JP3687154B2 - カメラ - Google Patents

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JP3687154B2
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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本願発明は、巻上げノブの回転操作によりフィルムを巻き上げるカメラに関し、詳しくはフィルム巻上げ時における静音化対策に関し、特に簡易カメラ若しくはレンズ付きフィルムユニットに好適である。
【0002】
【従来の技術】
従来の巻上げノブを用いた手動巻上げの簡易カメラやレンズ付きフィルムユニットにおいては、巻上げノブの回転操作によりフィルムを巻き上げる巻上げノブの外周を鋸歯状に形成し、これに樹脂若しくは金属からなる板バネを係合させ、巻上げノブがフィルム巻上げ方向の一方向のみに回転し得る、所謂ラチェット機構に構成していた。このように構成することにより、巻上げノブと係合する巻き取り軸に巻かれたフィルムがフィルムのテンションにより巻き戻ることを防止し、その結果、撮影画面のズレを防止することによって、隣合う撮影画面が重複するといった重大な問題の発生を防止していた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の巻上げノブを用いた手動巻上げの簡易カメラやレンズ付きフィルムユニットの巻上げ機構は前述の如きラチェット機構を用いているため、フィルム巻上げ時に板バネが巻上げノブの鋸歯状の山を越える度に振動音が発生して耳障りである。従って、静粛が求められる場所においては、このような構成のカメラやレンズ付きフィルムユニットを使用するのがためらわれた。
【0004】
本願発明はかかる問題に鑑み、フィルム巻上げ時に簡単な構成で上記の振動音が発生せず、特に安価な簡易カメラやレンズ付きフィルムユニットに好適であるカメラを提案するものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記課題は、巻上げノブの回転操作によりフィルムを巻き上げ、前記巻上げノブの逆回転を防止する逆転防止爪を前記巻上げノブに係合させたカメラにおいて、前記逆転防止爪と係合する腕部を有し、前記巻上げノブと所定の摩擦力にて滑合することにより前記巻上げノブと一体的に回動し、前記巻上げノブの回転操作に伴い前記腕部にて前記逆転防止爪を退避させ、前記巻上げノブとの係合を解除する解除部材を備えたことを特徴とするカメラ、により達成される。
【0006】
更に、上記課題は、巻上げノブの回転操作によりフィルムを巻き上げ、前記巻上げノブの逆回転を防止する逆転防止爪を前記巻上げノブに係合させたカメラにおいて、前記逆転防止爪と係合する腕部を有し、前記巻上げノブの回転操作時に撮影者の指にて共に回動させることにより前記腕部にて前記逆転防止爪を退避させ、前記巻上げノブとの係合を解除する解除部材を備えたことを特徴とするカメラ、により達成される。
【0008】
【発明の実施の形態】
本願発明におけるカメラの実施の形態を図1乃至図20に基づき、詳細に説明するが、本実施の形態においては本願発明をレンズ付きフィルムユニットに用いた実施の形態について説明する。
【0009】
なお、本願発明のカメラの範疇には巻上げノブを用いたカメラは全て含まれ、フィルム交換のできる通常のカメラも含まれるが、レンズ付きフィルムユニットが最も適している。
【0010】
先ず、本願発明のレンズ付きフィルムユニットを図1及び図2により説明する。図1はレンズ付きフィルムユニットを前方から見た斜視図であり、図2はレンズ付きフィルムユニットを後方から見た斜視図である。
【0011】
レンズ付きフィルムユニット1は、樹脂成型された前カバー、本体、裏蓋等から構成され、撮影レンズ、シャッタ、巻上げ機構、ストロボユニット等が本体に取り付けられる。また、未露光フィルムを収納したパトローネを装填し、フィルムをスプール室に巻き取った状態で出荷される。
【0012】
図1において、レンズ付きフィルムユニット1の前面側には、前カバー10、レンズマウント11に組み込まれた撮影レンズ12、ファインダ対物レンズ窓13、ストロボ発光部14が設けられ、上面側にはシャッタレリーズ釦15、フィルムカウンタ窓16、ストロボ充電ランプ窓17が設けられている。また、図2において、レンズ付きフィルムユニット1の背面側には、巻上げノブ18、ファインダ接眼レンズ窓19、裏蓋20が設けられている。
【0013】
更に、レンズ付きフィルムユニット1は紙カバー21により被覆されている。紙カバー21は厚紙を折り曲げて接着したものであり、穿設された透孔により、レンズマウント11、ファインダ対物レンズ窓13、ストロボ発光部14、フィルムカウンタ窓16、ストロボ充電ランプ窓17、ファインダ接眼レンズ窓19が露出している。また、紙カバー21の背面には図示していないが、レンズ付きフィルムユニットの簡単な使用説明が記載されている。
【0014】
ここで、フィルム巻上げを行うときは、図2に示したレンズ付きフィルムユニット1を背面より右手で保持し、巻上げノブ18の側面に形成された鋸歯18aを右手親指の腹で圧着しながら、上面から見て反時計方向に回転させる。
【0015】
また、この巻上げノブ18の逆回転を防止する従来の機構について図3により説明する。図3(A)は平面図、図3(B)は縦断面図である。前述の如く巻上げノブ18の側面に形成された鋸歯18aを右手親指で反時計方向の矢印A方向に圧着しながら、矢印B方向に回転させる。鋸歯18aは親指の腹に食い付き、滑ることなく回転できる。一方、巻上げノブ18の下部にはパトローネPと係合する係合部18bがあり、巻上げノブ18の回転により図示していないパトローネP内の巻き取り軸にフィルムを巻き取る。更に、フィルムのテンションにより巻き戻ることを防止するため、樹脂若しくは金属から形成された板バネからなる逆転防止爪25を巻上げノブ18の鋸歯18aに係合させてある。なお、レンズ付きフィルムユニットの本体が樹脂製の場合には、逆転防止爪25を本体と一体成形することができる。従って、巻上げノブ18を時計方向に逆回転させようとしても、逆転防止爪25で突っ張り、逆回転はできない。
【0016】
しかし、このような従来の機構において、巻上げノブ18を回転させてフィルムを巻き上げるとき、逆転防止爪25の先端が鋸歯18aの谷から山を越えるとき、振動音が発生して耳障りになる。
【0017】
この振動音をなくす実施の態様を以下に示す。
【0018】
〔第1の実施の態様〕
第1の実施の態様を図4及び図5に示す。図4はフィルム巻上げ中の巻上げノブ等の図にて、図4(A)は平面図、図4(B)は縦断面図であり、図5は解除部材の他の実施の形態である。
【0019】
巻上げ前には、巻上げノブ31と逆転防止爪32は図3の如き状態で係合している。次に巻上げノブ31を反時計方向である矢印方向に回転させると、巻上げノブ31の上部の軸31bで所定の摩擦力で滑合している解除部材33も同方向に回転する。すると、解除部材33に設けた腕部33aの先端で逆転防止爪32を時計方向に変形させ、逆転防止爪32を退避させることにより巻上げノブ31の側面に設けた鋸歯31aとの係合を解除させる。従って、フィルム巻上げ中は逆転防止爪32により振動音が発生しない。
【0020】
なお、解除部材33には第2の腕部33bが設けられ、腕部33aが逆転防止爪32を退避させた後は、カメラ本体等に立設したストッパーピン34と腕部33bが当接し、解除部材33は所定の範囲の回動後に停止するので、逆転防止爪32を必要以上に押圧して永久変形させることがない。
【0021】
従って、巻上げの最初は巻上げノブ31の回転に伴い解除部材33も回動するが、解除部材33が腕部33bとストッパーピン34により回転を規制されて停止した後は、巻上げノブ31のみを回転させることとなる。
【0022】
なお、ストッパーピンを逆転防止爪32の背面に設けてもよい。
【0023】
巻上げノブ31を所定の角度で回転させ、フィルム1駒の巻上げが終了すると、巻上げノブ31より指を離すので、巻上げノブ31は回転力を有しない。従って、逆転防止爪32の反力により解除部材33と共に巻上げノブ31は僅かに逆回転し、再度逆転防止爪32の先端が巻上げノブ31の鋸歯31aと係合するので、これ以上巻上げノブ31が逆回転することはない。
【0024】
また、上記の解除部材33は切り欠き部33cを有し、軸31bよりやや小さい内径を有するように形成した後、軸31bにはめ込んで所定の摩擦力で滑合させているが、切り欠き部の代わりに図5に示す如く、折り曲げ状の形状にして所定の摩擦力を発生させてもよい。
【0025】
なお、以上の実施の態様においては、巻上げノブ31と解除部材33との軸摩擦で滑合させたが、軸摩擦に限らず、解除部材33の端面を用いた面摩擦で滑合させてもよい。
【0026】
更に、解除部材33の回転を腕部33bとストッパーピン34により規制したが、腕部33bを設けずに腕部33aが直接当接するストッパーピンを設けて規制してもよい。
【0027】
〔第2の実施の態様〕
第2の実施の態様を図6に示す。図6はフィルム巻上げ中の巻上げノブ等の平面図である。
【0028】
本実施の態様における巻上げノブ41と逆転防止爪42との関係は、第1の実施の態様と同一である。また、腕部43aを有する解除部材43が巻上げノブ41と滑合している点も類似している。しかし、第1の実施の態様において、解除部材33が摩擦力により回転したのに対し、本実施の態様においては解除部材43は撮影者により回転させられる。即ち、フィルム巻上げ時に撮影者が指で巻上げノブを矢印方向に回転させるが、同時に解除部材43の操作部43bも指に当てて回転させ、解除部材43の腕部43aにより逆転防止爪42を退避させて、巻上げノブ41の鋸歯41aとの係合を解除させる。従って、フィルム巻上げ中は逆転防止爪42により振動音が発生しない。なお、解除部材43の操作部43bは厚み方向で巻上げノブ41の鋸歯41aと隣接して設けられているので、意識しなくても指の腹で鋸歯41aと同時に操作部43bに圧着する。
【0029】
なお、本実施の態様においては人手で解除部材43を回転させるので、特に解除部材43を所定の範囲で規制する規制部材が必要であり、解除部材43に設けた第2の腕部43cをストッパーピン44と当接させている。
【0030】
また、巻上げ中の巻上げノブ41と解除部材43の双方を回転させる方向に指を移動させるが、解除部材43はストッパーピン44により所定の角度以上回転しないので、解除部材43は指の腹を滑ることになる。
【0031】
更に、巻上げノブ41を所定の角度で回転させ、フィルム巻上げが終了すると、巻上げノブ41及び解除部材43の操作部43bより指を離すので、逆転防止爪42の反力により解除部材43は時計方向に回転させられるが、巻上げノブ41と解除部材43との関係を第1の実施の態様の如き摩擦滑合でなく、互いに滑面にしておけば、巻上げノブ41は逆回転しない。従って、逆転防止爪42の先端が再び鋸歯41aに係合して、巻上げノブ41の逆回転は防止される。
【0032】
更に、解除部材43の回転を腕部43cとストッパーピン44により規制したが、腕部43cを設けずに腕部43aが直接当接するストッパーピンを設けて規制してもよい。
【0033】
この実施態様について、巻上げノブを回転させて巻上げを行ったところ、殆ど音はせず、1コマの巻上げ終了時における巻上げ停止の際に発生する機構音が聞こえる程度であった。
【0034】
また実際に、巻上げ停止の際に発生する機構音が出る前の巻上げノブの回転に伴う音の騒音レベルの最大値を、通常の使用で想定される、巻上げノブの早い回転による巻上げ、中間の回転速さの巻上げ、遅い回転速さによる巻上げについてそれぞれ5回づつ、積分形普通騒音計 NL−02A(リオン株式会社製)により、レンズ付きフィルムユニットの正面から垂直方向に15cm離れたところに検出部を位置させて測定したところ、49dB〜52dBの間であった。
【0035】
また、同様の測定を現在市販されているレンズ付きフィルムユニットについても行ったところ、65dB〜73dBと本実施の態様に比べて高い値であった。巻上げ音はその音質にもよるが、騒音レベルの最大値が60dB以下であれば音質に関係なく静かだと感じられる。また、55dB以下となるとほとんど巻上げ音が聞こえなくなり好ましい。
【0036】
〔第3の実施の態様〕
第3の実施の態様を図7に示す。図7はフィルム巻上げ中の巻上げノブ等の平面図である。
【0037】
本実施の態様における巻上げノブ51と逆転防止爪52との関係は、前に説明した実施の態様と同一である。しかし、本実施の態様においては、解除部材53が軸54を中心に回動する。即ち、巻上げ前には解除部材53は2点鎖線で示すように、解除部材53の操作部53bが巻上げノブ51より突出しており、解除部53cが逆転防止爪52より退避していて、逆転防止爪52の先端が鋸歯51aに係合している。操作部53bは鋸歯51aと厚み方向で隣接しているので、フィルムを巻き上げるべく鋸歯51aを指で回転させるときは、操作部53bを押圧して解除部材53を反時計方向に回動させる。すると、解除部53cが逆転防止爪52を押し出して退避させ、逆転防止爪52と巻上げノブ51との係合を解除させる。従って、操作部53bを押したままで、フィルム巻上げを行うので、フィルム巻上げ中は逆転防止爪52により振動音が発生しない。
【0038】
また、フィルム巻上げが終了した後、指を操作部53bより離せば、逆転防止爪52の反力により解除部材53は時計方向に回動し、逆転防止爪52の先端が再び鋸歯51aに係合するので、巻上げノブ51の逆回転は防止される。
【0039】
〔第4の実施の態様〕
第4の実施の態様を図8に示す。図8はフィルム巻上げ中の巻上げノブ等の平面図である。
【0040】
本実施の態様における巻上げノブ61と逆転防止爪62との関係は、前に説明した実施の態様と同様である。しかし、本実施の態様においては、フィルム給送により逆転防止爪62と巻上げノブ61との係合を解除する。即ち、巻上げノブ61を巻き上げるとフィルムが給送し、フィルムの給送により図示してない8個の歯を有しているスプロケットが1駒分の給送で1回転するが、同時にこのスプロケットと一体的に構成されたカム部材63も1回転する。カム部材63にはカム63aが設けられているので、カム63aの回転により逆転防止爪62を時計方向に押圧し、逆転防止爪62を退避させ、鋸歯61aとの係合を解除する。従って、逆転防止爪62を退避させたままで、フィルム巻上げを行うので、フィルム巻上げ中は逆転防止爪62による振動音が発生しない。
【0041】
また、カム部材63はフィルムの1駒巻上げで1回転するように構成されているので、フィルム巻上げ終了後には、カム部材63のカム63aは逆転防止爪62を押圧しない状態になり、逆転防止爪62の先端が再び鋸歯61aに係合するので、巻上げノブ61の逆回転は防止される。
【0042】
なお、カム部材63には指数器駆動軸63bが設けられ、指数器64の指数器歯車64aを1駒ずつ回転させる。また、カム部材63に更に別のカムを設け、シャッタチャージ等も行うことができる。
【0043】
〔第5の実施の態様〕
第5の実施の態様を図9及び図10に示す。図9及び図10はフィルムを巻き上げる前の巻上げノブ等の平面図である。
【0044】
本実施の態様における巻上げノブ71と逆転防止爪72との関係は、前に説明した実施の態様と同様である。しかし、本実施の態様においては、フィルム巻上げ時に巻上げノブ71を押圧して、巻上げノブ71を逆転防止爪72から退避させるものである。
【0045】
図9は巻上げノブ71を回転中心方向に移動させ、逆転防止爪72から退避可能なように、巻上げノブ71の嵌合軸71bが嵌合するカメラ本体の孔70を長孔に穿設して間隙を設けた図である。また、巻上げノブの中央に設けた突部71cと弾性的に形成されたレリーズ釦75の側面と当接させ、巻上げノブ71から手を離して巻上げノブ71の押圧を解除したときは、レリーズ釦75の時計方向の反力により巻上げノブ71を原位置に復帰させる。
【0046】
なお、このレリーズ釦75は紙面に垂直な方向と矢印の方向に移動可能に構成されているが、レリーズ釦75を用いずに通常の板バネ等からなる専用の付勢部材を用いて、巻上げノブ71を原位置に復帰させてもよい。
【0047】
図10は巻上げノブ71を回転方向の力によって図の右方向に移動させ、逆転防止爪72から退避可能なように、巻上げノブ71の嵌合軸71bが嵌合するカメラ本体の孔70を長孔に穿設して間隙を設けた図である。また前述と同様に、巻上げノブの中央に設けた突部71cと前カバー76の一部を弾性的に形成した弾性部76aと当接させ、巻上げノブ71から手を離して巻上げノブ71の回転を中止したときは、弾性部76aの反力により巻上げノブ71を原位置に復帰させる。
【0048】
なお、弾性部76aは必ずしも前カバー76の一部である必要はなく、通常の板バネ等からなる専用の付勢部材を用いて、巻上げノブ71を原位置に復帰させてもよい。
【0049】
以上の如く、本実施の態様においては図9又は図10の何れの場合でも巻上げ時には巻上げノブが移動して、逆転防止爪72から退避するので、フィルム巻上げ中は逆転防止爪72による振動音が発生しない。
【0050】
〔第6の実施の態様〕
第6の実施の態様を図11に示す。図11は巻上げノブと逆転防止爪の平面図であり、フィルムを巻き上げる前と巻上げ途中で図に大差ない。
【0051】
本実施の態様における巻上げノブ81と逆転防止爪82との関係は、前に説明した実施の態様と同様である。しかし、本実施の態様の逆転防止爪82には、操作部82aが設けられ、巻上げ時に巻上げノブ81と共に操作部82aが撮影者の指に当接するので、逆転防止爪82が巻上げノブ81の鋸歯81aの谷から山を越えるとき、振動が発生しても、その振動が操作部82aを介して撮影者の指で吸収するので、振動音がしても通常の振動音より遙に小さくなり、聞き苦しいことはない。
【0052】
なお、逆転防止爪82を樹脂製とし、本体と一体成形することもできる。
【0053】
〔第7の実施の態様〕
第7の実施の態様を図12乃至図15に示す。本実施の態様は逆転防止爪を用いずに、巻上げノブを巻上げ方向にのみ無段階に回転させる一方向クラッチを巻上げノブに係合させることにより、巻上げノブの逆転防止を行う。従って、フィルム巻上げ中において従来の如き逆転防止爪による振動音の発生がない。
【0054】
図12は一方向クラッチの一つである楔クラッチに関する平面断面図、図13は摩擦部材の1例の平面図、図14はカムクラッチに関する平面図、図15はスプリングクラッチに関する縦断面図である。
【0055】
先ず、楔クラッチについて、図12により説明する。巻上げノブ91には鋸歯91aと同心の孔91bが穿設され、孔91bの中央には図の如くカム状に形成されたカメラ本体92が設けられ、カメラ本体92と孔91bとの間隙には摩擦部材としてボール93が配置されている。巻上げノブ91を反時計方向である矢印の方向に回転させたとき、ボール93も孔91aの内周の摩擦力によって同方向に回転し、本体92と孔91bとの間隙の広い方向に移動するので、ボール93は何ら規制されることがない。従って、巻上げノブ91は矢印の方向に自由に回転できる。
【0056】
一方、巻上げノブ91を時計方向に回転させたときは、ボール93も孔91aの内周の摩擦力によって同方向に回転し、本体92と孔91bとの間隙が狭い、所謂楔状の方向に移動して固定され、その結果、巻上げノブ91の回転も不可能になる。
【0057】
従って、巻上げノブ91はフィルム巻上げ方向にのみ回転可能で、逆転はできないので、従来の逆転防止爪と同様な作用をするばかりか、逆転防止爪の如き不快音もしない。
【0058】
なお、摩擦部材としてボールに代えて、円柱状のコロを用いてもよいし、図13の如く樹脂で一体成形された3個の球状若しくは円柱状の摩擦部材を用いてもよい。
【0059】
更に、前述と逆に、巻上げノブ91の内周をカム状に形成し、カメラ本体92を同心の軸にしてもよい。
【0060】
次に、カムクラッチについて、図14により説明する。巻上げノブ101は鋸歯101aより小さい外径101bの段差を有し、その外径101bにはカム板102を軸103にて回動自在に軸支し、付勢部材104によりカム板102の先端を外径101bに圧接している。このように構成することにより、巻上げノブ101を反時計方向の矢印方向に回転させようとしたときは、カム板102の外径101bを付勢部材104の付勢力により圧接したまま、回転可能であるが、巻上げノブ101を時計方向に回転させようとしたときは、カム板102の先端が外径101bと突っ張り、巻上げノブ101を回転することができない。
【0061】
最後に、スプリングクラッチについて、図15により説明する。巻上げノブ111とカメラ本体112の間にはつる巻きバネ113が配置されている。つる巻きバネ113はその一端113aが巻上げノブ111に固着され、左巻きにカメラ本体112に巻き付いている。従って、巻上げノブ111によりフィルム巻上げを行うときは、つる巻きバネ113がカメラ本体112に対して緩む方向なので、つる巻きバネ113によって何ら規制されることなく巻上げ可能であるが、巻上げノブ111を逆回転させようとすると、つる巻きバネ113がカメラ本体112を締め付けるので、巻上げノブ111を回転させることができない。
【0062】
〔第8の実施の態様〕
第8の実施の態様を図16乃至図18に示す。図16は本実施の態様におけるフィルム巻上げ中の巻上げノブ等の平面図、図17は本実施の態様を上方から見た斜視図である。
【0063】
巻上げノブ121には、巻上げノブ121と同心にて円形な弾性部材124が一体的に形成されており、フィルム巻上げのために巻上げノブ121を回転させると弾性部材124も共に回転する。また、先端部を鋭角状に形成した逆転防止爪122が配置され、逆転防止爪122の先端部122aを弾性部材124の側面部124aに圧接している。また、逆転防止爪122の固定部122bは、巻上げノブ121の回転中心121aと逆転防止爪122の先端部122aとを結んで延長した直線より、巻上げノブ121のフィルム巻上げ方向Aの上流側、即ちBの領域に位置している。
【0064】
かかる構成で、巻上げノブ121を巻上げ方向Aに回転させるときは、逆転防止爪122の先端部122aは弾性部材124の側面部124aより退避する方向に作動するので、巻上げノブ121を支障なく巻き上げることができる。また、逆転防止爪122が振動することもないので、巻き上げ時に発生する音は非常に小さい。ここで、巻上げノブ121を巻上げ方向Aと逆方向に回転させようとすると、逆転防止爪122の先端部122aが弾性部材124の側面部124aを弾性変形させて食い付き、巻上げノブ121を逆回転させることはできない。従って、巻上げノブ121は一方向にのみしか回転することができない。
【0065】
なお、弾性部材124の材質としては、ゴムが最適であり、アクリルニトリル・ブタジェン・ラバー、天然ゴム、エチレン・プロピレン・ラバー等が好適である。
【0066】
なお、弾性部材としては、図18の斜視図に示すような環状の弾性部材134を用いてもよい。
【0067】
また、逆転防止爪122を弾性部材124の側面部124aに圧接するのではなく、弾性部材124の上面部124bを圧接するようにしてもよい。
【0068】
〔第9の実施の態様〕
第9の実施の態様を図19に示す。図19は本態様における巻上げノブを回転させないときの平面図である。
【0069】
巻上げノブ141の近傍には、カメラ本体若しくはカメラ本体に固着した部材の壁部144が設けられており、巻上げノブ141の側壁141aと壁部144の側壁144aとにより、巻上げノブ141の回転方向Aと逆方向に狭くなる略V字形の空間が形成されている。この空間に、逆転防止部材142において楔状に形成された先端部142aをB方向に押圧する。
【0070】
かかる構成で、巻上げノブ141を巻上げ方向Aに回転させるときは、巻上げノブ141の回転力により先端部142aはB方向と逆方向に退避する力が作用し、巻上げノブ141を支障なく巻き上げることができる。また、逆転防止部材142が振動することもないので、巻き上げ時に発生する音は非常に小さい。ここで、巻上げノブ141を巻上げ方向Aと逆方向に回転させようとすると、巻上げノブ141の逆回転力により先端部142aをB方向に作動させる力が作用し、逆転防止部材142の先端部142aが楔となって、巻上げノブ141の側壁141aと壁部144の側壁144aとの間に挿入されるので、巻上げノブ141の逆回転を阻止することになる。従って、巻上げノブ141は一方向にのみしか回転することができない。
【0071】
〔第10の実施の態様〕
第10の実施の態様を図20に示す。図20は本実施の態様における巻上げノブ等の図であり、図20(A)は縦断面図、図20(B)はH−H断面図である。
【0072】
巻上げノブ151はカメラ本体152と嵌合しており、巻上げノブ151の内周面には複数の鋸歯151aが形成され、複数の鋸歯151aより内周に位置するカメラ本体152の壁部には、複数の逆転防止爪152aが設けられており、複数の鋸歯151aと複数の逆転防止爪152aとが各々係合している。
【0073】
従って、図20(A)より容易に分かるように、巻上げノブ151を巻上げ方向であるA方向に回転させるときは、巻上げに支障なく、巻上げノブ151を逆回転させようとすると、複数の鋸歯151aが複数の逆転防止爪152aにより係止され、逆回転はできない。
【0074】
ここで、逆転防止爪152aは図3に示した従来の1本の逆転防止爪25とは異なり、非常に多数の本数を設けてあるので、その形状は小さく、厚みも薄い。従って、音質が変わって従来の如き耳障りな振動音にはならない。
【0075】
更に、音声が発生する部分に関しては、従来の逆転防止爪25が巻上げノブ18の外部に設けられているので、振動音が直接聞こえたが、本態様においては、逆転防止爪152aが巻上げノブ151の内部に設けられているので、外部に聞こえる音は小さくなる。その上、カメラ本体152に障壁152bを設けると、外部に聞こえる音は一層小さくなる。
【0076】
なお、上記の実施の態様とは逆に、複数の鋸歯をカメラ本体に設け、複数の逆転防止爪を巻上げノブに設けてもよい。
【0077】
更に、複数の鋸歯と複数の逆転防止爪は、円周方向でなく、巻上げノブの回転軸と平行な方向に設けてもよい。
【0078】
また、複数の鋸歯若しくは複数の逆転防止爪を設ける部材は、カメラ本体そのものでなくても、カメラ本体に固着した部材でもよいことは言うまでもない。
【0079】
【発明の効果】
本発明の請求項1〜によれば、フィルム巻上げ時に逆転防止爪を巻上げノブより退避させるので、逆転防止爪による耳障りな振動音の発生がない。従って、静粛が求められる場所でも自由に撮影することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】レンズ付きフィルムユニットを前方から見た斜視図である。
【図2】レンズ付きフィルムユニットを後方から見た斜視図である。
【図3】巻上げノブの逆回転を防止する従来の機構の図である。
【図4】第1の実施の態様におけるフィルム巻上げ中の巻上げノブ等の図である。
【図5】第1の実施の態様における解除部材の他の実施の態様である。
【図6】第2の実施の態様におけるフィルム巻上げ中の巻上げノブ等の平面図である。
【図7】第3の実施の態様におけるフィルム巻上げ中の巻上げノブ等の平面図である。
【図8】第4の実施の態様におけるフィルム巻上げ中の巻上げノブ等の平面図である。
【図9】第5の実施の態様におけるフィルムを巻き上げる前の巻上げノブの平面図である。
【図10】第5の実施の態様におけるフィルムを巻き上げる前の巻上げノブの平面図である。
【図11】第6の実施の態様における巻上げノブと逆転防止爪の平面図である。
【図12】第7の実施の態様における楔クラッチに関する平面断面図である。
【図13】第7の実施の態様における摩擦部材の1例の平面図である。
【図14】第7の実施の態様におけるカムクラッチに関する平面図である。
【図15】第7の実施の態様におけるスプリングクラッチに関する縦断面図である。
【図16】第8の実施の態様におけるフィルム巻上げ中の巻上げノブ等の平面図である。
【図17】第8の実施の態様を上方から見た斜視図である。
【図18】第8の実施の態様の変形例を上方から見た斜視図である。
【図19】第9の実施の態様における巻上げノブを回転させないときの平面図である。
【図20】第10の実施の態様における巻上げノブ等の図である。
【符号の説明】
18,31,41,51,61,71,81,91,101,111,121,141,151 巻上げノブ
18a,31a,41a,51a,61a,71a,81a,91a,101a,151a 鋸歯
25,32,42,52,62,72,82,122,152a 逆転防止爪
33,43,53 解除部材
63 カム部材
82a 操作部
91b 孔
92,112 カメラ本体
93 ボール
102 カム板
113 つる巻きバネ
124 弾性部材
142 逆転防止部材

Claims (3)

  1. 巻上げノブの回転操作によりフィルムを巻き上げ、前記巻上げノブの逆回転を防止する逆転防止爪を前記巻上げノブに係合させたカメラにおいて、
    前記逆転防止爪と係合する腕部を有し、前記巻上げノブと所定の摩擦力にて滑合することにより前記巻上げノブと一体的に回動し、前記巻上げノブの回転操作に伴い前記腕部にて前記逆転防止爪を退避させ、前記巻上げノブとの係合を解除する解除部材を備えたことを特徴とするカメラ。
  2. 巻上げノブの回転操作によりフィルムを巻き上げ、前記巻上げノブの逆回転を防止する逆転防止爪を前記巻上げノブに係合させたカメラにおいて、
    前記逆転防止爪と係合する腕部を有し、前記巻上げノブの回転操作時に撮影者の指にて共に回動させることにより前記腕部にて前記逆転防止爪を退避させ、前記巻上げノブとの係合を解除する解除部材を備えたことを特徴とするカメラ。
  3. 前記巻上げノブの回転操作によるフィルムを巻き上げ時に、前記解除部材の回動を所定の範囲で規制する規制部材を設けたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のカメラ。
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