JP3690390B2 - 粉体状ポリマーの固相重合方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、粉体状ポリマーの固相重合法に関する。詳しくは熱風循環型加熱炉を用いた粉体状ポリマーの固相重合法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートや液晶性ポリエステル樹脂を不活性気体中で加熱して固相重合する方法が知られており、ポリマー品質のばらつきを小さくするため、タンブラー方式、流動床方式やパドル方式が知られている。
また、皿状のトレーにポリマーを入れ、そのトレーを加熱炉に挿入し、静置状態で加熱して固相重合する方法も知られている。この方法はポリマー品質のばらつきが大きく、これを小さくするためには生産性を犠牲にしなければならないという問題を有している。この問題を解決するために伝熱体を設けたトレー中で重合する方法を本出願人は先に提案した(特許文献1参照。)。
【0003】
【特許文献1】
特許第3087430号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、タンブラー方式、流動床方式やパドル方式の装置は、構造が複雑で高価であるのみでなく、装置内部にポリマーが残り易く、品種の切り替え時に前品種の少量の混合が避けられず、また完全に掃除するには分解掃除が必要で多大な労力を要するという欠点を有している。
また、皿状のトレーにポリマーを入れ、そのトレーを加熱炉に挿入し、静置状態で行う方法は、大型の加熱炉に多数のトレーを静置して行う場合、トレーの位置による品質の振れが生じ、伝熱板を設けたトレーを用いても品質の振れを十分に小さくすることはできない。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、このような問題点を克服し、均一で安定した品質のポリマーを生産性良く製造すべく検討を重ねた結果、従来の方法では熱風の方向が一定であったものを、熱風の方向を交互に反転させながら行うことによって、大型の加熱炉に多数のトレーを静置して行っても温度分布が小さくなり、均一で安定した品質のポリマーが得られること、更に粉体状ポリマーを加熱する熱風の風洞の外側に別の熱風の風洞を設けることによって、より温度分布が小さくなり、より均一で安定した品質のポリマーが得られること、また品質が安定することによって1トレー当りの仕込み量を増加でき、また別の熱風風洞の周囲に設けた冷却用風洞を用いることによって冷却の短縮化ができることによって生産性が大巾に向上することを見出し、本発明を完成した。
【0006】
すなわち本発明は、熱風循環型加熱炉を用いて粉体状ポリマーを加熱して固相重合するにあたり、熱風の風向を交互に反転させながら粉体状ポリマーを加熱することを特徴とする粉体状ポリマーの固相重合方法を提供するものである。
【0007】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明に用いられるポリマーとしては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリエステル、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリフェニレンスルフィド等が挙げられる。中でもポリエステルが好ましく使用される。
【0008】
ここで、ポリエステルとは、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ−m−フェニレンテレフタレート、ポリ−p−フェニレンイソフタレート、ポリ−1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート等のポリエステル、p−ヒドロキシ安息香酸や2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸等の芳香族ヒドロキシカルボン酸から得られるポリエステル、更にはこれらとテレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸とハイドロキノン、レゾルシン、4,4'−ジヒドロキシジフェニル、2,6−ジヒドロキシナフタレン等の芳香族ヒドロキシ化合物とから得られる液晶性ポリエステルなどが挙げられる。
【0009】
本発明に使用される粉体状ポリマーは、粉状でもペレット状であっても良く、平均粒径が0.05〜10mm程度のものが通常使用される。
【0010】
図1は、従来法で使用される熱風循環型加熱炉を模式的に示す断面図である。(A)は縦方向の断面図、(B)は横方向の断面図である。粉体状ポリマーを入れたトレー(1)が積載された台車(2)が扉(10)を開けて熱風循環型加熱炉に搬入され、熱風風洞(6)内に静置される。上部に電気ヒーター(4)、温度センサー(5)および循環ファン(3)、冷却用のクーラー(13)が設けられ、周囲は断熱材(9)で覆われている。
熱風循環型加熱炉が小型であれば、品質の振れが小さいポリマーが得られるが、大型で多数のトレーを静置した場合、ポリマーの品質の振れを小さくすることは困難である。
【0011】
これに対して、図2は、本発明で使用される熱風循環型加熱炉を模式的に示す断面図である。(A)は縦方向の断面図、(B)は横方向の断面図である。粉体状ポリマーを入れたトレー(1)が積載された台車(2)が扉(10)を開けて熱風循環型加熱炉に搬入され、熱風風洞内に設置される。上部に電気ヒーター(4)、その前後に温度センサー(5)および循環ファン(3)が設けられている。粉体状ポリマーが静置された熱風風洞(6)の外側(この図では左右と下部)に別の熱風風洞(7)が設けられている。この熱風風洞(7)は、熱風の入口、出口は粉体状ポリマーが静置された熱風風洞(6)と連結しているが、途中は壁で仕切られており、熱風の出入りはない。更に熱風風洞の周囲を冷却用風洞(8)が設置されており、冷却用風洞と熱風風洞とは連結していない。この冷却用風洞の周囲は断熱材(9)で覆われている。冷却時、外気を冷却用空気入口(11)から吹き込み、冷却用空気出口(12)から抜き出して行われる。
【0012】
トレーを炉内に置く方法については、固定棚でも良いが、トレーが20〜200枚程度を乗せることができる台車を1〜10台使用し一括で出し入れする方が作業性、生産性の面で有利である。
【0013】
炉内のポリマーの量、トレー形状、台車の棚段形状について制限されるものではない。
1回当りに重合するポリマー量は、工業的には約200〜3,000kgである。また、1トレー当り約1〜10kg、トレー上の粉体厚みは約10〜200mmとし、トレー内部と表面の温度差が出ないように仕込むのが望ましい。
【0014】
加熱方法は電気ヒーターでも熱媒ヒーターでも良い。電気ヒーターの場合は熱媒コイル等の装置も不要となるため、設備費用が削減され好ましい。
粉体状ポリマーの加熱は、熱風の方向を交互に反転させながら行う。反転させる間隔は約10〜60分、好ましくは約20〜40分である。必ずしも等間隔で行う必要はないが、通常は等間隔で行われる。
【0015】
熱風の風向を反転させた直後は、ヒーターの加熱出力を反転前のまま変更せずに一定とする。一定出力とする間隔は通常、約5〜10分である。ヒーター前後の熱風には温度差があるため、そのまま反転させるとヒーター出力が急速に増加して温度制御が不安定になる。これを避けるために反転後に制御側になる温度センサーの温度がほぼ設定温度になるまで反転前の出力で一定にし、ほぼ設定温度になった後、自動温度制御させる。このことによって熱風方向を反転させてもほぼ一定温度の熱風とすることができる。
粉体状ポリマーの加熱は、ポリマーの種類等にもよるが、窒素置換後、通常、数時間から十数時間行われる。
【0016】
加熱終了後、冷却する。冷却方法は熱風風洞の周囲に設けた冷却用風洞に空気を吹き込んで行われる。熱媒を用いて加熱する場合は、熱媒を冷媒に切り替えて冷却する方法でも良いが、冷却用風洞に空気を吹き込んで行う方が効率的である。なお、併用することによってさらに冷却時間の短縮が図れる。
冷却後、加熱炉内を空気置換した後、固相重合したポリマーを取出す。
【0017】
【実施例】
以下、本発明の実施例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、例中の各物性は以下の方法で測定した。
【0018】
(1)流動温度:
(株)島津製作所の高下式フローテスターCFT−500型を用い、4℃/分の昇温速度で加熱された樹脂を圧力10MPa下で、内径1mm、長さ10mmのノズルから押出す時に、溶融粘度が48,000ポイズを示す時点の温度である。この温度が低いほど樹脂の流動性が大きい。
【0019】
(2)耐はんだブリスター性:
JIS K7113 1(1/2)号形小形試験片(厚さ:1.2mm)を所定の温度のH60Aはんだ(スズ60%、鉛40%)に60秒浸漬し、成形品に発泡(ブリスター)が見られる温度を測定した。温度が高いほど樹脂の耐熱性が良いことを表す。
【0020】
参考例(液晶ポリエステルの製造)
p−アセトキシ安息香酸1,304kg(7,238モル)、4,4'−ジアセトキシジフェニル651kg(2,408モル)、テレフタル酸300kg(1,806モル)、イソフタル酸100kg(602モル)を、櫂型攪拌機を有する3m3のSUS316L製重合槽に仕込み、攪拌を開始した。続いて、窒素ガス雰囲気下で、1℃/分の速度で、副生する酢酸を除去しながら300℃まで昇温、さらに300℃で60分保持した。その後、重合槽を密閉し、窒素で0.1MPaに加圧した状態でベルトクーラーで冷却しながら樹脂の抜取りをおこなった。この反応物の得量は1,600kgで収率は98%であった。これを平均粒径約0.4mmに粉砕し、流動温度が250℃の全芳香族ポリエステル(以下、「プレポリマー」と称する。)を得た。
得られたプレポリマーについて、偏光顕微鏡により液晶性を測定したところ、光学的異方性を有する溶融相を形成することが判った。
【0021】
実施例1
前述した図2に示す熱風循環型加熱炉(以下、「新型炉」と称する。)を使用し、プレポリマーの固相重合を行った。アルミ製のトレーに参考例で得たプレポリマーを各6.2kg充填しこのトレーを1台車に52枚積載し、3台車を炉に仕込んだ。炉には1Nm3/分で窒素を吹流しながら25分間置換した後、同じ窒素吹流しのもとで250℃まで平均3.8℃/分、250〜280℃まで平均0.14℃/分の速度で昇温し、更に280℃で300分保持した。昇温開始から冷却開始の間は、循環ファンの回転方向を30分毎に反転させ、熱風の方向を反転させた。その後、冷却用風洞に外気を吹込み150℃まで冷却し、次に炉内を空気置換後、固相重合品(以下、「アドバンスポリマー」と称する。)を取出した。
【0022】
炉奥の最上段、最下段及び扉側最上段、最下段のトレーからアドバンスポリマーをサンプリングし、炉内のアドバンスポリマーの流動温度の分布を測定した。残りのアドバンスポリマーについては全量ブレンドした。ブレンドしたアドバンスポリマーについては旭ガラス製ミルドガラス(REV−8)を40重量%配合し混合した後、2軸押出機(池貝鉄工(株)PCM−30)を用いて、390℃で造粒した。得られたペレットを日精樹脂工業(株)製PS40E5ASE型射出成形機を用いて、シリンダー温度400℃、金型温度130℃で射出成形を行い、耐はんだブリスター性を評価した。結果を表1に示す。
【0023】
実施例2
アルミ製のトレーにプレポリマーを各7.5kg充填した以外は実施例1と同様に行った。結果を表1に示す。
【0024】
比較例1
前述した図1に示す従来型の熱風循環型加熱炉(以下、「従来炉」と称する。)を使用し、熱風の方向を反転させずに一定方向で加熱し、冷熱媒をクーラーに通して冷却を行った以外は実施例1と同様に行った。結果を表1に示す。
【0025】
比較例2
熱風の方向を反転させずに、一定方向とした以外は実施例1と同様に行った。結果を表1に示す。
【0026】
【表1】
【0027】
実施例1と比較例1を比べると、同一処理量の場合で、アドバンスポリマーの流動温度の分布は8℃から2℃に向上、さらに耐はんだブリスター性も大巾に向上している。処理量を増やした実施例2の場合でも耐はんだブリスター性は実施例1と同等の性能を有しており、流動温度の分布は3℃と従来方法よりはるかに良いレベルである。
比較例2に熱風を反転しない場合の効果を示している。風洞の効果により比較例1の従来方法より流動温度の分布、耐はんだブリスター性ともに向上しているが実施例1の熱風を反転させて行う場合と比べると不十分なレベルにとどまっている。
冷却用風洞の影響の効果については実施例1と比較例1の冷却時間に示す通り120分から90分に短縮された。
【0028】
【発明の効果】
本発明によれば、従来の方法に比べ炉内温度の分布が小さくなり、品質が安定したポリマーを生産性良く製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来法で使用される熱風循環型加熱炉を模式的に示す断面図である。
【図2】本発明で使用される熱風循環型加熱炉を模式的に示す断面図である。
【符号の説明】
1:トレー
2:台車
3:循環ファン
4:ヒーター
5:温度センサー
6:熱風風洞
7:別の熱風風洞
8:冷却用風洞
9:断熱材
10:扉
11:冷却用空気入口
12:冷却用空気出口
13:クーラー
14:冷媒入口
Claims (5)
- 熱風循環型加熱炉を用いて粉体状ポリマーを加熱して固相重合するにあたり、熱風の風向を交互に反転させながら粉体状ポリマーを加熱することを特徴とする粉体状ポリマーの固相重合方法。
- 反転させる間隔が10〜60分である請求項1記載の固相重合方法。
- 熱風の風向を反転させた直後のヒーターの加熱出力を反転前のまま変更せずに一定とする請求項1記載の固相重合方法。
- 熱風循環型加熱炉が、粉体状ポリマーが置かれた熱風風洞の外側に別の熱風風洞を有する請求項1記載の固相重合方法。
- 熱風循環型加熱炉が熱風風洞の周囲に冷却用風洞を有し、加熱後のポリマーを冷却用風洞に空気を吹き込んで冷却する請求項1記載の固相重合方法。
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