JP3686630B2 - 動圧軸受装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、軸受隙間に生じた油の動圧で軸部材を非接触支持する動圧軸受装置に関する。この軸受装置は、情報機器のモータ類、例えばHDD・FDD等の磁気ディスク装置、CD−ROM・DVD−ROM等の光ディスク装置、MD・MO等の光磁気ディスク装置などのスピンドルモータ、レーザビームプリンタ(LBP)のポリゴンスキャナモータ、あるいは電気機器、例えば軸流ファンなどの小型モータ用として好適である。
【0002】
【従来の技術】
上記各種モータには、高回転精度の他、高速化、低コスト化、低騒音化などが求められている.これらの要求性能を決定づける構成要素の一つに当該モータのスピンドルを支持する軸受があり、近年ではこの種の軸受として、上記要求性能に優れた特性を有する動圧軸受の使用が検討され、あるいは実際に使用されている。
【0003】
例えば、HDD等のディスク装置のスピンドルモータに組み込まれる動圧軸受装置としては、ハウジングの内周に焼結金属製の軸受スリーブを固定すると共に、軸受スリーブの内周に軸部材を配置した構造が知られている。この動圧軸受装置では、軸部材の回転により、ラジアル軸受隙間に油の動圧を発生させて、回転側となる軸部材をラジアル方向で非接触状態で支持する。ラジアル軸受隙間に油の動圧を発生させるための溝(動圧溝)は、軸部材の外周、もしくは軸受スリーブの内周の何れか一方に形成されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、この種の動圧軸受装置においては、動圧溝を、軸方向に対して傾斜させたヘリングボーン形状に配列する場合が多い。この傾斜状動圧溝は、軸部材の回転に伴って油を軸方向に引き込む力を生じるため、この引き込み力でラジアル軸受隙間の一部領域に油が集められて動圧を生じ、この動圧によって、軸部材が軸受スリーブに対して非接触に支持される。この場合、軸受スリーブとして焼結金属を使用すると、焼結金属の表面から滲み出した油でラジアル軸受隙間に随時油を補給することができるため、油不足を招くことなく、高い油膜剛性が得られる。
【0005】
しかしながら、何らかの理由、例えば加工誤差等によって設計よりも動圧溝が幅広に形成されている場合には、油に作用する引き込み力が増大し、相対的に油の供給量が不足してラジアル軸受隙間に負圧を生じる場合がある。特にラジアル軸受隙間の外気開放側でこのような負圧を生じると、外部のエアがラジアル軸受隙間に巻き込まれたり、油中に内在していたエアが泡となってラジアル軸受隙間に発生する場合があり、軸受隙間での動圧特性に悪影響を与えることとなる。
【0006】
このような事態を防止するため、従来では、動圧溝の加工精度をできる限り高める等の対策を講じているが、加工精度の向上には限度があり、またコストアップの要因ともなるので好ましくない。さらに、加工精度を高めても、ラジアル軸受隙間への油の供給量にばらつきがある場合は、負圧が発生する場合があり、品質安定性の面で問題がある。
【0007】
そこで、本発明は、簡単かつ低コストにラジアル軸受隙間での負圧の発生を防止することのできる動圧軸受装置の提供を目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明にかかる動圧軸受装置は、一端に開口部、他端に底部を有するハウジングと、焼結金属からなり、ハウジングの内周に固定された軸受スリーブと、軸受スリーブの内周に挿入した軸部材と、軸方向に対して傾斜させた複数の動圧溝と、軸部材の外周と軸受スリーブの内周との間に軸方向に離隔して形成され、軸部材と軸受スリーブとの相対回転時に、上記動圧溝の作用で油の動圧を発生させる複数のラジアル軸受隙間とを備え、軸受スリーブは、前記ハウジングの開口側に位置する外気開放側の端部と前記ハウジングの底部側に位置する外気遮断側の端部とを有し、軸受スリーブの外気開放側に、油面を有するシール空間を形成し、軸部材の外周と軸受スリーブの内周との間の隙間に満たされた油が全体として外気遮断側に押し込まれ、前記軸受スリーブの外気遮断側の端部に、その開孔率を軸受スリーブのラジアル軸受面となる領域およびラジアル軸受面間の領域を含む内周面の開孔率よりも大きくした油導入部を形成すると共に、前記軸受スリーブの外気開放側の端部に、その開孔率を軸受スリーブの前記内周面の開孔率よりも大きくした油排出部を形成したものである。なお、動圧溝は、ラジアル軸受隙間に面する軸部材の外周面もしくは軸受スリーブの内周面に形成することができる。
【0009】
この場合において、軸受スリーブの何れか一方の端部、例えばラジアル軸受隙間の外気遮断側の端部に、その開孔率を軸受スリーブの内周面(面取り部を除く)の開孔率よりも大きくした油導入部を形成すれば、油導入部を介して焼結金属製の軸受スリーブ内に吸収される油の量が増える。吸収された油は、軸受スリーブ内を通って軸受スリーブの他方(上記例でいえばラジアル軸受隙間の外気開放側)の端部から滲み出し、ラジアル軸受隙間に供給される。この際、上述のように油導入部によって軸受スリーブ内への吸収油量が増えているので、軸受スリーブの他方の端部からラジアル軸受隙間に供給される油量も増える。従って、当該ラジアル軸受隙間に潤沢な油を供給することができ、このラジアル軸受隙間での負圧の発生を確実に回避することが可能となる。
【0010】
上記の焼結金属としては、例えば、銅、鉄、及びアルミニウムの中から選択される1種以上の金属粉末、若しくは銅被覆鉄粉などの被覆処理を施した金属粉末(合金粉を含む)を主原料とし、必要に応じて、すず、亜鉛、鉛、黒鉛、二硫化モリブデン等の粉末又はこれらの合金粉末を混合し、成形し、焼結して得られたものを用いることができる。このような焼結金属は、内部に多数の気孔(内部組織としての気孔)を備えていると共に、これら気孔が外表面に通じて形成される多数の開孔を備えている(多孔質体)。
【0011】
ここで、上記の「開孔率」は、単位面積当たりに占める、各開孔の面積の総和(総面積)の比率をいい、以下の条件で測定されるものである。
[測定器具]
金属顕微鏡:Nikon ECLIPSS ME600
デジタルカメラ:Nikon DXM1200
写真撮影ソフト:Nikon ACT−1 ver.1
画像処理ソフト:イノテック製 QUICK GRAIN
[測定条件]
写真撮影:シャッタースピード0.5秒
2値化しきい値:235
【0012】
上記油導入部は、軸受スリーブの端部のうち、特に内周面取り部に形成するのが望ましい。
【0013】
さらに、軸受スリーブの他方の端部、例えばラジアル軸受隙間の外気開放側の端部に、その開孔率を軸受スリーブの内周面の開孔率よりも大きくした油排出部を形成すれば、この油排出部から滲み出す油量が増える。従って、ラジアル軸受隙間への油の供給量を増やすことができ、上記油導入部を形成したことの効果と相俟って、ラジアル軸受隙間での負圧の発生をより確実に防止することが可能となる。
【0014】
油排出部は、軸受スリーブの内周面取り部に形成するのが望ましい。
【0015】
上述の動圧軸受装置には、さらに、軸部材をスラスト方向で支持するスラスト軸受部を設けることができる。
【0016】
スラスト軸受部は、保油部の外気遮断側と連通したスラスト軸受隙間を有する動圧軸受とし、あるいは、軸部材の端部を接触支持するものとすることができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図1〜図4に基づいて説明する。
【0018】
図1は、この実施形態にかかる動圧軸受装置1を組み込んだ情報機器用スピンドルモータの一構成例を示している。このスピンドルモータは、HDD等のディスク駆動装置に用いられるもので、軸部材2を回転自在に非接触支持する動圧軸受装置1と、軸部材2に装着されたディスクハブ3と、半径方向のギャップを介して対向させたモータステータ4およびモータロータ5とを備えている。ステータ4はケーシング6の外周に取付けられ、ロータ5はディスクハブ3の内周に取付けられる。動圧軸受装置1のハウジング7は、ケーシング6の内周に装着される。ディスクハブ3には、磁気ディスク等のディスクDが一又は複数枚保持される。ステータ4に通電すると、ステータ4とロータ5との間の励磁力でロータ5が回転し、それによってディスクハブ3および軸部材2が一体となって回転する。
【0019】
図2は、動圧軸受装置1の一実施形態を示している。この動圧軸受装置1は、一端に開口部7a、他端に底部7cを有する有底円筒状のハウジング7と、ハウジング7の内周面に固定された円筒状の軸受スリーブ8と、軸受スリーブ8の内周に挿入された軸部材2と、ハウジング7の開口部7aに固定されたシール部材10とを主要な部材として構成される。尚、以下では、説明の便宜上、ハウジング7の開口部7a側を上方向、ハウジング7の底部7c側を下方向として説明を進める。
【0020】
この動圧軸受装置1においては、軸受スリーブ8と軸部材2の軸部2aとの間に、それぞれ動圧軸受からなる第1ラジアル軸受部R1と第2動圧軸受部R2とが軸方向に離隔して設けられる。また、軸受スリーブ8の下側端面8cと軸部材2のフランジ部2bの上側端面2b1との間に、動圧軸受からなる第1スラスト軸受部T1が設けられ、ハウジング7の底部7cの内底面7c1とフランジ部2bの下側端面2b2との間に、同じく動圧軸受からなる第2スラスト軸受部T2が設けられる。なお、ラジアル軸受部の数は、一つあるいは三つ以上とすることもできる。
【0021】
軸部材2は、例えば、ステンレス鋼(SUS420J2)等の金属材で形成され、軸部2aと、軸部2aの下端に一体又は別体に設けられたフランジ部2bとを備えている。
【0022】
ハウジング7は、例えば真ちゅう等の軟質金属材で形成され、円筒状の側部7bと円板状の底部7cとを別体構造として備えている。底部7cの内側面7c1のうち、動圧を発生するためのスラスト軸受面(第2スラスト軸受部T2の軸受面)となる領域には、プレス加工等によりスパイラル形状やへリングボーン形状の動圧溝(図示省略)が形成されている。ハウジング7の内周面7dの他端には、他所よりも大径に形成した大径部7eが形成され、この大径部7eに底部7cとなる蓋状部材が例えば加締め、接着、あるいは圧入等の手段で固定されている。
【0023】
軸受スリーブ8は、焼結金属、より具体的には油を含浸させた含油焼結金属で形成される。軸受スリーブ8の内周面8aには、動圧を発生するためのラジアル軸受面(第1ラジアル軸受部R1と第2ラジアル軸受部R2の各ラジアル軸受面)となる上下2つの領域が軸方向に離隔して設けられている。
【0024】
図3に示すように、第1ラジアル軸受部R1のラジアル軸受面となる領域はヘリングボーン形状の複数の動圧溝8a1,8a2を備える。この実施形態において、図面上方側の動圧溝8a1の軸方向長さは、これと反対方向に傾斜した図面下方側の動圧溝8a2よりも大きく、軸方向非対称形状になっている。
【0025】
第2ラジアル軸受部R2のラジアル軸受面となる領域も、同様に、ヘリングボーン形状の複数の動圧溝8a3,8a4を備え、軸方向の一方に傾斜した複数の動圧溝8a3と、軸方向の他方に傾斜した複数の動圧溝8a4とが軸方向に離隔して形成されている。但し、この実施形態では、第1ラジアル軸受部R1と異なり、両動圧溝8a3,8a4の軸方向長さは等しく、軸方向対称形状になっている。また、第1ラジアル軸受部R1の軸方向長さの全長は、第2ラジアル軸受部R2の軸方向長さの全長よりも大きい。
【0026】
両軸受部R1,R2のラジアル軸受面となる領域と、これに対向する軸部2aの外周面との間にはラジアル軸受隙間9a,9bが形成される。このラジアル軸受隙間9a,9bは、それぞれ上側がシール部材10を介して外気に開放され、下側が外気に対して遮断されている。
【0027】
一般に、へリングボーン形状のように軸方向に対して傾斜した形状の動圧溝では、軸受の運転中に軸方向への油の引き込み作用が生じる。従って、本実施形態においても動圧溝8a1〜8a4は油の引き込み部となり、この引き込み部8a1〜8a4によってラジアル軸受隙間9a,9bに引き込まれた油は、動圧溝8a1と8a2の間、および動圧溝8a3と8a4の間の平滑部n1,n2周辺に集められ、油膜を形成する。
【0028】
上述のように、第1ラジアル軸受部R1の動圧溝形状を非対称とした場合、第1ラジアル軸受部R1では下側に向かう油の引き込み力が上側に向かう油の引き込み力に対して勝るため、その圧力差が下向きの油の流れを発生する要因となる。また、第1ラジアル軸受部R1の軸方向長さが第2ラジアル軸受部R2のそれよりも長いため、油の引き込み力は、第1ラジアル軸受部R1の方が第2ラジアル軸受部R2よりも大きくなる。以上の作用により、軸部2aの外周面と軸受スリーブ8の内周面8aとの間の隙間に満たされた油は、全体として下向きに押し込まれ、スラスト軸受部T1,T2のスラスト軸受隙間に供給される。下向きに押し込まれた油を第一ラジアル軸受部R1側に戻すため、軸受スリーブ8の外周面8dには、その両端面8b,8cに開口した循環溝(図示省略)が形成されている。循環溝はハウジングの内周面7dに形成することもできる。
【0029】
なお、ラジアル軸受部R1,R2の各動圧溝8a1〜8a4は、軸方向に対して傾斜した形状であれば足りる。これに該当する動圧溝形状としては、図示のようなヘリングボーン形の他、スパイラル形に配列したものも考えられる。
【0030】
軸受スリーブ8の両端面8b、8cのうち、下側端面8cの、動圧を発生するためのスラスト軸受面(第1スラスト軸受部T1のスラスト軸受面)となる領域には、図3(b)に示すように、例えばスパイラル形状(へリングボーン形状でもよい)の複数の動圧溝8c1が形成されている。
【0031】
図1に示すように、シール手段としてのシール部材10は環状のもので、ハウジング7の開口部7aの内周面に圧入、接着等の手段で固定される。この実施形態において、シール部材10の内周面は円筒状に形成され、シール部材10の下側端面10bは軸受スリーブ8の上側端面8bと当接している。
【0032】
軸部材2の軸部2aは軸受スリーブ8の内周面8aに挿入され、フランジ部2bは軸受スリーブ8の下側端面8cとハウジング7の内底面7c1との間の空間部に収容される。軸受スリーブ8の内周面8aのラジアル軸受面となる領域(上下2箇所の領域)は、それぞれ、軸部2aの外周面とラジアル軸受隙間9a,9bを介して対向する。また、軸受スリーブ8の下側端面8cのスラスト軸受面となる領域は、フランジ部2bの上側端面2b1とスラスト軸受隙間を介して対向し、ハウジング7の内底面7c1のスラスト軸受面となる領域はフランジ部2bの下側端面2b2とスラスト軸受隙間を介して対向する。
【0033】
シール部材10の内周面に対向する軸部2aの外周面にはテーパ面が形成されており、このテーパ面と軸部2aの外周面との間には、ハウジング7の外部方向(同図で上方向)に向かって漸次拡大するテーパ形状のシール空間Sが形成される。シール部材10で密封されたハウジング7の内部空間には、潤滑油が注油されており、ハウジング内の各隙間、すなわち軸部2aの外周面と軸受スリーブ8の内周面8aとの間の隙間(ラジアル軸受隙間9a,9bを含む)、軸受スリーブ8の下側端面8cとフランジ部2bの上側端面2b1との間の隙間、フランジ部の下側端面2b2とハウジング底部7cの内側面7c1との間の隙間は、潤滑油で満たされている。潤滑油の油面はシール空間S内にある。
【0034】
軸部材2と軸受スリーブ8の相対回転時、例えば軸部材2の回転時には、上述のように動圧溝8a1〜8a4の作用によって両ラジアル軸受隙間9a,9bに潤滑油の動圧が発生し、軸部材2の軸部2aがラジアル軸受隙間内に形成される潤滑油の油膜によってラジアル方向に回転自在に非接触支持される。同時に、上記スラスト軸受隙間に潤滑油の動圧が発生し、軸部材2のフランジ部2bが上記スラスト軸受隙間内に形成される潤滑油の油膜によって両スラスト方向に回転自在に非接触支持される。
【0035】
本発明では、軸受スリーブ8の下側(ラジアル軸受隙間9a,9bの外気遮断側となる方向)の端部、例えば下側の内周面取り部8eに、上記開孔率を軸受スリーブ8の内周面8a(ラジアル軸受面となる領域も含む)よりも大きくした油導入部11が設けられる。このように表面の開孔率に差を設けることにより、軸部2aの外周面と軸受スリーブ8の内周面8aとの間の隙間で下方に押し込まれた油が面取り部8eから吸収され易くなる。吸収された油は、軸受スリーブ8内を通って、上側の内周面取り部8fから滲み出すが、上述のように軸受スリーブ8内への油の吸収量が増えるため、それに応じて面取り部8fからの油の滲み出し量も増える。従って、外気開放側となる上側のラジアル軸受隙間9aでの負圧の発生を防止し、エアの巻き込み等による動圧特性の低下を回避することができる。
【0036】
軸受スリーブ8の端部として、内周面取り部8e以外にも、例えば下側端面8cに油導入部11を形成することもできる。但し、図示例のように、下側端面8cが動圧を発生するスラスト軸受隙間と面する場合は、下側端面8cでの油の吸収量が増えると、スラスト軸受隙間での動圧効果が減じられるので、当該端面8cに油導入部11を形成するのは好ましくない。
【0037】
また、軸受スリーブ8の上側の端部、例えば上側の内周面取り部8fには、表面の開孔率を軸受スリーブ8の内周面8aよりも大きくした油排出部12が設けられる。これにより、内周面取り部8fからの油の滲み出し量が増えるので、上記油導入部11による油供給量の増大効果と相俟って、上側のラジアル軸受隙間9aでの負圧の発生を確実に防止して、エアの巻き込み等を回避することができる。
【0038】
この実施形態において、軸受スリーブ8の内周面8aの開孔率(この測定方法は上述の通りである)は例えば0.5〜10%、好ましくは1〜5%の範囲内に設定される。面取り部8e,8fの開孔率はこれよりも大きく設定され、例えば3%〜30%の範囲、望ましくは5%〜30%の範囲内に設定される。
【0039】
図4は、スラスト軸受部Tとして、軸部材2の軸端を、ハウジング7の底部7cに装着したスラストワッシャ13で接触支持するピボット軸受を使用した動圧軸受装置の断面図である。この実施形態において、ハウジング7の底部7cは円筒状の側部7bと一体に形成されている。また、ラジアル軸受部R1,R2の動圧溝は、両軸受部R1,R2のそれぞれで軸方向で対称に形成され、かつ両軸受部R1,R2の軸方向長さが等しくなっている。これ以外の構成は、基本的に図2および図3に示す実施形態と共通するので、共通する機能・作用を有する部材には同一参照番号を付して重複説明を省略する。
【0040】
このタイプの軸受装置においても、動圧溝の幅が設計と異なる等の場合には、ラジアル軸受隙間に負圧を発生して泡を生じたり、油の下方への押込み力が増大して軸部材2が浮き上がる等の不具合を招く可能性がある。これに対し、上述した油導入部11および油排出部12を軸受スリーブの内周面取り部8e,8fに形成すれば、これらの不具合を回避することができる。
【0041】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、ラジアル軸受隙間に潤沢な油を供給することができる。したがって、当該ラジアル軸受隙間での負圧の発生を確実に防止し、エアの巻き込みや泡の発生による動圧特性の低下を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】情報機器用スピンドルモータの断面図である。
【図2】動圧軸受装置の断面図である。
【図3】(a)図は軸受スリーブの断面図、(b)図はその底面図である。
【図4】動圧軸受装置の他の実施形態を示す断面図である。
【符号の説明】
1 動圧軸受装置
2 軸部材
2a 軸部
2b フランジ部
7 ハウジング
8 軸受スリーブ
8a 内周面
8a1〜8a4 動圧溝
8e 内周面取り部(上側)
8f 内周面取り部(下側)
9a ラジアル軸受隙間(上側)
9b ラジアル軸受隙間(下側)
11 油導入部
12 油排出部
R1 第1ラジアル軸受部
R2 第2ラジアル軸受部
T スラスト軸受部
T1 第1スラスト軸受部
T2 第2スラスト軸受部
Claims (7)
- 一端に開口部、他端に底部を有するハウジングと、焼結金属からなり、ハウジングの内周に固定された軸受スリーブと、軸受スリーブの内周に挿入した軸部材と、軸方向に対して傾斜させた複数の動圧溝と、軸部材の外周と軸受スリーブの内周との間に軸方向に離隔して形成され、軸部材と軸受スリーブとの相対回転時に、上記動圧溝の作用で油の動圧を発生させる複数のラジアル軸受隙間とを備え、
軸受スリーブは、前記ハウジングの開口側に位置する外気開放側の端部と前記ハウジングの底部側に位置する外気遮断側の端部とを有し、
軸受スリーブの外気開放側に、油面を有するシール空間を形成し、
軸部材の外周と軸受スリーブの内周との間の隙間に満たされた油が全体として外気遮断側に押し込まれ、
前記軸受スリーブの外気遮断側の端部に、その開孔率を軸受スリーブのラジアル軸受面となる領域およびラジアル軸受面間の領域を含む内周面の開孔率よりも大きくした油導入部を形成すると共に、前記軸受スリーブの外気開放側の端部に、その開孔率を軸受スリーブの前記内周面の開孔率よりも大きくした油排出部を形成したことを特徴とする動圧軸受装置。 - 油導入部が、軸受スリーブの内周面取り部に形成されている請求項1記載の動圧軸受装置。
- 油排出部が、軸受スリーブの内周面取り部に形成されている請求項1記載の動圧軸受装置。
- さらに、軸部材をスラスト方向で支持するスラスト軸受部を有する請求項1〜3何れか記載の動圧軸受装置。
- スラスト軸受部が、ラジアル軸受隙間の外気遮断側と連通したスラスト軸受隙間を有する動圧軸受である請求項4記載の動圧軸受装置。
- スラスト軸受部が、軸部材の端部を接触支持するものである請求項4記載の動圧軸受装置。
- 請求項1〜6の何れかに記載した動圧軸受装置を有するディスク駆動装置用のモータ。
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