JP3690767B2 - ポリプロピレン系樹脂組成物 - Google Patents
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Description
【発明の技術分野】
本発明は、剛性および耐衝撃性のいずれにも優れるとともに、特に射出成形性に優れ、フローマークが目立ちにくく外観に優れた射出成形品を形成することができるポリプロピレン系樹脂組成物およびその射出成形品に関する。
【0002】
【発明の技術的背景】
ポリプロピレンは、剛性、硬度および耐熱性などに優れており、射出成形、カレンダー成形、押出成形などの種々の成形方法によって容易に所望する形状にすることができ、しかも安価であるので広範な用途、例えば家電製品のハウジング、フィルム用途、容器用途、自動車内装用途、フェンダー、バンパー、サイドモール、マッドガード、ミラーカバーなどの自動車外装用途、一般雑貨用途などに広く利用されている。
【0003】
またこのような種々用途に応じて、ポリプロピレンにポリエチレンあるいはゴム成分たとえばポリイソブチレン、ポリブタジエン、非晶性あるいは低結晶性エチレン・プロピレン共重合体(EPR)などを配合して耐衝撃性を改善したポリプロピレン組成物も知られている。またゴム成分の配合により低下する剛性を補うために、ポリプロピレンに、ゴム成分とともにタルクなどの無機充填材や結晶造核剤を添加したポリプロピレン組成物も知られている。
【0004】
ところで、このようなポリプロピレンあるいはポリプロピレン組成物を成形、特に射出成形する際には、樹脂を溶融状態で射出するので、得られる射出成形品には通常、溶融樹脂の流れ方向にしたがってフローマークがついてしまう。射出成形品たとえば自動車内外装部品などにおいて、このフローマークが目立つと、外観が劣るのでその商品価値が低下してしまうという問題点があった。
また市場からは成形製品のより軽量化および薄肉化が望まれており、これらを実現させつつ、かつ十分な強度を有する成形製品を得るためには、剛性−耐衝撃性バランスのより向上された(剛性および耐衝撃性のいずれにも優れる)ポリプロピレン組成物が必要とされている。
【0005】
【発明の目的】
本発明は、上記のような従来技術に鑑みてなされたものであり、剛性および耐衝撃性のいずれにも優れるとともに、特に射出成形性に優れ、フローマークが目立ちにくく外観に優れた射出成形品を製造することができるポリプロピレン系樹脂組成物、およびこのポリプロピレン系樹脂組成物からなる射出成形品を提供することを目的としている。
【0006】
【発明の概要】
本発明に係るポリプロピレン系樹脂組成物は、
(A)(1) 極限粘度(135℃デカリン中)[η]が0.8〜5.0dl/gである64℃デカン不溶成分;99〜60重量%と、
(2) 極限粘度(135℃デカリン中)[η]が2.0〜20dl/gであり、
エチレンから導かれる単位を5〜29モル%の量含有する、
64℃デカン可溶成分;1〜40重量%と
からなるプロピレン系重合体;40〜90重量%、
(B)(B-1) 極限粘度(135℃デカリン中)[η]が1.5〜3.0dl/gであるエチレン系共重合体および/または
(B-2) メルトフローレートが0.01〜10g/10分であるスチレン系ブロック共重合体;10〜35重量%、
(C)無機充填材;0〜25重量%、および
(D)核剤;0〜10重量%
からなることを特徴としている。
【0007】
本発明に係る射出成形品は、上記のようなポリプロピレン系樹脂組成物からなり、自動車成形品、家電、各種容器等の用途に好適に用いることができる。
【0008】
【発明の具体的説明】
本発明に係るポリプロピレン系樹脂組成物は、特定の64℃デカン不溶成分と64℃デカン可溶成分とを有するプロピレン系重合体(A)と、エチレン系共重合体および/またはスチレン系ブロック共重合体(B)と、必要に応じて無機充填材(C)および/または(D)核剤とから形成される。
【0009】
本発明では、ポリプロピレン系樹脂組成物を形成するに際して、下記に示すような64℃デカン不溶成分(結晶性ポリプロピレン成分)と64℃デカン可溶成分(プロピレン共重合体成分)とからなるプロピレン系重合体(A)を用いることを特徴としている。
プロピレン系重合体の64℃デカン分別成分は、具体的には、試料(プロピレン系重合体)5gを、沸騰デカン200cc中に5時間浸漬して溶解した後、64℃まで冷却して、析出した固相をG4ガラスフィルターで濾別して、固相(不溶成分)および濾液(可溶成分)をそれぞれ乾燥することに得ることができる。
まずこのような64℃デカン不溶成分および64℃デカン可溶成分について説明する。
【0010】
(1) 64℃デカン不溶成分
プロピレン系重合体(A)の64℃デカン不溶成分は、極限粘度(135℃デカリン中)[η]が0.8〜5.0dl/g、好ましくは0.8〜3.0dl/g、より好ましくは0.8〜2.5dl/gである。
【0011】
またこの64℃デカン不溶成分の沸騰ヘプタン不溶成分は、
下記式(1)により求められる立体規則性指標[M5]の値が0.970〜0.995であり、
下記式(2)により求められる立体規則性指標[M3]の値が0.0020〜0.0050であることが望ましい。
【0012】
この沸騰ヘプタン不溶成分の立体規則性指標[M5]は、沸騰ヘプタン不溶成分の13C−NMRスペクトルにおけるPmmmm、Pw、Sαγ、Sαδ+ 、Tδ+ δ+ の吸収強度から下記式(1)により求められ、
立体規則性指標[M5]は、13C−NMRスペクトルにおけるPmmrm、Pmrmr、Pmrrr、Prmrr、Prmmr、Prrrr、Pw、Sαγ、Sαδ+ 、Tδ+ δ+ の吸収強度から下記式(2)により求められる。
【0013】
【数1】
【0014】
(式中、
[Pmmmm]:プロピレン単位が5単位連続してイソタクチック結合した部位における第3単位目のメチル基に由来する吸収強度であり、
[Pw] :プロピレン単位のメチル基に由来する吸収強度であり、
[Sαγ]:主鎖中の2級炭素であって、該2級炭素から最も近い2個の3級炭素のうち、一方がα位にあり、他方がγ位にあるような2級炭素に由来する吸収強度であり、
[Sαδ+ ]:主鎖中の2級炭素であって、該2級炭素から最も近い2個の3級炭素のうち、一方がα位にあり、他方がδ位またはδ位より離れた位置にあるような2級炭素に由来する吸収強度であり、
[Tδ+ δ+ ]:主鎖中の3級炭素であって、該3級炭素から最も近い2個の3級炭素のうち、一方がδ位またはδ位より離れた位置にあり、他方がδ位またはδ位より離れた位置にあるような3級炭素に由来する吸収強度である。)
【0015】
【数2】
【0016】
上記のようなポリプロピレン(沸騰ヘプタン不溶成分)の立体規則性の評価に用いられる立体規則性指標[M5]および[M3]について具体的に説明する。
ポリプロピレンがプロピレンの単独重合体である場合、該不溶成分は、たとえば下記式(A)のように表すことができる。
【0017】
【化1】
【0018】
で表されるプロピレン単位5連鎖中の3単位目のメチル基(たとえばMe3、Me4)に由来する13C−NMRスペクトルにおける吸収強度をPmmmmとし、プロピレン単位中の全メチル基(Me1、Me2、Me3…)に由来する吸収強度をPwとすると、上記式(A)で表される沸騰ヘプタン不溶成分の立体規則性は、PmmmmとPwとの比、すなわち下記式(1A)から求められる値により評価することができる。
【0019】
【数3】
【0020】
また、ポリプロピレンがプロピレン単位以外の他のオレフィンから誘導される構成単位、たとえばエチレン単位を少量含む場合、該不溶成分は、たとえば下記式(B-1)または(B-2)のように表すことができる。なお式(B-1)は、プロピレン単位連鎖中に1個のエチレン単位が含まれる場合を示し、式(B-2)は、プロピレン単位連鎖中に、2個以上のエチレン単位からなるエチレン単位連鎖が含まれる場合を示している。
【0021】
【化2】
【0022】
このような場合、プロピレン単位5連鎖中の3単位目のメチル基以外のメチル基(上記式(B-1)、(B-2)では、Me4、Me5、Me6およびMe7)に由来する吸収強度は立体規則性を評価する際、原理的に除外すべきものである。しかしこれらのメチル基の吸収は他のメチル基の吸収と重なって観測されるため、定量することは困難である。
【0023】
そこで、プロピレン系重合体の沸騰ヘプタン不溶成分が式(B-1)で示されるような場合には、エチレン単位中の2級炭素であって、プロピレン単位中の3級炭素(Ca)と結合している2級炭素(C1)に由来する13C−NMRスペクトルにおける吸収強度(Sαγ)、およびプロピレン単位中の2級炭素であって、エチレン単位中の2級炭素(C2)と結合している2級炭素(C3)に由来する吸収強度(Sαγ)を用いてこれを除外する。
【0024】
すなわち、主鎖中の2級炭素であって、該2級炭素(C1またはC3)から最も近い2個の3級炭素のうち、一方(CaまたはCb)がα位にあり、他方(CbまたはCa)がγ位にあるような2級炭素に由来する吸収強度(Sαγ)を2倍したものをPwから引くことにより、プロピレン単位5連鎖中の3単位目のメチル基以外のメチル基(Me4、Me5、Me6およびMe7)に由来する吸収強度を除外する。
【0025】
また、プロピレン系重合体の沸騰ヘプタン不溶成分が式(B-2)で示されるような場合は、2個以上のエチレン単位からなるエチレン単位連鎖中の2級炭素であって、プロピレン単位中の3級炭素(Cd)と結合している2級炭素(C4)に由来する13C−NMRスペクトルにおける吸収強度(Sαδ+)、およびプロピレン単位中の2級炭素であって、2以上のエチレン単位連鎖中の2級炭素(C5)と結合している2級炭素(C6)に由来する吸収強度(Sαδ+)を用いてこれを除外する。
【0026】
すなわち、主鎖中の2級炭素であって、該2級炭素(C4またはC6)から最も近い2個の3級炭素のうち、一方(CdまたはCe)がα位にあり、他方(CeまたはCd)がδ位またはδ位より離れた位置にあるような2級炭素に由来する吸収強度(Sαδ+)を2倍したものをPwから引くことにより、プロピレン単位5連鎖中の3単位目のメチル基以外のメチル基(Me4、Me5、Me6およびMe7)に由来する吸収強度を除外する。
【0027】
したがって、上記式(B-1)、(B-2)で表されるプロピレン系重合体の沸騰ヘプタン不溶成分の立体規則性は、下記式(1B)から求められる値により評価することができる。
【0028】
【数4】
【0029】
さらに、プロピレン系重合体の沸騰ヘプタン不溶成分が少量のエチレン単位を含み、かつ、エチレン単位連鎖中に1個のプロピレン単位が含まれる場合には、該不溶成分は、たとえば下記式(C)のように表すことができる。
【0030】
【化3】
【0031】
このような場合、上記(1B)式をそのまま適用すると、除外すべきメチル基が5個(Me4、Me5、Me6、Me7およびMe8)であるにもかかわらず、SαγまたはSαδ+ に該当するメチル基が4個あるため、プロピレン単位5連鎖中の中央のメチル基以外のメチル基を、3個多く除外することになるため、さらに補正が必要となる。
【0032】
そこでエチレン単位連鎖中に含まれるプロピレン単位中の3級炭素に由来する13C−NMRスペクトルにおける吸収強度を用いてこれを補正する。すなわち、主鎖中の3級炭素であって、該3級炭素から最も近い2個の3級炭素(Cf、Cg)のうち、一方(Cf)がδ位またはδ位より離れた位置にあり、他方(Cg)がδ位またはδ位より離れた位置にあるような3級炭素(C7)に由来する吸収強度(Tδ+ δ+ )を3倍したものをPwに加えることによりこれを補正する。
【0033】
したがって、プロピレン系重合体の沸騰ヘプタン不溶成分の立体規則性は、上記式(1)により求めた立体規則性指標[M5]の値により評価することができる。
なお、(1A)式および(1B)式は(1)式と異なるものではなく、(1)式の特殊なケースと位置づけられる。なお、沸騰ヘプタン不溶成分に含まれるプロピレン単位以外の構成単位単位によっては、上記の補正が不要となる場合もある。
【0034】
また立体規則性指標[M3]を求める上記式(2)中、 [Pmmrm]、[Pmrmr]、[Pmrrr]、[Prmrr]、[Prmmr]、[Prrrr]は、プロピレン単位連鎖中における5個の連続するプロピレン単位のメチル基のうち、3個が同一方向、2個が反対方向を向いた構造(以下「M3構造」ということがある)を有するプロピレン単位5連鎖中の第3単位目のメチル基に由来する吸収強度を示している。すなわち上記(2)により求められる立体規則性指標[M3]の値は、プロピレン単位連鎖中におけるM3構造の割合を示している。
【0035】
本発明で用いられるプロピレン系重合体の沸騰ヘプタン不溶成分は、上記式(1)により求められる立体規則性指標[M5]の値が0.970〜0.995の範囲にあり、沸騰ヘプタン不溶成分の上記式(2)により求められる立体規則性指標[M3]の値が0.0020〜0.0050の範囲にあるため、極めて長いメソ連鎖(α-メチル炭素が同一方向に向いているプロピレン単位連鎖)を有している。
この[M3]の値は、好ましくは0.0023〜0.0045、より好ましくは0.0025〜0.0040である。
【0036】
一般にプロピレン系重合体は、立体規則性指標[M3]の値が小さい方がメソ連鎖が長い。しかし立体規則性指標[M5]の値が極めて大きく、立体規則性指標[M3]の値が非常に小さい場合には、立体規則性指標[M5]の値がほぼ同じであれば立体規則性指標[M3]の値が大きい方がメソ連鎖が長くなる場合がある。
【0037】
たとえば下記に示すような構造(イ)を有するポリプロピレンと、構造(ロ)を有するポリプロピレンとを比較すると、M3構造を有する構造(イ)で表されるポリプロピレンは、M3 構造を有しない構造(ロ)で表されるポリプロピレンに比べ長いメソ連鎖を有している。(ただし下記構造(イ)、構造(ロ)は、いずれも1003単位のプロピレン単位からなるものとする)
【0038】
【化4】
【0039】
上記構造(イ)で表されるポリプロピレンの立体規則性指標[M5]の値は0.986であり、上記構造(ロ)で表されるポリプロピレンの立体規則性指標[M5]の値は0.985であり、構造(イ)で表されるポリプロピレンおよび構造(ロ)で表されるポリプロピレンの立体規則性指標[M5]の値は、ほぼ等しい値である。しかしながら、M3構造を有する構造(イ)で表されるポリプロピレンでは、メソ連鎖に含まれるプロピレン単位は、平均497単位であり、M3 構造を含有しない構造(ロ)で表されるポリプロピレンでは、メソ連鎖に含まれるプロピレン単位は、平均250単位となる。すなわち、立体規則性指標[M5]の値が極めて大きいポリプロピレンでは、プロピレン単位連鎖中に含まれるr(racemo)で示される構造の割合が極めて小さくなるので、r(racemo)で示される構造が集中して存在するポリプロピレン(M3構造を有するポリプロピレン)は、r(racemo)で示される構造が分散して存在するポリプロピレン(M3構造を有しないポリプロピレン)より長いメソ連鎖を有することになる。
【0040】
上記のような立体規則性指標値[M5]および[M3]は、下記のように測定される沸騰ヘプタン不溶成分の13C−NMRの各々の構造に基づくピーク強度あるいはピーク強度の総和とから求めることができる。
13C−NMRは、該不溶成分0.35gをヘキサクロロブタジエン2.0ml に加熱溶解させる。この溶液をグラスフィルター(G2)で濾過した後、重水素化ベンゼン0.5ml を加え、内径10mmのNMRチューブに装入し、日本電子製GX−500型NMR測定装置を用い、120℃で13C−NMR測定を行う。積算回数は10,000回以上である。
【0041】
プロピレン系重合体(A)の64℃デカン不溶成分は、上記のような沸騰ヘプタン不溶成分量を、通常80重量%以上、好ましくは85重量%以上、より好ましくは90重量%以上、さらに好ましくは93重量%以上、特に好ましくは94重量%以上の量で含有している。
【0042】
なおこの沸騰ヘプタン不溶成分は、上記64℃デカン不溶成分1.5gを6時間以上ヘプタンでソックスレー抽出して、抽出残渣として得られ、沸騰ヘプタン不溶成分量は、64℃デカン可溶成分が、沸騰ヘプタンにも可溶と仮定して算出されるものである。
【0043】
本発明では、沸騰ヘプタン不溶成分の結晶化度は、60%以上、好ましくは65%以上、より好ましくは68%以上であることが望ましい。
この結晶化度は、試料を180℃の加圧成形機にて厚さ1mmの角板に成形した後、直ちに水冷して得たプレスシートを用い、理学電機(株)製ローターフレックス RU300測定装置を用いて測定することにより求めることができる。(出力50kV、250mA)。この際の測定法としては、透過法を用い、またサンプルを回転させながら測定を行う。
【0044】
本発明では、上記のようなプロピレン系重合体(A)の64℃デカン不溶成分は、上記のような特性を満たせば、ホモポリプロピレンからなっても、あるいはプロピレンと他のオレフィン類との共重合体からなっていてもよい。
他のオレフィン類としては、例えばエチレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-ヘキサデセン、4-メチル-1-ペンテンなどのα−オレフィン、ビニルシクロペンテン、ビニルシクロヘキサン、ビニルノルボルナンなどのビニル化合物、酢酸ビニルなどのビニルエステル、無水マレイン酸などの不飽和有機酸またはその誘導体などが挙げられる。
これらのうちでも、ホモポリプロピレンからなることが望ましい。
【0045】
またこの64℃デカン不溶成分を形成するポリプロピレン成分は、たとえば3-メチル-1-ブテン、3,3-ジメチル-1- ブテン、3-メチル-1- ペンテン、3-メチル-1- ヘキセン、3,5,5-トリメチル-1- ヘキセン、ビニルシクロペンテン、ビニルシクロヘキサン、ビニルノルボルナンなどの単独重合体または共重合体をたとえば予備重合により形成される予備重合体として含有していてもよく、このような予備重合体を少量たとえば1ppm 〜3重量%程度の量で含んでいると、結晶化速度が大きくなるため好ましい。
【0046】
(2) 64℃デカン可溶成分
プロピレン系重合体(A)の64℃デカン可溶成分は、
極限粘度(135℃デカリン中)[η]が、2.0〜20dl/g、好ましくは2.5〜10dl/g、より好ましくは2.5〜8.0dl/g、特に好ましくは2.9〜7.0dl/gであり、
エチレンから導かれる単位を5〜29モル%、好ましくは10〜25モル%の量含有している。
【0047】
64℃デカン可溶成分は、プロピレン系重合体(A)のゴム成分であって、通常プロピレン・エチレン共重合体成分および極少量のアタクティックポリプロピレンからなるが、本発明の目的を損なわない範囲であれば、前記64℃デカン不溶成分で示したような他のオレフィン類さらにはポリエン類から導かれる単位を含有していてもよい。
【0048】
(A)プロピレン系重合体
本発明で用いられるプロピレン系重合体(A)は、上記のような
(1) 64℃デカン不溶成分を99〜60重量%、好ましくは97〜70重量%、さらに好ましくは95〜80重量%の量で、
(2) 64℃デカン可溶成分を1〜40重量%、好ましくは3〜30重量%、さらに好ましくは5〜20重量%の量で含有している。
【0049】
このプロピレン系重合体(A)は、上記のようにエチレン単位を5〜29モル%という少量で含むゴム成分(64℃デカン可溶成分)を有していることを特徴としている。
プロピレン系重合体(A)のメルトフローレート(MFR;ASTM D1238,230℃、2.16kg荷重下)は、30〜300g/10分であることが好ましく、40〜200g/10分であることがより好ましい。
【0050】
プロピレン系重合体(A)は、上記のような64℃デカン不溶成分と64℃デカン可溶成分とからなればよく、その調製方法は特に限定されない。
本発明では、上記64℃デカン不溶成分と64℃デカン可溶成分とからなるプロピレン系重合体(A)を、予め別々に製造されたホモポリプロピレンなどの結晶性プロピレン系重合体(A-1) と、プロピレン・エチレン共重合体などの低結晶性ないし非晶性プロピレン系重合体(A-2) とをブレンドして形成することができる。このようなプロピレン系重合体(A)は、他の成分(B)、(C)、(D)とともにポリプロピレン系樹脂組成物を製造する際に、結晶性プロピレン系重合体(A-1) と、低結晶性ないし非晶性プロピレン系重合体(A-2) とをブレンド物としての形成されてもよく、あるいは他の成分とブレンドする前に形成されてもよい。
【0051】
また重合により上記64℃デカン不溶成分と64℃デカン可溶成分とを形成してプロピレン系重合体(A)(たとえばプロピレン系ブロック共重合体)を製造してもよい。
このようなプロピレン系ブロック共重合体に、さらに前記結晶性プロピレン系重合体(A-1) および/または低結晶性ないし非晶性プロピレン系重合体(A-2) を加えてプロピレン系重合体(A)を得ることもできる。
上記のようなプロピレン系ブロック共重合体、前記結晶性プロピレン系重合体(A-1) 、低結晶性ないし非晶性プロピレン系重合体(A-2) を、適宜に2種以上用いることもできる。
【0052】
本発明では、上記のような条件を満たすプロピレン系重合体(A)を得ることができれば、上記プロピレン系ブロック共重合体、あるいはブレンド原料ポリマーとしての結晶性プロピレン系重合体(A-1) 、低結晶性ないし非晶性プロピレン系重合体(A-2) などの製造方法は特に制限されないが、以下のようにして製造することが好ましい。
【0053】
上記のようなプロピレン系重合体(A)を重合により直接製造する際には、下記に示すようなオレフィン重合用触媒を用いることが好ましい。またプロピレン系重合体(A)がブレンドにより調製される際には、結晶性プロピレン系重合体(A-1) 、低結晶性ないし非晶性プロピレン系重合体(A-2) などのブレンド原料ポリマーは該オレフィン重合用触媒を用いて製造することが望ましい。
【0054】
このオレフィン重合用触媒は、
[Ia]マグネシウム、チタン、ハロゲンおよび電子供与体を必須成分として含有する固体状チタン触媒成分(a)と、
[II]有機金属触媒成分(b)と、
[III]下記式(iii)で示されるケイ素化合物(c)または複数の原子を介して存在する2個以上のエーテル結合を有する化合物(d)とから形成される。
Ra nSi(ORb)4‐n … (iii)
(式中、nは1、2または3であり、nが1のとき、Raは2級または3級の炭化水素基であり、nが2または3のとき、Raの少なくとも1つは2級または3級の炭化水素基であり、Raは同一であっても異なっていてもよく、Rbは炭素数1〜4の炭化水素基であって、4−nが2または3であるとき、Rbは同一であっても異なっていてもよい。)
このオレフィン重合用触媒は後述するように予備重合されていてもよい。
【0055】
上記のような固体状チタン触媒成分(a)は、下記のようなマグネシウム化合物、チタン化合物および電子供与体を接触させることにより調製することができる。
固体状チタン触媒成分(a)の調製に用いられるチタン化合物として具体的には、たとえば、次式で示される4価のチタン化合物を挙げることができる。
【0056】
Ti(OR)gX4-g
(式中、Rは炭化水素基であり、Xはハロゲン原子であり、gは0≦g≦4である。)
このようなチタン化合物として、具体的には、
TiCl4、TiBr4、TiI4 などのテトラハロゲン化チタン;
Ti(OCH3)Cl3、Ti(OC2H5)Cl3、Ti(On-C4H9)Cl3、Ti(OC2H5)Br3、Ti(O-iso-C4H9)Br3などのトリハロゲン化アルコキシチタン;
Ti(OCH3)2 Cl2、Ti(OC2H5)2Cl2、Ti(On-C4H9)2Cl2、Ti(OC2H5)2Br2などのジハロゲン化ジアルコキシチタン;
Ti(OCH3)3Cl、Ti(OC2H5)3Cl、Ti(On-C4H9)3Cl、Ti(OC2H5)3Br などのモノハロゲン化トリアルコキシチタン;
Ti(OCH3)4、Ti(OC2H5)4、Ti(On-C4H9)4、Ti(O-iso-C4H9)4、Ti(O-2-エチルヘキシル)4などのテトラアルコキシチタンなどを例示することができる。
【0057】
これらの中ではハロゲン含有チタン化合物が好ましく、さらにテトラハロゲン化チタンが好ましく、特に四塩化チタンが好ましい。これらチタン化合物は単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。さらにこれらのチタン化合物は、炭化水素化合物あるいはハロゲン化炭化水素化合物などに希釈されていてもよい。
【0058】
固体状チタン触媒成分(a)の調製に用いられるマグネシウム化合物としては、還元性を有するマグネシウム化合物および還元性を有しないマグネシウム化合物を挙げることができる。
【0059】
ここで還元性を有するマグネシウム化合物としては、たとえばマグネシウム−炭素結合あるいはマグネシウム−水素結合を有するマグネシウム化合物を挙げることができる。このような還元性を有するマグネシウム化合物の具体的な例としては、ジメチルマグネシウム、ジエチルマグネシウム、ジプロピルマグネシウム、ジブチルマグネシウム、ジアミルマグネシウム、ジヘキシルマグネシウム、ジデシルマグネシウム、エチル塩化マグネシウム、プロピル塩化マグネシウム、ブチル塩化マグネシウム、ヘキシル塩化マグネシウム、アミル塩化マグネシウム、ブチルエトキシマグネシウム、エチルブチルマグネシウム、ブチルマグネシウムハイドライドなどを挙げることができる。これらマグネシウム化合物は、単独で用いることもできるし、有機金属化合物と錯化合物を形成していてもよい。また、これらマグネシウム化合物は、液体であってもよく、固体あってもよいし、金属マグネシウムと対応する化合物とを反応させることで誘導してもよい。さらに触媒調製中に上記の方法を用いて金属マグネシウムから誘導することもできる。
【0060】
還元性を有しないマグネシウム化合物の具体的な例としては、塩化マグネシウム、臭化マグネシウム、ヨウ化マグネシウム、フッ化マグネシウムのようなハロゲン化マグネシウム;メトキシ塩化マグネシウム、エトキシ塩化マグネシウム、イソプロポキシ塩化マグネシウム、ブトキシ塩化マグネシウム、オクトキシ塩化マグネシウムのようなアルコキシマグネシウムハライド;フェノキシ塩化マグネシウム、メチルフェノキシ塩化マグネシウムのようなアリロキシマグネシウムハライド;エトキシマグネシウム、イソプロポキシマグネシウム、ブトキシマグネシウム、n-オクトキシマグネシウム、2-エチルヘキソキシマグネシウムのようなアルコキシマグネシウム;フェノキシマグネシウム、ジメチルフェノキシマグネシウムのようなアリロキシマグネシウム;ラウリン酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウムのようなマグネシウムのカルボン酸塩などを例示することができる。
【0061】
これら還元性を有しないマグネシウム化合物は、上述した還元性を有するマグネシウム化合物から誘導した化合物あるいは触媒成分の調製時に誘導した化合物であってもよい。還元性を有しないマグネシウム化合物を、還元性を有するマグネシウム化合物から誘導するには、たとえば、還元性を有するマグネシウム化合物を、ハロゲン、ポリシロキサン化合物、ハロゲン含有シラン化合物、ハロゲン含有アルミニウム化合物、アルコール、エステル、ケトン、アルデヒドなどの活性な炭素−酸素結合を有する化合物と接触させればよい。
【0062】
なお、本発明において、マグネシウム化合物は上記の還元性を有するマグネシウム化合物および還元性を有しないマグネシウム化合物の外に、上記のマグネシウム化合物と他の金属との錯化合物、複化合物あるいは他の金属化合物との混合物であってもよい。さらに、上記の化合物を2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0063】
固体状チタン触媒成分(a)の調製に用いられるマグネシウム化合物としては、上述した以外にも多くのマグネシウム化合物が使用できるが、最終的に得られる固体状チタン触媒成分(a)中において、ハロゲン含有マグネシウム化合物の形をとることが好ましく、従ってハロゲンを含まないマグネシウム化合物を用いる場合には、調製の途中でハロゲン含有化合物と接触反応させることが好ましい。
【0064】
上述したマグネシウム化合物の中では、還元性を有しないマグネシウム化合物が好ましく、ハロゲン含有マグネシウム化合物がさらに好ましく、塩化マグネシウム、アルコキシ塩化マグネシウム、アリロキシ塩化マグネシウムが特に好ましい。
【0065】
本発明で用いられる固体状チタン触媒成分(a)は、上記のようなマグネシウム化合物と、前述したようなチタン化合物および電子供与体を接触させることにより形成される。
【0066】
固体状チタン触媒成分(a)の調製の際に用いられる電子供与体としては、具体的には下記のような化合物が挙げられる。
メチルアミン、エチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、トリブチルアミン、トリベンジルアミンなどのアミン類;
ピロール、メチルピロール、ジメチルピロールなどのピロール類;
ピロリン;ピロリジン;インドール;ピリジン、メチルピリジン、エチルピリジン、プロピルピリジン、ジメチルピリジン、エチルメチルピリジン、トリメチルピリジン、フェニルピリジン、ベンジルピリジン、塩化ピリジンなどのピリジン類;
ピペリジン類、キノリン類、イソキノリン類などの含窒素環状化合物;
テトラヒドロフラン、1,4-シネオール、1,8-シネオール、ピノールフラン、メチルフラン、ジメチルフラン、ジフェニルフラン、ベンゾフラン、クマラン、フタラン、テトラヒドロピラン、ピラン、ジテドロピランなどの環状含酸素化合物;
メタノール、エタノール、プロパノール、ペンタノール、ヘキサノール、オクタノール、2-エチルヘキサノール、ドデカノール、オクタデシルアルコール、オレイルアルコール、ベンジルアルコール、フェニルエチルアルコール、クミルアルコール、イソプロピルアルコール、イソプロピルベンジルアルコールなどの炭素数1〜18のアルコール類;
フェノール、クレゾール、キシレノール、エチルフェノール、プロピルフェノール、ノニルフェノール、クミルフェノール、ナフトールなどの低級アルキル基を有してもよい炭素数6〜20のフェノール類;
アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトフェノン、ベンゾフェノン、アセチルアセトン、ベンゾキノンなどの炭素数3〜15のケトン類;
アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、オクチルアルデヒド、ベンズアルデヒド、トルアルデヒド、ナフトアルデヒドなどの炭素数2〜15のアルデヒド類;
ギ酸メチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ビニル、酢酸プロピル、酢酸オクチル、酢酸シクロヘキシル、プロピオン酸エチル、酪酸メチル、吉草酸エチル、クロル酢酸メチル、ジクロル酢酸エチル、メタクリル酸メチル、クロトン酸エチル、シクロヘキサンカルボン酸エチル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、安息香酸ブチル、安息香酸オクチル、安息香酸シクロヘキシル、安息香酸フェニル、安息香酸ベンジル、トルイル酸メチル、トルイル酸エチル、トルイル酸アミル、エチル安息香酸エチル、アニス酸メチル、マレイン酸n-ブチル、メチルマロン酸ジイソブチル、シクロヘキセンカルボン酸ジn-ヘキシル、ナジック酸ジエチル、テトラヒドロフタル酸ジイソプロピル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジイソブチル、フタル酸ジn-ブチル、フタル酸ジ2-エチルヘキシル、γ-ブチロラクトン、δ-バレロラクトン、クマリン、フタリド、炭酸エチルなどの炭素数2〜30の有機酸エステル;
アセチルクロリド、ベンゾイルクロリド、トルイル酸クロリド、アニス酸クロリドなどの炭素数2〜15の酸ハライド類;
メチルエーテル、エチルエーテル、イソプロピルエーテル、ブチルエーテル、アミルエーテル、アニソール、ジフェニルエーテルエポキシ-p-メンタンなどの炭素数2〜20のエーテル類;
2-イソペンチル-2-イソプロピル-1,3-ジメトキシプロパン、2,2-イソブチル-1,3-ジメトキシプロパン、2,2-イソプロピル-1,3-ジメトキシプロパン、2-シクロヘキシルメチル-2-イソプロピル-1,3-ジメトキシプロパン、2,2-イソペンチル-1,3-ジメトキシプロパン、2-イソブチル-2-イソプロピル-1,3-ジメトキシプロパン、2-シクロヘキシル-2-イソプロピル-1,3-ジメトキシプロパン、2-シクロペンチル-2-イソプロピル-1,3-ジメトキシプロパン、2,2-ジシクロペンチル-1,3-ジメトキシプロパン、1,2-ビス-メトキシメチル-ビシクロ-[2,2,1]-ヘプタン、ジフェニルジメトキシシラン、イソプロピル-t-ブチルジメトキシシラン、2,2-ジイソブチル-1,3-ジメトキシシクロヘキサン、2-イソペンチル-2-イソプロピル-1,3-ジメトキシシクロヘキサンなどのジエーテル類;
酢酸アミド、安息香酸アミド、トルイル酸アミドなどの酸アミド類;
アセトニトリル、ベンゾニトリル、トルニトリルなどのニトリル類;
無水酢酸、無水フタル酸、無水安息香酸などの酸無水物などが用いられる。
【0067】
また電子供与体として、後述するような一般式(iii)で示されるケイ素化合物を用いることもできる。
また上記のようなチタン化合物、マグネシウム化合物および電子供与体を接触させる際に、下記のような担体化合物を用い、担体担持型の固体状チタン触媒成分(a)を調製することもできる。
【0068】
このような担体化合物としては、Al2O3 、SiO2 、B2O3 、MgO、CaO、TiO2 、ZnO、ZnO2 、SnO2 、BaO、ThOおよびスチレン−ジビニルベンゼン共重合体などの樹脂などを挙げることができる。これら担体化合物の中でも、好ましくはSiO2 、Al2O3 、MgO、ZnO、ZnO2 などを挙げることができる。
【0069】
なお、上記の成分は、たとえばケイ素、リン、アルミニウムなどの他の反応試剤の存在下に接触させてもよい。
固体状チタン触媒成分(a)は、上記したようなチタン化合物、マグネシウム化合物および電子供与体を接触させることなどにより製造することができ、製造方法としては公知の方法を含むあらゆる方法を採用することができる。
【0070】
これら固体状チタン触媒成分(a)の具体的な製造方法を数例挙げて以下に簡単に述べる。
(1) マグネシウム化合物、電子供与体および炭化水素溶媒からなる溶液を、有機金属化合物と接触反応させて固体を析出させた後、または析出させながらチタン化合物と接触反応させる方法。
【0071】
(2) マグネシウム化合物と電子供与体からなる錯体を有機金属化合物と接触、反応させた後、チタン化合物を接触反応させる方法。
(3) 無機担体と有機マグネシウム化合物との接触物に、チタン化合物および好ましくは電子供与体を接触反応させる方法。この際、あらかじめ該接触物をハロゲン含有化合物および/または有機金属化合物と接触反応させてもよい。
【0072】
(4) マグネシウム化合物、電子供与体、場合によっては更に炭化水素溶媒を含む溶液と無機または有機担体との混合物から、マグネシウム化合物の担持された無機または有機担体を得、次いでチタン化合物を接触させる方法。
【0073】
(5) マグネシウム化合物、チタン化合物、電子供与体、場合によっては更に炭化水素溶媒を含む溶液と無機または有機担体との接触により、マグネシウム、チタンの担持された固体状チタン触媒成分を得る方法。
【0074】
(6) 液状状態の有機マグネシウム化合物をハロゲン含有チタン化合物と接触反応させる方法。このとき電子供与体を少なくとも1回は用いる。
(7) 液状状態の有機マグネシウム化合物をハロゲン含有化合物と接触反応後、
チタン化合物を接触させる方法。このとき電子供与体を少なくとも1回は用いる。
【0075】
(8) アルコキシ基含有マグネシウム化合物をハロゲン含有チタン化合物と接触反応する方法。このとき電子供与体を少なくとも1回は用いる。
(9) アルコキシ基含有マグネシウム化合物および電子供与体からなる錯体をチタン化合物と接触反応する方法。
【0076】
(10)アルコキシ基含有マグネシウム化合物および電子供与体からなる錯体を有機金属化合物と接触後チタン化合物と接触反応させる方法。
(11)マグネシウム化合物と、電子供与体と、チタン化合物とを任意の順序で接触、反応させる方法。この反応は、各成分を電子供与体および/または有機金属化合物やハロゲン含有ケイ素化合物などの反応助剤で予備処理してもよい。なお、この方法においては、上記電子供与体を少なくとも一回は用いることが好ましい。
【0077】
(12)還元能を有しない液状のマグネシウム化合物と液状チタン化合物とを、好ましくは電子供与体の存在下で反応させて固体状のマグネシウム・チタン複合体を析出させる方法。
【0078】
(13)(12)で得られた反応生成物に、チタン化合物をさらに反応させる方法。
(14)(11)あるいは(12)で得られる反応生成物に、電子供与体およびチタン化合物をさらに反応させる方法。
【0079】
(15)マグネシウム化合物と好ましくは電子供与体と、チタン化合物とを粉砕して得られた固体状物を、ハロゲン、ハロゲン化合物および芳香族炭化水素のいずれかで処理する方法。なお、この方法においては、マグネシウム化合物のみを、あるいはマグネシウム化合物と電子供与体とからなる錯化合物を、あるいはマグネシウム化合物とチタン化合物を粉砕する工程を含んでもよい。また、粉砕後に反応助剤で予備処理し、次いでハロゲンなどで処理してもよい。反応助剤としては、有機金属化合物あるいはハロゲン含有ケイ素化合物などが挙げられる。
【0080】
(16)マグネシウム化合物を粉砕した後、チタン化合物と接触・反応させる方法。この際、粉砕時および/または接触・反応時に電子供与体や、反応助剤を用いることが好ましい。
【0081】
(17)上記(11)〜(16)で得られる化合物をハロゲンまたはハロゲン化合物または芳香族炭化水素で処理する方法。
(18)金属酸化物、有機マグネシウムおよびハロゲン含有化合物との接触反応物を、好ましくは電子供与体およびチタン化合物と接触させる方法。
【0082】
(19)有機酸のマグネシウム塩、アルコキシマグネシウム、アリーロキシマグネシウムなどのマグネシウム化合物を、チタン化合物および/またはハロゲン含有炭化水素および好ましくは電子供与体と反応させる方法。
【0083】
(20)マグネシウム化合物とアルコキシチタンとを少なくとも含む炭化水素溶液と、チタン化合物および/または電子供与体とを接触させる方法。この際ハロゲン含有ケイ素化合物などのハロゲン含有化合物を共存させることが好ましい。
【0084】
(21)還元能を有しない液状状態のマグネシウム化合物と有機金属化合物とを反応させて固体状のマグネシウム・金属(アルミニウム)複合体を析出させ、次いで、電子供与体およびチタン化合物を反応させる方法。
【0085】
固体状チタン触媒成分(a)を調製する際に用いられる上記各成分の使用量は、調製方法によって異なり一概に規定できないが、たとえばマグネシウム化合物1モル当り、電子供与体は0.01〜10モル、好ましくは0.1〜5モルの量で用いられ、チタン化合物は0.01〜1000モル、好ましくは0.1〜200モルの量で用いられる。
【0086】
このようにして得られる固体状チタン触媒成分(a)は、マグネシウム、チタン、ハロゲンおよび電子供与体を必須成分として含有している。
この固体状チタン触媒成分(a)において、ハロゲン/チタン(原子比)は約2〜200、好ましくは約4〜100の範囲にあり、前記電子供与体/チタン(モル比)は約0.01〜100、好ましくは約0.02〜10の範囲にあり、マグネシウム/チタン(原子比)は約1〜100、好ましくは約2〜50の範囲にあることが望ましい。
【0087】
[II]有機金属触媒成分(b)としては、周期律表第I族〜第III族金属の有機金属化合物が用いられ、具体的には、下記のような化合物が用いられる。
(b-1) 一般式 R1 mAl(OR2)nHpXq
(式中、R1およびR2は炭素原子を通常1〜15個、好ましくは1〜4個含む炭化水素基であり、これらは互いに同一でも異なってもよい。Xはハロゲン原子を表し、0<m≦3、nは0≦n<3、pは0≦p<3、qは0≦q<3の数であり、かつm+n+p+q=3である。)で表される有機アルミニウム化合物。
【0088】
(b-2) 一般式 M1AlR1 4
(式中、M1 はLi 、Na 、Kであり、R1は前記と同じである。)で表される第I族金属とアルミニウムとの錯アルキル化物。
【0089】
(b-3) 一般式 R1R2M2
(式中、R1およびR2は上記と同様であり、M2 はMg、ZnまたはCdである。)で表される第II族または第III族のジアルキル化合物。
【0090】
前記の(b-1) に属する有機アルミニウム化合物としては、次のような化合物を例示できる。
一般式 R1 mAl(OR2)3-m
(式中、R1およびR2は前記と同様であり、mは好ましくは1.5≦m≦3の数である。)で表される化合物、
一般式 R1 mAlX3-m
(式中、R1は前記と同様であり、Xはハロゲンであり、mは好ましくは0<m<3である。)で表される化合物、
一般式 R1 mAlH3-m
(式中、R1は前記と同様であり、mは好ましくは2≦m<3である。)で表される化合物、
一般式 R1 mAl(OR2)nXq
(式中、R1およびR2は前記と同様であり、Xはハロゲン、0<m≦3、0≦n<3、0≦q<3であり、かつm+n+q=3である。)で表される化合物などを挙げることができる。
【0091】
(b-1) に属するアルミニウム化合物としては、より具体的には、トリエチルアルミニウム、トリブチルアルミニウムなどのトリアルキルアルミニウム;トリイソプレニルアルミニウムなどのトリアルケニルアルミニウム;
ジエチルアルミニウムエトキシド、ジブチルアルミニウムブトキシドなどのジアルキルアルミニウムアルコキシド;
エチルアルミニウムセスキエトキシド、ブチルアルミニウムセスキブトキシドなどのアルキルアルミニウムセスキアルコキシド;
R1 2.5Al(OR2)0.5 などで表される平均組成を有する部分的にアルコキシ化されたアルキルアルミニウム;
ジエチルアルミニウムクロリド、ジブチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムブロミドなどのジアルキルアルミニウムハライド;
エチルアルミニウムセスキクロリド、ブチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムセスキブロミドなどのアルキルアルミニウムセスキハライド;
エチルアルミニウムジクロリド、プロピルアルミニウムジクロリド、ブチルアルミニウムジブロミドなどのアルキルアルミニウムジハライドなどの部分的にハロゲン化されたアルキルアルミニウム;
ジエチルアルミニウムヒドリド、ジブチルアルミニウムヒドリドなどのジアルキルアルミニウムヒドリド;
エチルアルミニウムジヒドリド、プロピルアルミニウムジヒドリドなどのアルキルアルミニウムジヒドリドなどその他の部分的に水素化されたアルキルアルミニウム;
エチルアルミニウムエトキシクロリド、ブチルアルミニウムブトキシクロリド、エチルアルミニウムエトキシブロミドなどの部分的にアルコキシ化およびハロゲン化されたアルキルアルミニウムを挙げることができる。
【0092】
また(b-1) に類似する化合物としては、酸素原子や窒素原子を介して2以上のアルミニウムが結合した有機アルミニウム化合物を挙げることができる。このような化合物としては、例えば、
(C2H5)2AlOAl(C2H5)2、
(C4H9)2AlOAl(C4H9)2、
(C2H5)2AlN(C2H5)Al(C2H5)2、
さらにはメチルアルミノオキサンなどのアルミノオキサン類が挙げられる。
【0093】
前記(b-2) に属する化合物としては、
LiAl(C2H5)4 、
LiAl(C7H15)4 などを挙げることができる。
これらの中では有機アルミニウム化合物が好ましく用いられる。
本発明では、有機金属化合物を2種以上組合わせて用いることもできる。
【0094】
オレフィン重合用触媒を形成する際には、触媒成分[III]として用いられる(c)ケイ素化合物は、下記式(iii)で示される。
Ra n−Si−(ORb)4-n … (iii)
(式中、nは1、2または3であり、nが1のとき、Ra は2級または3級の炭化水素基であり、nが2または3のとき、Ra の少なくとも1つは2級または3級の炭化水素基であり、Ra は同一であっても異なっていてもよく、Rb は炭素数1〜4の炭化水素基であって、4−nが2または3であるとき、Rb は同一であっても異なっていてもよい。)
この式(iii)で示されるケイ素化合物(c)において、2級または3級の炭化水素基としては、シクロペンチル基、シクロペンテニル基、シクロペンタジエニル基、置換基を有するこれらの基あるいはSiに隣接する炭素が2級または3級である炭化水素基が挙げられる。より具体的に、
置換シクロペンチル基としては、2-メチルシクロペンチル基、3-メチルシクロペンチル基、2-エチルシクロペンチル基、2-n-ブチルシクロペンチル基、2,3-ジメチルシクロペンチル基、2,4-ジメチルシクロペンチル基、2,5-ジメチルシクロペンチル基、2,3-ジエチルシクロペンチル基、2,3,4-トリメチルシクロペンチル基、2,3,5-トリメチルシクロペンチル基、2,3,4-トリエチルシクロペンチル基、テトラメチルシクロペンチル基、テトラエチルシクロペンチル基などのアルキル基を有するシクロペンチル基を例示することができる。
【0095】
置換シクロペンテニル基としては、2-メチルシクロペンテニル基、3-メチルシクロペンテニル基、2-エチルシクロペンテニル基、2-n-ブチルシクロペンテニル基、2,3-ジメチルシクロペンテニル基、2,4-ジメチルシクロペンテニル基、2,5-ジメチルシクロペンテニル基、2,3,4-トリメチルシクロペンテニル基、2,3,5-トリメチルシクロペンテニル基、2,3,4-トリエチルシクロペンテニル基、テトラメチルシクロペンテニル基、テトラエチルシクロペンテニル基などのアルキル基を有するシクロペンテニル基を例示することができる。
【0096】
置換シクロペンタジエニル基としては、2-メチルシクロペンタジエニル基、3-メチルシクロペンタジエニル基、2-エチルシクロペンタジエニル基、2-n-ブチルシクロペンテニル基、2,3-ジメチルシクロペンタジエニル基、2,4-ジメチルシクロペンタジエニル基、2,5-ジメチルシクロペンタジエニル基、2,3-ジエチルシクロペンタジエニル基、2,3,4-トリメチルシクロペンタジエニル基、2,3,5-トリメチルシクロペンタジエニル基、2,3,4-トリエチルシクロペンタジエニル基、2,3,4,5-テトラメチルシクロペンタジエニル基、2,3,4,5-テトラエチルシクロペンタジエニル基、1,2,3,4,5-ペンタメチルシクロペンタジエニル基、1,2,3,4,5-ペンタエチルシクロペンタジエニル基などのアルキル基を有するシクロペンタジエニル基をを例示することができる。
【0097】
またSiに隣接する炭素が2級炭素である炭化水素基としては、i-プロピル基、s-ブチル基、s-アミル基、α-メチルベンジル基などを例示することができ、Siに隣接する炭素が3級炭素である炭化水素基としては、t-ブチル基、t-アミル基、α,α'-ジメチルベンジル基、アドマンチル基などを例示することができる。
【0098】
このような式(iii)で示されるケイ素化合物(c)は、nが1である場合には、シクロペンチルトリメトキシシラン、2-メチルシクロペンチルトリメトキシシラン、2,3-ジメチルシクロペンチルトリメトキシシラン、シクロペンチルトリエトキシシラン、iso-ブチルトリエトキシシラン、t-ブチルトリエトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリエトキシシラン、2-ノルボルナントリメトキシシラン、2-ノルボルナントリエトキシシランなどのトリアルコキシシラン類が例示される。
【0099】
nが2である場合には、
ジシクロペンチルジエトキシシラン、t-ブチルメチルジメトキシシラン、t-ブチルメチルジエトキシシラン、t-アミルメチルジエトキシシラン、ジシクロヘキシルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジエトキシシラン、2-ノルボルナンメチルジメトキシシランなどのジアルコキシシラン類が例示される。
【0100】
式(iii)中、nが2である場合には、ケイ素化合物(c)は、下記式(iv)で示されるジメトキシ化合物であることが好ましい。
【0101】
【化5】
【0102】
式中、Ra およびRc は、それぞれ独立に、シクロペンチル基、置換シクロペンチル基、シクロペンテニル基、置換シクロペンテニル基、シクロペンタジエニル基、置換シクロペンタジエニル基、あるいは、Siに隣接する炭素が2級炭素または3級炭素である炭化水素基を示す。
【0103】
このような式(iv)で示されるケイ素化合物としては、たとえば、
ジシクロペンチルジメトキシシラン、
ジシクロペンテニルジメトキシシラン、
ジシクロペンタジエニルジメトキシシラン、
ジt-ブチルジメトキシシラン、
ジ(2-メチルシクロペンチル)ジメトキシシラン、
ジ(3-メチルシクロペンチル)ジメトキシシラン、
ジ(2-エチルシクロペンチル)ジメトキシシラン、
ジ(2,3-ジメチルシクロペンチル)ジメトキシシラン、
ジ(2,4-ジメチルシクロペンチル)ジメトキシシラン、
ジ(2,5-ジメチルシクロペンチル)ジメトキシシラン、
ジ(2,3-ジエチルシクロペンチル)ジメトキシシラン、
ジ(2,3,4-トリメチルシクロペンチル)ジメトキシシラン、
ジ(2,3,5-トリメチルシクロペンチル)ジメトキシシラン、
ジ(2,3,4-トリエチルシクロペンチル)ジメトキシシラン、
ジ(テトラメチルシクロペンチル)ジメトキシシラン、
ジ(テトラエチルシクロペンチル)ジメトキシシラン、
ジ(2-メチルシクロペンテニル)ジメトキシシラン、
ジ(3-メチルシクロペンテニル)ジメトキシシラン、
ジ(2-エチルシクロペンテニル)ジメトキシシラン、
ジ(2-n-ブチルシクロペンテニル)ジメトキシシラン、
ジ(2,3-ジメチルシクロペンテニル)ジメトキシシラン、
ジ(2,4-ジメチルシクロペンテニル)ジメトキシシラン、
ジ(2,5-ジメチルシクロペンテニル)ジメトキシシラン、
ジ(2,3,4-トリメチルシクロペンテニル)ジメトキシシラン、
ジ(2,3,5-トリメチルシクロペンテニル)ジメトキシシラン、
ジ(2,3,4-トリエチルシクロペンテニル)ジメトキシシラン、
ジ(テトラメチルシクロペンテニル)ジメトキシシラン、
ジ(テトラエチルシクロペンテニル)ジメトキシシラン、
ジ(2-メチルシクロペンタジエニル)ジメトキシシラン、
ジ(3-メチルシクロペンタジエニル)ジメトキシシラン、
ジ(2-エチルシクロペンタジエニル)ジメトキシシラン、
ジ(2-n-ブチルシクロペンテニル)ジメトキシシラン、
ジ(2,3-ジメチルシクロペンタジエニル)ジメトキシシラン、
ジ(2,4-ジメチルシクロペンタジエニル)ジメトキシシラン、
ジ(2,5-ジメチルシクロペンタジエニル)ジメトキシシラン、
ジ(2,3-ジエチルシクロペンタジエニル)ジメトキシシラン、
ジ(2,3,4-トリメチルシクロペンタジエニル)ジメトキシシラン、
ジ(2,3,5-トリメチルシクロペンタジエニル)ジメトキシシラン、
ジ(2,3,4-トリエチルシクロペンタジエニル)ジメトキシシラン、
ジ(2,3,4,5-テトラメチルシクロペンタジエニル)ジメトキシシラン、
ジ(2,3,4,5-テトラエチルシクロペンタジエニル)ジメトキシシラン、
ジ(1,2,3,4,5-ペンタメチルシクロペンタジエニル)ジメトキシシラン、
ジ(1,2,3,4,5-ペンタエチルシクロペンタジエニル)ジメトキシシラン、
ジt-アミル-ジメトキシシラン、
ジ(α,α'-ジメチルベンジル)ジメトキシシラン、
ジ(アドマンチル)ジメトキシシラン、
アドマンチル-t-ブチルジメトキシシラン、
シクロペンチル-t-ブチルジメトキシシラン、
ジイソプロピルジメトキシシラン、
ジs-ブチルジメトキシシラン、
ジs-アミルジメトキシシラン、
イソプロピル-s-ブチルジメトキシシランなどが挙げられる。
【0104】
nが3である場合には、
トリシクロペンチルメトキシシラン、トリシクロペンチルエトキシシラン、ジシクロペンチルメチルメトキシシラン、ジシクロペンチルエチルメトキシシラン、ジシクロペンチルメチルエトキシシラン、シクロペンチルジメチルメトキシシラン、シクロペンチルジエチルメトキシシラン、シクロペンチルジメチルエトキシシランなどのモノアルコキシシラン類などが挙げられる。
【0105】
これらのうち、ジメトキシシラン類特に式(iv)で示されるジメトキシシラン類が好ましく、具体的に、ジシクロペンチルジメトキシシラン、ジ-t-ブチルジメトキシシラン、ジ(2-メチルシクロペンチル)ジメトキシシラン、ジ(3-メチルシクロペンチル)ジメトキシシラン、ジ-t-アミルジメトキシシランが好ましい。
上記ケイ素化合物(c)は、2種以上併用することができる。
【0106】
本発明で用いられる複数の原子を介して存在する2個以上のエーテル結合を有する化合物(d)(以下ポリエーテル化合物ということもある)では、これらエーテル結合間に存在する原子は、炭素、ケイ素、酸素、硫黄、リン、ホウ素からなる群から選択される1種以上であり、原子数は2以上である。
【0107】
これらのうちエーテル結合間の原子に比較的嵩高い置換基、具体的には炭素数2以上であり、好ましくは3以上で直鎖状、分岐状、環状構造を有する置換基、より好ましくは分岐状または環状構造を有する置換基が結合しているものが望ましい。また2個以上のエーテル結合間に存在する原子に、複数の、好ましくは3〜20、より好ましくは3〜10、特に好ましくは3〜7の炭素原子が含まれた化合物が好ましい。
このようなポリエーテル化合物としては、たとえば下記式で示される。
【0108】
【化6】
【0109】
式中、nは2≦n≦10の整数であり、R1〜R26は炭素、水素、酸素、ハロゲン、窒素、硫黄、リン、ホウ素およびケイ素から選択される少なくとも1種の元素を有する置換基であり、任意のR1〜R26、好ましくはR1〜R2 nは共同してベンゼン環以外の環を形成していてもよく、主鎖中に炭素以外の原子が含まれていてもよい。
【0110】
上記のようなポリエーテル化合物として、具体的には、
2-(2-エチルヘキシル)-1,3-ジメトキシプロパン、
2-イソプロピル-1,3-ジメトキシプロパン、
2-ブチル-1,3-ジメトキシプロパン、
2-s-ブチル-1,3-ジメトキシプロパン、
2-シクロヘキシル-1,3-ジメトキシプロパン、
2-フェニル-1,3-ジメトキシプロパン、
2-クミル-1,3-ジメトキシプロパン、
2-(2-フェニルエチル)-1,3-ジメトキシプロパン、
2-(2-シクロヘキシルエチル)-1,3-ジメトキシプロパン、
2-(p-クロロフェニル)-1,3-ジメトキシプロパン、
2-(ジフェニルメチル)-1,3-ジメトキシプロパン、
2-(1-ナフチル)-1,3-ジメトキシプロパン、
2-(2-フルオロフェニル)-1,3-ジメトキシプロパン、
2-(1-デカヒドロナフチル)-1,3-ジメトキシプロパン、
2-(p-t-ブチルフェニル)-1,3-ジメトキシプロパン、
2,2-ジシクロヘキシル-1,3-ジメトキシプロパン、
2,2-ジシクロペンチル-1,3-ジメトキシプロパン、
2,2-ジエチル-1,3-ジメトキシプロパン、
2,2-ジプロピル-1,3-ジメトキシプロパン、
2,2-ジイソプロピル-1,3-ジメトキシプロパン、
2,2-ジブチル-1,3-ジメトキシプロパン、
2-メチル-2-プロピル-1,3-ジメトキシプロパン、
2-メチル-2-ベンジル-1,3-ジメトキシプロパン、
2-メチル-2-エチル-1,3-ジメトキシプロパン、
2-メチル-2-イソプロピル-1,3-ジメトキシプロパン、
2-メチル-2-フェニル-1,3-ジメトキシプロパン、
2-メチル-2-シクロヘキシル-1,3-ジメトキシプロパン、
2,2-ビス(p-クロロフェニル)-1,3-ジメトキシプロパン、
2,2-ビス(2-シクロヘキシルエチル)-1,3-ジメトキシプロパン、
2-メチル-2-イソブチル-1,3-ジメトキシプロパン、
2-メチル-2-(2-エチルヘキシル)-1,3-ジメトキシプロパン、
2,2-ジイソブチル-1,3-ジメトキシプロパン、
2,2-ジフェニル-1,3-ジメトキシプロパン、
2,2-ジベンジル-1,3-ジメトキシプロパン、
2,2-ビス(シクロヘキシルメチル)-1,3-ジメトキシプロパン、
2,2-ジイソブチル-1,3-ジエトキシプロパン、
2,2-ジイソブチル-1,3-ジブトキシプロパン、
2-イソブチル-2-イソプロピル-1,3-ジメトキシプロパン、
2-(1-メチルブチル)-2-イソプロピル-1,3-ジメトキシプロパン、
2-(1-メチルブチル)-2-s-ブチル-1,3-ジメトキシプロパン、
2,2-ジ-s- ブチル-1,3-ジメトキシプロパン、
2,2-ジ-t- ブチル-1,3-ジメトキシプロパン、
2,2-ジネオペンチル-1,3-ジメトキシプロパン、
2-イソプロピル-2-イソペンチル-1,3-ジメトキシプロパン、
2-フェニル-2-イソプロピル-1,3-ジメトキシプロパン、
2-フェニル-2-s-ブチル-1,3-ジメトキシプロパン、
2-ベンジル-2-イソプロピル-1,3-ジメトキシプロパン、
2-ベンジル-2-s-ブチル-1,3-ジメトキシプロパン、
2-フェニル-2-ベンジル-1,3-ジメトキシプロパン、
2-シクロペンチル-2-イソプロピル-1,3-ジメトキシプロパン、
2-シクロペンチル-2-s-ブチル-1,3-ジメトキシプロパン、
2-シクロヘキシル-2-イソプロピル-1,3-ジメトキシプロパン、
2-シクロヘキシル-2-s-ブチル-1,3-ジメトキシプロパン、
2-イソプロピル-2-s-ブチル-1,3-ジメトキシプロパン、
2-シクロヘキシル-2-シクロヘキシルメチル-1,3-ジメトキシプロパン、
2,3-ジフェニル-1,4-ジエトキシブタン、
2,3-ジシクロヘキシル-1,4-ジエトキシブタン、
2,2-ジベンジル-1,4-ジエトキシブタン、
2,3-ジシクロヘキシル-1,4-ジエトキシブタン、
2,3-ジイソプロピル-1,4-ジエトキシブタン、
2,2-ビス(p-メチルフェニル)-1,4-ジメトキシブタン、
2,3-ビス(p-クロロフェニル)-1,4-ジメトキシブタン、
2,3-ビス(p-フルオロフェニル)-1,4-ジメトキシブタン、
2,4-ジフェニル-1,5-ジメトキシペンタン、
2,5-ジフェニル-1,5-ジメトキシヘキサン、
2,4-ジイソプロピル-1,5-ジメトキシペンタン、
2,4-ジイソブチル-1,5-ジメトキシペンタン、
2,4-ジイソアミル-1,5-ジメトキシペンタン、
3-メトキシメチルテトラヒドロフラン、
3-メトキシメチルジオキサン、
1,3-ジイソブトキシプロパン、
1,2-ジイソブトキシプロパン、
1,2-ジイソブトキシエタン、
1,3-ジイソアミロキシプロパン、
1,3-ジイソネオペンチロキシエタン、
1,3-ジネオペンチロキシプロパン、
2,2-テトラメチレン-1,3-ジメトキシプロパン、
2,2-ペンタメチレン-1,3-ジメトキシプロパン、
2,2-ヘキサメチレン-1,3-ジメトキシプロパン、
1,2-ビス(メトキシメチル)シクロヘキサン、
2,8-ジオキサスピロ[5,5]ウンデカン、
3,7-ジオキサビシクロ[3,3,1]ノナン、
3,7-ジオキサビシクロ[3,3,0]オクタン、
3,3-ジイソブチル-1,5-オキソノナン、
6,6-ジイソブチルジオキシヘプタン、
1,1-ジメトキシメチルシクロペンタン、
1,1-ビス(ジメトキシメチル)シクロヘキサン、
1,1-ビス(メトキシメチル)ビシクロ[2,2,1]ヘプタン、
1,1-ジメトキシメチルシクロペンタン、
2-メチル-2-メトキシメチル-1,3-ジメトキシプロパン、
2-シクロヘキシル-2-エトキシメチル-1,3-ジエトキシプロパン、
2-シクロヘキシル-2-メトキシメチル-1,3-ジメトキシプロパン、
2,2-ジイソブチル-1,3-ジメトキシシクロヘキサン、
2-イソプロピル-2-イソアミル-1,3-ジメトキシシクロヘキサン、
2-シクロヘキシル-2-メトキシメチル-1,3-ジメトキシシクロヘキサン、
2-イソプロピル-2-メトキシメチル-1,3-ジメトキシシクロヘキサン、
2-イソブチル-2-メトキシメチル-1,3-ジメトキシシクロヘキサン、
2-シクロヘキシル-2-エトキシメチル-1,3-ジエトキシシクロヘキサン、
2-シクロヘキシル-2-エトキシメチル-1,3-ジメトキシシクロヘキサン、
2-イソプロピル-2-エトキシメチル-1,3-ジエトキシシクロヘキサン、
2-イソプロピル-2-エトキシメチル-1,3-ジメトキシシクロヘキサン、
2-イソブチル-2-エトキシメチル-1,3-ジエトキシシクロヘキサン、
2-イソブチル-2-エトキシメチル-1,3-ジメトキシシクロヘキサン、
トリス(p-メトキシフェニル)ホスフィン、
メチルフェニルビス(メトキシメチル)シラン、
ジフェニルビス(メトキシメチル)シラン、
メチルシクロヘキシルビス(メトキシメチル)シラン、
ジ-t- ブチルビス(メトキシメチル)シラン、
シクロヘキシル-t-ブチルビス(メトキシメチル)シラン、
i-プロピル-t-ブチルビス(メトキシメチル)シランなどが挙げられる。
【0111】
これらのうち、1,3-ジエーテル類が好ましく用いられ、特に、2,2-ジイソブチル-1,3-ジメトキシプロパン、2-イソプロピル-2-イソペンチル-1,3-ジメトキシプロパン、2,2-ジシクロヘキシル-1,3-ジメトキシプロパン、2,2-ビス(シクロヘキシルメチル)-1,3-ジメトキシプロパンが好ましく用いられる。
これらポリエーテル化合物(d)は、2種以上併用することもできる。
【0112】
本発明で用いられるオレフィン重合用触媒は、予備重合されていてもよい。
具体的には、該オレフィン重合用触媒は、
[Ib]上記固体状チタン触媒成分(a)と、有機金属触媒成分(b)との存在下に、オレフィンを予備重合してなる予備重合触媒成分と、
[II]有機金属触媒成分(b)と、
[III]上記ケイ素化合物(c)またはポリエーテル化合物(d)とから形成される。
【0113】
予備重合オレフィンとしては、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-オクテン、1-ヘキサデセン、1-エイコセンなどの直鎖状のオレフィン、下記式(i) または(ii)で示される分岐状オレフィンを用いることができる。
【0114】
【化7】
【0115】
上記のような分岐状オレフィンとしては、具体的に、3-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、3-エチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ヘキセン、4,4-ジメチル-1-ヘキセン、4,4-ジメチル-1-ペンテン、4-エチル-1-ヘキセン、3-エチル-1-ヘキセン、アリルナフタレン、アリルノルボルナン、スチレン、ジメチルスチレン類、ビニルナフタレン類、アリルトルエン類、アリルベンゼン、ビニルシクロヘキサン、ビニルシクロペンタン、ビニルシクロヘプタン、アリルトリアルキルシラン類などの分岐構造を有するオレフィンが挙げられる。
【0116】
これらのうちでは、3-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、3-エチル-1-ヘキセン、ビニルシクロヘキサン、アリルトリメチルシラン、ジメチルスチレンなどが好ましく、3-メチル-1-ブテン、ビニルシクロヘキサン、アリルトリメチルシランがより好ましく、3-メチル-1-ブテンが特に好ましい。
予備重合オレフィンとしては、上記のうちでも、プロピレン、エチレンが好ましく用いられる。
予備重合オレフィンは、2種以上組合わせて用いることもできる。
【0117】
予備重合では、プロピレンの本重合における系内の触媒濃度よりもかなり高濃度で触媒を用いることができる。
予備重合における固体状チタン触媒成分(a)の濃度は、後述する重合溶媒1リットル当り、チタン原子換算で、通常約0.01〜200ミリモル、好ましくは約0.05〜100ミリモルであることが望ましい。
【0118】
有機金属触媒成分(b)は、固体状チタン触媒成分(a)1g当り0.1〜1000g、好ましくは0.3〜500gの重合体が生成するような量で用いればよく、固体状チタン触媒成分(a)中のチタン原子1モル当り、通常約0.1〜100ミリモル、好ましくは約0.5〜50ミリモルの量で用いることが望ましい。
【0119】
また予備重合時には、固体状チタン触媒成分(a)、有機金属触媒成分(b)とともに電子供与体(e)を用いてもよい。この電子供与体(e)としては、具体的に、固体状チタン触媒成分(a)を調製時に示した電子供与体、触媒成分[III]として示したケイ素化合物(c)およびポリエーテル化合物(d)、さらには下記のような有機ケイ素化合物を挙げることができる。
【0120】
RnSi(OR’)4-n … (c-i)
(式中、RおよびR’は炭化水素基であり、0<n<4である)
なおこの式(c-i)で示される有機ケイ素化合物は、ケイ素化合物(c)を含むこともある。
【0121】
このような有機ケイ素化合物としては、具体的には、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ビスo-トリルジメトキシシラン、ビスm-トリルジメトキシシラン、ビスp-トリルジメトキシシラン、ビスp-トリルジエトキシシラン、ビスエチルフェニルジメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、n-プロピルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、γ-クロルプロピルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、n-ブチルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、クロルトリエトキシシラン、エチルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、ケイ酸エチル、ケイ酸ブチル、トリメチルフェノキシシラン、メチルトリアリロキシ(allyloxy)シラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシシラン)、ビニルトリアセトキシシラン、ジメチルテトラエトキシジシロキサンなどが挙げられる。
【0122】
上記電子供与体(e)は、2種以上併用することもできる。
電子供与体(e)は、固体状チタン触媒成分(a)中のチタン原子1モル当り0.1〜50モル、好ましくは0.5〜30モル、さらに好ましくは1〜10モルの量で必要に応じて用いることができる。
【0123】
予備重合は、不活性炭化水素媒体にオレフィンおよび上記触媒成分を加え、温和な条件下で行うことが好ましい。
この不活性炭化水素媒体としては、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、灯油などの脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタンなどの脂環族炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、エチレンクロリド、クロルベンゼンなどのハロゲン化炭化水素、あるいはこれらの接触物などを用いることができる。
これらのうちでは、特に脂肪族炭化水素を用いることが好ましい。
【0124】
予備重合の際の反応温度は、生成する予備重合体は実質的に不活性炭化水素媒体中に溶解しないような温度であればよく、通常約−20〜+100℃、好ましくは約−20〜+80℃、さらに好ましくは0〜+40℃の範囲にあることが望ましい。
予備重合時には、水素などの分子量調節剤を用いることもできる。
【0125】
予備重合は、固体状チタン触媒成分(a)1g当り約0.1〜1000g、好ましくは約0.3〜500gの重合体が生成するように行うことが望ましい。予備重合量をあまり多くすると、本重合における(共)重合体の生成効率が低下することがあり、得られる(共)重合体からフィルムなどを成形した場合に、フィッシュアイが発生し易くなることがある。
予備重合は回分式や連続式で行うことができる。
【0126】
本発明で用いられるオレフィン重合触媒は、上記[Ia]固体状チタン触媒成分または[Ib]予備重合触媒成分と、[II]有機金属触媒成分と、[III]ケイ素化合物(c)またはポリエーテル化合物(d)とから形成される。
予備重合触媒成分[Ib]を用いる場合には、予備重合時の有機金属触媒成分(b)と、本重合時の有機金属触媒成分と同様のものを使用することができる。
【0127】
上記のようなオレフィン重合触媒を用いて、プロピレンの重合を行うことによってブレンド用ホモポリプロピレンを製造する際には、
前記固体状チタン触媒成分[Ia](または予備重合触媒成分[Ib])は、重合系内においては、重合容積1リットル当り該触媒成分[Ia]中のチタン原子(または[Ib])中のチタン原子に換算して、通常、約0.0001〜50ミリモル、好ましくは約0.001〜10ミリモルの量で存在させることが望ましい。
有機金属触媒成分[II]は、重合系中のチタン原子1モルに対し、該触媒成分[II]中の金属原子が、通常約1〜2000モル、好ましくは約2〜500モルとなるような量で用いられる。
さらに触媒成分[III]は、有機金属触媒成分[II]中の金属原子1モルに対し、通常約0.001〜50モル、好ましくは約0.01〜20モルとなるような量で用いられる。
【0128】
重合温度は、通常、約−50〜200℃、好ましくは約20〜100℃で、重合圧力は、通常、常圧〜100kg/cm2、好ましくは約2〜50kg/cm2である。
重合は、気相あるいは液相で行うことができ、また回分式、半連続式、連続式の何れの方法においても行うことができる。
重合時には、水素を用いて得られる重合体の分子量を調節することができる。
重合がスラリー重合または溶解重合の反応形態を採る場合、反応溶媒として、予備重合触媒成分[Ib]の調製の際に示したような不活性炭化水素を用いることができる。
【0129】
なお上記重合工程では、本発明の目的を損なわない範囲であれば、プロピレンとともに前述したような他のオレフィン類またはジエン類を少量共重合させることができるが、得られるポリプロピレン中において、上記他のオレフィン類から導かれる単位の含有率は、5モル%未満好ましくは0〜4モル%特に好ましくは0〜2モル%であることが望ましい。
上記オレフィン重合触媒を用いて、プロピレンとエチレンとを共重合させてブレンド用プロピレン・エチレン共重合体(非晶性もしくは低結晶性重合体)を製造する際には、固体状チタン触媒成分[Ia](または予備重合触媒成分[Ib])および有機金属触媒成分[II]は、上記ポリプロピレン製造時と同様の量で反応系に存在させることが望ましい。
触媒成分[III]は、有機金属触媒成分[II]中の金属原子1モルに対し、通常約0.001〜50モル、好ましくは約0.01〜20モルとなるような量で用いられる。
【0130】
プロピレンとエチレンとの共重合時には、必要に応じて前述した他のオレフィン類および/またはポリエン類を用いることができる
この重合は、通常、溶解重合の形態で行われることが多いが、気相で行うこともできる。溶解重合の反応形態を採る場合、反応溶媒として、上述の不活性炭化水素を用いることができる。
また重合は、回分式、半連続式、連続式の何れの方法においても行うことができる。
【0131】
重合時に水素を用いると、水素添加量によって得られる低結晶性共重合体または非晶性共重合体の分子量を調節することができる。
重合温度は、通常、約−50〜200℃、好ましくは約20〜100℃で、重合圧力は、通常、常圧〜100kg/cm2、好ましくは約2〜50kg/cm2である。
【0132】
上記のようなオレフィン重合触媒を用いて、プロピレン系重合体(A)(プロピレンブロック共重合体)を重合により製造する場合には、重合は多段で行われる。たとえば第1の重合工程において、上記ポリプロピレン成分を製造し、第2の重合工程において、プロピレン・エチレン共重合体成分を製造ことにより得ることができる。
本発明では、第1の重合工程に続いて得られたポリプロピレン成分の存在下に、第2の重合工程を実施することができる。
【0133】
第1の重合工程は、上記ポリプロピレン成分の製造と同様な重合条件で行うことができる。
第2の重合工程は、通常、気相あるいは液相で行われ、上記プロピレン・エチレン共重合体成分の製造と同様な重合条件で行うことができる。
第2の重合系内においては、必要に応じて固体状チタン触媒成分[Ia](または予備重合触媒成分[Ib])、有機金属触媒成分[II]、触媒成分[III]などを追加することができ、固体状チタン触媒成分[Ia](または予備重合触媒成分[Ib])は、重合容積1リットル当り触媒成分([Ia]または[Ib])中のチタン原子に換算して、通常は約0.0001〜50ミリモル、好ましくは約0.001〜10ミリモルの量を加えることができる。
また有機金属触媒成分[II]は、重合系中に加えたチタン原子1モルに対し、該触媒成分[II]中の金属原子が、通常約1〜2000モル、好ましくは約2〜500モルとなるような量を加えることができる。触媒成分[III]は、加えた有機金属触媒成分[II]中の金属原子1モル当り、通常約0.001〜50モル、好ましくは約0.01〜20モルとなるような量で用いることができる。
【0134】
このように重合で得られるプロピレン系重合体(A)の64℃デカン可溶成分は、主に第2の重合工程で得られる共重合体からなる。
【0135】
本発明では、上記のようなオレフィン重合用触媒を用いてポリプロピレン、プロピレン系共重合体またはプロピレン系ブロック共重合体を製造すると、固体触媒成分単位量当りの重合体収率が高いので、プロピレン重合体(A)中の触媒残渣、特にハロゲン含量を相対的に低減させることができる。したがってプロピレン重合体(A)中の触媒除去操作を省略できるとともに、プロピレン重合体(A)から成形体を成形する際には、金型の発錆を防止しやすくなる。
【0136】
本発明では、ポリプロピレン系樹脂組成物を調製する際には、上記のようなプロピレン系重合体(A)とともにエチレン系共重合体(B-1) および/またはスチレン系ブロック共重合体(B-2) が用いられる。
【0137】
(B-1) エチレン系共重合体
本発明では、極限粘度(135℃デカリン中)[η]が1.5〜3.0dl/g、好ましくは2.0〜3.0dl/gであるエチレン系共重合体が用いられる。
本発明では、このようなエチレン系共重合体(B-1) として、エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンとのランダム共重合体(エラストマー状物)を用いることができる。
【0138】
このようなエチレン・α−オレフィン共重合体は、エチレンから導かれる単位を60〜90モル%の量で、炭素数3〜10のα−オレフィンから導かれる単位を10〜40モル%の量で含有していることが望ましい。
α−オレフィンとしては、たとえばプロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-ヘキサドデセン、4-メチル-1-ペンテンなどが挙げられる。
これらのうちでも、炭素数3〜10のα−オレフィンが好ましい。
【0139】
エチレン系共重合体は、本発明の特性を損なわない範囲であれば、必要に応じて他の重合性単量体から導かれる単位を含有していてもよく、通常10モル%以下好ましくは5モル%以下より好ましくは3モル%以下の量で含有していてもよい。
【0140】
このような他の重合性単量体としては、たとえばスチレン、ビニルシクロペンテン、ビニルシクロヘキサン、ビニルノルボルナンなどのビニル化合物類、酢酸ビニルなどのビニルエステル、無水マレイン酸などの不飽和有機酸またはその誘導体、共役ジエン類、1,4-ヘキサジエン、1,6-オクタジエン、2-メチル-1,5-ヘキサジエン、6-メチル-1,5-ヘプタジエン、7-メチル-1,6-オクタジエン、ジシクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、ジシクロオクタジエン、メチレンノルボルネン、5-ビニルノルボルネン、5-エチリデン-2-ノルボルネン、5-メチレン-2-ノルボルネン、5-イソプロピリデン-2-ノルボルネン、6-クロロメチル-5-イソプロペニル-2-ノルボルネン、2,3-ジイソプロピリデン-5-ノルボルネン、2-エチリデン-3-イソプロピリデン-5-ノルボルネン、2-プロペニル-2,2-ノルボルナジエンなどの非共役ポリエン類、ブタジエン、イソプレンなどの共役ポリエン類などが挙げられる。
【0141】
エチレン系共重合体は、上記のような炭素数3〜20のから導かれる単位を2種以上含有していてもよく、また他の重合性単量体から導かれる単位を2種以上含有していてもよい。
本発明で用いられるエチレン系共重合体のメルトフローレート(MFR:ASTM D1238;190℃、2.16kg荷重下)は、0.01〜100g/10分、好ましくは0.05〜50g/10分であることが望ましい。
またエチレン系共重合体のガラス転移点Tgは−50℃以下であることが好ましく、密度は0.860〜0.900g/cm3 であることが好ましい。
【0142】
エチレン系共重合体(B-1) としては、具体的には、エチレン・プロピレンランダム共重合体、エチレン・1-ブテンランダム共重合体、エチレン・プロピレン・1-ブテンランダム共重合体、エチレン・1-ヘキセンランダム共重合体、エチレン・1-オクテンランダム共重合体などが挙げられる。
これらのうちでは、エチレン・プロピレンランダム共重合体、エチレン・1-ブテンランダム共重合体、エチレン・1-ヘキセンランダム共重合体、エチレン・1-オクテンランダム共重合体が好ましく用いられる。
上記エチレン系共重合体を2種以上併用してもよい。
【0143】
本発明で用いられるエチレン系共重合体(B-1) 、たとえばバナジウム系触媒、チタン系触媒、メタロセン系触媒などを用いる方法あるいはリビングアニオン重合法などの従来公知の方法により製造することができる。
【0144】
(B-2 )スチレン系ブロック共重合体
本発明では、メルトフローレートが0.01〜10g/10分好ましくは0.05〜7g/10分特に好ましくは0.05〜5g/10分のスチレン系ブロック共重合体(B-2) が用いられる。
【0145】
このスチレン系ブロック共重合体は、熱可塑性エラストマーであることが望ましく、具体的には芳香族ビニルブロック重合単位と共役ジエンから導かれるブロック重合単位とを含み、芳香族ビニルから導かれる単位を、10〜60重量%好ましくは15〜50重量%の量で含有することが望ましい。
なお芳香族ビニル単位の含有量は、赤外線分光法、NMR分光法などの常法によって測定することができる。
【0146】
上記芳香族ビニルとしては、具体的に、スチレン、α−メチルスチレン、3-メチルスチレン、p-メチルスチレン、4-プロピルスチレン、4-ドデシルスチレン、4-シクロヘキシルスチレン、2-エチル-4-ベンジルスチレン、4-(フェニルブチル)スチレン、1-ビニルナフタレン、2-ビニルナフタレンなどが挙げられる。これらのうちでも、スチレンが好ましい。
また共役ジエンとしては、ブタジエン、イソプレン、ペンタジエン、2,3-ジメチルブタジエンおよびこれらの組合せなどが挙げられる。これらのうち、イソプレンまたはブタジエンとイソプレンとの組み合わせが好ましい。
またこのようにブタジエン・イソプレン共重合単位からなる共役ジエンブロック重合単位は、ブタジエンとイソプレンとのランダム共重合単位、ブロック共重合単位またはテーパード共重合単位のいずれであってもよい。
本発明では、この共役ジエンブロック重合単位中の炭素−炭素二重結合の一部または全部が水添されていてもよい。
【0147】
このようなスチレン系ブロック共重合体(B-2) としては、具体的に、
スチレン・イソプレンブロック共重合体(SI)およびその水添物(SEP)、スチレン・ブタジエンブロック共重合体(SB)およびその水添物(SEB)、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体(SIS)およびその水添物(SEPS;ポリスチレン・ポリエチレン/プロピレン・ポリスチレンブロック共重合体)、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体(SBS)およびその水添物(SEBS;ポリスチレン・ポリエチレン/ブチレン・ポリスチレンブロック共重合体)などが挙げられる。
これらのうちでも、SIS、SEPS、SBS、SEBSなどが好ましい。
上記のスチレン系ブロック共重合体は2種以上組合わせて用いてもよい。
【0148】
本発明では、エチレン系共重合体(B-1) とスチレン系ブロック共重合体(B-2)とを任意の割合で併用することもでき、これらを併用してポリプロピレン系樹脂組成物を調製する際には、(B-1) と(B-2) とを別々に用いてもよく、また予めブレンドあるいは混練して用いてもよい。
【0149】
上記のようなエチレン系共重合体(B-1) およびスチレン系ブロック共重合体(B-2) は、前記プロピレン重合体(A)との相溶性に優れており、これら各成分からは剛性に優れるとともに耐衝撃性にも優れ、しかも流動性にも優れたポリプロピレン系樹脂組成物を形成することができる。
【0150】
(C)無機充填材
上記のような各成分からポリプロピレン系樹脂組成物を形成する際には、必要に応じて無機充填材を用いることができる。
【0151】
無機充填材として、具体的には、
微粉末タルク、カオリナイト、焼成クレー、バイロフィライト、セリサイト、ウォラスナイトなどの天然珪酸または珪酸塩、沈降性炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムなどの炭酸塩、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどの水酸化物、酸化亜鉛、亜鉛華、酸化マグネシウムなどの酸化物、含水珪酸カルシウム、含水珪酸アルミニウム、含水珪酸、無水珪酸などの合成珪酸または珪酸塩などの粉末状充填剤、
マイカなどのフレーク状充填剤、
塩基性硫酸マグネシウムウィスカー、チタン酸カルシウムウィスカー、ホウ酸アルミニウムウィスカー、セピオライト、PMF(Processed Mineral Fiber)、ゾノトライト、チタン酸カリ、エレスタダイトなどの繊維状充填剤、
ガラスバルン、フライアッシュバルンなどのバルン状充填剤などを用いることができる。
【0152】
本発明では、これらのうちでもタルクが好ましく用いられ、特に平均粒径0.01〜10μmの微粉末タルクが好ましく用いられる。
なおタルクの平均粒径は、液相沈降方法によって測定することができる。
【0153】
また本発明で用いられる無機充填材特にタルクは、無処理であっても予め表面処理されていてもよい。この表面処理に例としては、具体的には、シランカップリング剤、高級脂肪酸、脂肪酸金属塩、不飽和有機酸、有機チタネート、樹脂酸、ポリエチレングリコールなどの処理剤を用いる化学的または物理的処理が挙げられる。このような表面処理が施されたタルクを用いると、ウェルド強度、塗装性、成形加工性にも優れたポリプロピレン組成物を得ることができる。
【0154】
上記のような無機充填材は、2種以上併用してもよい。
また本発明では、このような無機充填材とともに、ハイスチレン類、リグニン、再ゴムなどの有機充填剤を用いることもできる。
(D)核剤
核剤としては、従来知られている種々の核剤が特に制限されることなく用いられる。中でも、下記に挙げる核剤を好ましい核剤として例示することができる。
【0155】
【化8】
【0156】
(式中、R1は酸素、硫黄、もしくは炭素数1〜10の炭化水素基であり、R2、R3は水素もしくは炭素数1〜10の炭化水素基であり、R2、R3は同種であっても異種であってもよく、R2同士、R3同士またはR2とR3が結合して環状となっていてもよく、Mは、1〜3価の金属原子であり、nは1〜3の整数である。)
具体的には、ナトリウム-2,2'-メチレン-ビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル) フォスフェート、ナトリウム-2,2'-エチリデン-ビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル) フォスフェート、リチウム-2,2'-メチレン-ビス-(4,6-ジ-t-ブチルフェニル) フォスフェート、リチウム-2,2'-エチリデン-ビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル) フォスフェート、ナトリウム-2,2'-エチリデン-ビス(4-i-プロピル-6-t-ブチルフェニル) フォスフェート、リチウム-2,2'-メチレン-ビス(4-メチル-6-t-ブチルフェニル) フォスフェート、リチウム-2,2'-メチレン-ビス(4-エチル-6-t-ブチルフェニル) フォスフェート、カルシウム-ビス[2,2'-チオビス(4-メチル-6-t-ブチルフェニル) フォスフェート] 、カルシウム-ビス[2,2'-チオビス(4-エチル-6-t-ブチルフェニル) フォスフェート] 、カルシウム-ビス[2,2'-チオビス-(4,6-ジ-t-ブチルフェニル) フォスフェート] 、マグネシウム-ビス[2,2'-チオビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル) フォスフェート] 、マグネシウム-ビス[2,2'-チオビス-(4-t-オクチルフェニル) フォスフェート] 、ナトリウム-2,2'-ブチリデン-ビス(4,6-ジ-メチルフェニル) フォスフェート、ナトリウム-2,2'-ブチリデン-ビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル) フォスフェート、ナトリウム-2,2'-t-オクチルメチレン-ビス(4,6-ジ-メチルフェニル) フォスフェート、ナトリウム-2,2'-t-オクチルメチレン-ビス(4,6-ジ-t- ブチルフェニル) フォスフェート、カルシウム- ビス-(2,2'-メチレン-ビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル) フォスフェート) 、マグネシウム-ビス[2,2'-メチレン-ビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル) フォスフェート] 、バリウム-ビス[2,2'-メチレン-ビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル) フォスフェート] 、ナトリウム-2,2'-メチレン-ビス(4-メチル-6-t-ブチルフェニル) フォスフェート、ナトリウム-2,2'-メチレン-ビス(4-エチル-6-t-ブチルフェニル) フォスフェート、ナトリウム(4,4'-ジメチル-5,6'-ジ-t-ブチル-2,2'-ビフェニル) フォスフェート、カルシウム-ビス[(4,4'-ジメチル-6,6'-ジ-t-ブチル-2,2'-ビフェニル) フォスフェート] 、ナトリウム-2,2'-エチリデン-ビス(4-m-ブチル-6-t-ブチルフェニル) フォスフェート、ナトリウム-2,2'-メチレン-ビス(4,6-ジ-メチルフェニル) フォスフェート、ナトリウム-2,2'-メチレン-ビス(4,6-ジ-エチルフェニル) フォスフェート、カリウム-2,2'-エチリデン-ビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル) フォスフェート、カルシウム-ビス[2,2'-エチリデン-ビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル) フオスフェート] 、マグネシウム-ビス[2,2'-エチリデン-ビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル) フォスフェート] 、バリウム-ビス[2,2'-エチリデン-ビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル) フォスフェート] 、アルミニウム-トリス[2,2'-メチレン-ビス(4,6-ジ-t-ブチルフェル)フォスフェート] およびアルミニウム-トリス[2,2'-エチリデン-ビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル) フォスフェート] およびこれらの2個以上の混合物を例示することができる。特にナトリウム-2,2'-メチレン-ビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)フォスフェートが好ましい。
【0157】
【化9】
【0158】
(式中、R4は水素もしくは炭素数1〜10の炭化水素基であり、Mは、1〜3価の金属原子であり、nは1〜3の整数である。)
具体的には、ナトリウム-ビス(4-t-ブチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム-ビス(4-メチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム-ビス(4-エチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム-ビス(4-i-プロピルフェニル)フォスフェート、ナトリウム-ビス(4-t-オクチルフェニル)フォスフェート、カリウム-ビス(4-t-ブチルフェニル)フォスフェート、カルシウム-ビス(4-t-ブチルフェニル)フォスフェート、マグネシウム-ビス(4-t-ブチルフェニル)フォスフェート、リチウム-ビス(4-t-ブチルフェニル)フォスフェート、アルミニウム-ビス(4-t-ブチルフェニル)フォスフェートおよびこれらの2種以上の混合物を例示することができる。特にナトリウム-ビス(4-t-ブチルフェニル) フォスフェートが好ましい。
【0159】
【化10】
【0160】
(式中、R5は水素もしくは炭素数1〜10の炭化水素基である。)
具体的には、1,3,2,4-ジベンジリデンソルビトール、1,3-ベンジリデン-2,4-p-メチルベンジリデンソルビトール、1,3-ベンジリデン-2,4-p-エチルベンジリデンソルビトール、1,3-p-メチルベンジリデン-2,4-ベンジリデンソルビトール、1,3-p-エチルベンジリデン-2,4-ベンジリデンソルビトール、1,3-p-メチルベンジリデン-2,4-p-エチルベンジリデンソルビトール、1,3-p-エチルベンジリデン-2,4-p-メチルベンジリデンソルビトール、1,3,2,4-ジ(p-メチルベンジリデン)ソルビトール、1,3,2,4-ジ(p-エチルベンジリデン)ソルビトール、1,3,2,4-ジ(p-n-プロピルベンジリデン)ソルビトール、1,3,2,4-ジ(p-i-プロピルベンジリデン)ソルビトール、1,3,2,4-ジ(p-n-ブチルベンジリデン)ソルビトール、1,3,2,4-ジ(p-s-ブチルベンジリデン)ソルビトール、1,3,2,4-ジ(p-t-ブチルベンジリデン)ソルビトール、1,3,2,4-ジ(2',4'-ジメチルベンジリデン)ソルビトール、1,3,2,4-ジ(p-メトキシベンジリデン)ソルビトール、1,3,2,4-ジ(p-エトキシベンジリデン)ソルビトール、1,3-ベンジリデン-2-4-p-クロルベンジリデンソルビトール、1,3-p-クロルベンジリデン-2,4-ベンジリデンソルビトール、1,3-p-クロルベンジリデン-2,4-p-メチルベンジリデンソルビトール、1,3-p-クロルベンジリデン-2,4-p-エチルベンジリデンソルビトール、1,3-p-メチルベンジリデン-2,4-p-クロルベンジリデンソルビトール、1,3-p-エチルベンジリデン-2,4-p-クロルベンジリデンソルビトールおよび1,3,2,4-ジ(p-クロルベンジリデン)ソルビトールおよびこれらの2個以上の混合物を例示でき、特に1,3,2,4-ジベンジリデンソルビトール、1,3,2,4-ジ(p-メチルベンジリデン)ソルビトール、1,3,2,4-ジ(p-エチルベンジリデン)ソルビトール、1,3-p-クロルベンジリデン-2,4-p-メチルベンジリデンソルビトール、1,3,2,4-ジ(p-クロルベンジリデン)ソルビトールおよびそれらの2種以上の混合物が好ましい。
【0161】
その他の核剤としては、芳香族カルボン酸や脂肪族カルボン酸の金属塩を例示でき、具体的には、安息香酸アルミニウム塩、p-t-ブチル安息香酸アルミニウム塩やアジピン酸ナトリウム、チオフェネカルボン酸ナトリウム、ピローレカルボン酸ナトリウムなどを挙げられる。
【0162】
ポリプロピレン系樹脂組成物
本発明に係るポリプロピレン系樹脂組成物は、上記のような
(A)プロピレン系重合体を、40〜90重量%、好ましくは30〜80重量%、より好ましくは30〜70重量%、特に好ましくは30〜65重量%の量で、
(B)エチレン系共重合体(B-1) および/またはスチレン系ブロック共重合体を、10〜35重量%、好ましくは13〜35重量%、さらに好ましくは15〜30重量%、特に好ましくは20〜30重量%の量で、
(C)無機充填材を0〜30重量%、好ましくは0〜25重量%の量で、
(D)核剤を0〜10重量%、好ましくは0〜5重量%、より好ましくは0〜3重量%、特に好ましくは0〜1重量%の量で含有している。
【0163】
上記のような各成分から形成される本発明に係るポリプロピレン系樹脂組成物は、耐熱性および剛性に優れるとともに、耐衝撃性特に低温での耐衝撃性にも優れている。特に本発明では、エチレン含量の少ないゴム成分を含むプロピレン系重合体(A)を用いてポリプロピレン系樹脂組成物を形成しており、優れた成形性特に射出成形性を示すことができ、具体的にフローマークの目立ちにくい射出成形品を形成することができる。
【0164】
本発明に係るポリプロピレン系樹脂組成物は、上記のような各成分に加えて本発明の目的を損なわない範囲であれば、必要に応じて、他の樹脂類、他の熱可塑性エラストマー、各種添加剤などを含有していてもよい。
【0165】
たとえば他の樹脂類としては、熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂を用いることができ、具体的には、ポリ1-ブテンなどのα-オレフィン単独重合体または共重合体、上記成分以外のα-オレフィンとビニル化合物との共重合体、無水マレイン酸変性ポリプロピレンなどの変性オレフィン重合体、ナイロン、ポリカーボネート、ABS、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリフェニレンオキサイド、石油樹脂、フェノール樹脂などを用いることができる。
【0166】
他のエラストマーとしては、前記(B)以外のオレフィン系エラストマーすなわちオレフィンを主成分とする非晶性弾性共重合体、オレフィン系熱可塑性エラストマー、共役ジエン系ゴムなどを挙げることができる。
【0167】
また添加剤としては、核剤、酸化防止剤、塩酸吸収剤、耐熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、帯電防止剤、難燃剤、顔料、染料、分散剤、銅害防止剤、中和剤、発泡剤、可塑剤、気泡防止剤、架橋剤、過酸化物などの流れ性改良剤、ウェルド強度改良剤などを用いることができる。
【0168】
本発明に係るポリプロピレン系樹脂組成物は、上記のような各成分を同時に、または逐次的にたとえばヘンシェルミキサー、V型ブレンダー、タンブラーブレンダー、リボンブレンダーなどに装入して混練した後、単軸押出機、多軸押出機、ニーダー、バンバリーミキサーなどで溶融混練することによって得られる。
【0169】
これらのうちでも、多軸押出機、ニーダー、バンバリーミキサーなどの混練性能に優れた装置を使用すると、各成分がより均一に分散された高品質のポリプロピレン系樹脂組成物を得ることができて好ましい。
【0170】
本発明では、上記のようにポリプロピレン系樹脂組成物を調製する時には、各成分を優れた分散性で混練することができる。
本発明に係るポリプロピレン系樹脂組成物は、公知の成形方法を特に限定することなく採用して種々の形状の成形品に成形することができる。
【0171】
これらのうちでも、射出成形品に成形することが好ましい。
ポリプロピレン系樹脂組成物の射出成形は、通常200〜250℃の樹脂温度で、また得られる射出成形品の形状にもよるが通常800〜1400kg/cm2の射出圧で射出成形される。
【0172】
本発明に係るポリプロピレン系樹脂組成物は、射出成形時の流動性などの成形性に優れている。特に本発明に係るポリプロピレン系樹脂組成物からはフローマークの目立ちにくい外観に優れた射出成形品を得ることができる。
【0173】
このような本発明に係るポリプロピレン系樹脂組成物の射出成形品は、広範な用途に利用することができ、たとえばハウジング、洗濯槽などの家電用途、一軸延伸フィルム、二軸延伸フィルム、インフレーションフィルムなどのフィルム用途、カレンダー成形、押出成形などによるシート用途、バッグ、レトルト容器、コンテナなどの容器用途、たとえばトリム、インパネ、コラムカバーなどの自動車内装用途、フェンダー、バンパー、サイドモール、マッドガード、ミラーカバーなどの自動車外装用途、一般雑貨用途などに好適に利用することができる。
【0174】
上記のうちでも、剛性、耐熱性および耐衝撃性のいずれにも優れ、外観にも優れている特性を有効に利用しうる用途たとえばフェンダー、バンパー、サイドモール、マッドガード、ミラーカバーなどの自動車内外装部品、ハウジング、洗濯槽等の家電用部品、バッグ、コンテナ等の容器用材として好適に用いることができる。
【0175】
【発明の効果】
本発明に係るポリプロピレン系樹脂組成物は、剛性、耐熱性に優れるとともに耐衝撃性にも優れている。また本発明に係るポリプロピレン系樹脂組成物は、成形性特に射出成形性に優れており、フローマークの目立たない射出成形品を形成することができる。
【0176】
【実施例】
次に本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0177】
なお下記実施例において、各物性は以下のようにして測定した。
(1)メルトフローレート(MFR):ASTM C1238に準拠して、230℃、2.16kg荷重条件下で測定した。
(2)曲げ弾性率(FM) ASTM C790に準拠して、厚さ1/8インチの試験片を用いて、スパン間51mm、曲げ速度20mm/分の条件下で測定した。(3)アイゾット衝撃強度(IZ) ASTM D256に準拠して、厚さ1/4インチの試験片(後ノッチ)を用いて、23℃で測定した。
【0178】
(4)外観
射出成形された角板(タテ30cm×ヨコ12cm×厚さ2mm)の外観(フローマーク)の良し悪しを目視により判断した。
◎…フローマークなしあるいは極めて目立ちにくい
○…フローマーク目立ちにくい
△…フローマークやや目立つ
×…フローマーク目立つ
【0179】
【実施例1〜2】
表1に示すような成分(A)、およびエチレン系共重合体(B)、無機充填材(C)としてのタルクを表2に示すような量で用いて、200℃で溶融混練して得られたポリプロピレン系樹脂組成物を調製した。
【0180】
得られたポリプロピレン系樹脂組成物を、樹脂温度200℃、射出圧1000kg/cm2、金型温度40℃の条件下で射出成形した。
得られた射出成形品の曲げ試験、耐衝撃強度、外観を評価した。結果を表2に示す。
【0181】
【比較例1】
実施例1において、表1に示すような各成分を表2に示すような量で用いて組成物を得た。実施例1と同様にして射出成形を行った。結果を表2に示す。
【表1】
【表2】
【実施例3〜4】
表3および表4に示すような成分(A)、およびエチレン系共重合体(B)、核材(D)を表5に示すような量で用いて耐熱安定剤を加えた後、160℃で溶融混練してポリプロピレン系樹脂組成物を調製した。ポリプロピレン系樹脂組成物のMFRを表5に示す。
【0182】
得られたポリプロピレン系樹脂組成物を、樹脂温度200℃、射出圧1000kg/cm2、金型温度40℃の条件下で射出成形した。
得られた射出成形品の曲げ試験、耐衝撃強度、熱変形温度、ロックウェル硬度を評価した。結果を表5に示す。
表中、熱変形温度(HDT)は、ASTM D648(4.6kg/cm2下)に準拠して測定した。硬度(HR)は、ASTM D785に準拠して測定した。(Rスケール)
【比較例2〜6】
実施例3において、表3および表4に示すような各成分を表5に示すような量で用いて組成物を得た。実施例1と同様にして射出成形を行った。結果を表5に示す。
【表3】
【表4】
【表5】
【表6】
上記実施例で用いたプロピレン系重合体(A)としてのプロピレン系ブロック共重合体(A−3)とプロピレン、エチレン共重合体(A−8)の製造例を1例ずつ示す。
【製造例1】
[プロピレン系ブロック共重合体(A−3)の製造]
「固体状チタン触媒成分の調製」
無水塩化マグネシウム95.2グラム、デカン442ミリリットルおよび2-エチルヘキシルアルコール390.6グラムを130℃で2時間加熱反応を行なって均一溶液とした後、この溶液中に無水フタル酸21.3グラムを添加し、さらに、130℃にて1時間攪拌混合を行ない、無水フタル酸を溶解させた。このようにして得られた均一溶液を室温に冷却した後、−20℃に保持した四塩化チタン400ミリリットル中にこの均一溶液の150ミリリットルを1時間にわたって滴下装入した。装入終了後、この混合液の温度を4時間かけて110℃に昇温し、110℃に達したところでフタル酸ジイソブチル(DIBP)10.44グラムを添加し、これより2時間同温度にて攪拌保持した。2時間の反応終了後、熱濾過にて固体部を採取し、この固体部を550ミリリットルの四塩化チタンに再懸濁させた後、再び110℃で2時間、加熱反応を行なった。反応終了後、再び熱濾過にて固体部を採取し、110℃のデカンおよびヘキサンにて溶液中に遊離のチタン化合物が検出されなくなるまで充分洗浄した。以上の操作によって調製した固体状チタン触媒成分はデカンスラリーとして保存したが、この内の一部を触媒組成を調べる目的で乾燥した。このようにして得られた固体状チタン触媒成分の組成は、チタン2.3重量%、塩素61重量%、マグネシウム19重量%、DIBP12.5重量%であった。
「固体状チタン触媒成分の予備重合」
400ミリリットルの攪拌機付き四ツ口ガラス製反応器に窒素雰囲気下精製ヘキサン100ミリリットル、トリエチルアルミニウム10ミリモル、ジシクロペンチルジメトキシシラン(DCPMS)2.0ミリモルおよび上記固体状チタン触媒成分をチタン原子換算で1.0ミリモル添加した後、3.2リットル/時間の速度でプロピレンを1時間この反応器に供給した。重合温度は20℃に保った。
プロピレンの供給が終了したところで反応器内を窒素で置換し、上澄液の除去および精製ヘキサンの添加からなる洗浄操作を2回行なった後、精製ヘキサンで再懸濁して触媒瓶に全量移液して予備重合触媒を得た。
「重合」
内容積17リットルのオートクレーブにをプロピレン3Kg、水素120リットルを装入し、60℃に昇温した後、トリエチルアルミニウム15ミリモル、ジシクロペンチルジメトキシシラン(DCPMS)15ミリモル及び予備重合触媒をチタン原子換算で0.05ミリモルTi装入した。70℃に昇温した後これを35分保持してプロピレンホモ重合を行った。
ホモ重合終了後、ベントバルブを開け、未反応のプロピレンを重合器内圧力が常圧になるまで脱圧した。
脱圧終了後、引き続いてエチレンとプロピレンの共重合を行った。即ち、エチレンを150Nl/hr、プロピレンを1050Nl/hrの速度で重合器に供給した。重合器内の圧力が10kg/cm2・Gとなるように重合器のベント開度を調節した。温度は70℃に保持し、80分間重合を行った。少量のエタノールを添加することで重合反応を停止し、重合器内の未反応ガスをパージし、生成した白色粉末を減圧下、80℃で乾燥した。
得られた白色粉末の収量は、2,460gであり、嵩比重は0.44g/mlであた。表1に示す。
【製造例2】
[プロピレン・エチレン共重合体(A−8)の製造]
「重合」
容量約2.5リットルの5つ口ガラス製反応器に窒素雰囲気下、精製トルエン1.5リットルを入れ、窒素の供給を止めた後エチレンを45リットル/時間の速度で、プロピレンを255リットル/時間の速度で、水素を0.8リットル/時間の速度で供給しガスを溶解飽和させた。
これを70℃に昇温させつつトリエチルアルミニウムを3ミリモル、ジシクロペンチルジメトキシシランを3ミリモル、固体状チタン触媒成分をチタン原子換算で0.0375ミリモル装入し70℃で1時間保持することによりプロピレンとエチレンの共重合を行った。この間、上記の速度で、プロピレン、エチレン、水素を供給し続け、未反応ガスは排ガスラインに導くことで常圧を保った。
イソブチルアルコールを添加することで重合を停止し、反応器内を窒素で置換した後内容液を15リットルのメタノール中に投入し、ポリマーを析出させた。これを濾別後、減圧乾燥してプロピレン・エチレン共重合体57.6グラムを得た。
該重合体の組成は、エチレン単位24モル%、極限粘度[η]は4.0dl/gであった。
Claims (5)
- (A)(1) 極限粘度(135℃デカリン中)[η]が0.8〜5.0dl/gである64℃デカン不溶成分;99〜60重量%と、
(2) 極限粘度(135℃デカリン中)[η]が2.0〜20dl/gであり、
エチレンから導かれる単位を5〜29モル%の量含有する、
64℃デカン可溶成分;1〜40重量%と
からなるプロピレン系重合体;40〜90重量%、
(B)(B-1) 極限粘度(135℃デカリン中)[η]が1.5〜3.0dl/gであるエチレン系共重合体および/または
(B-2) メルトフローレートが0.01〜10g/10分であるスチレン系ブロック共重合体;10〜35重量%、
(C)無機充填材;0〜25重量%、および
(D)核剤;0〜10重量%
からなることを特徴とするポリプロピレン系樹脂組成物。 - 請求項1に記載のポリプロピレン系樹脂組成物からなる射出成形品。
- 射出成形品が自動車内外装部品であることを特徴とする請求項2に記載の射出成形品。
- 射出成形品が家電製品用部品であることを特徴とする請求項2に記載の射出成形品。
- 射出成形品が各種容器用材であることを特徴とする請求項2に記載の射出成形品。
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