JP3688252B2 - 水稲のカドミウム吸収抑制剤及びそれを用いた水稲栽培法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、水稲のカドミウム吸収抑制剤及びそれを用いた水稲栽培法に関する。
【0002】
【従来の技術】
水稲栽培にあっては、土壌中の重金属、特にカドミウムの水稲への吸収防止が、米の汚染防止の観点から切に望まれており、種々の方法が試みられている。その一例として、汚染された表層土壌を取り除き、非汚染土壌を客土する方法がある。しかし、客土には莫大な費用がかかるうえに、多くの場合、表層25〜30cmまでを入れ替えるが、それよりも下層が汚染されている場合があり効果は一時的であり、除去した汚染土壌の処分も問題となる。また、ようりんやケイカル等のアルカリ資材を多量に投入し、カドミウム吸収を抑制する方法がある。しかし、通常ケイ酸資材として投入される量である、1ヘクタール当り2〜3トン程度では顕著な効果が見られず、効果を発現させるためには1ヘクタール当り5〜50トンと、非常に多量に投入する必要があるため、作業が大変となる。また、アルカリ資材の多投によるアルカリ作用のため、土壌中の有機態窒素が無機化しやすくなり、水稲の倒伏に繋がる可能性がある。さらには、資材中の重金属の影響が無視できなくなることによる二次汚染の危険性もはらんでいる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記のような特殊な処理をすることなく、通常の栽培管理の範囲内で、水稲のカドミウムの吸収量を確実に減少させ、米のカドミウム含有量を低減することにある。本発明の目的は、窒素成分の溶出量が選ばれた石灰窒素の特定量を施用することによって達成することができる。
【0004】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明は、10倍容の純水に、無撹拌状態で25℃、24時間浸漬したときの窒素成分の溶出量が、全窒素成分量の10〜35質量%である石灰窒素からなることを特徴とする水稲のカドミウム吸収抑制剤である。また、本発明は、水稲を水田に移植する前に、上記水稲のカドミウム吸収抑制剤を1ヘクタール当たり100〜400kg施用した後、常時水田を湛水状態に保つことを特徴とする水稲栽培法である。とくに、この水稲栽培法において、石灰窒素以外のアルカリ性肥料及び/又は土壌改良材を、1ヘクタール当り3000kg以下(0を含まず)を併用することが好ましい。
【0005】
【発明の実施の形態】
以下、更に詳しく本発明について説明する。
【0006】
本発明の水稲のカドミウム吸収抑制剤は、10倍容の純水に、無撹拌状態で25℃、24時間浸漬したときの、全窒素量に対する窒素成分の溶出量の比率(以下、この比率を「初期溶出率」という。)として、10〜35質量%、好ましくは15〜25質量%である石灰窒素からなるものである。初期溶出率が35質量%をこえる石灰窒素では、その有効成分であるカルシウムシアナミドの拡散が不充分となるので、効果が局所的となり結果的に能力が劣る。また、10質量%未満の石灰窒素では、初期段階におけるカドミウム吸収抑制が不充分となる。
【0007】
このような初期溶出率の石灰窒素は、キルンにより製造した石灰窒素を、例えば5〜0.5mmの粒度に揃えることによって得ることができる。
【0008】
本発明の水稲のカドミウム吸収抑制剤は、水稲を水田に移植する前に、1ヘクタール当たり100〜400kg施用した後、常時水田を湛水状態に保つことによって、カドミウム吸収抑制効果を更に高めることができる。とくに、この水稲栽培法において、石灰窒素以外のアルカリ性肥料及び/又は土壌改良材を、1ヘクタール当り3000kg以下(0を含まず)を併用することによってその効果が助長される。
【0009】
水稲のカドミウム吸収抑制剤の施用量が、1ヘクタール当たり400kgをこえると、水稲に対して窒素過剰となり、倒伏しやすくなる。また、1ヘクタール当たり100kg未満であると、カドミウム吸収抑制効果は認められない。好ましい施用量は、1ヘクタール当たり200〜300kgである。
【0010】
また、水稲栽培では、機械作業等栽培管理を容易にするために、中干しすることがよく行われるが、本発明の水稲のカドミウム吸収抑制剤の効果をより高めるためには、常に土壌を還元状態に置き、カドミウム等重金属の溶解度を下げておくことが望ましく、それには中干しをせず、収穫直前に落水するまで常時湛水状態にしておくことが更に好ましい。
【0011】
さらには、この湛水管理下の水稲栽培法において、石灰窒素以外のアルカリ性肥料及び/又は土壌改良材と、本発明の水稲のカドミウム吸収抑制剤とを併用し、土壌のpHを上昇させておくことによって、カドミウムの吸収抑制効果をさらに高めることができる。アルカリ性肥料及び/又は土壌改良材としては、熔性りん肥、熔性けい酸りん肥、鉱さいけい酸質肥料、軽量気泡コンクリート粉末肥料が好ましい。
【0012】
アルカリ性肥料及び/又は土壌改良材の施用量は、1ヘクタール当り3000kg以下とすることが好ましい。それ以上になると、作業が煩雑となり、そのうえ、アルカリ資材の多投によるアルカリ作用のため、土壌中の有機態窒素が無機化しやすくなり、水稲の倒伏に繋がる可能性がある。さらには、資材を多投するため、資材中の重金属の影響が無視できなくなる。
【0013】
水管理以外の水稲の栽培管理については、通常用いられている方法をそのまま用いることができるが、水稲のカドミウム吸収抑制剤を施用後、直ちに代かきを行い、土壌とよく混和するのが好ましい。また、水稲のカドミウム吸収抑制剤の施用時期は、水稲移植前であればいつでもよいが、石灰窒素による薬害の回避と、施用直後に湛水する作業の都合上、水稲移植7日前〜3日前の間が好ましい。さらには、アルカリ性でない通常の水稲栽培肥料、例えば、尿素、塩安、リン安、過リン酸石灰、塩化カリ等、及びこれらを原料とする化成肥料を併用することもできる。
【0014】
【実施例】
以下、実施例、比較例をあげて更に具体的に本発明を説明する。
【0015】
実施例1
プランター(18cm×60cm×16cm)に、水田土壌(細粒グライ台地土、全カドミウム含量0.29mg/kg)を入れ、石灰窒素(初期溶出率29.2質量%)、リン酸として過リン酸石灰、カリとして塩化カリを用い、1ヘクタール当り窒素60kg、リン酸150kg、カリ90kgとなるように施用し、水稲を6株移植した後、水管理を1ヶ月湛水−1ヶ月中干し−1ヶ月半湛水−1ヶ月落水とし、その他は慣行の栽培管理によって栽培した。その結果、玄米中のカドミウム含量を、硝酸分解−ICP法で測定したところ、0.12mg/kgであった。
【0016】
実施例2
中干しを行わず3ヶ月半常時湛水とし、その後収穫までの1ヶ月間落水した以外は、実施例1と同様に栽培した。その結果、玄米中のカドミウム含量は0.08mg/kgであった。
【0017】
実施例3
鉱さいけい酸質肥料を1ヘクタール当り3000kg併用した以外は、実施例2と同様に栽培した。その結果、玄米中のカドミウム含量は0.06mg/kgであった。
【0018】
比較例1
本発明の水稲のカドミウム吸収抑制剤を用いずに、石灰窒素を含まず、尿素、リン安、塩化カリを主成分とする化成肥料を用いたこと以外は、実施例1と同様に栽培した。その結果、玄米中のカドミウム含量は0.55mg/kgであった。
【0019】
比較例2
初期溶出率が40.2質量%である石灰窒素を用いたこと以外は、実施例1と同様に栽培した。その結果、玄米中のカドミウム含量は0.23mg/kgであった。
【0020】
比較例3
初期溶出率が8.5質量%である石灰窒素を用いたこと以外は、実施例1と同様に栽培した。その結果、玄米中のカドミウム含量は0.27mg/kgであった。
【0021】
以上のように、初期溶出率10〜35質量%である石灰窒素を施用することにより、それ以外の初期溶出率の石灰窒素を用いた場合に比較し、玄米へのカドミウムの吸収を顕著に抑えることができた。また、常時湛水管理およびアルカリ性肥料である鉱さいけい酸質肥料を併用すると、更にカドミウムの吸収抑制効果が高まった。
【0022】
【発明の効果】
本発明によれば、特殊な処理をすることなく、通常の栽培管理の範囲内で、水稲のカドミウムの吸収量を確実に減少し、米のカドミウム含有量を低減することができる。
Claims (3)
- 10倍容の純水に、無撹拌状態で25℃、24時間浸漬したときの窒素成分の溶出量が、全窒素成分量の10〜35質量%である石灰窒素からなることを特徴とする水稲のカドミウム吸収抑制剤。
- 水稲を水田に移植する前に、請求項1記載の水稲のカドミウム吸収抑制剤を1ヘクタール当たり100〜400kg施用した後、常時水田を湛水状態に保つことを特徴とする水稲栽培法。
- 石灰窒素以外のアルカリ性肥料及び/又は土壌改良材を、1ヘクタール当り3000kg以下(0を含まず)を併用することを特徴とする請求項2記載の水稲栽培法。
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