JP3691823B2 - 光回路装置および光回路装置の制御方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、光通信分野等に適用される光回路装置および光回路装置の制御方法に関するものである。
【0002】
【背景技術】
光通信等に適用されている光回路装置は、一般に、シリコン基板と、該シリコン基板上にコアとクラッドが形成された光導波路層を有している。前記コアの光導波回路(コアパターン)を様々に設定することにより、様々な機能を有する光回路装置が形成される。
【0003】
光回路装置の例として、例えば図13の(a)に示すマッハツェンダ光干渉計回路30を有する光回路装置がある。図13の(a)に示す光回路装置は、コア1の光導波回路が、光の分岐を行う光分岐器21aと光の結合を行う光結合器21bと、これらの光分岐器21aと光結合器21bを接続する第1の接続光導波路1(1e)と第2の接続光導波路1(1f)を有している。
【0004】
上記光導波回路であるマッハツェンダ光干渉計回路30において、光分岐器21aまたは光結合器21bは並設された2本のコア1(1a、1bまたは1c、1d)がそれぞれ近接されて形成されており、また、第1の接続光導波路1(1e)と第2の接続光導波路1(1f)は互いに間隔を介して並設された2本のコア1(1a、1b)により形成されている。マッハツェンダ光干渉計回路30において、光分岐器21aと光結合器21bは2×2方向性光結合器である。
【0005】
また、図13の(a)に示す光回路装置は、マッハツェンダ光干渉計回路30の第1と第2の接続光導波路1(1e、1f)の少なくとも1本(ここでは2本)に、第1と第2の接続光導波路1(1e、1f)を伝搬する伝搬光の位相を調整する第1と第2の位相調整手段8a、8bがそれぞれ形成されている。位相調整手段8a、8bは例えば薄膜ヒータ9a、9bにより形成されている。なお、44は薄膜ヒータ9a、9bへの給電配線(電極)を示す。
【0006】
第1と第2の位相調整手段8a、8bが形成されたそれぞれの部位に対応する第1と第2の接続光導波路1(1s、1t)(以下位相部接続光導波路という)と第1と第2の位相調整手段8a、8bにより、第1と第2の位相シフタと成している。
【0007】
位相調整手段8a、8bである薄膜ヒータ9a、9bにより位相部接続光導波路1(1s、1t)の温度が局所的に可変制御されると、この可変制御された側の位相部接続光導波路1(1sまたは1t)の屈折率が変化し、変化させた部分のコアの実効屈折率が変化する。これは、石英系ガラス等の屈折率が温度により変化する現象である熱光学効果を利用するものであり、上記効果によって、屈折率が変化したコアを伝搬する光の位相が変化する。このことによって、位相部接続光導波路1(1s、1t)を伝搬する伝搬光において第1の位相部接続光導波路1sと第2の位相部接続光導波路1t間に位相差、すなわち、それぞれTE偏波光における第1の位相部接続光導波路1sと第2の接続光導波路1t間の位相差とTM偏波光における第1の位相部接続光導波路1sと第2の位相部接続光導波路1t間の位相差が発生することになる。
【0008】
つまり、上記位相調整手段8a、8bである薄膜ヒータ9a、9bの発熱による熱光学効果により、加熱された位相部接続光導波路1(1sまたは1t)の実効光導波路長が変化し、実効光導波路長が変化したコアを伝搬する光の位相が変化することで、マッハツェンダ光干渉計回路30の光透過率を変化させることができる。そのため、図13の(a)に示す光回路装置は、光透過率や光分岐比が可変可能な光導波路型干渉計となり、光可変減衰器や光スイッチ等の機能を得ることができる。
【0009】
図13の(b)には、マッハツェンダ光干渉計回路30と第1と第2の位相調整手段8a、8bを有する従来の光回路装置の断面構成が、図13の(a)のA−A断面図により示されている。図13の(b)に示すように、シリコン基板7上に石英系ガラスから成るコア1(ここでは位相部接続光導波路1(1s、1t))とクラッド2から成る光導波路層3が形成されている。位相部接続光導波路1(1s、1t)の上側のクラッド2の表面に第1と第2の位相調整手段8a、8bが形成されている。
【0010】
上記構成において、第1と第2の位相調整手段8a、8bの第1と第2の薄膜ヒータ9a、9bに通電し、第1と第2の位相調整手段8a、8bの第1と第2の薄膜ヒータ9a、9bによってクラッド2を介して第1と第2の位相部接続光導波路1(1s、1t)を加熱すると、前記熱光学効果により第1と第2の位相部接続光導波路1(1s、1t)の実効屈折率が大きくなる。そして、第1と第2の位相部接続光導波路1(1s、1t)の実効的な光路長が変化し、伝搬光の位相、すなわち、それぞれTE偏波光の位相とTM偏波光の位相が変化する。
【0011】
なお、石英系ガラスの屈折率の温度係数dn/dTは、10−5(1/℃)程度なので、例えば5mmの長さにわたって第1と第2の位相部接続光導波路1(1s、1t)の温度を20℃上昇させると、実効的な光路長が1μm程度変化する。
【0012】
しかしながら、上記熱光学効果を利用した位相シフタでは、下記のような問題があった。すなわち、加熱によって光導波路層3に生じる新たな異方性の内部応力により、位相シフタの位相部接続光導波路の複屈折率が増大し、位相部接続光導波路を伝搬する光の伝搬特性(光減衰量)の偏波依存性、すなわち偏波依存損失(PDL)が大きくなるといった問題があった。
【0013】
上記問題点を図面を参照してさらに詳しく説明する。図14の(a)は図13の(a)に示すような位相シフタを用いたマッハツェンダ光干渉計回路30を有する従来の構成の光回路装置であるマッハツェンダ光干渉計型可変光減衰器において、第1と第2の薄膜ヒータ9a、9bへ無通電の状態における第1の位相部接続光導波路1(1s)と第2の接続光導波路1(1t)を伝搬したTE偏波光とTM偏波光の位相を示す模式図である。
【0014】
図14の(a)の特性線aは第1の位相部接続光導波路1(1s)を伝搬したTE偏波光の位相φTE1と第2の位相部接続光導波路1(1t)を伝搬したTE偏波光の位相φTE2を示している。また、特性線bは第1の位相部接続光導波路1(1s)と第2の位相部接続光導波路1(1t)を伝搬するTM偏波光のそれぞれの位相φTM1とφTM2を示している。
【0015】
一般に、クラッド内にコアを埋め込んだ埋め込み型光導波路においては、シリコン基板7と光導波路層3との熱膨張率差等に起因する異方性の応力による複屈折率が存在するため、図14の(a)の特性線aとbからわかるように、第1の位相部接続光導波路1(1s)と第2の位相部接続光導波路1(1t)を伝搬したTE偏波光の位相φTE1及びφTE2と第1の位相部接続光導波路1(1s)と第2の位相部接続光導波路1(1t)を伝搬したTM偏波光の位相φTM1及びφTM2とは互いに異なっている。
【0016】
しかし、第1の位相部接続光導波路1(1s)と第2の位相部接続光導波路1(1t)に存在する複屈折率は等しいゆえ、図14の(a)の特性線aからわかるように第1の位相部接続光導波路1(1s)を伝搬したTE偏波光の位相φTE1と第2の位相部接続光導波路1(1t)を伝搬したTE偏波光の位相φTE2とは等しく、また同様に、特性線bからわかるように第1の位相部接続光導波路1(1s)と第2の位相部接続光導波路1(1t)を伝搬したTM偏波光の位相φTM1とφTM2も等しくなる。
【0017】
したがって、TE偏波光とTM偏波光における第1の位相部接続光導波路1(1s)と第2の位相部接続光導波路1(1t)間のTE偏波光の位相差ΔφTE(位相φTE1とφTE2の差)、TM偏波光の位相差ΔφTM(位相φTM1とφTM2の差)はそれぞれゼロとなり(位相差が発生せず)、光減衰量が発生しない。したがって、それぞれの位相差によって生じる光減衰量の偏波依存性(偏波依存損失)も存在しない。
【0018】
光減衰量を発生させ、光減衰器として機能させるためには、第1の位相部接続光導波路1(1s)と第2の位相部接続光導波路1(1t)間に温度差を与えることにより、第1の位相部接続光導波路1(1s)と第2の位相部接続光導波路1(1t)間に位相差(TE偏波光の位相差とTM偏波光の位相差)を発生させる必要がある。
【0019】
そこで、以下に第1の位相部接続光導波路1(1s)のみを第1の薄膜ヒータ9aで加熱することにより、第1の位相部接続光導波路1(1s)と第2の位相部接続光導波路1(1t)間に位相差を発生させる場合を説明する。
【0020】
図14の(b)は、第1の位相部接続光導波路1(1s)のみを第1の薄膜ヒータ9aで加熱した際のTE偏波光とTM偏波光の位相を説明する説明図である。第2の位相部接続光導波路1(1t)は加熱されないため、第2の位相部接続光導波路1(1t)の位相φTE2とφTM2を示す図12の(b)の特性線aとbは、図14の(a)に示す特性線aとbとそれぞれ同一である。
【0021】
図13に示すような従来の構成の位相シフタにおいて、第1の薄膜ヒータ9aで加熱をおこなうと、基板に垂直な方向は導波路層の熱膨張による応力が十分に解放され、基板に水平な方向は導波路層の熱膨張による応力が十分に解放されないため、異方性の内部応力が新たに発生し、この異方性の応力により複屈折率がさらに増大する。
【0022】
そのため、図14の(b)に示すように加熱された第1の位相部接続光導波路1(1s)のTE偏波光の位相φTE1は特性線aから特性線cの位置に変化する。また、第1の位相部接続光導波路1(1s)のTM偏波光の位相φTM1は特性線bから特性線dの位置に変化する。
【0023】
そして、加熱された第1の位相部接続光導波路1(1s)におけるTE偏波光の位相φTE1とTM偏波光の位相φTM1の差ΔφTE1−TM1(φTE1とφTM1の差、この場合は特性線dとcの差で、以下偏波差という)は、加熱されない第2の位相部接続光導波路1(1t)におけるTE偏波光の位相φTE2とTM偏波光の位相φTM2の偏波差ΔφTE2−TM2(この場合は特性線bとaの差)より大きくなる。
【0024】
したがって、第1の位相部接続光導波路1(1s)と第2の位相部接続光導波路1(1t)を伝搬したTE偏波光のそれぞれの位相φTE1とφTE2の位相差ΔφTE(φTE1とφTE2の差、すなわち図14の(b)中の特性線cとaの差)とTM偏波光のそれぞれの位相φTM1とφTM2の位相差ΔφTM(φTM1とφTM2の差、すなわち図14の(b)中の特性線dとbの差)が互いに異なる。位相差の発生により光減衰量が生じるが、この異なる位相差によりTE偏波光とTM偏波光の光減衰量が互いに異なることになり、したがって、前記異なる位相差により決まる光減衰量の偏波依存性(偏波依存損失)が生じてしまうことになる。
【0025】
そこで、上記問題を解決するために、つまり、上記伝搬光の伝搬特性(光減衰量)の偏波依存性を解消する構成として、例えば図15に示すような構成の光回路装置が提案されている(例えば非特許文献参照)。
【0026】
図15の(a)は、上記提案の光回路装置としての熱光学可変光減衰器を説明する説明図である。図15の(b)は、図15の(a)のA−A断面で切断された構成により示されている断面図である。なお、この提案例の説明において、従来例と同一名称部分には同一符号を付し、その重複説明は省略または簡略化する。
【0027】
この提案例の光回路装置は、図13の(a)に示した光導波回路と第1と第2の位相調整手段8a、8bを有し、かつ、図15の(b)に示したような断面構成を有する。図15の(b)に示す断面構成は、位相調整手段8a、8bの両側の位相調整手段に沿った領域の光導波路層3が除去されて光導波路層除去部5が形成されている。そして、この光導波路層除去部5が応力解放溝と成すことで、基板と水平方向の応力を解放し、基板と垂直方向と水平方向の応力の異方性を解消することにより前記複屈折率の低減が図られている。
【0028】
なお、光導波路層除去部5は第1と第2の位相部接続光導波路1(1s、1t)と間隔を介して形成されており、図15の(b)に示すように第1と第2の位相部接続光導波路1(1s、1t)の存在する光導波路層3aと光導波路層3bの幅は等しく形成されている。
【0029】
図16の(a)は、第1の位相調整手段8aである第1の薄膜ヒータ9aと第2の位相調整手段8bである第2の薄膜ヒータ9bのいずれにも通電しない状態における第1の位相部接続光導波路1(1s)と第2の位相部接続光導波路1(1t)を伝搬したTE偏波光とTM偏波光の位相を表す模式図である。
【0030】
図16の(a)からわかるように、光導波路層(つまり光導波路)の異方性の応力が解放されて、複屈折率が小さくなっているため、第1の位相部接続光導波路を伝搬したTE偏波光の位相とTM偏波光の位相の偏波差ΔφTE1−TM1(図16の(a)の特性線bと特性線aとの差)と第2の位相部接続光導波路を伝搬したTE偏波光の位相とTM偏波光の位相の偏波差ΔφTE2−TM2(図16の(a)の特性線bと特性線aとの差)が、図13に示す従来の光回路装置の第1の位相部接続光導波路1(1s)と第2の位相部接続光導波路1(1t)を伝搬したTE偏波の位相とTM偏波の位相のそれぞれの偏波差ΔφTE1−TM1、ΔφTE2−TM2(図14の(a)中の特性線bと特性線aとの差)より小さくなる。
【0031】
なお、第1の位相部接続導波路と第2の位相部接続導波路に存在する複屈折率は低減されてはいるものの等しいゆえ、図16の(a)の特性線aとbからわかるように第1の位相部接続導波路を伝搬したTE偏波光とTM偏波光の位相φTE1とφTM1の偏波差ΔφTE1−TM1は第2の位相部接続導波路を伝搬したTE偏波光とTM偏波光の位相φTE2とφTM2の偏波差ΔφTE2−TM2に等しい。
【0032】
図16の(b)は、第1の位相調整手段である第1の薄膜ヒータに通電し、第2の位相調整手段である第2の薄膜ヒータには通電しない状態における第1の位相部接続光導波路と第2の位相部接続光導波路を伝搬したTE偏波光とTM偏波光の位相を表す模式図である。
【0033】
第1の位相調整手段である第1の薄膜ヒータに通電し、第1の位相部接続光導波路を加熱した際の熱膨張による異方性の応力も低減されるために、図16の(b)に示すように加熱された第1の位相部接続光導波路のTE偏波光の位相φTE1は特性線aから特性線cの位置に変化する。また、第1の位相部接続光導波路のTM偏波光の位相φTM1は特性線bから特性線dの位置に変化する。
【0034】
図16の(b)からわかるように、加熱により生じる第1の位相部接続光導波路を伝搬したTE偏波光の位相とTM偏波光の位相の偏波差ΔφTE1−TM1(図16の(b)の特性線dとcの差)は、図13に示される従来の光可変減衰器である光回路装置の第1の位相部接続光導波路を伝搬したTE偏波光の位相とTM偏波光の位相の偏波差ΔφTE1−TM1(図14の(b)の特性線dとcの差)より小さくなる。
【0035】
したがって、第1と第2の位相部接続光導波路間のTE偏波光の位相差ΔφTE(図16の(b)の特性線cとaの差)とTM偏波光の位相差ΔφTM(図16の(b)の特性線dとbの差)との差は、図13に示す従来の光可変減衰器である光回路装置の第1と第2の位相部接続光導波路間のTE偏波光の位相差ΔφTE(図14の(b)の特性線cとaの差)とTM偏波光の位相差ΔφTM(図14の(b)の特性線dとbの差)との差に比較してより小さくなる。
【0036】
複屈折率の低減を図った提案例の図15に示す熱光学可変光減衰器の光回路装置の第1と第2の位相部接続光導波路1(1s、1t)を伝搬する伝搬光の第1と第2の位相部接続光導波路間のTE偏波光の位相差ΔφTE(図16の(b)の特性線cとaの差)と第1と第2の位相部接続光導波路間のTM偏波光の位相差ΔφTM(図16の(b)の特性線dとbの差)は近い値となる。そのため、TE偏波光とTM偏波光の位相差によって決まる光減衰量の偏波依存性(偏波依存損失)も低減される。
【0037】
【非特許文献】
橋詰ら著、「PLC型可変光減衰器の低PDL化」2001年電子情報通信学会総合大会C−3−64
【0038】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記のように、光回路装置としての熱光学可変光減衰器において、図15に示すような構成が、上記光の伝搬特性(光減衰量)の偏波依存性の低減化(偏波依存損失の低減化、すなわち低PDL化)として提案されているが、この構成では偏波依存性の低減化が不十分であった。
【0039】
つまり、図15に示される構成は、図15の(b)に示すように、第1と第2の位相部接続光導波路1(1s、1t)が存在する光導波路層3aと3bの幅は等しく形成されるように光導波路層除去部5が設けられており、複屈折率の低減が図られている。
【0040】
また、前記光導波路層3a、3bの幅により発生する複屈折率が決定されるため、複屈折率を完全にゼロとするためには前記光導波路層3aと3bの幅を極めて高精度に制御する必要がある。
【0041】
しかしながら、一般に約50μm以上の厚さを有する光導波路層3を高精度に完全に除去する光導波路除去部を形成する必要があるため、実際には製造プロセスのばらつきによる溝幅、溝形状がばらつき、その結果、前記光導波路層3(3a、3b)の幅がばらつくことにより複屈折率が変動してしまい、複屈折率を完全にゼロにすることは困難であった。また、第1と第2の位相部接続光導波路1s、1tの存在する光導波路層3aと3bの複屈折率は同一で低複屈折率となるが、上記のばらつきにより安定した低複屈折率を得ることが困難で、そのため、光減衰量の偏波依存性の低減化を安定して得ることが困難であった。
【0042】
本発明は、上記課題を解決するために成されたものであり、その目的は、光減衰量の偏波依存性(偏波依存損失)を解消する光回路装置および光回路装置の制御方法を提供することにある。
【0043】
上記目的を達成するために、本発明は次のような構成をもって課題を解決するための手段としている。すなわち、第1の発明の光回路装置は、基板と、該基板上にコアとクラッドが形成された光導波路層を有し、前記コアの光導波回路は光の分岐を行う光分岐器と光の結合を行う光結合器と、これらの光分岐器と光結合器を接続する第1の接続光導波路と第2の接続光導波路を有し、該第1と第2の接続光導波路にはそれぞれ伝搬光の位相を熱光学効果によって可変可能な第1と第2の位相調整手段が設けられた光回路装置において、前記第1と第2の位相調整手段の位相調整を行った際の位相調整量に対する第1の位相調整手段の位相の偏波差の変化率と第2の位相調整手段の位相の偏波差の変化率とが互いに異なるように形成されており、
第2の接続光導波路には第1の位相調整手段と同一構造のダミーとしての第1のダミー位相調整手段が形成されており、かつ第1の位相調整手段と間隔を介した領域が前記接続光導波路の長手方向に沿って光導波路層が除去された光導波路層除去部と同一構造の該光導波路層除去部が第1のダミー位相調整手段の形成部位を挟む両側の光導波路層に形成されており、第2の位相調整手段は第1のダミー位相調整手段と間隔を介して接続されており、第1の接続光導波路には第2の位相調整手段と同一構造のダミーとしての第2のダミー位相調整手段が形成されており、かつ第2の位相調整手段と間隔を介した領域が第2の位相調整手段の長手方向に沿って光導波路層が除去された光導波路層除去部と同一構造の該光導波路層除去部が第2のダミー位相調整手段の形成部位を挟む両側の光導波路層に形成されており、第1の位相調整手段は第2のダミー位相調整手段と間隔を介して接続されており、
第1の接続光導波路を伝搬する伝搬光が第1の接続光導波路を伝搬した後のTE偏波光の位相と第2の接続光導波路を伝搬する伝搬光が第2の接続光導波路を伝搬した後のTE偏波光の位相間の位相差と第1の接続光導波路を伝搬する伝搬光が第1の接続光導波路を伝搬した後のTM偏波光の位相と第2の接続光導波路を伝搬する伝搬光が第2の接続光導波路を伝搬した後のTM偏波光の位相間の位相差とが互いに等しくなるように位相調整手段を調節する構成をもって課題を解決する手段としている。
【0044】
また、第2の発明の光回路装置は、基板と、該基板上にコアとクラッドが形成された光導波路層を有し、前記コアの光導波回路は光の分岐を行う光分岐器と光の結合を行う光結合器と、これらの光分岐器と光結合器を接続する第1の接続光導波路と第2の接続光導波路を有し、該第1と第2の接続光導波路にはそれぞれ伝搬光の位相を熱光学効果によって可変可能な第1と第2の位相調整手段が設けられた光回路装置において、前記第1と第2の位相調整手段の位相調整を行った際の位相調整量に対する第1の接続光導波路の複屈折率の変化率と第2の接続光導波路の複屈折率の変化率とが互いに異なるように形成されており、
第2の接続光導波路には第1の位相調整手段と同一構造のダミーとしての第1のダミー位相調整手段が形成されており、かつ第1の位相調整手段と間隔を介した領域が前記接続光導波路の長手方向に沿って光導波路層が除去された光導波路層除去部と同一構造の該光導波路層除去部が第1のダミー位相調整手段の形成部位を挟む両側の光導波路層に形成されており、第2の位相調整手段は第1のダミー位相調整手段と間隔を介して接続されており、第1の接続光導波路には第2の位相調整手段と同一構造のダミーとしての第2のダミー位相調整手段が形成されており、かつ第2の位相調整手段と間隔を介した領域が第2の位相調整手段の長手方向に沿って光導波路層が除去された光導波路層除去部と同一構造の該光導波路層除去部が第2のダミー位相調整手段の形成部位を挟む両側の光導波路層に形成されており、第1の位相調整手段は第2のダミー位相調整手段と間隔を介して接続されており、
第1の接続光導波路を伝搬する伝搬光が第1の接続光導波路を伝搬した後のTE偏波光の位相と第2の接続光導波路を伝搬する伝搬光が第2の接続光導波路を伝搬した後のTE偏波光の位相間の位相差と第1の接続光導波路を伝搬する伝搬光が第1の接続光導波路を伝搬した後のTM偏波光の位相と第2の接続光導波路を伝搬する伝搬光が第2の接続光導波路を伝搬した後のTM偏波光の位相間の位相差とが互いに等しくなるように位相調整手段を調節する構成をもって課題を解決する手段としている。
【0045】
さらに、第3の発明の光回路装置は、上記第1の発明または第2の発明に加え、第1の接続光導波路の複屈折率と第2の接続光導波路の複屈折率とが互いに異なるように形成されている構成をもって課題を解決する手段としている。
【0046】
さらに、第4の発明の光回路装置は、上記第1の発明または第2の発明または第3の発明に加え、第1または第2の位相調整手段の形成部位の近傍には第1と第2の複屈折率制御手段の少なくとも一方が形成されている構成をもって課題を解決する手段としている。
【0047】
さらに、第5の発明の光回路装置は、上記第4の発明に加え、第1と第2の複屈折率制御手段は第1と第2の位相調整手段の形成部位の光導波路に付与されている応力を解放する第1と第2の応力解放手段とした構成をもって課題を解決する手段としている。
【0048】
さらに、第6の発明の光回路装置は、上記第5の発明に加え、第1と第2の応力解放手段は、第1と第2の位相調整手段の少なくとも一方の形成部位を挟む両側の光導波路層が接続光導波路と間隔を介した領域が前記接続光導波路の長手方向に沿って光導波路層表面から基板表面に向かって除去されて光導波路層除去部と成し、該光導波路層除去部と並設されている前記第1と第2の接続光導波路を含む第1の光導波路層の幅と第2の光導波路層の幅が互いに異なるように形成した構成をもって課題を解決する手段としている。
【0049】
さらに、第7の発明の光回路装置は、上記第6の発明に加え、光導波路層除去部は、光導波路層表面から基板表面に至るまで除去されているように形成した構成をもって課題を解決する手段としている。
【0050】
さらに、第8の発明の光回路装置は、上記第5または第7の発明に加え、第1と第2の応力解放手段は、第1と第2の位相調整手段の少なくとも一方の形成部位を挟む両側の光導波路層が接続光導波路と間隔を介した領域が前記接続光導波路の長手方向に沿って光導波路層表面から基板表面に至るまで除去されて光導波路層除去部と成し、該光導波路層除去部の下部に対向する基板表面部位に基板を除去した基板除去部が設けられており、前記光導波路層除去部と並設されている前記第1と第2の接続光導波路を含む第1の光導波路層の幅と第2の光導波路層の幅が互いに異なるように形成した構成をもって課題を解決する手段としている。
【0051】
さらに、第9の発明の光回路装置は、上記第8の発明に加え、基板除去部は、光導波路層除去部の下部に対向する全領域を包含するシリコン基板表面部位に断面矩形状の凹部が設けられているように形成した構成をもって課題を解決する手段としている。
【0053】
さらに、第10の発明の光回路装置は、上記第1乃至第9のいずれか一つの発明に加え、光導波路は石英系ガラスにより形成されている構成をもって課題を解決する手段としている。
【0054】
さらに、第11の発明の光回路装置は、上記第1乃至第10のいずれか一つの発明に加え、基板はシリコン基板とした構成をもって課題を解決する手段としている。
【0055】
さらに、第12の発明の光回路装置は、上記第1乃至第11のいずれか一つの発明に加え、第1と第2の位相調整手段はそれぞれ第1と第2の薄膜ヒータとした構成をもって課題を解決する手段としている。
【0056】
さらに、第13の発明の光回路装置は、上記第12の発明に加え、第1と第2の薄膜ヒータにはそれぞれ給電するための第1と第2の給電配線が接続されており、該第1と第2の給電配線は一つの給電電源に並列接続されており、第1の給電配線と第1の薄膜ヒータのそれぞれの抵抗値の和と第2の給電配線と第2の薄膜ヒータのそれぞれの抵抗値の和が等しい構成をもって課題を解決する手段としている。
【0057】
さらに、第14の発明の光回路装置は、上記第13の発明に加え、第1と第2の給電電源の少なくとも一方には抵抗器が接続されている構成をもって課題を解決する手段としている。
【0058】
さらに、第15の発明の光回路装置は、上記第1乃至第14のいずれか一つの発明に加え、位相調整手段の位相を調整することにより少なくとも1つの設定波長光の強度を可変する光可変減衰制御部を設けて、光可変減衰器とした構成をもって課題を解決する手段としている。
【0059】
さらに、第16の発明の光回路装置は、上記1乃至14のいずれか一つの発明に加え、位相調整手段の位相を調整することにより少なくとも1つの設定波長光の出力を可変する光スイッチ制御部を設けて、光スイッチとした構成をもって課題を解決する手段としている。
【0060】
さらに、第17の発明の光回路装置の制御方法は、上記1乃至16のいずれか一つの発明の光回路装置の制御方法であって、第1の接続光導波路を伝搬する伝搬光が第1の接続光導波路を伝搬した後のTE偏波光の位相と第2の接続光導波路を伝搬する伝搬光が第2の接続光導波路を伝搬した後のTE偏波光の位相間の位相差と第1の接続光導波路を伝搬する伝搬光が第1の接続光導波路を伝搬した後のTM偏波光の位相と第2の接続光導波路を伝搬する伝搬光が第2の接続光導波路を伝搬した後のTM偏波光の位相間の位相差とが互いに等しくなるように位相調整手段を調節する構成をもって問題を解決する手段としている。
【0061】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。なお、本実施形態例の説明において、従来例あるいは提案例と同一名称部分には同一符号を付し、その重複説明は省略または簡略化する。
【0062】
第1実施形態例の光回路装置は、図1の(a)に示す光導波回路である平面導波路構成を有するマッハツェンダ光干渉計回路30を有し、マッハツェンダ光干渉計回路30は、光分岐器21aと光結合器21bと、これらの光分岐器21aと光結合器21bを接続する第1の接続光導波路1(1e)と第2の接続光導波路1(1f)から構成されている。第1の接続光導波路1(1e)と第2の接続光導波路1(1f)の一部、すなわち、第1の位相部接続光導波路1(1s)と第2の位相部接続光導波路1(1t)にそれぞれ第1と第2の位相調整手段8a、8bが形成されており、第1の位相部接続光導波路1(1s)と第1の位相調整手段8aとで第1の位相シフタと成し、第2の位相部接続光導波路1(1t)と第2の位相調整手段8bとで第2の位相シフタと成している。
【0063】
また、第1実施形態例の光回路装置は、図1の(b)に示す断面構成を有している。なお、図1の(b)は図1の(a)のA−A断面図である。図1の(b)に示すように、第1実施形態例の光回路装置は、第1の位相部接続光導波路1(1s)に沿って第1の位相調整手段8aを形成し、この第1の位相調整手段8aの両側に光導波路除去部5を形成して応力解放溝と成し、第1の位相部接続光導波路1(1s)の異方性の応力を低減化している。
【0064】
上記のように形成することにより、第1の位相部接続光導波路1(1s)の複屈折率B1と第2の位相部接続光導波路1(1t)の複屈折率B2とは互いに異なることになる。つまり、第1の位相調整手段8aの位相調整量に対する複屈折率の変化率dB1/dφと第2の位相調整手段8bの位相調整量に対する複屈折率の変化率dB2/dφとが互いに異なることになる。
【0065】
第1実施形態例の光回路装置において、第1と第2の位相調整手段8a、8bには、第1と第2の位相調整手段8a、8bの位相を制御することにより少なくとも1つの設定波長光の強度を可変する光可変減衰制御部(図示せず)が接続されており、第1実施形態例の光回路装置は光可変減衰器と成している。
【0066】
第1実施形態例は以上のように構成されており、第1実施形態例の構成を決定するにあたり、本発明者は、図13に示す従来の構成の位相シフタを用いたマッハツェンダ光干渉計回路30を有する光回路装置であるマッハツェンダ光干渉計型光可変減衰器における偏波依存性損失の低減化についての検討を行った。また、図15に示す提案例のマッハツェンダ光干渉計回路30であるマッハツェンダ光干渉計型光可変減衰器における偏波依存性損失の低減化についての検討も行った。
【0067】
まず、図13に示す従来の構成の位相シフタを用いたマッハツェンダ光干渉計回路30を有するマッハツェンダ光干渉計型光可変減衰器における偏波依存性損失の低減化についての検討を行った。
【0068】
すなわち、第1の位相調整手段8aである第1の薄膜ヒータ9aだけではなく第2の位相調整手段8bである第2の薄膜ヒータ9bにも電力供給し、第2の薄膜ヒータ9bにより第2の位相部接続光導波路1(1t)を加熱することにより、第1の位相部接続光導波路1(1s)で発生したTE偏波光とTM偏波光の位相の偏波差ΔφTE1−TM1(図14の(b)の特性線dとcの差)と等しい量の位相の偏波差ΔφTE2−TM2を第2の位相部接続光導波路1(1t)にも発生させることにより、TE偏波光における第1の位相部接続光導波路1(1s)の位相と第2の位相部接続光導波路1(1t)の位相の位相差ΔφTEとTM偏波光における第1の位相部接続光導波路1(1s)の位相と第2の位相部接続光導波路1(1t)の位相の位相差ΔφTMとを等しくできると考えた。
【0069】
しかしながら、図13の(a)に示すような従来の位相シフタを用いたマッハツェンダー光干渉計型光可変減衰器においては、第1の位相シフタと第2の位相シフタの構造は同一であるため、上記のように第1の位相部接続光導波路1(1s)で発生したTE偏波光とTM偏波光の位相の偏波差ΔφTE1−TM1と第2の位相部接続光導波路1(1t)で発生したTE偏波光とTM偏波光の位相の偏波差ΔφTE2−TM2を等しくなるように第1と第2の薄膜ヒータ9a、9bに電力供給をおこなうと、図14の(c)に示すように、第1と第2の位相部接続光導波路1(1s、1t)を伝搬したTE偏波光の位相φTE1とφTE2、およびTE偏波光の位相φTM1とφTM2も互いに等しくなり、第1と第2の位相部接続光導波路間のそれぞれの偏波光の位相差ΔφTEおよびΔφTMがともにゼロとなってしまい、光減衰量が得られないためマッハツェンダー光干渉計型光可変減衰器としての機能を果たさなくなってしまう。
【0070】
つぎに、図15に示す提案例のマッハツェンダ光干渉計回路30を有するマッハツェンダ光干渉計型光可変減衰器における偏波依存性損失の低減化についての検討を行った。
【0071】
すなわち、第1の位相調整手段8aである第1の薄膜ヒータ9aだけではなく第2の位相調整手段8bである第2の薄膜ヒータ9bにも電力供給し、第2の薄膜ヒータ9bにより第2の位相部接続光導波路1(1t)を加熱することにより、第1の位相部接続光導波路1(1s)で発生したTE偏波光とTM偏波光の位相の偏波差ΔφTE1−TM1(図16の(b)の特性線dとcの差)と等しい量の位相の偏波差ΔφTE2−TM2を第2の位相部接続光導波路1(1t)にも発生させることにより、TE偏波光における第1の位相部接続光導波路1(1s)の位相と第2の位相部接続光導波路1(1t)の位相の位相差ΔφTEとTM偏波光における第1の位相部接続光導波路1(1s)の位相と第2の位相部接続光導波路1(1t)の位相の位相差ΔφTMとを等しくできると考えた。
【0072】
しかしながら、図15の(a)に示すような提案例のマッハツェンダー光干渉計型光可変減衰器においては、第1の位相シフタと第2の位相シフタの構造は同一であるため、上記のように第1の位相部接続光導波路1(1s)で発生したTE偏波光とTM偏波光の位相の偏波差ΔφTE1−TM1と第2の位相部接続光導波路1(1t)で発生したTE偏波光とTM偏波光の位相の偏波差ΔφTE2−TM2を等しくなるように第1と第2の薄膜ヒータ9a、9bに電力供給をおこなうと、図16の(c)に示すように、第1と第2の位相部接続光導波路1(1s、1t)を伝搬するTE偏波光の位相φTE1とφTE2、およびTM偏波光の位相φTM1とφTM2も互いに等しくなり、第1と第2の位相部接続光導波路間のそれぞれの偏波光の位相差ΔφTEおよびΔφTMがともにゼロとなってしまい、光減衰量が得られないためマッハツェンダー光干渉計型光可変減衰器としての機能を果たさなくなってしまう。
【0073】
そこで、本発明者は、以上のような検討結果から、光減衰器として機能し、かつ、光減衰量の偏波依存性を解消するためには、第1と第2の位相部接続光導波路を伝搬した伝搬光のTE偏波光とTM偏波光それぞれの位相の偏波差が等しく(φTE−TM=φTE1−TM1=φTE2−TM2)なるように、すなわち第1と第2の位相部接続光導波路を伝搬した伝搬光のTE偏波光とTM偏波光それぞれの位相の位相差が等しく(ΔφTE=ΔφTM=ΔφTE1−TE2=ΔφTM1−TM2)なるように、すなわち第1と第2の位相部接続光導波路の複屈折率が等しく(B1=B2)なるように第1と第2の位相調整手段8a、8bの位相調整をおこなった際の第1の位相部接続光導波路の位相φ1と第2の位相部接続光導波路の位相φ2とが互いに異なるような構成とすれば良いことを見いだした。
【0074】
そのためには、第1の位相調整手段による位相調整量に対する第1の位相調整手段の位相の偏波差φTE1−TM1の変化率dφTE1−TM1/dφと第2の位相調整手段による位相調整量に対する第2の位相調整手段の位相の偏波差φTE2−TM2の変化率dφTE2−TM2/dφとが互いに異なればよい。
【0075】
位相調整手段の位相の偏波差の変化率は、位相調整手段形成部位の位相部接続光導波路の複屈折率の変化率によって決まるため、第1の位相調整手段の位相の偏波差の変化率と第2の位相調整手段の位相の偏波差の変化率を異ならせるためには、第1の位相調整手段による位相調整量に対する第1の位相調整手段形成部位の第1の位相部接続導波路の複屈折率B1の変化率dB1/dφと第2の位相調整手段による位相調整量に対する第2の位相調整手段形成部位の第2の位相部接続光導波路1(1t)の複屈折率B2の変化率dB2/dφとが互いに異なればよい。
【0076】
また、第1と第2の位相調整手段形成部位の複屈折率の変化率を異ならせるためには、複屈折率の発生原因である第1と第2の位相調整手段形成部位のそれぞれの光導波路層の異方性の応力が互いに異なれば良い。つまり、第1と第2の位相調整手段形成部位のそれぞれの光導波路層(すなわち、第1と第2の位相部接続光導波路)の複屈折率が互いに異なれば良い。
【0077】
本発明者は、以上の検討結果、上記のような特性を実現するためには、例えば、第1と第2の位相調整手段の少なくとも一方の形成部位を挟む両側の光導波路層が位相部接続光導波路と間隔を介した領域が前記位相部接続光導波路の長手方向に沿って光導波路層表面から基板表面に至るまで除去されて応力解放溝と成し、該応力解放溝と並設されている前記第1と第2の位相部接続光導波路を含む第1の光導波路層の幅と第2の光導波路層の幅が互いに異なるように形成する構成にすれば良いことを見いだし、上記構成の本第1実施形態例の光回路装置を提案することにした。
【0078】
つまり、本発明者は、まず、第1の位相調整手段8aの形成部位の両側に光導波路除去部5を形成して応力解放溝と成し、第1の位相部接続光導波路1(1s)の異方性の応力を低減化し、第2の位相調整手段8b形成部位の両側には光導波路除去部を形成しない構成とし、第2の位相部接続光導波路1(1t)の異方性の応力の低減をしないように形成した。
【0079】
この構成により、光減衰量の偏波依存性を解消できることを以下に説明する。まず、第1と第2の薄膜ヒータに電力供給しない状態における第1と第2の接続光導波路を伝搬する伝搬光の各位相を図3の(a)に示す。図3の(a)中、特性線a1とb1はそれぞれ第1の接続光導波路を伝搬する伝搬光のTE偏波光とTM偏波光の位相であり、特性線a2とb2はそれぞれ第2の接続光導波路を伝搬する伝搬光のTE偏波光とTM偏波光の位相である。
【0080】
第2の接続光導波路の異方性の応力を低減せず、第1の接続光導波路の異方性の応力を低減しているため、図3の(a)からわかるように、第1の接続光導波路を伝搬する伝搬光の位相の偏波差φTE1−TM1(特性線b1とa1の差)は第2の接続光導波路を伝搬する伝搬光の位相の偏波差φTE2−TM2(特性線b2とa2の差)より小さくなっている。
【0081】
つぎに、第1の薄膜ヒータに電力供給すると、第1の接続光導波路を伝搬する伝搬光の位相が増大し、と同時に位相の偏波差φTE1−TM1も少しずつ増大する。ある電力供給量の時点で、第1の接続光導波路を伝搬する伝搬光の位相の偏波差φTE1−TM1が第2の接続光導波路を伝搬する伝搬光の位相の偏波差φTE2−TM2と等しくなる。
【0082】
図3の(b)は第1と第2の接続光導波路を伝搬する伝搬光の位相の偏波差が等しくなるように第1の薄膜ヒータに電力供給した際の各位相の状態を説明する模式図である。図3の(b)中、特性線a1’とb1’は第1と第2の接続光導波路を伝搬する伝搬光の位相の偏波差が等しくなるように第1の薄膜ヒータに電力供給した際の第1接続光導波路を伝搬する伝搬光のTE偏波光とTM偏波光の位相を示す。なお、特性線a2とb2は第2接続光導波路を伝搬する伝搬光のTE偏波光TM偏波光の位相を示しており、図3の(a)の特性線a2とb2と同一位置にある。
【0083】
図3の(b)は、第1と第2の接続光導波路を伝搬する伝搬光の位相の偏波差が等しくなるように第1の薄膜ヒータに電力供給した際の、第1と第2の接続光導波路を伝搬する伝搬光の位相のそれぞれの偏波差φTE1−TM1(特性線b1’とa1’の差)とφTE2−TM2(特性線b2とa2の差)とが等しくなった状態を示している。なお、TE偏波光とTM偏波光それぞれの位相差ΔφTE=ΔφTE1−TE2とΔφTM=ΔφTM1−TM2は等しくなっている。
【0084】
上記位相差に応じた光減衰量を得ることができ、第1と第2の接続光導波路を伝搬する伝搬光のそれぞれの位相差が同一であるために、光減衰量の偏波依存性を解消することができることになる。
【0085】
したがって、第1実施形態例のように、第1の位相部接続光導波路1(1s)の複屈折率B1と第2の位相部接続光導波路1(1t)の複屈折率B2とは互いに異なるように形成することにより、つまり、第1の位相調整手段8aの位相調整量に対する複屈折率の変化率dB1/dφと第2の位相調整手段8bの位相調整量に対する複屈折率の変化率dB2/dφとが互いに異なるように形成することにより、所望の光減衰量が得られ、かつ、光減衰量の偏波依存性を解消することができることになる。
【0086】
さらに、第1の薄膜ヒータへの電力供給を増やしていくと、第1の接続光導波路を伝搬する伝搬光の位相が増大し、と同時に位相の偏波差φTE1−TM1も少しずつ増大する。そこで、第2の薄膜ヒータへの電力供給を開始する。第2の接続光導波路は複屈折率の低減を行っていないため、第2の薄膜ヒータへの電力供給により第2の接続光導波路が加熱されると、第2の接続光導波路の複屈折率が増大し位相の偏波差も増大する。したがって、第2の接続光導波路を伝搬する伝搬光の位相にわずかな位相変化量を生じさせた際に、第1の接続光導波路を伝搬する伝搬光で増大した位相の偏波差φTE1−TM1と等しい第2の接続光導波路を伝搬する伝搬光の位相の偏波差φTE2−TM2を生じさせることができる。
【0087】
図3の(c)は、上記のように第1と第2の接続光導波路を伝搬する伝搬光で増大した位相の偏波差φTE1−TM1とφTE2−TM2が等しくなるように、第1と第2の薄膜ヒータの両方に電力供給した場合の各位相を示す模式図である。特性線a1”とb1”は第1の接続光導波路を伝搬する伝搬光のTE偏波光とTM偏波光の位相を示す。特性線a2”とb2”は第2の接続光導波路を伝搬する伝搬光のTE偏波光とTM偏波光の位相を示す。
【0088】
図3の(c)からわかるように、TE偏波光における第1と第2の接続光導波路間の位相差ΔφTE1−TE2(特性線a1”とa2”の差)とTM偏波光における第1と第2の接続光導波路間の位相差ΔφTM1−TM2(特性線b1”とb2”の差)が等しい。上記のように位相差ΔφTE1−TE2とΔφTM1−TM2を増大させ、かつ、等しい位相差とすることにより、光減衰量の偏波依存性を完全に解消した状態で光減衰量を増大させることができる。
【0089】
上記のように、第1実施形態例の光回路装置は、光減衰量の偏波依存性を完全に解消したマッハツェンダ光干渉計型光可変減衰器を実現できる。
【0090】
第1実施形態例は以上のように構成されており、本発明者は、本願発明の光回路装置の構成を決定するために、図1に示す第1実施形態例のマッハツェンダ干渉計型光可変減衰器の挿入損失の偏波依存性の解消について、さらに定式化する検討を行った。
【0091】
図1に示す光回路装置であるマッハツェンダ干渉計型光可変減衰器において、第1の光導波路1(1a)の入射端17から信号光を入射し、第3と4の光導波路1(1c、1d)のそれぞれの出射端19、20から信号光を出射する場合の信号光の挿入損失Dは、光導波路の損失を無視すると以下の(1)式により表される。
【数1】
ただし、P1は第3の光導波路1(1c)の出射端19から出射される光パワーであり、P2は第4の光導波路1(1d)の出射端20から出射される光パワーである。なお、P1+P2は第1の光導波路1(1a)の入射端17から入射される光パワーに等しい。
【0092】
ここで、以下のようにおくと、
【数2】
式は、(2)式となる。
【数3】
ここで、ηはマッハツェンダ干渉計型光可変減衰器の結合効率である。
【0093】
前記結合効率とは、一方の光導波路(この場合第1の光導波路1(1a)の入射端17から入射された光パワーが他方の光導波路(この場合第4の光導波路1(1d)の出射端20から出射される割合を示す。一般に、第1実施形態例のようなマッハツェンダ干渉計型光可変減衰器において、光分岐器と光結合器(この場合いずれも2×2方向性結合器)が同一とみなせる場合、前記結合効率ηは以下の(3)式で表される。
【数4】
ここで、κは2×2方向性結合器の結合効率、ΔΦは第1と第2の接続光導波路間の位相差である。
【0094】
第1と第2の接続光導波路間の位相差ΔΦは、以下の(4)式で表される。
【数5】
ここで、neff1とneff2はそれぞれ第1と第2の接続光導波路の等価屈折率、L1とL2はそれぞれ第1と第2の位相調整手段が形成されている部位に対応する第1と第2の位相部接続光導波路1(1s、1t)の長さである。
【0095】
L1=L2=Lとすると、(4)式は以下の(5)式となる。
【数6】
(5)式からわかるように、位相差ΔΦは等価屈折率差(neff1−neff2)により決まる。したがって、各偏波光に等しい位相差を付与することは、すなわち、各偏波光に等しい等価屈折率差を付与することで得られることとなる。
【0096】
そこで、第1と第2の位相調整手段である第1と第2の薄膜ヒータに電力W1、W2を供給し、第1と第2の位相部接続光導波路にそれぞれΔT1、ΔT2の温度上昇を付与した際の各偏波光に対応する等価屈折率neff1TE、neff1TM、neff2TE、neff2TMは、それぞれ以下の(6)から(9)式で表される。
【数7】
【数8】
【数9】
【数10】
ここで、α1TE、α1TM、α2TE、α2TMはそれぞれ第1と第2の位相調整手段形成部位の第1と第2の位相部接続光導波路のTE偏波光、TM偏波光の等価屈折率の温度係数、γ1TE、γ1TM、γ2 TE、γ2TMはそれぞれ第1と第2の位相調整手段形成部位の第1と第2の位相部接続光導波路のTE偏波光、TM偏波光の電力供給量に対する等価屈折率の変化率、neff1TE0、neff1TM0、neff2TE0、neff2TM0は電力供給していない状態における第1と第2の位相部接続光導波路のTE偏波光、TM偏波光の等価屈折率である。
【0097】
ここで、所望の光減衰量を得るための設定位相差を付与する第1と第2の位相部接続光導波路間の等価屈折率差(neff1−neff2)をΔn、電力供給していない状態における第1と第2の位相部接続光導波路間の等価屈折率差をそれぞれΔn0TE=neff1TE0−neff2TE0、Δn0TM=neff1TM0−neff2TM0とすると、TE偏波光とTM偏波光におけるそれぞれの等価屈折率差ΔnTEとΔnTMが等しい等価屈折率差Δnは、(6)乃至(9)から、以下の(10)、(11)式で表される。
【数11】
【数12】
【0098】
(10)式から、以下の(12)が得られる。
【数13】
(12)式を(11)式に代入して、ΔT1を求めると、以下の(13)が得られる。
【数14】
【0099】
さらに、Δnは(1)乃至(4)式から、以下の(14)式で表せる。
【数15】
【0100】
上記(14)式を(12)及び(13)式に代入し、ΔT1及びΔT2を求めると、以下の(15)、(16)式が得られる。
【数16】
【数17】
【0101】
上記(15)及び(16)式から、第1と第2の位相調整手段形成部位の第1と第2の位相部接続光導波路における各偏波光の等価屈折率の温度係数α1TE、α1TM、α2TE、α2TMと所望の挿入損失Dを設定すると、設定した所望の挿入損失Dとするための必要な温度上昇量ΔT1とΔT2を一義的に求めることができる。
【0102】
すなわち、第1と第2の位相部接続光導波路における各偏波光の等価屈折率の温度係数α1TE、α1TM、α2TE、α2TMを与え、必要な温度上昇量ΔT1とΔT2を設定することにより、偏波依存性のない所望の挿入損失Dが得られることになる。
【0103】
また、同様に、第1と第2の薄膜ヒータへの電力供給量(第1と第2の薄膜ヒータへ印可される電力)W1、W2は、以下の(17)と(18)式で表される。
【数18】
【数19】
【0104】
(17)と(18)式からわかるように、電力供給のない状態における第1と第2の位相調整手段形成部位の第1と第2の位相部接続光導波路間の各偏波光における等価屈折率差Δn0TE、Δn0TM及び第1と第2の位相調整手段である第1と第2の薄膜ヒータへの電力供給量に対する第1と第2の位相調整手段形成部位の第1と第2の位相部接続光導波路の等価屈折率の変化率γ1TE、γ1TM、γ2TE、γ2TMと、所望の挿入損失Dを設定すると、設定した所望の挿入損失Dとするための必要な電力供給量W1とW2を一義的に求めることができる。
【0105】
なお、電力供給のない状態における第1と第2の位相調整手段形成部位の第1と第2の位相部接続光導波路間の各偏波光における等価屈折率差Δn0TE、Δn0TMは、電力供給のない状態における結合効率測定結果から、(14)式を用いて導出できる。
【0106】
すなわち、電力供給のない状態における第1と第2の位相調整手段形成部位の第1と第2の位相部接続光導波路間の各偏波光における等価屈折率差Δn0TE、Δn0TMと、第1と第2の位相調整手段である第1と第2の薄膜ヒータへの電力供給量に対する第1と第2の位相調整手段形成部位の第1と第2の位相部接続光導波路の等価屈折率の変化率γ1TE、γ1TM、γ2TE、γ2TMを与え、必要な電力供給量W1とW2を設定することにより、偏波依存性のない所望の挿入損失Dが得られることになる。
【0107】
以上のように、挿入損失の偏波依存性の解消について定式化の検討結果、(15)、(16)式または(17)、(18)式を満足するような電力をそれぞれ第1と第2の位相調整手段に供給することにより、TE偏波光及びTM偏波光に対して等しい等価屈折率差Δn=ΔnTE=ΔnTM、すなわち、(4)式からわかるように、TE偏波光及びTM偏波光に対して等しい位相差を与えることができるので、TE偏波光及びTM偏波光に対して偏波依存性のない等しい挿入損失Dを得ることができる。
【0108】
したがって、以上のように、第1実施形態例のマッハツェンダ干渉計型光可変減衰器において、挿入損失の偏波依存性のないマッハツェンダ干渉計型光可変減衰器としての光回路装置を実現することができる。
【0109】
つぎに、第1実施形態例の光回路装置であるマッハツェンダ干渉計型光可変減衰器の製造方法について説明する。図2は第1実施形態例のマッハツェンダ干渉計型光可変減衰器としての光回路装置の製造方法について説明する説明図である。なお、図2は図1の(a)のA−A断面図で示している。
【0110】
まず、図2の(a)に示すシリコン基板7上に火炎加水分解堆積法(FHD法)を用いて石英系ガラスから成る膜厚40μmの下部クラッド層2(2a)及び膜厚6μmのコア層1を成膜した。この際、コア層1の屈折率が下部クラッド層2(2a)のそれより0.8%高くなるように、コア層1にGeO2を添加した。
【0111】
つぎに、図2の(b)に示すように、フォトリソグラフィーとドライエッチングにより、幅6.5μmのコア1の光導波回路をパターニング形成した。コア1の光導波回路30は、図1の(a)に示すように、光分岐器21aと光結合器21bと、これらの光分岐器21aと光結合器21bを接続する第1と第2の接続光導波路1(1e、1f)が互いに等しい長さに形成されており、第1と第2の接続光導波路1(1e、1f)はそれぞれ長手方向に長さ5mmの直線部、すなわち、位相部接続光導波路1(1s、1t)を有している。
【0112】
また、第1と第2の接続光導波路1(1e、1f)の直線部である第1と第2の位相部接続光導波路1(1s、1t)は250μm間隔で互いに並設されている。さらに、光分岐器21aと光結合器21bの結合効率ηは波長1.55μmの光に対して50%になるように設定した。図2は図1の(a)のA−A断面による切断面で示されているので、コア1は第1と第2の位相部接続光導波路1(1s、1t)の切断面が示されている。
【0113】
つぎに、図2の(c)に示すように、FHD法を用いて膜厚20μmの上部クラッド層2(2b)を形成し、コア1の光導波回路をクラッド層2内に埋め込んで光導波路層3を形成した。
【0114】
つぎに、図2の(d)及び図1の(a)に示すように、スパッタ法とリフトオフ法を用いて、第1と第2の位相部接続光導波路1(1s、1t)のそれぞれに対応する光導波路層3の上面にNi製の薄膜ヒータ9a、9bを設けた。この第1と第2の薄膜ヒータ9a、9bは長さ5mm、幅10μm、膜厚0.5μmに形成されており、第1と第2の位相調整手段8a、8bを成している。なお、Ni膜と光導波路層3の表面との密着性を向上させるため、Ni膜の下部に膜厚0.1μmのTi膜を形成した。図2の(d)は図1の(a)のA−A切断面で切断した図を示している。
【0115】
第1と第2の位相調整手段8a、8bと第1と第2の位相調整手段8a、8b形成部位の第1と第2の位相部接続光導波路1(1s、1t)によりそれぞれ第1と第2の位相シフタを構成している。
【0116】
つぎに、上記第1と第2の薄膜ヒータ9a、9bの作製方法と同様の方法でTi/Ni/Auの3層から成る給電用配線(図示せず)を形成した。
【0117】
つぎに、図2の(e)及び図1の(a)、(b)に示すように、第1の位相シフタの第1の位相調整手段8aである第1の薄膜ヒータ9aの形成部位を挟む両側の光導波路層3が第1の位相部接続光導波路1(1s)と平行に間隔を介した領域が前記第1の位相部接続光導波路の長手方向に沿って光導波路層表面から基板表面に至るまでドライエッチングにより除去して光導波路層除去部5を形成し応力解放溝と成した。光導波路層除去部5の寸法は長さ5mm、幅50μmとした。また、第1の位相部接続光導波路を含む光導波路層3(3a)の幅は45μmとなるようにした。なお、第2の位相部接続光光導波路を含む光導波路層3(3b)の幅は1mmとなるようにした。
【0118】
第1実施形態例の光回路装置としてのマッハツェンダ光干渉計型光可変減衰器は、以上のように製造される。つぎに、このようにして製造された第1実施形態例のマッハツェンダ光干渉計型光可変減衰器について、光減衰量の偏波依存性のない所望の設定光減衰量を得る方法について説明する。
【0119】
まず、第1と第2の位相シフタに電力を供給しない状態において、図1の(a)に示すように、波長1.55μmのTE偏波光とTM偏波光の伝搬光を第1の光導波路1(1a)の入射端17から入射し、第4の光導波路1(1d)の出射端20から出射された伝搬光の挿入損失DをTE偏波光とTM偏波光の両方についてそれぞれ独立に測定した。その結果、TE偏波光とTM偏波光の挿入損失は光ファイバとの接続損失を含めてそれぞれ0.98dB、0.95dBであった。
【0120】
つぎに、第1と第2の位相シフタの第1と第2の位相調整手段8a、8bにそれぞれ独立に電力を供給し、TE偏波光、TM偏波光それぞれの挿入損失を測定して、電力供給量と挿入損失の関係を求めた。また、各偏波光による挿入損失の差(PDL)も求めた。その結果を図4に示す。図4の(a)は第1の位相シフタにおける電力供給量と挿入損失の関係及び電力供給量と各偏波光による挿入損失の差(PDL)を示す。また、図4の(b)は第2の位相シフタにおける電力供給量と挿入損失の関係及び電力供給量と各偏波光による挿入損失の差(PDL)を示す。
【0121】
図4の(a)、(b)において、特性線aはTE偏波光の電力供給量に対する挿入損失を示し、また、特性線bはTM偏波光の電力供給量に対する挿入損失を示し、さらに、特性線cは電力供給量に対するTE偏波光とTM偏波光の挿入損失の差(PDL)を示している。
【0122】
図4の(a)、(b)からわかるように、第1の位相シフタの第1の位相調整手段である第1の薄膜ヒータの形成部位を挟む両側の光導波路層の第1の位相部接続光導波路と平行に間隔を介した領域のみが前記第1の位相部接続光導波路の長手方向に沿って除去されて光導波路層除去部を形成しているため、第1の位相調整手段に電力供給した場合と第2の位相調整手段に電力供給した場合とで、等しい電力供給量に対してTE偏波光とTM偏波光の挿入損失とTE偏波光とTM偏波光の挿入損失の差(PDL)が互いに大きく異なる。
【0123】
図4の(a)からわかるように、光導波路層除去部を形成した第1の位相シフタの第1の位相調整手段に単独で電力供給した場合においても、例えば挿入損失が約11dBの値となるとき、すなわち、光減衰量(初期状態からの挿入損失の増加分)が約10dBの値となるとき、PDLが約1dBと大きな値となっており、光導波路層除去部5を形成しても第1の位相シフタとして単独で使用できるほどにPDLを低減できていない。
【0124】
つぎに、図4の(a)、(b)のTE偏波光とTM偏波光の挿入損失の測定結果から、第1と第2の位相シフタ部位の第1と第2の位相部接続光導波路のそれぞれの電力供給量に対する等価屈折率の変化率との関係を求める。
【0125】
(14)式からわかるように、第1と第2のいずれか一方の位相シフタに電力供給した場合、電力供給した位相シフタの位相部接続光導波路における等価屈折率の変化率は、第1と第2の位相シフタの第1と第2の位相部接続光導波路における等価屈折率差Δnの変化率に等しい。
【0126】
そこで、第1と第2の位相シフタの第1と第2の位相調整手段にそれぞれ単独に電力供給した際の挿入損失測定結果の値(図4の(a)、(b)におけるそれぞれの特性線aとbの値)と、式(14)から各電力供給量における等価屈折率差Δnを求めることによって、TE偏波光とTM偏波光について電力供給量に対する等価屈折率差Δnとの関係を求めた。その結果を図5の(a)と(b)に示す。なお、2×2方向性結合器である光分岐器と光結合器の結合効率κは、同一基板上に作製した2×2方向性結合器である光分岐器と光結合器それぞれ単独の回路の測定値を採用している。
【0127】
図5の(a)は第1の位相シフタの第1の位相調整手段に独立に電力供給した場合の、TE偏波光とTM偏波光について電力供給量に対する等価屈折率差Δnを表す。また、図5の(b)は第2の位相シフタの第2の位相調整手段に独立に電力供給した場合の、TE偏波光とTM偏波光について電力供給量に対する等価屈折率差Δnを表す。
【0128】
図5の(a)、(b)において、特性線aはTE偏波光の等価屈折率差Δnを示し、特性線bはTM偏波光の等価屈折率差Δnを示す。図5の(a)と(b)から、電力供給量に対する第1と第2の位相シフタの第1と第2の位相部接続光導波路におけるTE偏波光とTM偏波光の等価屈折率差Δnの変化率γ1TE、γ1TM、γ2TE、γ2TMをそれぞれ求めた結果を表1に示す。
【0129】
表1
【0130】
以上の測定結果から、式(17)、(18)より0から20dBまでの光減衰量(挿入損失から初期挿入損失を差し引いた量、すなわち、挿入損失の増分)の範囲内での、TE偏波光とTM偏波光の等しい設定光減衰量となる第1と第2の位相調整手段への電力供給量を求めた結果を図6に示す。図6中、特性線aは第1の位相シフタにおける設定光減衰量と電力供給量の関係を示し、特性線bは第2の位相シフタにおける光減衰量と電力供給量の関係を示す。
【0131】
以上のように、式(17)、(18)より求めた結果(図6)を確認するために、5、10、15、20dBの設定光減衰量となるように第1と第2の位相調整手段にそれぞれ電力供給して、設定光減衰量に対する実際に測定された光減衰量とPDLの結果を表2に示す。
【0132】
表2
【0133】
表2の結果を図に表したのが図7である。図7中、特性線aはTE偏波光の設定光減衰量と実際に測定した測定光減衰量の関係を示し、特性線bはTE偏波光の設定光減衰量と実際に測定した測定光減衰量の関係を示し、特性線cは設定光減衰量とPDLの関係を示している。
【0134】
表2および図7からわかるように、20dBという大きな光減衰量を付与した際も、PDLは−0.12dBと非常に小さく抑えられている。以上の結果より、本発明の構成によれば、第1実施形態例の光回路装置であるマッハツェンダ干渉計型光可変減衰器の光減衰量の偏波依存性をほぼ解消でき、伝搬光の光特性を損なうことなく、所望の光減衰量を実現できる。
【0135】
つぎに、本発明に係わる第2実施形態例について説明する。第2実施形態例を図8の(a)と(b)に示す。図8の(b)は、図8の(a)の光回路装置であるマッハツェンダ干渉計型光可変減衰器のA−A切断面の断面図である。
【0136】
第2実施形態例の構成は、第1実施形態例の構成とほぼ同様であり、第2実施形態例の構成が第1実施形態例の構成と異なる点は、第2の位相部接続光導波路1(1t)に沿った第2の位相調整手段8bの両側にも光導波路除去部5を形成して応力解放溝と成し、第1の位相部接続光導波路1(1s)を含む光導波路層3(3a)の幅と第2の位相部接続光導波路1(1t)を含む光導波路層3(3b)の幅を異なる幅としていることである。光導波路層3(3a)の幅L1は30μmとし、光導波路層3(3b)の幅L2は100μmとしている。その他の構成は、第1実施形態例と同様であり、また、製造方法も第1実施形態例と同様である。
【0137】
第2実施形態例において、第1実施形態例と同様の電力供給方法と測定方法によりTE偏波光とTM偏波光それぞれの光減衰量を測定した。5、10、15、20dBの設定光減衰量となるように第1の位相シフタと第2の位相シフタにそれぞれ電力供給して、設定光減衰量に対する実際に測定された光減衰量とPDLの結果を表3に示す。
【0138】
表3
【0139】
第2実施形態例においても、表3からわかるように、20dBという大きな光減衰量を付与してもPDLは−0.12dBと非常に小さく抑制されている。また、第2実施形態例においては、第1と第2の位相シフタ両方の両側に光導波路除去部5を形成しており、第2の位相部接続光導波路を含む光導波路層3(3b)の幅を第1の実施形態例の対応する幅より大幅に小さくしたことにより、電力供給量も大幅に抑えられている。
【0140】
つぎに、本発明に係わる第3実施形態例について説明する。第3実施形態例を図9の(a)と(b)に示す。図9の(b)は、光回路装置であるマッハツェンダ干渉計型光可変減衰器である図9の(a)のA−A切断面の断面図である。
【0141】
第3実施形態例の構成は、第1実施形態例の構成とほぼ同様であり、第3実施形態例の構成が第1実施形態例の構成と異なる点は、第1の位相シフタの第1の位相調整手段8aである第1の薄膜ヒータ9aの形成部位を挟む両側の光導波路層3が第1の位相部接続光導波路と平行に間隔を介した領域が前記第1の位相部接続光導波路の長手方向に沿って光導波路層表面から基板表面に至るまで除去して光導波路層除去部5を形成した構成にした上で、さらに、該光導波路層除去部5の下部に対向する全領域を包含するシリコン基板表面部位に断面矩形状の凹部4を設けたことである。
【0142】
さらに、2×2方向性結合器である光分岐器21aと光結合器21bを分岐比が1対1の2×2マルチモード干渉計導波路(MMI:Multi−Mode Interference)の光分岐器21aと光結合器21bの構成としたことである。なお、光分岐器21aと光結合器21bである2×2MMIは、2×2方向性結合器に比べて分岐比の波長依存性小さい等の利点を有する。
【0143】
以下に第3実施形態例の製造方法を説明する。図10の(a)から(f)に第3実施形態例の製造の工程図を示す。図10の(a)から(e)までの工程は第1実施形態例の図2の(a)から(e)までの工程と同様であり、図10の(a)から(e)までの工程の説明は省略し、第3実施形態例の特徴的なシリコン基板表面部位に断面矩形状の凹部4を設ける工程である図10の(f)について説明する。
【0144】
図10の(e)で光導波路層除去部5を形成した後、図10の(f)では光回路装置であるマッハツェンダ干渉計型光可変減衰器を作製したチップをKOH水溶液に浸し、KOHのシリコン基板に対する異方性エッチングを利用してシリコン基板をエッチングして、光導波路層除去部5の下部の幅50μmより20μm幅広である70μm幅、10μm深さ、5mm長さの断面矩形状の凹部4を形成した。
【0145】
以上のように作製したマッハツェンダ干渉計型光可変減衰器について、第1実施形態例と同様の電力供給方法と測定方法によりTE偏波光とTM偏波光それぞれの光減衰量を測定した。5、10、15、20dBの設定光減衰量となるように第1の位相シフタと第2の位相シフタにそれぞれ電力供給して、設定光減衰量に対する実際に測定された光減衰量とPDLの結果を表4に示す。
【0146】
表4
【0147】
表4からわかるように、20dBという大きな光減衰量を付与した際もPDLは0.16dBと非常に小さい値に抑えられており、光減衰量の偏波依存性がほぼ解消されている。なお、光導波路層除去部5を設けたことに加えて、該光導波路層除去部5の下部に対向する全領域を包含するシリコン基板表面部位に断面矩形状の凹部4を設けたことにより、第2実施形態例の電力供給量は第1実施形態例の電力供給量の約70%程度に抑えられている。
【0148】
つぎに、本発明に係わる第4実施形態例について説明する。第4実施形態例を図11の(a)と(b)と(c)に示す。図11の(b)は、光回路装置であるマッハツェンダ干渉計型光可変減衰器である図11の(a)のA−A切断面の断面図である。また、図11の(c)は、光回路装置であるマッハツェンダ干渉計型光可変減衰器である図11の(a)のB−B切断面の断面図である。
【0149】
第4実施形態例の構成は、第2実施形態例の構成とほぼ同様であり、第4実施形態例の構成が第2実施形態例の構成と異なる点は、第2実施形態例と同一の第1の位相調整手段8aの対向する第2の接続光導波路1(1f)に第1の位相調整手段8aと同一構成であるダミーとしての第1のダミー位相調整手段8a’が形成され、かつ第1のダミー位相調整手段8a’の両側には第1の位相調整手段8aの両側の光導波路層除去部5と同一構成の光導波路層除去部5が形成されており、第2の位相調整手段8bは第1のダミー位相調整手段8a’と間隔を介して光結合器21b側に直列接続されており、また、第2の位相調整手段8bと対向する第1の接続光導波路1(1e)に第2の位相調整手段8bと同一構成であるダミーとしての第2のダミー位相調整手段8b’が形成され、かつ第2のダミー位相調整手段8b’の両側には第2の位相シフタの両側の光導波路層除去部5と同一の光導波路層除去部5が形成されており、第1の位相調整手段8aは第2のダミー位相調整手段8b’と間隔を介して光分岐器21a側に直列接続されていることである。
【0150】
また、第4実施形態例の構成が第2実施形態例の構成と異なるつぎの点は、第4実施形態例の光分岐器21aと光結合器21bは第2実施形態例の2×2方向性結合器の代わりに分岐比が1対1であるY分岐器とし、さらに、第4実施形態例の光分岐器21aの入射側に接続されている光導波路は第2実施形態例の第1の光導波路1(1a)と第2の光導波路1(1b)の2本から入射光導波路1(1a’)の1本とし、同様に第4実施形態例の光結合器21bの出射側に接続されている光導波路は第2実施形態例の第3の光導波路1(1c)と第4の光導波路1(1d)の2本から出射光導波路1(1c’)の1本としている。なお、分岐比が1対1であるY分岐器は2×2方向性結合器に比べて分岐比の波長依存性が小さい特性を有する。
【0151】
第4実施形態例の構成は以上のようであり、第2実施形態例と同様に第1の位相シフタの第1の位相部接続導波路1(1s)を含む光導波路層3(3a)の幅は30μmであり、第2の位相シフタの第2の位相部接続導波路1(1t)を含む光導波路層3(3b)の幅は100μmである。
【0152】
第4実施形態例の製造方法は第2実施形態例と同様であり、ここではその説明を省略する。
【0153】
第2実施形態例と同様の製造方法で作製したマッハツェンダ干渉計型光可変減衰器について、第1実施形態例と同様の電力供給方法と入射光導波路1(1a’)の入射端17’より信号光を入射し、出射光導波路1(1c’)の出射端19’より出射したTE偏波光とTM偏波光それぞれの光減衰量を測定した。5、10、15、20dBの設定光減衰量となるように第1の位相シフタと第2の位相シフタにそれぞれ電力供給して、設定光減衰量に対する実際に測定された光減衰量とPDLの結果を表5に示す。
【0154】
表5
【0155】
表5からわかるように、第4実施形態例の光減衰量の偏波依存性の解消の程度は第2実施形態例とほぼ同等の特性が得られ、かつ、第2実施形態例と比較して電力供給量を低減も実現できた。
【0156】
第4実施形態例においては、第1のダミー位相調整手段8a’と第2のダミー位相調整手段8b’はそれぞれ第1の位相調整手段8aと第2の位相調整手段8bと対向する位置に配設したが、このような配設に限定されるものではない。第1の接続光導波路に配設される第1の位相調整手段8aと第2のダミー位相調整手段8b’の位置関係は問わず、第2のダミー位相調整手段8b’は第1の位相調整手段8aに対して光分岐器側に形成されてもよく、あるいは光結合器側に形成されてもよい。同様に、第2の接続光導波路に配設される第2の位相調整手段8bと第1のダミー位相調整手段8a’の位置関係は問わず、第1のダミー位相調整手段8a’は第2の位相調整手段8bに対して光分岐器側に形成されてもよく、あるいは光結合器側に形成されてもよい
【0157】
また、第1の位相調整手段8aと第1のダミー位相調整手段8a’あるいは第2の位相調整手段8bは対向する位置に配設されなくともよく、第2の位相調整手段8bと第2のダミー位相調整手段8b’あるいは第1の位相調整手段8aは対向する位置に配設されなくともよい。
【0158】
以上説明した第1実施形態例乃至第4実施形態例においては、第1の位相シフタと第2の位相シフタへ供給する電力供給量が互いに異なるためにそれぞれ別個の電源により独立して電力供給を行っていた実施形態例であった。
【0159】
つぎに、本発明に係わる第5実施形態例について説明する。第5実施形態例においては、第1の位相シフタと第2の位相シフタに同一の電源にて電力供給を行う実施形態例について示す。
【0160】
第5実施形態例を図12の(a)と(b)と(c)に示す。図12の(b)は、光回路装置であるマッハツェンダ干渉計型光可変減衰器である図12の(a)のA−A切断面の断面図である。また、図12の(c)は、光回路装置であるマッハツェンダ干渉計型光可変減衰器である図12の(a)のB−B切断面の断面図である。
【0161】
第5実施形態例の構成は、第4実施形態例の構成とほぼ同様であり、第5実施形態例の構成が第4実施形態例の構成と異なる点は、第1と第2の位相調整手段8a、8bである薄膜ヒータ9a、9bの両端に接続する給電配線(以下電極という)44を光導波路層上に形成し、第1と第2の薄膜ヒータ9a、9bの光分岐器21a側に接続された電極44は1個の給電電源(以下電源という)50と接続する端部44aを同一にしており、同様に第1と第2の薄膜ヒータ9a、9bの光結合器21b側に接続された電極44は電源50と接続する端部44bを同一にしている。また、電極44の両端部44a、44bはリード線45を介して同一電源50に接続されている。さらに、第2の薄膜ヒータ9bの光結合器21b側の電極44の途中部には薄膜抵抗46が配設されていることである。
【0162】
まず、第1の位相シフタと第2の位相シフタに同一の電源にて電力供給を行うことについての定式化の検討を行った。
【0163】
【数20】
【数21】
【0164】
第5実施形態例の構成の場合、第1と第2の位相部接続光導波路1(1s、1t)間の初期位相差Δ0TEとΔ0TMがほぼゼロとなるので、(19)、(20)式は、それぞれ下記の(21)、(22)式で近似できる。
【数22】
【数23】
【0165】
上記(21)、(22)式からW2とW1の比W2/W1を求めると、下記(23)式が得られる。
【数24】
【0166】
(23)式からW2/W1は等価屈折率差Δnによらず、すなわち、電力供給量によらず一定値になることがわかる。以上の検討結果により、同一の電源により第1の位相シフタと第2の位相シフタへの電力供給を行ったのが第5実施形態例である。
【0167】
以下において、第5実施形態例の構成を図12によりさらに詳細に説明する。第2の位相シフタの第2の薄膜ヒータ9bの抵抗値R2は第1の位相シフタの第1の薄膜ヒータ9aの抵抗値R1より小さくなるように設定されている。具体的には、第2の薄膜ヒータ9bの幅を第1の薄膜ヒータ9aの幅より大きく(広く)形成している。
【0168】
さらに、第2の位相シフタの第2の薄膜ヒータ9bの光結合器21b側の電極44の途中部で、かつ、第2の位相部接続導波路1(1t)に温度変化を与えないように第2の位相部接続導波路1(1t)の光結合器21b側の端部から十分離間した位置に、抵抗値rの薄膜抵抗46を配設している。そして、第2の薄膜ヒータ9bの抵抗値R2と薄膜抵抗46の抵抗値rの和R2+rが第1の薄膜ヒータ9aの抵抗値R1と等しくなるように設定されている。なお、薄膜抵抗46は位相シフタの薄膜ヒータと同じように作製されている。
【0169】
第1の薄膜ヒータ9aに印可される電圧をE1、第2の薄膜ヒータ9bに印可される電圧をE2とし、電源50からの電圧をEとすると、第1と第2の薄膜ヒータ9a、9bに加わる電力W1、W2はそれぞれ以下の(24)、(25)式となる。なお、Iは第1と第2の薄膜ヒータ9a、9bを流れる電流である。
【0170】
【数25】
【数26】
【0171】
上記(24)、(25)式からW2とW1の比W2/W1を求めると、以下の(26)式が得られる。
【数27】
【0172】
したがって、求めた設定電力W1、W2とするためには、設定電力比と同一の比となるR1とR2からR2を決定すればよいことがわかる。そこで、第5実施形態例においては電力W1、W2の比は第4実施形態例の表5から以下の(27)式が得られる。
【数28】
【0173】
したがって、第2の薄膜ヒータ9bの抵抗値R2は以下の(28)式となる。
【数29】
【0174】
上記(28)式となるように、第2の薄膜ヒータ9bの幅を第1の薄膜ヒータ9aの幅10μmの1/0.556倍の17.99μmと設定した。また、薄膜抵抗46の抵抗値rについては、第1の薄膜ヒータ9aの抵抗値R1の(1−0.556)=0.444倍の抵抗値となるようにするため、薄膜抵抗46の幅は第1の薄膜ヒータ9aの幅と同一の10μmとし、長さを第1の薄膜ヒータ9aの長さ5mm(5000μm)の0.444倍の2220μmと設定した。
【0175】
その他の構造及び製造方法は第4実施形態例と同様であり、以上のようにして作製した光回路装置である光可変減衰器について、同一電源50から電力供給し第4実施形態例の測定方法と同様の測定方法で、5、10、15、20dBの光減衰量となるような電力を第1の薄膜ヒータ9aと薄膜抵抗46を含む第2の薄膜ヒータ9bの回路に同一電源から同一の電力供給した際の設定光減衰量と実測の光減衰量を比較した結果を表6に示す。
【0176】
表6
【0177】
なお、第5実施形態例においては、第1の薄膜ヒータと薄膜抵抗を含む第2の薄膜ヒータの回路に個別に電力供給ができないことから、所望の光減衰量を得るための電力については第4実施形態例において求めた値を用いている。すなわち、第4実施形態例における全体の電力供給量を第4実施形態例の第1の薄膜ヒータへの電力供給量の2倍量とし、第4実施形態例の第1の薄膜ヒータと第2の薄膜ヒータへの電力供給量が第5実施形態例の第1の薄膜ヒータと薄膜抵抗を含む第2の薄膜ヒータ回路への電力供給量と等しくなるようにした。また、第5実施形態例においては、電極44の抵抗値は薄膜ヒータ9a、9bや薄膜抵抗46の抵抗値に比べて十分に小さいので、電極44の抵抗値は無視している。
【0178】
上記表6の結果から、第5実施形態例においても第4実施形態例とほぼ同等の光減衰量の偏波依存性の解消効果を実現できることがわかる。なお、第1の位相シフタと第2の位相シフタに同一の電源にて電力供給を行う実施形態例について第5実施形態例の場合について説明したが、第5実施形態例に限定されるものではなく、第1実施形態例乃至第3実施形態例のいずれか1つの場合においても第5実施形態例と同様第1の位相シフタと第2の位相シフタに同一の電源にて電力供給を行うことができ、第5実施形態例と同様の効果を実現できる。
【0179】
つぎに、本発明に係わる第6実施形態例について説明する。第6実施形態例は第1実施形態例の図1に示される光回路装置を用いて、第1の位相シフタと第2の位相シフタ間の位相差が波長1.55μmの伝搬光に対して位相反転する位相差となるように電力供給量を設定し、1×2の光スイッチとしたものである。
【0180】
第6実施形態例において、光スイッチとして用いるため波長1.55μmの伝搬光のTE偏波光とTM偏波光を第1の光導波路1(1a)の入射端17から入射し、第3と第4の光導波路1(1c、1d)のそれぞれの出射端19、20から出射された伝搬光の挿入損失をTE偏波光とTM偏波光についてそれぞれ独立に測定した。
【0181】
上記測定を電力供給がない場合と所望の位相差が得られる電力供給をした場合の両方について実施した。それらの測定結果を以下の表7に示す。なお、表7の消光比とは電力供給が有る場合と無い場合における挿入損失の差である。
【表1】
【0182】
上記表7からわかるように、電力供給の有無に係わらず0.20dB以下という良好なPDLが得られており、消光比についても30dB以上という光スイッチとして実用上問題のない値が得られている。以上のように、第6実施形態例において本発明の光回路装置を適用することにより、1段型マッハツェンダ干渉計回路と同じサイズで構成でき、PDLを効果的に抑制し、また高消光比のマッハツェンダ干渉計型光スイッチが実現できた。
【0183】
以上の結果から、本発明の光回路装置の構成を用いることにより、例えば本発明の光回路装置であるマッハツェンダ干渉計型光可変減衰器あるいはマッハツェンダ干渉計型光スイッチの光減衰量の偏波依存性を抑制でき、PDLをほぼ解消できる光回路装置が実現できる。また、本発明の光回路装置であるマッハツェンダ干渉計型光可変減衰器あるいはマッハツェンダ干渉計型光スイッチはそれぞれ従来の1段型マッハツェンダ干渉計型光可変減衰器あるいはマッハツェンダ干渉計型光スイッチとほぼ同一の大きさで、かつ、電力供給量を抑制できることが確認できた。
【0184】
【発明の効果】
本発明の光回路装置によれば、基板と、該基板上にコアとクラッドが形成された光導波路層を有し、前記コアの光導波回路は光の分岐を行う光分岐器と光の結合を行う光結合器と、これらの光分岐器と光結合器を接続する第1の接続光導波路と第2の接続光導波路を有し、該第1と第2の接続光導波路にはそれぞれ伝搬光の位相を可変可能な第1と第2の位相調整手段が設けられた光回路装置において、前記第1と第2の位相調整手段の位相調整を行った際の位相調整量に対する第1の位相調整手段の位相の偏波差の変化率と第2の位相調整手段の位相の偏波差の変化率とが互いに異なるように形成されている構成とすることにより、伝搬光のTE偏波光とTM偏波光のそれぞれの光減衰量の偏波依存性をほぼ解消することができる。
【0185】
さらに、本発明の光回路装置によれば、基板と、該基板上にコアとクラッドが形成された光導波路層を有し、前記コアの光導波回路は光の分岐を行う光分岐器と光の結合を行う光結合器と、これらの光分岐器と光結合器を接続する第1の接続光導波路と第2の接続光導波路を有し、該第1と第2の接続光導波路にはそれぞれ伝搬光の位相を可変可能な第1と第2の位相調整手段が設けられた光回路装置において、前記第1と第2の位相調整手段の位相調整を行った際の位相調整量に対する第1の接続光導波路の複屈折率の変化率と第2の接続光導波路の複屈折率の変化率とが互いに異なるように形成されている構成とすることにより、伝搬光のTE偏波光とTM偏波光のそれぞれの光減衰量の偏波依存性をほぼ解消することができる。
【0186】
さらに、本発明の光回路装置において、第1の接続光導波路の複屈折率と第2の接続光導波路の複屈折率とが互いに異なるように形成されている構成とすることにより、伝搬光のTE偏波光とTM偏波光のそれぞれの光減衰量の偏波依存性をほぼ解消することができる。
【0187】
さらに、本発明の光回路装置において、第1または第2の位相調整手段の形成部位の近傍には第1と第2の複屈折率制御手段の少なくとも一方が形成されている構成とすることにより、第1の接続光導波路の複屈折率と第2の接続光導波路の複屈折率とが互いに異なるように形成することができ、伝搬光のTE偏波光とTM偏波光のそれぞれの光減衰量の偏波依存性をほぼ解消することができる。
【0188】
さらに、本発明の光回路装置において、第1と第2の複屈折率制御手段は第1と第2の位相調整手段の形成部位の光導波路に付与されている応力を解放する第1と第2の応力解放手段とした構成とすることにより、第1の接続光導波路の複屈折率と第2の接続光導波路の複屈折率とが互いに異なるように形成することができ、伝搬光のTE偏波光とTM偏波光のそれぞれの光減衰量の偏波依存性をほぼ解消することができる。なお、第1と第2の複屈折率制御手段は第1と第2の位相調整手段の形成部位の光導波路に付与されている応力を解放する第1と第2の応力解放手段に限定されることはなく、第1と第2の複屈折率制御手段は第1と第2の位相調整手段の形成部位の光導波路に付与されている応力をさらに増加(付与)させる第1と第2の応力付与手段としてもよい。
【0189】
さらに、本発明の光回路装置において、第1と第2の応力解放手段は、第1と第2の位相調整手段の少なくとも一方の形成部位を挟む両側の光導波路層が接続光導波路と間隔を介した領域が前記接続光導波路の長手方向に沿って光導波路層表面から基板表面に向かって除去されて光導波路層除去部と成し、該光導波路層除去部と並設されている前記第1と第2の接続光導波路を含む第1の光導波路層の幅と第2の光導波路層の幅が互いに異なるように形成した構成とすることにより、第1の接続光導波路の複屈折率と第2の接続光導波路の複屈折率とが互いに異なるように形成することができ、伝搬光のTE偏波光とTM偏波光のそれぞれの光減衰量の偏波依存性をほぼ解消することができる。
【0190】
さらに、本発明の光回路装置において、第1と第2の位相調整手段の少なくとも一方の形成部位を挟む両側の光導波路層が接続光導波路と間隔を介した領域が前記接続光導波路の長手方向に沿って光導波路層表面から基板表面に至るまで除去されて光導波路層除去部と成し、該光導波路層除去部と並設されている前記第1と第2の接続光導波路を含む第1の光導波路層の幅と第2の光導波路層の幅が互いに異なるように形成した構成とすることにより、第1の接続光導波路の複屈折率と第2の接続光導波路の複屈折率とが互いに異なることとなり、伝搬光のTE偏波光とTM偏波光のそれぞれの光減衰量の偏波依存性をほぼ解消することができる。
【0191】
さらに、本発明の光回路装置において、第1と第2の応力解放手段は、第1と第2の位相調整手段の少なくとも一方の形成部位を挟む両側の光導波路層が接続光導波路と間隔を介した領域が前記接続光導波路の長手方向に沿って光導波路層表面から基板表面に至るまで除去されて光導波路層除去部と成し、該光導波路層除去部の下部に対向する基板表面部位に基板を除去した基板除去部が設けられており、前記光導波路層除去部と並設されている前記第1と第2の接続光導波路を含む第1の光導波路層の幅と第2の光導波路層の幅が互いに異なるように形成した構成とすることにより、第1の接続光導波路の複屈折率と第2の接続光導波路の複屈折率とが互いに異なることとなり、伝搬光のTE偏波光とTM偏波光のそれぞれの光減衰量の偏波依存性をほぼ解消することができる。また、電力供給量を抑えることができる。
【0192】
さらに、本発明の光回路装置において、基板除去部は、光導波路層除去部の下部に対向する全領域を包含する基板表面部位に断面矩形状の凹部となる基板除去部が形成されている構成とすることにより、第1の接続光導波路の複屈折率と第2の接続光導波路の複屈折率とが互いに異なることとなり、伝搬光のTE偏波光とTM偏波光のそれぞれの光減衰量の偏波依存性をほぼ解消することができる。また、電力供給量を抑えることができる。
【0193】
さらに、本発明の光回路装置において、第2の接続光導波路には第1の位相調整手段と同一構造のダミーとしての第1のダミー位相調整手段が形成されており、かつ第1の位相調整手段と間隔を介した領域が前記接続光導波路の長手方向に沿って光導波路層が除去された光導波路層除去部と同一構造の光導波路層除去部が第1のダミー位相調整手段形成部位を挟む両側の光導波路層に形成されており、第2の位相調整手段は第1のダミー位相調整手段と間隔を介して接続されており、第1の接続光導波路には第2の位相調整手段と同一構造のダミーとしての第2のダミー位相調整手段が形成されており、かつ第2の位相調整手段と間隔を介した領域が第2の位相調整手段の長手方向に沿って光導波路層が除去された光導波路層除去部と同一構造の光導波路層除去部が第2のダミー位相調整手段形成部位を挟む両側の光導波路層に形成されており、第1の位相調整手段は第2のダミー位相調整手段と間隔を介して接続されている構成とすることにより、伝搬光のTE偏波光とTM偏波光のそれぞれの光減衰量の偏波依存性をほぼ解消することができ、また、電力供給量を抑えることができる。
【0194】
さらに、本発明の光回路装置において、第1と第2の薄膜ヒータにはそれぞれ給電するための第1と第2の給電配線が接続されており、該第1と第2の給電配線は一つの給電電源に並列接続されており、第1の給電配線と第1の薄膜ヒータのそれぞれの抵抗値の和と第2の給電配線と第2の薄膜ヒータのそれぞれの抵抗値の和が等しい構成とすることにより、伝搬光のTE偏波光とTM偏波光のそれぞれの光減衰量の偏波依存性をほぼ解消することができる。
【0195】
さらに、本発明の光回路装置において、第1と第2の薄膜ヒータにはそれぞれ給電するための第1と第2の給電配線が接続されており、該第1と第2の給電配線は一つの給電電源に並列接続されており、第1の給電配線と第2の給電配線の少なくとも一方には抵抗器が接続されており、第1の給電配線と第1の薄膜ヒータと抵抗器のそれぞれの抵抗値の和と第2の給電配線と第2の薄膜ヒータと抵抗器のそれぞれの抵抗値の和が等しい構成とすることにより、伝搬光のTE偏波光とTM偏波光のそれぞれの光減衰量の偏波依存性をほぼ解消することができる。
【0196】
さらに、本発明の光回路装置において、マッハツェンダ光干渉計回路を有する構成によれば、マッハツェンダ光干渉計回路の位相部が第1と第2の接続光導波路となるので、この第1と第2の接続光導波路に形成したそれぞれ第1と第2の位相調整手段により、第1と第2の接続光導波路を伝搬する伝搬光の位相を制御し、光可変減衰器や光スイッチ等の様々な機能を有し、伝搬光のTE偏波光とTM偏波光のそれぞれの光減衰量の偏波依存性をほぼ解消することができる光回路装置を実現できる。
【0197】
さらに、本発明の光回路装置の制御方法によれば、第1の接続光導波路を伝搬する伝搬光が第1の接続光導波路を伝搬した後のTE偏波光の位相と第2の接続光導波路を伝搬する伝搬光が第2の接続光導波路を伝搬した後のTE偏波光の位相間の位相差と第1の接続光導波路を伝搬する伝搬光が第1の接続光導波路を伝搬した後のTM偏波光の位相と第2の接続光導波路を伝搬する伝搬光が第2の接続光導波路を伝搬した後のTM偏波光の位相間の位相差とが互いに等しくなるように位相調整手段を調節することにより、伝搬光のTE偏波光とTM偏波光のそれぞれの光減衰量の偏波依存性をほぼ解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係わる光回路装置の第1実施形態例を示す要部構成図である。
【図2】上記第1実施形態例の光回路装置の製造工程を示す説明図である。
【図3】上記第1実施形態例の光回路装置のTE偏波光の位相差とTM偏波光の位相差を等しくすることを示す模式図である。
【図4】上記第1実施形態例の光回路装置の第1と第2の位相シフタへの電力供給量と挿入損失及びPDLの関係を示すグラフである。
【図5】上記第1実施形態例の光回路装置の第1と第2の位相シフタへの電力供給量と第1と第2の接続光導波路間のTE偏波光とTM偏波光の等価屈折率差の関係を示すグラフである。
【図6】上記第1実施形態例の光回路装置の第1と第2の位相シフタの設定挿入損失と第1と第2の位相シフタへの電力供給量との関係を示すグラフである。
【図7】上記第1実施形態例の光回路装置の設定光減衰量と測定光減衰量及びPDLの関係を示すグラフである。
【図8】本発明に係わる光回路装置の第2実施形態例を示す要部構成図である。
【図9】本発明に係わる光回路装置の第3実施形態例を示す要部構成図である。
【図10】上記第3実施形態例の光回路装置の製造工程を示す説明図である。
【図11】本発明に係わる光回路装置の第4実施形態例を示す要部構成図である。
【図12】本発明に係わる光回路装置の第5実施形態例を示す要部構成図である。
【図13】従来の光回路装置を示す要部構成図である。
【図14】上記従来の光回路装置の位相を説明する説明図である。
【図15】従来提案された光回路装置を示す要部構成図である。
【図16】上記提案された光回路装置の位相を説明する説明図である。
【符号の説明】
1 コア(光導波路)
1(1e) 第1の接続光導波路
1(1f) 第2の接続光導波路
1(1s) 第1の位相部接続光導波路
1(1t) 第2の位相部接続光導波路
2 クラッド
3 光導波路層
4 凹部(シリコン基板除去部)
5 光導波路層除去部
7 シリコン基板
8a 第1の位相調整手段
8b 第2の位相調整手段
9a 第1の薄膜ヒータ
9b 第2の薄膜ヒータ
21a 光分岐器
21b 光結合器
30 マッハツェンダ光干渉計回路(光導波回路)
44 電極(給電配線)
46 薄膜抵抗
50 電源(給電電源)
Claims (17)
- 基板と、該基板上にコアとクラッドが形成された光導波路層を有し、前記コアの光導波回路は光の分岐を行う光分岐器と光の結合を行う光結合器と、これらの光分岐器と光結合器を接続する第1の接続光導波路と第2の接続光導波路を有し、該第1と第2の接続光導波路にはそれぞれ伝搬光の位相を熱光学効果によって可変可能な第1と第2の位相調整手段が設けられた光回路装置において、前記第1と第2の位相調整手段の位相調整を行った際の位相調整量に対する第1の位相調整手段の位相の偏波差の変化率と第2の位相調整手段の位相の偏波差の変化率とが互いに異なるように形成されており、
第2の接続光導波路には第1の位相調整手段と同一構造のダミーとしての第1のダミー位相調整手段が形成されており、かつ第1の位相調整手段と間隔を介した領域が前記接続光導波路の長手方向に沿って光導波路層が除去された光導波路層除去部と同一構造の該光導波路層除去部が第1のダミー位相調整手段の形成部位を挟む両側の光導波路層に形成されており、第2の位相調整手段は第1のダミー位相調整手段と間隔を介して接続されており、第1の接続光導波路には第2の位相調整手段と同一構造のダミーとしての第2のダミー位相調整手段が形成されており、かつ第2の位相調整手段と間隔を介した領域が第2の位相調整手段の長手方向に沿って光導波路層が除去された光導波路層除去部と同一構造の該光導波路層除去部が第2のダミー位相調整手段の形成部位を挟む両側の光導波路層に形成されており、第1の位相調整手段は第2のダミー位相調整手段と間隔を介して接続されており、
第1の接続光導波路を伝搬する伝搬光が第1の接続光導波路を伝搬した後のTE偏波光の位相と第2の接続光導波路を伝搬する伝搬光が第2の接続光導波路を伝搬した後のTE偏波光の位相間の位相差と第1の接続光導波路を伝搬する伝搬光が第1の接続光導波路を伝搬した後のTM偏波光の位相と第2の接続光導波路を伝搬する伝搬光が第2の接続光導波路を伝搬した後のTM偏波光の位相間の位相差とが互いに等しくなるように位相調整手段を調節することを特徴とする光回路装置。 - 基板と、該基板上にコアとクラッドが形成された光導波路層を有し、前記コアの光導波回路は光の分岐を行う光分岐器と光の結合を行う光結合器と、これらの光分岐器と光結合器を接続する第1の接続光導波路と第2の接続光導波路を有し、該第1と第2の接続光導波路にはそれぞれ伝搬光の位相を熱光学効果によって可変可能な第1と第2の位相調整手段が設けられた光回路装置において、前記第1と第2の位相調整手段の位相調整を行った際の位相調整量に対する第1の接続光導波路の複屈折率の変化率と第2の接続光導波路の複屈折率の変化率とが互いに異なるように形成されており、
第2の接続光導波路には第1の位相調整手段と同一構造のダミーとしての第1のダミー位相調整手段が形成されており、かつ第1の位相調整手段と間隔を介した領域が前記接続光導波路の長手方向に沿って光導波路層が除去された光導波路層除去部と同一構造の該光導波路層除去部が第1のダミー位相調整手段の形成部位を挟む両側の光導波路層に形成されており、第2の位相調整手段は第1のダミー位相調整手段と間隔を介して接続されており、第1の接続光導波路には第2の位相調整手段と同一構造のダミーとしての第2のダミー位相調整手段が形成されており、かつ第2の位相調整手段と間隔を介した領域が第2の位相調整手段の長手方向に沿って光導波路層が除去された光導波路層除去部と同一構造の該光導波路層除去部が第2のダミー位相調整手段の形成部位を挟む両側の光導波路層に形成されており、第1の位相調整手段は第2のダミー位相調整手段と間隔を介して接続されており、
第1の接続光導波路を伝搬する伝搬光が第1の接続光導波路を伝搬した後のTE偏波光の位相と第2の接続光導波路を伝搬する伝搬光が第2の接続光導波路を伝搬した後のTE偏波光の位相間の位相差と第1の接続光導波路を伝搬する伝搬光が第1の接続光導波路を伝搬した後のTM偏波光の位相と第2の接続光導波路を伝搬する伝搬光が第2の接続光導波路を伝搬した後のTM偏波光の位相間の位相差とが互いに等しくなるように位相調整手段を調節することを特徴とする光回路装置。 - 第1の接続光導波路の複屈折率と第2の接続光導波路の複屈折率とが互いに異なるように形成されていることを特徴とする請求項1または2記載の光回路装置。
- 第1または第2の位相調整手段の形成部位の近傍には第1と第2の複屈折率制御手段の少なくとも一方が形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一つに記載の光回路装置。
- 第1と第2の複屈折率制御手段は第1と第2の位相調整手段の形成部位の光導波路に付与されている応力を解放する第1と第2の応力解放手段としたことを特徴とする請求項4記載の光回路装置。
- 第1と第2の応力解放手段は、第1と第2の位相調整手段の少なくとも一方の形成部位を挟む両側の光導波路層が接続光導波路と間隔を介した領域が前記接続光導波路の長手方向に沿って光導波路層表面から基板表面に向かって除去されて光導波路層除去部と成し、該光導波路層除去部と並設されている前記第1と第2の接続光導波路を含む第1の光導波路層の幅と第2の光導波路層の幅が互いに異なるように形成したことを特徴とする請求項5記載の光回路装置。
- 光導波路層除去部は、光導波路層表面から基板表面に至るまで除去されていることを特徴とする請求項6記載の光回路装置。
- 第1と第2の応力解放手段は、第1と第2の位相調整手段の少なくとも一方の形成部位を挟む両側の光導波路層が接続光導波路と間隔を介した領域が前記接続光導波路の長手方向に沿って光導波路層表面から基板表面に至るまで除去されて光導波路層除去部と成し、該光導波路層除去部の下部に対向する基板表面部位に基板を除去した基板除去部が設けられており、前記光導波路層除去部と並設されている前記第1と第2の接続光導波路を含む第1の光導波路層の幅と第2の光導波路層の幅が互いに異なるように形成したことを特徴とする請求項5または請求項7に記載の光回路装置。
- 基板除去部は、光導波路層除去部の下部に対向する全領域を包含する基板表面部位に断面矩形状の凹部となる基板除去部が形成されていること特徴とする請求項8記載の光回路装置。
- 光導波路層は石英系ガラスにより形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項9のいずれか一つに記載の光回路装置。
- 基板はシリコン基板としたことを特徴とする請求項1乃至請求項10のいずれか一つに記載の光回路装置。
- 第1と第2の位相調整手段はそれぞれ第1と第2の薄膜ヒータとしたことを特徴とする請求項1乃至請求項11のいずれか一つに記載の光回路装置。
- 第1と第2の薄膜ヒータにはそれぞれ給電するための第1と第2の給電配線が接続されており、該第1と第2の給電配線は一つの給電電源に並列接続されており、第1の給電配線と第1の薄膜ヒータのそれぞれの抵抗値の和と第2の給電配線と第2の薄膜ヒータのそれぞれの抵抗値の和が等しいことを特徴とする請求項12に記載の光回路装置。
- 第1と第2の給電配線の少なくとも一方には抵抗器が接続されていることを特徴とする請求項13に記載の光回路装置。
- 位相調整手段の位相を調節することにより少なくとも1つの設定波長光の強度を可変する光可変減衰制御部を設けて、光可変減衰器としたことを特徴とする請求項1乃至請求項14のいずれか一つに記載の光回路装置。
- 位相調整手段の位相を調節することにより少なくとも1つの設定波長光の出力を可変する光スイッチ制御部を設けて、光スイッチとしたことを特徴とする請求項1乃至請求項14のいずれか一つに記載の光回路装置。
- 請求項1乃至請求項16のいずれか一つに記載の光回路装置の制御方法であって、第1の接続光導波路を伝搬する伝搬光が第1の接続光導波路を伝搬した後のTE偏波光の位相と第2の接続光導波路を伝搬する伝搬光が第2の接続光導波路を伝搬した後のTE偏波光の位相間の位相差と第1の接続光導波路を伝搬する伝搬光が第1の接 続光導波路を伝搬した後のTM偏波光の位相と第2の接続光導波路を伝搬する伝搬光が第2の接続光導波路を伝搬した後のTM偏波光の位相間の位相差とが互いに等しくなるように位相調整手段を調節することを特徴とする光回路装置の制御方法。
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