JP4655516B2 - 水稲のカドミウム吸収抑制方法 - Google Patents

水稲のカドミウム吸収抑制方法 Download PDF

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Description

本発明は、鉱山周辺地域等でカドミウムに汚染された水田の水稲のカドミウム吸収抑制方法に関するものである。
カドミウム汚染米は、鉱物資源が賦存する地域の鉱化帯、鉱山、製錬所、メッキ工場排水等カドミウムを含む水に起因し、これら周辺地域の水田において発生している。平成16年3月時点での玄米中のカドミウム含有量の食品衛生法上の基準は1.0ppm未満となっており、この数値を超えると汚染米として取り扱われ食品に供することはできない。これと併せて食糧庁の通達によって、0.4ppmを以上のカドミウムを含有する米については、流通が制限されている。
このため、農用地の土壌の汚染防止等に関する法律では、基準を超えて汚染された農用地に対して客土等の対策事業を行うこととしている。平成14年版環境白書によると、平成9年10月時点では汚染検出面積7140haに対する対策事業面積は、5410haとなっている。この排土客土の方法は、カドミウム米の発生を防止する根本的解決方法ではあるが、1ha当たり3,000万円と高額の費用がかかることと、入れ替えた土が養分の富んだ土になるまでの土作りに費用や労力を有するという欠点があった。
また、0.4〜1.0ppmのカドミウムを含む米が発生する地域についても、汚染防止の対策が求められているが、この地域の面積は膨大であるため、排土客土以外のより低コストで実用的な方法の提案が期待されている。
このようなより低コストで実用的な方法として、これまで次の方法が実施されている。
(1)軽量気泡コンクリート粉末肥料(以下、「ALC」という。)を水田に散布し、pHを調整することによりカドミウムを不溶化し、土壌からのカドミウム吸収を抑制する方法(例えば、特許文献1及び非特許文献1参照)。
(2)ケイカル肥料を水田に散布し、pHを調整することによりカドミウムを不溶化し、土壌からのカドミウム吸収を抑制する方法(例えば、非特許文献1及び非特許文献2参照)。
(3)石灰(炭酸カルシウム、消石灰等)を水田に散布し、pHを調整することによりカドミウムを不溶化し、土壌からのカドミウム吸収を抑制する方法(例えば、非特許文献1及び非特許文献2参照)。
(4)燐酸カルシウム肥料を水田に散布し、カドミウムを不溶化し、土壌からのカドミウム吸収を抑制する方法(例えば、非特許文献2参照)。
(5)カドミウム吸収の旺盛な出穂時期に水田の湛水を確実に実施し、水田土壌を還元状態に維持することによりカドミウムの吸収を抑制する方法(例えば、非特許文献2参照)等がある。
さらに、現在進められているFAO/WHO合同食品規格委員会において、食品中のカドミウムの新たな国際基準が検討されており、それによれば米中のカドミウム量として0.2ppmあるいは0.4ppmが提案されており、現在の国内基準より厳しくなる可能性がある。
特許第3271533号公報 長谷川榮一、島秀之、斎藤益郎、龍野栄子、「重粘土水田における多孔質ケイカルのカドミウム吸収抑制効果」、宮城県農業センター研究報告、平成7年3月、第61号、p.13−32 「水稲のカドミウム吸収抑制のための対策技術マニュアル 〜「食の安全」確保に向けて〜」、[online]、平成14年11月、農林水産省 農業環境技術研究所、[平成16年5月7日検索]、インターネット〈URL:http//www.maff.go.jp/cd/PDF/D3.pdf〉
上記(1)の方法にあっては、ALCが微細な空隙を有するけい酸カルシウムの粉末からなり、適度な水への溶解性と土壌のpH調節効果があるため、これまで複数の自治体で施工され既に数千tの施工実績があり、カドミウム吸収抑制方法として認知されているものである。
しかしながら、ALCは製造元が限られており、近年は生産量が低下しているため、その確保が難しく、また価格が高いという問題があった。
また、(2)の方法にあっては、このケイカル肥料は、(1)の方法のALCと同様の成分を有しているが、ガラス質であるため水への溶解性が小さく、カドミウムの吸収抑制については補助的な役割を果たしており、非特許文献1に示すように十分なカドミウム吸収の抑制効果を期待できないという問題があった。
また、(3)の石灰による方法は、炭酸カルシウムを用いた場合、カドミウム吸収抑制のバラツキが大きく安定したデータが蓄積されておらず、また十分なカドミウム吸収の抑制効果を示しても水稲の生育不良を発生するといった問題があった。
また、消石灰(水酸化カルシウム)を用いた場合は、一時的にpHを調整する働きはあるものの効果が持続せず、長期に渡ってはカドミウム吸収の抑制効果を期待できないことと、水稲のアルカリ障害を発生させる恐れがあるという問題があった。
また、(4)の燐酸カルシウム肥料による方法は、効果のある研究結果も報告されているが実績はよく知られておらず、(5)の十分な水管理方法と併用しないと十分なカドミウム吸収の抑制効果を期待できないという問題があった。
また、(5)の方法は有効なカドミウム吸収抑制方法であり、カドミウム米が発生する地域では、関係機関が農家にこの湛水栽培の水管理を呼びかけている。
しかし、湛水栽培の水管理は、農家の営農体制、灌漑用水の供給条件、その年の気候によって左右されるため、計画通り吸収抑制ができないのが実情であるという問題があった。
以上のように、上記(1)〜(5)の方法はそれぞれの効果があるが、効果が長続きしない、効果の発現が小さい、水稲の生育不良を生じる、効果の発現が条件により左右される等安定した効果が得られにくいため、将来の厳しい国際基準に向けてより効果的な吸収抑制方法の出現が期待されている。
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑み、十分なカドミウム吸収の抑制効果があり、これを長期に渡って安定して持続できると共に水稲の生育を促進できる水稲のカドミウム吸収抑制方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、これまで特許文献1に係る上記(1)のALCによる吸収抑制方法の開発と実用化を推進した結果、自治体の事業として既に200ha以上の水田に散布施工した実績が得られている。そこで、本発明者らは、この開発の過程で得られた知見を活かし、ALCによる以外の方法についても鋭意研究開発を進めた結果、石灰系資材と石膏系資材とを複合した資材による水稲のカドミウム吸収抑制方法が有効であることを見いだした。
かかる課題を解決するため、
請求項1にかかる発明は、水田を耕起した土壌に、炭酸カルシウムまたはケイ酸カルシウムを含有する石灰系資材と石膏系資材とを併せて施用し、前記石灰系資材と前記石膏系資材との合計量に対して、前記石灰系資材の含有量が90〜99質量%、前記石膏系資材の含有量が1〜10質量%であることを特徴とする水稲のカドミウム吸収抑制方法である。
請求項2にかかる発明は、水田への前記石灰系資材及び前記石膏系資材の鍬込みを、稲作の刈り取り後から作付け前の間に実施することを特徴とする請求項1に記載の水稲のカドミウム吸収抑制方法である。
請求項3にかかる発明は、前記石灰系資材が、炭酸カルシウム、粉状石灰石、細粒状石灰石、ケイカル肥料、及び貝殻類粉砕物からなる群から選択される少なくとも1種以上の資材であることを特徴とする請求項1又は2に記載の水稲のカドミウム吸収抑制方法である。
請求項4にかかる発明は、前記石灰系資材を、10aあたり0.1〜10t施用することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の水稲のカドミウム吸収抑制方法である。
本発明の水稲のカドミウム吸収抑制方法によれば、十分なカドミウム吸収の抑制効果が発揮でき、これを長期に渡って安定して持続できると共に水稲の生育を促進させることができる。また、コスト面でも排土客土の工法と比較して、約1/20と安価であり、ALCを使用する方法と比較しても、何より国内での安定供給が可能であることから格段に有利である。
本発明に用いる石灰系資材とは、炭酸カルシウム(CaCO)又はけい酸カルシウム(CaO・SiO等)を含有するものである。例えば、炭酸カルシウムを含有するものとしては、石灰石を粉砕・細粒化したものや牡蠣・ホタテの貝殻等を用いることができる。また、けい酸カルシウムを含有するものとしては、軽量気泡コンクリート粉末肥料(ALC、可溶性けい酸及びアルカリ分をそれぞれ15%以上含有する多孔質けい酸カルシウム肥料)、ケイカル肥料(鉱さいけい酸質肥料、可溶性けい酸10%以上の他にアルカリ分35%を保証するけい酸質肥料)を用いることができる。
そのなかでも、炭酸カルシウム、粉状石灰石、細粒状石灰石、ケイカル肥料、及び貝殻類粉砕物からなる群から選択される少なくとも1種以上の資材であることが好ましい。
本発明に用いる石膏系資材には、無機硫酸塩を含有する資材、無機亜硫酸塩を含有する資材、無機硫化物を含有する資材、及び土壌中で酸化還元反応によりこれらと同等の効果を有する資材等を用いることができる。無機硫酸塩を含有する資材としては、例えば、二水石膏(CaSO・2HO)、半水石膏(CaSO・0.5HO)、無水石膏(CaSO)等の石膏が挙げられる。また、硫酸、過リン酸石灰、苦土リン酸石灰、硫酸カリ苦土、硫酸アンモニウム等は、土壌に散布した後、溶解や稲作土壌の酸化還元反応によって石膏と同様の効果を発現することができる。そのなかでも、石膏が好ましい。
石灰系資材と石膏系資材とを併用するのは、石灰系資材のみでは、カドミウムの吸収抑制効果は不安定であり、水稲の生育が遅れる等の影響があるからであり、一方、石膏系資材のみでは、カドミウムの吸収抑制効果がないからである。
石灰系資材と石膏系資材とを併用することにより、この石灰系資材は土壌の水素イオン濃度(pH)を一定値以上のアルカリ条件に保ち、カドミウムの溶出を制限するため(Cd(OH)、CdCO等の不溶性とする。)、カドミウムの吸収を抑制することができると共に、石膏系資材はその硫黄成分が土壌の湛水による還元に伴いカドミウムの不溶化を促進するため(CdSとして不溶化される。)、収穫迄の過程における水稲のカドミウム吸収を抑制し、かつ肥料として作用するため水稲の生育を促進させることができる。
この石灰系資材と石膏系資材との混合割合については、石灰系資材と石膏系資材との合計量に対して、石灰系資材の含有量は、好ましくは90〜99質量%、より好ましくは95〜99質量%であり、石膏系資材の含有量は、好ましくは1〜10質量%、より好ましくは1〜5質量%である。石灰系資材と石膏系資材との合計量に対して、石膏系資材の含有量を1〜10質量%とするのは、この含有量が1質量%未満であると水稲の生育不良が発生するからであり、一方10質量%を超えると石膏系資材が過剰となることによる水稲の生育への悪影響が懸念されることや、石膏系資材が水への溶解度以上に供給されて経済性を欠くことになるからである。
また、本発明では、この石灰系資材を10aあたり好ましくは0.1〜10t、より好ましくは0.2〜5t施用する。一般的な肥料の施用量は50〜300kg(0.05〜0.3t)であるのに対し、この施用量は大量施用に当たるが、水への溶解度が低いため、大量に施用することができる。石灰系資材を10aあたり0.1〜10t施用することにより、pH低下を防止できるため、カドミウムの吸収抑制の効果を長期的に維持することができ、1度施用すれば以降の数年以上長期に亘って施用する必要はなく、また追肥を行う必要もない。
また、石膏系資材の施用量は、10aあたり0.02〜1tであるのが好ましい。石膏系資材自体は肥料として一般に使用されているものであり、水稲の生育を促進する効果を有し、施用自体に問題はなく、必要に応じて少量の追肥をすればよい。
石灰系資材と石膏系資材の具体的な施用方法は、慣行法でよいが、少なくとも作土の深さ(15〜20cm程度)に施すのが好ましい。
本発明では、水稲として、ひとめぼれ、ササニシキ、ササロマン、コシヒカリ、あきたこまち等を用いることができる。本発明の水稲のカドミウム吸収抑制方法では、水田への資材の鍬込みは、稲作の刈り取り後から作付け前の間に実施する。まず水田を耕起整地した後、土壌に石灰系資材と石膏系資材とをそれぞれ又は併せて施用する。田植後の水管理は、慣行管理による。具体的には、田植期から1月間程度は浅水した後、間断潅水を行い、次いで最高分げつ期の1週間前頃中干しを行う。最高分げつ期以降、幼穂形成期及び出穂期の間は、間断潅水を行う。その後、出穂25日以降に落水し、出穂後40〜50日頃籾の約90%程度が黄色となり、穂軸が1/3程度黄変した時期に刈り取りを行う。
刈り取った水稲から玄米を収穫し、硝酸・過塩素酸の混酸で分解し、残渣を濾過後、試料溶液として調製し、高周波誘導結合プラズマ発光分析(ICP)法又は原子吸光法等の分析法を用いて玄米中のカドミウムの濃度を測定することができる。
本発明によれば、上記(5)の出穂3週間前後の湛水管理が不十分な場合でも、水稲のカドミウム吸収を抑制することができる。
本発明における水稲のカドミウム吸収抑制機構は、次のように推定され、カドミウム吸収抑制効果発現のポイントは、水稲の生育が旺盛でカドミウムをよく吸う時期に石灰系資材と石膏系資材との複合作用により、カドミウム吸収抑制が発現するものと推定される。以下に詳しく説明する。
一般的に、土壌中のカドミウムの存在形態は交換態、無機結合体、有機結合体、有機酸化物吸蔵態、残渣画分に分類される。水田は湛水状態が保たれると水中の酸素が微生物により消費され、還元状態が進行する。この時、カドミウムや鉄の硫酸塩は硫化物に還元され土壌中に沈殿しストックされる。水田を落水する時期になると土壌は空気に触れ酸化状態となるため、カドミニウムは硫化物から硫酸塩に変わり、水に溶けやすくなって水稲に吸収される。
石灰系資材の施用は、このような土壌の酸性化を防止することにある。しかし、ALCを除く石灰系資材は水への溶解度が低いため、ALCのように土壌のpHを上げる効果は小さく、pHの低下を抑止する効果を有するに留まると考えられる。また、石灰系資材の土壌への均一な分散が望まれるが、水田の耕作作業から見ると均一性分散には限界がある。したがって確実な土壌の酸性化防止効果を望むには、本発明のように石灰系資材の大量施用により石灰系資材分布の濃度を高くするのがよい。
また、石膏系資材の施用により、石膏系資材から溶出した硫酸イオンは、還元条件下で硫化物に変化するが、カドミウムイオンは硫化物として土壌中にストックされ、また稲作作業上落水した場合もストックされた還元物質の効果により、カドミウムが溶出しにくくなり、水稲によるカドミウムの吸収を抑制していると推定される。
また、化学便覧(丸善)によると、CaSO・2HOの溶解度は0.2080g/100gHO(25℃)、CdSO・8/3HOの溶解度は76.86g/100gHO(20℃)であるのに対し、CdSの溶解度は9×10−8/100gHO(25℃)、Cd(OH)の溶解度は2.6×10−4g/100gHO(25℃)とこれらよりも低く、硫黄(S)が還元され硫化物態、水酸化物態等になることにより、Cdの溶解度が低下するため、稲へのカドミウムの吸収が抑制されることがわかる。
以下、実施例により、本発明をさらに詳しく説明する。本発明は、下記実施例に何ら制限されるものではない。
以下の実施例及び比較例において、使用した資材は以下の通りである。
炭酸カルシウムは、石灰石を微粉にした火力発電所向け排煙脱硫用の炭酸カルシウムを用いた。また、石膏は、硫酸を炭酸カルシウムで中和した二水石膏を用いた。ALC粉末肥料は、S社T工場の生産品を用いた。ケイカル肥料は市販品を用いた。蠣殻(カキガラ)はM県内において入手した粉状品を用いた。
〈K地区圃場−1〉
[実施例1]
宮城県N川下流域の水田K地区の圃場で試験を行った。K地区の土壌は重粘質土壌で、塩基置換容量は20〜25me/100g、初期土壌のカドミウム含有量は、原子吸光分光分析装置(日本ジャレル・アッシュ株式会社製)を用いて測定したところ、5.88mg/kgであった。
この土壌を耕起整地し、耕起深度20cmで炭酸カルシウムを5,000kg(5t)/10a、石膏を125kg(0.125t)/10a施用した。水稲は、ひとめぼれを用い、5月中旬に田植えし、水管理は慣行管理で行った。6月上旬まで浅水し、6月中旬に間断潅水を行い、7月上旬に中干しをした。その後、最高分げつ期以降、幼穂形成期及び出穂期の間は、間断潅水を行った。その後、出穂25日以降に落水し、出穂後45日頃収穫した。
刈り取った水稲から玄米を収穫し、玄米の質量(g/m)を測定した後、これを硝酸・過塩素酸の混酸で分解し、残渣を濾過後、試料溶液として調製した。上記原子吸光分光分析装置を用いて玄米中のカドミウムの濃度を測定した。資材の種類と施用量、収穫後の土壌pH、玄米質量、玄米中のカドミウム量を、各々表1に示す。
Figure 0004655516
[比較例1〜4]
石灰系資材の種類と石膏との施用量を変えた以外は実施例1と同様にして水稲を栽培し、玄米の質量とカドミウム量を測定した。資材の種類と施用量、収穫後の土壌pH、玄米質量、玄米中のカドミウム量を、各々表1に示す。
〈K地区圃場−2〉
[実施例2〜5]
石灰系資材の種類と石膏との施用量を変えた以外は実施例1と同様にして水稲を栽培し、玄米の質量とカドミウム量、稲わら中のカドミウム量を測定した。資材の種類と施用量、収穫後の土壌pH、玄米質量、玄米中のカドミウム量、稲わら中のカドミウム量を、各々表2に示す。
Figure 0004655516
[比較例5〜10]
石灰系資材の種類と石膏との施用量を変えた以外は実施例1と同様にして水稲を栽培し、玄米の質量とカドミウム量、稲わら中のカドミウム量を測定した。資材の種類と施用量、収穫後の土壌pH、玄米質量、玄米中のカドミウム量、稲わら中のカドミウム量を、各々表2に示す。
〈A地区圃場〉
[実施例6〜9]
兵庫県I川下流域の水田A地区の圃場で試験を行った。A地区の土壌は砂質土壌で、塩基置換容量は10〜13me/100g、初期土壌のカドミウム含有量は、上記原子吸光分光分析装置を用いて測定したところ、2.52mg/kgであった。
石灰系資材の種類と石膏との施用量を変えた以外は実施例1と同様にして水稲を栽培し、玄米の質量とカドミウム量、稲わら中のカドミウム量を測定した。資材の種類と施用量、収穫後の土壌pH、玄米質量、玄米中のカドミウム量、稲わら中のカドミウム量を、各々表3に示す。
Figure 0004655516
[比較例11〜14]
石灰系資材の種類と石膏との施用量を変えた以外は実施例1と同様にして水稲を栽培し、玄米の質量とカドミウム量、稲わら中のカドミウム量を測定した。資材の種類と施用量、収穫後の土壌pH、玄米質量重、玄米中のカドミウム量、稲わら中のカドミウム量を、各々表3に示す。
表1の結果から、何も施用しない比較例1では、玄米中のCd量は1.51ppmと基準を上回った。それに対し、炭酸カルシウムのみを施用した比較例2,3では、玄米中のCd量は0.46ppm以下に減少したが、炭酸カルシウムの施用量の多い比較例3では、水稲の発育不良が見られた。また、ALC粉末肥料を用いた比較例4では、玄米中のCd量は0.25ppmまで減少し、水稲の生育は最も良好であった。これらに対し、炭酸カルシウムと石膏とを併用した実施例1では、玄米中のCd量は0.21ppmと最も低く、水稲の生育も良好であった。
また、表2の結果と表1の結果とを比べると、表2の方が全体的にCd量は低くなった。この理由は、この年は冷夏のため不作であり、長雨の影響で土壌が長く還元状態に置かれ
ていたためと地域の農業関係者により評価されている。表2では、吸収抑制資材の施用のない比較例5では、玄米中のCd量は0.15ppmと表1の比較例1と比べて低かった。石灰系資材のみを施用した比較例6〜10では、玄米中のCd量は0.06〜0.11ppmまで低下したが、水稲の発育不良が見られた。これらに対し、石灰系資材と石膏とを併用した実施例2〜5では、玄米中のCd量は0.05〜0.08ppmまでさらに低下すると共に、水稲の生育も良好であった。
また、表3の結果と表1の結果とを比べると、表3の方が全体的にCd量は低くなった。この理由は、土壌性質の違いによると考えられる。表3の結果から、吸収抑制資材の施用のない比較例11では、玄米中のCd量は0.09ppmと表1の比較例1と比べて低かった。ALC粉末肥料を用いた比較例12では、玄米中のCd量は0.05ppmまで減少し、水稲の生育は良好であった。また、石膏のみを施用した比較例13では、玄米中のCd量は0.08ppmとなり、吸収抑制の大きな効果は認められず、また水稲の生育も不良であった。さらに、ケイカル肥料のみを施用した比較例14では、玄米中のCd量は0.07ppmまで低下したが、水稲の発育不良が見られた。これらに対し、石灰系資材と石膏とを併用した実施例6〜9では、玄米中のCd量は0.03〜0.04ppmまでさらに低下すると共に、水稲の生育も良好であった。そのなかでも、ケイカル肥料と石膏とを併用した実施例8は、ALC粉末肥料を単独で施用した比較例12よりも玄米中のCd量が低く、かつ玄米質量が多く、最も良好な結果を示した。
以上の結果から、本発明の水稲のカドミウム吸収抑制方法は、ALCを単独で用いた場合と遜色ない、あるいはそれ以上のカドミウム吸収の抑制効果が発揮できると共に水稲の生育を促進できることが確認された。
また、ALC(軽量気泡コンクリート粉末肥料)とは、珪石粉末と石灰粉末、セメント、金属アルミニウム粉末に水を加えて発泡させた後、オートクレーブで180℃10時間程度水熱反応により養生させた後、硬化体を破砕し分級して製造するものである。このようにALCの製造は、工程が長くコスト高である。それに対し、本発明で用いられる吸収抑制資材は、国内に豊富に存在する石灰石の粉砕物と、硫酸中和、排煙脱硫等により発生する石膏や天然石膏を混合又は別途に土壌に施肥することができるものであるため、コスト面でもALCを使用する方法に比較して、本発明は格段に安価にかつ安定して供給できるという利点がある。

Claims (4)

  1. 水田を耕起した土壌に、炭酸カルシウムまたはケイ酸カルシウムを含有する石灰系資材と石膏系資材とを併せて施用し、
    前記石灰系資材と前記石膏系資材との合計量に対して、前記石灰系資材の含有量が90〜99質量%、前記石膏系資材の含有量が1〜10質量%であることを特徴とする水稲のカドミウム吸収抑制方法。
  2. 水田への前記石灰系資材及び前記石膏系資材の鍬込みを、稲作の刈り取り後から作付け前の間に実施することを特徴とする請求項1に記載の水稲のカドミウム吸収抑制方法。
  3. 前記石灰系資材が、炭酸カルシウム、粉状石灰石、細粒状石灰石、ケイカル肥料、及び貝殻類粉砕物からなる群から選択される少なくとも1種以上の資材であることを特徴とする請求項1又は2に記載の水稲のカドミウム吸収抑制方法。
  4. 前記石灰系資材を、10aあたり0.1〜10t施用することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の水稲のカドミウム吸収抑制方法。
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