JP3688414B2 - 温度式膨張弁 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、冷凍、冷蔵システムにおける蒸発器負荷量に相応して循環冷媒を制御する温度式膨張弁の感温筒に関する。
【0002】
【従来の技術】
図8に示すように、圧縮機2、凝縮器3、温度式膨張弁4、蒸発器5からなる冷凍サイクル1においては、蒸発器5の負荷の変動に対応するため、この負荷の変動を蒸発圧力と蒸発器5の出口での戻り冷媒蒸気の過熱度の変化として検知し、これらの値が一定になるように、温度式膨張弁4において、供給する液冷媒を通過させるオリフィスの開度を調整している。そして、冷媒過熱度の変化は、キャピラリチューブ6を介して温度式膨張弁4に接続されている感温筒7によって、蒸発器5の出口温度の変化として検出される。
【0003】
従来使用されている温度式膨張弁4を図9に示す。この温度式膨張弁4の本体11には、凝縮器3(図8)の出口に連通する管路A、蒸発器5(図8)の入口に連通する管路Bが形成されるとともに、弁室Cには、弁17、バネ受け18及び調整バネ19が配設される。調整バネ19の下端は調整ねじ20に当接する。
【0004】
調整ねじ20は、調整バネ19の付勢力を調整するために設けられる。調整ねじ20の雄ねじ部20bと、本体11に形成された雌ねじ部11aが螺合し、本体11に対して調整ねじ20が上下方向に移動することにより、調整バネ19の付勢力が変化する。調整ねじ20の上方には、皿バネ32及び板バネ33が設けられ、板バネ33と調整ねじ20の上端部との間にはパッキン34が介装され、調整ねじ20のねじ部からの冷媒の漏れを防止している。さらに、調整ねじ20の下方凸部20aには、調整ねじ20のストッパとして機能する止め輪35が装着される。調整ねじ20の下方にはキャップ21が位置する。このキャップ21を本体11から取り外し、調整ねじ20を回動して調整バネ19の付勢力を調整できる。
【0005】
本体11の上端面には、当金15を介してダイヤフラム13が載置され、ダイヤフラム13は、本体11の上方のダイヤフラム室Dを上方圧力室D1と、下方圧力室D2に分離するように、本体11に固定された下蓋14と上蓋12によって挟持される。当金15は、その下方に位置する連結棒16に当接する形で構成される。ダイヤフラム13の下面が当金15の上端面に接触するとともに、この当金15を介して、連結棒16の下端面が弁17に接触するように構成されているため、ダイヤフラム13に連動して弁17が上下方向に移動する。
【0006】
上方圧力室D1には、キャピラリチューブ6の一端が接続され、このキャピラリチューブ6の他端には感温筒7が接続される。感温筒7は例えば銅製として、同じ材質のキャピラリチューブ6に銅ろうまたは銀ろうによりろう付け固定される。なお、感温筒7及びキャピラリチューブ6の材質を共にステンレス鋼製とした場合には、両者を、銀ろう付け、プロジェクション溶接、TIG溶接等によって接合できる。また、下方圧力室D2と弁室Cは均圧孔31によって連通している。
【0007】
円筒状の感温筒7の内部にはストッパ28、30によって位置決めされた挿入材29が配設される、この挿入材29は、例えば、セラミック、石綿、石膏、活性炭等によって形成され、感温筒7の感度を低下させ、または調整することにより、冷凍、冷媒システムのハンチング動作を防止するようにしている。
【0008】
上記構成を有する従来の温度式膨張弁4においては、図8及び図9に示すように、感温筒7によって蒸発器5の出口の冷媒温度が検出される。蒸発器5の負荷が増加すると、蒸発器5の出口冷媒温度が上昇するため、感温筒7内に封入されたガスが膨張し、ダイヤフラム13が下降する。これによって連結棒16を介して弁17が下方に移動するため、管路Aから管路Bへ流れる冷媒の量、すなわち、凝縮器3から蒸発器5へ流れる冷媒の量が増加する。
【0009】
一方、蒸発器5の負荷が低下すると、蒸発器5の出口の冷媒温度が下降するため、感温筒7内に封入されたガスが収縮し、ダイヤフラム13が上昇する。これによって連結棒16を介して弁17が上方に移動するため、管路Aから管路Bへ流れる冷媒の量、すなわち、凝縮器3から蒸発器5へ流れる冷媒の量が減少する。 以上によって、蒸発器5の負荷変動に応じて凝縮器3から蒸発器5への冷媒量を適正に調整することができる。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記従来の温度式膨張弁においては、溶接、ろう付け等の接合技術、及び感温筒7の内部への異物混入防止等の見地から、キャピラリチューブ6及び感温筒7は、例えば、銅同士、またはステンレス鋼同士のように、同一または同種の材質で構成されているため、両者を接合するための技術が特定のものに限定されるとともに、感温筒の温度応答性がその材質の熱伝導率によって決定されるため、応答性を変化させる際の自由度に制限があった。
【0011】
そして、感温筒の温度応答性を変化させる場合には、一般的には、所定の温度応答性を得るために、適正な熱容量、熱伝導率及び吸着特性を有する挿入材を感温筒の内部に設けているが、これにより、感温筒の製造費が上昇するとともに、感温筒の選定に苦慮していた。
【0012】
そこで、本発明は、上記従来の温度式膨張弁における問題点に鑑みてなされたものであって、製造費の上昇を招くことなく、温度応答性を変化させる際の自由度の大きい感温筒を有する温度式膨張弁を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の発明は、温度式膨張弁であって、感温筒を、キャピラリチューブと接合される該キャピラリチューブの材質と同一の材質の金属部分と、当該金属部分とは材質が異なる異種金属部分とで構成されたクラッド材であって、前記金属部分との全体で所望の温度応答性を実現する異種金属を材質とする異種金属部分を用いて構成されたクラッド材により形成したことを特徴とする。
【0014】
請求項2記載の発明は、前記感温筒の内面の金属の熱伝導率を、外面の金属の熱伝導率よりも大きくしたことを特徴とする。
【0015】
請求項3記載の発明は、前記感温筒の外面の金属の熱伝導率を、内面の金属の熱伝導率よりも大きくしたことを特徴とする。
【0016】
請求項4記載の発明は、前記感温筒の内面の金属の材質が、前記キャピラリチューブの材質と同一であることを特徴とする。
【0017】
請求項5記載の発明は、前記感温筒の外面の金属の材質が、前記キャピラリチューブの材質と同一であることを特徴とする。
【0018】
そして、請求項1記載の発明によれば、温度式膨張弁の感温筒を、異種金属を圧接接合して形成されたクラッド材により構成したため、従来のように挿入材を設ける必要がないとともに、両金属の板厚、重量を変化させることにより温度応答性を変化させることができる。
【0019】
請求項2及び請求項3記載の発明によれば、内外面の異種金属の熱伝導率の差を利用して、両金属の板厚、重量を変化させることにより温度応答性を変化させることができる。
【0020】
請求項4及び請求項5記載の発明によれば、前記感温筒の内面または外面の金属の材質が、該温度式膨張弁に接続されるキャピラリチューブの材質と同一であるため、ろう付け、プロジェクション溶接、TIG溶接等によって内外面の金属を接合することができる。
【0021】
【発明の実施の形態】
次に、本発明にかかる温度式膨張弁の実施の形態の具体例を図面を参照しながら説明する。
本発明にかかる温度式膨張弁は、以下に詳述するように、感温筒をクラッド材で構成したことに特徴がある。従って、以下の実施例においては、温度式膨張部の感温筒を除く部分については、図9に示した温度式膨張弁4と同様であり、重複説明を省略する。
【0022】
図1は、本発明にかかる温度式膨張弁に使用する感温筒の第1実施例を示す断面図である。本実施例にかかる温度式膨張弁は、例えばエアコン等に使用されるものであって、ステンレス鋼製のキャピラリチューブ26が使用され、クラッド材で構成された感温筒46の外面46aが銅によって形成されるとともに、内面46bがステンレス鋼によって形成されている。そして、この感温筒46の内部に挿入されたキャピラリチューブ26が内面46bにプロジェクション溶接またはTIG溶接等によって接合される。
【0023】
このように構成された感温筒46においては、銅の熱伝導率が約3.9J/cm・S・K、ステンレス鋼の熱伝導率が約0.15J/cm・S・Kであって、両者には約26倍の伝熱差が存在する。また、銅の比熱が約0.38J/g・K、ステンレス鋼の比熱が約0.51J/g・Kであり、これらと、上記熱伝導率との関係、及び両金属の板厚、重量を変えることにより、感温筒の温度応答性を変化させる際の自由度が大きくなる。さらに、本実施例においても、キャピラリチューブ26と感温筒46との接合は、ステンレス鋼同士の接合とすることができ、従来と同様の接合方法を採ることができる。
【0024】
以下に、この温度応答性の自由度について説明する。図2は、蒸発器5の出口配管から感温筒7、46の内面への伝熱モデルを示す図である。図中、記号t、tc及びtsは、それぞれ感温筒の壁厚、銅製外面46aの壁厚、ステンレス鋼製内面46bの壁厚を示す。図2(a)は、図9に示した従来の感温筒7を銅のみによって形成した場合を示す。この場合は、蒸発器5の出口配管温度φ0が感温筒7の壁面を通過して感温筒7の内面においてφ1まで直線的に下降している。
【0025】
一方、図2(b)は、図1に示した本発明にかかる感温筒46を使用した場合を示す。この場合は、蒸発器5の出口配管温度φ0が感温筒7の壁を通過して感温筒46の内面においてφ2まで下降するが、銅で形成された外面46aの温度勾配よりステンレス鋼で形成された内面の温度勾配が大きいため、上記図2(a)に示した従来に比較して感温筒内面温度が低下し、感温筒の温度応答性がより鈍感になっている。
【0026】
さらに、図2(c)は、図2(b)の例と比較して、感温筒46の壁厚tを変化させずに、銅製外面46aの壁厚tcを薄く、ステンレス鋼製内面46bの壁厚tsをより厚く形成した場合を示している。この場合は、蒸発器5の出口配管温度φ0が感温筒7の壁面を通過して感温筒46の内面46bにおいてφ3まで下降するが、温度勾配のより大きいステンレス鋼の壁厚tsがより厚く構成されているため、感温筒内面46bの温度φ3が上記感温筒内面温度φ2よりさらに低下し、感温筒の温度応答性がさらに鈍感になっている。
【0027】
図3は、本発明にかかる温度式膨張弁に使用する感温筒の第2実施例を示す断面図である。本実施例にかかる温度式膨張弁は、例えば食品の冷凍庫等に使用されるものであって、ステンレス鋼製のキャピラリチューブ26が使用され、クラッド材で構成された感温筒56の外面56aがステンレス鋼によって形成されるとともに、内面56bが銅によって形成されている。そして、この感温筒56の内部に挿入されたキャピラリチューブ26が外面56aにプロジェクション溶接またはTIG溶接等によって接合される。
【0028】
本実施例においても、上記構成を有する感温筒56においては、上記第1実施例と同様に、外面56a、内面56bを構成する両金属の熱伝導率、比熱に差があるため、両者の板厚、重量を変えることにより、感温筒の温度応答性を変化させる際の自由度が大きくなる。さらに、本実施例においても、キャピラリチューブ26と感温筒56との接合は、ステンレス鋼同士の接合とすることができ、従来と同様の接合方法を採ることができる。
【0029】
図4は、本発明にかかる温度式膨張弁に使用する感温筒の第3実施例を示す断面図である。本実施例では、キャピラリチューブ26が銅製であって、クラッド材で構成された感温筒66の外面66aがステンレス鋼によって形成されるとともに、内面66bが銅によって形成されている。そして、この感温筒66の内部に挿入されたキャピラリチューブ26が外面66aにプロジェクション溶接またはろう付け等によって接合される。
【0030】
本実施例においても、上記構成を有する感温筒66においては、上記実施例と同様に、外面66a、内面66bを構成する両金属の熱伝導率、比熱に差があるため、両者の板厚、重量を変えることにより、感温筒の温度応答性を変化させる際の自由度が大きくすることができる。さらに、本実施例においても、キャピラリチューブ26と感温筒66との接合は、銅同士の接合とすることができる。
【0031】
図5は、本発明にかかる温度式膨張弁に使用する感温筒の第4実施例を示す断面図である。本実施例では、キャピラリチューブ26が銅製であって、クラッド材で構成された感温筒76の外面76aが銅によって形成されるとともに、内面76bがステンレス鋼によって形成されている。そして、この感温筒76の内部に挿入されたキャピラリチューブ26が外面76aにプロジェクション溶接またはろう付け等によって接合される。
【0032】
本実施例においても、上記構成を有する感温筒76においては、上記実施例と同様に、外面76a、内面76bを構成する両金属の熱伝導率、比熱に差があるため、両者の板厚、重量を変えることにより、感温筒の温度応答性を変化させる際の自由度が大きくすることができる。さらに、本実施例においても、キャピラリチューブ26と感温筒76との接合は、銅同士の接合とすることができ、従来と同様の接合方法を採ることができる。
【0033】
図6は、本発明にかかる温度式膨張弁に使用する感温筒の第5実施例を示す断面図である。本実施例では、キャピラリチューブ26がステンレス鋼製であって、クラッド材で底部86cを有する円筒状に形成された感温筒86の外面86aがステンレス鋼によって形成されるとともに、内面86bが銅によって形成されている。そして、外面86aのステンレス鋼と内面86bの銅を剥離させ、ステンレス鋼同士としてプロジェクション溶接またはTIG溶接されている。また、この感温筒86の内部に挿入されたキャピラリチューブ26が、感温筒86の上部開口に装着されたステンレス鋼製の密栓87に穿設された挿入孔87aを貫通するとともに、密栓87に銀ろうによってろう付けされている。
【0034】
本実施例においても、上記構成を有する感温筒86においては、上記実施例と同様に、外面86a、内面86bを構成する両金属の熱伝導率、比熱に差があるため、両者の板厚、重量を変えることにより、感温筒の温度応答性を変化させる際の自由度が大きくすることができる。さらに、キャピラリチューブ26と感温筒86との接合は、ステンレス鋼同士の接合とすることができ、従来と同様の接合方法を採ることができる。
【0035】
図7は、本発明にかかる温度式膨張弁に使用する感温筒の第6実施例を示す断面図である。本実施例では、キャピラリチューブ26がステンレス鋼製であって、クラッド材で底部96cを有する円筒状に形成された感温筒96の外面96aがステンレス鋼によって形成されるとともに、内面96bが銅によって形成されている。そして、外面96aのステンレス鋼と内面96bの銅及び密栓97がプロジェクション溶接、TIG溶接または銀ろう付けによって接合されている。また、この感温筒96の内部に挿入されたキャピラリチューブ26が、感温筒96の上部開口に装着された銅製またはステンレス鋼製の密栓97に穿設された挿入孔97aを貫通するとともに、密栓97に銀ろうによってろう付けされている。
【0036】
本実施例においても、上記構成を有する感温筒96においては、上記実施例と同様に、外面96a、内面96bを構成する両金属の熱伝導率、比熱に差があるため、板厚、重量を変えることにより、感温筒の温度応答性を変化させる際の自由度が大きくすることができる。さらに、キャピラリチューブ26と感温筒96との接合は、ステンレス鋼同士の接合とすることができ、従来と同様の接合方法を採ることができる。
【0037】
【発明の効果】
請求項1記載の発明によれば、従来のように挿入材を設ける必要がないため、製造費が低く、両金属の板厚、重量及び材質を変化させることにより温度応答性を変化させることができるため、温度応答性を変化させる際の自由度の大きい温度式膨張弁を提供することができる。
【0038】
請求項2記載及び請求項3記載の発明によれば、内外面の異種金属の熱伝導率の差を利用して、両金属の板厚、重量及び材質を変化させることにより温度応答性を変化させることができるため、温度応答性を変化させる際の自由度の大きい温度式膨張弁を提供することができる。
【0039】
請求項4及び請求項5記載の発明によれば、前記感温筒の内面または外面の金属の材質が、該温度式膨張弁に接続されるキャピラリチューブの材質と同一であるため、ろう付け、プロジェクション溶接、TIG溶接等の従来使用されている接合方法によって内外面の金属を接合することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかる温度式膨張弁の感温筒の第1実施例を示す断面図である。
【図2】感温筒の温度応答性の自由度の説明図である。
【図3】本発明にかかる温度式膨張弁の感温筒の第2実施例を示す断面図である。
【図4】本発明にかかる温度式膨張弁の感温筒の第3実施例を示す断面図である。
【図5】本発明にかかる温度式膨張弁の感温筒の第4実施例を示す断面図である。
【図6】本発明にかかる温度式膨張弁の感温筒の第5実施例を示す断面図である。
【図7】本発明にかかる温度式膨張弁の感温筒の第6実施例を示す断面図である。
【図8】従来の冷凍サイクルの全体構成を示す概略図である。
【図9】従来の温度式膨張弁を示す断面図である。
【符号の説明】
26 キャピラリチューブ
46、56、66、76、86、96 感温筒
46a、56a、66a、76a、86a、96a 感温筒外面
46b、56b、66b、76b、86b、96b 感温筒内面
86c、96c 感温筒底面
87、97 密栓
87a、97a 挿入孔
Claims (5)
- 感温筒を、キャピラリチューブと接合される該キャピラリチューブの材質と同一の材質の金属部分と、当該金属部分とは材質が異なる異種金属部分とで構成されたクラッド材であって、前記金属部分との全体で所望の温度応答性を実現する異種金属を材質とする異種金属部分を用いて構成されたクラッド材により形成したことを特徴とする温度式膨張弁。
- 前記感温筒の内面の金属の熱伝導率を、外面の金属の熱伝導率よりも大きくしたことを特徴とする請求項1記載の温度式膨張弁。
- 前記感温筒の外面の金属の熱伝導率を、内面の金属の熱伝導率よりも大きくしたことを特徴とする請求項1記載の温度式膨張弁。
- 前記感温筒の内面の金属の材質が、前記キャピラリチューブの材質と同一であることを特徴とする請求項2または3記載の温度式膨張弁。
- 前記感温筒の外面の金属の材質が、前記キャピラリチューブの材質と同一であることを特徴とする請求項2または3記載の温度式膨張弁。
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