JP3689955B2 - 板材の絞り加工装置および同加工方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、板材に対する絞り加工時での伸びの限界点手前で、板材の製品部以外の部位にスリットを形成する板材の絞り加工装置および同加工方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、板材を絞り加工する際に、板材の伸びの限界点を越えたときの割れや歪みなどを防ぐ方法として、前記伸びの限界点手前でスリットを形成する技術がある(例えば、特開昭57−50222号公報参照)。図3は、上記したスリットを形成して絞り加工を行う技術を採用した絞り加工後の板材1の斜視図であり、この板材1は、自動車におけるドアインナパネルを車室側に位置する部位から見たもので、図3中で矢印A方向がドアを車体に取付けた状態での上部側となる。上記板材1の窓枠部3におけるドア取付け時での下部側となる部位3aが、絞り加工時にて板伸び限界点を越えるため、絞り加工後にカットされる製品部以外の部位、つまり窓枠部3に沿って図示しないウインドウシールドパネルが嵌め込まれる部位5に、スリット7が形成されている。
【0003】
図4は、図3のB−B線に沿う断面に相当する部位において、板材1に対して絞り加工を施している状態を示している。この板材1は、上型9と下型11とで絞り加工がなされるもので、上型9にはセクショナルダイ13が固定され、このセクショナルダイ13の切刃13aと、下型11に形成した切刃11aとでスリット7が形成される。
【0004】
図5は、上記板材1に対する絞り加工動作を、セクショナルダイ13周辺の動作として拡大して示したものである。同図(a)は、上型9が下降して板材1に対する絞り加工が行われている状態で、このとき板材1は矢印CおよびD方向にそれぞれ伸びが発生しており、セクショナルダイ13の切刃13aは板材1の上面に接触している。上型9がさらに下降すると、同図(b)のように、上記絞り加工が継続して行われるとともに、切刃13aと切刃11aとでスリット7の加工が施される。このとき、上型9は、下死点直前で、下型11との間で板材1を挟持していない。この状態から上型9がさらに下降することで、同図(c)のように、板材1は上型9と下型11との間で挟持され、板材1に対する絞り加工が完了する。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような従来の絞り加工では、板伸び限界点の手前で、図5(b)のようにスリット7の加工を施すと、この加工によって板材1の伸びが解放され板材1が矢印E方向に戻ろうとする際に、この戻り部付近が波を打つような挙動となって波打ち部1aが発生し、これが製品部分にまで及び、この状態で絞り加工が完了すると、波打ち部1aを圧接することによる皺重なりが発生し、また、スリット形成時に発生する切粉が、板材1の戻り動作によって上型9と下型11との間に持ち込まれ、この状態で絞り加工が完了すると、前記切粉によって板材1の製品部分の表面に傷が発生し、これらによって不良品の発生を引き起こすことになる。
【0006】
そこで、この発明は、スリット形成時に板材の伸びが解放されて戻ろうとすることによる波打ち部の発生範囲を抑えて、不良品の発生を抑制することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために、この発明は、第1に、板材に対し絞り加工を行う上型および下型に、前記板材の絞り加工時での伸びの限界点手前で前記板材の製品部以外の部位にスリットを形成するスリット形成部を設け、このスリット形成部に対し前記板材の製品部側における製品部以外の部位に対応した前記上型および下型のいずれか一方に凸部を、他方にこの凸部が前記スリット加工動作に伴って入り込んで前記板材を押さえ付ける凹部を設けた構成としてある。
【0008】
第2に、第1の構成において、凸部および凹部による成形深さは、スリット形成部によるスリット加工の開始時以降の絞り加工ストロークで10mm程度に対応するものである構成としてある。
【0009】
第3に、板材に対する絞り加工時での伸びの限界点手前で、前記板材の製品部以外の部位にスリットを形成し、このスリット形成動作に伴って、前記板材の製品部側における製品部以外の部位を、上型および下型のいずれか一方に設けた凸部と他方に設けた凹部とにより押さえ付けて、前記板材に対して絞り加工を行う方法としてある。
【0010】
【発明の効果】
第1の発明または第3の発明によれば、スリット形成動作に伴って、凸部と凹部とで製品部以外の部位にて板材を押さえ付けるので、スリット形成による板材の伸びに対する解放があっても、板材の戻り動作による波打ち部は、前記凸部と凹部とによる押さえ付けにより遮られて製品部までは及ばず、不良品の発生を抑えることができる。
【0011】
第2の発明によれば、凸部および凹部による成形深さを、スリット形成部によるスリット加工の開始時以降の絞り加工ストロークで10mm程度に対応するものとすることで、波打ち部の発生範囲を確実に製品部以外の部位に抑えることが可能となる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
【0013】
図1は、この発明の実施の一形態を示す前記図4に相当する断面図で、板材1としては、前記図3に示したものと同様な自動車のドアインナパネルとする。この板材1についても、上型15と下型17とで絞り加工がなされており、下型17の外周側には、上型15との間で板材1の周縁を押さえ付けるブランクホルダ19が配置されている。
【0014】
上型15にはセクショナルダイ21が固定され、このセクショナルダイ21の切刃21aと、下型17に形成した切刃17aとでスリット7が形成される。つまり、切刃21aと切刃17aとでスリット形成部を構成することになる。上記板材1のスリット7に対して製品部側(図1中で左側)における製品部以外の部位(絞り成形後カット除去する部位)に対応したセクショナルダイ21の下面には、凸部21bが形成され、この凸部21bに対応して下型17には凹部17bが形成されている。
【0015】
図2は、上記板材1に対する絞り加工動作を、セクショナルダイ21周辺の動作として拡大して示したものである。同図(a)は、上型15が下降して板材1に対する絞り加工が行われている状態で、このとき板材1は、凸部21bにより凹部17b側に折り曲げ成形されるとともに、矢印FおよびG方向にそれぞれ伸びが発生しており、セクショナルダイ23の切刃21aについては板材1の上面に接触している。
【0016】
上型15がさらに下降すると、同図(b)のように、上記絞り加工が継続して行われ、切刃21aと切刃17aとでスリット7の加工が施されるとともに、凸部21bが凹部17b内に入り込んで板材1をさらに深く折り曲げる。このとき、凸部21bが板材1を凹部17b側に押し込んで押さえ付けることで、板材1は、上型21のP部および下型17のQ部にそれぞれ押し付けられてロックされた形となり、スリット形成による板材1の伸びに対する解放による戻りが抑えれられ、波打ち発生範囲は、下型17のロックされているQ部より図2(b)中で右側の製品部以外の部位(ウインドシールドパネルが嵌め込まれる部位)となり、不良品の発生が回避される。
【0017】
上記図2(b)の状態から、さらに上型15が下降すると、同図(c)に示すように、上型15と下型17とで板材1が挟持されるとともに、凸部21bおよび凹部17b相互間の部位についても板材1が挟持された状態となり、同図(b)におけるQ部より左側の部位が伸び状態での絞り加工となり、良好な加工面が得られるものとなる。絞り加工完了後は、板材1は、次工程に搬送されてP部とQ部との間にてカットされ、凸部21bおよび凹部17bにて加工された部位は除去される。また、凸部21bおよび凹部17bにより、板材1の戻りが抑えられているので、スリット7の加工時に発生した切粉が、上記Q部より図2(a)中で左側の製品部側に入り込むことはなく、切粉を圧接することによる板材1の表面の傷発生が回避される。
【0018】
なお、凸部21bと凹部17bとによる成形深さは、切刃21aと切刃17aとによるスリット加工の開始時から、上型15の下降ストロークで10mm程度に対応するものとすることで、波打ち部の発生範囲を確実に製品部以外の部位に抑えることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施の一形態を示す板材の絞り加工装置の断面図である。
【図2】図1の絞り加工装置における加工動作を示す動作説明図である。
【図3】絞り加工装置によって絞り加工が施されたドアインナパネルの斜視図である。
【図4】従来例を示す板材の絞り加工装置の断面図である。
【図5】図4の絞り加工装置における加工動作を示す動作説明図である。
【符号の説明】
1 板材
7 スリット
15 上型
17 下型
17a 切刃(スリット形成部)
17b 凹部
21a 切刃(スリット形成部)
21b 凸部
Claims (3)
- 板材に対し絞り加工を行う上型および下型に、前記板材の絞り加工時での伸びの限界点手前で前記板材の製品部以外の部位にスリットを形成するスリット形成部を設け、このスリット形成部に対し前記板材の製品部側における製品部以外の部位に対応した前記上型および下型のいずれか一方に凸部を、他方にこの凸部が前記スリット加工動作に伴って入り込んで前記板材を押さえ付ける凹部を設けたことを特徴とする板材の絞り加工装置。
- 凸部および凹部による成形深さは、スリット形成部によるスリット加工の開始時以降の絞り加工ストロークで10mm程度に対応するものであることを特徴とする請求項1記載の板材の絞り加工装置。
- 板材に対する絞り加工時での伸びの限界点手前で、前記板材の製品部以外の部位にスリットを形成し、このスリット形成動作に伴って、前記板材の製品部側における製品部以外の部位を、上型および下型のいずれか一方に設けた凸部と他方に設けた凹部とにより押さえ付けて、前記板材に対して絞り加工を行うことを特徴とする板材の絞り加工方法。
Priority Applications (1)
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JP00418496A JP3689955B2 (ja) | 1996-01-12 | 1996-01-12 | 板材の絞り加工装置および同加工方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP00418496A JP3689955B2 (ja) | 1996-01-12 | 1996-01-12 | 板材の絞り加工装置および同加工方法 |
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JPH09192752A JPH09192752A (ja) | 1997-07-29 |
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Family Applications (1)
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JP00418496A Expired - Lifetime JP3689955B2 (ja) | 1996-01-12 | 1996-01-12 | 板材の絞り加工装置および同加工方法 |
Country Status (1)
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1996
- 1996-01-12 JP JP00418496A patent/JP3689955B2/ja not_active Expired - Lifetime
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