JP3691458B2 - 風洞模型試験装置の衝突防止方法及び装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、主に風洞実験に用いるマニピュレータに備わる機能であって、2台のマニピュレータ間の衝突、または、個々のマニピュレータと風洞壁との衝突を事前に検知し、防止する風洞模型マニピュレータ用衝突防止システムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
航空機からの投棄物、投下物(総じて搭載物と称す)の挙動履歴を風洞模型実験にて解析する装置はCTS(Captive Trajectory System)と呼ばれる。CTSは、総じて母機の模型を位置決め及び支持する母機模型支持装置と、搭載物の模型を位置決め及び支持する搭載物模型支持装置とから構成されている。搭載物の投下後の挙動履歴を精度よく解析するためには、初期状態で搭載物模型は母機模型にできるだけ近接していることが望ましく、そのため、搭載物模型支持装置は母機模型に到達し得る十分な動作範囲を有している必要がある。その結果、通風実験中や装置の動作確認時に、搭載物模型支持装置が母機模型支持装置に衝突し、装置や模型の破損につながる恐れがある。また、このような問題はCTSのみならず、一般の風洞模型支持装置においても配慮すべきことであり、これまで装置と風洞壁との衝突を回避する様々な策がとられてきた。
【0003】
例えば、特開平9−257635号公報においては、搭載物模型に内蔵された力覚センサから、空力を遥かに凌ぐ力が検出された時、搭載物模型と母機模型が接触していると判断し、装置を非常停止するという技術が提案されている。しかし、この手段では既に2つの模型が衝突した後に衝突を検知することになり、致命傷は回避できても、模型や装置の破損は避けられない。
また、模型と風洞壁との衝突回避手段として、特開平6−331493号公報、特開平8−145842号公報、特開平8−313388号公報、特開平9−72822号公報のような技術が提案されている。しかし、衝突防止の機能を備えるために装置自体の追加設計のみならず、風洞そのものにも設計変更/追加工が必要になり、結果的に製作コストの増大につながる。
【0004】
さらに、風洞壁への大幅な追加工を必要とせず、接触前に衝突を回避する手段として、レーザ変位計を用いる方法がある。しかしながら、レーザは一点式の距離計測であり、照射スポットを離れた方向からの物体の接近は検知できず、それを補償するために、スキャン式レーザ装置や、スポット式装置を複数用いるなどすると、風洞の気流遮断率を狭めることになり、場合によっては衝撃波の発生などにもつながる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記の諸点に鑑みなされたもので、本発明の目的は、風洞壁の大幅な追加工を必要とせず、風洞の気流遮断率を狭めることもなく、二つの装置間の衝突、装置と風洞壁との衝突を事前に検知し防止することができる風洞模型試験装置の衝突防止方法及び装置を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、本発明の風洞模型試験装置の衝突防止方法は、風洞内に計測模型として母機模型及び/又は搭載物模型を備え、母機模型が母機模型支持装置により位置決め及び支持され、搭載物模型が搭載物模型支持装置により位置決め及び支持される風洞模型試験装置において、風洞内下流側に設置された母機模型支持装置の支持部材、例えば、母機模型支持スティングの根元に小型カメラを取り付け、カメラ画像のある領域に異物の侵入が検知されたときに母機模型と搭載物模型との衝突と判断し、直ちに支持装置の制御系統を停止させるか、又は少なくとも一方の支持装置を回避させるように構成されている。
【0007】
また、本発明の方法は、風洞内に計測模型として母機模型及び/又は搭載物模型を備え、母機模型が母機模型支持装置により位置決め及び支持され、搭載物模型が搭載物模型支持装置により位置決め及び支持される風洞模型試験装置において、計測模型の十分下流側の風洞壁、又は/及び計測模型の十分下流側に設置された装置に小型カメラを取り付け、カメラ画像のある領域に異物の侵入が検知されたときに計測模型と風洞壁との衝突と判断し、直ちに支持装置の制御系統を停止させるか、又は支持装置を回避させることを特徴としている。
【0008】
風洞内に十分な光量が得られない場合には、カメラや風洞壁に照明(リング照明など)を取り付けて、上記の方法を実施することが好ましい。また、カメラとして赤外線カメラ、暗視カメラ等を用いてもよい。
【0009】
また、本発明の方法は、風洞内に計測模型として母機模型及び/又は搭載物模型を備え、母機模型が母機模型支持装置により位置決め及び支持され、搭載物模型が搭載物模型支持装置により位置決め及び支持される風洞模型試験装置において、搭載物模型の投下方向がわかっている場合、反射光型のレーザ距離計などを母機模型支持装置に搭載して、そこから搭載物模型又は搭載物模型支持装置までの距離を測定し、その距離がある閾値を下回ったときに母機模型と搭載物模型との衝突と判断し、直ちに支持装置の制御系統を停止させるか、又は少なくとも一方の支持装置を回避させることを特徴としている。
【0010】
本発明の風洞模型試験装置の衝突防止装置は、風洞内に計測模型として母機模型及び/又は搭載物模型を備え、風洞内下流側に設置された母機模型支持装置により母機模型が位置決め及び支持され、風洞内下流側に設置された搭載物模型支持装置により搭載物模型が位置決め及び支持される風洞模型試験装置において、母機模型支持装置の支持部材、例えば、母機模型支持スティングの根元に取り付けられた小型カメラ(CCDカメラ等)と、カメラ画像を監視して画像のある領域に異物が侵入したときを異常として検知する画像処理装置と、画像処理装置で異常が検知されたときを母機模型と搭載物模型との衝突と判断して、支持装置の制御系統を停止させるか、又は少なくとも一方の支持装置を回避させる指令を出す制御装置とを包含してなることを特徴としている。
【0011】
また、本発明の装置は、風洞内に計測模型として母機模型及び/又は搭載物模型を備え、風洞内下流側に設置された母機模型支持装置により母機模型が位置決め及び支持され、風洞内下流側に設置された搭載物模型支持装置により搭載物模型が位置決め及び支持される風洞模型試験装置において、計測模型の十分下流側の風洞壁、又は/及び計測模型の十分下流側の装置に取り付けられた小型カメラと、カメラ画像を監視して画像のある領域に異物が侵入したときを異常として検知する画像処理装置と、画像処理装置で異常が検知されたときを計測模型と風洞壁との衝突と判断して、支持装置の制御系統を停止させるか、又は支持装置を回避させる指令を出す制御装置とを包含してなることを特徴としている。
【0012】
また、本発明の装置は、風洞内に計測模型として母機模型及び/又は搭載物模型を備え、風洞内下流側に設置された母機模型支持装置により母機模型が位置決め及び支持され、風洞内下流側に設置された搭載物模型支持装置により搭載物模型が位置決め及び支持される風洞模型試験装置において、母機模型支持装置に搭載され、搭載物模型又は搭載物模型支持装置までの距離を測定するためのレーザ距離計と、レーザ距離計の測定値がある閾値を下回ったときを母機模型と搭載物模型との衝突と判断して、支持装置の制御系統を停止させるか、又は少なくとも一方の支持装置を回避させる指令を出す制御装置とを包含してなることを特徴としている。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明は下記の実施の形態に何ら限定されるものではなく、適宜変更して実施することが可能なものである。図1は、本発明の実施の第1形態による風洞模型試験装置の衝突防止方法を実施する装置を示している。図1に示すように、風洞模型試験装置(風洞模型マニピュレータ)は、風洞10内の上部に位置する母機模型12、母機模型12からの投下物の模型である搭載物模型14、母機模型12を位置決め及び支持する母機模型支持装置16、搭載物模型14を位置決め及び支持する搭載物模型支持装置18から構成されている。衝突防止システムとしては、母機模型支持スティングの根元に小型カメラ(CCDカメラ等)20を取り付け、カメラ画像のある領域に異物の侵入が検知された時、母機模型と搭載物模型との衝突と判断し、直ちに支持装置の制御系統を停止させる、又は、一方の支持装置を回避させる。この場合、図2に示すように、母機模型12の迎角が変更になっても、小型カメラ20の取付位置はそのままで良い。
【0014】
また、これら計測模型の十分下流の風洞壁(又はその他の装置)に小型カメラ22を取り付け、カメラ画像のある領域に異物の侵入が検知された時、計測模型と風洞壁との衝突と判断し、直ちに支持装置の制御系統を停止させる、又は、支持装置を回避させる。なお、風洞壁に窓が無いなど、風洞内に十分な光量が得られない場合には、カメラや風洞壁に照明(リング照明など)を取り付け、上記手段を実施する。
これらの衝突防止システムにおいて、画像処理装置24は、カメラ画像を常に監視しつづけ、上記のような異常が検知された場合には、マニピュレータ制御装置26からロボットの制御系へ上述したような指令を送る。
【0015】
画像処理の方法については、例えば、以下の方法が考えられる。
2値化閾値法
1画面前(M1)と現在の画像(M0)との差分画像(M0−M1)を2値化する。
▲1▼画像取込(M0,M1)
▲2▼画像取込(M0)
▲3▼差分画像(M0−M1)を2値化
▲4▼一定面積以上であれば、ターゲット検出(処理終了)
▲5▼一定面積以上でない場合、画像M0をM1にコピー
▲2▼へ(繰り返し)
【0016】
色抽出法
搭載物の色を有採色(赤、黄など)にして、HSI変換(RGB値をH:色相、S:採度、I:輝度に変換)などの手法を用いて色を抽出し、ターゲットを検出する。
特殊塗料検出法
ある特定の波長帯に反応する塗料、その波長帯に分光ピークを持つ照明、その波長帯に感度を持つカメラを用いて、搭載物を検出する。例えば、搭載物に紫外塗料を塗り、紫外光照明を照射し、紫外線カメラで撮影することで、ターゲット(紫外塗料部分)を検出する。
ステレオ視による位置計測
カメラを2台設置し、ステレオ計測によりターゲット(又はターゲットに取り付けられたマーカーなど)の3次元位置を測定し、衝突を防止する。
【0017】
また、搭載物模型14の投下方向がわかっている場合などは、反射光型のレーザ距離計などを母機模型支持装置16に搭載し、そこから搭載物模型14又は支持装置18までの距離を測定し、その距離がある閾値を下回ったときに、母機模型と搭載物模型との衝突と判断し、直ちに支持装置の制御系統を停止させる、又は、一方の支持装置を回避させるようにしても良い。
【0018】
つぎに、図3に示すように、搭載物模型支持装置を産業用ロボット28で、母機模型支持装置を2本のヒモ30で代替し、小型カメラ32を所定位置に設置して簡易実験を行った。カメラ画像内の異物侵入禁止領域は、実物で縦50mm、横240mmのサイズに相当する。十分な光源が確保できる場合、また、風洞内のようにわずかな光源しか期待できない場合においても、二つの模型の接触を事前に検知し、装置の動作を瞬時に停止することができる(図4参照)。
【0019】
【発明の効果】
本発明は上記のように構成されているので、つぎのような効果を奏する。
(1) 風洞壁の大幅な追加工を必要とせず、風洞の気流遮断率を狭めることもなく、二つの装置間の衝突、装置と風洞壁との衝突を事前に検知し防止することができる。
(2) 本発明の衝突防止システムは風洞内にコンパクトな収納が可能であり、風洞内の気流非乱性にも優れる。
(3) 指定された領域を、常に、連続空間的に監視するため、確実に衝突を防止できる。
(4) 母機模型の迎角が変更になっても、段取り換えが不要である。
(5) 風洞壁は通常単調な内装であるため、光源さえ確保できれば、誤検知が発生しにくい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の第1形態による風洞模型試験装置の衝突防止方法を実施する装置を示す概略構成説明図である。
【図2】本発明の実施の第1形態における母機模型の迎角が変更された状態を示す概略説明図である。
【図3】本発明の衝突防止方法について簡易実験を行うための装置を示す概略構成説明図である。
【図4】図3の装置で実施した簡易実験のカメラ画像及び画像内の検知領域を示す説明図である。
【符号の説明】
10 風洞
12 母機模型
14 搭載物模型
16 母機模型支持装置
18 搭載物模型支持装置
20、22、32 小型カメラ
24 画像処理装置
26 マニピュレータ制御装置
28 産業用ロボット
30 ヒモ
Claims (12)
- 風洞内に計測模型として母機模型及び/又は搭載物模型を備え、母機模型が母機模型支持装置により位置決め及び支持され、搭載物模型が搭載物模型支持装置により位置決め及び支持される風洞模型試験装置において、風洞内下流側に設置された母機模型支持装置の支持部材に小型カメラを取り付け、カメラ画像のある領域に異物の侵入が検知されたときに事前に母機模型と搭載物模型との衝突と判断し、直ちに支持装置の制御系統を停止させるか、又は少なくとも一方の支持装置を回避させることを特徴とする風洞模型試験装置の衝突防止方法。
- 母機模型支持スティングの根元に小型カメラを取り付ける請求項1記載の風洞模型試験装置の衝突防止方法。
- 風洞内に計測模型として母機模型及び/又は搭載物模型を備え、母機模型が母機模型支持装置により位置決め及び支持され、搭載物模型が搭載物模型支持装置により位置決め及び支持される風洞模型試験装置において、計測模型の十分下流側の風洞壁、又は/及び計測模型の十分下流側に設置された装置に小型カメラを取り付け、カメラ画像のある領域に異物の侵入が検知されたときに事前に計測模型と風洞壁との衝突と判断し、直ちに支持装置の制御系統を停止させるか、又は支持装置を回避させることを特徴とする風洞模型試験装置の衝突防止方法。
- 風洞内に十分な光量が得られない場合に、小型カメラ及び/又は風洞壁に照明を取り付ける請求項1、2又は3記載の風洞模型試験装置の衝突防止方法。
- 風洞内に十分な光量が得られない場合に、小型カメラとして赤外線カメラ及び暗視カメラの少なくともいずれかを用いる請求項1、2又は3記載の風洞模型試験装置の衝突防止方法。
- 風洞内に計測模型として母機模型及び/又は搭載物模型を備え、母機模型が母機模型支持装置により位置決め及び支持され、搭載物模型が搭載物模型支持装置により位置決め及び支持される風洞模型試験装置において、搭載物模型の投下方向がわかっている場合、レーザ距離計を母機模型支持装置に搭載して、そこから搭載物模型又は搭載物模型支持装置までの距離を測定し、その距離がある閾値を下回ったときに母機模型と搭載物模型との衝突と判断し、直ちに支持装置の制御系統を停止させるか、又は少なくとも一方の支持装置を回避させることを特徴とする風洞模型試験装置の衝突防止方法。
- 風洞内に計測模型として母機模型及び/又は搭載物模型を備え、風洞内下流側に設置された母機模型支持装置により母機模型が位置決め及び支持され、風洞内下流側に設置された搭載物模型支持装置により搭載物模型が位置決め及び支持される風洞模型試験装置において、
母機模型支持装置の支持部材に取り付けられた小型カメラと、
カメラ画像を監視して画像のある領域に異物が侵入したときを異常として事前に検知する画像処理装置と、
画像処理装置で異常が検知されたときを母機模型と搭載物模型との衝突と判断して、支持装置の制御系統を停止させるか、又は少なくとも一方の支持装置を回避させる指令を出す制御装置と、
を包含してなることを特徴とする風洞模型試験装置の衝突防止装置。 - 母機模型支持スティングの根元に小型カメラを取り付けた請求項7記載の風洞模型試験装置の衝突防止装置。
- 風洞内に計測模型として母機模型及び/又は搭載物模型を備え、風洞内下流側に設置された母機模型支持装置により母機模型が位置決め及び支持され、風洞内下流側に設置された搭載物模型支持装置により搭載物模型が位置決め及び支持される風洞模型試験装置において、
計測模型の十分下流側の風洞壁、又は/及び計測模型の十分下流側の装置に取り付けられた小型カメラと、
カメラ画像を監視して画像のある領域に異物が侵入したときを異常として事前に検知する画像処理装置と、
画像処理装置で異常が検知されたときを計測模型と風洞壁との衝突と判断して、支持装置の制御系統を停止させるか、又は支持装置を回避させる指令を出す制御装置と、
を包含してなることを特徴とする風洞模型試験装置の衝突防止装置。 - 小型カメラ及び/又は風洞壁に照明を取り付けた請求項7、8又は9記載の風洞模型試験装置の衝突防止装置。
- 小型カメラが、CCDカメラ、赤外線カメラ及び暗視カメラの少なくともいずれかである請求項7〜10のいずれかに記載の風洞模型試験装置の衝突防止装置。
- 風洞内に計測模型として母機模型及び/又は搭載物模型を備え、風洞内下流側に設置された母機模型支持装置により母機模型が位置決め及び支持され、風洞内下流側に設置された搭載物模型支持装置により搭載物模型が位置決め及び支持される風洞模型試験装置において、
母機模型支持装置に搭載され、搭載物模型又は搭載物模型支持装置までの距離を測定するためのレーザ距離計と、
レーザ距離計の測定値がある閾値を下回ったときを母機模型と搭載物模型との衝突と判断して、支持装置の制御系統を停止させるか、又は少なくとも一方の支持装置を回避させる指令を出す制御装置と、
を包含してなることを特徴とする風洞模型試験装置の衝突防止装置。
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