/幅方向で4300MPa/9100MPaであった。
【0083】
実施例18
実施例1のPETフィルム製造において、原料B内の炭酸カルシウムの平均粒子径を1200nmとした。その他は実施例1と同様にして厚さ4.9μmのポリエステルフィルムを得た以外は実施例1と同様にして8mmビデオテープを製造し、実施例1同様の性能評価を行った。その結果を表1に示す。
なお、ここで用いたPETフィルムは、マット面の微細突起個数が1800万個/mm2 で、SRa値が3nmであった。フィラー面の突起個数は4000個/mm2 で、SRa値は70nmであった。ヤング率は長手方向/幅方向で4300MPa/9100MPaであった。
【0084】
実施例19
実施例1のPETフィルム製造において、片側表面Aの外側に塗布される水溶液に含まれる極微細シリカの平均粒子径を4nmとした以外は実施例1と同様にして厚さ4.9μmのPETフィルムを用い、8mmビデオテープを製造し、実施例1同様の性能評価を行った。その結果を表1に示す。
なお、ここで用いたPETフィルムは、マット面の微細突起個数が1.1億個/mm2 で、SRa値が2nmであった。フィラー面の突起個数は25万個/mm2 で、SRa値は20nmであった。ヤング率は長手方向/幅方向で4300MPa/9100MPaであった。
【0085】
実施例20
実施例1のPETフィルム製造において、片側表面Aの外側に塗布される水溶液に含まれるシリカの平均粒子径を60nmとした以外は実施例1と同様にして厚さ4.9μmのPETフィルムを用い、8mmビデオテープを製造し、実施例1同様の性能評価を行った。その結果を表1に示す。
なお、ここで用いたPETフィルムは、マット面の微細突起個数が200万個/mm2 で、SRa値が8nmであった。フィラー面の突起個数は25万個/mm2 で、SRa値は20nmであった。ヤング率は長手方向/幅方向で4300MPa/9100MPaであった。
【0086】
比較例1
実施例1において、マット面とフィラー面が形成されていないPETフィルムを用い、このPETフィルムに実施例1と同様にして強化膜を形成し、支持体とした。その他は実施例1と同様にして、8mmビデオテープを製造し、実施例1同様の性能評価を行った。その結果を表1に示す。
【0087】
比較例2
実施例1において、支持体のフィラー面にCo強化膜を形成せず、代わりに公知のカーボンブラックとバインダーとからなる塗料を塗布して厚さ0.5μm(乾燥厚)の塗布型のバックコート層を形成した。その他は実施例1と同様にして、8mmビデオテープを製造し、実施例1同様の性能評価を行った。その結果を表1に示す。
【0088】
比較例3
実施例7において、支持体のフィラー面にSiOx 強化膜を形成せず、代わりに公知のカーボンブラックとバインダーとからなる塗料を塗布して厚さ0.5μm(乾燥厚)の塗布型のバックコート層を形成した。その他は実施例1と同様にして、8mmビデオテープを製造し、実施例1同様の性能評価を行った。その結果を表1に示す。
【0089】
比較例4
実施例1のPETフィルム製造において、片側表面Aの外側に塗布される水溶液に含まれるシリカの平均粒子径を55nmとし、原料B内の炭酸カルシウムの平均粒子径を80nmとした以外は実施例1と同様にして厚さ4.9μmのPETフィルムを用い、8mmビデオテープを製造し、実施例1同様の性能評価を行った。その結果を表1に示す。
なお、ここで用いたPETフィルムは、マット面の微細突起個数が60万個/mm2 で、フィラー面の突起個数は800万個/mm2 であった。
【0090】
【表1】
【0091】
【発明の効果】
以上の如く本発明によれば、優れた剛性を有する薄膜化された支持体が提供される。この支持体を用いて得られる磁気記録媒体は走行性やヘッドの当たりが良好であり、優れた出力特性を示すことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の磁気記録媒体の磁性層を形成するための装置の例を示す略図
【図2】実施例におけるエンベロープ欠け量を算出するためのモデル図
【図3】実施例1の支持体のマット面側の強化膜のオージェ分光分析のチャート
【図4】実施例5の支持体のマット面側の強化膜のオージェ分光分析のチャート
【図5】実施例6の支持体のマット面側の強化膜のオージェ分光分析のチャート
【図6】実施例8の支持体のマット面側の強化膜のオージェ分光分析のチャート
【図7】本発明の支持体のマット面の構造を示す走査型電子顕微鏡写真(倍率3万倍)
【図8】本発明の支持体のフィラー面の構造を示す微分干渉顕微鏡写真(倍率1000倍)
【符号の説明】
1…支持体
10…冷却キャンロール
11…ルツボ
12…Co
15…電子銃
16…真空チャンバ
Claims (23)
- 粒子を含有し、表面粗さSRa値が10〜60nmであるフィラー面と、粒子と有機化合物を含有する被膜を有し、表面粗さSRa値が1〜6nmであるマット面を持ち、フィラー面の粒子の平均粒子径がマット面の被膜中の粒子の平均粒子径の2倍以上大きく、厚さ2〜5.5μmのポリエステル系プラスチックフィルムの両面に、金属、半金属及び合金並びにこれらの酸化物及び複合物から選ばれた金属材料からなる強化膜が形成されていることを特徴とする磁気記録媒体の支持体。
- フィラー面の粒子の平均粒子径が100〜1000nm、マット面の被膜中の粒子の平均粒子径が5〜50nmであることを特徴とする請求項1記載の支持体。
- マット面の微細突起個数が300万個〜9000万個/mm2 であることを特徴とする請求項1又は2記載の支持体。
- ポリエステル系フィルムの幅方向のヤング率が8000MPa以上である請求項1〜3の何れか1項記載の支持体。
- フィラー面の微細突起個数が5000個〜200万個/mm2 であることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項記載の支持体。
- ポリエステル系フィルムの長手方向のヤング率が6000MPa以下であることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項記載の支持体。
- 前記強化膜が、金属、半金属及び合金から選ばれた金属材料の酸化物を含み、該強化膜中の酸素濃度が該強化膜の表面近傍で大きい請求項1〜6の何れか1項記載の支持体。
- 前記強化膜が、金属、半金属及び合金から選ばれた金属材料の酸化物を含み、該強化膜中の酸素濃度が該強化膜の表面近傍と該強化膜と前記フィルムの界面近傍で大きい請求項1〜6の何れか1項記載の支持体。
- 前記金属材料がコバルトを主体とする強磁性金属とその酸化物である請求項1〜8の何れか1項記載の支持体。
- 前記両面の強化膜が同一の金属材料からなる請求項1〜9の何れか1項記載の支持体。
- 前記強化膜が真空中での斜め蒸着により形成されたものである請求項1〜10の何れか1項記載の支持体。
- 請求項1〜11の何れか1項記載の支持体と、該支持体のマット面側に形成された磁性層を有する磁気記録媒体であって、該磁性層が前記支持体の強化膜自体からなるか該強化膜を含んで構成され、或いは該強化膜上に形成された少なくとも1層の強磁性金属薄膜から構成されることを特徴とする磁気記録媒体。
- 磁性層が前記支持体に形成された前記強化膜からなる請求項12記載の磁気記録媒体。
- 磁性層がコバルトを主体とする強磁性金属とその酸化物からなる請求項12又は13記載の磁気記録媒体。
- 磁性層の厚さが0.1〜0.3μmである請求項12〜14の何れか1項記載の磁気記録媒体。
- 磁性層上に保護層が形成されている請求項12〜15の何れか1項記載の磁気記録媒体。
- 保護層がダイヤモンドライクカーボンからなる請求項16記載の磁気記録媒体。
- 磁性層又は保護層上に潤滑層が形成されている請求項12〜17の何れか1項記載の磁気記録媒体。
- 潤滑層がフッ素系潤滑剤からなる請求項18記載の磁気記録媒体。
- 支持体のフィラー面側にバックコート層を有し、該バックコート層が前記支持体の強化膜自体からなるか該強化膜を含んで構成され、或いは該強化膜上に形成された少なくとも1層の強磁性金属薄膜から構成される請求項12〜19の何れか1項記載の磁気記録媒体。
- バックコート層が前記支持体に形成された前記強化膜からなる請求項20記載の磁気記録媒体。
- バックコート層がコバルトを主体とする強磁性金属とその酸化物からなる請求項20又は21記載の磁気記録媒体。
- バックコート層上に潤滑層が形成されている請求項20〜22の何れか1項記載の磁気記録媒体。
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