JP3686818B2 - サイドエアバッグ装置 - Google Patents
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Description
【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は自動車の衝突時の衝撃から乗員を保護するエアバック装置に関し、特に側方からの衝撃に対して乗員の胸部と頭部を保護するサイドエアバッグ装置に関するものである。
【０００２】
【従来の技術】
車体側方からの衝撃に対して乗員の胸部と頭部を保護するサイドエアバッグ装置は、例えば特開平８−２７３６９３号公報に開示されているように、エアバッグとエアバッグ内に所要時にガスを吹き出すインフレータとを筐体内に収納したものを、シートバックの一側部、即ちシート上に座った乗員の後方一側部に配設して構成されており、図４に示すように、側突時にインフレータからの噴出ガスによってエアバッグ２１がシートバック２２の上部一側部から前方及び上方に向けて膨張展開し、乗員の胸部及び頭部の各側部を保護するように構成されている。
【０００３】
ところで、図４に示したようなエアバッグ２１では、乗員が座るシートを後方に位置調整した場合に、エアバッグ２１の膨張展開時にその後部がシートベルト装置のショルダアンカ２４から繰り出されているシートベルト２３と干渉し、エアバッグ２３が仮想線で示すように前方に振られ、頭部の保護エリアを十分確保できない場合が発生する恐れがあるという問題があった。
【０００４】
このような問題を解消するものとして、例えば特開平９−１２３８６４号公報や特開平１０−２８７１９５号公報等において、エアバッグのシートベルトと干渉する可能性のある部分を抉るとともに頭部保護部分を後方に張り出させたものが開示されている。図５を参照して、上記特開平９−１２３８６４号公報に開示された一例を説明すると、図示例では、エアバッグの膨張展開時に腕を撥ね上げる恐れがないように、筐体２５に頭部保護用エアバッグ２６と胸部保護用エアバッグ２７が個別に装着され、その頭部保護用エアバッグ２６は、全体として前方に向けて僅かに傾斜した状態で上方に膨出されるとともに、その中間部分の後部がシートベルト２３との干渉を避けるように大きく抉られるとともにその上部の頭部保護部分が後方に大きく張り出されている。
【０００５】
このような構成においては、側方からの衝撃によってインフレータが作動することによって頭部保護用エアバッグ２６内に向けて噴出したガスは、矢印の如くまず斜め前方上方に流れ、頭部保護部分の前部から後向きに方向を転換して頭部保護部分の後部に流れ込み、シートベルト２３との干渉を避けた膨張展開状態となって頭部が保護され、同時に胸部保護用エアバッグ２７も前方に膨張展開して胸部が保護される。
【０００６】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、図５に示したような構成のサイドエアバッグ装置においては、頭部保護用エアバッグ２６の膨張展開時に、噴出ガスが頭部保護部分の前部で方向転換してから後部に流れるので、頭部保護部分の後部が所定の膨張状態になるのに遅れを生じる恐れがあり、また頭部保護用エアバッグ２６の膨張展開時にその頭部保護部分の後方への出っ張り部分がシートベルト２３に引っ掛かる恐れがあって、特にその場合には所要のタイミングで適正な展開状態とならない可能性が高く、頭部保護が十全でない場合が生じる恐れがあり、一方逆に円滑に膨張展開した場合には、ガス流れが頭部保護部分の後部に衝突し、その慣性力によって頭部保護エアバッグが後方に位置振れしてしまい、頭部を適正に保護できない場合が生じる恐れがあるという問題がある。
【０００７】
本発明は、上記従来の問題点に鑑み、膨張展開時にシートベルトと干渉した場合でも悪影響を受けずに確実に頭部を保護できるサイドエアバッグ装置を提供することを目的とする。
【０００８】
【課題を解決するための手段】
本発明のサイドエアバッグ装置は、シートバックの側部に配設されて側方からの衝撃に対して乗員の胸部と頭部を保護するサイドエアバッグ装置であって、エアバッグの頭部保護部分を、断面がほぼ一定又は頭部に対応する部分に向けて若干大きくなるように徐々に変化して前後に張り出し部を有しない頂部閉鎖の筒形状とするとともに、頭部保護部分の車両前後方向後側部に、後縁から前方に延出する縫い線にて形成され、基部から先端に向かうストレートなガス流れを前方寄りに偏向させるガス流れ偏向手段を設け、かつこのガス流れ偏向手段は、シートベルトのショルダアンカ位置が車両前後方向で乗員頭部位置に略重なる位置となって、エアバッグの頭部保護部分の後部にシートベルトが干渉する場合、シートベルトがガス流れ偏向手段の上部に干渉するように配設し、シートベルトが干渉すると干渉した部分がへこみ、頭部保護部分の上部が後方に倒れるものである。
【０００９】
これにより、乗員が座るシートを後方に位置調整して頭部保護部分の後部にシートベルトが干渉する場合でも、頭部保護部分が筒形状でガス流れがストレートであるため、頭部保護部分の上方への展開力が大きく、シートベルトに引っ掛かることなく円滑に展開し、かつシートベルトがガス流れ偏向手段の上部に干渉すると、その部分の内圧が相対的に低いためにへこみ易く、それに伴ってガスの流れの慣性力で頭部保護部分の上部に後方に向かう回転モーメントが作用し、頭部保護部分の上部が後方に倒れて頭部が有効に保護される。
【００１０】
また、ガス流れ偏向手段を、ガスの流れ方向に対して垂直な方向よりガス流れに沿う方向に傾けて設けると、ガス流れ偏向手段にてガスの流れが阻害され難く、円滑なガス流れによって頭部保護部分の展開が速く、また頭部保護部分の上部の振れの原因となるガス流れによる回転モーメントの発生も殆どなく、シートを後方に位置調整していない場合の頭部保護作用がより安定的に得られる。
【００１１】
また、頭部保護部分の頂部をくさび形状とすると、頭部保護部分の展開時にシートベルトに引っ掛かる可能性を軽減できる。
【００１２】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のサイドエアバッグ装置の一実施形態について、図１〜図３を参照して説明する。
【００１３】
図１において、１はシートバック２の側部に配設されたサイドエアバッグ装置であり、そのエアバッグ３が折り畳み状態でインフレータ（図示せず）とともに筐体４内に配置されている。このサイドエアバッグ装置１は、側突時に側方からの衝撃を受けると、インフレータからガスが噴出し、エアバッグ３が前方及び上方に膨張展開して、仮想線で示す乗員Ｍの胸部及び頭部の側方を保護するように構成されている。
【００１４】
エアバッグ３は、シート上に座った乗員Ｍの肩部ないし腋下部の後部の基部５と、基部５から乗員Ｍの頭部の側部に向けて略上方に膨張展開する頭部保護部分６と、基部５から乗員Ｍの胸部の側部に向けて略前方に膨張展開する胸部保護部分７とを有する形状に構成されている。頭部保護部分６は、断面がほぼ一定し又は頭部に対応する部分に向けて若干大きくなるように徐々に変化して前後に張り出し部を有しない頂部閉鎖の筒形状に形成されている。胸部保護部分７は、基部５から略半長円状に形成されるとともに頭部保護部分６とは円弧状に滑らかに接続されている。
【００１５】
エアバッグ３の頭部保護部分６には、この頭部保護部分６が膨張展開するときにシートベルトと干渉する可能性のある後側部に、基部５から頭部保護部分６の頂部に向かうストレートなガス流れを前方寄りに偏向させるガス流れ偏向手段８が設けられている。また、このガス流れ偏向手段８は、ガスの流れ方向に対して垂直な方向よりガス流れに沿う方向に角度θだけ傾けて設けられている。さらに、頭部保護部分６の頂部には先端に向かって細くなるくさび形状部９が形成されている。
【００１６】
上記ガス流れ偏向手段８としては、図２（ａ）に示すように、エアバッグ３の袋体両面の布を縫い線８ａで結合したり、図２（ｂ）に示すように、袋体を細い幅で摘み上げ、その摘み上げ部８ｂと袋体との境界部を縫い線８ｃで結合したり、図２（ｃ）に示すように、摘み上げ部８ｂを袋体上に重ね合わせてその上から縫い線８ｄで結合したり、図２（ｄ）に示すように、袋体に切り込み８ｅを形成してその縁部を縫い線８ｆで結合する等、具体的な構成としては種々の態様を適用することができる。なお、上記縫い線８ａ、８ｃ、８ｄ、８ｆの端をループ状にすることにより応力集中を避けることができる。
【００１７】
以上の構成において、側方からの衝撃によってインフレータが作動すると、その噴出ガスによって、エアバッグ３の頭部保護部分６と胸部保護部分７が基部５から略上方と略前方にそれぞれ膨出展開する。したがって、乗員Ｍの腕を跳ね上げる恐れがなくかつ展開した頭部保護部分６と胸部保護部分７にてそれぞれ乗員Ｍの頭部と胸部が共に安定的に保護される。
【００１８】
さらに、乗員Ｍが座るシートの位置に応じたエアバッグ３の挙動を詳しく説明すると、シートが前方に位置調整されてシートベルト装置のショルダアンカ１０に掛けられたシートベルトが頭部保護部分６の後部に干渉しない場合には、図３（ａ）に示すように、頭部保護部分６におけるガス流れ方向がガス流れ偏向手段８が設けられていない場合の破線矢印よりも若干前方に偏向された矢印１１で示す方向にストレートに流れるため、頭部保護部分６の上方への突き上げ力が十分に大きく発生して頭部保護部分６は円滑に上方に膨張展開し、その後ガスが矢印１２のように若干後方に向けて流れるため、後方への倒れ力が発生するが、その倒れ力は小さいため頭部保護部分６はほぼ膨張展開した位置を保持して頭部が確実に保護される。
【００１９】
一方、乗員Ｍが座るシートを後方に位置調整してエアバッグ３の後部にシートベルトが干渉した場合には、図３（ｂ）に示すように、頭部保護部分６が多少前方向きに倒された状態になるとともにガス流れ方向が矢印１３の如く多少前方に傾くが、頭部保護部分６は筒形状でガス流れがストレートであるため、頭部保護部分６の上方への展開力は大きく、シートベルトに引っ掛かることなく円滑に展開し、かつシートベルトがガス流れ偏向手段８の上部に干渉することで、その部分の内圧が相対的に低いためにへこみ易く、それに伴って図３（ｃ）に示すように、ガス流れの慣性力で頭部保護部分６の上部に矢印１４で示すように後方に向かう回転モーメントが作用し、頭部保護部分６の上部が後方に倒れて頭部が有効に保護される。
【００２０】
また、ガス流れ偏向手段８は、ガスの流れ方向に対して垂直な方向よりガス流れに沿う方向にθだけ傾けて設けられているので、図３（ａ）、（ｂ）に示す頭部保護部分６の膨張展開時に、ガスの流れがガス流れ偏向手段８にて阻害され難く、円滑なガス流れによって頭部保護部分６の展開を速くできる。また、図３（ａ）の膨張展開時において、頭部保護部分６の上部の振れの原因となるガス流れによる回転モーメントの発生も殆どなくすことができ、頭部保護作用がより安定的に得られる。また、頭部保護部分６の頂部をくさび形状部９としているので、図３（ａ）、（ｂ）の膨張展開時に、シートベルトに引っ掛かる可能性を軽減でき、確実にかつ円滑に膨張展開させることができる。
【００２１】
【発明の効果】
本発明のサイドエアバッグ装置によれば、以上のようにエアバッグの頭部保護部分を前後に張り出し部を有しない頂部閉鎖の筒形状とするとともに、頭部保護部分の車両前後方向後側部に、後縁から前方に延出する縫い線にて形成され、基部から先端に向かうストレートなガス流れを前方寄りに偏向させるガス流れ偏向手段を設け、かつこのガス流れ偏向手段は、シートベルトのショルダアンカ位置が車両前後方向で乗員頭部位置に略重なる位置となって、エアバッグの頭部保護部分の後部にシートベルトが干渉する場合、シートベルトがガス流れ偏向手段の上部に干渉するように配設し、シートベルトが干渉すると干渉した部分がへこみ、頭部保護部分の上部が後方に倒れるようにしたので、シートベルトのショルダアンカ位置が車両前後方向で乗員頭部位置に略重なる位置となって、頭部保護部分の後部にシートベルトが干渉しても、ガス流れがストレートで頭部保護部分の上方への展開力が大きいためにシートベルトに引っ掛かることなく円滑に展開し、その後シートベルトがガス流れ偏向手段の上部に干渉していると、その部分のガス圧が相対的に低いためにへこみ、それに伴ってガスの流れの慣性力で頭部保護部分の上部に後方に向かう回転モーメントが作用し、頭部保護部分の上部が後方に倒れることにより、頭部を確実に保護することができる。
【００２２】
また、ガス流れ偏向手段を、ガスの流れ方向に対して垂直な方向よりガス流れに沿う方向に傾けて設けると、ガス流れ偏向手段にてガスの流れが阻害され難いので頭部保護部分の展開が速く、またガス流れによる回転モーメントの発生も殆どないため、シートを後方に位置調整していない場合に頭部保護部分の上部の振れが発生せず、頭部保護作用がより安定的に得られる。
【００２３】
また、頭部保護部分の頂部をくさび形状とすると、頭部保護部分の展開時にシートベルトに引っ掛かる可能性を軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【図１】本発明のサイドエアバッグ装置の一実施形態におけるエアバッグの膨張展開状態を示す側面図である。
【図２】同実施形態におけるガス流れ偏向手段の種々の具体構成例を示す側面図である。
【図３】同実施形態においてシート位置を種々に異ならせた時のエアバッグの膨張展開状態を示す側面図である。
【図４】従来例のサイドエアバッグ装置におけるエアバッグの膨張展開状態を示す側面図である。
【図５】他の従来例のサイドエアバッグ装置におけるエアバッグの膨張展開状態を示す側面図である。
【符号の説明】
１ サイドエアバッグ装置
２ シートバック
３ エアバッグ
６ 頭部保護部分
８ ガス流れ偏向手段
９ くさび形状部
【発明の属する技術分野】
本発明は自動車の衝突時の衝撃から乗員を保護するエアバック装置に関し、特に側方からの衝撃に対して乗員の胸部と頭部を保護するサイドエアバッグ装置に関するものである。
【０００２】
【従来の技術】
車体側方からの衝撃に対して乗員の胸部と頭部を保護するサイドエアバッグ装置は、例えば特開平８−２７３６９３号公報に開示されているように、エアバッグとエアバッグ内に所要時にガスを吹き出すインフレータとを筐体内に収納したものを、シートバックの一側部、即ちシート上に座った乗員の後方一側部に配設して構成されており、図４に示すように、側突時にインフレータからの噴出ガスによってエアバッグ２１がシートバック２２の上部一側部から前方及び上方に向けて膨張展開し、乗員の胸部及び頭部の各側部を保護するように構成されている。
【０００３】
ところで、図４に示したようなエアバッグ２１では、乗員が座るシートを後方に位置調整した場合に、エアバッグ２１の膨張展開時にその後部がシートベルト装置のショルダアンカ２４から繰り出されているシートベルト２３と干渉し、エアバッグ２３が仮想線で示すように前方に振られ、頭部の保護エリアを十分確保できない場合が発生する恐れがあるという問題があった。
【０００４】
このような問題を解消するものとして、例えば特開平９−１２３８６４号公報や特開平１０−２８７１９５号公報等において、エアバッグのシートベルトと干渉する可能性のある部分を抉るとともに頭部保護部分を後方に張り出させたものが開示されている。図５を参照して、上記特開平９−１２３８６４号公報に開示された一例を説明すると、図示例では、エアバッグの膨張展開時に腕を撥ね上げる恐れがないように、筐体２５に頭部保護用エアバッグ２６と胸部保護用エアバッグ２７が個別に装着され、その頭部保護用エアバッグ２６は、全体として前方に向けて僅かに傾斜した状態で上方に膨出されるとともに、その中間部分の後部がシートベルト２３との干渉を避けるように大きく抉られるとともにその上部の頭部保護部分が後方に大きく張り出されている。
【０００５】
このような構成においては、側方からの衝撃によってインフレータが作動することによって頭部保護用エアバッグ２６内に向けて噴出したガスは、矢印の如くまず斜め前方上方に流れ、頭部保護部分の前部から後向きに方向を転換して頭部保護部分の後部に流れ込み、シートベルト２３との干渉を避けた膨張展開状態となって頭部が保護され、同時に胸部保護用エアバッグ２７も前方に膨張展開して胸部が保護される。
【０００６】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、図５に示したような構成のサイドエアバッグ装置においては、頭部保護用エアバッグ２６の膨張展開時に、噴出ガスが頭部保護部分の前部で方向転換してから後部に流れるので、頭部保護部分の後部が所定の膨張状態になるのに遅れを生じる恐れがあり、また頭部保護用エアバッグ２６の膨張展開時にその頭部保護部分の後方への出っ張り部分がシートベルト２３に引っ掛かる恐れがあって、特にその場合には所要のタイミングで適正な展開状態とならない可能性が高く、頭部保護が十全でない場合が生じる恐れがあり、一方逆に円滑に膨張展開した場合には、ガス流れが頭部保護部分の後部に衝突し、その慣性力によって頭部保護エアバッグが後方に位置振れしてしまい、頭部を適正に保護できない場合が生じる恐れがあるという問題がある。
【０００７】
本発明は、上記従来の問題点に鑑み、膨張展開時にシートベルトと干渉した場合でも悪影響を受けずに確実に頭部を保護できるサイドエアバッグ装置を提供することを目的とする。
【０００８】
【課題を解決するための手段】
本発明のサイドエアバッグ装置は、シートバックの側部に配設されて側方からの衝撃に対して乗員の胸部と頭部を保護するサイドエアバッグ装置であって、エアバッグの頭部保護部分を、断面がほぼ一定又は頭部に対応する部分に向けて若干大きくなるように徐々に変化して前後に張り出し部を有しない頂部閉鎖の筒形状とするとともに、頭部保護部分の車両前後方向後側部に、後縁から前方に延出する縫い線にて形成され、基部から先端に向かうストレートなガス流れを前方寄りに偏向させるガス流れ偏向手段を設け、かつこのガス流れ偏向手段は、シートベルトのショルダアンカ位置が車両前後方向で乗員頭部位置に略重なる位置となって、エアバッグの頭部保護部分の後部にシートベルトが干渉する場合、シートベルトがガス流れ偏向手段の上部に干渉するように配設し、シートベルトが干渉すると干渉した部分がへこみ、頭部保護部分の上部が後方に倒れるものである。
【０００９】
これにより、乗員が座るシートを後方に位置調整して頭部保護部分の後部にシートベルトが干渉する場合でも、頭部保護部分が筒形状でガス流れがストレートであるため、頭部保護部分の上方への展開力が大きく、シートベルトに引っ掛かることなく円滑に展開し、かつシートベルトがガス流れ偏向手段の上部に干渉すると、その部分の内圧が相対的に低いためにへこみ易く、それに伴ってガスの流れの慣性力で頭部保護部分の上部に後方に向かう回転モーメントが作用し、頭部保護部分の上部が後方に倒れて頭部が有効に保護される。
【００１０】
また、ガス流れ偏向手段を、ガスの流れ方向に対して垂直な方向よりガス流れに沿う方向に傾けて設けると、ガス流れ偏向手段にてガスの流れが阻害され難く、円滑なガス流れによって頭部保護部分の展開が速く、また頭部保護部分の上部の振れの原因となるガス流れによる回転モーメントの発生も殆どなく、シートを後方に位置調整していない場合の頭部保護作用がより安定的に得られる。
【００１１】
また、頭部保護部分の頂部をくさび形状とすると、頭部保護部分の展開時にシートベルトに引っ掛かる可能性を軽減できる。
【００１２】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のサイドエアバッグ装置の一実施形態について、図１〜図３を参照して説明する。
【００１３】
図１において、１はシートバック２の側部に配設されたサイドエアバッグ装置であり、そのエアバッグ３が折り畳み状態でインフレータ（図示せず）とともに筐体４内に配置されている。このサイドエアバッグ装置１は、側突時に側方からの衝撃を受けると、インフレータからガスが噴出し、エアバッグ３が前方及び上方に膨張展開して、仮想線で示す乗員Ｍの胸部及び頭部の側方を保護するように構成されている。
【００１４】
エアバッグ３は、シート上に座った乗員Ｍの肩部ないし腋下部の後部の基部５と、基部５から乗員Ｍの頭部の側部に向けて略上方に膨張展開する頭部保護部分６と、基部５から乗員Ｍの胸部の側部に向けて略前方に膨張展開する胸部保護部分７とを有する形状に構成されている。頭部保護部分６は、断面がほぼ一定し又は頭部に対応する部分に向けて若干大きくなるように徐々に変化して前後に張り出し部を有しない頂部閉鎖の筒形状に形成されている。胸部保護部分７は、基部５から略半長円状に形成されるとともに頭部保護部分６とは円弧状に滑らかに接続されている。
【００１５】
エアバッグ３の頭部保護部分６には、この頭部保護部分６が膨張展開するときにシートベルトと干渉する可能性のある後側部に、基部５から頭部保護部分６の頂部に向かうストレートなガス流れを前方寄りに偏向させるガス流れ偏向手段８が設けられている。また、このガス流れ偏向手段８は、ガスの流れ方向に対して垂直な方向よりガス流れに沿う方向に角度θだけ傾けて設けられている。さらに、頭部保護部分６の頂部には先端に向かって細くなるくさび形状部９が形成されている。
【００１６】
上記ガス流れ偏向手段８としては、図２（ａ）に示すように、エアバッグ３の袋体両面の布を縫い線８ａで結合したり、図２（ｂ）に示すように、袋体を細い幅で摘み上げ、その摘み上げ部８ｂと袋体との境界部を縫い線８ｃで結合したり、図２（ｃ）に示すように、摘み上げ部８ｂを袋体上に重ね合わせてその上から縫い線８ｄで結合したり、図２（ｄ）に示すように、袋体に切り込み８ｅを形成してその縁部を縫い線８ｆで結合する等、具体的な構成としては種々の態様を適用することができる。なお、上記縫い線８ａ、８ｃ、８ｄ、８ｆの端をループ状にすることにより応力集中を避けることができる。
【００１７】
以上の構成において、側方からの衝撃によってインフレータが作動すると、その噴出ガスによって、エアバッグ３の頭部保護部分６と胸部保護部分７が基部５から略上方と略前方にそれぞれ膨出展開する。したがって、乗員Ｍの腕を跳ね上げる恐れがなくかつ展開した頭部保護部分６と胸部保護部分７にてそれぞれ乗員Ｍの頭部と胸部が共に安定的に保護される。
【００１８】
さらに、乗員Ｍが座るシートの位置に応じたエアバッグ３の挙動を詳しく説明すると、シートが前方に位置調整されてシートベルト装置のショルダアンカ１０に掛けられたシートベルトが頭部保護部分６の後部に干渉しない場合には、図３（ａ）に示すように、頭部保護部分６におけるガス流れ方向がガス流れ偏向手段８が設けられていない場合の破線矢印よりも若干前方に偏向された矢印１１で示す方向にストレートに流れるため、頭部保護部分６の上方への突き上げ力が十分に大きく発生して頭部保護部分６は円滑に上方に膨張展開し、その後ガスが矢印１２のように若干後方に向けて流れるため、後方への倒れ力が発生するが、その倒れ力は小さいため頭部保護部分６はほぼ膨張展開した位置を保持して頭部が確実に保護される。
【００１９】
一方、乗員Ｍが座るシートを後方に位置調整してエアバッグ３の後部にシートベルトが干渉した場合には、図３（ｂ）に示すように、頭部保護部分６が多少前方向きに倒された状態になるとともにガス流れ方向が矢印１３の如く多少前方に傾くが、頭部保護部分６は筒形状でガス流れがストレートであるため、頭部保護部分６の上方への展開力は大きく、シートベルトに引っ掛かることなく円滑に展開し、かつシートベルトがガス流れ偏向手段８の上部に干渉することで、その部分の内圧が相対的に低いためにへこみ易く、それに伴って図３（ｃ）に示すように、ガス流れの慣性力で頭部保護部分６の上部に矢印１４で示すように後方に向かう回転モーメントが作用し、頭部保護部分６の上部が後方に倒れて頭部が有効に保護される。
【００２０】
また、ガス流れ偏向手段８は、ガスの流れ方向に対して垂直な方向よりガス流れに沿う方向にθだけ傾けて設けられているので、図３（ａ）、（ｂ）に示す頭部保護部分６の膨張展開時に、ガスの流れがガス流れ偏向手段８にて阻害され難く、円滑なガス流れによって頭部保護部分６の展開を速くできる。また、図３（ａ）の膨張展開時において、頭部保護部分６の上部の振れの原因となるガス流れによる回転モーメントの発生も殆どなくすことができ、頭部保護作用がより安定的に得られる。また、頭部保護部分６の頂部をくさび形状部９としているので、図３（ａ）、（ｂ）の膨張展開時に、シートベルトに引っ掛かる可能性を軽減でき、確実にかつ円滑に膨張展開させることができる。
【００２１】
【発明の効果】
本発明のサイドエアバッグ装置によれば、以上のようにエアバッグの頭部保護部分を前後に張り出し部を有しない頂部閉鎖の筒形状とするとともに、頭部保護部分の車両前後方向後側部に、後縁から前方に延出する縫い線にて形成され、基部から先端に向かうストレートなガス流れを前方寄りに偏向させるガス流れ偏向手段を設け、かつこのガス流れ偏向手段は、シートベルトのショルダアンカ位置が車両前後方向で乗員頭部位置に略重なる位置となって、エアバッグの頭部保護部分の後部にシートベルトが干渉する場合、シートベルトがガス流れ偏向手段の上部に干渉するように配設し、シートベルトが干渉すると干渉した部分がへこみ、頭部保護部分の上部が後方に倒れるようにしたので、シートベルトのショルダアンカ位置が車両前後方向で乗員頭部位置に略重なる位置となって、頭部保護部分の後部にシートベルトが干渉しても、ガス流れがストレートで頭部保護部分の上方への展開力が大きいためにシートベルトに引っ掛かることなく円滑に展開し、その後シートベルトがガス流れ偏向手段の上部に干渉していると、その部分のガス圧が相対的に低いためにへこみ、それに伴ってガスの流れの慣性力で頭部保護部分の上部に後方に向かう回転モーメントが作用し、頭部保護部分の上部が後方に倒れることにより、頭部を確実に保護することができる。
【００２２】
また、ガス流れ偏向手段を、ガスの流れ方向に対して垂直な方向よりガス流れに沿う方向に傾けて設けると、ガス流れ偏向手段にてガスの流れが阻害され難いので頭部保護部分の展開が速く、またガス流れによる回転モーメントの発生も殆どないため、シートを後方に位置調整していない場合に頭部保護部分の上部の振れが発生せず、頭部保護作用がより安定的に得られる。
【００２３】
また、頭部保護部分の頂部をくさび形状とすると、頭部保護部分の展開時にシートベルトに引っ掛かる可能性を軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【図１】本発明のサイドエアバッグ装置の一実施形態におけるエアバッグの膨張展開状態を示す側面図である。
【図２】同実施形態におけるガス流れ偏向手段の種々の具体構成例を示す側面図である。
【図３】同実施形態においてシート位置を種々に異ならせた時のエアバッグの膨張展開状態を示す側面図である。
【図４】従来例のサイドエアバッグ装置におけるエアバッグの膨張展開状態を示す側面図である。
【図５】他の従来例のサイドエアバッグ装置におけるエアバッグの膨張展開状態を示す側面図である。
【符号の説明】
１ サイドエアバッグ装置
２ シートバック
３ エアバッグ
６ 頭部保護部分
８ ガス流れ偏向手段
９ くさび形状部
Claims (3)
- シートバックの側部に配設されて側方からの衝撃に対して乗員の胸部と頭部を保護するサイドエアバッグ装置であって、エアバッグの頭部保護部分を、断面がほぼ一定又は頭部に対応する部分に向けて若干大きくなるように徐々に変化して前後に張り出し部を有しない頂部閉鎖の筒形状とするとともに、頭部保護部分の車両前後方向後側部に、後縁から前方に延出する縫い線にて形成され、基部から先端に向かうストレートなガス流れを前方寄りに偏向させるガス流れ偏向手段を設け、かつこのガス流れ偏向手段は、シートベルトのショルダアンカ位置が車両前後方向で乗員頭部位置に略重なる位置となって、エアバッグの頭部保護部分の後部にシートベルトが干渉する場合、シートベルトがガス流れ偏向手段の上部に干渉するように配設し、シートベルトが干渉すると干渉した部分がへこみ、頭部保護部分の上部が後方に倒れることを特徴とするサイドエアバッグ装置。
- ガス流れ偏向手段を、ガスの流れ方向に対して垂直な方向よりガス流れに沿う方向に傾けて設けたことを特徴とする請求項１記載のサイドエアバッグ装置。
- 頭部保護部分の頂部をくさび形状としたことを特徴とする請求項１又は２記載のサイドエアバッグ装置。
Priority Applications (1)
| Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
|---|---|---|---|
| JP2000105867A JP3686818B2 (ja) | 2000-04-07 | 2000-04-07 | サイドエアバッグ装置 |
Applications Claiming Priority (1)
| Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
|---|---|---|---|
| JP2000105867A JP3686818B2 (ja) | 2000-04-07 | 2000-04-07 | サイドエアバッグ装置 |
Publications (2)
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