JP3690495B2 - 建物の構築方法および建物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ビルなどの建物を構築するための方法、および、建物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
周知のように、上部構造が基礎杭によって支持された建物において、杭と建物基礎(上部構造の下部)との間にピン機構を有する応力伝達装置を設置することによって、上部構造から基礎杭へ軸力を伝達するとともに、基礎杭から上部構造への曲げモーメントの伝達を防ぐ技術が採用されつつある。このような応力伝達装置を用いることにより、杭体の曲げ応力を低減したり、建物基礎の応力を低減することができ、杭を含む建物の耐震安全性を向上しつつコストダウンを図ることができる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このように応力伝達装置を用いた工法は、応力伝達装置を用いることによるコストアップや、建物自重を支持すべき応力伝達装置が特殊な材料(ダクタイル鋳鉄やモリブテン鋼)によって形成されることに対する抵抗感等から、未だ社会一般に普及したと言えない状況にある。
【0004】
特に、地下階のある建物を施工する際には、工期短縮および作業スペースの縮小に効果的な逆打ち工法を採用することが有効であるが、この場合に、上述のような応力伝達装置を用いると、柱位置に杭支持された構真柱(地下部の柱鉄骨)を切断し、上部躯体をジャッキアップして応力伝達機構を挿入する作業が必要となる。このため、工事の安全性や施工性の面で、より合理的な工法が求められている。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、ピン機構を有する応力伝達装置を用いた場合と同等のモーメント低減効果を確保しつつ、逆打ち工法を用いて安全かつ合理的に施工を行うことができる建物の構築方法および建物を提供することを課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために本発明においては以下の手段を採用した。
請求項1記載の建物の構築方法は、地下部を有する上部構造が、基礎杭によって支持された構成の建物を構築するための方法であって、
建物設置対象位置の地盤内に、前記地下部を構成する柱材を立設しつつ、前記基礎杭を、前記柱材の少なくとも下端部と一体化した状態で設置し、
前記柱材の上端部に支持させて前記上部構造を構成する床構造を構築し、しかる後に、該床構造の下方の地盤を掘削して、該床構造下方に前記上部構造の地下部を形成していく構成となっており、
前記柱材として、柱材本体の中央部の周囲に外嵌された鋼管と、該鋼管と前記柱材本体との間に充填されたコンクリートよりなる拡径部が設けられたものを用い、
該拡径部を、前記基礎杭に比較してその径寸法が小となるように形成しておくとともに、前記柱材の立設時には、その下端部が前記基礎杭と一体化し、その上端部が前記上部構造の地下部と一体化するように位置させることを特徴としている。
【0007】
このような構成により、この建物の構築方法においては、柱材の立設作業以降は、通常の逆打ち工法と同一手順で施工を行うことができる。さらに、施工後に、上部構造の地下部と基礎杭の杭頭部との間に位置することとなる拡径部は、基礎杭よりもその径が小さく、断面性能が小さいために、完全な剛接合としては機能せず、基礎杭と上部構造との間をピンに近い状態で接合することとなる。
【0009】
加えて、拡径部を、柱材本体の中央部の周囲に外嵌された鋼管と、該鋼管と前記柱材本体との間に充填されたコンクリートにより形成するので、高軸力にも安定して対応できるようにすることができるし、拡径部内のコンクリートは、気中で打設することができる。
【0010】
請求項2記載の建物の構築方法は、請求項1記載の建物の構築方法であって、
前記柱材を立設するにあたっては、前記拡径部の周囲の一定領域に、該拡径部と前記基礎杭を形成するコンクリートとの付着を防止するための緩衝材を設けておくことを特徴としている。
【0011】
このような構成により、拡径部における可撓長さを所定の長さに確保することができる。
【0012】
請求項3記載の建物の構築方法は、請求項1または2記載の建物の構築方法であって、
前記鋼管と前記柱材本体との間に充填されたコンクリートを、その下面の中央部が下方に向けて凸になるように打設することを特徴としている。
【0013】
このような構成により、柱材を立設したまま、杭コンクリートの打設を行う際における杭コンクリートの充填性を確保することができる。
【0014】
請求項4記載の建物は、地盤内に設置された基礎杭と、該基礎杭によって支持された上部構造とを備え、
前記基礎杭の杭頭部と前記上部構造の下面とが互いに上下に離間して位置し、
上部構造の少なくとも下部を構成する柱材は、その下端部が、前記杭頭部内に埋設され、
前記柱材は、前記杭頭部と前記上部構造の下面との間に位置する部分を含む領域が、他の部分に比較してその径寸法の大きい拡径部として形成され、
前記拡径部は、鉄骨材によって形成された柱材本体の中央部の周囲に外嵌された鋼管と、該鋼管と前記柱材本体との間に充填されたコンクリートよりなり、前記基礎杭に比較して、その径寸法が小とされていることを特徴としている。
【0015】
このように、基礎杭の杭頭部と、上部構造の下面とが離間した構成とされるので、杭頭部における余盛り処理工事を省略することができる。また、上部構造の下面と基礎杭の杭頭部との間に位置することとなる拡径部は、基礎杭よりもその径が小さく、したがって、断面性能が小さいために、完全な剛接合としては機能せず、基礎杭と上部構造との間をピンに近い状態で接合することとなる。さらに、柱材が、基礎杭の杭頭部から上部構造の下面を貫通するように位置することとなり、これにより、基礎杭に引張力が生じた場合においても対応が可能となる。
【0017】
加えて、この建物においては、拡径部が、鉄骨材によって形成された柱材本体の中央部の周囲に外嵌された鋼管と、該鋼管と前記柱材本体との間に充填されたコンクリートにより形成されているので、高軸力に安定して対応することができる。
【0018】
請求項5記載の建物は、請求項4記載の建物であって、
前記鋼管は、その上端部が、前記上部構造の下面に埋設されていることを特徴としている
【0019】
このような構成により、杭に作用するせん断力を上部構造に対して伝達することができる。
【0020】
請求項6記載の建物は、請求項4または5記載の建物であって、
前記鋼管は、その下端部が、前記杭頭部を構成するコンクリートに埋設された構成とされ、
前記鋼管と前記杭頭部を構成するコンクリートの間には、これらの間の付着を防止するための緩衝材が配置されていることを特徴としている。
【0021】
このような構成により、拡径部における可撓長さを所定の長さに確保することができる。
【0022】
請求項7記載の建物は、請求項4から6のいずれかに記載の建物であって、
前記基礎杭は、場所打ちコンクリート杭とされ、
前記鋼管と前記柱材本体との間に充填されたコンクリートには、前記場所打ちコンクリート杭を構成するコンクリートに比較して高強度のものが用いられていることを特徴としている。
【0023】
このような構成により、拡径部における軸力の保持能力を確保することができる。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づいて説明する。
図9は、本発明の一実施の形態である構築方法が適用された建物1の要部の構造を示す図である。図9中に示すように、この建物1は、場所打ちコンクリート杭である基礎杭2上に上部構造3の地下部3aが位置する構成となっている。ここで、基礎杭2の杭頭部4と上部構造3の地下部3aの下面3bとは互いに上下に離間して位置している。また、上部構造3の地下部3aを構成する柱材5が、上部構造3の下面3bよりもさらに下方に突出して、その下端部5aが基礎杭2内に埋設されることによって、柱材5を介して上部構造3が基礎杭2から支持される構成となっている。
【0025】
柱材5は、柱材本体7と、柱材本体7の中央部のうちの下端部7a寄りの位置の周囲に形成された拡径部8とからなる構成とされている。この拡径部8の構成を図1から図4に拡大して示す。なお、図1は、拡径部8の近傍の状況を示す立断面図、図2は、図1におけるI−I線矢視断面図、図3は、図1におけるII−II線矢視断面図、図4は、拡径部8を含む柱材5の斜視断面図である。
【0026】
図中に示すように、基礎杭2の杭頭部4と上部構造3の地下部3aの下面3bとが互いに離間して位置することにより、基礎杭2の杭主筋9は上部構造3にまで至らずに、その上端が杭頭部4以深に配置されている。
また、柱材5の拡径部8は、基礎杭2の杭頭部4と上部構造3の地下部3aの下面3bとの間の位置を含む一定領域に位置するように配置されており、したがって、上部構造3の荷重は、拡径部8を介して基礎杭2に伝達されるようになっている。
【0027】
この拡径部8は、基礎杭2よりもその径寸法が小となるように形成されており、H型鋼からなる柱材本体7の周囲に外嵌された鋼管11と、鋼管11および柱材本体7間に充填されたコンクリートC1とを有した構成となっている。この場合、鋼管11は、その上端部11aが上部構造3の下面3bに埋設され、その下端部11bが、杭頭部4に埋設されるように配置されている。なお、鋼管11の周囲の一定領域には、鋼管11と杭頭部4を構成する杭コンクリートC2との付着を防止するための緩衝材12が配置されている。この緩衝材12は、例えば、ゴムやエラストマ系の材料によって形成されている。また、鋼管11と柱材本体7との間に打設されたコンクリートC1は、その下面C1aの平面視中央部が下方に向けて凸となるように打設されている。
【0028】
また、拡径部8内には、アンカー筋13が柱材本体7を囲むように配置されている。これらアンカー筋13は、その下端部13aが、鋼管11内のコンクリートC1に対して埋設されるとともに、その上端部13bが、鋼管11から上方に突出して、上部構造3内に至るように配置されている。
また、柱材本体7の下端部7aには、スタッドボルト14,14,…が突出状態に設けられている。
【0029】
次に、建物1の構築方法について説明する。
これには、まず、地上の現場で柱材5を形成しておく。この場合、例えば図5に示すように、柱材本体7として、上部材14と下部材15とに分割されたH型鋼からなる鉄骨材を用いることとし、下部材15に鋼管11を外嵌させ、さらに鋼管11内にアンカー筋13を配しておく。そして、この状態で鋼管11内にコンクリートC1を打設することにより、下部材15に対して拡径部8を形成する。さらに、下部材15と上部材14とを溶接等により連結することにより、柱材5を完成させる。
【0030】
その一方で、図6のように、地盤Gを掘削して基礎杭2を設置するための掘削坑16を形成する。この場合、掘削坑16内には、安定液を含む泥水17を注入しておく。そして、図7のように、掘削坑16の下部に基礎杭2を構成する鉄筋かご18を配置し、さらに、図5に示したように形成した柱材5を、掘削坑16内の所定位置に配置する。この場合、柱材5の拡径部8の鋼管11の周囲の一定領域には、所定長さに亘って緩衝材12を配置しておく。また、柱材5を掘削坑16内に配置するにあたっては、鋼管11および柱材本体7のうち拡径部8と拡径部8の上方の一定領域を覆うように、発泡ウレタンまたは養生ゴムシート(図示略)を設けておき、これにより、後述する杭コンクリートC2の打設時におけるコンクリートやのろの付着を防止するようにする。
【0031】
次に、図8に示すように、掘削坑16内に杭コンクリートC2を充填する。この場合、杭コンクリートC2は、鋼管11の上端部11aよりも所定寸法下方のレベルまで打設され、これにより、柱材5の下端部5aと基礎杭2とが一体化された状態で形成される。なお、この場合、杭コンクリートC2の余盛り処理は行わないこととする。
さらにこの後、掘削坑16のうち基礎杭2の杭頭部4よりも上方の位置を埋め戻し土20によって埋め戻す。
【0032】
次に、図9に示すように、基礎杭2の上方に連続して設置された柱材5の上端部5bに支持させて1F床構造21を構築し、この1F床構造21を作業床として利用しつつ、1F床構造21の下方の地盤Gを順次掘削して、柱7に支持させてB1F床構造22およびB2F床構造23を形成する。そして、地下部3aの下面3bを、鋼管11の上端部11aと一体化させて形成することにより、地下部3aを完成させる。すなわち、地下部3aは、逆打ち工法により形成されることとなる。
さらにこの後は、建物1のうち、1F床構造21の上方の部分を継続して構築することにより、建物1を完成させる。
【0033】
上述の建物1の構築方法においては、柱材5の立設作業以降は、通常の逆打ち工法と同一手順で施工を行うことができる。さらに、柱材5に対して基礎杭2よりも径寸法の小さい拡径部8を設けておき、施工後に、この拡径部8により、上部構造2の地下部2aと基礎杭2の杭頭部4との間が連結されるようにしたために、この拡径部8を基礎杭2に比較して断面性能が小さい半剛接合として機能させることができる。すなわち、拡径部8によりモーメント低減効果を確保しつつ、逆打ち工法を採用することができ、耐震性能を維持しながら合理的な施工をローコストに行うことができる。しかも、ピンデバイス(応力伝達装置)を用いた場合に比較しても、デバイスの調整や精度管理をする必要がないので、工期やコストの面でさらに有利となる。
【0034】
また、上述の建物1の構築方法においては、拡径部8を、柱材本体7の周囲に外嵌された鋼管11と、鋼管11と柱材本体7との間に充填されたコンクリートC1により形成したため、拡径部8を鋼管11で被覆されたコンファインドコンクリートとし、高軸力にも安定して対応させることができる。また、拡径部8内のコンクリートC1は、気中で打設されるために、品質確保が容易となり、施工管理面で有利である。
【0035】
また、柱材5を立設するにあたっては、拡径部8の周囲の一定領域に、拡径部8と基礎杭2の杭コンクリートC2との付着を防止するための緩衝材12を設けておいたために、剛性の小さい拡径部8における可撓長さを所定の長さに調整することができる。これにより、余盛りコンクリートのように施工状況によってばらつきの大きい部分の影響を排除して、設計通りの所定性能を発揮させることができる。
【0036】
また、拡径部8を形成するにあたっては、鋼管11と柱材本体7との間に充填されたコンクリートC1の下面C1aの中央部が下方に向けて凸になるように打設されているために、図8に示したように、柱材5を直立させたまま杭コンクリートC2の打設を行う際における、拡径部8の下方の杭コンクリートC2の充填性を確保することができ、施工精度を確保することができる。
【0037】
また、上述の建物1においては、基礎杭2の杭頭部4と上部構造3の下面3bとが互いに上下に離間して位置しており、基礎杭2と上部構造3との間が、柱材5の拡径部8によって連結されているために、柱材本体7と、拡径部8の鋼管11およびコンクリートC1によって軸力を負担することとなる。したがって、従来と異なり、杭頭部4の杭コンクリートC2の健全性を確保するための余盛り処理(はつり工事)を行う必要が無い。これにより、音、振動、ほこりといった劣悪環境を生じさせる元凶となっていたはつり作業がなくなるため、工期短縮とコストダウンに貢献できるのみならず、環境に優しい施工を行うことができる。また、杭主筋を上部構造にアンカーする必要がないことから施工の合理化とコストダウンとを図ることができる。
しかも、上述のように、拡径部8は、基礎杭2よりもその径が小さく、したがって、断面性能が小さいために、完全な剛接合としては機能せず、基礎杭2と上部構造3との間をピンに近い状態で接合する。このため、従来のピンデバイス(応力伝達装置)と同様の機能を得ることができる。さらに、この場合、柱材5が、基礎杭2の杭頭部4から上部構造3の下面3bを貫通するように位置することとなり、これにより、基礎杭2に引張力が生じた場合においても対応が可能となり、建物1の耐震性の向上に寄与することができる。
【0038】
さらに、上述の建物1においては、柱材5の拡径部8が、鋼管11内にコンクリートC1が充填された構成とされているために、高軸力にも安定して対応することができる。また、拡径部8が鋼管11によりせん断補強されているために、せん断補強筋が無くても高度のせん断強度を発揮することができ、安定性がよい。
【0039】
さらに、拡径部8を構成する鋼管11の上端部11aが、上部構造3の下面3bに埋設されているために、基礎杭2に作用するせん断力を鋼管11の上端部11aの支圧応力として処理することができ、安定性が高い。
【0040】
また、上述の建物1においては、基礎杭2の杭コンクリートC2がベントナイトを含む水中コンクリートであるのに対し、鋼管11と柱材本体7との間に充填されるコンクリートC1は、気中打設が可能であり、杭コンクリートC2に比較して高強度のものを容易に用いることができる。これによって、拡径部8における軸力の保持能力を確保することができる。
【0041】
次に、本実施の形態における効果を確認するために行った数値解析の結果を説明する。
この数値解析において模擬した条件は、以下の通りである。
・基礎杭は、杭径:B=1600mm、杭長:L=20mで地表からのストレート杭とする。
・基礎杭の杭頭部に杭径の小さい部分を設ける。(この部分が上記実施の形態の拡径部8に該当する。)この部分の長さ寸法は、1mで、その径寸法をB=800mmとする。
・地盤GのN値は、全ての領域で10とする。
・基礎杭の杭頭部(上記実施の形態における拡径部8の上端)に水平力1.2MNを作用させ、杭頭部を回転拘束(固定)する。
・基礎杭に取り付く地盤バネ(khB)は、建築学会基礎構造設計指針に準じて以下のように設定する。
すなわち、
khB=0.8E0B1/4(深さ方向の単位長さあたりの水平バネ)
ここに、khは、水平地盤反力係数(N/m3)、
Bは、杭の直径(m)、
E0は、地盤のヤング係数(N/m2)である。
なお、この杭と地盤バネのモデル図を、図10(a)に示す。
【0042】
また、図10(b)に、杭頭部変断面の場合(上記実施の形態のように、拡径部8を設けた場合)と全長同断面の場合(上記実施の形態における拡径部8を設け無い場合)とで、基礎杭の水平変位(横軸)と地表面からの深度(縦軸)との関係を比較したグラフを示す。また、図10(c)に、杭頭部変断面の場合と全長同断面の場合とで、基礎杭に生じる曲げモーメント(横軸)と地表面からの深度(縦軸)との関係を比較したグラフを示す。
【0043】
これらの図中に示すように、数値解析を行った結果、下記のようなことがわかった。
・杭頭部で断面を絞った場合、杭頭水平変位は1.6倍程度に増大したが、地中方向に杭径の2倍以深では、両者の差は小さい。
・杭頭部で断面を絞った場合、杭頭曲げモーメントは40%に低減され、地中最大曲げモーメントも杭頭部と同程度であった。この結果、杭体に発生する最大応力は半分以下に激減することになる。また、杭頭曲げも小さくなることから建物の上部構造躯体に基礎杭から作用する応力が減るため、基礎の設計を合理化できる。
なお、これらの結果は、地盤剛性や杭径が変化しても同様の傾向となることが確認されており、これより、上記実施の形態のような構造を採用することで、建物の地震時の安全性が格段に向上することが理解される。
【0044】
なお、上記実施の形態において、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で他の構成を採用するようにしてもよい。
例えば、柱材5を形成するにあたっては、鋼管11とコンクリートC1とアンカー筋13とを一体化してプレキャスト部材として製作しておき、これを現場で柱材本体7とグラウトなどにより一体化するようにしてもよい。
【0045】
また、鋼管11内に充填するコンクリートC1としては、高強度コンクリートを用いるようにしてもよい。
【0046】
また、鋼管11内に配置されるアンカー筋13は、鋼管11に合わせて同心円状に配してもよいが、基礎の配筋に合わせて、矩形断面柱と同様に平面視縦横配列させることも可能である。また、アンカー筋13は鋼管11に直接溶接することもできる。
【0047】
また、上記実施の形態において、鋼管11をさらに上方に延長するとともに、上部構造3の柱として鋼管を用いるようにし、これを鋼管11と一体化するようにしてもよい。この場合には、杭頭部4に発生する曲げ応力を容易に上部構造3に伝達することができる。特に、軟弱地盤や地震時に液状化が想定される地盤で、杭頭曲げ応力に対して基礎杭2を含む構造躯体に損傷を生じさせないように設計を行う際には、鋼管11を上部構造3内にアンカーしたり上部構造3の柱の鋼材と一体化することが有効である。
【0048】
また、上記実施の形態においては、逆打ち工法を採用するようにしていたが、これに限定されず、順打ち工法を採用するようにしてもよい。この場合には、柱材5の範囲を、基礎杭2の杭頭部4から上部構造3の下面3bよりやや上までのみとし、基礎杭2と上部構造3の基礎内に埋設することができる。また、上記実施の形態において、上部構造3を、地下部3aを有さない構成とし、なおかつ、基礎杭2を地表面まで構築するようにしてもよい。
【0049】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1に係る建物の構築方法においては、柱材の立設作業以降は、通常の逆打ち工法と同一手順で施工を行うことができる。さらに、柱材に対して設けておいた拡径部に、上部構造の地下部と基礎杭の杭頭部との間の半剛接合機能を発揮させ、モーメント低減効果を確保することができる。したがって、逆打ち工法を採用しつつ、耐震性能を維持しながら合理的な施工をローコストに行うことができる。しかも、ピンデバイス(応力伝達装置)を用いた場合に比較しても、デバイスの調整や精度管理をする必要がないので、工期やコストの面でさらに有利となる。
【0050】
また、請求項1に係る建物の構築方法においては、拡径部を鋼管で被覆されたコンファインドコンクリートとし、高軸力にも安定して対応させることができる。また、拡径部内のコンクリートを気中打設できるために、品質確保が容易となり、施工管理面で有利である。
【0051】
請求項2に係る建物の構築方法および請求項6に係る建物においては、拡径部の周囲の一定領域に設けておいた緩衝材によって、拡径部における可撓長さを所定の長さに調整することができ、これにより、余盛りコンクリートのように施工状況によってばらつきの大きい部分の影響を排除して、設計通りの所定性能を発揮させることができる。
【0052】
請求項3に係る建物の構築方法においては、鋼管と柱材本体との間に充填されたコンクリートの下面の中央部が下方に向けて凸になるように打設されているために、拡径部下方の杭コンクリートの充填性を確保することができ、施工精度を確保することができる。
【0053】
請求項4に係る建物においては、基礎杭の杭頭部と上部構造の下面とが互いに上下に離間して位置しており、基礎杭と上部構造との間が、柱材の拡径部によって連結されているために、柱材本体と、拡径部の鋼管およびコンクリートによって軸力を負担することとなり、杭頭部コンクリートの健全性を確保するための余盛り処理(はつり工事)を行う必要が無い。したがって、音、振動、ほこりといった劣悪環境を生じさせる元凶となっていたはつり作業がなくなるため、工期短縮とコストダウンに貢献できるのみならず、環境に優しい施工を行うことができる。また、杭主筋を上部構造にアンカーする必要がないことから施工の合理化とコストダウンとを図ることができる。さらに、拡径部を半剛接合として機能させ、従来のピンデバイス(応力伝達装置)と同様の機能を得ることができる。また、基礎杭に引張力が生じた場合に、これを柱材に負担させることが可能となり、建物の耐震性の向上に寄与することができる。
【0054】
また、請求項4に係る建物においては、柱材の拡径部が、鋼管内にコンクリートが充填された構成とされているために、高軸力にも安定して対応することができる。また、拡径部が鋼管によりせん断補強されているために、せん断補強筋が無くても高度のせん断強度を発揮することができ、安定性がよい。
【0055】
請求項5に係る建物においては、基礎杭に作用するせん断力を鋼管の上端部の支圧応力として処理することができ、安定性が高い。
【0056】
請求項7に係る建物においては、鋼管内のコンクリートが基礎杭の杭コンクリートに比較して高強度であり、拡径部における軸力の保持能力を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施の形態を模式的に示す建物の要部の立断面図である。
【図2】 図1におけるI−I線矢視断面図である。
【図3】 図1におけるII−II線矢視断面図である。
【図4】 図1から3に示した柱材の斜視断面図である。
【図5】 本発明の建物の構築方法の一工程を示す図であって、柱材を地上において製作した際の状況を示す立断面図である。
【図6】 同、地盤内に掘削坑を形成した際の状況を示す立断面図である。
【図7】 図6の次工程を示す図であって、掘削坑内に柱材を建て込んだ際の状況を示す立断面図である。
【図8】 図7の次工程を示す図であって、掘削坑内に杭コンクリートを打設し、さらに、その上方を埋め戻した際の状況を示す立断面図である。
【図9】 図8の次工程を示す図であって、立設した柱材に支持させて上部構造の地下部を形成した際の状況を示す立断面図である。
【図10】 本発明の効果を確認するために行った数値解析の概要を示す図であって、(a)は、数値解析を行うにあたって設定した杭と地盤バネの模式図、(b)は、杭頭部変断面の場合と全長同断面の場合とで、基礎杭の水平変位(横軸)と地表面からの深度(縦軸)との関係を比較したグラフ、(c)は、杭頭部変断面の場合と全長同断面の場合とで、基礎杭に生じる曲げモーメント(横軸)と地表面からの深度(縦軸)との関係を比較したグラフである。
【符号の説明】
1 建物
2 基礎杭
3 上部構造
3a 地下部
3b 下面
4 杭頭部
5 柱材
5a 下端部
7 柱材本体
7a 下端部
8 拡径部
11 鋼管
11a 上端部
11b 下端部
12 緩衝材
Claims (7)
- 地下部を有する上部構造が、基礎杭によって支持された構成の建物を構築するための方法であって、
建物設置対象位置の地盤内に、前記地下部を構成する柱材を立設しつつ、前記基礎杭を、前記柱材の少なくとも下端部と一体化した状態で設置し、
前記柱材の上端部に支持させて前記上部構造を構成する床構造を構築し、しかる後に、該床構造の下方の地盤を掘削して、該床構造下方に前記上部構造の地下部を形成していく構成となっており、
前記柱材として、柱材本体の中央部の周囲に外嵌された鋼管と、該鋼管と前記柱材本体との間に充填されたコンクリートよりなる拡径部が設けられたものを用い、
該拡径部を、前記基礎杭に比較してその径寸法が小となるように形成しておくとともに、前記柱材の立設時には、その下端部が前記基礎杭と一体化し、その上端部が前記上部構造の地下部と一体化するように位置させることを特徴とする建物の構築方法。 - 請求項1記載の建物の構築方法であって、
前記柱材を立設するにあたっては、前記拡径部の周囲の一定領域に、該拡径部と前記基礎杭を形成するコンクリートとの付着を防止するための緩衝材を設けておくことを特徴とする建物の構築方法。 - 請求項1または2記載の建物の構築方法であって、
前記鋼管と前記柱材本体との間に充填されたコンクリートを、その下面の中央部が下方に向けて凸になるように打設することを特徴とする建物の構築方法。 - 地盤内に設置された基礎杭と、該基礎杭によって支持された上部構造とを備え、
前記基礎杭の杭頭部と前記上部構造の下面とが互いに上下に離間して位置し、
上部構造の少なくとも下部を構成する柱材は、その下端部が、前記杭頭部内に埋設され、
前記柱材は、前記杭頭部と前記上部構造の下面との間に位置する部分を含む領域が、他の部分に比較してその径寸法の大きい拡径部として形成され、
前記拡径部は、鉄骨材によって形成された柱材本体の中央部の周囲に外嵌された鋼管と、該鋼管と前記柱材本体との間に充填されたコンクリートよりなり、前記基礎杭に比較して、その径寸法が小とされていることを特徴とする建物。 - 請求項4記載の建物であって、
前記鋼管は、その上端部が、前記上部構造の下面に埋設されていることを特徴とする建物。 - 請求項4または5記載の建物であって、
前記鋼管は、その下端部が、前記杭頭部を構成するコンクリートに埋設された構成とされ、
前記鋼管と前記杭頭部を構成するコンクリートの間には、これらの間の付着を防止するための緩衝材が配置されていることを特徴とする建物。 - 請求項4から6のいずれかに記載の建物であって、
前記基礎杭は、場所打ちコンクリート杭とされ、
前記鋼管と前記柱材本体との間に充填されたコンクリートには、前記場所打ちコンクリート杭を構成するコンクリートに比較して高強度のものが用いられていることを特徴とする建物。
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